JP5306274B2 - 太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに太陽電池裏面保護膜及び太陽電池モジュール - Google Patents
太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム及びその製造方法、並びに太陽電池裏面保護膜及び太陽電池モジュール Download PDFInfo
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Description
また、太陽電池モジュールのバックシートには、耐電圧性も要求される。
<1> 厚みが250μm以上600μm以下であり、二軸配向したポリエステルフィルムであり、
それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む第1樹脂層と第2樹脂層とを有し、前記第2樹脂層の少なくとも片面に前記第1樹脂層が溶融積層されており、
前記第1樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc1(℃)、結晶化発熱量をΔH1(J/g)、固有粘度をIV1(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV1(当量/トン)、及び、面配向度をΔP1としたときに、下記(1)〜(5)の関係
(1)130≦Tc1≦160
(2)23≦ΔH1
(3)0.60≦IV1≦0.95
(4)AV1≦20
(5)0.14≦ΔP1≦0.20
を満たし、
前記第2樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc2(℃)、結晶化発熱量をΔH2(J/g)、固有粘度をIV2(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV2(当量/トン)、及び、面配向度をΔP2としたときに、下記(6)〜(10)の関係
(6)150≦Tc2≦180
(7)19≦ΔH2<23
(8)0.60≦IV2≦0.95
(9)AV2≦20
(10)0.12≦ΔP2≦0.18
を満たし、
前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)、前記第2樹脂層のガラス転移温度をTg2(℃)としたときに、下記(11)の関係
(11)Tg1−5≦Tg2≦Tg1−0.5
を満たす太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<2> 示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第1樹脂層の結晶融解ピーク(Tm1)が245℃以上260℃以下であり、前記第2樹脂層の結晶融解ピーク(Tm2)が225℃以上245℃未満である<1>に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<3> 前記第1樹脂層の共重合比率が3モル%未満であり、前記第2樹脂層の共重合比率が3モル%以上12モル%以下である<1>又は<2>に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<4> 前記チタン化合物が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であり、かつ、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルをさらに含む<1>〜<3>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<5> 前記第1樹脂層の厚みが10μm以上150μm未満である<1>〜<4>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<6> 280℃せん断速度100sec−1における前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下である<1>〜<5>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
<7> <1>〜<6>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを製造する方法であって、
ポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む樹脂組成物を用い、前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物と前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して、前記第2溶融膜状物の少なくとも片面に前記第1溶融膜状物を溶融積層することにより積層体を形成する共押出し工程と、
前記積層体の縦延伸及び横延伸を行い、前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)としたときに、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下にして二軸延伸フィルムを形成する延伸工程と、
前記二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、前記第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下にする熱固定工程と、
を含む太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムの製造方法。
<8> <1>〜<6>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池裏面保護膜。
<9> <1>〜<6>のいずれかに記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池モジュール。
安価で高耐電圧性を付与するために、フィルムの厚さが250μmを超える単一組成のポリエステルフィルムを製膜する場合、以下のような問題点が生じる。
例えば、低共重合比率のPET単層フィルムでは、溶融押出ししたポリエステル樹脂(未延伸のポリエステルフィルム)を冷却する際、厚み方向の中心部付近で結晶化し易く、表層部と中心部で結晶化状態が変化し、厚み方向で延伸応力が変化する。その結果、耐加水分解性の改善に有効な面配向度を上げることができない。また、高延伸応力により面配向度を上げようとすると中心部付近にボイドが生じて耐電圧性が低下し易い。
一方、低結晶性のPET単層フィルムでは、面配向度が上がらないために、耐加水分解性が低くなってしまう。
本発明に係る太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム(単に「ポリエステルフィルム」又は「フィルム」と記す場合がある。)は、厚みが250μm以上600μm以下であり、二軸配向したポリエステルフィルムであり、それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む第1樹脂層と第2樹脂層とを有し、第2樹脂層の少なくとも片面に第1樹脂層が溶融積層されている。そして、第1樹脂層は後述する(1)〜(5)の関係を満たし、第2樹脂層は後述する(6)〜(10)の関係を満たし、第1樹脂層と第2樹脂層とが後述する(11)の関係を満たすように構成されている。
なお、「溶融積層」とは、第1樹脂層と第2樹脂層とが接着層などの第3の層を介さずに少なくとも一方が溶融した状態で積層されて接合していることを意味する。例えば、共押出し法によって第1樹脂層と第2樹脂層とが積層されて接合したフィルムや、第1樹脂層及び第2樹脂層の一方がフィルム状に成形された後、他方が溶融した状態で積層されて接合したフィルムが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、耐電圧性及び破断強度をより一層向上させる観点から、フィルムの厚みは270μm以上500μm以下が好ましく300μm以上400μm以下がより好ましい。
以下、各層の物性について説明する。
第1樹脂層は、ポリエステルと触媒由来のチタン化合物とを含み、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc1(℃)、結晶化発熱量をΔH1(J/g)、固有粘度をIV1(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV1(当量/トン)、及び、面配向度をΔP1としたときに、下記(1)〜(5)の関係を満たす。
第1樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークTc1(℃)が、下記(1)の関係を有する。
(1)130≦Tc1≦160
第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1が、130℃未満ではボイドが発生し易く、160℃より大きいと配向性が低下する。第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1が上記(1)の関係を満たすことでボイドの発生及び配向性の低下を抑制することができる。ボイドの発生及び配向性の低下を一層抑制する観点から、第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1は、135℃以上155℃以下であることが好ましい。
第1樹脂層の昇温結晶化ピークTc1は、ポリエステルの重合度や触媒の種類や量を調整したり、あるいは共重合成分の配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1(J/g)は、下記(2)の関係を有する。
(2)23≦ΔH1
第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1が23J/gより小さいと、配向性が低下する。第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1が上記(2)の関係を満たすことで第1樹脂層の配向性の低下を抑制することができる。第1樹脂層の配向性の低下を一層抑制する観点から、第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1は、24J/g以上30J/g以下であることが好ましい。
第1樹脂層の結晶化発熱量ΔH1は、ポリエステルの共重合比率を調整することが、共重合比率の異なる樹脂をブレンドすることで上記範囲内に制御することができる。
第1樹脂層の固有粘度IV1(dl/g)は、下記(3)の関係を有する。
(3)0.60≦IV1≦0.95
第1樹脂層の固有粘度IV1が0.6dl/g未満では物性(フィルム強度と耐加水分解性)が悪化し、0.95dl/gより大きいと製膜性が悪化する。上記(3)の関係を満たすことで第1樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性の低下及び製膜性の悪化を抑制することができる。第1樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性の低下及び製膜性の悪化を一層抑制する観点から、第1樹脂層の固有粘度IV1は、0.65dl/g以上0.90dl/g以下であることが好ましい。
第1樹脂層の固有粘度IV1は、溶融重合の時間や真空度を調整することや固相重合の温度や時間を調整することで上記範囲内に制御することができる。
第1樹脂層のAV1(当量/トン)は、下記(4)の関係を有する。
(4)AV1≦20
第1樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV1が20当量/トンより大きいと耐加水分解性悪化する。上記(4)の関係を満たすことで、第1樹脂層の耐加水分解性の悪化を抑制することができる。
第1樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV1は、溶融重合時の触媒に有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いることや重合温度の低温化すること及び/又は固相重合により熱分解を防いだ重合方法を組み合わせて重合を進行させることで上記範囲内に制御することができる。
第1樹脂層の面配向度ΔP1は、下記(5)の関係を有する。
(5)0.14≦ΔP1≦0.20
第1樹脂層の面配向度ΔP1が0.20より大きいと耐電圧性が悪化し、0.14より小さいと耐加水分解性が悪化する。上記(5)の関係を満たすことで、第1樹脂層の耐電圧性及び耐加水分解性の悪化を抑制することができる。第1樹脂層の耐加水分解性の悪化を一層抑制する観点から、第1樹脂層の面配向度ΔP1は、0.15以上0.19以下であることが好ましい。
第1樹脂層の面配向度ΔP1は、縦及び/又は横延伸の倍率と延伸温度を第1層のTgに合わせて適宜調整することで上記範囲内に制御することができる。
第1樹脂層のガラス転移温度Tg1(℃)と第2樹脂層のガラス転移温度Tg2(℃)は、下記(11)の関係を満たすように構成する。
(11)Tg1−5≦Tg2≦Tg1−0.5
厚手のフィルムを製造する場合、第2樹脂層のガラス転移温度Tg2が、第1樹脂層のガラス転移温度Tg1の−5℃未満であると、Tg1とTg2との差が大きく、厚さ方向で温度差が生じて延伸工程時に配向し難くなるため、耐加水分解性が悪化する傾向がある。一方、Tg2がTg1の−0.5℃よりも大きいと、延伸時の応力が高くなる傾向が見られるとともに、フィルムの厚み均一性が低下してしまう。第1樹脂層のガラス転移温度Tg1と第2樹脂層のガラス転移温度Tg2が、上記(11)の関係を満たすことで、特に第2樹脂層の両面に第1樹脂層を溶融積層する場合に、均一な延伸を行うことができ、面配向度の均一化を図ることができる。
第1樹脂層のガラス転移温度Tg1は、共重合成分の配合比率調整、場合によっては可塑剤の配合をすることで上記範囲内に制御することができる。
第1樹脂層の厚みt1は10μm以上150μm未満であることが好ましく、20μm以上130μm以下であることがより好ましい。第1樹脂層の厚みt1が10μm以上であれば耐加水分解性の低下をより確実に抑制することができ、150μm未満であれば耐電圧性の悪化及び耐加水分解性の悪化をより確実に抑制することができる。
示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第1樹脂層の結晶融解ピークTm1が245℃以上260℃以下であることが好ましい。第1樹脂層の上記結晶融解ピークTm1が245℃以上であれば耐加水分解性及び耐熱性の悪化がより確実に抑制される。またホモポリエステルのDSCにより測定される融点は、約258℃であり、本発明において経済性に劣る融点アップのための共重合は不要である。
第1樹脂層の結晶融解ピークTm1は、共重合成分の種類や配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
第1樹脂層の共重合比率は3モル%未満であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましい。第1樹脂層の共重合比率が3モル%未満であれば、耐加水分解性の悪化をより確実に抑制することができる。
第1樹脂層の共重合比率は、ジオール原料やジカルボン酸原料の配合比率を調整したり、エステル交換時のEGのモル比率の調整による副生成物(ジエチレングリコール)の発生調整等を行うことで上記範囲内に制御することができる。
280℃せん断速度100sec−1における第1樹脂層と第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、2Pa・s以上90Pa・s以下がより好ましい。上記溶融粘度差が1Pa・s以上であれば、溶融共押出時の積層界面の密着性が良好となり、延伸時のデラミ発生が改善され、一方、100Pa・s以下であれば溶融共押出時の積層界面の乱れが小さくなりフィルム外観が良好となる。
280℃せん断速度100sec−1における第1樹脂層の溶融粘度は、溶融製膜時のダイ出口部分で必要な溶融張力確保と溶融押し出し時のせん断発熱性による樹脂温度上昇防止の観点から、150Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましい。
第1樹脂層の溶融粘度は、分子量の調整や共重合組成の調整あるいは流動調節剤の配合により上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層はポリエステルと触媒由来のチタン化合物とを含み、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc2(℃)、結晶化発熱量をΔH2(J/g)、固有粘度をIV2(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV2(当量/トン)、及び、面配向度をΔP2としたときに、下記(6)〜(10)の関係を満たす。
第2樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークTc2(℃)が、下記(6)の関係を有する。
(6)150≦Tc2≦180
第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2が150℃未満ではボイドが発生し易く、180℃より大きいと配向性が低下してしまう。第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2が上記(6)の関係を満たすことでボイドの発生及び配向性の低下を抑制することができる。ボイドの発生及び配向性の低下を一層抑制する観点から、第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2は、155℃以上175℃以下であることが好ましい。
第2樹脂層の昇温結晶化ピークTc2は、ポリエステルの重合度や触媒の種類や量を調整したり、あるいは共重合成分の配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2(J/g)は、下記(7)の関係を有する。
(7)19≦ΔH2<23
第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2が19J/g未満では配向性が低下し、23J/g以上ではボイドが発生し易い。第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2が上記(7)の関係を満たすことで第2樹脂層のボイドの発生及び配向性の低下を抑制することができる。第2樹脂層の配向性の低下を一層抑制する観点から、第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2は、20J/g以上22J/g以下であることが好ましい。
第2樹脂層の結晶化発熱量ΔH2は、ポリエステルの共重合比率を調整することが、共重合比率の異なる樹脂をブレンドすることで上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層の固有粘度IV2(dl/g)は、下記(8)の関係を有する。
(8)0.60≦IV2≦0.95
第2樹脂層の固有粘度IV2が0.6dl/g未満では物性(フィルム強度と耐加水分解性)が悪化し、0.95dl/gより大きいと製膜性が悪化する。上記(8)の関係を満たすことで第2樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性及び製膜性の悪化を抑制することができる。第2樹脂層のフィルム強度と耐加水分解性及び製膜性の悪化を一層抑制する観点から、第2樹脂層の固有粘度IV2は、0.65dl/g以上0.90dl/g以下であることが好ましい。
第2樹脂層の固有粘度IV2は、溶融重合の時間や真空度を調整することや固相重合の温度や時間を調整することで上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2(当量/トン)は、下記(9)の関係を有する。
(9)AV2≦20
第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2が20当量/トンより大きいと耐加水分解性悪化する。上記(9)の関係を満たすことで、第2樹脂層の耐加水分解性の悪化を抑制することができる。第2樹脂層の耐加水分解性の悪化及び密着力の低下を一層抑制する観点から、第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2は、好ましくは5当量/トン以上20当量/トン以下である。
第2樹脂層の末端カルボキシル基濃度AV2は、溶融重合時の触媒に有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体を用いることや重合温度の低温化すること及び/又は固相重合により熱分解を防いだ重合方法を組み合わせて重合を進行させることで上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層の面配向度ΔP2は、下記(10)の関係を有する。
(10)0.12≦ΔP2≦0.18
第2樹脂層の面配向度ΔP2が0.18より大きいと耐電圧性が悪化し、0.12より小さいと耐加水分解性が悪化する。上記(10)の関係を満たすことで、第2樹脂層の耐電圧性及び耐加水分解性の悪化を抑制することができる。第2樹脂層の耐加水分解性の悪化を一層抑制する観点から、第2樹脂層の面配向度ΔP2は、0.13以上0.175以下であることが好ましい。
第2樹脂層の面配向度ΔP2は、縦及び/又は横延伸の倍率と延伸温度を第1樹脂層のTgに合わせて適宜調整することで上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層のガラス転移温度Tg2(℃)は、第1樹脂層のガラス転移温度Tg1(℃)との間で前記(11)の関係を満たすように構成する。
第2樹脂層のガラス転移温度Tg2(℃)は70℃以上79.5℃以下が好ましい。第2樹脂層のガラス転移温度Tg2が70℃以上であれば延伸による配向が十分進行し、79.5℃以下であれば、延伸時の応力が高くなる傾向とフィルムの厚み均一性低下を防止できる。
第2樹脂層のガラス転移温度Tg2は、共重合成分の配合比率調整、場合によっては可塑剤の配合をすることで上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層の厚みt2は、10μm以上400μm未満であることが好ましく、20μm以上350μm以下であることがより好ましい。第2樹脂層の厚みt2が10μm以上であれば250μmを超える厚物フィルム製膜で耐電圧性と耐加水分解性の両立が可能であり、400μm未満であれば耐加水分解性の低下を最小限にすることが可能である。
示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第2樹脂層の結晶融解ピークTm2が225℃以上245℃未満であることが好ましい。第2樹脂層の上記結晶融解ピークTm2が225℃以上であれば耐加水分解性及び耐熱性の悪化がより確実に抑制され、245℃未満であれば厚物製膜時のボイド発生による耐加水分解性の悪化がより確実に抑制される。
第2樹脂層の結晶融解ピークTm2は、共重合成分の種類や配合比率を調整することで上記範囲内に制御することができる。
第2樹脂層の共重合比率は3モル%以上12モル%以下であることが好ましく、4モル%以上10モル%以下がより好ましい。第2樹脂層の共重合比率が3モル%以上であれば耐電圧性の悪化をより確実に抑制することができ、12モル%以下であれば耐加水分解性の悪化をより確実に抑制することができる。
第2樹脂層の共重合比率は、ジオール原料やジカルボン酸原料の配合比率を調整したり、エステル交換時のEGのモル比率の調整による副生成物(ジエチレングリコール)の発生調整等を行うことで上記範囲内に制御することができる。
前記したように、280℃せん断速度100sec−1における第1樹脂層と第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下であることが好ましく、280℃せん断速度100sec−1における第2樹脂層の溶融粘度は、150Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましい。
なお、280℃せん断速度100sec−1における第2樹脂層の溶融粘度は、溶融製膜時のダイ出口部分で必要な溶融張力確保と溶融押し出し時のせん断発熱性による樹脂温度上昇防止の観点から、150Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましい。
第2樹脂層の溶融粘度は、分子量の調整や共重合組成の調整あるいは流動調節剤の配合により上記範囲内に制御することができる。
次に、本発明のポリエステルフィルムの製造方法について説明する。本発明のポリエステルフィルムの製造方法は限定されないが、以下、好適な製造方法の一例について説明する。
第1樹脂層と第2樹脂層をそれぞれ構成するポリエステルは、テレフタル酸を主たる成分とするジカルボン酸成分と、エチレングリコールを主たる成分とするジオール成分をチタン系触媒を用いて縮重合したものである。
ポリエステルを重合する際のエステル化反応において、触媒としてチタン(Ti)系化合物を用い、Ti添加量が元素換算値で、1ppm以上30ppm以下、より好ましくは2ppm以上20ppm以下、さらに好ましくは3ppm以上15ppm以下の範囲で重合を行なうことが好ましい。この場合、本発明のポリエステルフィルムには、1ppm以上30ppm以下のチタンが含まれる。
Ti系化合物の量が1ppm以上であると、重合速度が速くなり、好ましいIVが得られる。また、Ti系化合物の量が30ppm以下であると、末端COOHを上記の範囲を満足するように調節することが可能であり、また良好な色調が得られる。
また、ジオール成分として、脂肪族ジオールの少なくとも1種が用いられる場合が好ましい。脂肪族ジオールとして、エチレングリコールを含むことができ、好ましくはエチレングリコールを主成分として含有する。なお、主成分とは、ジオール成分に占めるエチレングリコールの割合が80質量%以上であることをいう。
また、前記PETとしては、ゲルマニウム(Ge)系触媒、アンチモン(Sb)系触媒、アルミニウム(Al)系触媒、及びチタン(Ti)系触媒から選ばれる1種又は2種以上を用いて重合されるPETが好ましく、より好ましくはTi系触媒を用いたものである。
Ti系触媒の例としては、テトラ−n−プロピルチタネート、テトラ−i−プロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネートテトラマー、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラベンジルチタネート等のチタンアルコキシド、チタンアルコキシドの加水分解により得られるチタン酸化物、チタンアルコキシドと珪素アルコキシドもしくはジルコニウムアルコキシドとの混合物の加水分解により得られるチタン−珪素もしくはジルコニウム複合酸化物、酢酸チタン、蓚酸チタン、蓚酸チタンカリウム、蓚酸チタンナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸−水酸化アルミニウム混合物、塩化チタン、塩化チタン−塩化アルミニウム混合物、チタンアセチルアセトナート、有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体、等が挙げられる。
また、一般に、末端カルボキシル基量が多いほど耐加水分解性が悪化することが知られており、本発明の添加方法によって末端カルボキシル基量が少なくなることで、耐加水分解性の向上が期待される。
前記クエン酸キレートチタン錯体としては、例えば、ジョンソン・マッセイ社製のVERTEC AC−420など市販品として容易に入手可能である。
これにより、重合時の着色及びその後の溶融製膜時における着色が少なくなり、従来のアンチモン(Sb)触媒系のポリエステル樹脂に比べて黄色味が軽減され、また、透明性の比較的高いゲルマニウム触媒系のポリエステル樹脂に比べて遜色のない色調、透明性を持ち、しかも耐熱性に優れたポリエステル樹脂を提供できる。また、コバルト化合物や色素などの色調調整材を用いずに高い透明性を有し、黄色味の少ないポリエステル樹脂が得られる。
5価のリン化合物として、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルの少なくとも一種を用いることができる。本発明における5価のリン酸エステルとしては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリ−n−ブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリス(トリエチレングリコール)、リン酸メチルアシッド、リン酸エチルアシッド、リン酸イソプロピルアシッド、リン酸ブチルアシッド、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸ジオクチル、リン酸トリエチレングリコールアシッド等が挙げられる。
マグネシウム化合物を含めることにより、静電印加性が向上する。この場合に着色がおきやすいが、本発明においては、着色を抑え、優れた色調、耐熱性が得られる。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
これは、リン化合物はチタンに作用するのみならずマグネシウム化合物とも相互作用することから、3者のバランスを定量的に表現する指標となるものである。
前記式(i)は、反応可能な全リン量から、マグネシウムに作用するリン分を除き、チタンに作用可能なリンの量を表現したものである。値Zが正の場合は、チタンを阻害するリンが余剰な状況にあり、逆に負の場合はチタンを阻害するために必要なリンが不足する状況にあるといえる。反応においては、Ti、Mg、Pの各原子1個は等価ではないことから、式中の各々のモル数に価数を乗じて重み付けを施してある。
エステル化反応を一段階で行なう場合、エステル化反応温度は230〜260℃が好ましく、240〜250℃がより好ましい。
エステル化反応を多段階に分けて行なう場合、第一反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは240〜250℃であり、圧力は1.0〜5.0kg/cm2が好ましく、より好ましくは2.0〜3.0kg/cm2である。第二反応槽のエステル化反応の温度は230〜260℃が好ましく、より好ましくは245〜255℃であり、圧力は0.5〜5.0kg/cm2、より好ましくは1.0〜3.0kg/cm2である。さらに3段階以上に分けて実施する場合は、中間段階のエステル化反応の条件は、前記第一反応槽と最終反応槽の間の条件に設定するのが好ましい。
重縮合は、エステル化反応で生成されたエステル化反応生成物を重縮合反応させて重縮合物を生成する。重縮合反応は、1段階で行なってもよいし、多段階に分けて行なうようにしてもよい。
(i)Z=5×(P含有量[ppm]/P原子量)−2×(Mg含有量[ppm]/Mg原子量)−4×(Ti含有量[ppm]/Ti原子量)
(ii)+0≦Z≦+5.0
本発明においては、上記同様の理由から、前記式(ii)は、1.0≦Z≦4.0を満たす場合が好ましく、1.5≦Z≦3.0を満たす場合がより好ましい。
重縮合後にペレットとしたときのb値 ≦ 4.0 ・・・(iii)
重縮合して得られたポリエステル樹脂をペレット化し、該ペレットのb値が4.0以下であることにより、黄色味が少なく、透明性に優れる。b値が3.0以下である場合、Ge触媒で重合したポリエステル樹脂と遜色ない色調になる。
色調変化速度[Δb/分]≦ 0.15 ・・・(iv)
重縮合して得られたポリエステル樹脂ペレットを、300℃で溶融保持した際の色調変化速度[Δb/分]が0.15以下であることにより、加熱下に曝された際の黄着色を低く抑えることができる。これにより、例えば押出機で押し出して製膜する等の場合に、黄着色が少なく、色調に優れたフィルムを得ることができる。
ポリエステル樹脂組成物のペレットを、射出成形機(例えば東芝機械(株)製のEC100NII)のホッパーに投入し、シリンダ内(300℃)で溶融保持させた状態で、その保持時間を変更してプレート状に成形し、このときのプレートb値をND−101D(日本電色工業(株)製)により測定する。b値の変化をもとに変化速度[Δb/分]を算出する。
本発明におけるポリエステルは、光安定化剤、酸化防止剤などの添加剤を更に含有することができる。
これらの紫外線吸収剤のうち、繰り返し紫外線吸収に対する耐性が高いという点で、トリアジン系紫外線吸収剤がより好ましい。なお、これらの紫外線吸収剤は、上述の紫外線吸収剤単体でフィルムに添加してもよいし、有機系導電性材料や、非水溶性樹脂に紫外線吸収剤能を有するモノマーを共重合させた形態で導入してもよい。
前記積層体の縦延伸及び横延伸を行い、前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)としたときに、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下にして二軸延伸フィルムを形成する延伸工程と、
前記二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、前記第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下にする熱固定工程と、を含む。
本発明における固相重合工程では、ポリエステルを固相重合する。固相重合は、既述のエステル化反応により重合したポリエステル又は市販のポリエステルをペレット状などの小片形状にし、これを用いて好適に行なえる。固相重合は、150℃以上250℃以下、より好ましくは170℃以上240℃以下、さらに好ましくは190℃以上230℃以下で1時間以上50時間以下、より好ましくは5時間以上40時間以下、さらに好ましくは10時間以上30時間以下の条件で行なうのが好ましい。また、固相重合は、真空中あるいは窒素気流中で行なうことが好ましい。
共押出し工程では、前記固相重合工程を経た後のポリエステルを溶融混練し、前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物と前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して、前記第2溶融膜状物の少なくとも片面に前記第1溶融膜状物を積層することにより積層体を形成する。
熱分解による末端COOHの発生をより抑制できる点で、押出し機内を窒素置換して行なうのがより好ましい。
溶融された溶融樹脂(メルト)は、ギアポンプ、濾過器等を通して、押出ダイから押出す。このとき、前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物と、該第2溶融膜状物の少なくとも片面側に前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して溶融積層する。
第1溶融膜状物は第2溶融膜状物の片面に積層してもよいし、両面に積層してもよい。
なお、冷却が不充分な場合には、球晶が発生しやすく、これが延伸ムラを引き起こし、厚みムラを発生させることがある。
延伸工程では、共押出し工程により作製された積層体(未延伸の積層フィルム)の縦延伸及び横延伸を行い、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下に制御する。縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度が(Tg1+10)℃以上であれば延伸時の応力を低減することが出来るために耐加水分解性付与に必要な延伸倍率での延伸が可能となり、(Tg1+35)℃以下であれば耐加水分解性改善に必要な配向を付与することが可能となる。二軸延伸時(縦延伸時及び横延伸時)のフィルム表面温度は、(Tg1+12)℃以上(Tg1+30)℃以下であることがさらに好ましい。
得られた二軸延伸フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて、二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、均一に徐冷後、室温まで冷却する。一般に、熱固定処理温度(Ts)が低いとフィルムの熱収縮が大きいため、高い熱寸法安定性を付与するためには、熱処理温度は高い方が好ましい。しかしながら、熱処理温度を高くし過ぎると配向結晶性が低下し、その結果形成されたフィルムが耐加水分解性に劣ることがある。
本発明では、二軸延伸フィルムの熱固定処理を行う際、第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下に制御する。熱固定時のフィルム表面温度が(Tm2−40)℃以上であれば熱固定による残留歪の除去効果が十分となり、熱収縮が許容範囲内のレベルとなり、Tm2℃以下であれば第2樹脂層の配向緩和による耐加水分解性の悪化が防止可能となる。
なお、本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成するバックシート(裏面封止用フィルム)として用いることができるが、モジュール使用時には雰囲気温度が100℃程度まで上昇することがある。そのため、熱固定時のフィルム表面温度は(Tm2−30)℃以上(Tm2−10)℃以下であることがさらに好ましい。
熱固定されたポリエステルフィルムは通常Tg以下まで冷却され、ポリエステルフィルム両端のクリップ把持部分をカットしロール状に巻き取られる。この際、最終熱固定処理温度以下、Tg以上の温度範囲内で、幅方向及び/または長手方向に1〜12%弛緩処理することが好ましい。
また、冷却は、最終熱固定温度から室温までを毎秒1℃以上100℃以下の冷却速度で徐冷することが寸法安定性の点で好ましい。特に、Tg+50℃からTgまでを、毎秒1℃以上100℃以下の冷却速度で徐冷することが好ましい。冷却、弛緩処理する手段は特
に限定はなく、従来公知の手段で行えるが、特に複数の温度領域で順次冷却しながら、これらの処理を行うことが、ポリエステルフィルムの寸法安定性向上の点で好ましい。
また、上記ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルフィルムの強度を向上させる目的で、多段縦延伸、再縦延伸、再縦横延伸、横・縦延伸など公知の延伸フィルムに用いられる延伸を行ってもよい。縦延伸と横延伸の順序を逆にしてもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、耐加水分解性及び耐電圧性に優れ、太陽電池裏面封止用のポリエステルフィルムとして好適である。
本発明のポリエステルフィルムは、被着物に対して易接着性の易接着性層、紫外線吸収層、光反射性のある白色層などの機能性層を少なくとも1層設けて構成することができる。例えば、1軸延伸後及び/又は2軸延伸後のポリエステルフィルムに下記の機能性層を塗設してもよい。塗設には、ロールコート法、ナイフエッジコート法、グラビアコート法、カーテンコート法等の公知の塗布技術を用いることができる。
また、これらの塗設前に表面処理(火炎処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等)を実施してもよい。さらに、粘着剤を用いて貼り合わせることも好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、太陽電池モジュールを構成する場合に太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の該封止材と向き合う側に、易接着性層を有していることが好ましい。封止材(特にエチレン−酢酸ビニル共重合体)を含む被着物(例えば太陽電池素子が封止材で封止された電池側基板の封止材の表面)に対して接着性を示す易接着性層を設けることにより、バックシートと被着物(特に封止材)との間を強固に接着することができる。具体的には、易接着性層は、特に封止材として用いられるEVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)との接着力が10N/cm以上、好ましくは20N/cm以上であることが好ましい。
さらに、易接着性層は、太陽電池モジュールの使用中にバックシートの剥離が起こらないことが必要であり、そのために易接着性層は高い耐湿熱性を有することが望ましい。
本発明における易接着性層はバインダーの少なくとも1種を含有することができる。
バインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。中でも、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものを挙げることができる。
前記ポリオレフィンの例として、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)が挙げられる。前記アクリル樹脂の例として、ジュリマーET−410、同SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)が挙げられる。また、前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例として、セラネートWSA1060、同WSA1070(ともにDIC(株)製)、及びH7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記バインダーの量は、0.05〜5g/m2の範囲が好ましく、0.08〜3g/m2の範囲が特に好ましい。バインダー量は、0.05g/m2以上であることでより良好な接着力が得られ、5g/m2以下であることでより良好な面状が得られる。
本発明における易接着性層は、微粒子の少なくとも1種を含有することができる。易接着性層は、微粒子を層全体の質量に対して5質量%以上含有することが好ましい。
微粒子としては、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化錫等の無機微粒子が好適に挙げられる。特にこの中でも、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性の低下が小さい点で、酸化錫、シリカの微粒子が好ましい。
微粒子の粒径は、10〜700nm程度が好ましく、より好ましくは20〜300nm程度である。粒径が前記範囲の微粒子を用いることにより、良好な易接着性を得ることができる。微粒子の形状には特に制限はなく、球形、不定形、針状形等のものを用いることができる。
微粒子の易接着性層中における添加量としては、易接着性層中のバインダー当たり5〜400質量%が好ましく、より好ましくは50〜300質量%である。微粒子の添加量は、5質量%以上であると、湿熱雰囲気に曝されたときの接着性に優れており、400質量%以下であると、易接着性層の面状がより良好である。
本発明における易接着性層は、架橋剤の少なくとも1種を含有することができる。
架橋剤の例としては、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系、カルボジイミド系、オキサゾリン系等の架橋剤を挙げることができる。湿熱経時後の接着性を確保する観点から、これらの中でも特にオキサゾリン系架橋剤が好ましい。
前記オキサゾリン系架橋剤の具体例として、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン、2,2’−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−メチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−トリメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2、2’−ヘキサメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレン−ビス−(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、ビス−(2−オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス−(2−オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド等が挙げられる。さらに、これらの化合物の(共)重合体も好ましく利用することができる。
また、オキサゾリン基を有する化合物として、エポクロスK2010E、同K2020E、同K2030E、同WS500、同WS700(いずれも日本触媒化学工業(株)製)等も利用できる。
架橋剤の易接着性層中における好ましい添加量は、易接着性層のバインダー当たり5〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。架橋剤の添加量は、5質量%以上であることで良好な架橋効果が得られ、反射層の強度低下や接着不良が起こりにくく、50質量%以下であることで塗布液のポットライフをより長く保てる。
本発明における易接着性層には、必要に応じて、更にポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカ等の公知のマット剤、アニオン系やノニオン系などの公知の界面活性剤などを添加してもよい。
本発明の易接着性層の形成方法としては、易接着性を有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法や塗布による方法があるが、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明における易接着性層の厚みには特に制限はないが、通常は0.05〜8μmが好ましく、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。易接着性層の厚みは、0.05μm以上であることで必要とする易接着性が得られやすく、8μm以下であることで面状をより良好に維持することができる。
また、本発明における易接着性層は、ポリエステルフィルムとの間に着色層(特に反射層)が配置された場合の該着色層の効果を損なわない観点から、透明性を有していることが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムには、上記の紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層が設けられてもよい。紫外線吸収層は、ポリエステルフィルム上の任意の位置に配置することができる。
紫外線吸収剤は、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロースエステル樹脂等とともに、溶解、分散させて用いることが好ましく、400nm以下の光の透過率を20%以下にするのが好ましい。
本発明のポリエステルフィルムには、着色層を設けることができる。着色層は、ポリエステルフィルムの表面に接触させて、あるいは他の層を介して配置される層であり、顔料やバインダーを用いて構成することができる。
本発明における着色層は、顔料の少なくとも1種を含有することができる。
顔料は、2.5〜8.5g/m2の範囲で含有されるのが好ましい。着色層中における顔料のより好ましい含有量は、4.5〜7.5g/m2の範囲である。顔料の含有量が2.5g/m2以上であることで、必要な着色が得られやすく、光の反射率や装飾性をより優れたものに調整することができる。顔料の含有量が8.5g/m2以下であることで、着色層の面状をより良好に維持することができる。
入射した太陽光を反射する反射層として着色層を構成する場合、顔料の反射層中における好ましい添加量は、用いる顔料の種類や平均粒径により変化するため一概には言えないが、1.5〜15g/m2が好ましく、より好ましくは3〜10g/m2程度である。添加量は、1.5g/m2以上であることで必要な反射率が得られやすく、15g/m2以下であることで反射層の強度をより一層高く維持することができる。
本発明における着色層は、バインダーの少なくとも1種を含有することができる。
バインダーを含む場合の着色層中における量としては、前記顔料に対して、15〜200質量%の範囲が好ましく、17〜100質量%の範囲がより好ましい。バインダーの量は、15質量%以上であることで着色層の強度を一層良好に維持することができ、200質量%以下であることで反射率や装飾性が低下する。
着色層に好適なバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。バインダーは、耐久性の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィンが好ましい。また、アクリル樹脂として、アクリルとシリコーンとの複合樹脂も好ましい。好ましいバインダーの例として、以下のものが挙げられる。
前記ポリオレフィンの例としては、ケミパールS−120、同S−75N(ともに三井化学(株)製)などが挙げられる。前記アクリル樹脂の例としては、ジュリマーET−410、SEK−301(ともに日本純薬工業(株)製)などが挙げられる。前記アクリルとシリコーンとの複合樹脂の例としては、セラネートWSA1060、WSA1070(ともにDIC(株)製)、H7620、H7630、H7650(ともに旭化成ケミカルズ(株)製)等を挙げることができる。
本発明における着色層には、バインダー及び顔料以外に、必要に応じて、さらに架橋剤、界面活性剤、フィラー等を添加してもよい。
着色層の形成方法としては、顔料を含有するポリマーシートをポリエステルフィルムに貼合する方法、ポリエステルフィルム成形時に着色層を共押出しする方法、塗布による方法等がある。このうち、塗布による方法は、簡便でかつ均一性の高い薄膜での形成が可能である点で好ましい。塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターなどの公知の方法を利用することができる。塗布に用いられる塗布液の溶媒としては、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。しかし、環境負荷の観点から、水を溶媒とすることが好ましい。
溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
着色層は、白色顔料を含有して白色層(光反射層)として構成されることが好ましい。反射層である場合の550nmの光反射率としては、75%以上であるのが好ましい。反射率が75%以上であると、太陽電池セルを素通りして発電に使用されなかった太陽光をセルに戻すことができ、発電効率を上げる効果が高い。
本発明のポリエステルフィルムには、下塗り層を設けることができる。下塗り層は、例えば、着色層が設けられるときには、着色層とポリエステルフィルムとの間に設けることができる。下塗り層は、バインダー、架橋剤、界面活性剤等を用いて構成することができる。
塗布方法としては、例えば、グラビアコーターやバーコーターを利用することができる。前記溶媒は、水でもよいし、トルエンやメチルエチルケトンのような有機溶媒でもよい。溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
下塗り層の厚みは、0.05μm〜2μmが好ましく、より好ましくは0.1μm〜1.5μm程度の範囲が好ましい。膜厚が0.05μm以上であることで必要な接着性が得られやすく、2μm以下であることで、面状を良好に維持することができる。
本発明のポリエステルフィルムには、フッ素系樹脂層及びケイ素系(Si系)樹脂層の少なくとも一方を設けることが好ましい。フッ素系樹脂層やSi系樹脂層を設けることで、ポリエステル表面の汚れ防止、耐候性向上が図れる。具体的には、特開2007−35694号公報、特開2008−28294号公報、WO2007/063698明細書に記載のフッ素樹脂系塗布層を有していることが好ましい。
また、テドラー(DuPont社製)等のフッ素系樹脂フィルムを張り合わせることも好ましい。
本発明のポリエステルフィルムは、更に、無機層が設けられた形態も好ましい。無機層を設けることで、ポリエステルへの水やガスの浸入を防止する防湿性やガスバリア性の機能を与えることができる。無機層は、ポリエステルフィルムの表裏いずれに設けてもよいが、防水、防湿等の観点から、ポリエステルフィルムの電池側基板と対向する側(前記着色層や易接着層の形成面側)とは反対側に好適に設けられる。
このような透湿度を有する無機層を形成するには、下記の乾式法が好適である。
これらのうち、揮発源から揮発させることが容易であるという点で、2)又は3)がより好ましく用いられる。さらには、膜質の制御が容易である点で2)の方法が更に好ましく用いられる。また、バリア層が無機酸化物の場合は、揮発源として無機物群を用い、これを揮発させて、無機物群の層を形成させた後、空気中で放置することで、無機物群を自然酸化させる方法も、形成が容易であるという点で好ましい。
本発明の太陽電池モジュールは、既述の本発明のポリエステルフィルム(バックシートを含む)を備えたものであり、好ましくは更に、太陽光が入射する側の透明性の基板、太陽光の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池素子、太陽電池素子を封止する封止材などを用いて構成される。
以下に示すように、テレフタル酸及びエチレングリコールを直接反応させて水を留去し、エステル化した後、減圧下で重縮合を行なう直接エステル化法を用いて、連続重合装置によりポリエステル樹脂を得た。
[反応物生成工程]
(1)エステル化反応
第一エステル化反応槽に、高純度テレフタル酸4.7トンとエチレングリコール1.8トンを90分かけて混合してスラリー形成させ、3800kg/hの流量で連続的に第一エステル化反応槽に供給した。更にクエン酸がTi金属に配位したクエン酸キレートチタン錯体(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)のエチレングリコール溶液を連続的に供給し、反応槽内温度250℃、攪拌下で平均滞留時間約4.3時間で反応を行なった。このとき、クエン酸キレートチタン錯体は、Ti添加量が元素換算値で9ppmとなるように連続的に添加した。このとき、得られたオリゴマーの酸価は600eq/トンであった。
この反応物を第二エステル化反応槽に移送し、攪拌下、反応槽内温度250℃で、平均滞留時間で1.2時間反応させ、酸価が200eq/トンのオリゴマーを得た。第二エステル化反応槽は内部が3ゾーンに仕切られており、第2ゾーンから酢酸マグネシウムのエチレングリコール溶液を、Mg添加量が元素換算値で67ppmになるように連続的に供給し、続いて第3ゾーンから、リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を、P添加量が元素換算値で65ppmになるように連続的に供給した。
上記で得られたエステル化反応生成物を連続的に第一重縮合反応槽に供給し、攪拌下、反応温度270℃、反応槽内圧力2.67×10−3MPa(20torr)で、平均滞留時間約1.8時間で重縮合させた。
更に、第二重縮合反応槽に移送し、この反応槽において攪拌下、反応槽内温度276℃、反応槽内圧力6.67×10−4MPa(5torr)で滞留時間約1.2時間の条件で反応(重縮合)させた。
次いで、更に第三重縮合反応槽に移送し、この反応槽では、反応槽内温度278℃、反応槽内圧力2.0×10−4MPa(1.5torr)で、滞留時間1.5時間の条件で反応(重縮合)させ、ペレット化(直径3mm、長さ4mm)することにより、固有粘度0.63dl/g、末端COOH基濃度22当量/トンの反応生成物(ポリエチレンテレフタレート;以下、PETと略記する。)を得た。
上記で重合したPETペレットを、窒素雰囲気下、215℃で固相重合を実施し、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度12当量/トン、Tg=78℃の反応生成物を得た。
テレフタル酸(TPA)が94モル%、イソフタル酸(IPA)が6モル%の割合で含むジカルボン酸4.7トンと、エチレングリコール(EG)1.8トンとをエステル化反応槽に供給し、A層用樹脂と同様の溶融重合を行うことにより、固有粘度0.63dl/g、末端COOH基濃度21当量/トンの反応生成物(ポリエチレンテレフタレート;以下、PETと略記する。)を得た。続いてPETペレットを、窒素雰囲気下、215℃で15時間固相重合を実施し、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度11当量/トン、Tg=77℃の反応生成物を得た。
上記のように固相重合を終えた樹脂ペレットを、再び含水率50ppm以下に乾燥させた後、A層用樹脂を直径150mmの1軸混練押出機のホッパーに投入し、N2気流下、285℃の条件で、B層用樹脂を直径100mmの1軸混練押出機のホッパーに投入し、N2気流下、285℃の条件で溶融し、フィードブロックを用いて2種3層構造の未延伸フィルムを10m/分の速度で押出した。この溶融体(メルト)をギアポンプ、濾過器(孔径10μm)を通した後、幅0.8mのダイから押出すと共に、10℃に温調された直径1.5mのキャストロール(冷却ロール)上でキャストした。
上記方法で冷却ロール上に押出し、固化した未延伸フィルムに対し、以下の方法で逐次2軸延伸を施し、下記表3に記載の厚みのフィルムを得た。
(a)縦延伸
未延伸フィルムを周速の異なる2対のニップロールの間に通し、縦方向(搬送方向)に延伸した。なお、予熱温度を90℃、延伸温度を90℃、延伸倍率を3.5倍、延伸速度を3000%/秒として実施した。
(b)横延伸
縦延伸した前記フィルムに対し、テンターを用いて下記条件にて横延伸した。
<条件>
・予熱温度:95℃
・延伸温度:95℃
・延伸倍率:3.9倍
・延伸速度:70%/秒
横延伸後、215℃で10秒間熱固定した後、210℃で横方向に2%緩和した。
延伸後、両端を10cmずつトリミングした後、両端に厚み出し加工を施した後、直径30cmの樹脂製巻芯に3000m巻き付けた。なお、幅は1.5m、巻長は2000mであった。
実施例1において、ポリエステル樹脂組成物を作製する際に用いる触媒として、有機キレートチタン触媒(VERTEC AC−420、ジョンソン・マッセイ社製)をテトラ−n−ブチルチタネートに変更した。A層用樹脂として、固有粘度0.81dl/g、末端COOH基濃度16当量/トンのもの、B層用樹脂として、固有粘度0.81dl/g、末端COOH基濃度17当量/トンのものをそれぞれ用い、製膜以降の工程は、実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、第三重縮合反応槽の滞留時間を1.0時間に短縮させることにより、固有粘度0.57dl/g、末端COOH基濃度15当量/トンとした。また、実施例1で行った固相重合を省略した。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、第三重縮合反応槽の滞留時間を1.0時間に短縮させることにより、固有粘度0.57dl/g、末端COOH基濃度15当量/トンとした。また、実施例1で行った固相重合を省略した。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂の溶融重合条件として、テレフタル酸(TPA)が88モル%、イソフタル酸(IPA)が12モル%の割合で実施例1の溶融重合条件で、固有粘度0.62dl/gの樹脂を得た。また、215℃で固相重合を行い、固有粘度0.72dl/g、末端COOH基濃度14当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1のA層の樹脂の溶融重合条件から、第三重縮合反応槽の滞留時間を1.6時間にすることにより、固有粘度0.66dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。また、実施例1で行った固相重合を省略した。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、触媒の種類を三酸化アンチモンにすることにより、固有粘度0.67dl/g、末端COOH基濃度27当量/トンの樹脂を得た。また、実施例1で行った固相重合を省略した。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、触媒の種類を三酸化アンチモンにすることにより、固有粘度0.67dl/g、末端COOH基濃度27当量/トンの樹脂を得た。また、実施例1で行った固相重合を省略した。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件から、固相重合時間を5時間にすることにより、固有粘度0.73dl/g、末端COOH基濃度12当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の溶融重合条件から、ジカルボン酸成分としてアジピン酸を6モル%配合することにより、固有粘度0.74dl/g、末端COOH基濃度14当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件からジカルボン酸成分としてイソフタル酸を1モル%配合し、更に固相重合時間を25時間に延長することにより固有粘度0.98dl/g、末端COOH基濃度7当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂としては、溶融重合条件として、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を5モル%に変更し、固相重合時間を23時間にすることにより、固有粘度0.97dl/g、末端COOH基濃度8当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件からジカルボン酸成分としてイソフタル酸を10モル%配合することにより固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂としては、溶融重合条件として、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を10モル%に変更することにより、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂の固相重合条件として、実施例1の条件から50時間に延長することにより固有粘度1.15dl/g、末端COOH基濃度8当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂としては、固相重合条件として、実施例1の条件から50時間に延長することにより固有粘度1.17dl/g、末端COOH基濃度8当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂の溶融重合条件として、実施例1の条件から、固相重合時間を7時間にすることにより、固有粘度0.74dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、A層に用いた樹脂と同一の樹脂を用いた。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂は、比較例4と同じ樹脂を用いた。また、B層の樹脂は、テレフタル酸(TPA)が85モル%、イソフタル酸(IPA)が15モル%の割合で実施例1の溶融重合条件で、固有粘度0.74dl/g、末端COOH基濃度18当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
実施例1の熱固定温度を215℃から235℃へ変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
実施例1の縦延伸条件を105℃、横延伸温度を110℃に変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
実施例1のB層厚みを50μmから300μmに変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
実施例1のA層を片面のみの積層とし、B層厚みを50μmから100μmにすることにより、フィルム厚みを350μmから250μmに変更したこと以外は、実施例1に準じた条件でフィルムを製造した。
A層の樹脂の溶融重合条件として、ジオール成分をエチレングリコール(EG)が99モル%、1,4シクロヘキサンジメタノール(1,4CHDM)が1モル%の割合で実施例1の溶融重合、固相重合を行い、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度13当量/トンの樹脂を得た。B層の樹脂の溶融重合条件として、ジオール成分をエチレングリコール(EG)が94モル%、1,4シクロヘキサンジメタノール(1,4CHDM)が6モル%の割合で実施例1の溶融重合、固相重合を行い、固有粘度0.83dl/g、末端COOH基濃度11当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
A層の樹脂は実施例8と同組成の物を用い、B層の樹脂は実施例1のA層に用いた樹脂80重量部と1,4CHDM 30モル%、固有粘度0.70dl/g、末端COOH基濃度20当量/トンの樹脂 20重量部を樹脂ブレンドすることにより得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
実施例1と同じ樹脂組成で、共押出しの層厚みを変更することにより、A層の厚みを150μmから5μmへ、B層の厚みを50μmから340μmへ変更した。
実施例1において、B層の樹脂の固層重合時間を6時間にすることにより、固有粘度0.70dl/g、末端COOH基濃度16当量/トンの樹脂を得た。製膜以降の条件は表3記載の条件で実施例1に準じた条件で行った。
以上のようにして製造したサンプルフィルムについて、厚みのほか、種々の物性を測定し、製膜性、延伸性、耐電圧性、及び耐加水分解性を評価した。
各物性の測定、評価は、以下の方法により行なった。
ポリエステルフィルムの厚みは、接触式膜厚測定計(アンリツ製)を用いて行い、長手方向に0.5mに渡り等間隔に50点をサンプリングし、幅方向に製膜全幅にわたり等間隔(幅方向に50等分した点)に50点をサンプリングし、これらの100点の厚みを測定する。これら100点の平均厚みを求め、フィルムの平均厚みとする。
A層、B層の厚みは、押出し時にフィルム物性に影響を与えない範囲内で微量の着色剤を配合し、フィルム切断の各層厚みを計測することによって測定した。
A層及びB層それぞれについて、示査走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC8500)を用い、5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークTc(℃)を求めた。
A層及びB層の結晶化発熱量ΔH(J/g)は以下の方法により求めた。
フィルムの各層をナイフにより削り、JIS K 7122に準じた測定により求めた。
A層及びB層の固有粘度IV(dl/g)は以下の方法により求めた。
IVは、1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(=2/3[質量比])混合溶媒中の25℃での溶液粘度から求めた。
A層及びB層の末端カルボキシル基濃度AV(当量/トン)は以下の方法により求めた。
サンプルフィルムであるポリエステルをベンジルアルコール/クロロホルム(=2/3;体積比)の混合溶液に完全溶解させ、指示薬としてフェノールレッドを用い、これを基準液(0.025N KOH−メタノール混合溶液)で滴定し、その適定量から末端カルボン酸量[eq/t]を算出した。
A層及びB層の面配向度ΔPは、アッベの屈折率計を用いて、フィルムのMD方向とTD方向の屈折率平均値と厚み方向の屈折率差より求めた。
A層及びB層のガラス転移温度Tg(℃)はJIS K 7121に準じた測定により求めた。
A層及びB層の結晶融解ピークTm(℃)はJIS K 7121に準じた測定により求めた。
A層及びB層の溶融粘度(Pa・s)は東洋精機製 キャピラリーレオメーターを用いてJIS K 7199 に準拠した測定により280℃せん断速度100sec−1における溶融粘度を求めた。
製造したポリエステルフィルムの製膜性を以下の基準で評価した。
○:溶融押出し時に吐出が安定し、フィルム厚み変動や外観異常がない。
△:溶融押出し時に吐出の僅かな変動が見られるが、フィルム厚み変動や外観異常が実用上問題ない。
×:溶融押出し時に吐出の変動が見られ、フィルム厚み変動や外観異常が実用上問題となる。
製造したポリエステルフィルムの延伸性を以下の基準で評価した。
○:延伸による厚みムラや外観異常がない。
△:延伸による厚みムラや外観異常が僅かに見られるが、実用上問題ない。
×:延伸による厚みムラや外観異常が見られ、実用上問題になる。
−耐電圧性−
○:耐電圧が1000V以上のもの
△:耐電圧が600以上1000V未満のもの
×:耐電圧が600V未満のもの
製造したポリエステルフィルムの耐加水分解性を以下の基準で評価した。フィルムを120℃×100%の条件下で湿熱処理を行い、JIS K 7127に準じた測定により破断伸度を求めた。
○:未処理の伸度の1/2にまで低下するする時間が105時間以上のもの
△:未処理の伸度の1/2にまで低下するする時間が80時間以上、105時間未満のもの
×:未処理の伸度の1/2にまで低下するする時間が80時間未満のもの
製造したポリエステルフィルムを以下の基準で総合評価した。
◎:すべての項目が○のもの
○:△評価が1つあるいは2つあるもの
△:△評価が3つ以上で×評価のないもの
×:1つでも×評価のあるもの
2・・・封止材
3・・・太陽電池素子
10・・・第1樹脂層
20・・・第2樹脂層
30・・・ポリエステルフィルム
Claims (9)
- 厚みが250μm以上600μm以下であり、二軸配向したポリエステルフィルムであり、
それぞれポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む第1樹脂層と第2樹脂層とを有し、前記第2樹脂層の少なくとも片面に前記第1樹脂層が溶融積層されており、
前記第1樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc1(℃)、結晶化発熱量をΔH1(J/g)、固有粘度をIV1(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV1(当量/トン)、及び、面配向度をΔP1としたときに、下記(1)〜(5)の関係
(1)130≦Tc1≦160
(2)23≦ΔH1
(3)0.60≦IV1≦0.95
(4)AV1≦20
(5)0.14≦ΔP1≦0.20
を満たし、
前記第2樹脂層は、示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の昇温結晶化ピークをTc2(℃)、結晶化発熱量をΔH2(J/g)、固有粘度をIV2(dl/g)、末端カルボキシル基濃度をAV2(当量/トン)、及び、面配向度をΔP2としたときに、下記(6)〜(10)の関係
(6)150≦Tc2≦180
(7)19≦ΔH2<23
(8)0.60≦IV2≦0.95
(9)AV2≦20
(10)0.12≦ΔP2≦0.18
を満たし、
前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)、前記第2樹脂層のガラス転移温度をTg2(℃)としたときに、下記(11)の関係
(11)Tg1−5≦Tg2≦Tg1−0.5
を満たす太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。 - 示査走査熱量計(DSC)により5℃/分の昇温速度で測定した場合の第1樹脂層の結晶融解ピーク(Tm1)が245℃以上260℃以下であり、前記第2樹脂層の結晶融解ピーク(Tm2)が225℃以上245℃未満である請求項1に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
- 前記第1樹脂層の共重合比率が3モル%未満であり、前記第2樹脂層の共重合比率が3モル%以上12モル%以下である請求項1又は請求項2に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
- 前記チタン化合物が有機酸を配位子とする有機キレートチタン錯体であり、かつ、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層が、マグネシウム化合物と、置換基として芳香環を有しない5価のリン酸エステルをさらに含む請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
- 前記第1樹脂層の厚みが10μm以上150μm未満である請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
- 280℃せん断速度100sec−1における前記第1樹脂層と前記第2樹脂層の溶融粘度差が1Pa・s以上100Pa・s以下である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルム。
- 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを製造する方法であって、
ポリエステルと触媒由来のチタン化合物を含む樹脂組成物を用い、前記第1樹脂層を形成するための第1溶融膜状物と前記第2樹脂層を形成するための第2溶融膜状物をそれぞれ押出ダイから共押出して、前記第2溶融膜状物の少なくとも片面に前記第1溶融膜状物を溶融積層することにより積層体を形成する共押出し工程と、
前記積層体の縦延伸及び横延伸を行い、前記第1樹脂層のガラス転移温度をTg1(℃)としたときに、該縦延伸時及び横延伸時のフィルム表面温度を(Tg1+10)℃以上(Tg1+35)℃以下にして二軸延伸フィルムを形成する延伸工程と、
前記二軸延伸フィルムの熱固定処理を行い、前記第2樹脂層の結晶融解ピークをTm2(℃)としたときに、該熱固定時のフィルム表面温度を(Tm2−40)℃以上Tm2℃以下にする熱固定工程と、
を含む太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムの製造方法。 - 請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池裏面保護膜。
- 請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の太陽電池裏面封止用ポリエステルフィルムを備えた太陽電池モジュール。
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