JP2011206616A - 酸性ガス除去用素材及びその除去方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルカリ成分を含む栽培環境で育成したサトウキビから得られるサトウキビバガスを、無酸素条件、500〜600℃の温度条件で乾留処理し、得られたサトウキビバガス炭を酸性ガスの除去に使用する。
【選択図】図3
Description
しかしながら、このような工程を経る場合は、工程が複雑となり、高度な技術が必要とされる。また、賦活処理は必須の処理となる。
また、上述の多孔質物質は、有害ガスの除去性能が低下し易い。これは、活性炭に担持された金属類が劣化したり剥落し易いためと考えられる。
当該酸性ガス除去素材が、栽培環境からサトウキビに吸収されたアルカリ成分を含むサトウキビバガスを炭化して得られることにある。
この酸性ガス除去素材は、所謂、サトウキビバガスを炭化して得られる。そして、サトウキビバガスに栽培環境から吸収されたアルカリ成分を含むため、酸性ガスに対して良好な吸着能を発揮できる。しかも、このアルカリ成分は、サトウキビがその生長において生体内に取り込んだものであるため、サトウキビバガスの炭化の他、何ら操作を必要とするものではない。結果、簡単な製造過程を経て有用な酸化ガス除去素材を得ることができる。
本来、アルカリ成分は、植物の成長に必要な成分であるが、肥料として植物内に取り込ませることで、酸化ガスの除去目的に合致したアルカリ成分を含む酸化ガス除去素材を良好に得ることができる。
この場合、施肥の状態を制御することで、酸化ガス除去素材に含有されるアルカリ成分の調整も可能となる。
前記アルカリ成分がカリウムである場合に、螢光X線法で測定したカリウムの含有量が1.4質量%以上であり、
前記アルカリ成分がカルシウムである場合に、螢光X線法で測定したカルシウムの含有量が1.0質量%以上であれば、現在実用化されている有害ガス除去用の活性炭素程度の酸化ガスの吸着除去能を発揮できる。
これに対して、本願がその対象とする酸化ガス除去用素材は、その炭化工程において、例えば、無酸素条件、500〜600℃の温度条件での乾留処理を施すだけで、比表面積が200〜500m2/g程度のものとできる。
しかも、発明者らの検討では、この程度の比表面積しかない酸化ガス除去用素材でも、後述するように、従来、例えば、ピッチ由来の活性炭で、金属成分やアルカリ成分を含むものに対しても、それと同等の酸化ガス除去能を発揮できる。
したがって、この程度の比表面積のもので、従来どおりの酸性ガスの除去目的を達成できる。このように本願の目的を達成できる理由は、活性炭としての吸着能に加えて、本願の酸性ガス除去用素材では、炭化前の状態で組織内に栽培環境由来のアルカリ成分が取り込まれているため、このアルカリ成分が、酸性ガスに対する吸着能を高める役割を果たしているものと考えられる。
本願に係る酸性ガス除去素材は、所謂、サトウキビバガスを炭化して製造されるサトウキビバガス炭であり、その製造においては、サトウキビバガスを、無酸素条件、500〜600℃の温度条件で、約1〜2時間乾留処理して得る。
ただし、このサトウキビバガス炭の出発原料はサトウキビバガスであるが、原料であるサトウキビは、栽培環境である土壌中に多量にアルカリ成分を含む環境で育成されたサトウキビ、あるいは、燐酸カリウム、燐酸カルシウム等のアルカリ成分(カリウムK,カルシウムCa)含む肥料を与えられて育成されたサトウキビである。
具体的には、このサトウキビは、品種:宮古1号であり、島内の土壌がCa,Mg,K、Naを多く含む土壌である宮古島で育成されたサトウキビであり、育成に際しては、肥料として、牛糞、高度化成699(窒素全量6%、リン酸全量9%、カリ全量9%)などが与えられたものである。
上記の酸性ガス除去素材の製造方法に基づいて製造されたサトウキビバガス炭の物性について以下に説明する。
2−1
サトウキビバガス炭の成分分析
この成分分析に際しては、蛍光X線法(定性・半定量)と、ICP発光分光法により分析を行った。
蛍光X線法(定性・半定量)による分析結果
成分(**wt%)の順に記載する。ここで、wt%は質量%と同意であり、さらに、(<0.1)は、「検出されてはいるが定量下限未満であること」を示す。
C(79),O(13)、Na(<0.1),Mg(0.3)、Al(0.8)、Si(3.0),P(0.2)、S(0.1)、Cl(0.1)、K(1.4)、Ca(1.0),Ti(<0.1),Cr(<0.1),Mn(<0.1),Fe(0.6),Ni(<0.1),Cu(<0.1),Zn(<0.1),Rb(<0.1),Sr(<0.1),Zr(<0.1)
成分(**wt%)の順に記載する。ここでも、wt%は質量%と同意である。
Mg(0.18)、Al(0.48)、Si(1.9),K(0.8)、Ca(0.55),Fe(0.43)
図1にEPMAの結果を示した。図1において、左上にSLの結果(走査電子線像)を、右上にシリコンSiの結果(Siの面分析像)を、左下にカリウムKの結果(Kの面分析像)を、右下にカルシウムCaの結果(Caの面分析像)を、それぞれ示した。
これらの結果から、サトウキビバガス炭は、サトウキビ細胞組織に対応した構造を有するとともに、Si,K、Caが分布した状態となっている。
ここで、Siは比較的濃度差が大きな状態で全体に分布しており、Kは濃度の高い部分が偏在した状態で分布している。さらに、Caは比較的濃度が低い状態で全体に分布している。
以下の表1に、今回発明者が検討の対象とした素材の、BET比表面積、細孔容積に関するデータを整理して示した。表1には、上記の製造方法に従って製造されたサトウキビバガス炭(表中:バガス炭と記載)、サトウキビバガス(表中:バガスと記載)、及び、後に酸化性ガスの除去性能の欄で説明する市販品―1、市販品―2に関してもデータを示した。
比表面積(m2/g)、全細孔容積(cm3/g)
本願に係る酸性ガス除去素材の性能の検証実験について説明する。
実証に際しては、先に表1で市販品として示した活性炭との比較を、窒素酸化物である二酸化窒素に対する破過特性及び吸着量を調べた。
比較対照とした市販品
市販品―1
この市販品―1は、悪臭除去を用途として市販されている活性炭であり、ヤシガラを原料として、炭酸ナトリウムを担持させたものである。このものの比表面積は 516.8m2/gであった。
市販品―2
この市販品―2は、悪臭除去を用途として市販されている活性炭であり、ヤシガラを原料として、炭酸ナトリウムを担持させたものである。このものの比表面積は1040.2m2/gであった。
破過特性
破過特性の測定には、測定対象物1gを所定の反応容器内に収納し、この容器内を、25℃、ドライ空気中に、二酸化窒素NO2を1ppm含む試料ガスを1000ml/minで通過させ、下流側に流出するNO2の濃度を測定した。
この測定結果を図2に示した。
図2に示すように、本願に係るサトウキビバガス炭と市販品(市販活性炭―1、市販活性炭―2と記載)との間で殆ど違いはなく、本願に係るサトウキビバガス炭が、充分、実用レベルにあることを示している。
先の破過特性の測定に使用した、測定対象物の夫々を、試験後取り出し、これら材料に吸着された二酸化窒素NO2の量を測定した。
この結果を図3に示した。
図3に示すように、本願に係るサトウキビバガス炭の吸着量は、二つの市販品の中間の値を示した。したがって、本願に係るサトウキビバガス炭が、充分、実用レベルにあることを示している。
Claims (8)
- 栽培環境からサトウキビに吸収されたアルカリ成分を含むサトウキビバガスを炭化して得られる酸性ガス除去用素材。
- 前記アルカリ成分が栽培環境に散布される肥料由来のアルカリ成分である請求項1記載の酸性ガス除去用素材。
- 前記アルカリ成分がカリウムもしくはカルシウム或いはそれらの両方であり、
前記アルカリ成分がカリウムである場合に、螢光X線法で測定したカリウムの含有量が1.4質量%以上であり、
前記アルカリ成分がカルシウムである場合に、螢光X線法で測定したカルシウムの含有量が1.0質量%以上である請求項1または2記載の酸性ガス除去用素材。 - 比表面積が、200〜500m2/gである請求項1〜3の何れか一項記載の酸性ガス除去用素材。
- アルカリ成分を含む栽培環境で育成したサトウキビから得られるサトウキビバガスを、無酸素条件、500〜600℃の温度条件で乾留処理し、
得られたサトウキビバガス炭を酸性ガスの除去に使用する酸性ガスの除去方法。 - 前記アルカリ成分が前記栽培環境に散布される肥料由来のアルカリ成分である請求項5記載の酸性ガスの除去方法。
- 前記酸性ガスが窒素酸化物である請求項5又は6記載の酸性ガスの除去方法。
- 前記アルカリ成分がカリウムもしくはカルシウム或いはそれらの両方であり、
前記アルカリ成分がカリウムである場合に、螢光X線法で測定したカリウムの含有量が1.4質量%以上であり、
前記アルカリ成分がカルシウムである場合に、螢光X線法で測定したカルシウムの含有量が1.0質量%以上である請求項5〜7のいずれか一項記載の酸性ガスの除去方法。
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