JP2011222212A - 有機電子デバイスの製造方法、有機電子デバイスおよびガスバリアフィルム前駆体 - Google Patents

有機電子デバイスの製造方法、有機電子デバイスおよびガスバリアフィルム前駆体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の目的は、生産工程適性が高く、高いガスバリア性能を有し耐久性に優れる有機電子デバイスを与える有機電子デバイスの製造方法、それにより得られた有機電子デバイスを提供することにある。
【解決手段】有機電子素子と、基材上にガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する有機電子デバイスを製造する製造方法であって、基材上に、ガスバリア層を形成する工程、ガスバリア層上に塗布により保護層を形成し、ガスバリアフィルム前駆体を形成する工程、ガスバリアフィルム前駆体を、ガスバリアフィルム前駆体の保護層側の面と、反対の面とが接触する状態にして積層する工程、ガスバリアフィルム前駆体から保護層を除去する工程、および有機電子素子にガスバリアフィルムを、有機電子素子とガスバリア層とを接触させて封止する工程、を有することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、主に電子デバイス等のパッケージ、または有機EL素子や太陽電池、液晶等のプラスチック基板と言ったディスプレイ材料に用いられるバリアフィルム、バリアフィルムの製造方法、バリア性フィルムを用いた有機光電変換素子および太陽電池に関する。
太陽電池、有機EL素子などの有機電子デバイスは、光と電気との変換機能など各種機能を有する有機機能層を有しているが、有機機能層は酸素、水などの各種ガスによる性能劣化を生じやすくガスバリアフィルムなどを用い、有機機能層と有害なガスとの接触を避けるように構成されている。
一般的に、ガスバリアフィルムとしては、プラスチック基材等のフィルム基材の表面に酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物の薄膜を形成したガスバリアフィルムが知られており、水蒸気や酸素等の各種ガスの遮断を必要とする物品の包装用途や、食品や工業用品および医薬品等の変質を防止するための包装用途に広く用いられている。そして、これらのガスバリアフィルムは、上記包装用途以外にも液晶表示素子、太陽電池、有機EL(エレクトロルミネッセン)素子などにも使用されている。
無機バリア層を形成する方法としては、例えば、TEOS(テトラエトキシシラン)に代表される有機珪素化合物を用いて減圧下の酸素プラズマで酸化しながら基板上に成膜する化学堆積法(プラズマCVD)や半導体レーザーを用いて金属Siを蒸発させ酸素の存在下で基板上に堆積するスパッタ法が知られている。
これらの方法は正確な組成の薄膜を基板上に形成できるためSiOをはじめとする金属酸化物薄膜の形成に好ましく使われてきたが、減圧下での成膜となるため、減圧および大気開放に時間を要する、連続生産が難しい、設備が大型化するなど著しく生産性が悪かった。
これらの問題を解決するため、生産性の向上を目的に、珪素含有化合物を塗布し、その塗膜を改質することで酸化シリコン薄膜を形成する方法、および同じCVD法でも大気圧下でプラズマを発生し大気圧下で成膜する試みが行われており、ガスバリアフィルムにおいても検討されている。
一般的に溶液プロセスで作製可能な酸化ケイ素膜としては、アルコキシド化合物を原料として、ゾル−ゲル法と呼ばれる方法で形成する技術が知られている。このゾル−ゲル法は一般的に高温に加熱する必要があり、さらに脱水縮合反応の過程で大きな体積収縮が起こり、膜中に多数の欠陥が生じる。
これを防ぐために原料溶液に酸化物の形成に直接関与しない有機物などを混合する手法なども見いだされてはいるが、これらの有機物が膜中に残存することによって膜全体のバリア性の低下が生ずる。
これらのことから、ゾル−ゲル法で作製する酸化膜をそのまま有機電子デバイスに適用することは困難であった。
その他の方法としては原料にシラザン構造(Si−N)を基本構造とするシラザン化合物を用いて酸化ケイ素を作製することが提案されており、この場合の反応は脱水縮重合ではなく窒素から酸素への直接的な置換反応であるため、反応前後の質量収率が80%から100%以上と大きく、体積収縮による膜中欠陥が少ない緻密な膜が得られることが知られている。
しかしながら、シラザン化合物の置換反応による酸化シリコン薄膜の作製には450℃以上の高温が必要であり、プラスチック等のフレキシブル基板に適応することは不可能であった。
このような問題の解決の手段として、ポリシラザンの塗膜に真空紫外線照射を施すことにより、シリカ被膜の形成時における加熱温度を低下し、また加熱時間を短縮できることが知られている(特許文献1参照)。
しかしながら、真空紫外光で処理された表面は、表面エネルギーの高い状態となり、処理表面の近傍に存在する物質、たとえば空間中の酸素、水蒸気、あるいは空中に浮遊する有機物、無機物のゴミ等を吸着しやすく、液晶表示素子、太陽電池、有機エレクトロルミネッセンス(EL)基板などには、その性能や寿命が低下するという問題があり、そのままでは適用できなかった。
また、製造時に酸化シリコン膜を形成したバリアフィルムをロール状に巻き取る場合、フィルム裏面に真空紫外処理面が接触すると、裏面からの不純物の転写、吸着が起こるなどして同様に上記デバイス性能を劣化させる場合があった。また高い表面エネルギーを有する高平滑性のフィルム面は、ロール巻き取り時の摩擦係数が非常に高く、均一な巻き姿のロールに巻き取ることが非常に難しく、生産工程上の問題も有していた。
一方、透明プラスチック基材の少なくとも片面に、少なくとも一層の導電性高分子含有表面平滑層と、少なくとも一層の無機バリア層とが積層されており、最外層には表面保護層を有することもあるガスバリアフィルムが知られている(特許文献2参照)。
しかしながら、表面保護層を有するガスバリアフィルムの場合、表面保護層に含まれるガスによると思われる、性能の低下が見られる場合があり、ガスバリア性が充分ではなかった。
さらに、ガスバリア層上の保護層の例として、厚み10〜500μ程度の別の基材上に粘着層を有する保護層が知られており、これをバリア層に貼り合わせて、デバイス製造時に剥離して使用する方法(特許文献3参照)が知られている。この場合には、別の基材はデバイス上には存在しないため、デバイスへの影響はない。
しかしながら、バリア層から剥離の後も、粘着層の成分の一部がバリア層表面に吸着したまま残存し、その成分自体やその成分が含有する水分や酸素などにより、有機電子デマイスの性能劣化の要因となる場合があった。
特表2009−503157号公報 特開2003−231198号公報 再表2007−138837号公報
本発明の目的は、生産工程適性が高く、高いガスバリア性能を有し耐久性に優れる有機電子デバイスを与える有機電子デバイスの製造方法、それにより得られた有機電子デバイスを提供することにある。
本発明の上記目的は、下記構成により達成された。
1.有機電子素子と、基材上にガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する有機電子デバイスを製造する、有機電子デバイスの製造方法であって、
該基材上に、該ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程、
該ガスバリア層上に、保護層用塗布液を用いて塗布により該保護層を形成し、ガスバリアフィルム前駆体を形成するガスバリアフィルム前駆体形成工程、
該ガスバリアフィルム前駆体を、該ガスバリアフィルム前駆体の保護層側の面と、該保護層側の面と反対の面とが接触する状態にして積層する積層工程、
該ガスバリアフィルム前駆体から該保護層を除去する、保護層除去工程、
および該有機電子素子に該ガスバリアフィルムを、該有機電子素子と該ガスバリア層とを接触させて封止する、封止工程、
を有することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
2.前記ガスバリアフィルム前駆体における前記保護層の、前記ガスバリア層に対する、JIS K5600−5−6のクロスカット法に基づく付着性が、分類4または5であることを特徴とする前記1に記載の有機電子デバイスの製造方法。
3.前記保護層が、水または有機溶媒に可溶である化合物を含有し、前記除去が水または有機溶媒を含有する溶液により行われることを特徴とする前記1または2に記載の有機電子デバイスの製造方法。
4.前記ガスバリア層形成工程が、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して塗膜を作製する工程、該塗膜を乾燥する工程および乾燥された塗膜を改質する改質工程を有することを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の有機電子デバイスの製造方法。
5.改質工程が、真空紫外光を照射する紫外光照射工程を含むことを特徴とする前記4に記載の有機電子デバイスの製造方法。
6.前記1から5のいずれか1項に記載の有機電子デバイスの製造方法によって製造されたことを特徴とする有機電子デバイス。
7.前記有機電子デバイスが、太陽電池であることを特徴とする前記6に記載の有機電子デバイス。
8.前記1から5いずれか1項に記載の有機電子デバイスの製造方法に用いられるガスバリアフィルム前駆体であって、基材上にガスバリア層を有し、該ガスバリア層上に、塗布により形成された保護層を有することを特徴とするガスバリアフィルム前駆体。
本発明により、生産工程適性が高く、高いガスバリア性能を有し耐久性に優れる有機電子デバイスを与える有機電子デバイスの製造方法、それにより得られた有機電子デバイスが提供できる。
本発明は、有機電子素子と、基材上にガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する有機電子デバイスを製造する、有機電子デバイスの製造方法であって、該基材上に、該ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程、該ガスバリア層上に、保護層用塗布液を用いて塗布により該保護層を形成し、ガスバリアフィルム前駆体を形成するガスバリアフィルム前駆体形成工程、該ガスバリアフィルム前駆体を、該ガスバリアフィルム前駆体の保護層側の面と、該保護層側の面と反対の面とが接触する状態にして積層する積層工程、該ガスバリアフィルム前駆体から該保護層を除去する、保護層除去工程、および該有機電子素子に該ガスバリアフィルムを、該有機電子素子と該ガスバリア層とを接触させて封止する、封止工程を有することを特徴とする。
本発明においては特に、塗布により保護層を一旦形成し、その保護層を除去する工程を有することで、生産工程適性が高く、高いガスバリア性能を有し耐久性に優れる有機電子デバイスを与える有機電子デバイスの製造方法が得られる。
以下、本発明とその構成要素、および本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
(ガスバリア層形成工程)
(ガスバリアフィルム)
本発明に係るガスバリアフィルムは、基材上にガスバリア層を有する。
(基材)
基材は、後述するガスバリア層を保持することができる材料で形成されたものであれば、特に限定されるものではない。
上記材料としては、例えばポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂からなるフィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、さらには前記樹脂を2層以上積層して成る樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等が好ましく用いられる。
また光学的透明性、耐熱性、無機層、ガスバリア層との密着性の点においては、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルムを好ましく用いることができる。
基材の厚みは5μm〜500μm程度が好ましく、さらに好ましくは25μm〜250μmである。
本発明においては、基材は透明であることが好ましい。
ここで、基材が透明とは、可視光(400nm〜700nm)の光透過率が80%以上であることを示す。
基材が透明であり、基材上に形成する層も透明であることにより、透明なバリアフィルムとすることが可能となるため、有機EL素子等の透明基板とすることも可能となるからである。
また、上記に挙げた樹脂等を用いた基材は未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に用いられる基材は、従来公知の一般的な方法により製造することが可能である。
例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基材(支持体)を製造することができる。
また、未延伸の基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、延伸した基材を製造することができる。
この場合の延伸倍率は、基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向および横軸方向にそれぞれ2倍〜10倍が好ましい。
さらには、延伸した基材に於いて基材の寸法安定性を向上するために、延伸後の緩和処理をすることが好ましい。
また、本発明に係る基材は、その表面がコロナ処理されていてもよいし、さらにその表面にアンカーコート剤層が形成されていてもよい。
《アンカーコート剤層》
アンカーコート剤層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、アルキルチタネート等およびこれらの混合物が挙げられる。
これらのアンカーコート剤には、従来公知の添加剤を加えることもできる。
そして、上記のアンカーコート剤層は、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート等の公知の方法により基材上にコーティングして形成することができる。
上記のアンカーコート剤の付き量としては、0.1g/m〜5g/m(乾燥状態)程度が好ましい。
《平滑層》
本発明に係るバリアフィルムは、さらに基材とバリア層との間に平滑層を有してもよい。
平滑層は突起等が存在する基材の表面を、平坦化するために設けられる。
平滑層により平坦化された面に、必要に応じてその他の層を中間に介した後にバリア層を積層形成することで、欠陥の少ない均一なガスバリア層を形成することが出来る。さらには平滑層が形成された面に直接接するように積層させる構成がより好ましい。
このような平滑層は、基本的には感光性樹脂を硬化させて作製される。
平滑層の感光性樹脂としては、例えば、ラジカル反応性不飽和化合物を有するアクリレート化合物を含有する樹脂組成物、アクリレート化合物とチオール基を有するメルカプト化合物を含有する樹脂組成物、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、グリセロールメタクリレート等の多官能アクリレートモノマーを溶解させた樹脂組成物等が挙げられる。
また、上記のような樹脂組成物の任意の混合物を使用することも可能であり、光重合性不飽和結合を分子内に1個以上有する反応性のモノマーを含有している感光性樹脂であれば特に制限はない。
平滑層の形成方法は特に制限はないが、スピンコーティング法、スプレー法、ブレードコーティング法、ディップ法等のウエットコーティング法、あるいは、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが好ましい。
平滑層の形成では、上述の感光性樹脂に、必要に応じて酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤等の添加剤を加えることができる。
また、平滑層の積層位置に関係なく、いずれの平滑層においても、成膜性向上および膜のピンホール発生防止等のために適切な樹脂や添加剤を使用してもよい。
平滑層の平滑性は、塗布性などの面から、JIS B 0601で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。
平滑層を有する場合、さらにブリードアウト防止層を有することが好ましい。
ブリードアウト防止層は、平滑層を有するフィルムを加熱した際に、基材中から未反応のオリゴマー等が表面へ移行して、接触する面を汚染してしまう現象を抑制する目的で設けられる層であって、基材はこれを平滑層を有する基材の反対面に有してもよい。
ブリードアウト防止層は、この機能を有していれば平滑層と同じ構成をとっても構わない。
ブリードアウト防止層に含ませることが可能な重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物または分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
ブリードアウト防止層は、添加剤として、マット剤を含有してもよい。
マット剤としては平均粒子径が0.1μm〜5μm程度の無機粒子が好ましい。
無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種または2種以上を併せて使用することができる。
無機粒子からなるマット剤は、ブリードアウト防止層の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが望ましい。
また、ブリードアウト防止層には、他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
以上のようなブリードアウト防止層は、ハードコート剤、マット剤、および必要に応じて他の成分を配合して、適宜必要に応じて用いる希釈溶剤によって塗布液として調製し、当該塗布液を支持体フィルム表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。
なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200nm〜400nmの波長領域の紫外線を照射する、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射することにより行うことができる。
ブリードアウト防止層の厚みとしては、フィルムの耐熱性向上させ、フィルムの光学特性のバランス調整を容易にし、且つ、バリアフィルムの片面のみにブリードアウト防止層を設けた場合のカールを防止する観点から、1μm〜10μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは、2μm〜7μmの範囲にすることが好ましい。
(ガスバリア層)
ガスバリア層とは、JIS K7129 B法(赤外センサー法)及びASTM F1249−90に示された測定方法に準じた、MOCON社の水蒸気透過度測定装置を用い、40℃×90%RHの条件で測定した場合の水蒸気透過率が、5×10−2g/m・日以下である層または、酸素透過率は、JIS K 7126(B法)に準拠して測定した。雰囲気温度23℃、湿度75%で測定した。測定には酸素透過率測定装置(米国モコン社製「MOCON OX−TRAN」)を用いた測定値が、5×10−2ml/m・日以下である層をいう。
ガスバリア層は、金属膜または無機酸化物膜であることが好ましい。例えば、金属膜としては、アルミニウムが、無機酸化物膜としては、酸化珪素膜、酸化アルミニウム膜が挙げられる。ガスバリア層の構成としては、単層構成でもよいし、複層構成でもよい。
(ガスバリア層形成工程)
ガスバリア層を、基材上に形成する方法としては、蒸着などの気相堆積法、塗布による方法などがあるが、本発明においては、ガスバリア層を塗布により形成する場合に特に有効であり、また、ガスバリア層が、酸化珪素膜である場合に好適に適用できる。
以下、塗布により酸化珪素膜を形成する場合を例に、ガスバリア層の形成工程について説明する。
塗布により酸化珪素膜を形成する場合、ポリシラザンを含有する塗膜を形成して、酸化珪素膜を形成する方法が好ましく用いられる。
《ポリシラザンを含有する塗膜》
ポリシラザンを含有する塗膜は、基材上に少なくとも1層のポリシラザン化合物を含有する塗布液を塗布することにより形成される。
塗布方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。
具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗布厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。
例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが好ましくは1nm〜100μm程度、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度となるように設定され得る。
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Siおよび両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
フィルム基材を損なわないように塗布するためには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性する化合物が好ましい。
ポリシラザンとしては、例えば、下記式で表される構造単位を有するものが挙げられる。
−Si(R)(R)−N(R)−
式中、R、R、Rは、各々水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基、アルコキシ基を表す。
本発明では、得られるガスバリア層としての緻密性の観点からは、R、RおよびRのすべてが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるガスバリア層に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択してよく、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6および8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体または固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの別の例としては、上記式のポリシラザンにケイ素アルコキシドを反応させて得られるケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(特開平6−240208号公報)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(特開平7−196986号公報)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは好ましくない。
具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。
具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリコロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度、等目的にあわせて選択し、複数の有機溶媒を混合しても良い。
ポリシラザンを含有する塗布液中のポリシラザン濃度は目的とする膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2質量%〜35質量%程度である。
ポリシラザンは、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換された誘導体であってもよい。その場合のアルキル基としては、例えばメチル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいシリカ膜に靭性を持たせることができ、より膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる。
ポリシラザンを含有する塗膜から、下述する酸化珪素を含有する膜への改質を促進するために、ポリシラザンを含有する塗布液にアミンや金属の触媒を添加することもできる。
触媒としては、例えばAZエレクトロニックマテリアルズ(株)製 アクアミカ NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140などが挙げられる。
ポリシラザンを含有する塗膜は、下記の改質処理により酸化珪素膜となりガスバリア層が形成される。
改質処理としては、真空紫外線(VUV)を用いた方法を好ましく用いることができる。
(真空紫外線(VUV)を用いたポリシラザンを含有する塗膜の改質処理)
ガスバリア層は、ポリシラザンを含有する溶液を基材上に塗布した後、ポリシラザンを含む塗膜に真空紫外線(VUV)を照射する方法で改質処理されて得られる。
ガスバリア層は、ポリシラザン含有溶液を基材上に塗布、乾燥した後、真空紫外線を照射する方法で得られる。
真空紫外線としては、100nm〜200nmの真空紫外線(VUV光)が好ましく用いられる。
真空紫外線の照射は、照射される塗膜を担持している基材がダメージを受けない範囲で照射強度および/または照射時間を設定する。基材としてプラスチックフィルムを用いた場合を例にとると、基材表面の強度が10mW/cm〜300mW/cmになるように基材−ランプ間距離を設定し、0.1秒〜10分間、好ましくは0.5秒〜3分の照射を行うことが好ましい。
真空紫外線照射装置は、市販のランプ(例えば、ウシオ電機製)を使用することが可能である。
真空紫外線(VUV)照射はバッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、被塗布基材の形状によって適宜選定することができる。
例えば、バッチ処理の場合には、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材(例、シリコンウェハー)を、真空紫外線発生源を具備した真空紫外線焼成炉で処理することができる。真空紫外線焼成炉自体は一般に知られており、例えば、ウシオ電機(株)製を使用することができる。また、ポリシラザン塗膜を表面に有する基材が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような真空紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に真空紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。
該真空紫外光はほとんどの物質の原子間結合力より大きいため、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断することが可能であるため好ましく用いる事ができる。
この作用を用いる事により、加水分解を必要とせず低温でかつ効率的に改質処理が可能となる。
真空紫外光源としては、エキシマ発光を用いる希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
エキシマ発光を得るには誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。
誘電体バリア放電とは両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる、雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電で、micro dischargeのストリーマが管壁(誘電体)に達すると誘電体表面に電荷が溜まるため、micro dischargeは消滅する。
このmicro dischargeが管壁全体に広がり、生成・消滅を繰り返している放電である。このため肉眼でも分る光のチラツキを生じる。
また、非常に温度の高いストリーマが局所的に直接管壁に達するため、管壁の劣化を早める可能性もある。
効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外に無電極電界放電でも可能である。
放電の形態は誘電体バリア放電でも無電極電界放電のいずれでも使用できる。電極の形状はランプに接する面が平面であっても良いが、ランプの曲面に合わせた形状にすればランプをしっかり固定出来るとともに、電極がランプに密着することにより放電がより安定する。また、アルミで曲面を鏡面にすれば光の反射板にもなる。
《真空紫外線の照射強度》
照射強度が高ければ、光子とポリシラザン内の化学結合が衝突する確率が増え、改質反応を短時間化することができる。また、内部まで侵入する光子の数も増加するため改質膜厚も増加および/または膜質の良化(高密度化)が可能である。
但し、照射時間を長くしすぎると平面性の劣化やガスバリア性フィルムの他の材料にダメージを与える場合がある。一般的には、照射強度と照射時間の積で表される積算光量で反応進行具合を考えるが、照射強度の絶対値が重要になる場合もある。
従って、本発明ではVUV照射工程において、基材のダメージ、ランプやランプユニットの部材のダメージを抑制し、改質効率を上昇させ、ガスバリア性能を向上の両方を併せて達成する観点から、少なくとも1回は100mW/cm〜200mW/cmの最大照射強度を与える改質処理を行うことが好ましい。
(真空紫外線(VUV)の照射時間)
真空紫外線(VUV)を照射する照射時間は、任意に設定可能であるが、基材ダメージや膜欠陥生成の観点およびガスバリア性能のバラつき低減の観点から光照射工程での照射時間は0.1秒〜3分間が好ましく、さらに好ましくは、0.5秒〜1分である。
(真空紫外線(VUV)照射時の酸素濃度)
真空紫外線(VUV)を照射する際の、酸素濃度は500ppm〜10000ppm(1%)とすることが好ましく、さらに好ましくは、1000ppm〜5000ppmである。
前記の酸素濃度の範囲に調整することにより、酸素過多のガスバリア膜の生成を防止してガスバリア性の劣化を防止することができる。
また、大気との置換時間が不必要に長くなるのを防ぎ、同時に、ロール・トゥ・ロールの様な連続生産を行う場合にウエッブ搬送によって真空紫外線(VUV)照射庫内に巻き込む空気量(酸素を含む)の増大を防ぎ、酸素濃度の調整不能になることを防ぐことができる。
真空紫外線(VUV)照射時にこれら酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスとすることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスにすることが好ましい。
酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
(ガスバリアフィルム前駆体形成工程)
ガスバリアフィルム前駆体形成工程では、ガスバリア層上に、保護層用塗布液を用いて塗布により保護層を形成し、ガスバリアフィルム前駆体を形成する。
(保護層)
保護層に用いられる材料は、保護層除去工程で、除去することができる材料であり、特に水または有機溶媒にて除去可能な材料であることが好ましい。
これらの材料としては、たとえば水または有機溶媒に溶解する材料が好ましいが、水または有機溶媒に膨潤する材料も用いることができる。
保護層に用いることができる材料としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。
これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
これらの中でも、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として用いると、耐傷性、除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲のものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8が挙げられる。
また保護層には無機質の層状化合物を含有することが好ましい。
層状化合物とは薄い平板状の形状を有する粒子であり、例えば、下記一般式
A(B,C)2−510(OH,F,O)
〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、BおよびCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSiまたはAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
上記天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母および鱗雲母が挙げられる。
また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、およびNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、NaまたはLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNaまたはLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母、合成スメクタイト等が挙げられる。
これら層状化合物を添加する効果としては、引っ掻きなどの外力に対するガスバリア層の保護効果、保護層除去工程において、水や有機溶媒を取り込み、膨潤することにより除去速度が高まる。
また、保護層の膜としての強度が得られるため、保護層除去時に部分的な膜の残留がより起こりにくいなどの利点がある。
層状化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。
従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。
アスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化によるバリアフィルムの品質の低下もなく保存安定性に優れる。
次に、層状化合物を保護層に用いる場合の分散方法の例について述べる。
まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。
ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。
具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物の5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。
複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比であることが好ましい。
保護層の他の添加物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を上記水溶性または水不溶性ポリマーに対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のイオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。
これら活性剤の添加量は上記水溶性または水不溶性ポリマーに対して0.1〜100質量%添加することができる。
保護層用塗布液に用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エチレングリコールのエステル類などの有機溶媒、およびこれらの混合物が挙げられる。
保護層用塗布液には、塗布性を向上させためのイオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤や皮膜の物性改良のため水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。
水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。
これらの添加剤を加えることで、塗布面へのぬれ性を向上させて、均一な塗膜を形成したり、形成された後の保護層表面のすべり性を向上させたり、あるいはロール巻取り、巻きだし時等の帯電を軽減することが期待できる。
またさらには、その後の工程において、水や有機溶媒による除去性を促進することも可能である。
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書または特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。具体的には、例えば、保護層は、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が挙げられるが、形成されたバリア層のバリア性を低下させる懸念の少ないダイコーター、ロールコーター、インクジェット等の非接触の塗布方法が好ましい。
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.05〜3g/mの範囲であることが好ましく、0.05〜2.0g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.1〜1.0g/mの範囲である。
本発明においては、特に保護層が、水または有機溶媒に可溶である化合物を含有する場合が好ましく、この場合後の保護層除去工程では、水または有機溶媒を含有する溶液により保護層が除去される。
本発明に係る保護層は、ガスバリア層に対して、JIS K5600−5−6のクロスカット法に基づく付着性が、分類4または5であることが好ましい態様である。
このような付着性を有する保護層は、上記の材料を用い、塗布、乾燥して膜を形成することで得られるが、特に水を主成分とする溶媒と上記水溶性の材料とを、特にポリビニルアルコールとを含有する塗布液を塗布することで得られる。
さらに、上記付着性を得るためには、塗布液中に上記の無機質の層状化合物を含有することが好ましい態様である。
付着性を上記の範囲とすることで、後述する保護層除去工程で比較的容易に除去可能となり清浄なバリア層表面を形成することができる。
(積層工程)
積層工程では、ガスバリアフィルム前駆体を、ガスバリアフィルム前駆体の保護層側の面と、該保護層側の面と反対の面とが接触する状態にして積層する。
積層工程は、ガスバリアフィルム前駆体を一時的に保存する工程である。その保存方法が、ガスバリアフィルム前駆体の保護層側の面と、保護層側の面と反対の面とが接触する状態にして積み重ねる方法即ち、ガスバリアフィルム前駆体の表面と裏面とを接触させて重ねて保存する方法である。積層状態としては、一定の面積のものに断裁された状態で積層される状態、長尺のガスバリアフィルム前駆体が巻回された状態があるが、長尺のガスバリアフィルム前駆体が巻回された状態が好ましい状態である。
本発明においては、積層工程で保存しておくことで、効率よく有機電子デバイスの作製を行うことができる。
(保護層除去工程)
ガスバリアフィルム前駆体上は、保護層除去工程で、ガスバリアフィルム前駆体から保護層が除去された後、有機電子素子に貼付される。
保護層除去工程における、保護層の除去に用いられる方法としては、保護層除去液(洗浄液)で除去する洗浄除去方法、粘着層を有する粘着シートを保護層上に貼付して、粘着シートと共に、保護層を引き剥がすドライ剥離方法などが挙げられるが、洗浄除去方法が好ましく用いられる。
(洗浄除去方法)
洗浄液に含まれる溶媒としては、水、有機溶媒があるが、保護層を除去する効果のあるものであれば特に制限されない。
有機溶媒としては、例えば、アルコール類、ケトン類等が挙げられる。より具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
例示した溶媒の1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
洗浄液としては、保護層の組成により異なるが、例えば水溶性アルカリ化合物を含有するアルカリ水溶液、上記のような有機溶媒を主成分として含有する有機溶媒洗浄液、これらを混合したものなどが挙げられる。
アルカリ水溶液に用いられる水溶性アルカリ化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;オルソ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、セスキ珪酸ナトリウム(例えば、一号珪酸ナトリウム、二号珪酸ナトリウム、三号珪酸ナトリウム)等の珪酸塩;リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等のリン酸塩;炭酸二ナトリウム、炭酸二カリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩;ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩等が挙げられる。
これらの水溶性アルカリ化合物はそれぞれ単独で用いてもよいが、2種以上を併用してもよい。水溶性アルカリ化合物のアルカリ洗浄剤における配合量は、1〜20質量%であると好ましい。
アルカリ洗浄剤に含まれる水としては、超純水、純水、イオン交換水、蒸留水、通常の水道水等が用いられる。
洗浄液には、ガスバリア層に悪影響を与えない範囲で界面活性剤、キレート剤、金属イオン封鎖剤、防腐剤、防錆剤、消泡剤、酸化防止剤などを添加しても良い。
洗浄する方法としては、ガスバリアフィルム前駆体を洗浄液に浸漬する方法、ガスバリアフィルム前駆体に洗浄液を吹き付ける方法などがある。これらの方法においては、さらに、洗浄液に周波数10〜100kHz程度の超音波振動を加える、ブラシ等の物理的手段で擦るなどの手段を併用して用いても良い。
保護層を除去する際の洗浄液の温度としては、室温でもよく、洗浄液の沸点以下の温度に加熱された温度であってもよい。
これら洗浄液による保護層除去工程の後には、清浄な水や有機溶媒で洗浄液を完全に洗い流す(リンス)工程とバリアフィルムに残留する水分や、有機溶媒成分を乾燥する乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥工程は、水分や酸素の残留を最小限にするために乾燥窒素での乾燥や減圧による乾燥方法が好ましい。
(ドライ剥離方法)
ドライ剥離方法としては、粘着性シート、粘着ロールを用いた剥離方法がある。
具体的には特開2000−13020号公報記載の、粘着力が500〜50000Paである粘着回転ロールを使用する方法や、特開2007−277631に記載の方法が挙げられる。
ドライ剥離方法を用いる場合の保護層は、保護層膜の強度を高くすることが好ましく、例えば具体的手段の一例としては、前述の無機質の層状化合物等を添加することなどが挙げられる。
洗浄液を用いないドライ剥離方法は、その後の乾燥工程を必要としない点で、工程の簡易化という点で利点がある。
粘着性シートは、フィルム上に少なくとも粘着性層を有するシートを意味する。粘着性シートは、通常、樹脂フィルム上に粘着性層を設けることにより粘着性シートとして用いることができる。
このような粘着性層は、それ自身常温で粘着性を有するもの、熱や圧力を掛けることにより粘着性を発現するものなどの何れでもよく、例えば低軟化点の樹脂、粘着性付与剤、熱溶剤等を含むことが好ましい。
低軟化点の樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系の樹脂、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−エチルアクリレート等のエチレン共重合体;スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−エチレン−ブチレン等のポリスチレン系樹脂;ポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリビニルエーテル系樹脂;ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;アイオノマー樹脂;セルロース系樹脂;エポキシ系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂等が挙げられ、粘着性付与剤としては、ロジン、水添ロジン、ロジンマレイン酸、重合ロジンおよびロジンフェノール等の未変性もしくは変性物、テルペン並びに石油樹脂およびそれらの変性物等が挙げられる。
粘着性層は、フィルム上に塗布後、乾燥することで形成されてもよく、また熱可塑性樹脂からなるフィルム原料と粘着性層原料を共押出しで形成されても良い。
粘着性シートの厚みは1〜200μm程度が好ましく、さらに好ましくは10〜100μmであり、粘着性層の厚みは0.1〜40μm程度が好ましく、さらに好ましくは0.3〜10μmである。
粘着性シートに用いられるフィルムとしては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ナイロン、芳香族ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の各樹脂フィルム、さらには前記樹脂を2層以上積層してなる樹脂フィルム等を挙げることができる。この中で、特に好ましいのは、ポリエチレン、ポリプロピレンおよび、これらを変性したポリオレフィン系の樹脂が柔軟性の点で好ましく用いられる。
粘着性シートの支持体としては、例えば上記の平滑層を有するフィルムに用いられる支持体よりも柔軟性の高い素材を好ましく、用いることができる。
粘着性シートの支持体として、低密度で引っ張り強度が低く、伸び率が高いものが好ましい。
粘着性シートをバリアフィルムから引き剥がす際の方法としては、剥離板、剥離ロールによる剥離角度固定方法等、種々の剥離方法を用いることができる。
粘着性シートの粘着性層が感熱粘着層である場合、加熱と加圧を同時に行ってもよい。
また、粘着性層が感圧粘着層である場合、加圧を行って密着、貼合させる。
貼合における加熱および加圧方法の例としては、表面に柔軟な素材を有するヒートロールを用いて10〜100℃程度、好ましくは20〜60℃で、0.1〜100N/cmの線圧で、速度1〜200mm/秒、好ましくは5〜100mm/秒で搬送しながら行うことが好ましい。
(封止工程)
貼付工程では、有機電子素子に、保護層が除去されて得られたガスバリアフィルムを、有機電子素子とガスバリア層とを接触させて封止する。
(有機電子素子)
本発明に係る有機電子素子は、光を電気に、または電気を光に変換する機能を有する有機機能層および電極を有する素子である。
本発明の有機電子デバイスの製造方法では、上記のように有機電子素子に、ガスバリアフィルムを、有機電子素子とガスバリア層とを接触させて封止して有機電子デバイスを製造する。
有機電子デバイスは、支持体上に上記有機電子素子を有する構成を有するが、本発明に係るガスバリアフィルムは、当該支持体として用いてもよいし、有機電子素子を封止する封止部材として用いてもよい。
ガスバリアフィルムを、支持体として用いた場合の例を以下に示す。
バリアフィルムのガスバリア層上に、例えば、ITO等の透明導電性薄膜を透明電極として設ける。この場合には、ガスバリア層上に下記のように電極を直接設けることで、有機電子素子とガスバリア層とを接触させて封止する、態様となる。
例えば、バリアフィルム(支持体)上に設けられたITO透明導電膜を陽極としてこの上に多孔質半導体層を設け、さらに金属膜からなる陰極を形成して、有機電子素子である有機光電変換素子を形成し、この上に別の封止材料または当該バリアフィルムと同じ組成の封止材料を重ねて、前記バリアフィルム(支持体)と周囲を接着、素子を封じ込めることで有機光電変換素子を封止することができ、これにより外気の湿気や酸素等のガスによる素子への影響を封じることができる。
透明導電膜の形成は、真空蒸着法やスパッタリング法等を用いることにより、またインジウム、スズ等の金属アルコキシド等を用いたゾルゲル法等塗布法によっても製造できる。
また、透明導電膜の膜厚としては、0.1nm〜1000nmの範囲の透明導電膜が好ましい。
次いで、有機電子素子として、太陽電池などに用いられる、有機光電変換素子について説明する。
有機光電変換素子としては特に制限がなく、陽極と陰極と、両者に挟まれた発電層(p型半導体とn型半導体が混合された層、バルクへテロジャンクション層、i層とも言う)が少なくとも1層以上あり、光を照射すると電流を発生する素子であればよい。
有機光電変換素子の層構成(太陽電池の好ましい層構成も同様である)の好ましい具体例を以下に示す。
有機光電変換素子の層構成の好ましい具体例を以下に示す。
(i)陽極/発電層/陰極
(ii)陽極/正孔輸送層/発電層/陰極
(iii)陽極/正孔輸送層/発電層/電子輸送層/陰極
(iv)陽極/正孔輸送層/p型半導体層/発電層/n型半導体層/電子輸送層/陰極
(v)陽極/正孔輸送層/第1発電層/電子輸送層/中間電極/正孔輸送層/第2発電層/電子輸送層/陰極。
ここで、発電層は、正孔を輸送できるp型半導体材料と電子を輸送できるn型半導体材料を含有していることが必要であり、これらは実質2層でヘテロジャンクションを作製していてもよいし、1層の内部で混合された状態となっているバルクへテロジャンクションを作製してもよいが、バルクへテロジャンクション構成のほうが光電変換効率が高いため、好ましい。発電層に用いられるp型半導体材料、n型半導体材料については後述する。
有機EL素子同様、発電層を正孔輸送層、電子輸送層で挟み込むことで、正孔および電子の陽極・陰極への取り出し効率を高めることができるため、それらを有する構成((ii)、(iii))の方が好ましい。
また、発電層自体も正孔と電子の整流性(キャリア取り出しの選択性)を高めるため、(iv)のようにp型半導体材料とn型半導体材料単体からなる層で発電層を挟み込むような構成(p−i−n構成とも言う)であってもよい。
また、太陽光の利用効率を高めるため、異なる波長の太陽光をそれぞれの発電層で吸収するような、タンデム構成((v)の構成)であってもよい。
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
(有機光電変換素子の材料)
有機光電変換素子の発電層(光電変換層ともいう)の形成に用いられる材料について説明する。
(p型半導体材料)
有機光電変換素子の発電層(バルクへテロジャンクション層)として好ましく用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマー・オリゴマーが挙げられる。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、およびこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また、上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェンおよびそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第08/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロールおよびそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレンおよびそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレンおよびそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いられる。
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、且つ乾燥後は、結晶性薄膜を作製し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。
また、発電層上に電子輸送層を塗布で成膜する場合、電子輸送層溶液が発電層を溶かしてしまうという課題があるため、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料を用いてもよい。
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号明細書、および特開2008−16834号公報等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって、可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料等を挙げることができる。
(n型半導体材料)
バルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物や、そのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)、且つ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
中でも、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
(正孔輸送層・電子ブロック層)
有機光電変換素子は、バルクへテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層を、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層としては、スタルクヴイテック製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリンおよびそのドープ材料、国際公開第06/19270号パンフレット等に記載のシアン化合物、等を用いることができる。
なお、バルクへテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する電子ブロック機能が付与される。
このような正孔輸送層は電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。
また、バルクへテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を作製する前に、下層に塗布膜を作製すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
(電子輸送層・正孔ブロック層)
有機光電変換素子は、バルクへテロジャンクション層と陰極との中間には電子輸送層を作製することで、バルクへテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
また、電子輸送層としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様にバルクへテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクへテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する正孔ブロック機能が付与される。
このような電子輸送層は正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。
このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型半導体材料、および酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物およびフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。
また、バルクへテロジャンクション層に用いたn型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を作製する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
(その他の層)
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層等を挙げることができる。
(電極(第1電極))
有機機能層を挟む電極としては、有機光電変換素子の場合少なくとも一つは透明電極であることが好ましい。
透明電極は、陰極、陽極は特に限定せず、素子構成により選択することができるが、好ましくは透明電極を陽極として用いることである。
例えば、陽極として用いる場合、好ましくは380nm〜800nmの光を透過する電極である。
材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレンおよびポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて透明電極とすることもできる。
(対電極(第2電極))
対電極は導電材単独層であってもよいが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。対電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子の取り出し性能および酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
対電極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を作製させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50nm〜200nmの範囲で選ばれる。
対電極の導電材として金属材料を用いれば、対電極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
また、対電極は、金属(例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い対電極を塗布法により作製でき好ましい。
また、対電極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウムおよびアルミニウム合金、銀および銀化合物等の対電極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記透明電極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性対電極とすることができる。
(中間電極)
また、タンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記透明電極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
電極に用いられる材料としては、上記の他に、導電性繊維を用いることができる。
導電性繊維としては、金属でコーティングした有機繊維や無機繊維、導電性金属酸化物繊維、金属ナノワイヤー、炭素繊維、カーボンナノチューブ等を用いることができるが、金属ナノワイヤーが好ましい。
金属ナノワイヤーとはnmサイズの直径を有する線状構造体を意味する。
金属ナノワイヤーとしては、1つの金属ナノワイヤーで長い導電パスを作製するために、また、適度な光散乱性を発現するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、さらには3μm〜500μmが好ましく、特に3μm〜300μmであることが好ましい。併せて、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。
また、平均直径は、透明性の観点からは小さいことが好ましく、一方で、導電性の観点からは大きい方が好ましい。本発明においては、金属ナノワイヤーの平均直径として10nm〜300nmが好ましく、30nm〜200nmであることがより好ましい。併せて、直径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。
金属ナノワイヤーの金属組成としては特に制限はなく、貴金属元素や卑金属元素の1種または複数の金属から構成することができるが、貴金属(例えば、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム等)および鉄、コバルト、銅、錫からなる群に属する少なくとも1種の金属を含むことが好ましく、導電性の観点から少なくとも銀を含むことがより好ましい。
また、導電性と安定性(金属ナノワイヤーの硫化や酸化耐性、およびマイグレーション耐性)を両立するために、銀と、銀を除く貴金属に属する少なくとも1種の金属を含むことも好ましい。本発明に係る金属ナノワイヤーが2種類以上の金属元素を含む場合には、例えば、金属ナノワイヤーの表面と内部で金属組成が異なっていてもよいし、金属ナノワイヤー全体が同一の金属組成を有していてもよい。
金属ナノワイヤーの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。
例えば、Agナノワイヤーの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745等、Auナノワイヤーの製造方法としては特開2006−233252号公報等、Cuナノワイヤーの製造方法としては特開2002−266007号公報等、Coナノワイヤーの製造方法としては特開2004−149871号公報等を参考にすることができる。特に、上述した、Adv.Mater.およびChem.Mater.で報告されたAgナノワイヤーの製造方法は、水系で簡便にAgナノワイヤーを製造することができ、また銀の導電率は金属中で最大であることから、本発明に係る金属ナノワイヤーの製造方法として好ましく適用することができる。
金属ナノワイヤーが互いに接触し合うことにより3次元的な導電ネットワークを作製し、高い導電性を発現するとともに、金属ナノワイヤーが存在しない導電ネットワークの窓部を光が透過することが可能となり、さらに金属ナノワイヤーの散乱効果によって、有機発電層部からの発電を効率的に行うことが可能となる。第1電極において金属ナノワイヤーを有機発電層部に近い側に設置すれば、この散乱効果がより有効に利用できるのでより好ましい実施形態である。
(光学機能層)
有機光電変換素子は、例えば太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止層、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層等を設けてもよい。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10μm〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また、光拡散層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
(成膜方法・表面処理方法)
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層、および輸送層・電極の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、バルクへテロジャンクション層の作製方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。
このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また、塗布法は製造速度にも優れている。
この際に使用する塗布方法に制限はないが、例えば、スピンコート法、溶液からのキャスト法、ディップコート法、ブレードコート法、ワイヤバーコート法、グラビアコート法、スプレーコート法等が挙げられる。さらには、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法でパターニングすることもできる。
塗布後は残留溶媒および水分、ガスの除去、および半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために、加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクへテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
発電層(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで作製することが可能となる。
(パターニング)
電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等は、パターニングして使用されるが、パターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
バルクへテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。
電極材料等の不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチングまたはリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に作製したパターンを転写することによってパターンを作製してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例1
《ガスバリアフィルムの作製》
以下に記載のように、まず、基材を作製し、次いで、基材上にガスバリア層を作製する工程を経て、ガスバリアフィルムFを作製した。
《基材の作製》
熱可塑性樹脂支持体である、両面に易接着加工された125μm厚みのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、極低熱収PET Q83)を用い、下記に示すように、片面にブリードアウト防止層、反対面に平滑層を作製したものを基材として用いた。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記支持体の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7535を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、硬化条件;1.0J/cm空気下、高圧水銀ランプ使用、乾燥条件;80℃、3分で硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
(平滑層の形成)
続けて上記支持体の反対面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材OPSTAR Z7501を塗布、乾燥後の膜厚が4μmになるようにワイヤーバーで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気雰囲気下、高圧水銀ランプ使用、硬化条件;1.0J/cm硬化を行い、平滑層を形成した。
得られた平滑層の、JIS B 0601で規定される表面粗さで、最大断面高さRt(p)は16nmであった。
表面粗さは、AFM(原子間力顕微鏡)で、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を多数回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さである。
《バリア層の作製》
上記で得られた基材の平滑層上に、下記の工程(a)、(b)によりガスバリア層を作製した。この試料をガスバリアフィルムFとした。
工程(a):パーヒドロポリシラザン層の作製
上記平滑層、ブリードアウト防止層を設けた基材を、その平滑層面の上に下記に示すパーヒドロポリシラザンを含有する塗布液を塗布して、パーヒドロポリシラザン層(パーヒドロポリシラザンを含有する層ともいう)を作製した。
(パーヒドロポリシラザンを含有する塗布液)
パーヒドロポリシラザンを含有する塗布液は、20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN120−20)を用い、この溶液をジブチルエーテルで希釈することによりPHPS濃度を調整してロールコーターにより塗布したのち、露点−5℃の乾燥空気で80℃3分で乾燥し、乾燥後膜厚170nmのパーヒドロポリシラザン層を作製した。この際、ポリシラザン含有層は完全に固形化していなかった。
工程(b):パーヒドロポリシラザン層の改質(酸化)によるバリア層の作製
真空紫外線(VUV)照射処理条件
MDエキシマ社製のステージ可動型キセノンエキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200(波長172nm)を用い、ランプと上記試料の照射距離を1mmとなるように試料を固定し、試料温度が85℃となるように保ちながら、ステージの移動速度を10mm/秒の速さで試料を往復搬送させて、合計7往復照射したのち、試料を取り出した。
(酸素濃度の調整)
真空紫外線(VUV)照射時の酸素濃度は、真空紫外線(VUV)照射庫内に導入する窒素ガス、および酸素ガスの流量をフローメーターにより測定し、照射庫内に導入するガスの窒素ガス/酸素ガス流量比により酸素濃度が0.2体積%〜から0.4体積%の範囲になるように調整した。
ガスバリアフィルム試料1(比較例)の作製
ガスバリアフィルムの巻き取り
ガスバリアフィルムFを10mの長さを半径1.5インチのプラスチック製のコアに、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻きだした。
この試料の巻き芯側から1mの位置をサンプリングして、ガスバリアフィルム試料1を得た。
ガスバリアフィルム試料2(比較例)の作製
(保護フィルム貼合試料の作製)
バリアフィルムFと、東セロ株式会社製ピュアテクトLA(粘着力1.0N/25mm)粘着性シートを、下記条件で貼り合わせた。
貼合環境温度は23℃で、貼合ロール温度は25℃で行った。ラミネートロールは、直径3インチの一対のクロームめっきの金属ロールと、金属芯にゴム硬度60°厚み6mmのゴムを巻いた直径3インチのローラーからなり、粘着性シート側がゴムロールになるように配置した。貼合時の線圧として、10N/cmで貼り合わせてガスバリアフィルム試料2を作製した。
ガスバリアフィルム試料3(比較例)の作製
保護層Aの形成
ガスバリアフィルムFに保護層塗布液として、前記ブリードアウト防止層と同一塗布液を乾燥後の厚みが1μmとなるように塗布、乾燥、硬化して積層した以外は、ブリードアウト防止層の形成方法と同様にして、保護層Aを形成した。
ガスバリアフィルムの巻き取り
上記保護層まで形成されたガスバリアフィルムを10mの長さを半径1.5インチ、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻きだした。
この試料の巻き芯側から1mの位置をサンプリングして、下記工程で、保護層を1質量%の水酸化ナトリウムおよび5質量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの水溶液浴中で超音波洗浄を5分行い、純水の流水で表裏面を十分にすすいだ後、0.1気圧に減圧した状態で100℃、12時間乾燥して、ガスバリアフィルム試料3を得た。
超音波洗浄:水浴を50℃に加熱しながら、超音波洗浄装置(シャープ(株)製、商品名:SILENTSONIC UT−204、39kHz、200W)を用いて超音波振動を与えた。以下の試料も同条件である。
ガスバリアフィルム試料4(本発明)の作製
保護層Bの形成
バリアフィルムFに下記保護層塗布液を用いて保護層Bを形成した。
は、乾燥後の膜厚が1μmになるように調整し、乾燥条件は、90℃で2分乾燥を行った。
保護層塗布液
下記の通り調製した無機質層状化合物分散液(1) 15g
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA105) 0.3g
アニオン変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKM118) 0.3g
水分散ポリエステル樹脂 東洋紡株式会社製 バイロナールMD−1400(固形分濃度15質量%) 2.0g
ノニオン系界面活性剤(商品名:EMALEX710、日本エマルジョン(株)製)
0.1g
イオン交換水 20g
(無機質層状化合物分散液(1)の調製)
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
バリアフィルムの巻き取り
保護層まで形成されたバリアフィルムを10mの長さを半径1.5インチ、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻きだした。
この試の巻き芯側から1mの位置をサンプリングして、下記工程で、保護層を純水浴中で超音波洗浄を5分行い、保護層を除去し、純水の流水で表裏面を十分にすすいだ後、0.1気圧に減圧した状態で100℃、12時間乾燥して、ガスバリアフィルム試料4を得た。
ガスバリアフィルム試料5(本発明)の作製
保護層Cの形成
バリアフィルムFに下記保護層塗布液を用いて保護層Cを形成した。
保護層は、乾燥後の膜厚が1μmになるように調整し、乾燥条件は、90℃で2分乾燥を行った。
保護層塗布液
ガスバリアフィルム試料4で用いた無機質層状化合物分散液(1) 15g
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA105) 0.3g
アニオン変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKM118) 0.3g
水分散ポリエステル樹脂 東洋紡株式会社製 バイロナールMD−1200(固形分濃度34質量%) 1.0g
ノニオン系界面活性剤(商品名:EMALEX710、日本エマルジョン(株)製)
0.1g
イオン交換水 20g
ガスバリアフィルムの巻き取り
上記保護層まで形成されたガスバリアフィルムを10mの長さを半径1.5インチ、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻きだした。
この試料の巻き芯側から1mの位置をサンプリングして、下記工程で、保護層を純水浴中で超音波洗浄を5分行い、保護層を除去し、純水の流水で表裏面を十分にすすいだ後、0.1気圧に減圧した状態で100℃、12時間乾燥して、ガスバリアフィルム試料5を得た。
ガスバリアフィルム試料6(本発明)の作製
保護層Dの形成
バリアフィルムFに下記保護層塗布液を用いて保護層Dを形成した。
保護層は、乾燥後の膜厚が1μmになるように調整し、乾燥条件は、90℃で2分乾燥を行った。
保護層塗布液
試料4で用いた無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA105) 0.03g
アニオン変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKM118)(ケン化度95.5〜98.5モル%) 0.03g
ノニオン系界面活性剤(商品名:EMALEX710、日本エマルジョン(株)製)
0.01g
イオン交換水 6.0g
バリアフィルムの巻き取り
上記保護層まで形成されたバリアフィルムを10mの長さを半径1.5インチ、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻きだした。
この試料の巻き芯側から1mの位置をサンプリングして、下記工程で、保護層を純水浴中で超音波洗浄を5分行い、保護層を除去し、純水の流水で表裏面を十分にすすいだ後、0.1気圧に減圧した状態で100℃、12時間乾燥して、ガスバリアフィルム試料6を得た。
ガスバリアフィルム試料7(本発明)の作製
試料5におけるバリアフィルムFに保護層Cを形成した試料を、10mの長さを半径1.5インチ、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻きだした後、巻き芯側から1mの位置をサンプリングして、株式会社スミロン製クリーニングテープEC−410(粘着力2.5N/25mm)を用いて、直径50mmのゴムローラーで皴や気泡が入らないようにして全面貼り合わせた。
環境温度:23℃ ゴムローラー:ゴム硬度60°、ゴム厚み6mm、線圧:10N/cm
貼合後1分経過した試料のクリーニングテープを180度剥離で、保護層Cを全面剥離した。剥離速度は、10mm/秒であった。
ガスバリアフィルム試料8(本発明)の作製
バリアフィルムFバリア層の代わりに、平滑層上に下記の工程により密着層/セラミック層/プロテクト層の3層構成からなるバリア層を作製した。この試料をバリアフィルムGとした。
平滑層上に密着層/セラミック層/プロテクト層の順に、以下に示す条件で、それぞれ形成した。各膜厚は、密着層が50nmでセラミック層が30nm、プロテクト層が400nmである。また製膜時の支持体保持温度は、120℃とした。
ロール電極型放電処理装置を用いて処理を実施。ロール電極に対向する棒状電極を複数個フィルムの搬送方向に対し平行に設置し、各電極部に原料および電力を投入し以下のように薄膜を形成した。
ここで誘電体は対向する電極共に、セラミック溶射加工のものに片肉で1mm被覆した。また、被覆後の電極間隙は、1mmに設定した。また誘電体を被覆した金属母材は、冷却水による冷却機能を有するステンレス製ジャケット仕様であり、放電中は冷却水による電極温度コントロールを行いながら実施した。ここで使用する電源は、応用電機製高周波電源(80kHz)、パール工業製高周波電源(13.56MHz)を使用した。
〈セラミック層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:酸素ガスを全ガスに対し5%
反応ガス2:TEOSを全ガスに対し0.1%
低周波側電源電力:80kHzを10W/cm
電源電力:13.56MHzを0.8〜10W/cmで変化
〈密着層〉
放電ガス:Nガス
反応ガス1:水素ガスを全ガスに対し1%
反応ガス2:TEOS(テトラエトキシシラン)を全ガスに対し0.5%
低周波側電源電力:80kHzを10W/cm
高周波側電源電力:13.56MHzを5W/cm
保護層の形成
バリアフィルムGに試料5と同一の保護層塗布液を用いて保護層を形成した。
保護層は、乾燥後の膜厚が1μmになるように調整し、乾燥条件は、90℃で2分乾燥を行った。
バリアフィルムの巻き取り
上記保護層まで形成されたバリアフィルムを10mの長さを半径1.5インチ、張力20N/mでロール状に巻き取り、再び巻きだした。
この試料の巻き芯側から1mの位置をサンプリングして、下記工程で、保護層を純水浴中で超音波洗浄を5分行い、保護層を除去し、純水の流水で表裏面を十分にすすいだ後、0.1気圧に減圧した状態で100℃、12時間乾燥して、ガスバリアフィルム試料8を得た。
ガスバリアフィルム試料9(本発明)の作製
試料5の保護層Cの塗布液における、無機質層状化合物分散液を添加しない下記保護層塗布液に変更した以外は試料5と同様にしてガスバリアフィルム試料9を作製した。
保護層塗布液
ポリビニルアルコール(クラレポバールPVA105) 0.5g
アニオン変性ポリビニルアルコール(クラレポバールKM118) 0.4g
水分散ポリエステル樹脂 東洋紡株式会社製 バイロナールMD−1200(固形分濃度34質量%) 1.3g
ノニオン系界面活性剤(商品名:EMALEX710、日本エマルジョン(株)製)
0.1g
イオン交換水 20g
《バリアフィルム作製直後の水蒸気透過率の測定および評価》
バリアフィルム試料1〜9の各々について、以下に示すように水蒸気透過率を測定し、下記に示すように5段階のランク評価を行ない、ガスバリア性能を評価した。
(水蒸気透過率の測定装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価用セルの作製)
真空蒸着装置(日本電子製真空蒸着装置 JEE−400)を用い、透明導電膜を付ける前のバリアフィルム1〜13の各々蒸着させたい部分(12mm×12mmを9箇所)以外をマスクし、金属カルシウムを蒸着させた。
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムをもう一つの金属蒸着源から蒸着させた。アルミニウム封止後、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下で、厚さ0.2mmの石英ガラスに封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス製)を介してアルミニウム封止側と対面させ、紫外線を照射することで、評価用セルを作製した。
得られた両面を封止した試料を60℃、90%RHの高温高湿下で保存し、特開2005−283561号公報記載の方法に基づき、金属カルシウムの腐蝕量からセル内に透過した水分量を計算した。
(ランク評価)
5:5×10−4g/m/day未満
4:5×10−4g/m/day以上、5×10−3g/m/day未満
3:5×10−3g/m/day以上、5×10−2g/m/day未満
2:5×10−2g/m/day以上、5×10−1g/m/day未満
1:5×10−1g/m/day以上
ランク評価において、実用的な範囲は、ランク3以上である。
(保護層付着性の試験)
JIS K5600−5−6の手順に基づき、縦横カット間隔3mmで6×6マスの碁盤目状に切れ込みを入れた試料に、セロハンテープを貼り付け、指先で十分に密着するようにこすり付けたて、3分静置したのち、60度の角度で0.5秒の速さで引き剥がした後の試験表面を観察した。
分類
0:カットのふちが滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの受差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、および/または交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を超えるが、15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大はがれを生じており、および/または目のいろいろな部分が、部分的または全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが、35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って、部分的または全面的に大はがれを生じており、および/または数か所の目が部分的または全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない。
5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。全格子の目がはがれる場合も含む。
上記の評価の結果を、表1に示す。
実施例2
《有機光電変換素子1〜9の作製》
実施例1で得られた、作製直後(経時保存処理前を意味する)のガスバリアフィルム試料1〜9の各々を用いて、インジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を150nm堆積したもの(シート抵抗10Ω/□)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて2mm幅にパターニングし第1の電極を形成した。尚、ロール巻取り前のバリアフィルムFを用いたいものを、下記の評価を行う際の基準用として用いた。
パターン形成した第1の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を膜厚が30nmになるように塗布乾燥した後、150℃で30分間熱処理させ正孔輸送層を製膜した。
これ以降は、基板を窒素チャンバー中に持ち込み、窒素雰囲気下で作製した。
まず、窒素雰囲気下で上記基板を150℃で10分間加熱処理した。次に、クロロベンゼンにP3HT(プレクトロニクス社製:レジオレギュラーポリ−3−ヘキシルチオフェン)とPCBM(フロンティアカーボン社製:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)を3.0質量%になるように1:0.8で混合した液を調製し、フィルタでろ過しながら膜厚が100nmになるように塗布を行い、室温で放置して乾燥させた。続けて、150℃で15分間加熱処理を行い、光電変換層を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動し、1×10−4Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度0.01nm/秒でフッ化リチウムを0.6nm積層し、さらに続けて、2mm幅のシャドウマスクを通して(受光部が2×2mmに成るように直行させて蒸着)、蒸着速度0.2nm/秒でAlメタルを100nm積層することで第2の電極を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動し、封止用キャップとUV硬化樹脂を用いて下記にように封止処理を行って、受光部が2×2mmサイズの有機光電変換素子1〜9を各々作製した。
(有機光電変換素子の封止)
窒素ガス(不活性ガス)によりパージされた環境下で、バリアフィルム1〜9の各々二枚を用い、バリア層を設けた面に、シール材としてエポキシ系光硬化型接着剤を塗布した。
上述した方法によって得られた封止前の有機光電変換素子1〜9を、上記接着剤を塗布した封止用の二枚のバリアフィルム1〜9の接着剤塗布面の間に挟み込んで密着させた後、片側の基板側からUV光を照射して硬化させ、封止処理後の有機光電変換素子1〜9とした。
得られた有機光電変換素子を用い、太陽電池を作製し下記の評価1および評価2を行い耐久性の評価を行った。
《太陽電池の作製およびエネルギー変換効率の評価1》
上記で得られた有機光電変換素子1〜9の評価は、各々の素子を用いて、太陽電池1〜9を各々作製し、エネルギー変換効率を求め、素子としての性能低下の度合いを比較した。性能低下の度合いの指標として、ロール巻取り工程を経ていないバリアフィルムで作製した太陽電池0のエネルギー変換効率を100%として、太陽電池1〜9のエネルギー変換効率の割合で比較した。(ロール巻取り前のバリアフィルムFを用いて作製したものを基準とした。)
(5段階ランク評価)
ロール巻取り前後の変換効率の比
5:98%以上
4:90%以上、98%未満
3:80%以上、90%未満
2:50%以上、80%未満
1:50%未満
尚、実用上に耐えうるのはランク3以上である。得られた結果を表に示す。
《太陽電池の作製およびエネルギー変換効率の評価2》
上記で得られた有機光電変換素子1〜9の評価は、各々の素子を用いて、太陽電池1〜9を各々作製し、エネルギー変換効率を求め素子としての耐久性を評価した。
尚、太陽電池1〜9の作製は、有機光電変換素子1〜9の各々について、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、IV特性を評価することで、短絡電流密度Jsc(mA/cm)、開放電圧Voc(V)およびフィルファクターFF(%)を、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、下記式1に従って求めたエネルギー変換効率PCE(%)の4点平均値を見積もった。
(式1)
PCE(%)=〔Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF(%)〕/100mW/cm
得られた太陽電池1〜9の初期電池特性としての変換効率を測定し、次いで、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で1000時間保存した強制劣化試験後の変換効率残存率により5段階のランク評価を行った。
(5段階ランク評価)
強制劣化試験後の変換効率/初期変換効率の比
5:90%以上
4:70%以上、90%未満
3:40%以上、70%未満
2:20%以上、40%未満
1:20%未満
尚、実用上に耐えうるのはランク3以上である。
得られた結果を表1に示す。
(生産工程適性の評価)
バリアフィルム試料1〜9の各々について、以下に示すように巻き芯側から1mの位置をサンプリングしていたものと比較するため、巻き外終端部から0.5mの位置をサンプリングした試料との水蒸気透過率の比率を比較した。
水蒸気透過率を測定し、下記に示すように5段階のランク評価を行い、ガスバリア性を評価し、生産工程適性を評価した。ランクが高いものは、ガスバリアフィルム前駆体を巻き取り、巻回した状態において、巻き取り芯に近い方と芯に遠い方とで、性能の差が少なく、一時的な保存を容易に行うことが可能である。
試料No.1〜9で用いたバリアフィルムの水蒸気透過率比率:
巻き芯側から1mの位置をサンプリング/巻き外終端部から0.5mの位置をサンプリング
5:1.5倍未満
4:1.5倍以上3倍未満
3:3倍以上10倍未満
2:10倍以上50倍未満
1:50倍以上
ランクの高いものは、ロールの巻き心から巻き外までの品質に差がないことを表す。結果を表1に示す。
Figure 2011222212
表1から、本発明の製造方法は、生産工程適性が高く、高いガスバリア性能を有し耐久性に優れる有機電子デバイスを与えることが分かる。

Claims (8)

  1. 有機電子素子と、基材上にガスバリア層を有するガスバリアフィルムとを有する有機電子デバイスを製造する、有機電子デバイスの製造方法であって、
    該基材上に、該ガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程、
    該ガスバリア層上に、保護層用塗布液を用いて塗布により該保護層を形成し、ガスバリアフィルム前駆体を形成するガスバリアフィルム前駆体形成工程、
    該ガスバリアフィルム前駆体を、該ガスバリアフィルム前駆体の保護層側の面と、該保護層側の面と反対の面とが接触する状態にして積層する積層工程、
    該ガスバリアフィルム前駆体から該保護層を除去する、保護層除去工程、
    および該有機電子素子に該ガスバリアフィルムを、該有機電子素子と該ガスバリア層とを接触させて封止する、封止工程、
    を有することを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
  2. 前記ガスバリアフィルム前駆体における前記保護層の、前記ガスバリア層に対する、JIS K5600−5−6のクロスカット法に基づく付着性が、分類4または5であることを特徴とする請求項1に記載の有機電子デバイスの製造方法。
  3. 前記保護層が、水または有機溶媒に可溶である化合物を含有し、前記除去が水または有機溶媒を含有する溶液により行われることを特徴とする請求項1または2に記載の有機電子デバイスの製造方法。
  4. 前記ガスバリア層形成工程が、ポリシラザンを含有する塗布液を塗布して塗膜を作製する工程、該塗膜を乾燥する工程および乾燥された塗膜を改質する改質工程を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機電子デバイスの製造方法。
  5. 改質工程が、真空紫外光を照射する紫外光照射工程を含むことを特徴とする請求項4に記載の有機電子デバイスの製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の有機電子デバイスの製造方法によって製造されたことを特徴とする有機電子デバイス。
  7. 前記有機電子デバイスが、太陽電池であることを特徴とする請求項6に記載の有機電子デバイス。
  8. 請求項1から5いずれか1項に記載の有機電子デバイスの製造方法に用いられるガスバリアフィルム前駆体であって、基材上にガスバリア層を有し、該ガスバリア層上に、塗布により形成された保護層を有することを特徴とするガスバリアフィルム前駆体。
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