JP2011219303A - 複合メソポーラスシリカ粒子及びこれを用いた物質の揮散方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】メソポーラスシリカ粒子(A)と、2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)とを含有し、前記組成物(B)の80〜100質量%を前記メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する複合メソポーラスシリカ粒子。該複合メソポーラスシリカ粒子から前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を揮散させることを含む、機能性物質を均一に揮散させる方法。
【選択図】なし
Description
メソポーラスシリカ粒子(A)としては、ヘキサゴナル配列のメソポーラス(メソ細孔)構造を有する粒子が挙げられる。具体的には、メソポーラスシリカ粒子(A)としては、粉末X線回折測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示し、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さない粒子が挙げられる。粉末X線回折(XRD)測定において、結晶格子面間隔(d)が1〜10nmの範囲に相当する回折角(2θ)に1本以上のピークを示すことは、このシリカ粒子がメソ領域に周期性のある物質であることを意味する。また、結晶格子面間隔(d)が1nm未満の範囲に相当する回折角(2θ)にピークを示さないことは、ゼオライトなどの結晶性化合物と異なるものであることを意味する。本発明におけるメソポーラスシリカ粒子(A)としては、2種類以上の機能性物質の均一な揮散及び該物質のメソポーラスシリカ粒子(A)内での残存性の向上の観点から、中空メソポーラスシリカ及び中実メソポーラスシリカが好ましく、中空メソポーラスシリカがより好ましい。
本明細書において、本発明におけるメソポーラスシリカ粒子(A)のメソ細孔構造の平均細孔径は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、1〜10nmが好ましく、1〜5nmがより好ましく、1〜2nmがさらに好ましく、1〜1.5nmがさらにより好ましい。メソ細孔の平均細孔径は、窒素吸着測定を行い、窒素吸着等温線からBJH法により求めることができ、具体的には実施例に記載の方法で測定できる。また、メソポーラスシリカ粒子(A)は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、メソ細孔径が揃っていることが好ましく、メソ細孔の好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上が平均細孔径±30%以内に入ることが好ましい。なお、メソ細孔構造を有する外殻部の構造は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することができ、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。また、TEM観察により、細孔径及び細孔規則性、並びに、中空メソポーラスシリカ粒子の場合には外殻部から内部への細孔の繋がり具合を確認することができる。
メソポーラスシリカ粒子(A)のBET比表面積は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、100〜1500m2/gが好ましく、より好ましくは200〜1500m2/g、さらに好ましくは500〜1000m2/gである。BET比表面積は、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。
メソポーラスシリカ粒子(A)の平均一次粒子径は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、好ましくは0.02〜10μm、より好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。本明細書において、メソポーラスシリカ粒子(A)の平均一次粒子径は、TEMを用いて得られる数平均粒子径であって、具体的には、実施例に記載の方法で測定できる。不定形のメソポーラスシリカ粒子の場合は、TEM像において円相当径として平均一次粒子径を算出できる。メソポーラスシリカ粒子(A)は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、揃った粒子径の粒子群から構成されていることが好ましい。具体的には、メソポーラスシリカ粒子(A)は、同様の観点から、好ましくは一次粒子全体の80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上が平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有していることが好ましい。
メソポーラスシリカ粒子(A)の形状は、特に制限されず、不定形、球状等でもよく、それらの混合物でもよいが、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、球状が好ましい。特に、メソ細孔構造の外殻部を持ち内部が中空の球状粒子である中空メソポーラスシリカ粒子(A−1)(以下、「中空シリカ粒子(A−1)」ともいう)、及び、内部が中空でなくその中心部から放射状にメソ細孔が配列している球状粒子である中実メソポーラスシリカ粒子(A−2)(以下、「中実シリカ粒子(A−2)」ともいう)がより好ましく、組成物(B)の保持量を高める観点から、中空シリカ粒子(A−1)がさらに好ましい。
中空シリカ粒子(A−1)の外殻部(メソポーラスシリカ部)の平均厚みは、複合粒子が担体としての強度を維持できる範囲で薄い方が好ましい。また、中空シリカ粒子(A−1)の平均径は、内包物を多く保持する観点から大きい方が好ましい。これらの観点から、外殻部の平均厚みは、好ましくは10〜800nm、より好ましくは10〜500nm、さらに好ましくは20〜400nm、さらに好ましくは100〜300nmである。中空部の平均径は、同様の観点から、好ましくは10〜8000nm、より好ましくは10〜5000nm、さらに好ましくは100〜1000nm、特に好ましくは200〜800nmである。また、外殻部の平均厚みと平均粒子径の比(外殻部厚み/平均粒子径)は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、好ましくは0.001〜0.4、より好ましくは0.01〜0.35、さらに好ましくは0.1〜0.3である。さらに、中空部の平均径と外殻部の平均厚みとの比(中空部平均径/外殻部厚み)は、同様の観点から、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜10である。外殻部の平均厚み、及び、中空部の平均径は、TEMの観察により測定でき、具体的は後述する実施例に記載のように測定できる。
本明細書において、組成物(B)に含まれる「2種類以上の機能性物質」は、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子から制御放出される物質をいう。したがって、「2種類以上の機能性物質」は、揮発性であることが好ましい。組成物(B)は「2種類以上の機能性物質」そのものであってもよく、その他の溶媒等を含んでもよい。
香料の具体例としては、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、エステル類、カーボネート類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、エーテル類、ニトリル類、カルボン酸類、ラクトン類、及び他の天然精油や天然抽出物から選ばれる1種以上が挙げられ、アルコール類がより好ましい。
防虫剤の具体例としては、ゲラニオール、ナフタリン、パラジクロロベンゼン等が挙げられ、ゲラニオールが好ましい。
保湿剤としては、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、γ−リノレン酸、コラーゲン、ヒアルロン酸ナトリウム、海藻エキス、ヘチマエキス、デュークエキス等が挙げられ、フェニルエチルアルコール、シトロネロール、ゲラニオールがより好ましい。
消毒殺菌剤の具体例としては、ホルムアルデヒド、ジ(オクチルアミノエチル)グリシン塩酸塩、塩素化イソシアヌール酸、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヒキシジン、2,2‘−メチレンビス−3,4,6−トリクロルフェノール、フェノール、クレゾール、トリクロサン等が挙げられる。
殺菌剤(医薬用途)の具体例としては、ヨードキチン、ポビドンヨード、次亜塩素酸ナトリウム、クロル石灰、グルコン酸クロルヘキシジン、アクリノール、エタノール、イソプロパノール、過酸化水素水、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。
防カビ剤の具体例としては、ゲラニオール、ジヒドロメチルアキサチンカルボキサニリドジオキシド、α−ブロムシンナムアルデヒド、レゾルシノール、ペンタクロルフェニルラウレート等が挙げられ、ゲラニオールが好ましい。防腐剤の具体例としては、安息香酸、ジフェニール、モノクロルナフタリン等が挙げられる。
医薬剤の具体例としては、ピロカルピン、スコポラミン、ニトログリセリン、酢酸リュープロレイン、テオドール、塩酸アンブロキソール等が挙げられる。
肥料の具体例としては、ウレアホルム、イソブチリデン二尿素、クロトニリデン二尿素、ウレアズィー、グリコールウリル、グアニル尿素、アキサミド等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、オキシベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、次ヒドロキシジメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリン、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−tert−4‘−メトキシジベンゾイルメタン等が挙げられる。
美白剤としては、ビタミンC、ビタミンC誘導体、コウジ酸、アルブチン等が挙げられる。
食品添加剤の具体例としては、アルギン酸ナトリウム、カゼインナトリウム、ビタミンA、ビタミンE、グルタミン酸ナトリウム、グリシン、酢酸、乳酸、クエン酸ナトリウム、グリセリン、β−カロテン、塩化カリウム、炭酸カルシウム、ヘキサン、カンゾウ抽出物、ステビア抽出物、オレンジ色素、カラメル、ニンジンカロテン、エゴノキ抽出物、しらこタンパク抽出物、アラビアガム、グァーガム、ペクチン、ペッパー抽出物、チクル、エレミ樹脂、カルナルバロウ、カフェイン、キハダ抽出物、アミラーゼ、プロテアーゼ、パパイン、コメヌカロウ、ミツロウ、サトウキビロウ、フィチン酸、イタコン酸、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、植物レシチン、ダイズサポニン等が挙げられる。
本発明の複合メソポーラスシリカ粒子は、メソポーラスシリカ粒子(A)に組成物(B)が保持される構成である。2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、組成物(B)の80〜100質量%をメソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する。本発明の複合メソポーラスシリカ粒子の組成物(B)の全保持量のうちのメソポーラスシリカ粒子(A)内部に保持された香料量の割合は、2種類以上の機能性物質を均一に揮散させる観点から、好ましくは85〜100質量%であり、より好ましくは90〜100質量%であり、さらに好ましくは実質的に100質量であり、100質量%がさらにより好ましい。ここで、メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に存在する組成物(B)の割合が100重量%であるとは、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子において、メソポーラスシリカ粒子(A)の外表面に組成物(B)が存在しないことを意味する。また、本発明の複合メソポーラスシリカ粒子の組成物(B)の全保持量のうちのメソポーラスシリカ粒子(A)内部に保持された香料量の割合は、後述する実施例のように測定及び算出できる。
本発明の複合メソポーラスシリカ粒子は、例えば、メソポーラスシリカ粒子(A)に組成物(B)を含浸させること(含浸処理)、及び、含浸後に前記メソポーラスシリカ粒子(A)の外表面に付着した組成物(B)を除去すること(除去処理)を含む製造方法により得られる。以下、中空シリカ粒子(A−1)に組成物(B)(例えば、調合香料)を含浸させる場合を例にして説明する。
組成物(B)の含浸処理は、組成物(B)が前記メソポーラスシリカ粒子(A)に含浸できる方法であれば特に制限はなく、公知の真空含浸法等を採用することができる。例えば、容器内で組成物(B)と中空シリカ粒子(A−1)とを混合し、該容器内を組成物(B)に含まれる全ての機能性物質の蒸気圧より高く、用いる中空シリカ粒子(A−1)のメソ細孔中における窒素の蒸気圧より小さい条件で含浸することが好ましい。この場合のメソ細孔中における窒素の蒸気圧は窒素の吸着等温線から求められる。この条件で中空シリカ粒子(A−1)の細孔内を脱気して組成物(B)を強制含浸せしめ、例えば1分間〜10時間、好ましくは1分間〜1時間静置した後に容器内の圧力を一旦大気圧に戻し、さらに1分間〜10時間、好ましくは1時間〜10時間静置することで、組成物(B)を中空シリカ粒子(A−1)のメソ細孔内を通して中空内部に導入できる。なお、含浸の程度は、中空シリカ粒子(A−1)の粒子(中空部、メソ細孔)内全てに組成物(B)が包含されるまで行うことが好ましい。常温常圧下で固体である機能性物質の場合、組成物(B)の融点以上の温度で加熱融解し液体状態にして含浸させる方法が好ましい。また、固体の組成物(B)を溶媒に溶解した溶液を含浸させても良い。
含浸処理後の複合メソポーラスシリカ粒子には、粒子の外表面に組成物(B)が保持された状態である。本発明の複合メソポーラスシリカ粒子とするためには、外表面の組成物(B)を除去する必要がある。外表面の組成物(B)を除去する方法としては、例えば、外表面の組成物(B)を揮散させる方法、又は、水、有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒中で含浸処理後の複合メソポーラスシリカ粒子を撹拌して除去する方法が挙げられる。
日本電子株式会社製の透過型電子顕微鏡(TEM)JEM−2100を用いて加速電圧160kVで測定を行い、それぞれ20〜30個の粒子が含まれる5視野中の全粒子の直径および外殻厚みを写真上で実測する。この操作を、視野を5回変えて行う。得られたデータから平均粒子径及びその分布の程度、平均中空部径、並びに外殻部の平均厚みを求めた。透過型電子顕微鏡の倍率の目安は1万〜10万倍であるが、シリカ粒子の大きさによって適宜調節される。観察に用いた試料は、高分解能用カーボン支持膜付きCuメッシュ(200−Aメッシュ、応研商事株式会社製)に付着させ、余分な試料をブローで除去して作製した。
株式会社島津製作所製、比表面積・細孔分布測定装置、商品名「ASAP2020」を使用し、液体窒素を用いて多点法でBET比表面積を測定し、パラメータCが正になる範囲で値を導出した。窒素吸着等温線からBJH法を採用し、ピークトップを平均細孔径とした。前処理は250℃で5時間行った。外殻部の空孔率は、はじめにt−プロットの切片から細孔容積を算出し、その細孔容積の値とシリカ密度(2.2cm3/g)から以下のように算出した。
空孔率(%)=細孔容積/{(1/2.2)+細孔容積}×100
理学電機工業株式会社製、粉末X線回折装置、商品名「RINT2500VPC」を用いて、X線源:Cu−kα、管電圧:40mA、管電流:40kV、サンプリング幅:0.02°、発散スリット:1/2°、発散スリット縦:1.2mm、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mmの条件で粉末X線回折測定を行った。走査範囲は回折角(2θ)1〜20°、走査速度は4.0°/分で連続スキャン法を用いた。なお、試料は、粉砕した後、アルミニウム板に詰めて測定した。
複合メソポーラスシリカ粒子には、シリカ(α)と粒子内に保持された香料(β)と粒子外に保持された香料(γ)が存在すると仮定する。複合メソポーラスシリカ粒子(α+β+γ)0.03gを5mLのヘキサン/エタノール混合溶媒(体積比率1:1)に分散させ、1時間撹拌することにより粒子内の香料を抽出した。撹拌終了後、内部標準としてヘキサデカン0.01gを加え、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、材質:セルロールアセテート、孔径:0.2μm)でろ過した。ろ液中の香料量をアジレント・テクノロジー株式会社製、ガスクロマトグラフィー、HP6890を用いて算出し、複合メソポーラスシリカ粒子に担持された香料量(β+γ)を算出した。この値を用いて、複合メソポーラスシリカ粒子の香料保持量を以下のように算出した。
香料保持量(質量%)=(複合メソポーラスシリカ粒子内に担持された香料量(β+γ)(g)/複合メソポーラスシリカ粒子量(α+β+γ))(g)×100
また、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)に対する香料保持割合を求めた。まず、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)を求めた。
複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)(g)= 複合メソポーラスシリカ粒子の質量(α+β+γ)(g)― 複合メソポーラスシリカ粒子内に担持された香料量(β+γ)(g)
この値を用いて、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)に対する香料保持割合を以下の式より求めた。
複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量に対する香料保持割合(質量%)=(複合メソポーラスシリカ粒子内に担持された香料量(β+γ)(g)/複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α)(g)
複合メソポーラスシリカ粒子の製造に用いるメソポーラスシリカ粒子の構造より求められる複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量をα´とし、その粒子内部のみに保持される香料量をβ´とする。複合メソポーラスシリカ粒子の製造に用いるメソポーラスシリカ粒子の構造より求めた複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量(α´)に対する粒子内香料割合(以下、計算値とする。β´/α´)を算出し、その計算値と上記(4)により測定した香料保持割合(以下、実測値とする。(β+γ)/α)を用いて以下の式により、粒子内部の香料量の割合を算出した。
粒子内部の香料量の割合(%)=(計算値(β´/α´)/実測値((β+γ)/α)×100
粒子内部の香料量の割合が100%の場合(γ=0)、保持された香料全量が粒子内に保持されているとした。粒子内部の香料量の割合が100%を超えた場合は、全ての香料がメソポーラスシリカ粒子内に保持されており、メソポーラスシリカ粒子内の一部にのみ香料が保持された状態のことを示している。なお、粒子内部の香料量の割合が100%を超えた場合には、粒子内部の香料量の割合をすべて100%とした。
(i)中空メソポーラスシリカ粒子の粒子径と中空部径から、粒子1個あたりの体積と中空部の体積を求め、両者の差から外殻部の体積を算出した。その値と別途測定した外殻部の空孔率から、外殻部の細孔体積を算出した。さらに中空部の体積と外殻部の細孔体積から、粒子1個あたりの空洞体積を算出した。
粒子全体の体積(nm3)=4/3×(粒子径/2)3×π
中空部の体積(nm3)=4/3×(中空部径/2)3×π
外殻部の体積(nm3)=粒子全体の体積−中空部の体積
外殻部の細孔体積(nm3)=外殻部の体積×外殻部の空孔率
粒子1個あたりの空洞体積(nm3)=外殻部の細孔体積+中空部の体積
粒子1個あたりの空孔率(%)=粒子1個あたりの空洞体積/粒子1個あたりの体積
(ii)次に、外殻部の体積、空孔率、及びシリカ密度(2.2g/cm3)から粒子1個あたりのシリカ質量(α´)を算出した。
粒子1個あたりのシリカ質量(α´)(g)=外殻部の体積×(1−空孔率(%)×0.01)×シリカ密度
(iii)さらに、中空部の体積と香料の密度から中空部のみに保持される香料量と、外殻部の細孔体積と香料の密度から細孔部のみに保持される香料量を算出した。またこれらの合計を粒子内部のみに保持される香料量(β´)とした。
中空部のみに保持される香料量(g)=中空部の体積×香料の密度
細孔部のみに保持される香料量(g)=外殻部の細孔体積×香料の密度
粒子内に保持される香料量(β´)(g)=中空部のみに保持される香料量+細孔部のみに保持される香料量
(iv)粒子1個あたりのシリカ質量(α´)とその粒子内に保持される香料量(β´)より、複合メソポーラスシリカ粒子内のシリカ質量に対する粒子内香料割合は以下の式により算出される。
シリカ質量に対する粒子内香料割合(計算値)(質量%)=粒子内に保持される香料量(β´)/粒子1個あたりのシリカ質量(α´)
(1)1L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、メタクリル酸メチル(和光純薬株式会社製)99.5部、及び塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(三菱レイヨン株式会社製)0.5部をいれ、内温70℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製、商品名:V−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、撹拌速度200rpmで3時間加熱撹拌を行った。その後さらに75℃で3時間加熱撹拌を行った。冷却後、得られた混合液から凝集物を200メッシュ濾過(目開き;約75μm)し、得られた濾過液をエバポレーターにより加熱濃縮し、冷却後、濃縮液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、イオン交換水で調整することで、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液〔固形分(有効分)含有量40%、平均粒径250nm〕を得た。
製造例1で得られた中空メソポーラスシリカ粒子0.5gを20mlのサンプル瓶へ入れ、その上に香料としてローズ系調合香料2.0gを注いだ。ローズ系調合香料とは、フェニルエチルアルコール、ゲラニオール、ネロール、リナロール、シトロネロールなどの異なる蒸気圧の物質を主な香料成分とする調合香料である(密度は1.0g/cm3とした。)。その容器をガラス製デシケータ中に移し、ロータリーポンプを用い3分間減圧した。その後、窒素ガスを充填し内圧を常圧に戻した。この操作を3度繰り返した後、サンプルを一晩静置した。翌日、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、PTFE、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は64質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は41%であった。結果を表1に示す。
製造例2で得られた複合メソポーラスシリカ粒子0.5gを50mlのサンプル瓶へ入れ、その中に水15gを注いだ。マグネチックスターラーで1分間撹拌後、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、セルロースアセテート、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は33質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は100%であった。結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、粒子径割合は、一次粒子全体における数平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有している中空メソポーラスシリカ粒子の割合を示す。
市販タオル50g(32cm×40cm)に対し28mgの香料が付加されるように、製造例3により得られた複合メソポーラスシリカ粒子77mgを均一に振りかけた。香料を振りかけてから1週間後に香調が維持されているかどうかを、研究員5人の官能評価により3段階(3:香調の変化なし、2:やや香調が変化した、1:香調が変化した)で評価し平均した後小数点以下1位を四捨五入した値を評価点として求めた。結果を表2に示す。
実施例1において、製造例3で得られた複合メソポーラスシリカ粒子の代わりに、製造例2で得られた複合メソポーラスシリカ粒子を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行って評価した。結果を表2に示す。
実施例1において、製造例3で得られた複合メソポーラスシリカ粒子を用いずに、香料としてローズ系調合香料をそのまま用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。結果を下記表2に示す。
(1)1L−セパラフルフラスコにイオン交換水600部、メタクリル酸メチル(和光純薬株式会社製)99.5部、及び塩化メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム(三菱レイヨン株式会社製)0.5部をいれ、内温70℃まで昇温させた。次いで水溶性開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(和光純薬株式会社製、商品名:V−50)0.5部をイオン交換水5部に溶かした溶液を添加し、撹拌速度300rpmで3時間加熱撹拌を行った。その後さらに75℃で3時間加熱撹拌を行った。冷却後、得られた混合液から凝集物を200メッシュ濾過(目開き;約75μm)し、得られた濾過液をエバポレーターにより加熱濃縮し、冷却後、濃縮液を1.2μmのメンブランフィルター〔Sartorius社製、商品名:Minisart〕で濾過し、イオン交換水で調整することで、カチオン性ポリマー粒子の懸濁液〔固形分(有効分)含有量40%、平均粒径330nm〕を得た。
製造例4で得られた中空メソポーラスシリカ粒子0.5gを20mlのサンプル瓶へ入れ、その上に香料としてローズ系調合香料2.0gを注いだ。その容器をガラス製デシケータ中に移し、ロータリーポンプを用い3分間減圧した。その後、窒素ガスを充填し内圧を常圧に戻した。この操作を3度繰り返した後、サンプルを一晩静置した。翌日、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、PTFE、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は69質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は24%であった。結果を表3に示す。
製造例5で得られた複合メソポーラスシリカ粒子0.5gを50mlのサンプル瓶へ入れ、その中に水15gを注いだ。マグネチックスターラーで1分間撹拌後、メンブレンフィルター(ADVANTEC社製、セルロースアセテート、孔径0.45μm)によりろ別し、香料を内包した複合メソポーラスシリカ粒子を得た。香料保持量は34質量%であり、複合メソポーラスシリカ粒子が保持している全香料のうち、粒子内部に保持された香料量の割合は100%であった。結果を表3に示す。なお、下記表3において、粒子径割合は、一次粒子全体における数平均一次粒子径±30%以内の一次粒子径を有している中空メソポーラスシリカ粒子の割合を示す。
(1)シート状発熱体の作製
<成形シートの原料組成物配合>
・被酸化性金属:鉄粉、同和鉱業株式会社製、商品名「RKH」:83%
・繊維状物:パルプ繊維(フレッチャー チャレンジ カナダ社製、商品名 NBKP「Mackenzi(CSF200mlに調整)」):8%
・反応促進剤:活性炭(日本エンバイロケミカル株式会社製、商品名「カルボラフィン」、平均粒径45μm):9%
前記原料組成物の固形分(被酸化性金属、繊維状物及び活性炭の合計)100部に対し、カチオン系凝集剤であるポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC(株)製、商品名「WS4020」)0.7部及びアニオン系凝集剤であるカルボキシメチルセルロースナトリウム(第一工業製薬(株)製、商品名「HE1500F」)0.18部を添加した。更に、水(工業用水)を、固形分濃度が12%となるまで添加しスラリーを得た。
前記スラリーを用い、これを抄紙ヘッドの直前で0.3%に水希釈し、傾斜型短網抄紙機によって、ライン速度15m/分にて抄紙して湿潤状態の成形シートを作製した。
成形シートをフェルトで挟持して加圧脱水し、そのまま140℃の加熱ロール間に通し、含水率が5%以下になるまで乾燥した。乾燥後の坪量は450g/m2、厚さは0.45mmであった。このようにして得られた成形シートの組成を熱重量測定装置(セイコーインスツルメンツ社製、TG/DTA6200)を用いて測定した結果、鉄83%、活性炭9%、パルプ8%であった。
得られた成形シートを面積25cm2(5cm×5cm)に裁断し、成形シート100重量部に対し、下記電解液42重量部、ローズ系調合香料18mgを含有する製造例6により得られた複合メソポーラスシリカ粒子1.6重量部を添加した。毛管現象を利用して成形シート全体に電解液を浸透させてシート状発熱体を得た。
電解質:精製塩(NaCl)
水:工業用水
電解液濃度:5重量%
第1の面が炭酸カルシウムを含む延伸された多孔質のポリエチレン透湿性フィルム(通気度:2500秒/(100ml・6.42cm2))、第2の面がポリエチレンよりなる非通気フィルムを用いて作製した袋状フィルムに、上記で得られたシート状発熱体を入れヒートシールで開口部を熱融着し密閉した。さらに、外周部全体をポリエチレンテレフタレートよりなる不織布(坪量100g/cm2)で袋状に覆い、開口部をヒートシールで熱溶着し、第1の面より香料及び水蒸気を発生する蒸気温熱シートを作製した。
上記(2)にて作製した蒸気温熱シートを50℃1ヶ月保存後の残香性と香調の変化を、官能評価により以下のように3段階で評価した。結果を表4に示す。
<残香性>
3:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中9人以上
2:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中6人以上9人未満
1:香料複合粒子を含有しない(香料のみの)場合に比べて、強く香りを感じたパネラーが11人中6人未満
<香調変化>
3:香調の変化なし
2:やや香調が変化した
1:香調が変化した
試験例2と同じ面積の成形シート、電解液(成形シート100重量部に対し電解液量が42重量部)とローズ系調合香料18mgを含有する製造例5により得られた複合メソポーラスシリカ粒子(成形シート100重両部に対し1.6重量部)を用いてシート状発熱体を作製した以外は、試験例2と同様な方法で香料および水蒸気を発生する蒸気温熱シートを作製し、評価を行った。結果を下記表4に示す。
試験例2と同じ面積の成形シート、電解液(成形シート100重量部に対し電解液量が42重量部)とローズ系調合香料18mgを用いてシート状発熱体を作製した以外は、試験例2と同様な方法で香料および水蒸気を発生する蒸気温熱シートを作製し、評価を行った。結果を下記表4に示す。
Claims (7)
- メソポーラスシリカ粒子(A)と、2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)とを含有する複合メソポーラスシリカ粒子であって、前記組成物(B)の80〜100質量%を前記メソポーラスシリカ粒子(A)の内部に含有する複合メソポーラスシリカ粒子。
- 前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を均一に揮散させるための、請求項1記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
- 前記メソポーラスシリカ粒子(A)の平均細孔径が、1〜10nmである、請求項1又は2に記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
- 前記メソポーラスシリカ粒子(A)が、中空メソポーラスシリカ粒子である、請求項1から3のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
- 前記組成物(B)における2種類以上の機能性物質が、香料、防虫剤、保湿剤、殺菌剤、防カビ剤、防腐剤、医薬剤、肥料、紫外線吸収剤、美白剤、食品添加剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される機能性物質である、請求項1から4のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子。
- 請求項1から5のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子から前記組成物(B)に含まれる少なくとも2種類の機能性物質を揮散させることを含む、機能性物質を均一に揮散させる方法。
- メソポーラスシリカ粒子(A)に2種類以上の機能性物質を含む組成物(B)を含浸させること、及び、含浸後に前記メソポーラスシリカ粒子(A)の外表面に付着した組成物(B)を除去することを含む、請求項1から5のいずれかに記載の複合メソポーラスシリカ粒子を製造する方法。
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