以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
<<< §1.本発明の基本概念 >>>
本発明に係るシステムの目的は、特定のメンバーの居場所を別なメンバーに通知することにある。ただ、本発明では、そのような目的を達成する方法として、新たなハードウエアシステムを構築するのではなく、既存のハードウエアシステムを利用するという方法を採る。すなわち、本発明では、それぞれ異なる場所に設置された複数の電子機器と、これら各電子機器の利用時に当該電子機器と交信して認証を行わせる機能をもった携帯可能な情報記録媒体と、を備え、各電子機器を互いにネットワークで接続することにより構成された電子機器システムを利用して、当該システムを利用するユーザの居場所を提示する、という方法が採られる。
たとえば、図1には、このような電子機器システムの一例が示されている。図示の例の場合、4つの電子機器101〜104がそれぞれネットワークNに接続された状態が示されている。この4つの電子機器101〜104は、それぞれ異なる場所に設置されており、互いにネットワークNを介して通信を行うことができる。ここでは、この4つの電子機器101〜104が、ある特定の企業の設備として、それぞれ異なる施設に設置されているものとし、いずれもパソコンから構成されているものとして、以下の説明を行うことにする。
具体的には、図示のとおり、電子機器101は、東京本社に設置されているパソコンであり、電子機器102は、横浜支社に設置されているパソコンであり、電子機器103は、千葉支社に設置されているパソコンであり、電子機器104は、埼玉工場に設置されているパソコンであるものとする。もちろん、実際には、個々の場所には、通常、1台のパソコンではなく、より多数のパソコンや、その他の電子機器が設置されているが、ここでは、説明の便宜上、1つの場所に1台のパソコンのみが設置されている単純なモデルを考える。なお、ネットワークNは、社内LANであっても、インターネットであってもかまわない。
一方、この企業の各社員には、それぞれ社員証として、情報記録媒体が支給されているものとする。ここでは、特定の社員Aに対して、図示のとおり情報記録媒体201が支給されているものとする。情報記録媒体201は、各電子機器101〜104の利用時に、当該利用対象となる電子機器と交信して認証を行わせる機能をもった携帯可能な媒体であり、具体的には、ICカードが用いられている。もちろん、本発明の実施にあたって、情報記録媒体201は、必ずしもICカードである必要はなく、たとえば、携帯電話やPDAなどの装置を情報記録媒体201として利用してもかまわない。要するに、利用対象となる電子機器と交信して認証を行わせる機能をもった携帯可能な媒体であれば、どのような媒体を情報記録媒体201として用いてもかまわない。ただ、最近は、ICカードを社員証として発行する企業が増えてきているので、ここでは、ICカードからなる社員証を、そのまま情報記録媒体201として用いた例を述べることにする。
また、ここでは、社員Aは千葉支社のスタッフであり、千葉支社のビル内にデスクを構えており、電子機器103が社員A専用のデスクトップパソコンとして支給されているものとする。したがって、通常、社員Aは、千葉支社の自分の席において、電子機器103を使用して業務を遂行することになる。もっとも、この社員Aには、東京本社に設置された電子機器101、横浜支社に設置された電子機器102、埼玉工場に設置された電子機器104を随時利用する権限が与えられており、それぞれの場所に出張した場合には、各場所に設置されたそれぞれの電子機器を使用して業務を行うことができるものとする。
もちろん、各電子機器を使用する際には、当該電子機器の使用権限が与えられている者であるか否かの認証が行われる。このような認証は、上述したように、情報記録媒体201を用いて行われる。情報記録媒体201には、図示のとおり、所有者に固有の認証情報が記録されている。また、情報記録媒体201は、各電子機器101〜104と交信する機能を有しており、社員Aは、特定の電子機器を利用する際には、当該利用対象となる電子機器と情報記録媒体201とを交信させ、認証処理を行わせるようにする。当然ながら、正しい認証が行われた場合にのみ、当該電子機器の利用が可能になる。
図1には、千葉支社に設置された電子機器103(社員Aに支給されたデスクトップパソコン)と情報記録媒体201とを交信させている状態が示されている。前述したとおり、ここに示す例の場合、情報記録媒体201として、社員証として支給されたICカードを用いているので、実際には、電子機器103(パソコン)には、ICカード用のリーダライタ装置が備わっており、社員Aは、社員証をこのリーダライタ装置に挿入して、両者を交信可能な状態にする。情報記録媒体201として、接触型ICカードを用いた場合には、両者間の交信は物理的に接触した電極を介して行われることになるが、非接触型ICカードを用いた場合には、両者間の交信は無線通信によって行われることになる。
社員Aは、電子機器103(パソコン)の使用を開始する際には、まず、この情報記録媒体201(社員証)を電子機器103に備わっているリーダライタ装置に挿入して、所定のログイン手続(ログオン手続とも呼ばれている)を行うことになる。このログイン手続において、電子機器103は、情報記録媒体201が正規の媒体であることを認証する処理を行う。このような認証処理としては、様々な処理が知られている。
たとえば、電子機器103側で発生させた乱数データを情報記録媒体201に与え、情報記録媒体201側に記録されている固有の認証情報を利用して、この乱数データを暗号化して暗号データを生成し、この暗号データを電子機器103側に戻し、正しい暗号データであるか否かを判定する処理を行えばよい。具体的には、たとえば、情報記録媒体201側に記録されている固有の認証情報を、電子機器103側にも用意しておけば(あるいは、ネットワークNに接続されたサーバ装置に、この固有の認証情報を用意しておいてもよい)、電子機器103側でも同じ認証情報を用いて暗号データを生成することができるので、この暗号データと情報記録媒体201から戻された暗号データとが一致するか否かを調べればよい。
以上の認証処理は、電子機器103側が、情報記録媒体201を正しい媒体と認証するための処理であるが、通常は、その逆の認証処理、すなわち、情報記録媒体201側が、電子機器103を正しい機器と認証するための処理も実行され、相互に相手方を正しい装置と認証した場合に限って、ログイン手続が完了することになる。また、このログイン手続では、通常、社員Aにパスワードの入力が要求される。このようなログイン手続に関する処理は、既に公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
本発明で重要な点は、社員Aが、電子機器103を利用する際に、情報記録媒体201を用いた認証手続が必要になるという点であり、社員Aが、千葉支社の自分の席で業務を行う際には、図示のように情報記録媒体201を電子機器103に接続して、認証を行わせる必要がある。なお、認証に成功して、ログイン手続が完了した後は、情報記録媒体201を電子機器103から抜き出すことができるような運用形態をとることも可能であるが、一般的には、ログオフ手続を行うまでは、情報記録媒体201を電子機器103に接続したままの状態とする運用形態をとるケースが多い。
さて、この社員Aが、東京本社に出張した場合、電子機器101を利用することが可能であるが、この場合も、やはり情報記録媒体201を電子機器101に接続して、認証を行わせ、ログイン手続を行う必要がある。このように、社員Aは、必要に応じて、各電子機器101〜104のいずれを利用することもできるが、利用時には、情報記録媒体201を用いた認証処理が必要になる。
以上、図1に示す電子機器システムの一般構成を述べたが、このような構成をもった電子機器システム自体は、既に公知のシステムであり、実際に多くの企業で利用されている。もちろん、このような電子機器システム自体は、社員の居場所を通知するための目的で構築されたシステムではなく、ネットワークNを利用して相互に情報交換を行いながら、種々の業務処理を行うために構築されたシステムである。本発明の基本的な着眼点は、「このような電子機器システムを利用して、社員の居場所を通知するという付加的な処理を実行させる」という点にある。
上述したとおり、社員Aは、必要に応じて、各電子機器101〜104を利用可能であるが、利用時には、必ず情報記録媒体201を用いた認証処理が必要になる。別言すれば、ある特定の電子機器において、情報記録媒体201(社員Aの社員証)を用いた認証処理が実行された場合、社員Aが当該特定の電子機器を利用しようとしていることになり、社員Aのその時点での居場所は、当該特定の電子機器の設置場所ということになる。このような特性を利用すれば、社員Aが、自分の行き先や居場所に関する申告作業を能動的に行わなくても、このシステムは、社員Aの居場所を把握することができ、この居場所を示す情報を、任意の電子機器に通知することができるようになる。
本発明は、このような基本概念に基づくものであり、このような居場所の通知を行うために、各電子機器101〜104には、それぞれ自己を特定するために付与された機器識別コードと、自己の場所を示す場所情報とが格納されている。
たとえば、図1において、電子機器101のブロック内に示されている「自己:C101」なる小ブロックは、この電子機器101内に、自分自身を特定するための機器識別コード「C101」が格納されていることを示すものである(図に記した「自己:」なる文字は、このコード「C101」が、自分自身を示すコードであることを図面上明確にするためのものであり、実際には不要である)。また、電子機器101のブロック内に示されている「場所:東京本社」なる小ブロックは、この電子機器101内に、自分自身の設置場所を示す場所情報「東京本社」が格納されていることを示すものである(図に記した「場所:」なる文字は、このコード「東京本社」が、自分自身の設置場所を示す情報であることを図面上明確にするためのものであり、実際には不要である)。他の電子機器102〜104のブロック内に示されている各小ブロックも同様である。
本発明では、ユーザ(この例では、社員A)の居場所を、特定の電子機器上に提示するために、次の3つのステップが実行される。まず、第1のステップでは、情報記録媒体201に、「居場所の提示を行う特定の電子機器」を示す情報を記録する処理が行われる。ここでは、この「居場所の提示を行う特定の電子機器」を「報告対象」と呼ぶことにする。
図1に示す情報記録媒体201内には、「認証情報」,「自己:C201」,「報告対象:C103」という3種類の情報が記録されている例が示されている。もちろん、情報記録媒体201は、社員A用の社員証として機能するICカードであるから、この他にも様々な情報が記録されているので、上記3種類の情報は、そのうちの本発明に関与する情報ということになる。
ここで、「認証情報」は、前述したとおり、利用対象となる電子機器との間での認証処理に利用される情報であり、通常、個々の社員証ごとに固有のコードからなる認証情報が記録される。一方、「C201」は、情報記録媒体201自身を特定するための媒体識別コードであり、個々の情報記録媒体ごとにユニークなコードが付与される(図に記した「自己:」なる文字は、このコード「C201」が、自分自身を示すコードであることを図面上明確にするためのものであり、実際には不要である)。そして、「報告対象:C103」が、上述した第1のステップで記録されたコードであり、社員Aについて「居場所の提示を行う特定の電子機器(報告対象)」が、機器識別コード「C103」で特定される電子機器103であることを示すものである。
「報告対象」をどの電子機器に設定するかは、ユーザ(この例の場合は社員A)が自由に決定することができる。後述するように、「報告対象」となった電子機器には、自分の居場所が通知されることになるので、自分の居場所を通知したい場所に設置された電子機器を、「報告対象」に設定すればよい。図示の例は、社員Aが、千葉支社に設置された自分の席のパソコン(電子機器103)を「報告対象」と設定したケースを示している。「報告対象」の設定は、いずれかの電子機器を用いて、情報記録媒体へ所定の機器識別コードを書き込むことにより行うことができる。なお、図に記した「報告対象:」なる文字は、このコード「C103」が、「報告対象」となる電子機器を示す機器識別コードであることを図面上明確にするためのものであり、実際には不要である。
続く第2のステップは、ユーザ(この例の場合は社員A)が特定の電子機器を利用するための認証を行った際に実行される。すなわち、この第2のステップは、各電子機器によって実行される処理であり、利用対象となった電子機器が情報記録媒体201と交信したときに、この情報記録媒体201内に記録されている「居場所の提示を行う特定の電子機器(報告対象)」に対して、自己の場所を示す場所情報をネットワークNを介して送信する処理である。
たとえば、社員Aが、東京本社へ出張し、電子機器101を利用する場合を考えてみる。この場合、上述したように、社員Aは、社員証として携帯している情報記録媒体201を用いて、電子機器101に対するログイン手続を行う必要があるので、当然ながら、情報記録媒体201と電子機器101との間で交信が行われ、認証情報を利用した認証処理が実行される。このとき、電子機器101は、情報記録媒体201内に記録されている「報告対象」を示す機器識別コード「C103」を読み出し、「報告対象」が電子機器103であることを認識する。そして、自己の場所を示す場所情報を、ネットワークNを介して「報告対象」となっている電子機器103へ送信する。図示の例では、予め電子機器101に格納されている「東京本社」なる文字列からなるコードが、場所情報として送信されることになる。
なお、このような第2のステップの処理は、電子機器101と情報記録媒体201との間の認証を行う前に実行してもかまわないが、実用上は、虚偽の居場所情報が送信されることを防ぐため、両者間での認証が正しく行われた場合にのみ、第2のステップの処理が実行されるようにしておくのが好ましい。
最後の第3のステップは、「報告対象」となっている電子機器側で行われる処理であり、ネットワークNを介して場所情報を受け取った電子機器が、当該場所情報を提示する処理である。上述の例の場合、東京本社に設置された電子機器101から、千葉支社に設置された電子機器103(報告対象)に対して、「東京本社」なる文字列からなるコードが送信されてくるので、電子機器103は、これをディスプレイの画面上に表示する処理を行う。もちろん、実際には、「ただいま、東京本社におります」などの適切なメッセージの形式で、表示を行うのが好ましい。
このような方法で居場所の提示を行うようにすれば、千葉支社に在籍する同僚は、社員Aの席に設置されている電子機器103(パソコン)のディスプレイ画面を見ることにより、社員Aの居場所を認識することができる。しかも、このような居場所提示を行うために、社員A自身は何ら能動的に居場所を申告するような作業を行う必要はない。もちろん、情報記録媒体201に対して、予め「報告対象」となる電子機器を設定しておく必要はあるが(第1のステップ)、このような設定を行っておけば、以後、何ら特別な作業を行うことなしに、自分の居場所を「報告対象」となる電子機器上に提示させることができる。
また、本発明に係るシステムは、ネットワーク接続された既存の電子機器システムをそのまま利用して、ユーザの居場所提示を行うことができるので、導入コストを非常に低く抑えられるという利点もある。現在、多くの企業の業務がネットワーク接続されたコンピュータシステムによって実行されており、また、セキュリティ上の配慮から、このようなシステムにおける個々の端末装置(電子機器)にログインする際には、社員証などの情報記録媒体を利用した認証が行われるようになっている。本発明によれば、このような既存のシステムに、若干のソフトウエアを付加するだけで、居場所提示システムとしての機能を実現させることができる。具体的には、上述した第1のステップ〜第3のステップを実行するための専用プログラムを、各電子機器や、必要に応じて情報記録媒体に組み込むだけで、本発明に係るシステムを実現することが可能になる。
結局、図1に示されているシステムは、それぞれ異なる場所に設置された複数の電子機器101〜104と、これら各電子機器の利用時に当該電子機器と交信して認証を行わせる機能をもった携帯可能な情報記録媒体201と、を備え、各電子機器101〜104は、互いにネットワークで接続されている、という特徴を有する既存のシステムを利用して構築することが可能なシステムということができる。
すなわち、このような既存のシステムにおいて、情報記録媒体201に、「報告対象」となる特定の電子機器を示す情報(図示の例では、機器識別コード「C103」)を予め記録しておくようにし、各電子機器101〜104には、情報記録媒体201と交信したときに、当該情報記録媒体201に記録されている報告対象となる特定の電子機器(図示の例では、電子機器103)に対して、自己の場所を示す場所情報をネットワークNを介して送信する機能をもたせておけばよい。そうすれば、報告対象となる電子機器側には、ユーザの居場所を示す場所情報が自動的に通知されることになるので、必要に応じて、これを提示させることが可能になる。
なお、図1には、説明の便宜上、社員Aの社員証として発行された情報記録媒体201のみが示されており、社員Aの居場所を通知する事例のみを説明したが、もちろん、実際には、社員証としての情報記録媒体は個々の社員ごとに発行されていることになる。たとえば、別な社員Bには、情報記録媒体202が発行され、別な社員Cには、情報記録媒体203が発行され、といった具合である。前述した第1のステップの処理では、各社員は、それぞれ自分用の情報記録媒体に対して、それぞれ所望の電子機器を「報告対象」として設定すればよい。そうすれば、社員Bの居場所は、社員B用の情報記録媒体に設定されている「報告対象」に提示され、社員Cの居場所は、社員C用の情報記録媒体に設定されている「報告対象」に提示されることになる。
ところで、場合によって、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するようなケースもあり得る。たとえば、図示の千葉支社に設置された電子機器103が、社員A,B,Cの共用パソコンであったような場合、社員A,B,Cの全員が、電子機器103を「報告対象」として設定することもあり得る。この場合、たとえば、電子機器101から電子機器103に対して、「東京本社」なる場所情報が送信されてきたとしても、社員A,B,Cのいずれの居場所を示す情報であるのか区別することができない。
そこで、実用上は、上述のようなケースにも対処できるように、各情報記録媒体内に、それぞれ自分自身を特定するための所定の媒体識別コードを記録しておくようにする。たとえば、図1の例では、情報記録媒体201内には、自己を示すための「C201」なる媒体識別コードが記録されている。そして、各電子機器が、特定の情報記録媒体と交信したときに、当該情報記録媒体に記録されている報告対象となる特定の電子機器に対して、自己の場所を示す場所情報とともに、当該情報記録媒体に記録されている媒体識別コードを、ネットワークを介して送信する処理を実行するようにしておけばよい。
たとえば、図1に示す例において、社員Aが東京本社で電子機器101に対するログイン手続を行ったものとする。この場合、まず、電子機器101は、情報記録媒体201内の「認証情報」を利用して認証処理を行うとともに、情報記録媒体201に記録されている媒体識別コード「C201」と、報告対象を示す機器識別コード「C103」と、を読み出す処理を実行する。続いて、電子機器101は、自己の設置場所を示す場所情報「東京本社」と、読み出した媒体識別コード「C201」とを、報告対象である電子機器103へ送信する処理を行う。
このような処理が実行されるようにしておけば、社員Aが東京本社で電子機器101に対するログイン手続を行うと、千葉支社の電子機器103には、「東京本社」なる場所情報だけでなく、「C201」なる媒体識別コードが送信されてくるので、媒体識別コード「C201」で特定される社員証を所持する社員の居場所が「東京本社」である、という情報の提示が可能になる。もちろん、媒体識別コードと社員名との対応関係を示すリストを参照するようにすれば、電子機器103は、媒体識別コード「C201」で特定される社員証を所持する社員が社員Aであることを認識することができるので、「ただいま、社員Aは東京本社におります」のようなメッセージを提示することも可能である。もちろん、社員B,社員Cの居場所の提示も同様に行うことができる。
あるいは、情報記録媒体201内に記録されている媒体識別コードとして、「C201」のようなコードではなく、「社員A」のような氏名を示す文字コードを用いるようにすれば、電子機器103には、「東京本社」なる場所情報とともに「社員A」なる媒体識別コードが送信されてくるので、リストの参照などを行うことなしに、「ただいま、社員Aは東京本社におります」のようなメッセージを提示することが可能になる。
このように、情報記録媒体201内に、「C201」あるいは「社員A」のような媒体識別コードを記録しておくと、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するようなケースにも対応することができるようになる。しかしながら、逆言すれば、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するようなケースがない場合には、情報記録媒体201内に、必ずしも媒体識別コードを記録しておく必要はない。
たとえば、電子機器103が社員A専用のパソコンであり、他の社員が、このパソコンを「報告対象」として設定することがあり得ない場合には、図示の「C201」なる媒体識別コードの記録を省略しても問題は生じない。この場合、電子機器103を「報告対象」として送信されてくる場所情報は、必ず社員Aの居場所を示す情報ということになるので、電子機器103に表示されたメッセージが、「ただいま、東京本社におります」のような場所を示す情報のみであっても、当該メッセージが社員Aの居場所を示すメッセージであることは明らかである。
したがって、本発明を実施するにあたって、情報記録媒体側に媒体識別コードを記録することや、「報告対象」に対して当該媒体識別コードを送信することは、必須事項ではない。
<<< §2.本発明に係るシステムの具体的構成 >>>
さて、上述の§1では、図1を参照しながら、本発明の基本概念を説明した。ここでは、この図1に示すシステムにおける電子機器および情報記録媒体のより具体的な構成例を述べる。
図2は、本発明の基本的実施形態に係る電子機器および情報記録媒体の構成を示すブロック図であり、図1の左下部分に示されている電子機器103および情報記録媒体201の具体的な構成例を示すものである。図2の上段に示されているように、電子機器103には、それぞれブロックで示す構成要素11〜17が備わっており、図2の下段に示されているように、情報記録媒体201には、それぞれブロックで示す構成要素21〜24が備わっている。
なお、図示する構成要素11〜17は、電子機器103の構成要素のうちの本発明に関与する構成要素に対応するものだけをブロックとして示したものであり、電子機器103には、その機能に応じて、この他にも様々な構成要素が備わっている。たとえば、ここに示す例では、電子機器103はデスクトップパソコンであるから、CPU,メモリ,ハードディスク装置,ディスプレイ装置,キーボード,マウスなどの様々な構成要素を備えている。構成要素11〜17は、電子機器103の特定の機能を1つの構成要素として捉えたものであり、実際には、パソコンを構成する上記種々のハードウエアに専用のソフトウエアを組み込むことにより実現されるものである。
同様に、図示する構成要素21〜24は、情報記録媒体201の構成要素のうちの本発明に関与する構成要素に対応するものだけをブロックとして示したものであり、情報記録媒体201には、その機能に応じて、この他にも様々な構成要素が備わっている。たとえば、ここに示す例では、情報記録媒体201は、社員Aに対して社員証として発行されたICカードであるから、CPUやメモリなどのハードウエアを備えており、メモリ内には、社員証としての機能に必要な様々なプログラムやデータが格納されている。構成要素21〜24は、情報記録媒体201の特定の機能を1つの構成要素として捉えたものであり、実際には、ICカードを構成するハードウエアに専用のソフトウエアを組み込むことにより実現されるものである。
情報記録媒体201の構成要素となっている交信部21は、電子機器と交信するための機能を果たす構成要素である。§1で述べたとおり、両者間の交信は、物理的に電極を接触させる接触型の交信でもよいし、無線を利用した非接触型の交信でもよいが、交信部21は、この交信処理に関与するICカード内のハードウエアおよびソフトウエアによって構成されることになる。一方、認証情報格納部22,報告対象機器登録部23,媒体識別コード格納部24は、ICカード内のメモリの一領域によって構成される。
認証情報格納部22は、電子機器に正しい認証を行わせるために必要な認証情報を格納する構成要素であり、§1で述べたとおり、電子機器は、この認証情報格納部22に格納されている認証情報を利用して、情報記録媒体201が正しい媒体であることを認証する。
報告対象機器登録部23は、報告対象機器を示す情報を格納する構成要素である。具体的には、「報告対象」として設定された特定の電子機器を示す機器識別コードが格納されることになる。図には、一例として、「C103」なる機器識別コード(電子機器103の識別コード)が格納されている例が示されているが、これは、電子機器103が「報告対象」として登録されていることを意味している。
媒体識別コード格納部24は、当該情報記録媒体201自身を識別するための媒体識別コードを格納する構成要素である。図には、一例として、「C201」なる媒体識別コード(情報記録媒体201の識別コード)が格納されている例が示されている。情報記録媒体は社員証として個々の社員にそれぞれ支給されることになるが、個々の情報記録媒体の媒体識別コード格納部24には、それぞれ互いに異なる所定の媒体識別コードが記録されることになる。同姓同名の社員間での混同が生じなければ、前述したように、「社員A」のような氏名を媒体識別コードとして用いてもかまわない。
一方、電子機器103側の構成要素となっている交信部17は、情報記録媒体と交信するための機能を果たす構成要素であり、実際には、交信処理に関与するパソコンおよびその周辺機器(この例の場合リーダライタ装置)のハードウエアおよびソフトウエアによって構成されることになる。
認証部16は、交信中の情報記録媒体に格納されている認証情報を利用して、当該情報記録媒体を認証し、正しい認証結果が得られたときに、当該電子機器の利用を許可する機能を果たす。図示の例は、社員Aが電子機器103にログインするために、電子機器103側のリーダライタ装置に社員証である情報記録媒体201を挿入し、両者間での交信が行われている状態を示している。このような状態において、認証部16は、認証情報格納部22内に格納されている認証情報を利用して、情報記録媒体201が、本システムにおける正規の媒体であるか否かの認証を行うことになる。
なお、図には、認証部16とネットワークNとの間に、破線の矢印が描かれているが、これは、認証処理に必要があれば、認証部16がネットワークNを介して図示されていないサーバ装置などにアクセスできることを示している。もちろん、認証部16が単独で認証を行う機能を有していれば、ネットワークNを介したアクセスは不要である。
機器識別コード格納部11は、ネットワークN上で各電子機器を相互に識別可能となるように自己に付与された機器識別コードを格納する構成要素であり、場所情報格納部12は、自己が設置された場所を示す場所情報を格納する構成要素である。いずれも実際には、電子機器103を構成するパソコンのハードディスク装置などの記憶領域によって構成される。図には、一例として、「C103」なる機器識別コード(電子機器103の識別コード)と、「千葉支社」なる場所情報(電子機器103の設置場所)とが格納されている例が示されている。
場所情報送信部14は、交信中の情報記録媒体の報告対象機器登録部に書き込まれている機器識別コードを読み出し、読み出した機器識別コードで特定される別な電子機器に対して、場所情報格納部12に格納されている自己の場所情報をネットワークNを経由して送信する機能を果たす。この機能は、§1で述べた第2のステップに相当する処理を行う機能である。
もっとも、図2に示す例の場合、電子機器103自身が「報告対象」となっているので、実際には、場所情報送信部14による場所情報の送信は行われない。すなわち、場所情報送信部14は、報告対象機器登録部23から読み出した機器識別コード「C103」が、機器識別コード格納部11に格納されている機器識別コード「C103」と一致する場合には、自分自身が「報告対象」となっているものと認識して場所情報の送信を実行しないようにする。
場所情報送信部14が実質的に第2のステップに相当する処理を行うのは、たとえば、社員Aが東京本社に出張し、電子機器101にログインした場合である。この場合は、図2の上段に示す電子機器は東京本社に設置された電子機器101ということになるので、報告対象機器登録部23から読み出した機器識別コード「C103」は、機器識別コード格納部11に格納されている機器識別コード「C101」には一致しない。そこで、場所情報送信部14は、「報告対象」となっている別な電子機器103に対して、場所情報格納部12に格納されている自己の場所情報「東京本社」をネットワークNを経由して送信する。
このとき、電子機器101内の場所情報送信部14は、交信中の情報記録媒体201から「報告対象」を示す機器識別コード「C103」とともに、媒体識別コード「C201」を読み出し、「報告対象」となる電子機器103に対して、場所情報格納部12に格納されている自己の場所情報「東京本社」と読み出した媒体識別コード「C201」とをネットワークNを経由して送信する。その結果、電子機器103に対しては、媒体識別コード「C201」に対応する「社員A」の居場所が「東京本社」である旨の情報が伝わることになる。このような運用を行えば、前述したように、社員A,B,Cのような複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するようなケースにも対応できるようになる。
もっとも、§1でも述べたとおり、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するようなケースがない場合には、情報記録媒体201内に、必ずしも媒体識別コード格納部を設ける必要はない。この場合、場所情報送信部14は、場所情報のみを送信する機能を有していればよい。
一方、場所情報提示部13は、ネットワークNを経由して自己宛に送信されてきた場所情報を格納し、これを所定の方法で提示する機能を果たす構成要素である。場所情報送信部14が、場所情報とともに媒体識別コードを送信する機能を有している場合には、場所情報とともに、当該媒体識別コードもしくはこれに対応するユーザ名を提示すればよい。この機能は、§1で述べた第3のステップに相当する処理を行う機能である。
たとえば、場所情報「東京本社」のみが送信されてきた場合(前述したように、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するようなケースがない場合)は、当該電子機器は、特定の社員の居場所を提示する専用機として用いられているので、「ただいま、東京本社におります」のような提示のみを行えばよい。これに対して、場所情報「東京本社」とともに媒体識別コード「C201」が送信されてきた場合は、「C201は東京本社におります」のような提示を行ってもよいし、対応リストを参照することにより、媒体識別コード「C201」が「社員A」に対応することを認識した上で、「社員Aは東京本社におります」のような提示を行ってもよい。もちろん、媒体識別コードとして「社員A」のような氏名を示す文字列を用いるようにすれば、対応リストなどを参照することなしに、「社員Aは東京本社におります」のような提示が可能になる。
最後に説明する報告対象書込部15は、機器識別コード格納部11に格納されている自己の機器識別コードを、交信中の情報記録媒体内の報告対象機器登録部に書き込む機能を果たす構成要素である。この機能は、§1で述べた第1のステップに相当する処理を行う機能である。たとえば、社員Aが、自分の社員証である情報記録媒体201を用いて、自分のパソコンである電子機器103にログインした状態で、報告対象書込部15に対して書込指示を与えれば、機器識別コード格納部11に格納されている機器識別コード「C103」が、情報記録媒体201側の報告対象機器登録部23に書き込まれることになる。図2は、このような書込処理が完了した状態を示している。
もちろん、社員Aは、いつでも報告対象機器登録部23の登録内容を変更することができる。たとえば、1ヶ月間だけ横浜支社へ赴任するような短期の転勤命令が出された場合であれば、社員Aは、社員証である情報記録媒体201を用いて、横浜支社に設置されている電子機器102にログインした状態で、この電子機器102内の報告対象書込部15に対して書込指示を与えればよい。そうすれば、電子機器102内の機器識別コード格納部11に格納されている機器識別コード「C102」が、情報記録媒体201側の報告対象機器登録部23に書き込まれることになる。このとき、上書き書込が行われるようにしておけば、報告対象機器登録部23内の機器識別コード「C103」は、新たなコード「C102」に書き換えられることになり、以後は、横浜支社に設置されている電子機器102が、社員Aについての「報告対象」ということになる。もちろん、社員Aが1ヶ月後に千葉支社へ戻ってきた場合には、再び、電子機器103にログインした状態で、報告対象書込部15に対して書込指示を与えれば、報告対象機器登録部23内の機器識別コード「C102」は、もとの「C103」に戻される。
また、報告対象書込部15に、追加書込の機能をもたせておくようにすれば、複数の電子機器を「報告対象」として登録することも可能になる。たとえば、千葉支社に戻った社員Aが、毎日、埼玉工場と千葉支社とを往復するような業務に携わるようになった場合を考える。この場合、社員Aは、社員証である情報記録媒体201を用いて、埼玉工場に設置されている電子機器104にログインした状態で、この電子機器104内の報告対象書込部15に対して追加書込による書込指示を与えればよい。
そうすれば、電子機器104内の機器識別コード格納部11に格納されている機器識別コード「C104」が、情報記録媒体201側の報告対象機器登録部23に追加して書き込まれることになり、電子機器103と電子機器104との双方が「報告対象」として登録された状態となる。したがって、以後は、社員Aの居場所は、電子機器103と電子機器104の双方に提示されることになるので、千葉支社にいるときには、埼玉工場の電子機器104に「千葉支社におります」との提示がなされ、埼玉工場にいるときには、千葉支社の電子機器103に「埼玉工場におります」との提示がなされる。もちろん、社員Aが東京本社へ出張したときには、電子機器103,104の双方に、「東京本社におります」との提示がなされることになる。
要するに、情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に、複数の電子機器に関する機器識別コードを書き込めるようにしておいた場合には、場所情報送信部13が、交信中の情報記録媒体の報告対象機器登録部23に複数の機器識別コードが書き込まれていた場合に、個々の機器識別コードで特定されるそれぞれの電子機器に対して情報送信を行うようにすればよい。
また、報告対象書込部15には、自分自身の機器識別コード(すなわち、機器識別コード格納部11に格納されている機器識別コード)だけでなく、ユーザが指定した任意の機器識別コードを書き込む機能をもたせることも可能である。そうすれば、たとえば、千葉支社にいる社員Aは、千葉支社に設置されている電子機器103を操作するだけで、任意の電子機器を「報告対象」として追加する処理を行うことができる。
なお、報告対象書込部15に、このような追加書込の機能をもたせる場合は、削除機能ももたせるようにするのが好ましい。具体的には、現在交信中の情報記録媒体について、現時点で報告対象機器登録部23内に登録されている機器識別コードの一覧リストを表示させるようにし、その中からユーザが指定した特定の機器識別コードを削除する処理が行われるようにすればよい。このように、「報告対象」を随時追加したり削除したりできるようにしておけば、ユーザは、必要に応じて、自由に「報告対象」の設定を行うことが可能になる。
<<< §3.電子機器の必須構成要素 >>>
以上、§2では、図2を参照しながら、本発明で用いる電子機器および情報記録媒体の基本構成を述べた。そして、情報記録媒体における媒体識別コード格納部24は、必須のものではなく、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するようなケースがない場合には、情報記録媒体201内に、必ずしも媒体識別コード格納部24を設ける必要はなく、この場合、場所情報送信部14は、場所情報のみを送信する機能を有していればよいことを述べた。
一方、電子機器に関して言及すると、本発明のシステムで利用されるすべての電子機器について、図2の電子機器103が備えるすべての構成要素が必ずしも必要とされるものではない。そこで、この§3では、本発明に用いられる電子機器の必須構成要素に関する補足説明を行う。
本発明では、互いにネットワークで接続された複数の電子機器が必須であるが、本発明の動作原理を考えると、本発明にいう電子機器には2通りの役割があることが理解できよう。すなわち、場所情報の送り手としての役割と、場所情報の受け手としての役割である。たとえば、図1を参照したこれまでの説明では、千葉支社に設置された電子機器103を「報告対象」として登録した社員Aが、東京本社に出張し、電子機器101にログインする作業を行うと、電子機器101からネットワークNを介して電子機器103に「東京本社」なる場所情報が送信され、千葉支社の電子機器103のディスプレイ画面上に、「ただいま東京本社におります」という表示がなされる例を示した。この場合、電子機器101は場所情報の送り手としての役割を果たしており、電子機器103は場所情報の受け手としての役割を果たしている。
結局、図2の上段に示す電子機器103は、場所情報の送り手としての役割と、場所情報の受け手としての役割との双方を果たすことが可能な構成を有していることになる。したがって、図1に示す電子機器101〜104のすべてについて、図2の上段に示す電子機器103と同等の構成を採用すれば、電子機器101〜104は、いずれも場所情報の送り手としての役割と、場所情報の受け手としての役割との双方を果たすことができる。
しかしながら、本発明を実施する上では、ネットワークNに接続されているすべての電子機器について、必ずしも双方の役割が必要とされるわけではない。ある特定の電子機器は、情報の送り手としての役割のみを果たし、別な特定の電子機器は、情報の受け手としての役割のみを果たす、というような構成を採っても、本発明は実施可能である。そこで、図2の上段に示す電子機器103の各構成要素が、いずれの役割に寄与する構成要素であるかを検討してみる。
まず、機器識別コード格納部11は、ネットワークN上で各電子機器を相互に識別可能となるように自己に付与された機器識別コードを格納する構成要素であるから、ネットワークNに接続して用いる電子機器には必須の構成要素ということになる。すなわち、機器識別コード格納部11は、情報の送り手・受け手の双方で必要な構成要素である。
一方、場所情報格納部12および場所情報送信部14は、場所情報を送信するために必要な構成要素であるから、情報の送り手のみに必要な構成要素である。これに対して、場所情報提示部13は、受信した場所情報を提示するために必要な構成要素であるから、情報の受け手のみに必要な構成要素である。
それでは、認証部16および交信部17はどうであろうか。まず、これらの構成要素は、情報の受け手としては不要である。情報の受け手としての機能は、自己宛に送信されてきた場所情報を受け取り、これを提示すればよいのであるから、情報記録媒体と交信したりこれを認証したりする必要はない。これに対して、情報の送り手としての機能を果たすためには、認証部16および交信部17は必要である。たとえば、「社員Aが東京本社に居る」という情報を送るためには、交信部17によって、社員Aが社員証として所持する情報記録媒体201と交信し、かつ、当該媒体が正規の媒体であることを認証する必要がある。したがって、認証部16および交信部17は情報の送り手のみに必要な構成要素である。
結局、本発明を実施する上で、情報の送り手として機能するための電子機器は、図3に示す電子機器110に示すように、機器識別コード格納部11(この例では、「C110」なる機器識別コードが格納されている例が示されている)、場所情報格納部12(この例では、「臨時出張所」なる場所情報が格納されている例が示されている)、場所情報送信部14、認証部16、交信部17を有していれば足りる。同様に、本発明を実施する上で、情報の受け手として機能するための電子機器は、図4に示す電子機器120に示すように、機器識別コード格納部11(この例では、「C120」なる機器識別コードが格納されている例が示されている)および場所情報提示部13を有していれば足りる。
図3に示す電子機器110は、通常は無人の臨時出張所に設置されたパソコンであり、この臨時出張所に社員が出張しているときには、当該社員について「報告対象」として登録されている別な電子機器に対して、「臨時出張所」なる場所情報を送信する必要がある。しかしながら、このパソコンの画面上に、誰かの居場所を表示する必要は全くない。このようなケースでは、電子機器110は、場所情報の送り手としての役割を果たす必要があるが、場所情報の受け手としての役割を果たす必要はない。よって、図示のとおり、この電子機器110は、場所情報の送り手としての必須構成要素のみから構成されている。
一方、図4に示す電子機器120は、電子掲示板であり、特定のユーザ(社員)の居場所を表示する機能のみを有している。電子機器120には、それ以外の機能は備わっていないので、ユーザが社員証を用いてログインするような作業を行うことは全くない。よって、図示のとおり、この電子機器120は、場所情報の受け手としての必須構成要素のみから構成されている。
なお、図3に示す電子機器110のように、場所情報の受け手としての機能をもたない電子機器は、「報告対象」としては指定できない「指定不能な電子機器」ということになる。これに対して、図2の上段に示す電子機器103や図4に示す電子機器120は、「報告対象」として指定できる「指定可能な電子機器」ということになる。
上述の観点から、本発明を実施する上では、ネットワークN上に、場所情報の送り手となる機能を有する電子機器が少なくとも1台は存在し、場所情報の受け手となる機能を有する別な電子機器が少なくとも1台存在する必要がある。もちろん、実用上は、図2の上段に示す電子機器103のように、場所情報の送り手の役割も、受け手の役割も果たすことができる電子機器を多数用いるのが一般的なケースになると思われる。しかし、すべての電子機器が、送り手・受け手の双方の役割を果たすような構成にする必要はなく、少なくともいくつかの電子機器が送り手の役割を果たすことができ、少なくともいくつかの電子機器が受け手の役割を果たすことができるような構成にすれば足りる。
なお、最後に、報告対象書込部15の必要性について述べておく。この報告対象書込部15は、実は、情報の送り手にも、受け手にも、必須の構成要素ではない。報告対象書込部15は、「報告対象」となる特定の電子機器についての機器識別コードを、交信中の情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に書き込む処理を行うが、この書込処理は、どのような装置を利用して行ってもかまわない。別言すれば、報告対象機器登録部23への登録は、必ずしもネットワークNに接続されているいずれかの電子機器から行う必要はなく、情報記録媒体への書込処理を行うことが可能な装置であれば、どのような装置を用いて実行してもかまわない。
もっとも、実用上は、少なくともいくつかの電子機器に、報告対象書込部15を設けておくようにするのが好ましい。特に、図2の上段に示す電子機器103に組み込まれている報告対象書込部15は、機器識別コード格納部11に格納されている自己の機器識別コード「C103」を、交信中の情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に書き込む機能をもっているので、ユーザは、「報告対象」として登録すべき電子機器を指定したり、何らかの機器識別コードを入力したりする作業を行うことなしに、現在ログイン中の電子機器を、「報告対象」として登録する処理を実行させることができる。
なお、より好ましくは、報告対象書込部15に、自己を報告対象機器として指定する旨のユーザの要求があったときには、機器識別コード格納部11に格納されている自己の機器識別コードを、交信中の情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に書き込む処理を実行し、自己以外の電子機器を報告対象機器として指定する旨のユーザの要求があったときには、指定された電子機器の機器識別コードを、交信中の情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に書き込む処理を実行する機能をもたせておくとよい。
具体的には、たとえば、報告対象書込部15を起動させた時点で、「報告対象として登録する電子機器はどれですか? (1)本機器 (2)別な機器」のようなメッセージを表示させるようにし、ユーザが(1)を選択した場合には、自己を報告対象機器として指定する旨のユーザの要求があったものと判断し、機器識別コード格納部11に格納されている自己の機器識別コードを書き込む処理を実行すればよい。一方、ユーザが(2)を選択した場合には、あらためて電子機器のリストなどを提示し、その中からユーザが特定の電子機器を選択したら、選択された電子機器の機器識別コードを書き込む処理を実行すればよい。
<<< §4.電子機器のバリエーション >>>
これまで述べてきた実施形態は、ネットワークNに接続されている電子機器がパソコンである例についてのものであったが、本発明にいう電子機器は、必ずしもパソコンやこれに準じた機器である必要はない。本発明を実施する際には、コンピュータの他、プリンタ、複写機、その他の事務用什器・備品(たとえば、プリンタ、ファクシミリ、複写機など複数の機能を備えたいわゆる複合機、電子式のロッカーやキャビネットなどのオフィス機器)、電子錠、電子掲示板などを電子機器として利用することが可能である。以下、種々の電子機器を用いた実施形態を説明する。
図5は、本発明の別な実施形態に係るシステムを示すブロック図である。この実施形態では、ネットワークNに様々な電子機器が接続されている。図示のコンピュータ101〜104は、図1に示す電子機器101〜104と同等の電子機器であり、いずれも図2の上段に示す電子機器103と同じ構成を有している。すなわち、グループG1として囲って示したコンピュータ101〜104は、場所情報の送り手・受け手両方の役割を有する電子機器であり、報告対象として指定可能な電子機器ということになる。
一方、グループG2として囲って示した電子錠111,113やプリンタ112,114は、いずれも場所情報の送り手としての役割を果たすことはできるが、場所情報の受け手としての役割を果たすことはできない。すなわち、グループG2に所属する電子機器は、図3に示す電子機器110と同等の電子機器であり、報告対象としては指定不能な電子機器ということになる。
より具体的に説明すれば、電子錠111は、建屋Xの入り口ゲートに取り付けられた電子式の錠であり、特定の社員は、社員証として配布された情報記録媒体(ICカード)を電子鍵として用いることにより、この電子錠111の解錠動作を行うことができる。これまで述べてきた例は、いずれもパソコンからなる電子機器についての例であったため、社員証として配布された情報記録媒体を用いた認証処理は、パソコンへのログイン手続に必要な処理という位置づけであった。これに対して、電子錠111内で行われる認証処理は、情報記録媒体内に正しい鍵コードが格納されているか否かを判定する処理ということになる。
たとえば、社員Aが、この建屋Xへの出入りを許可されている社員であったとすると、社員Aの社員証として機能する情報記録媒体201は、この電子錠111なる電子機器に対しては電子鍵としての機能を果たすことになる。そして、この電子鍵内に格納されている認証情報は、電子鍵としての鍵コードの意味をもち、これが正しい鍵コードであることが電子錠111側で確認されると、解錠操作が許可されることになる。社員Aは、社員証として機能する情報記録媒体201を電子錠111に挿入し(情報記録媒体201が非接触型ICカードの場合は、電子錠111の近傍にもってゆき)、電子錠111の解錠ボタンを押すと、建屋Xの入り口ゲートが開くことになる。電子錠113は、同様に、建屋Yの入り口ゲートに取り付けられた電子式の錠である。
電子機器101〜104がコンピュータであるのに対して、電子機器111,113は電子錠であり、両者の電子機器としての本来の機能は全く相違する。しかしながら、本発明の構成要素となる電子機器という観点では、両者は、いずれも場所情報の送り手としての役割を果たす電子機器という点で共通する。たとえば、社員Aが、社員証として機能する情報記録媒体201を利用して、電子錠111を解錠すれば、電子錠111は「建屋X」という場所情報を「報告対象」として登録されているコンピュータ103に送信することができる。その結果、コンピュータ103のディスプレイ画面上には、「ただいま、建屋Xにおります」といった表示を行うことができる。同様に、建屋Yの入り口ゲートに設けられた電子錠113を解錠すれば、「ただいま、建屋Yにおります」という表示を行うことができる。また、建屋Xの出口ゲートにも同様の電子錠を設けておけば、社員Aがこの出口ゲートを通過した際に、「ただいま、建屋Xを出ました」という表示を行わせることも可能である。
一方、プリンタ112,114は、いわゆるネットワーク接続型のプリンタであるが、使用するためには、社員証として機能する情報記録媒体を用いた認証を必要とするタイプのプリンタである。たとえば、建屋Xに入った社員Aが、プリンタ112が設置されている特定の部屋(たとえば、112号室としよう)に入室して、プリント作業を行う場合を考える。この場合、プリンタ112を利用するために、パソコンに対するログイン作業と同等の作業を行う必要がある。すなわち、社員Aは、情報記録媒体201をプリンタ112用のリーダライタ装置に挿入し(情報記録媒体201が非接触型ICカードの場合は、プリンタ112の近傍にもってゆき)、所定の手順に従って、認証処理を行うことになる。
こうして社員Aが、プリンタ112に対する認証処理を完了すると、場所情報の送り手の役割を果たす電子機器として機能するプリンタ112は、「建屋Xの112号室」という場所情報を「報告対象」として登録されているコンピュータ103に送信することができる。その結果、コンピュータ103のディスプレイ画面上には、「ただいま、建屋Xの112号室におります」といった表示を行うことができる。同様に、建屋Yの114号室に設置されたプリンタ114を使用する際には、「ただいま、建屋Yの114号室におります」といった表示を行うことができる。
以上、グループG2に所属する電子機器として、電子錠とプリンタの例を示したが、この他にも種々の機器を本発明にいう電子機器として利用することが可能である。図5には、更に2つの電子機器が例示されている。すなわち、電子掲示板121と電話機131である。
電子掲示板121は、図4に電子機器120として説明したものと同等の機器であり、場所情報の受け手としての役割のみを果たすことができる。そのために、この電子掲示板121には、所定の機器識別コード(図示の例では、「C121」なるコード)が付与されている。また、電子掲示板121は、ネットワークNを介して自己宛に送信されてきた場所情報を受け取り、これを提示する機能を有しており、報告対象として指定可能な電子機器のひとつである。
この電子掲示板121を「報告対象」として登録するには、図示のとおり、この電子掲示板121自身の機器識別コード「C121」を情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に書き込む処理を行えばよい。もちろん、複数の社員がこの電子掲示板121を共通の「報告対象」として設定するようなケースでは、情報の送り手が、場所情報とともに媒体識別コード(媒体を所持する社員を特定することができるコード)を送信するような運用を行うことにより、電子掲示板121上には、「誰がどこにいるか」をリストにして表示することが可能である。
一方、電話機131は、通常の電話機とは若干異なる固有の機能を有する電子機器である。すなわち、この電話機131には、所定の機器識別コード(図示の例では、「C131」なるコード)が付与されている。しかも、この電話機131は、ネットワークNを介して自己宛に送信されてきた場所情報を受け取ることができ、自己に対する着信(電話回線Tを介した呼の着信)を、受け取った場所情報によって特定される場所に設置されている別な電話機に転送させる機能を有している。
もちろん、電話機131は、報告対象として指定可能な電子機器のひとつであり、この電話機131を「報告対象」として登録するには、図示のとおり、この電話機131自身の機器識別コード「C131」を情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に書き込む処理を行えばよい。
たとえば、この電話機131が、千葉支社の社員Aの席に設置されている電話機であるものとし、通常、社員Aは、この電話機131を利用しているものとする。ところが、ある日、社員Aは東京本社に出張することになったとしよう。この場合、もし、社員Aが、この電話機131を「報告対象」として予め登録しておけば、次のような手順で、自分の留守の間に電話機131にかかってきた自分宛の電話を、出張先の東京本社の電話機で受けることが可能になる。
まず、東京本社に出張した社員Aは、東京本社に設置されている電子機器101(東京本社での業務に用いるパソコン)に対して、情報記録媒体201を用いて認証を行う(ログイン手続を行う)。これにより、電子機器101は、「報告対象」となっている電子機器(電話機)131に対して、所定の場所情報を送信する。ここでは、電子機器101の設置場所を示す場所情報として、「本社ビル3階の営業本部第7課のミーティングルーム」のようなより詳細な場所情報が設定されていたものとする。その結果、電話機131には、ネットワークNを介して、上記詳細な場所情報が送信されることになる。
ここで、電話機131に、所定の電話番号リストをデジタルデータとして用意しておくようにし、「本社ビル3階の営業本部第7課のミーティングルーム」なる場所情報に対して、当該ミーティングルーム内に設置されている別な電話機の電話番号を自動検索する機能をもたせておけば、電話機131は、社員Aの現在の居場所である本社ミーティングルームの電話番号を自動的に認識することが可能である。そこで、このような状態において、電話回線Tを介して電話機131に対して外部からの着信があった場合には、当該着信を本社ミーティングルームの電話機に自動的に転送する処理を実行させることができる。かくして、社員Aは、留守の間に電話機131にかかってきた自分宛の電話を、出張先の東京本社の電話機で受けることが可能になる。
なお、図5では、電話回線TをネットワークNとは別個の回線として図示してあるが、電話機131が、インターネット電話などの場合には、もちろん、電話回線TもネットワークNを介した回線ということになる。
<<< §5.本発明のいくつかの変形例 >>>
ここでは、本発明のいくつかの変形例を列挙しておく。
(1) 媒体識別コードと認証情報との兼用
図2に示す情報記録媒体201には、認証情報格納部22と媒体識別コード格納部24とをそれぞれ別個に設け、認証情報と媒体識別コードとを別個の情報として取り扱う例が示されているが、認証情報格納部22内に格納されている認証情報もしくはその一部を媒体識別コードとして利用することも可能であり、その場合、媒体識別コード格納部24は不要になる。
(2) 場所情報のバリエーション
図1に示す例では、個々の電子機器が設置されている場所を示す場所情報として、「東京本社」,「埼玉工場」のような大まかな場所を示す文字列を用いているが、実用上は、より細かな場所情報を用いるようにするのが好ましい。たとえば、「本社ビル3階の営業本部第7課のミーティングルーム」、「埼玉工場の第4建屋5階の第4クリーンルーム」のような、細部にわたった場所情報を用いるようにすれば、社員の居場所を部屋単位で把握することができる。もちろん、プリンタなどを電子機器として用いる場合には、「埼玉工場の第4建屋5階の第4クリーンルーム内の6番テーブル」のように、プリンタが設置されている机やテーブル単位で、社員の居場所の把握が可能である。
なお、場所情報としては、必ずしも文字列からなる情報を用いる必要はなく、たとえば、「東京本社」なる文字列の代わりに、「C101」のような機器識別コードを場所情報として用いることも可能である。この場合には、特定の電子機器についての機器識別コードと、当該電子機器の設置場所を示す文字列と、の対応テーブルを用意しておくようにし、受け手の役割を果たす電子機器は、この対応テーブルを参照することにより、場所情報として送信されてきた「C101」のような機器識別コードを「東京本社」なる文字列に変換して提示するようにすればよい。本願における「場所情報」とは、このように、直接的に場所を示す情報のみを意味するものではなく、何らかの対応関係を参照することにより間接的に場所を示すことができる情報も含むものである。たとえば、電子機器は、自分自身の機器識別コードを場所情報として代用することも可能であり、その場合、識別コード格納部11と場所情報格納部12とは同一の格納部で兼用できる。
(3) IPプロトコル/電子メールの利用
最近は、IPプロトコルを利用したネットワークが一般的に普及しているが、このように、ネットワークNとして、IPプロトコルを利用したネットワークを用いる場合には、機器識別コードとしてIPアドレスを用いるのが好ましい。
また、場所情報送信部14が、「報告対象」として登録されている特定の電子機器に場所情報を送信する際には、電子メールにより情報送信を行うことが可能である。
(4) 複数回にわたって送信された場所情報
たとえば、図1に示す例において、千葉支社のスタッフである社員Aが、東京本社、横浜支社、埼玉工場の順に移動し、それぞれの場所で電子機器101,102,104を利用した場合、「報告対象」となっている電子機器103には、「東京本社」なる場所情報が送信された後、「横浜支社」なる場所情報が送信され、更に「埼玉工場」なる場所情報が送信されることになる。このように、社員がいくつかの場所を転々と移り歩いた場合には、「報告対象」となっている電子機器には、複数回にわたって場所情報が逐次送信されてくることになる。このように複数回にわたって送信されてくる場所情報に対しては、場所情報提示部13として、次の2通りの取り扱い方法が考えられる。
まず1つ目の取り扱い方は、ネットワークを経由して送信されてきた最新の場所情報のみを提示する、という方法である。この方法を採れば、上述の例の場合、「報告対象」となっている電子機器103のディスプレイ画面上の表示は、「ただいま、東京本社におります」から「ただいま、横浜支社におります」に変更され、更に「ただいま、埼玉工場におります」に変更される。もちろん、このような居場所表示は、必ずしも正確ではなく、社員Aが横浜支社のエレベータに乗っている状態であっても、電子機器102に対するログイン手続を行うまでは、「ただいま、東京本社におります」との表示がなされた状態になるが、転々と移り歩いている社員Aの居場所をある程度は捕捉することができる。
なお、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するケースでは、場所情報とともに媒体識別コードが送信されてくることになるが、このような場合は、個々の媒体識別コードごとに最新の場所情報のみを提示するようにすればよい。たとえば、社員Aに関して最新の場所情報が「横浜支社」であり、社員Bに関して最新の場所情報が「埼玉工場」であった場合は、「社員Aは横浜支社におります。社員Bは埼玉工場におります。」のような提示を行えばよい。
もう1つの取り扱い方は、ネットワークを経由して送信されてきた場所情報を時系列に従った順序で、複数列挙して提示する、という方法である。この方法を採れば、上述の例の場合、「報告対象」となっている電子機器103のディスプレイ画面上の表示は、最初は「ただいま、東京本社におります」のようになるが、続いて「ただいま、東京本社を経由して、横浜支社におります」に変更され、最後は「ただいま、東京本社、横浜支社を経由して、埼玉工場におります」に変更される。このような提示を行えば、社員Aの移動経路を把握することができる。
なお、複数の社員が同一の電子機器を「報告対象」として設定するケースでは、場所情報とともに媒体識別コードが送信されてくることになるが、このような場合は、個々の媒体識別コードごとにそれぞれ時系列に従った順序で、場所情報を複数列挙して提示すればよい。具体的には、たとえば、「社員Aは、東京本社を経由して、横浜支社におります。社員Bは、埼玉工場を経由して、東京本社におります。」のような提示を行えばよい。
(5) 場所情報提示部による提示態様
場所情報提示部13は、ネットワークNを経由して自己宛に送信されてきた場所情報を格納し、これを所定の方法で提示する機能を有する構成要素であるが、場所情報の提示態様は、基本的にどのようなものであってもかまわない。
ただ、前述した電子掲示板121のように、場所情報の提示のみを行うための電子機器が「報告対象」として登録されていた場合は、当該電子機器にとって、それが与えられた専属の仕事であるので、常に場所情報の提示を行うようにしてかまわないが、通常のパソコンが「報告対象」として登録されていた場合は、常に場所情報の提示を行うようにすると好ましくないケースがある。
そこで、実用上は、パソコンなどの電子機器が「報告対象」として登録されていた場合には、当該電子機器に対して、ユーザが場所情報の提示指示を与えたときにのみ、当該電子機器内の場所情報提示部が、当該電子機器用のディスプレイ画面上に、場所情報の提示を行うようにしておくのが好ましい。
あるいは、一般的なパソコンには、一定時間にわたって操作入力がなされないと、自動的に休息モード(通常の画面表示から、予め設定されている特別な画面表示に切り換えるモード)に入る機能が備わっている。このような休息モードに入った場合、設定によっては、ディスプレイ画面を暗転させたり、いわゆるスクリーンセーバプログラムを自動的に起動させたりすることが可能である。パソコンのこのような機能を利用すれば、休息モードに入ったときに、当該パソコン内の場所情報提示部が、当該パソコン用のディスプレイ画面上に、場所情報の提示を自動的に行うようにすることも可能である。このような応用例のひとつが、§6で詳述されている。
なお、これまでの実施形態では、場所情報提示部13が、ディスプレイ画面上に場所情報の表示を行う例を示したが、場所情報の提示は、必ずしも視覚的な提示である必要はなく、音声によって場所情報の提示を行うことも可能である。たとえば、「ただいま、東京本社におります」のようなメッセージを音声で流すようにすればよい。
(6) リセット操作
場所情報提示部13は、ネットワークを経由して自己宛に送信されてきた場所情報を一時格納し、これを所定の方法で提示する処理を行うが、実用上は、ユーザの指示もしくは所定の条件成立に基づいて、過去に受け取った場所情報を削除し、以後、当該場所情報についての提示が行われないようにするリセット操作が可能なようにしておくのが好ましい。
たとえば、東京本社へ出張した社員Aが、千葉支社の自分の席に戻ってきたとしよう。この場合、自分のパソコンである電子機器103の場所情報提示部13には、「東京本社」なる場所情報が格納された状態となっており、そのディスプレイ画面上には、「ただいま、東京本社におります」とのメッセージが表示されている。しかし、この時点で、社員Aは既に自分の席へ戻ってきているので、場所情報提示部13に格納されている場所情報を削除し、「ただいま、東京本社におります」とのメッセージ表示がなされないようにするべきである。
そのためには、ユーザからのリセット指示が与えられたときに、過去に受け取った場所情報を削除し、以後、当該場所情報についての提示が行われないようにするリセット操作の機能を場所情報提示部13に用意しておくようにすればよい。あるいは、「ログイン手続が行われた場合にリセット操作を行う」というような条件を予め設定しておき、当該条件が成立した場合に、上述したリセット操作が自動的に実行されるようにしておいてもよい。
リセット操作を行う条件としては、たとえば、「午後11時を経過したらリセット操作を行う」のような時間に関する条件を設定することも可能である。そうすれば、毎日、午後11時になると、すべての電子機器について一斉にリセット操作が行われることになり、翌日の始業時には、システムを常に初期状態からスタートさせることができる。あるいは、千葉支社の電子機器に関しては、「千葉支社の正面ゲートがロックされたらリセット操作を行う」というような条件設定を行ってもよい。この場合、千葉支社のスタッフが全員帰宅して、守衛が正面ゲートをロックすると、千葉支社内のすべての電子機器が一斉にリセットされることになる。
なお、リセット操作の対象となるのは、場所情報提示部13だけではない。たとえば、情報記録媒体201内の報告対象機器登録部23の登録内容をリセットするようにしてもかまわない。この場合は、特定の電子機器に、ユーザの指示もしくは所定の条件成立に基づいて、情報記録媒体内の報告対象機器登録部23に記録されている所定の機器識別コードを削除する機能をもたせておけばよい。
たとえば、「毎週金曜日の午後5時になったら、報告対象としての登録をリセットする」というような条件設定を行っておけば、毎週金曜日の午後5時の時点で、特定の電子機器と交信可能な情報記録媒体内の報告対象機器登録部23内に記録されていた機器識別コードが削除されることになる。もちろん、特定の機器識別コードのみを選択的に削除するような設定も可能である。たとえば、報告対象機器登録部23内に記録されている機器識別コードのうち、筆頭の機器識別コードだけを残し、それ以外のコードをすべて削除するような設定を行えば、「筆頭の報告対象」に関する登録以外は、毎週末に自動的に削除されることになる。
(7) その他の変形例
以上、本発明に関する基本的な実施形態や種々の変形例を述べたが、本発明は、これまで述べた実施形態や変形例に限定されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。要するに、本発明の基本概念は、それぞれ異なる場所に設置された複数の固定装置と、当該固定装置の交信可能エリア内に持ち込むことにより固定装置と交信する機能をもった携帯可能な移動装置と、によってシステムを構成し、移動装置には、特定の固定装置(報告対象となる固定装置)を示す情報を記録しておくようにし、各固定装置が、移動装置と交信したときに、当該移動装置に記録されている特定の固定装置に対して、自己の場所を示す場所情報を送信する処理を行うようにする、という点にあり、この基本概念から逸脱しない限り、本発明は種々の態様で実施可能である。
<<< §6.スクリーンロック離席表示システムへの応用例 >>>
最後に、本発明に係るシステムを、「スクリーンロック離席表示システム」として利用した応用例を述べておく。ここで、「スクリーンロック離席表示システム」とは、会社などでパソコンを利用する仕事に従事している社員が所用で離席し、パソコンの設置された部屋から退室した場合に、当該社員の所在情報をスクリーンロック中のパソコンのディスプレイに表示して他の社員に知らせるためのシステムである。
会社では、パソコンを利用して仕事を行う社員が、打ち合わせや会議などで他の部屋へ移動することがある。このような離席時に、第三者によってパソコンが不正使用されることを防止するために、スクリーンロック機能をパソコンに設ける技術が公知となっている(たとえば、特開2003−167641号公報、特開2005−149443号公報参照)。パソコンにおけるスクリーンロック機能は、使用者によるロック解除処理が行われるまでは、本来の処理のための操作入力を受け付けなくする機能である。スクリーンロックされたパソコンは、正規の使用者本人がロックを解除するまでは、正常に使用できない状態になるので、本人が離席時にもセキュリティが保たれる。すなわち、スクリーンロックされたパソコンは、本人によるパスワードの入力や、生体認証などにより、本人確認が行われない限りロックが解除されない状態になり、利用が阻止される。通常、パソコンに対する入力操作が所定の設定時間にわたって行われなかった場合には、自動的にスクリーンロックがかかるような設定がなされることが多い。したがって、本人がパソコンの電源を切ることを忘れ、会議などのために長時間にわたって離席した場合には、自動的にスクリーンロックされたままの状態で放置されてしまうことになる。
また、一般的に会社などでは、自分の行き先が予め決まっている場合には、社員は、行先記入用ボードなどに行先情報を記入してから離席することが奨励されている。そうすれば、自分宛に電話がかかってきた場合でも、同僚が行先記入用ボードに記入されている行き先を電話の相手に伝えたり、直接本人に連絡したりして、対応することが可能になる。しかしながら、打ち合わせや会議を行う部屋が変更されたり、複数の打ち合わせや会議に連続して参加したりする場合には、現時点でどの部屋に本人が居るのかを特定することができなくなる。そのため、緊急の連絡を行いたい時には、短時間では本人と連絡がとれないという問題が生じる。
そこで、ここで述べる本発明の応用例では、スクリーンロック機能を有するパソコンのディスプレイ上に、当該パソコンの利用者についての行先表示を行うようにしている。すなわち、この応用例に係るシステムを導入すれば、スクリーンロック機能を有するパソコンの利用者が、パソコンの設置された部屋から退室した場合、当該利用者の行先情報が、スクリーンロックされたパソコンのディスプレイに表示されるので、他の者に行先情報を伝達することができる。したがって、緊急の連絡を行いたい場合でも、容易に本人と連絡がとれるようになる。
図6は、本発明をスクリーンロック離席表示システムに応用した実施例の概要を示す透過斜視図である。ここでは、説明の便宜上、図示のとおり入退室が管理された2つの部屋A,Bが上下階に分かれて配置されている単純なモデルを示す。図に破線で示す情報処理装置1は、この離席表示システムを統括管理するための専用コンピュータによって構成されており、このビル内の任意の場所に設置されている。また、各部屋A,B内の必要な箇所には、この情報処理装置1に対する通信網2(ネットワーク)が張り巡らされている。ここでは、上階の部屋Aが、ある特定の社員3が普段仕事を行うための仕事部屋であり、下階の部屋Bが社員共通の会議室になっているものとしよう。
また、個々の社員には、それぞれ社員証として、非接触ICカード(携帯可能な情報記録媒体)が配布されており、この特定の社員3は、非接触ICカード4を社員証として常時所持しているものとする。非接触ICカード4のメモリには、カードが発行される際に、予め社員IDなどの社員3の識別情報が登録されている。
部屋A,Bに対する入室および退室の管理は、このICカード4を利用することによって行われる。そのために、部屋A,Bには、ICカード4に記憶されている識別情報を読み取る入室用読取装置であるICカードリーダ5A,5B(部屋の外側に向けて取付けられている)と、退室用読取装置であるICカードリーダ6A,6B(部屋の内側に向けて取付けられている)と、が備えられている。すなわち、これらのICカードリーダは、各部屋の出入口付近にそれぞれ設置され、各部屋に対する入室もしくは退室を行う際に、非接触ICカードに記録されている識別情報を読み取る読取装置ということになる。
社員3が、部屋A,Bのドア7A,7Bを出入りする際には、非接触ICカード4を各ICカードリーダ5A,5B,6A,6Bに近づけて認証を行い、ドア7A,7Bを解錠させる必要がある。ドア施解錠装置8A,8Bは、それぞれドア7A,7Bの施錠状態を制御するために設けられた装置であり、各部屋A,Bの読取装置が読み取った識別情報に基づいて、各部屋のドアの施錠状態を制御する。ドア7A,7Bは、このドア施解錠装置8A,8Bによって、通常は施錠された状態になっているので、第三者は不正に入退室することができない。
部屋Aには、社員3の仕事用デスクが配置されており(図示省略)、このデスク上には、社員3が利用するパソコン9が設置されている。社員3は、通常、部屋Aの自分のデスクに着席し、自分専用のパソコン9を使用して仕事を行うことになる。なお、図では、社員3用のパソコン9のみしか示されていないが、この部屋Aでは、複数の社員がそれぞれ与えられたパソコンを使用して仕事を行うことになるので、実際には、個々の社員用のパソコンがそれぞれ設置されている。各パソコンには、使用者によるロック解除処理が行われるまでは、本来の処理のための操作入力を受け付けないスクリーンロックを行う機能と、外部から受信した所在情報(後述)をスクリーンロック中にディスプレイ上に表示する機能と、が備わっている。
図示のとおり、入室用読取装置であるICカードリーダ5A,5Bと、退室用読取装置であるICカードリーダ6A,6Bと、ドア施解錠装置8A,8Bとは、それぞれ通信網2により情報処理装置1に接続されている。また、部屋Aに備えられたパソコン9や、図示されていない他の社員用のパソコンも、通信網2により情報処理装置1に接続されている。情報処理装置1は、特定の部屋の読取装置が読み取った識別情報に基づいて、この識別情報に対応するパソコン(報告対象となるパソコン)を特定し、当該特定の部屋を示す部屋情報を、当該パソコンに対して所在情報として送信する機能を有している。
社員3が部屋AまたはBに入室する場合には、まず、ICカードリーダ5Aまたは5Bにより非接触ICカード4に記憶された識別情報の読み取りを行わせる必要がある。読み取られた識別情報は、情報処理装置1へと伝達され、正しい識別情報であるか否かの認証が行われる。情報処理装置1において、正しい識別情報であるとの認証結果が得られると、ドア施解錠装置8Aまたは8Bに対して、ドア解錠の指示信号が送信され、ドア7Aまたは7Bに対する解錠が行われる。同様に、社員3が部屋AまたはBから退室する場合には、まず、ICカードリーダ6Aまたは6Bにより非接触ICカード4に記憶された識別情報の読み取りを行わせる必要がある。読み取られた識別情報は、情報処理装置1へと伝達され、正しい識別情報であるか否かの認証が行われる。情報処理装置1において、正しい識別情報であるとの認証結果が得られると、ドア施解錠装置8Aまたは8Bに対して、ドア解錠の指示信号が送信され、ドア7Aまたは7Bに対する解錠が行われる。
もちろん、社員3以外の社員も、同様に、それぞれ固有の識別情報が書き込まれた自分専用の非接触ICカードを用いて各部屋に対する入退室を行うことになる。このような入退室管理を行うと、情報処理装置1は、各部屋A,Bに誰が入室し、誰が退出したのかを把握することができ、更に、各社員のパソコンに対して、必要な情報を送信することができる。すなわち、情報処理装置1は、入室用読取装置であるICカードリーダ5A,5Bと、退室用読取装置であるICカードリーダ6A,6Bとから受信した情報に基づいて、認証処理を行いドア施解錠装置8A,8Bに対して施解錠の指示信号を送信するとともに、たとえば、部屋Aに設置されたパソコン9に対して、当該パソコン9の使用者である社員3の離席時の所在情報を送信する処理を行うことができる。
図7は、図6に示すスクリーンロック離席表示システムにおける情報処理に関与する構成要素のブロック図である。図示のとおり、情報処理装置1は、認証手段1A、解錠信号送信手段1B、記憶手段1C、部屋情報送信手段1D、制御手段1E、社員情報データベース1F、設備機器情報データベース1Gを有している。制御手段1Eは、この情報処理装置1内で行われる処理の統括制御を行い、記憶手段1Cは、この処理における一時的なデータ保管場所として利用される。
社員情報データベース1Fには、個々の社員に配布された非接触ICカード内に記憶されている識別情報(社員IDなど)と、当該社員の氏名などの個人情報や当該社員について与えられたドアの解錠権限を示す情報とが、相互に関係付けられて登録されている。したがって、認証手段1Aは、特定の部屋の読取装置が読み取った識別情報に基づいて、この社員情報データベース1Fを参照し、当該部屋のドアの解錠権限の有無を確認することができる。識別情報によって示される社員が、当該部屋の解錠権限を有している場合には、認証に成功したとの判断を行うことができる。解錠信号送信手段1Bは、認証手段1Aによる正しい認証結果が得られたときに、当該部屋のドア施解錠装置に対して解錠信号を送信する。ドア施解錠装置8A,8Bは、この解錠信号を受信したときに解錠を行うことになる。
一方、設備機器情報データベース1Gには、各部屋に備えられている設備機器であるパソコンと、その使用者とを対応づけられるように、予め各設備機器に固有の情報であるパソコン管理番号と、その使用者の社員IDなどの識別情報とが、相互に関係付けられて登録されている。上述したように、非接触ICカード内には、社員IDなど、社員を特定する識別情報が記録されているが、設備機器情報データベース1Gは、個々の社員IDと、特定のパソコン(当該社員IDで特定される社員が使用するパソコン)とを対応づける機能を果たすので、非接触ICカードから読み出された社員IDなどの識別情報に基づいて、当該社員の所在情報の送信先(報告対象)となるべきパソコンを特定することができる。
図7の左側には、部屋AおよびBに設けられた電子機器がブロック図として示されている。すなわち、部屋Aのドア入口側(部屋の外側)には、ICカードリーダ5Aが設置されており、ドア出口側(部屋の内側)には、ICカードリーダ6Aが設置されており、それぞれ非接触ICカード4と無線交信している状態がブロック図として示されている。また、部屋Aには、ドア7Aの施解錠を制御するドア施解錠装置8Aが設置されている。同様に、部屋Bのドア入口側(部屋の外側)には、ICカードリーダ5Bが設置されており、ドア出口側(部屋の内側)には、ICカードリーダ6Bが設置されており、それぞれ非接触ICカード4と無線交信している状態がブロック図として示されている。また、部屋Bには、ドア7Bの施解錠を制御するドア施解錠装置8Bが設置されている。
一方、図7の右側には、部屋Aに設置されたパソコン9がブロック図として示されている。前述したとおり、部屋Aには、この他にも個々の社員ごとのパソコンが設置されているが、ここでは図示および説明は省略する。
次に、このスクリーンロック離席表示システムの処理手順を、図8および図9に示す流れ図に基づいて説明する。ここでは、この処理手順を説明するために、その一例として、特定の社員3が出社し、パソコン9が置かれている自席がある部屋Aに入室し、しばらく仕事をした後、打ち合わせを行うために、部屋Aを退室して階下にある部屋Bに移動する場合についての処理の流れを以下に説明する。
まず、朝に出社した社員3は、部屋Aの入口側のICカードリーダ5Aに非接触ICカード4を近づけて、非接触ICカード4に記憶されている社員IDを読み取らせる(ステップS1)。ICカードリーダ5Aが読み取った社員IDは、情報処理装置1に送信される(ステップS2)。情報処理装置1は、受信した社員IDに対して、社員情報データベース1Fに登録されている情報に基づく認証処理を行う(ステップS3)。この認証処理において正しい認証が行われた場合には、情報処理装置1からドア施解錠装置8Aに対して、ドアの施錠を解錠させるための指示信号が送信される(ステップS4)。ドア施解錠装置8Aは、この指示信号を受信すると、ドア7Aの施錠を解錠する(ステップS5)。これにより、社員3は、ドア7Aを開けて部屋Aに入室できる。部屋Aに入室した社員3は、パソコン9を起動させ、パソコン9を利用した仕事を行う(ステップS6)。一方、ステップS3において、認証処理に失敗した場合には、情報処理装置1からドア施解錠装置8Aに対して、ドア7Aの施錠を解錠させるための指示信号を送信しないまま、処理が終了される。
次に、社員3が、パソコン9を利用した仕事の途中で、打ち合わせを行うために、部屋Aから部屋Bに移動する場合を考える。この場合、社員3は、部屋Aの出口側のICカードリーダ6Aに非接触ICカード4を近づけて、非接触ICカード4に記憶されている社員IDを読み取らせる(ステップS7)。ICカードリーダ6Aが読み取った社員IDは、情報処理装置1に送信される(ステップS8)。情報処理装置1は、受信した社員IDに対して、社員情報データベース1Fに登録されている情報に基づく認証処理を行う(ステップS9)。この認証処理において正しい認証が行われた場合には、情報処理装置1からドア施解錠装置8Aに対して、ドアの施錠を解錠させるための指示信号が送信される(ステップS10)。ドア施解錠装置8Aは、この指示信号を受信すると、ドア7Aの施錠を解錠する(ステップS11)。これにより、社員3は、ドア7Aを開けて部屋Aから退室できる。なお、作業が中断したパソコン9は、予め設定された時間が経過した後に、自動的にスクリーンロックが起動し、第三者が使用できない状態になる。
さて、部屋Aを退出した社員3は、階下へ向かい、打ち合わせを行う予定の部屋Bの前までやってくる。そして、部屋Bの入口側のICカードリーダ5Bに非接触ICカード4を近づけて、非接触ICカード4に記憶されている社員IDを読み取らせる(ステップS12)。ICカードリーダ5Bが読み取った社員IDは、情報処理装置1に送信される(ステップS13)。情報処理装置1は、受信した社員IDに対して、社員情報データベース1Fに登録されている情報に基づく認証処理を行う(ステップS14)。この認証処理において正しい認証が行われた場合には、情報処理装置1からドア施解錠装置8Bに対して、ドアの施錠を解錠させるための指示信号が送信される(ステップS15)。ドア施解錠装置8Bは、この指示信号を受信すると、ドア7Bの施錠を解錠する(ステップS16)。これにより、社員3は、ドア7Bを開けて部屋Bに入室できる。一方、ステップS14において、認証処理に失敗した場合には、情報処理装置1からドア施解錠装置8Bに対して、ドア7Bの施錠を解錠させるための指示信号を送信しないまま、処理が終了される。
ところで、ステップS14における認証処理に成功した場合、情報処理装置1は、「社員3が、部屋Bに入室した」という情報を得ることができる。そこで、当該入室情報を、社員3のパソコン9に対して報知する処理を行う。具体的には、情報処理装置1は、ICカードリーダ5Bから受信した社員IDに基づいて、設備機器情報データベース1Gに当該社員IDと関係付けられて登録されているパソコン管理番号を認識し、社員3が常時使用しているパソコン9(報告対象)を特定する。そして、このパソコン9に対して、社員3が部屋Bに入室中である旨のメッセージ(所在情報)を送信する(ステップS17)。
パソコン9には、このようなメッセージ(所在情報)を受信した場合には、これをスクリーンロック時にディスプレイ上に表示する機能を設けておく。そうすれば、スクリーンロック時のパソコン9のディスプレイ上に、「部屋Bに入室中である」旨のメッセージ(「現在、部屋Bに居ます」のようなメッセージでもよい)を自動的に表示させることができる(ステップS18)。したがって、部屋Aの電話機に、社員3に向けた電話がかかってきた場合であっても、部屋Aに居る社員3の同僚は、パソコン9のディスプレイ上に表示されたメッセージを見ることにより、社員3が現在部屋Bに居ることを確認することができるので、電話に対して適切な対応を行うことができる。たとえば、社員3に対して早急に連絡を取る必要がある場合には、部屋Bに電話をすればよい。
続いて、部屋Bでの打ち合わせが終了した社員3が、昼食のために外出する場合を考えよう。この場合、社員3は、部屋Bの出口側のICカードリーダ6Bに非接触ICカード4を近づけて、非接触ICカード4に記憶されている社員IDを読み取らせる(ステップS19)。ICカードリーダ6Bが読み取った社員IDは、情報処理装置1に送信される(ステップS20)。情報処理装置1は、受信した社員IDに対して、社員情報データベース1Fに登録されている情報に基づく認証処理を行う(ステップS21)。この認証処理において正しい認証が行われた場合には、情報処理装置1からドア施解錠装置8Bに対して、ドアの施錠を解錠させるための指示信号が送信される(ステップS22)。ドア施解錠装置8Bは、この指示信号を受信すると、ドア7Bの施錠を解錠する(ステップS23)。これにより、社員3は、ドア7Bを開けて部屋Bから退室できる。一方、ステップS21において、認証処理に失敗した場合には、情報処理装置1からドア施解錠装置8Bに対して、ドア7Bの施錠を解錠させるための指示信号を送信しないまま、処理が終了される。
さて、ステップS21における認証処理に成功した場合、情報処理装置1は、「社員3が、部屋Bから退室した」という情報を得ることができる。そこで、今度は、当該退室情報を、社員3のパソコン9に対して報知する処理を行う。すなわち、情報処理装置1は、ICカードリーダ6Bから受信した社員IDに基づいて、設備機器情報データベース1Gに当該社員IDと関係付けられて登録されているパソコン管理番号を認識し、社員3が常時使用しているパソコン9(報告対象)を特定する。そして、このパソコン9に対して、社員3が部屋Bから退室中である旨のメッセージを送信する(ステップS24)。
このようなメッセージを受信したパソコン9は、ディスプレイ上に、「部屋Bから退出中である」旨のメッセージ(「既に、部屋Bを出ました」のようなメッセージでもよい)を自動的に表示させることができる(ステップS25)。したがって、部屋Aにいる同僚は、既に社員3は、部屋Bを退室していることを認識することができる。
この後、社員3が、図示されていない別な部屋Cに入室した場合には、「部屋Cに入室しました」のようなメッセージが表示され、部屋Cから退室した場合には、「部屋Cを退出しました」のようなメッセージが表示されることになる。もちろん、パソコン9のディスプレイ上に、過去に受信したメッセージの履歴すべてを表示するようにすれば、「部屋Bに入室しました」/「部屋Bを退出しました」/「部屋Cに入室しました」/「部屋Cを退出しました」のように、社員3の行動履歴を順に示すことができる。また、情報処理装置1に現在時刻を認知できる機能を設けておけば、入室時や退室時の時刻を含むメッセージを送信させるようにして、パソコン9のディスプレイ上に、「10:32に部屋Bに入室しました」のように時刻を併せて表示させることも可能である。
このように、パソコン9がスクリーンロックされている状態であっても、そのディスプレイ上には、社員3の所在が逐次表示されることになるので、部屋Aに居る同僚は、社員3の居場所を認識することができる。なお、上述の説明では、1人の社員3に関する処理動作のみを説明したが、パソコンで仕事を行っている全ての社員についても同様のシステムを採用することで、離席した社員の所在情報をその社員のパソコンのディスプレイに表示させて、連絡先などを他の社員に知らせることができるようになる。
また、上述の説明では、非接触ICカード4内には、社員3を特定するための社員IDを識別情報として記録しているが、非接触ICカード内に記録する識別情報は、必ずしも社員(すなわち、パソコンの使用者)を特定する情報にする必要はなく、パソコン自身を特定する情報であってもかまわない。たとえば、社員3のパソコン9を特定するためのパソコン管理番号や、IPアドレスなどを識別情報として非接触ICカード4内に記録しておけば、情報処理装置1は、所在情報の送信先となるパソコン(報告対象)が、パソコン9であることを直接認識することができる。また、パソコン9自体は、必ずしも入退室が管理された部屋内に設置されている必要はない。
結局、ここで述べたスクリーンロック離席表示システムでは、パソコンの利用者が離席した場合でも、本人の居場所の情報がスクリーンロックされたパソコンのディスプレイに表示されるので、本人に緊急に連絡を取る必要が生じた際でも本人との連絡をとることができるようになる。また、各部屋に対する入室を行う際に情報記録媒体に記録されている識別情報を読み取る入室用読取装置と、各部屋に対する退室を行う際に情報記録媒体に記録されている識別情報を読み取る退室用読取装置と、がそれぞれ別個に設けられており、情報処理装置1が、入室用読取装置が識別情報を読み取った場合には部屋への入室を示す所在情報を送信し、退室用読取装置が識別情報を読み取った場合には部屋への退室を示す所在情報を送信することができるので、パソコンのディスプレイ上に、本人が特定の部屋に入室したのか、退出したのかが表示されるようになる。更に、このスクリーンロック離席表示システムは、非接触ICカードとICカードリーダを用いているので、既に使用している社員証カードなどの身分証明用カードがある場合でも、これらのカードのシステムと併用させて用いることができる。
最後に、ここで述べたスクリーンロック離席表示システムについての極めて実用的な工夫を述べておく。上述した例では、パソコン9に対する操作入力が所定の設定時間にわたって行われない場合に、自動的にスクリーンロックが起動し、第三者が使用できない状態になる、という説明を行った。しかしながら、実用上は、社員3がパソコン9に対する作業を中断し、部屋Aから退室した時点で、時間経過を待たずして、自動的にスクリーンロックが起動するような仕様にしておくのが好ましい。このような仕様では、社員3が、パソコン9が設置されている部屋Aから退出した場合に、この退出が検知された時点で、パソコン9のスクリーンロックが自動的に起動されることになる。このような仕様は、パソコン9が設置されている部屋Aの出口付近に設けられたICカードリーダ6A(部屋Aからの退室を行う際に情報記録媒体4から識別情報を読み取る退室用読取装置)を利用することにより実現できる。
すなわち、社員3は、部屋Aから退出する際には、部屋Aの出口側のICカードリーダ6Aに非接触ICカード4を近づけて、非接触ICカード4に記憶されている社員IDを読み取らせる作業を行う。すると、当該社員IDは、情報処理装置1に送信されることになる。ここで、情報処理装置1は、受信した社員IDに対して、社員情報データベース1Fに登録されている情報に基づく認証処理を行い、認証に成功すれば、ドア施解錠装置8Aに解錠信号を送信することになる。このとき、情報処理装置1は、非接触ICカード4が読み取った識別情報、すなわち、社員3の社員IDに基づいて、当該社員3のパソコンが、パソコン9であることを認識することができる。
そこで、このように、特定の社員が特定の部屋から退室したときに、当該特定の部屋内に当該特定の社員自身のパソコンが設置されていることが判明した場合には、情報処理装置1によって、当該パソコンのスクリーンロックを起動させる処理を行えばよい。具体的には、情報処理装置1から当該パソコン9に対して、スクリーンロックの起動を指示する指令信号を送信するようにする。パソコン9側に、このような指令信号が与えられた場合に、スクリーンロックを自動的に起動する仕組みを用意しておけば、情報処理装置1からの指令信号により、パソコン9は自動的にスクリーンロック状態になる。このような仕組みを採用すれば、本人が自己が使用するパソコンの設置された部屋から退室した場合には、当該パソコンのスクリーンロックが自動的に起動されるので、第三者による不正使用を防止できる付随的な効果が得られる。この場合、本人が部屋Aから退室し、パソコン9のスクリーンロックが起動した時点では、とりあえず、パソコン9の画面上に、「ただいま○○は部屋Aにおりません」という不在メッセージを表示させておき、本人の居場所が検知できた時点で、「ただいま○○は部屋Bにおります」のような行き先表示を行うようにすればよい。