JP2011211087A - 太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに太陽電池裏面保護膜及び太陽電池モジュール - Google Patents

太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに太陽電池裏面保護膜及び太陽電池モジュール Download PDF

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Abstract

【課題】耐加水分解性と高耐電圧性を両立した太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】厚みが250μm以上600μm以下であり、二軸配向したポリエステルフィルムであり、それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む第1樹脂層と第2樹脂層とを有し、第2樹脂層の少なくとも片面に第1樹脂層が溶融積層されており、各層の示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークTc(℃)、結晶化発熱量ΔH(J/g)、固有粘度IV(dl/g)、末端カルボキシル基濃度AV(当量/トン)、面配向度ΔP、ガラス転移温度Tgが、特定の関係を満たす太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は、太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに太陽電池裏面保護膜及び太陽電池モジュールに関する。
近年、地球環境の保護の観点から、太陽光を電気に変換する太陽光発電が注目されている。この太陽光発電に用いられる太陽電池モジュールは、太陽光が入射するガラスの上に、(封止材)/太陽電池素子/封止材/バックシートがこの順に積層された構造を有している。
太陽電池モジュールは、風雨や直射日光に曝される過酷な使用環境下でも、数十年もの長期間に亘って発電効率などの電池性能を保持できるよう、高い耐候性能を備えていることが必要とされる。このような耐候性能を与えるためには、太陽電池モジュールを構成するバックシートや素子を封止する封止材などの諸材料も耐候性が求められる。また、これら諸材料間、例えばバックシートと封止材(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA))との間の密着性等においても、強靭な耐候性が要求される。
また、太陽電池モジュールのバックシートには、耐電圧性も要求される。
しかし、耐加水分解性と高耐電圧性を両立したポリエステルフィルムを製造することは困難であり、接着剤による複数枚のフィルムの貼り合わせや溶融ラミネートによる方法が用いられている。しかしながら、接着剤を介してフィルムを貼り合わせる場合、製造コストが高く、また、長期間経過した場合に接着部から剥離し易いため、低コストで高品位の太陽電池バックシート用ポリエステルフィルムを得ることができない。
耐候性、耐電圧性等を向上させるため、例えば、少なくとも2層の耐候性基材を接着性樹脂のエクストルーダーラミネーションにより貼り合わせた太陽電池裏面封止用シートが開示されている(特許文献1参照)。
また、触媒由来のチタン化合物とリン化合物の含有量が特定の範囲内であり、末端カルボキシル基の濃度が40当量/トン(eq/t)以下である太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムが開示されている(特許文献2参照)。
特開2009−267294号公報 特開2007−204538号公報
本発明は、耐加水分解性と高耐電圧性を両立した太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを提供することを主な目的とする。
前記目的を達成するため、以下の発明が提供される。
<1> 厚みが250μm以上600μm以下であり、二軸配向したポリエステルフィルムであり、
それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む第1樹脂層と第2樹脂層とを有し、前記第2樹脂層の少なくとも片面に前記第1樹脂層が溶融積層されており、
前記第1樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc1(℃)、結晶化発熱量をΔH1(J/g)、固有粘度をIV1(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV1(当量/トン)、及び、面配向度をΔP1としたときに、下記(1)〜(5)の関係
(1)130≦Tc1≦160
(2)23≦ΔH1
(3)0.60≦IV1≦0.95
(4)AV1≦20
(5)0.14≦ΔP1≦0.20
を満たし、
前記第2樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc2(℃)、結晶化発熱量をΔH2(J/g)、固有粘度をIV2(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV2(当量/トン)、及び、面配向度をΔP2としたときに、下記(6)〜(10)の関係
(6)150≦Tc2≦180
(7)19≦ΔH2<23
(8)0.60≦IV2≦0.95
(9)AV2≦20
(10)0.12≦ΔP2≦0.18
を満たし、
前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)、前記第2樹脂層のガラス転移温度をTg2(℃)としたときに、下記(11)の関係
(11)Tg1−5≦Tg2≦Tg1−0.5
を満たす太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<2> 示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第1樹脂層の結晶融解ピーク(Tm1)が245℃以上260℃以下であり、前記第2樹脂層の結晶融解ピーク(Tm2)が225℃以上245℃未満である<1>に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<3> 前記第1樹脂層の共重合比率が3モル%未満であり、前記第2樹脂層の共重合比率が3モル%以上12モル%以下である<1>又は<2>に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<4> 前記チタン化合物が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であり、かつ、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルをさらに含む<1>〜<3>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<5> 前記第1樹脂層の厚みが10μm以上150μm未満である<1>〜<4>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<6> 280℃せん断速度100sec−1における前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下である<1>〜<5>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<7> <1>〜<6>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを製造する方法であって、
ポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む樹脂組成物を用い、前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物と前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して、前記第2溶融膜状物の少なくとも片面に前記第1溶融膜状物を溶融積層することにより積層体を形成する共押出し工程と、
前記積層体の縦延伸及び横延伸を行い、前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)としたときに、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下にして二軸延伸フィルムを形成する延伸工程と、
前記二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、前記第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下にする熱固定工程と、
を含む太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムの製造方法。
<8> <1>〜<6>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池裏面保護膜。
<9> <1>〜<6>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池モジュール。
本発明によれば、耐加水分解性と高耐電圧性を両立した太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを提供することができる。
本発明に係る太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムの構成例を示す概略断面図である。 太陽電池モジュールの構成例を示す概略断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
安価で高耐電圧性を付与するために、フィルムの厚さが250μmを超える単一組成のポリエステルフィルムを製膜する場合、以下のような問題点が生じる。
例えば、低共重合比率のPET単層フィルムでは、溶融押出ししたポリエステル樹脂(未延伸のポリエステルフィルム)を冷却する際、厚み方向の中心部付近で結晶化し易く、表層部と中心部で結晶化状態が変化し、厚み方向で延伸応力が変化する。その結果、耐加水分解性の改善に有効な面配向度を上げることができない。また、高延伸応力により面配向度を上げようとすると中心部付近にボイドが生じて耐電圧性が低下し易い。
一方、低結晶性のPET単層フィルムでは、面配向度が上がらないために、耐加水分解性が低くなってしまう。
中心部付近での結晶化を抑制するためには、結晶化速度が異なる樹脂を積層することが考えられるが、結晶化速度が遅い樹脂を用いると耐加水分解性が低下し易い。また、組成が異なる樹脂を溶融積層して延伸すると2つの層の間で剥離が生じ易く、さらに、延伸工程後の熱固定工程では配向が緩和して耐加水分解性の低下が生じ易い。
そこで、本発明者が研究を重ねたところ、触媒としてチタン化合物を用いて縮重合し、特定の物性を有するポリエステル樹脂を溶融積層すれば、延伸工程前の中心領域での結晶化が抑制され、厚手のフィルムにもかかわらず、耐加水分解性と高耐電圧性を両立し、過酷な環境下での長期使用に適した太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムが得られることを見出した。
<太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム>
本発明に係る太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム(単に「ポリエステルフィルム」又は「フィルム」と記す場合がある。)は、厚みが250μm以上600μm以下であり、二軸配向したポリエステルフィルムであり、それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む第1樹脂層と第2樹脂層とを有し、第2樹脂層の少なくとも片面に第1樹脂層が溶融積層されている。そして、第1樹脂層は後述する(1)〜(5)の関係を満たし、第2樹脂層は後述する(6)〜(10)の関係を満たし、第1樹脂層と第2樹脂層とが後述する(11)の関係を満たすように構成されている。
図1は、本発明に係るポリエステルフィルムの構成の一例を示している。このポリエステルフィルム30では、第2樹脂層20の両面に第1樹脂層10が溶融積層されている。第1樹脂層10が第2樹脂層20の片面に溶融積層されているフィルムでもよい。
なお、「溶融積層」とは、第1樹脂層と第2樹脂層とが接着層などの第3の層を介さずに少なくとも一方が溶融した状態で積層されて接合していることを意味する。例えば、共押出し法によって第1樹脂層と第2樹脂層とが積層されて接合したフィルムや、第1樹脂層及び第2樹脂層の一方がフィルム状に成形された後、他方が溶融した状態で積層されて接合したフィルムが挙げられる。
本発明に係るポリエステルフィルムは、250μm以上600μm以下の厚みを有する。フィルム全体の厚みが250μm未満では耐電圧性が悪化し、600μmを超えると延伸加工によって後述する面配向度等の物性を得ることが難しい。ポリエステルフィルムの厚みが250μm以上であれば破断強度が高く、太陽電池裏面封止用として好適であり、600μm以下であれば、例えば、共押出し工程と延伸工程によって、下記(1)〜(11)の特性を有する第1樹脂層と第2樹脂層とが溶融積層されたポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明のポリエステルフィルムは、耐電圧性及び破断強度をより一層向上させる観点から、フィルムの厚みは270μm以上500μm以下が好ましく300μm以上400μm以下がより好ましい。
第1樹脂層と第2樹脂層は、それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含んで構成されている。第1樹脂層と第2樹脂層をそれぞれ構成するポリエステルは、テレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主たる成分とするジオール成分をチタン系触媒を用いて縮重合したものである。
各層を構成する具体的な材料についてはポリエステルフィルムの製造方法において説明するが、第1樹脂層及び第2樹脂層にそれぞれ含まれるチタン化合物は、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体が好ましい。第1樹脂層及び第2樹脂層をそれぞれ構成するポリエステル樹脂を縮重合により製造する際のチタン触媒として、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いれば、静電印加性と耐加水分解性が両立するポリエステルをより確実に製造することができる。
また、第1樹脂層と第2樹脂層は、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体のほか、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むことが好ましい。この場合、チタン触媒の反応活性を適度に高く保ち、マグネシウムによる静電印加特性を付与しつつ、かつ重縮合における分解反応を効果的に抑制することができるため、結果として着色が少なく、高い静電印加特性を有するとともに高温下に曝された際の黄変色が改善されたポリエステルフィルムが得られる。
以下、各層の物性について説明する。
(第1樹脂層)
第1樹脂層は、ポリエステルと触媒由来のチタン化合物とを含み、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc1(℃)、結晶化発熱量をΔH1(J/g)、固有粘度をIV1(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV1(当量/トン)、及び、面配向度をΔP1としたときに、下記(1)〜(5)の関係を満たす。
‐昇温結晶化ピークTc1‐
第1樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークTc1(℃)が、下記(1)の関係を有する。
(1)130≦Tc1≦160
第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1が、130℃未満ではボイドが発生し易く、160℃より大きいと配向性が低下する。第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1が上記(1)の関係を満たすことでボイドの発生及び配向性の低下を抑制することができる。ボイドの発生及び配向性の低下を一層抑制する観点から、第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1は、135℃以上155℃以下であることが好ましい。
第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1は、ポリエステルの重合度や触媒の種類や量を調整したり、あるいは共重合成分の配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
なお、本発明における昇温結晶化ピークは、ポリエステルフィルムの一部を削り取って得たサンプルを溶融して熱履歴を消去した後、急冷し、その後昇温して測定して得られる値である。示査走査熱量計(DSC)としては、パーキンエルマー社製、DSC8500を用いることができる。
‐結晶化発熱量ΔH1‐
第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1(J/g)は、下記(2)の関係を有する。
(2)23≦ΔH1
第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1が23J/gより小さいと、配向性が低下する。第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1が上記(2)の関係を満たすことで第1樹脂層の配向性の低下を抑制することができる。第1樹脂層の配向性の低下を一層抑制する観点から、第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1は、24J/g以上30J/g以下であることが好ましい。
第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1は、ポリエステルの共重合比率を調整することが、共重合比率の異なる樹脂をブレンドすることで上記範囲内に制御することができる。
‐固有粘度IV1‐
第1樹脂層の固有粘度IV1(dl/g)は、下記(3)の関係を有する。
(3)0.60≦IV1≦0.95
第1樹脂層の固有粘度IV1が0.6dl/g未満では物性(フィルム強度と耐加水分解性)が悪化し、0.95dl/gより大きいと製膜性が悪化する。上記(3)の関係を満たすことで第1樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性の低下及び製膜性の悪化を抑制することができる。第1樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性の低下及び製膜性の悪化を一層抑制する観点から、第1樹脂層の固有粘度IV1は、0.65dl/g以上0.90dl/g以下であることが好ましい。
第1樹脂層の固有粘度IV1は、溶融重合の時間や真空度を調整することや固相重合の温度や時間を調整することで上記範囲内に制御することができる。
なお、固有粘度(IV)は、溶液粘度(η)と溶媒粘度(η0)の比ηr(=η/η0;相対粘度)から1を引いた比粘度(ηsp=ηr−1)濃度で割った値を濃度がゼロの状態に外挿した値である。IVは、ウベローデ型粘度計を用い、ポリエステル樹脂を1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒に溶解させ、25℃の溶液粘度から求められる。
‐末端カルボキシル基濃度AV1‐
第1樹脂層のAV1(当量/トン)は、下記(4)の関係を有する。
(4)AV1≦20
第1樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV1が20当量/トンより大きいと耐加水分解性悪化する。上記(4)の関係を満たすことで、第1樹脂層の耐加水分解性の悪化を抑制することができる。
第1樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV1は、溶融重合時の触媒に有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いることや重合温度の低温化すること及び/又は固相重合により熱分解を防いだ重合方法を組み合わせて重合を進行させることで上記範囲内に制御することができる。
なお、末端COOHを低減させることで耐加水分解性を向上できる一方、末端COOHを低減しようとすると、これに伴いフィルム表面のカルボン酸基の量(以下、「表面COOH量」と略記する。)も低減し、被着物に密着させた際の密着力が低下する。このような観点から、第1樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV1は、好ましくは5当量/トン以上20当量/トン以下である。フィルムをなすポリエステルにおいて末端カルボン酸を無くさないが少なく保有し、末端カルボキシル基を所定の範囲で存在させるようにすることで、加水分解性を低く抑えつつも、被着物との間の密着性を高めることができる。これにより、長期経時での劣化が抑制され、例えば太陽電池モジュールを構成した場合には、封止材などとの間の密着性を長期間保持し、長時間経時での寸法安定性を維持でき、所望の発電性能を長期に亘って安定的に得ることができる。
‐面配向度ΔP1‐
第1樹脂層の面配向度ΔP1は、下記(5)の関係を有する。
(5)0.14≦ΔP1≦0.20
第1樹脂層の面配向度ΔP1が0.20より大きいと耐電圧性が悪化し、0.14より小さいと耐加水分解性が悪化する。上記(5)の関係を満たすことで、第1樹脂層の耐電圧性及び耐加水分解性の悪化を抑制することができる。第1樹脂層の耐加水分解性の悪化を一層抑制する観点から、第1樹脂層の面配向度ΔP1は、0.15以上0.19以下であることが好ましい。
第1樹脂層の面配向度ΔP1は、縦及び/又は横延伸の倍率と延伸温度を第1層のTgに合わせて適宜調整することで上記範囲内に制御することができる。
‐ガラス転移温度Tg1‐
第1樹脂層のガラス転移温度Tg1(℃)と第2樹脂層のガラス転移温度Tg2(℃)は、下記(11)の関係を満たすように構成する。
(11)Tg1−5≦Tg2≦Tg1−0.5
厚手のフィルムを製造する場合、第2樹脂層のガラス転移温度Tg2が、第1樹脂層のガラス転移温度Tg1の−5℃未満であると、Tg1とTg2との差が大きく、厚さ方向で温度差が生じて延伸工程時に配向し難くなるため、耐加水分解性が悪化する傾向がある。一方、Tg2がTg1の−0.5℃よりも大きいと、延伸時の応力が高くなる傾向が見られるとともに、フィルムの厚み均一性が低下してしまう。第1樹脂層のガラス転移温度Tg1と第2樹脂層のガラス転移温度Tg2が、上記(11)の関係を満たすことで、特に第2樹脂層の両面に第1樹脂層を溶融積層する場合に、均一な延伸を行うことができ、面配向度の均一化を図ることができる。
なお、第1樹脂層のガラス転移温度Tg1(℃)は75℃以上80℃以下が好ましい。第1樹脂層のガラス転移温度Tg1が75℃以上であれば延伸による配向が十分進行する。また、ホモポリエステルのTgは約80℃であり、本発明において経済的に不利となるTgを高める共重合は不要である。
第1樹脂層のガラス転移温度Tg1は、共重合成分の配合比率調整、場合によっては可塑剤の配合をすることで上記範囲内に制御することができる。
‐厚みt1‐
第1樹脂層の厚みt1は10μm以上150μm未満であることが好ましく、20μm以上130μm以下であることがより好ましい。第1樹脂層の厚みt1が10μm以上であれば耐加水分解性の低下をより確実に抑制することができ、150μm未満であれば耐電圧性の悪化及び耐加水分解性の悪化をより確実に抑制することができる。
‐結晶融解ピークTm1‐
示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第1樹脂層の結晶融解ピークTm1が245℃以上260℃以下であることが好ましい。第1樹脂層の上記結晶融解ピークTm1が245℃以上であれば耐加水分解性及び耐熱性の悪化がより確実に抑制される。またホモポリエステルのDSCにより測定される融点は、約258℃であり、本発明において経済性に劣る融点アップのための共重合は不要である。
第1樹脂層の結晶融解ピークTm1は、共重合成分の種類や配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
‐共重合比率‐
第1樹脂層の共重合比率は3モル%未満であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。第1樹脂層の共重合比率が3モル%未満であれば、耐加水分解性の悪化をより確実に抑制することができる。
第1樹脂層の共重合比率は、ジオール原料やジカルボン酸原料の配合比率を調整したり、エステル交換時のEGのモル比率の調整による副生成物(ジエチレングリコール)の発生調整等を行うことで上記範囲内に制御することができる。
‐溶融粘度‐
280℃せん断速度100sec−1における第1樹脂層と第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、2Pa・s以上90Pa・s以下がより好ましい。上記溶融粘度差が1Pa・s以上であれば、溶融共押出時の積層界面の密着性が良好となり、延伸時のデラミ発生が改善され、一方、100Pa・s以下であれば溶融共押出時の積層界面の乱れが小さくなりフィルム外観が良好となる。
280℃せん断速度100sec−1における第1樹脂層の溶融粘度は、溶融製膜時のダイ出口部分で必要な溶融張力確保と溶融押し出し時のせん断発熱性による樹脂温度上昇防止の観点から、150Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましい。
第1樹脂層の溶融粘度は、分子量の調整や共重合組成の調整あるいは流動調節剤の配合により上記範囲内に制御することができる。
(第2樹脂層)
第2樹脂層はポリエステルと触媒由来のチタン化合物とを含み、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc2(℃)、結晶化発熱量をΔH2(J/g)、固有粘度をIV2(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV2(当量/トン)、及び、面配向度をΔP2としたときに、下記(6)〜(10)の関係を満たす。
‐昇温結晶化ピークTc2‐
第2樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークTc2(℃)が、下記(6)の関係を有する。
(6)150≦Tc2≦180
第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2が150℃未満ではボイドが発生し易く、180℃より大きいと配向性が低下してしまう。第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2が上記(6)の関係を満たすことでボイドの発生及び配向性の低下を抑制することができる。ボイドの発生及び配向性の低下を一層抑制する観点から、第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2は、155℃以上175℃以下であることが好ましい。
第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2は、ポリエステルの重合度や触媒の種類や量を調整したり、あるいは共重合成分の配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
‐結晶化発熱量ΔH2‐
第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2(J/g)は、下記(7)の関係を有する。
(7)19≦ΔH2<23
第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2が19J/g未満では配向性が低下し、23J/g以上ではボイドが発生し易い。第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2が上記(7)の関係を満たすことで第2樹脂層のボイドの発生及び配向性の低下を抑制することができる。第2樹脂層の配向性の低下を一層抑制する観点から、第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2は、20J/g以上22J/g以下であることが好ましい。
第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2は、ポリエステルの共重合比率を調整することが、共重合比率の異なる樹脂をブレンドすることで上記範囲内に制御することができる。
‐固有粘度IV2‐
第2樹脂層の固有粘度IV2(dl/g)は、下記(8)の関係を有する。
(8)0.60≦IV2≦0.95
第2樹脂層の固有粘度IV2が0.6dl/g未満では物性(フィルム強度と耐加水分解性)が悪化し、0.95dl/gより大きいと製膜性が悪化する。上記(8)の関係を満たすことで第2樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性及び製膜性の悪化を抑制することができる。第2樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性及び製膜性の悪化を一層抑制する観点から、第2樹脂層の固有粘度IV2は、0.65dl/g以上0.90dl/g以下であることが好ましい。
第2樹脂層の固有粘度IV2は、溶融重合の時間や真空度を調整することや固相重合の温度や時間を調整することで上記範囲内に制御することができる。
‐末端カルボキシル基濃度AV2‐
第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2(当量/トン)は、下記(9)の関係を有する。
(9)AV2≦20
第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2が20当量/トンより大きいと耐加水分解性悪化する。上記(9)の関係を満たすことで、第2樹脂層の耐加水分解性の悪化を抑制することができる。第2樹脂層の耐加水分解性の悪化及び密着力の低下を一層抑制する観点から、第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2は、好ましくは5当量/トン以上20当量/トン以下である。
第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2は、溶融重合時の触媒に有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いることや重合温度の低温化すること及び/又は固相重合により熱分解を防いだ重合方法を組み合わせて重合を進行させることで上記範囲内に制御することができる。
‐面配向度ΔP2‐
第2樹脂層の面配向度ΔP2は、下記(10)の関係を有する。
(10)0.12≦ΔP2≦0.18
第2樹脂層の面配向度ΔP2が0.18より大きいと耐電圧性が悪化し、0.12より小さいと耐加水分解性が悪化する。上記(10)の関係を満たすことで、第2樹脂層の耐電圧性及び耐加水分解性の悪化を抑制することができる。第2樹脂層の耐加水分解性の悪化を一層抑制する観点から、第2樹脂層の面配向度ΔP2は、0.13以上0.175以下であることが好ましい。
第2樹脂層の面配向度ΔP2は、縦及び/又は横延伸の倍率と延伸温度を第1樹脂層のTgに合わせて適宜調整することで上記範囲内に制御することができる。
‐ガラス転移温度Tg2‐
第2樹脂層のガラス転移温度Tg2(℃)は、第1樹脂層のガラス転移温度Tg1(℃)との間で前記(11)の関係を満たすように構成する。
第2樹脂層のガラス転移温度Tg2(℃)は70℃以上79.5℃以下が好ましい。第2樹脂層のガラス転移温度Tg2が70℃以上であれば延伸による配向が十分進行し、79.5℃以下であれば、延伸時の応力が高くなる傾向とフィルムの厚み均一性低下を防止できる。
第2樹脂層のガラス転移温度Tg2は、共重合成分の配合比率調整、場合によっては可塑剤の配合をすることで上記範囲内に制御することができる。
‐厚みt2‐
第2樹脂層の厚みt2は、10μm以上400μm未満であることが好ましく、20μm以上350μm以下であることがより好ましい。第2樹脂層の厚みt2が10μm以上であれば250μmを超える厚物フィルム製膜で耐電圧性と耐加水分解性の両立が可能であり、400μm未満であれば耐加水分解性の低下を最小限にすることが可能である。
‐結晶融解ピークTm2‐
示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第2樹脂層の結晶融解ピークTm2が225℃以上245℃未満であることが好ましい。第2樹脂層の上記結晶融解ピークTm2が225℃以上であれば耐加水分解性及び耐熱性の悪化がより確実に抑制され、245℃未満であれば厚物製膜時のボイド発生による耐加水分解性の悪化がより確実に抑制される。
第2樹脂層の結晶融解ピークTm2は、共重合成分の種類や配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
‐共重合比率‐
第2樹脂層の共重合比率は3モル%以上12モル%以下であることが好ましく、4モル%以上10モル%以下がより好ましい。第2樹脂層の共重合比率が3モル%以上であれば耐電圧性の悪化をより確実に抑制することができ、12モル%以下であれば耐加水分解性の悪化をより確実に抑制することができる。
第2樹脂層の共重合比率は、ジオール原料やジカルボン酸原料の配合比率を調整したり、エステル交換時のEGのモル比率の調整による副生成物(ジエチレングリコール)の発生調整等を行うことで上記範囲内に制御することができる。
‐溶融粘度‐
前記したように、280℃せん断速度100sec−1における第1樹脂層と第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、280℃せん断速度100sec−1における第2樹脂層の溶融粘度は、150Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましい。
なお、280℃せん断速度100sec−1における第2樹脂層の溶融粘度は、溶融製膜時のダイ出口部分で必要な溶融張力確保と溶融押し出し時のせん断発熱性による樹脂温度上昇防止の観点から、150Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましい。
第2樹脂層の溶融粘度は、分子量の調整や共重合組成の調整あるいは流動調節剤の配合により上記範囲内に制御することができる。
<ポリエステルフィルムの製造方法>
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明のポリエステルフィルムの製造方法は限定されないが、以下、好適な製造方法の一例について説明する。
(ポリエステルの重合)
第1樹脂層と第2樹脂層をそれぞれ構成するポリエステルは、テレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主たる成分とするジオール成分をチタン系触媒を用いて縮重合したものである。
−エステル化反応−
ポリエステルを重合する際のエステル化反応において、触媒としてチタン(Ti)系化合物を用い、Ti添加量が元素換算値で、1ppm以上30ppm以下、より好ましくは2ppm以上20ppm以下、さらに好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で重合を行なうことが好ましい。この場合、本発明のポリエステルフィルムには、1ppm以上30ppm以下のチタンが含まれる。
Ti系化合物の量が1ppm以上であると、重合速度が速くなり、好ましいIVが得られる。また、Ti系化合物の量が30ppm以下であると、末端COOHを上記の範囲を満足するように調節することが可能であり、また良好な色調が得られる。
このようなTi系化合物を用いたTi系ポリエステルの合成には、例えば、特公平8−30119号公報、特許第2543624号、特許第3335683号、特許第3717380号、特許第3897756号、特許第3962226号、特許第3979866号、特許第3996871号、特許第4000867号、特許第4053837号、特許第4127119号、特許第4134710号、特許第4159154号、特許第4269704号、特許第4313538号、特開2005−340616号公報、特開2005−239940号公報、特開2004−319444号公報、特開2007−204538号公報、特許3436268号、特許第3780137号等に記載の方法を適用することができる。
本発明のポリエステルフィルム(第1樹脂層及び第2樹脂層)を形成するポリエステルは、(A)マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸、エイコサンジオン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸等の脂肪族ジカルボン酸類、アダマンタンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、イソソルビド、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、などの脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フェニルエンダンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレン酸等の芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸もしくはそのエステル誘導体と、(B)エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールA、1,3―ベンゼンジメタノール,1,4−ベンセンジメタノール、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、などの芳香族ジオール類等のジオール化合物と、を周知の方法でエステル化反応及び/又はエステル交換反応させることによって得ることができる。
前記ジカルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。より好ましくは、ジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸を主成分として含有する。なお、「主成分」とは、ジカルボン酸成分に占める芳香族ジカルボン酸の割合が80質量%以上であることをいう。芳香族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を含んでもよい。このようなジカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸などのエステル誘導体等である。
また、ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール)の使用量は、前記芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸)及び必要に応じそのエステル誘導体の1モルに対して、1.015〜1.50モルの範囲であるのが好ましい。該使用量は、より好ましくは1.02〜1.30モルの範囲であり、更に好ましくは1.025〜1.10モルの範囲である。該使用量は、1.015以上の範囲であると、エステル化反応が良好に進行し、1.50モル以下の範囲であると、例えばエチレングリコールの2量化によるジエチレングリコールの副生が抑えられ、融点やガラス転移温度、結晶性、耐熱性、耐加水分解性、耐候性など多くの特性を良好に保つことができる。
エステル化反応及び/又はエステル交換反応には、従来から公知の反応触媒を用いることができる。該反応触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、リン化合物などを挙げることができる。通常、ポリエステルの製造方法が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例に取ると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加することが好ましい。
これらの中でより好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)であり、さらに好ましいのはPETである。
また、前記PETとしては、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるPETが好ましく、より好ましくはTi系触媒を用いたものである。
前記Ti系触媒は、反応活性が高く、重合温度を低くすることができる。そのため、特に重合反応中にPETが熱分解し、COOHが発生するのを抑制することが可能であり、本発明のポリエステルフィルムにおいて、末端COOH量を所定の範囲に調整するのに好適である。
前記Ti系触媒としては、酸化物、水酸化物、アルコキシド、カルボン酸塩、炭酸塩、蓚酸塩、有機キレートチタン錯体、及びハロゲン化物等が挙げられる。Ti系触媒は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、二種以上のチタン化合物を併用してもよい。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
前記Ti系触媒の中でも、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体の少なくとも1種を好適に用いることができる。有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、トリメリット酸、リンゴ酸等を挙げることができる。中でも、クエン酸又はクエン酸塩を配位子とする有機キレート錯体が好ましい。
例えばクエン酸を配位子とするキレートチタン錯体を用いた場合、微細粒子等の異物の発生が少なく、他のチタン化合物に比べ、重合活性と色調の良好なポリエステル樹脂が得られる。更に、クエン酸キレートチタン錯体を用いる場合でも、エステル化反応の段階で添加することにより、エステル化反応後に添加する場合に比べ、重合活性と色調が良好で、末端カルボキシル基の少ないポリエステル樹脂が得られる。この点については、チタン触媒はエステル化反応の触媒効果もあり、エステル化段階で添加することでエステル化反応終了時におけるオリゴマー酸価が低くなり、以降の重縮合反応がより効率的に行なわれること、またクエン酸を配位子とする錯体はチタンアルコキシド等に比べて加水分解耐性が高く、エステル化反応過程において加水分解せず、本来の活性を維持したままエステル化及び重縮合反応の触媒として効果的に機能するものと推定される。
また、一般に、末端カルボキシル基量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、本発明の添加方法によって末端カルボキシル基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
前記クエン酸キレートチタン錯体としては、例えば、ジョンソン・マッセイ社製のVERTEC AC−420など市販品として容易に入手可能である。
芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールは、これらが含まれたスラリーを調製し、これをエステル化反応工程に連続的に供給することにより導入することができる。
本発明においては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとを、チタン化合物を含有する触媒の存在下で重合するとともに、チタン化合物の少なくとも一種が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であって、有機キレートチタン錯体とマグネシウム化合物と置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルとをこの順序で添加する過程を少なくとも含むエステル化反応工程と、エステル化反応工程で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する重縮合工程と、を設けて構成されているポリエステル樹脂の製造方法により作製されるのが好ましい。
この場合、エステル化反応の過程において、チタン化合物として有機キレートチタン錯体を存在させた中に、マグネシウム化合物を添加し、次いで特定の5価のリン化合物を添加する添加順とすることで、チタン触媒の反応活性を適度に高く保ち、マグネシウムによる静電印加特性を付与しつつ、かつ重縮合における分解反応を効果的に抑制することができるため、結果として着色が少なく、高い静電印加特性を有するとともに高温下に曝された際の黄変色が改善されたポリエステル樹脂が得られる。
これにより、重合時の着色及びその後の溶融製膜時における着色が少なくなり、従来のアンチモン(Sb)触媒系のポリエステル樹脂に比べて黄色味が軽減され、また、透明性の比較的高いゲルマニウム触媒系のポリエステル樹脂に比べて遜色のない色調、透明性を持ち、しかも耐熱性に優れたポリエステル樹脂を提供できる。また、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステル樹脂が得られる。
このポリエステル樹脂は、透明性に関する要求の高い用途(例えば、光学用フィルム、工業用リス等)に利用が可能であり、高価なゲルマニウム系触媒を用いる必要がないため、大幅なコスト低減が図れる。加えて、Sb触媒系で生じやすい触媒起因の異物の混入も回避されるため、製膜過程での故障の発生や品質不良が軽減され、得率向上による低コスト化も図ることができる。
上記において、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールを、マグネシウム化合物及びリン化合物の添加に先立って、チタン化合物である有機キレートチタン錯体を含有する触媒と混合する場合、有機キレートチタン錯体等はエステル化反応に対しても高い触媒活性を持つので、エステル化反応を良好に行なわせることができる。このとき、ジカルボン酸成分及びジオール成分を混合した中にチタン化合物を加えてもよい。また、ジカルボン酸成分(又はジオール成分)とチタン化合物を混合してからジオール成分(又はジカルボン酸成分)を混合してもよい。また、ジカルボン酸成分とジオール成分とチタン化合物とを同時に混合するようにしてもよい。混合は、その方法に特に制限はなく、従来公知の方法により行なうことが可能である。
エステル化反応させるにあたり、チタン化合物である有機キレートチタン錯体と添加剤としてマグネシウム化合物と5価のリン化合物とをこの順に添加する過程を設けることが好ましい。このとき、有機キレートチタン錯体の存在下、エステル化反応を進め、その後はマグネシウム化合物の添加を、リン化合物の添加前に開始することができる。
(リン化合物)
5価のリン化合物として、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種を用いることができる。本発明における5価のリン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−n−ブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(トリエチレングリコール)、リン酸メチルアシッド、リン酸エチルアシッド、リン酸イソプロピルアシッド、リン酸ブチルアシッド、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリエチレングリコールアシッド等が挙げられる。
5価のリン酸エステルの中では、炭素数2以下の低級アルキル基を置換基として有するリン酸エステル〔(OR)−P=O;R=炭素数1又は2のアルキル基〕が好ましく、具体的には、リン酸トリメチル、リン酸トリエチルが特に好ましい。
特に、前記チタン化合物として、クエン酸又はその塩が配位するキレートチタン錯体を触媒として用いる場合、5価のリン酸エステルの方が3価のリン酸エステルよりも重合活性、色調が良好であり、更に炭素数2以下の5価のリン酸エステルを添加する態様の場合に、重合活性、色調、耐熱性のバランスを特に向上させることができる。
リン化合物の添加量としては、P元素換算値が50ppm以上90ppm以下の範囲となる量が好ましい。リン化合物の量は、より好ましくは60ppm以上80ppm以下となる量であり、さらに好ましくは65ppm以上75ppm以下となる量である。
(マグネシウム化合物)
マグネシウム化合物を含めることにより、静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、本発明においては、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
マグネシウム化合物としては、例えば、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムアルコキシド、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等のマグネシウム塩が挙げられる。中でも、エチレングリコールへの溶解性の観点から、酢酸マグネシウムが最も好ましい。
マグネシウム化合物の添加量としては、高い静電印加性を付与するためには、Mg元素換算値が50ppm以上となる量が好ましく、50ppm以上100ppm以下の範囲となる量がより好ましい。マグネシウム化合物の添加量は、静電印加性の付与の点で、好ましくは60ppm以上90ppm以下の範囲となる量であり、さらに好ましくは70ppm以上80ppm以下の範囲となる量である。
本発明におけるエステル化反応工程においては、触媒成分である前記チタン化合物と、添加剤である前記マグネシウム化合物及びリン化合物とを、下記式(i)から算出される値Zが下記の関係式(ii)を満たすように、添加して溶融重合させる場合が好ましい。ここで、P含有量は芳香環を有しない5価のリン酸エステルを含むリン化合物全体に由来するリン量であり、Ti含有量は、有機キレートチタン錯体を含むTi化合物全体に由来するチタン量である。このように、チタン化合物を含む触媒系でのマグネシウム化合物及びリン化合物の併用を選択し、その添加タイミング、添加割合を制御することによって、チタン化合物の触媒活性を適度に高く維持しつつも、黄色味の少ない色調が得られ、重合反応時やその後の製膜時(溶融時)などで高温下に曝されても黄着色を生じ難い耐熱性を付与することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンに作用するのみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
前記式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
本発明においては、特殊な合成等が不要であり、安価でかつ容易に入手可能なチタン化合物、リン化合物、マグネシウム化合物を用いて、反応に必要とされる反応活性を持ちながら、色調及び熱に対する着色耐性に優れたポリエステル樹脂を得ることができる。
前記式(ii)において、重合反応性を保った状態で、色調及び熱に対する着色耐性をより高める観点から、+1.0≦Z≦+4.0を満たす場合が好ましく、+1.5≦Z≦+3.0を満たす場合がより好ましい。
本発明における好ましい態様として、エステル化反応が終了する前に、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールに、1ppm以上30ppm以下のクエン酸又はクエン酸塩を配位子とするキレートチタン錯体を添加後、該キレートチタン錯体の存在下に、60ppm以上90ppm以下(より好ましくは70ppm以上80ppm以下)の弱酸のマグネシウム塩を添加し、該添加後にさらに、60ppm以上80ppm以下(より好ましくは65ppm以上75ppm以下)の、芳香環を置換基として有しない5価のリン酸エステルを添加する態様が挙げられる。
エステル化反応は、少なくとも2個の反応器を直列に連結した多段式装置を用いて、エチレングリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水又はアルコールを系外に除去しながら実施することができる。
また、上記したエステル化反応は、一段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cmが好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cmである。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm、より好ましくは1.0〜3.0kg/cmである。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、前記第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
−重縮合−
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
エステル化反応で生成したオリゴマー等のエステル化反応生成物は、引き続いて重縮合反応に供される。この重縮合反応は、多段階の重縮合反応槽に供給することにより好適に行なうことが可能である。
例えば、3段階の反応槽で行なう場合の重縮合反応条件は、第一反応槽は、反応温度が255〜280℃、より好ましくは265〜275℃であり、圧力が100〜10torr(13.3×10−3〜1.3×10−3MPa)、より好ましくは50〜20torr(6.67×10−3〜2.67×10−3MPa)であって、第二反応槽は、反応温度が265〜285℃、より好ましくは270〜280℃であり、圧力が20〜1torr(2.67×10−3〜1.33×10−4MPa)、より好ましくは10〜3torr(1.33×10−3〜4.0×10−4MPa)であって、最終反応槽内における第三反応槽は、反応温度が270〜290℃、より好ましくは275〜285℃であり、圧力が10〜0.1torr(1.33×10−3〜1.33×10−5MPa)、より好ましくは5〜0.5torr(6.67×10−4〜6.67×10−5MPa)である態様が好ましい。
本発明においては、上記のエステル化反応工程及び重縮合工程を設けることにより、チタン原子(Ti)、マグネシウム原子(Mg)、及びリン原子(P)を含むと共に、下記式(i)から算出される値Zが、下記の関係式(ii)を満たすポリエステル樹脂組成物を生成することができる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
ポリエステル樹脂組成物は、+0≦Z≦+5.0を満たすものであることで、Ti、P、及びMgの3元素のバランスが適切に調節されているので、重合反応性を保った状態で、色調と耐熱性(高温下での黄着色の低減)とに優れ、かつ高い静電印加性を維持することができる。また、本発明では、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステル樹脂を得ることができる。
前記式(i)は既述のように、リン化合物、マグネシウム化合物、及びリン化合物の3者のバランスを定量的に表現したものであり、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表したものである。値Zが+0以上、つまりチタンに作用するリン量が少な過ぎない範囲であると、チタンの触媒活性(重合反応性)を高く保ちつつ、より良好な耐熱性が得られ、得られるポリエステル樹脂の色調も黄色味が抑えられ、重合後の例えば製膜時(溶融時)にも着色が抑えられ、より良好な色調が得られる。また、値Zが+5.0以下、つまりチタンに作用するリン量が多過ぎない範囲であると、得られるポリエステルの耐熱性及び色調がより良好であり、触媒活性、生成性により優れる。
本発明においては、上記同様の理由から、前記式(ii)は、1.0≦Z≦4.0を満たす場合が好ましく、1.5≦Z≦3.0を満たす場合がより好ましい。
Ti、Mg、及びPの各元素の測定は、高分解能型高周波誘導結合プラズマ−質量分析(HR-ICP-MS;SIIナノテクノロジー社製AttoM)を用いてPET中の各元素を定量し、得られた結果から含有量[ppm]を算出することにより行なうことができる。
また、生成されるポリエステル樹脂組成物は、更に、下記の関係式(iii)で表される関係を満たすものであることが好ましい。
重縮合後にペレットとしたときのb値 ≦ 4.0 ・・・(iii)
重縮合して得られたポリエステル樹脂をペレット化し、該ペレットのb値が4.0以下であることにより、黄色味が少なく、透明性に優れる。b値が3.0以下である場合、Ge触媒で重合したポリエステル樹脂と遜色ない色調になる。
b値は、色味を表す指標となるものであり、ND−101D(日本電色工業(株)製)を用いて計測される値である。
また更に、ポリエステル樹脂組成物は、下記の関係式(iv)で表される関係を満たしていることが好ましい。
色調変化速度[Δb/分]≦ 0.15 ・・・(iv)
重縮合して得られたポリエステル樹脂ペレットを、300℃で溶融保持した際の色調変化速度[Δb/分]が0.15以下であることにより、加熱下に曝された際の黄着色を低く抑えることができる。これにより、例えば押出機で押し出して製膜する等の場合に、黄着色が少なく、色調に優れたフィルムを得ることができる。
前記色調変化速度は、値が小さいほど好ましく、0.10以下であることが特に好ましい。
色調変化速度は、熱による色の変化を表す指標となるものであり、下記方法により求められる値である。すなわち、
ポリエステル樹脂組成物のペレットを、射出成形機(例えば東芝機械(株)製のEC100NII)のホッパーに投入し、シリンダ内(300℃)で溶融保持させた状態で、その保持時間を変更してプレート状に成形し、このときのプレートb値をND−101D(日本電色工業(株)製)により測定する。b値の変化をもとに変化速度[Δb/分]を算出する。
(添加剤)
本発明におけるポリエステルは、光安定化剤、酸化防止剤などの添加剤を更に含有することができる。
本発明のポリエステルフィルムは、光安定化剤が添加されていることが好ましい。光安定化剤を含有することで、紫外線劣化を防ぐことができる。光安定化剤とは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物、フィルム等が光吸収して分解して発生したラジカルを捕捉し、分解連鎖反応を抑制する材料などが挙げられる。
光安定化剤として好ましくは、紫外線などの光線を吸収して熱エネルギーに変換する化合物である。このような光安定化剤をフィルム中に含有することで、長期間継続的に紫外線の照射を受けても、フィルムによる部分放電電圧の向上効果を長期間高く保つことが可能になったり、フィルムの紫外線による色調変化、強度劣化等が防止される。
例えば紫外線吸収剤は、ポリエステルの他の特性が損なわれない範囲であれば、有機系紫外線吸収剤、無機系紫外線吸収剤、及びこれらの併用のいずれも、特に限定されることなく好適に用いることができる。一方、紫外線吸収剤は、耐湿熱性に優れ、フィルム中に均一分散できることが望まれる。
紫外線吸収剤の例としては、有機系の紫外線吸収剤として、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、トリアジン系として2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、ヒンダードアミン系のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、そのほかに、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、及び2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、などが挙げられる。
これらの紫外線吸収剤のうち、繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤は、上述の紫外線吸収剤単体でフィルムに添加してもよいし、有機系導電性材料や、非水溶性樹脂に紫外線吸収剤能を有するモノマーを共重合させた形態で導入してもよい。
光安定化剤のポリエステルフィルム中における含有量は、ポリエステルフィルムの全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、より好ましくは0.3質量%以上7質量%以下であり、さらに好ましくは0.7質量%以上4質量%以下である。これにより、長期経時での光劣化によるポリエステルの分子量低下を抑止でき、その結果発生するフィルム内の凝集破壊に起因する密着力低下を抑止できる。
更に、本発明のポリエステルフィルムは、前記光安定化剤の他にも、例えば、易滑剤(微粒子)、紫外線吸収剤、着色剤、熱安定剤、核剤(結晶化剤)、難燃化剤などを添加剤として含有することができる。
本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、上記のようなポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含むポリエステル樹脂組成物を用い、前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物と前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して、前記第2溶融膜状物の少なくとも片面に前記第1溶融膜状物を溶融積層することにより積層体を形成する共押出し工程と、
前記積層体の縦延伸及び横延伸を行い、前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)としたときに、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下にして二軸延伸フィルムを形成する延伸工程と、
前記二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、前記第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下にする熱固定工程と、を含む。
また、本発明のポリエステルフィルムの製造方法は、更に、固相重合工程に用いるポリエステルを、ジカルボン酸又はそのエステル誘導体とジオール化合物とをチタン系触媒の存在下、エステル化反応させて合成する合成工程を有していることが好ましい。なお、ジカルボン酸及びそのエステル誘導体、ジオール化合物、並びにチタン系触媒の詳細については、既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
−固相重合工程−
本発明における固相重合工程では、ポリエステルを固相重合する。固相重合は、既述のエステル化反応により重合したポリエステル又は市販のポリエステルをペレット状などの小片形状にし、これを用いて好適に行なえる。固相重合は、150℃以上250℃以下、より好ましくは170℃以上240℃以下、さらに好ましくは190℃以上230℃以下で1時間以上50時間以下、より好ましくは5時間以上40時間以下、さらに好ましくは10時間以上30時間以下の条件で行なうのが好ましい。また、固相重合は、真空中あるいは窒素気流中で行なうことが好ましい。
固相重合は、バッチ式(容器内に樹脂を入れ、この中で所定の時間熱を与えながら撹拌する方式)で実施してもよく、連続式(加熱した筒の中に樹脂を入れ、これを加熱しながら所定の時間滞流させながら筒中を通過させて、順次送り出す方式)で実施してもよい。
−共押出し工程−
共押出し工程では、前記固相重合工程を経た後のポリエステルを溶融混練し、前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物と前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して、前記第2溶融膜状物の少なくとも片面に前記第1溶融膜状物を積層することにより積層体を形成する。
例えば、上記の固相重合工程で得られたポリエステルを乾燥し、残留水分を100ppm以下にした後、押出し機を用いて溶融する。溶融温度は、250℃以上320℃以下が好ましく、260℃以上310℃以下がより好ましく、270℃以上300℃以下がさらに好ましい。
熱分解による末端COOHの発生をより抑制できる点で、押出し機内を窒素置換して行なうのがより好ましい。
溶融された溶融樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出す。このとき、前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物と、該第2溶融膜状物の少なくとも片面側に前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して溶融積層する。
第1溶融膜状物は第2溶融膜状物の片面に積層してもよいし、両面に積層してもよい。
各押出ダイから共押出されたメルトは、チルロール(冷却ロール)を用いて冷却され、固化される。このとき、チルロールの温度は、10℃以上80℃以下が好ましく、より好ましくは15℃以上70℃以下、さらに好ましくは20℃以上60℃以下である。さらに、メルトとチルロールとの間で密着性を高め、冷却効率を上げる観点からは、チルロールにメルトが接触する前に静電気を印加しておくことが好ましい。さらに、チルロール反対面から冷風を当てたり、冷却ロールを接触させ、冷却を促すことも好ましい。これにより、厚手フィルム(具体的には、延伸後の厚みが250μm以上、更には300μm以上のフィルム)であっても、効果的に冷却が行なえる。例えば、第1溶融膜状物の厚みは100μm以上2000μm以下であり、第2溶融膜状物の厚みは100μm以上4000μm以下とする。
なお、冷却が不充分な場合には、球晶が発生しやすく、これが延伸ムラを引き起こし、厚みムラを発生させることがある。
−延伸工程−
延伸工程では、共押出し工程により作製された積層体(未延伸の積層フィルム)の縦延伸及び横延伸を行い、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下に制御する。縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度が(Tg1+10)℃以上であれば延伸時の応力を低減することが出来るために耐加水分解性付与に必要な延伸倍率での延伸が可能となり、(Tg1+35)℃以下であれば耐加水分解性改善に必要な配向を付与することが可能となる。二軸延伸時(縦延伸時及び横延伸時)のフィルム表面温度は、(Tg1+12)℃以上(Tg1+30)℃以下であることがさらに好ましい。
例えば、積層体(未延伸の積層ポリエステルフィルム)を、70℃以上140℃以下の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に3倍以上5倍以下の延伸率で延伸し、20℃以上50℃以下の温度のロール群で冷却する。続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、80℃以上150℃以下の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3倍以上5倍以下の延伸率で延伸する。
延伸率は、長手方向と幅方向それぞれ3倍以上5倍以下とするのが好ましい。また、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は、9倍以上15倍以下であることが好ましい。面積倍率が9倍以上であると、得られる二軸延伸積層フィルムの反射率や隠蔽性、フィルム強度が良好であり、また面積倍率が15倍以下であると、延伸時の破れを回避することができる。
二軸延伸する方法としては、上述のように、長手方向と幅方向の延伸とを分離して行なう逐次二軸延伸方法のほか、長手方向と幅方向の延伸を同時に行なう同時二軸延伸方法のいずれであってもよい。
−熱固定工程−
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて、二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却する。一般に、熱固定処理温度(Ts)が低いとフィルムの熱収縮が大きいため、高い熱寸法安定性を付与するためには、熱処理温度は高い方が好ましい。しかしながら、熱処理温度を高くし過ぎると配向結晶性が低下し、その結果形成されたフィルムが耐加水分解性に劣ることがある。
本発明では、二軸延伸フィルムの熱固定処理を行う際、第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下に制御する。熱固定時のフィルム表面温度が(Tm2−40)℃以上であれば熱固定による残留歪の除去効果が十分となり、熱収縮が許容範囲内のレベルとなり、Tm2℃以下であれば第2樹脂層の配向緩和による耐加水分解性の悪化が防止可能となる。
なお、本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成するバックシート(裏面封止用フィルム)として用いることができるが、モジュール使用時には雰囲気温度が100℃程度まで上昇することがある。そのため、熱固定時のフィルム表面温度は(Tm2−30)℃以上(Tm2−10)℃以下であることがさらに好ましい。
また必要に応じて、幅方向あるいは長手方向に1〜12%の弛緩処理を施してもよい。
熱固定されたポリエステルフィルムは通常Tg以下まで冷却され、ポリエステルフィルム両端のクリップ把持部分をカットしロール状に巻き取られる。この際、最終熱固定処理温度以下、Tg以上の温度範囲内で、幅方向及び/または長手方向に1〜12%弛緩処理することが好ましい。
また、冷却は、最終熱固定温度から室温までを毎秒1℃以上100℃以下の冷却速度で徐冷することが寸法安定性の点で好ましい。特に、Tg+50℃からTgまでを、毎秒1℃以上100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特
に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、ポリエステルフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
また、上記ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルフィルムの強度を向上させる目的で、多段縦延伸、再縦延伸、再縦横延伸、横・縦延伸など公知の延伸フィルムに用いられる延伸を行ってもよい。縦延伸と横延伸の順序を逆にしてもよい。
(太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム)
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解性及び耐電圧性に優れ、太陽電池裏面封止用のポリエステルフィルムとして好適である。
(太陽電池裏面保護膜)
本発明のポリエステルフィルムは、被着物に対して易接着性の易接着性層、紫外線吸収層、光反射性のある白色層などの機能性層を少なくとも1層設けて構成することができる。例えば、1軸延伸後及び/又は2軸延伸後のポリエステルフィルムに下記の機能性層を塗設してもよい。塗設には、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法、カーテンコート法等の公知の塗布技術を用いることができる。
また、これらの塗設前に表面処理(火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等)を実施してもよい。さらに、粘着剤を用いて貼り合わせることも好ましい。
−易接着性層−
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成する場合に太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の該封止材と向き合う側に、易接着性層を有していることが好ましい。封止材(特にエチレン−酢酸ビニル共重合体)を含む被着物(例えば太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の封止材の表面)に対して接着性を示す易接着性層を設けることにより、バックシートと被着物(特に封止材)との間を強固に接着することができる。具体的には、易接着性層は、特に封止材として用いられるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)との接着力が10N/cm以上、好ましくは20N/cm以上であることが好ましい。
さらに、易接着性層は、太陽電池モジュールの使用中にバックシートの剥離が起こらないことが必要であり、そのために易接着性層は高い耐湿熱性を有することが望ましい。
(1)バインダー
本発明における易接着性層はバインダーの少なくとも1種を含有することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。中でも、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものを挙げることができる。
前記ポリオレフィンの例として、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)が挙げられる。前記アクリル樹脂の例として、ジュリマーET−410、同SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)が挙げられる。また、前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例として、セラネートWSA1060、同WSA1070(ともにDIC(株)製)、及びH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記バインダーの量は、0.05〜5g/mの範囲が好ましく、0.08〜3g/mの範囲が特に好ましい。バインダー量は、0.05g/m以上であることでより良好な接着力が得られ、5g/m以下であることでより良好な面状が得られる。
(2)微粒子
本発明における易接着性層は、微粒子の少なくとも1種を含有することができる。易接着性層は、微粒子を層全体の質量に対して5質量%以上含有することが好ましい。
微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等の無機微粒子が好適に挙げられる。特にこの中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
微粒子の粒径は、10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径が前記範囲の微粒子を用いることにより、良好な易接着性を得ることができる。微粒子の形状には特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
微粒子の易接着性層中における添加量としては、易接着性層中のバインダー当たり5〜400質量%が好ましく、より好ましくは50〜300質量%である。微粒子の添加量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性に優れており、400質量%以下であると、易接着性層の面状がより良好である。
(3)架橋剤
本発明における易接着性層は、架橋剤の少なくとも1種を含有することができる。
架橋剤の例としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。湿熱経時後の接着性を確保する観点から、これらの中でも特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例として、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS500、同WS700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
架橋剤の易接着性層中における好ましい添加量は、易接着性層のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、反射層の強度低下や接着不良が起こりにくく、50質量%以下であることで塗布液のポットライフをより長く保てる。
(4)添加剤
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
(5)易接着性層の形成方法
本発明の易接着性層の形成方法としては、易接着性を有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法や塗布による方法があるが、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
(6)物性
本発明における易接着性層の厚みには特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であることで必要とする易接着性が得られやすく、8μm以下であることで面状をより良好に維持することができる。
また、本発明における易接着性層は、ポリエステルフィルムとの間に着色層(特に反射層)が配置された場合の該着色層の効果を損なわない観点から、透明性を有していることが好ましい。
−紫外線吸収層−
本発明のポリエステルフィルムには、上記の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層が設けられてもよい。紫外線吸収層は、ポリエステルフィルム上の任意の位置に配置することができる。
紫外線吸収剤は、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースエステル樹脂等とともに、溶解、分散させて用いることが好ましく、400nm以下の光の透過率を20%以下にするのが好ましい。
−着色層−
本発明のポリエステルフィルムには、着色層を設けることができる。着色層は、ポリエステルフィルムの表面に接触させて、あるいは他の層を介して配置される層であり、顔料やバインダーを用いて構成することができる。
着色層の第一の機能は、入射光のうち太陽電池セルで発電に使われずにバックシートに到達した光を反射させて太陽電池セルに戻すことにより、太陽電池モジュールの発電効率を上げることにある。第二の機能は、太陽電池モジュールをオモテ面側から見た場合の外観の装飾性を向上することにある。一般に太陽電池モジュールをオモテ面側から見ると、太陽電池セルの周囲にバックシートが見えており、バックシートに着色層を設けることにより装飾性を向上させることができる。
(1)顔料
本発明における着色層は、顔料の少なくとも1種を含有することができる。
顔料は、2.5〜8.5g/mの範囲で含有されるのが好ましい。着色層中における顔料のより好ましい含有量は、4.5〜7.5g/mの範囲である。顔料の含有量が2.5g/m以上であることで、必要な着色が得られやすく、光の反射率や装飾性をより優れたものに調整することができる。顔料の含有量が8.5g/m以下であることで、着色層の面状をより良好に維持することができる。
顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、群青、紺青、カーボンブラック等の無機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。これら顔料のうち、入射する太陽光を反射する反射層として着色層を構成する観点からは、白色顔料が好ましい。白色顔料としては、例えば、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルクなどが好ましい。
顔料の平均粒径としては、0.03〜0.8μmが好ましく、より好ましくは0.15〜0.5μm程度が好ましい。平均粒径が前記範囲内であると、光の反射効率が低下する場合がある。
入射した太陽光を反射する反射層として着色層を構成する場合、顔料の反射層中における好ましい添加量は、用いる顔料の種類や平均粒径により変化するため一概には言えないが、1.5〜15g/mが好ましく、より好ましくは3〜10g/m程度である。添加量は、1.5g/m以上であることで必要な反射率が得られやすく、15g/m以下であることで反射層の強度をより一層高く維持することができる。
(2)バインダー
本発明における着色層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。
バインダーを含む場合の着色層中における量としては、前記顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの量は、15質量%以上であることで着色層の強度を一層良好に維持することができ、200質量%以下であることで反射率や装飾性が低下する。
着色層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。バインダーは、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものが挙げられる。
前記ポリオレフィンの例としては、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)などが挙げられる。前記アクリル樹脂の例としては、ジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)などが挙げられる。前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例としては、セラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)、H7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)等を挙げることができる。
(3)添加剤
本発明における着色層には、バインダー及び顔料以外に、必要に応じて、さらに架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
架橋剤としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。架橋剤の着色剤中における添加量は、着色層のバインダーあたり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、着色層の強度や接着性を高く維持することができ、また50質量%以下であることで、塗布液のポットライフをより長く維持することができる。
界面活性剤としては、アニオン系やノニオン系等の公知の界面活性剤を利用することができる。界面活性剤の添加量は、0.1〜15mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5mg/mが好ましい。界面活性剤の添加量は、0.1mg/m以上であることでハジキの発生が効果的に抑制され、また、15mg/m以下であることで接着性に優れる。
さらに、着色層には、上記の顔料とは別に、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。フィラーの添加量は、着色層のバインダーあたり20質量%以下が好ましく、より好ましくは15質量%以下である。フィラーを含むことにより、着色層の強度を高めることができる。また、フィラーの添加量が20質量%以下であることで、顔料の比率が保てるため、良好な光反射性(反射率)や装飾性が得られる。
(4)着色層の形成方法
着色層の形成方法としては、顔料を含有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法、ポリエステルフィルム成形時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等がある。このうち、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いられる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。しかし、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
(5)物性
着色層は、白色顔料を含有して白色層(光反射層)として構成されることが好ましい。反射層である場合の550nmの光反射率としては、75%以上であるのが好ましい。反射率が75%以上であると、太陽電池セルを素通りして発電に使用されなかった太陽光をセルに戻すことができ、発電効率を上げる効果が高い。
白色層(光反射層)の厚みは、1〜20μmが好ましく、1〜10μmがより好ましく、更に好ましくは1.5〜10μm程度である。膜厚が1μm以上である場合、必要な装飾性や反射率が得られやすく、20μm以下であると面状が悪化する場合がある。
−下塗り層−
本発明のポリエステルフィルムには、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、例えば、着色層が設けられるときには、着色層とポリエステルフィルムとの間に設けることができる。下塗り層は、バインダー、架橋剤、界面活性剤等を用いて構成することができる。
下塗り層中に含有するバインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が挙げられる。下塗り層には、バインダー以外にエポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤、アニオン系やノニオン系等の界面活性剤、シリカ等のフィラーなどを添加してもよい。
下塗り層を塗布形成するための方法や用いる塗布液の溶媒には、特に制限はない。
塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターを利用することができる。前記溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
塗布は、2軸延伸した後のポリエステルフィルムに塗布してもよいし、1軸延伸後のポリエステルフィルムに塗布してもよい。この場合、塗布後に初めの延伸と異なる方向に更に延伸してフィルムとしてもよい。さらに、延伸前のポリエステルフィルムに塗布した後に、2方向に延伸してもよい。
下塗り層の厚みは、0.05μm〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1.5μm程度の範囲が好ましい。膜厚が0.05μm以上であることで必要な接着性が得られやすく、2μm以下であることで、面状を良好に維持することができる。
−フッ素系樹脂層・ケイ素系樹脂層−
本発明のポリエステルフィルムには、フッ素系樹脂層及びケイ素系(Si系)樹脂層の少なくとも一方を設けることが好ましい。フッ素系樹脂層やSi系樹脂層を設けることで、ポリエステル表面の汚れ防止、耐候性向上が図れる。具体的には、特開2007−35694号公報、特開2008−28294号公報、WO2007/063698明細書に記載のフッ素樹脂系塗布層を有していることが好ましい。
また、テドラー(DuPont社製)等のフッ素系樹脂フィルムを張り合わせることも好ましい。
フッ素系樹脂層及びSi系樹脂層の厚みは、各々、1μm以上50μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは1μm以上40μm以下の範囲が好ましく、更に好ましくは1μm以上10μm以下である。
−無機層−
本発明のポリエステルフィルムは、更に、無機層が設けられた形態も好ましい。無機層を設けることで、ポリエステルへの水やガスの浸入を防止する防湿性やガスバリア性の機能を与えることができる。無機層は、ポリエステルフィルムの表裏いずれに設けてもよいが、防水、防湿等の観点から、ポリエステルフィルムの電池側基板と対向する側(前記着色層や易接着層の形成面側)とは反対側に好適に設けられる。
無機層の水蒸気透過量(透湿度)としては、10g/m・d〜10−6g/m・dが好ましく、より好ましくは10g/m・d〜10−5g/m・dであり、さらに好ましくは10g/m・d〜10−4g/m・dである。
このような透湿度を有する無機層を形成するには、下記の乾式法が好適である。
乾式法によりガスバリア性の無機層(以下、ガスバリア層ともいう。)を形成する方法としては、抵抗加熱蒸着、電子ビーム蒸着、誘導加熱蒸着、及びこれらにプラズマやイオンビームによるアシスト法などの真空蒸着法、反応性スパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、ECR(電子サイクロトロン)スパッタリング法などのスパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理的気相成長法(PVD法)、熱や光、プラズマなどを利用した化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。中でも、真空下で蒸着法により膜形成する真空蒸着法が好ましい。
ここで、ガスバリア層を形成する材料が無機酸化物、無機窒化物、無機酸窒化物、無機ハロゲン化物、無機硫化物などを主たる構成成分とする場合は、形成しようとするガスバリア層の組成と同一の材料を直接揮発させて基材などに堆積させることも可能であるが、この方法で行なう場合には、揮発中に組成が変化し、その結果、形成された膜が均一な特性を呈さない場合がある。そのため、1)揮発源として、形成するバリア層と同一組成の材料を用い、無機酸化物の場合は酸素ガスを、無機窒化物の場合は窒素ガスを、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガスを、無機硫化物の場合は硫黄系ガスを、それぞれ系内に補助的に導入しながら揮発させる方法、2)揮発源として無機物群を用い、これを揮発させながら、無機酸化物の場合は酸素ガスを、無機窒化物の場合は窒素ガスを、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガスを、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガスを、無機硫化物の場合は硫黄系ガスを、それぞれ系内に導入し、無機物と導入したガスを反応させながら基材表面に堆積させる方法、3)揮発源として無機物群を用い、これを揮発させて、無機物群の層を形成させた後、それを無機酸化物の場合は酸素ガス雰囲気下、無機窒化物の場合は窒素ガス雰囲気下、無機酸窒化物の場合は酸素ガスと窒素ガスの混合ガス雰囲気下、無機ハロゲン化物の場合はハロゲン系ガス雰囲気下、無機硫化物の場合は硫黄系ガス雰囲気下で保持することにより無機物層と導入したガスを反応させる方法、等が挙げられる。
これらのうち、揮発源から揮発させることが容易であるという点で、2)又は3)がより好ましく用いられる。さらには、膜質の制御が容易である点で2)の方法が更に好ましく用いられる。また、バリア層が無機酸化物の場合は、揮発源として無機物群を用い、これを揮発させて、無機物群の層を形成させた後、空気中で放置することで、無機物群を自然酸化させる方法も、形成が容易であるという点で好ましい。
また、アルミ箔を貼り合わせてバリア層として使用することも好ましい。厚みは、1μm以上30μm以下が好ましい。厚みは、1μm以上であると、経時(サーモ)中にポリエステルフィルム中に水が浸透し難くなって加水分解を生じ難く、30μm以下であると、バリア層の厚みが厚くなり過ぎず、バリア層の応力でフィルムにベコが発生することもない。
(太陽電池モジュール)
本発明の太陽電池モジュールは、既述の本発明のポリエステルフィルム(バックシートを含む)を備えたものであり、好ましくは更に、太陽光が入射する側の透明性の基板、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子、太陽電池素子を封止する封止材などを用いて構成される。
太陽電池モジュールは、例えば、図2に示されるように、電気を取り出す金属配線(不図示)で接続された発電素子(太陽電池素子)3をエチレン・酢酸ビニル共重合体系(EVA系)樹脂等の封止材2で封止し、これを、ガラス等の透明基板4と、本発明のポリエステルフィルムを備えたバックシート1とで挟んで互いに張り合わせることにより構成されてもよい。
透明性の基板は、太陽光が透過し得る光透過性を有していればよく、光を透過する基材から適宜選択することができる。発電効率の観点からは、光の透過率が高いものほど好ましく、このような基板として、例えば、ガラス基板、アクリル樹脂などの透明樹脂などを好適に用いることができる。
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、銅−インジウム−ガリウム−セレン、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルル、ガリウム−砒素などのIII−V族やII−VI族化合物半導体系など、各種公知の太陽電池素子を適用することができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
実施例及び比較例として、下記表1、表2にそれぞれ示されるジカルボン酸とジオールを触媒を用いて縮重合することによりポリエステル樹脂組成物をそれぞれ作製した。このポリエステル樹脂組成物を用いて、共押出し工程、延伸工程、熱固定工程を順次行うことにより、表1、2にそれぞれ示される物性を有するA層(第1樹脂層)とB層(第2樹脂層)が溶融積層したポリエステルフィルムを製造した。
(実施例1)
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置によりポリエステル樹脂を得た。
−A層用のポリエステル樹脂の合成−
[反応物生成工程]
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下で平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600eq/トンであった。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が200eq/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で67ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
(2)重縮合反応
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力2.67×10−3MPa(20torr)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力6.67×10−4MPa(5torr)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力2.0×10−4MPa(1.5torr)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、ペレット化(直径3mm、長さ4mm)することにより、固有粘度0.63dl/g、末端COOH基濃度22当量/トンの反応生成物(ポリエチレンテレフタレート;以下、PETと略記する。)を得た。
[固相重合工程]
上記で重合したPETペレットを、窒素雰囲気下、215℃で固相重合を実施し、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度12当量/トン、Tg=78℃の反応生成物を得た。
−B層用のポリエステル樹脂の合成−
テレフタル酸(TPA)が94モル%、イソフタル酸(IPA)が6モル%の割合で含むジカルボン酸4.7トンと、エチレングリコール(EG)1.8トンとをエステル化反応槽に供給し、A層用樹脂と同様の溶融重合を行うことにより、固有粘度0.63dl/g、末端COOH基濃度21当量/トンの反応生成物(ポリエチレンテレフタレート;以下、PETと略記する。)を得た。続いてPETペレットを、窒素雰囲気下、215℃で15時間固相重合を実施し、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度11当量/トン、Tg=77℃の反応生成物を得た。
−共押出し−
上記のように固相重合を終えた樹脂ペレットを、再び含水率50ppm以下に乾燥させた後、A層用樹脂を直径150mmの1軸混練押出機のホッパーに投入し、N気流下、285℃の条件で、B層用樹脂を直径100mmの1軸混練押出機のホッパーに投入し、N気流下、285℃の条件で溶融し、フィードブロックを用いて2種3層構造の未延伸フィルムを10m/分の速度で押出した。この溶融体(メルト)をギアポンプ、濾過器(孔径10μm)を通した後、幅0.8mのダイから押出すと共に、10℃に温調された直径1.5mのキャストロール(冷却ロール)上でキャストした。
−延伸−
上記方法で冷却ロール上に押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、下記表3に記載の厚みのフィルムを得た。
<延伸方法>
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度を90℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.5倍、延伸速度を3000%/秒として実施した。
(b)横延伸
縦延伸した前記フィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
<条件>
・予熱温度:95℃
・延伸温度:95℃
・延伸倍率:3.9倍
・延伸速度:70%/秒
−熱固定・熱緩和−
横延伸後、215℃で10秒間熱固定した後、210℃で横方向に2%緩和した。
−巻き取り−
延伸後、両端を10cmずつトリミングした後、両端に厚み出し加工を施した後、直径30cmの樹脂製巻芯に3000m巻き付けた。なお、幅は1.5m、巻長は2000mであった。
(実施例2)
実施例1において、ポリエステル樹脂組成物を作製する際に用いる触媒として、有機キレートチタン触媒(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)をテトラ−n−ブチルチタネートに変更した。A層用樹脂として、固有粘度0.81dl/g、末端COOH基濃度16当量/トンのもの、B層用樹脂として、固有粘度0.81dl/g、末端COOH基濃度17当量/トンのものをそれぞれ用い、製膜以降の工程は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
(比較例1)
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、第三重縮合反応槽の滞留時間を1.0時間に短縮させることにより、固有粘度0.57dl/g、末端COOH基濃度15当量/トンとした。また、実施例1で行った固相重合を省略した。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、第三重縮合反応槽の滞留時間を1.0時間に短縮させることにより、固有粘度0.57dl/g、末端COOH基濃度15当量/トンとした。また、実施例1で行った固相重合を省略した。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(比較例2)
A層の樹脂の溶融重合条件として、テレフタル酸(TPA)が88モル%、イソフタル酸(IPA)が12モル%の割合で実施例1の溶融重合条件で、固有粘度0.62dl/gの樹脂を得た。また、215℃で固相重合を行い、固有粘度0.72dl/g、末端COOH基濃度14当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1のA層の樹脂の溶融重合条件から、第三重縮合反応槽の滞留時間を1.6時間にすることにより、固有粘度0.66dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。また、実施例1で行った固相重合を省略した。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(比較例3)
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、触媒の種類を三酸化アンチモンにすることにより、固有粘度0.67dl/g、末端COOH基濃度27当量/トンの樹脂を得た。また、実施例1で行った固相重合を省略した。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、触媒の種類を三酸化アンチモンにすることにより、固有粘度0.67dl/g、末端COOH基濃度27当量/トンの樹脂を得た。また、実施例1で行った固相重合を省略した。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(比較例4)
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件から、固相重合時間を5時間にすることにより、固有粘度0.73dl/g、末端COOH基濃度12当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、ジカルボン酸成分としてアジピン酸を6モル%配合することにより、固有粘度0.74dl/g、末端COOH基濃度14当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(実施例3)
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件からジカルボン酸成分としてイソフタル酸を1モル%配合し、更に固相重合時間を25時間に延長することにより固有粘度0.98dl/g、末端COOH基濃度7当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂としては、溶融重合条件として、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を5モル%に変更し、固相重合時間を23時間にすることにより、固有粘度0.97dl/g、末端COOH基濃度8当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(比較例5)
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件からジカルボン酸成分としてイソフタル酸を10モル%配合することにより固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂としては、溶融重合条件として、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を10モル%に変更することにより、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(比較例6)
A層の樹脂の固相重合条件として、実施例1の条件から50時間に延長することにより固有粘度1.15dl/g、末端COOH基濃度8当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂としては、固相重合条件として、実施例1の条件から50時間に延長することにより固有粘度1.17dl/g、末端COOH基濃度8当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(比較例7)
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件から、固相重合時間を7時間にすることにより、固有粘度0.74dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、A層に用いた樹脂と同一の樹脂を用いた。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(比較例8)
A層の樹脂は、比較例4と同じ樹脂を用いた。また、B層の樹脂は、テレフタル酸(TPA)が85モル%、イソフタル酸(IPA)が15モル%の割合で実施例1の溶融重合条件で、固有粘度0.74dl/g、末端COOH基濃度18当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(実施例4)
実施例1の熱固定温度を215℃から235℃へ変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
(実施例5)
実施例1の縦延伸条件を105℃、横延伸温度を110℃に変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
(実施例6)
実施例1のB層厚みを50μmから300μmに変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
(実施例7)
実施例1のA層を片面のみの積層とし、B層厚みを50μmから100μmにすることにより、フィルム厚みを350μmから250μmに変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
(実施例8)
A層の樹脂の溶融重合条件として、ジオール成分をエチレングリコール(EG)が99モル%、1,4シクロヘキサンジメタノール(1,4CHDM)が1モル%の割合で実施例1の溶融重合、固相重合を行い、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、ジオール成分をエチレングリコール(EG)が94モル%、1,4シクロヘキサンジメタノール(1,4CHDM)が6モル%の割合で実施例1の溶融重合、固相重合を行い、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度11当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(実施例9)
A層の樹脂は実施例8と同組成の物を用い、B層の樹脂は実施例1のA層に用いた樹脂80重量部と1,4CHDM 30モル%、固有粘度0.70dl/g、末端COOH基濃度20当量/トンの樹脂 20重量部を樹脂ブレンドすることにより得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
(実施例10)
実施例1と同じ樹脂組成で、共押出しの層厚みを変更することにより、A層の厚みを150μmから5μmへ、B層の厚みを50μmから340μmへ変更した。
(実施例11)
実施例1において、B層の樹脂の固層重合時間を6時間にすることにより、固有粘度0.70dl/g、末端COOH基濃度16当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
−フィルムの評価−
以上のようにして製造したサンプルフィルムについて、厚みのほか、種々の物性を測定し、製膜性、延伸性、耐電圧性、及び耐加水分解性を評価した。
各物性の測定、評価は、以下の方法により行なった。
(厚み)
ポリエステルフィルムの厚みは、接触式膜厚測定計(アンリツ製)を用いて行い、長手方向に0.5mに渡り等間隔に50点をサンプリングし、幅方向に製膜全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分した点)に50点をサンプリングし、これらの100点の厚みを測定する。これら100点の平均厚みを求め、フィルムの平均厚みとする。
A層、B層の厚みは、押出し時にフィルム物性に影響を与えない範囲内で微量の着色剤を配合し、フィルム切断の各層厚みを計測することによって測定した。
(昇温結晶化ピーク:Tc)
A層及びB層それぞれについて、示査走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC8500)を用い、5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークTc(℃)を求めた。
(結晶化発熱量:ΔH)
A層及びB層の結晶化発熱量ΔH(J/g)は以下の方法により求めた。
フィルムの各層をナイフにより削り、JIS K 7122に準じた測定により求めた。
(固有粘度:IV)
A層及びB層の固有粘度IV(dl/g)は以下の方法により求めた。
IVは、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
(末端カルボキシル基濃度:AV)
A層及びB層の末端カルボキシル基濃度AV(当量/トン)は以下の方法により求めた。
サンプルフィルムであるポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から末端カルボン酸量[eq/t]を算出した。
(面配向度:ΔP)
A層及びB層の面配向度ΔPは、アッベの屈折率計を用いて、フィルムのMD方向とTD方向の屈折率平均値と厚み方向の屈折率差より求めた。
(ガラス転移温度:Tg)
A層及びB層のガラス転移温度Tg(℃)はJIS K 7121に準じた測定により求めた。
(結晶融解ピーク:Tm)
A層及びB層の結晶融解ピークTm(℃)はJIS K 7121に準じた測定により求めた。
(溶融粘度)
A層及びB層の溶融粘度(Pa・s)は東洋精機製 キャピラリーレオメーターを用いてJIS K 7199 に準拠した測定により280℃せん断速度100sec−1における溶融粘度を求めた。
ポリエステルフィルムを構成するA層、B層の原料、物性等をそれぞれ表1、表2に示し、製造条件を表3に示す。
−製膜性−
製造したポリエステルフィルムの製膜性を以下の基準で評価した。
○:溶融押出し時に吐出が安定し、フィルム厚み変動や外観異常がない。
△:溶融押出し時に吐出の僅かな変動が見られるが、フィルム厚み変動や外観異常が実用上問題ない。
×:溶融押出し時に吐出の変動が見られ、フィルム厚み変動や外観異常が実用上問題となる。
−延伸性−
製造したポリエステルフィルムの延伸性を以下の基準で評価した。
○:延伸による厚みムラや外観異常がない。
△:延伸による厚みムラや外観異常が僅かに見られるが、実用上問題ない。
×:延伸による厚みムラや外観異常が見られ、実用上問題になる。
製造したポリエステルフィルムの耐電圧性を以下の基準で評価した。
−耐電圧性−
○:耐電圧が1000V以上のもの
△:耐電圧が600以上1000V未満のもの
×:耐電圧が600V未満のもの
−耐加水分解性−
製造したポリエステルフィルムの耐加水分解性を以下の基準で評価した。フィルムを120℃×100%の条件下で湿熱処理を行い、JIS K 7127に準じた測定により破断伸度を求めた。
○:未処理の伸度の1/2にまで低下するする時間が105時間以上のもの
△:未処理の伸度の1/2にまで低下するする時間が80時間以上、105時間未満のもの
×:未処理の伸度の1/2にまで低下するする時間が80時間未満のもの
−総合評価−
製造したポリエステルフィルムを以下の基準で総合評価した。
◎:すべての項目が○のもの
○:△評価が1つあるいは2つあるもの
△:△評価が3つ以上で×評価のないもの
×:1つでも×評価のあるもの
ポリエステルフィルムの評価結果を表4に示す。
前記表4に示すように、実施例1−11のポリエステルフィルムは、製膜性、延伸性、耐電圧性及び耐加水分解性のいずれも×の評価は無く、太陽電池裏面封止用のフィルムとして優れていることがわかる。
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成する裏面シート(太陽電池素子に対し太陽光の入射側と反対側に配置されるシート;いわゆるバックシート)の用途に好適に用いられる。
1・・・バックシート(裏面保護膜)
2・・・封止材
3・・・太陽電池素子
10・・・第1樹脂層
20・・・第2樹脂層
30・・・ポリエステルフィルム

Claims (9)

  1. 厚みが250μm以上600μm以下であり、二軸配向したポリエステルフィルムであり、
    それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む第1樹脂層と第2樹脂層とを有し、前記第2樹脂層の少なくとも片面に前記第1樹脂層が溶融積層されており、
    前記第1樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc1(℃)、結晶化発熱量をΔH1(J/g)、固有粘度をIV1(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV1(当量/トン)、及び、面配向度をΔP1としたときに、下記(1)〜(5)の関係
    (1)130≦Tc1≦160
    (2)23≦ΔH1
    (3)0.60≦IV1≦0.95
    (4)AV1≦20
    (5)0.14≦ΔP1≦0.20
    を満たし、
    前記第2樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc2(℃)、結晶化発熱量をΔH2(J/g)、固有粘度をIV2(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV2(当量/トン)、及び、面配向度をΔP2としたときに、下記(6)〜(10)の関係
    (6)150≦Tc2≦180
    (7)19≦ΔH2<23
    (8)0.60≦IV2≦0.95
    (9)AV2≦20
    (10)0.12≦ΔP2≦0.18
    を満たし、
    前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)、前記第2樹脂層のガラス転移温度をTg2(℃)としたときに、下記(11)の関係
    (11)Tg1−5≦Tg2≦Tg1−0.5
    を満たす太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
  2. 示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第1樹脂層の結晶融解ピーク(Tm1)が245℃以上260℃以下であり、前記第2樹脂層の結晶融解ピーク(Tm2)が225℃以上245℃未満である請求項1に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
  3. 前記第1樹脂層の共重合比率が3モル%未満であり、前記第2樹脂層の共重合比率が3モル%以上12モル%以下である請求項1又は請求項2に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
  4. 前記チタン化合物が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であり、かつ、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルをさらに含む請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
  5. 前記第1樹脂層の厚みが10μm以上150μm未満である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
  6. 280℃せん断速度100sec−1における前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
  7. 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを製造する方法であって、
    ポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む樹脂組成物を用い、前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物と前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して、前記第2溶融膜状物の少なくとも片面に前記第1溶融膜状物を溶融積層することにより積層体を形成する共押出し工程と、
    前記積層体の縦延伸及び横延伸を行い、前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)としたときに、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下にして二軸延伸フィルムを形成する延伸工程と、
    前記二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、前記第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下にする熱固定工程と、
    を含む太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムの製造方法。
  8. 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池裏面保護膜。
  9. 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池モジュール。
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