JP2011203655A - 空間光変調器 - Google Patents
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Abstract
【課題】精密な階調表現を可能にする空間光変調器を提供する。
【解決手段】空間光変調器は、複数の画素20が所定パターンで二次元配置された構造を有する。画素20は光変調素子13a,13bを具備し、光変調素子13a,13bを駆動したときに光変調素子13a,13bが取り得る状態の組合せによって、反射光の強さの異なる明状態、暗状態及び中間状態の中から選択される所定の光状態を取り得る。空間光変調器では、これらの光状態によって光の階調が作り出され、複数の画素20のうちの所定画素20を所定の光状態としたときに、この所定画素20に隣接する少なくとも1つの画素20が具備する光変調素子13a,13bを駆動しないことによって、光の階調を制御する。
【選択図】図5
【解決手段】空間光変調器は、複数の画素20が所定パターンで二次元配置された構造を有する。画素20は光変調素子13a,13bを具備し、光変調素子13a,13bを駆動したときに光変調素子13a,13bが取り得る状態の組合せによって、反射光の強さの異なる明状態、暗状態及び中間状態の中から選択される所定の光状態を取り得る。空間光変調器では、これらの光状態によって光の階調が作り出され、複数の画素20のうちの所定画素20を所定の光状態としたときに、この所定画素20に隣接する少なくとも1つの画素20が具備する光変調素子13a,13bを駆動しないことによって、光の階調を制御する。
【選択図】図5
Description
本発明は、高精細で高速駆動が可能であり、しかも精密な階調表現が可能になる空間光変調器に関する。
従来、空間光変調器(SLM;Spatial Light Modulator)として、液晶を画素として用いたものが知られている。このような液晶を用いたSLMでは、例えば「1」で示す明状態と「0」で示す暗状態との間の光の階調を、印加電圧の大きさにより制御している。しかし、液晶を用いたSLMでは、画素サイズ(画素ピッチ)を数μm以下とする微細化が困難であり、また、印加電圧に対する応答時間が数十μs程度と比較的長いために、近時、SLMに対して要望されている画素サイズの微細化と応答時間の短縮(つまり、応答性の向上)への対応が困難であるという問題がある。
これに対して、画素サイズの微細化と応答時間の短縮を可能とする磁気光学SLM(MOSLM;Magneto-optic SLM)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このMOSLMでは、磁性薄膜で素子が構成されており、磁気光学効果(ファラデー効果)を利用するものである。MOSLMでは、磁化方向の向き(所定方向とその反対方向)に対応した2状態を、印加磁界の向きによって回転させたり、圧電素子によって回転させたりすることによって、相互に変化させる。
しかしながら、このMOSLMでは、1画素は磁化方向の向きに対応した2状態しか取ることができず、1画素の光の階調が例えば「1」で示す明状態と「0」で示す暗状態との2階調となるために、映像等の精密な階調表現は困難である。そこで、このような問題を解決するために、1画素内に形状の異なる複数の素子(磁性薄膜を備えた素子)を配置することで、明状態と暗状態との中間状態を作り出すことができるMOSLMが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2に開示されたMOSLMにおいては、所定の画素に含まれる素子の磁化方向の向きと、その画素に隣接する画素に含まれる素子の磁化方向の向きとが相互に干渉して、それぞれの素子で実現したい磁化方向の向きが得られなくなって、所望する光の階調表現が実現されない状況が生じるおそれがある。また、明状態と暗状態の2階調を作り出すMOSLMでも、所定の画素がこれに隣接する画素の状態の影響を受けて、本来の明状態又は暗状態とならないおそれもある。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、精密な階調表現を可能にする空間光変調器を提供することを目的とする。
本発明に係る空間光変調器は、複数の画素が所定パターンで二次元配置され、前記複数の画素がそれぞれ、複数の光変調素子を具備し、かつ、前記複数の光変調素子を駆動したときに各光変調素子が取り得る状態の組合せによって反射光又は透過光の強さの異なる複数の光状態の中から選択される所定の光状態を取り得、前記複数の光状態によって光の階調を作り出す空間光変調器であって、前記複数の画素のうち所定画素を前記所定の光状態としたときに、前記所定画素に隣接する少なくとも1つの画素が具備する複数の光変調素子を駆動しないことによって、前記所定画素の光の階調を制御する制御部を具備することを特徴とする。
このような空間光変調器の構成によれば、所定の画素においてその光状態を決める光変調素子の形態が、隣接する画素を構成する光変調素子の駆動の影響を受け難くなるために、例えば、この空間光変調器を用いて映像や画像を表示する場合に、精密な階調表現が可能になる。
本発明に係る空間光変調器は、前記所定パターンが前記複数の画素を互いに直交する行方向と列方向とに一定間隔で配置した二次元マトリックスパターンであり、前記制御部は、前記二次元マトリックスパターンの奇数行に位置する一群の画素と偶数行に位置する一群の画素の一方を前記所定の光状態にする際に他方が具備する複数の光変調素子を駆動せず、又は、前記二次元マトリックスパターンの奇数列に位置する一群の画素と偶数列に位置する一群の画素の一方を前記所定の光状態にする際に他方が具備する複数の光変調素子を駆動せず、又は、前記二次元マトリックスパターンで千鳥状に位置する二群の画素の一方を前記所定の光状態にする際に他方が具備する複数の光変調素子を駆動しない構成となっていることを特徴とする。
このような空間光変調器の構成によれば、簡単な制御によって精密な階調表現が可能になる。
本発明に係る空間光変調器は、前記複数の光状態が、光を検出可能な明状態と、光を検出不能な暗状態と、前記明状態と前記暗状態との中間状態であることを特徴とする。
このような空間光変調器の構成によれば、3つの光状態、すなわち3階調による光変調が可能になるため、例えば、この空間光変調器を用いて映像や画像を表示する場合に、精密な階調表現が可能になる。
本発明に係る空間光変調器は、前記光変調素子が磁気光学素子であり、かつ、前記複数の光変調素子が取り得る状態の組合せとは、複数の前記磁気光学素子の磁化方向の向きの組合せであり、1つの前記画素内において、複数の前記磁気光学素子は、隣接する前記磁気光学素子同士の磁気的な結合によって磁化方向の向きが変化するように配置され、前記制御部は、前記複数の画素ごとに前記磁化方向の向きの組合せを制御することを特徴とする。
このような空間光変調器の構成によれば、磁気光学素子を用いることにより、高精細でしかも高速駆動が可能になる。
本発明に係る空間光変調器では、前記磁気光学素子がスピン注入磁化反転素子であり、前記制御部が、前記スピン注入磁化反転素子の磁化方向の向きを、パルス電流又は直流電流の流れる方向によって制御することを特徴とする。
スピン注入磁化反転素子としては、具体的には、CPP(Current Perpendicular to the Plane)−GMR(Giant MagnetoResistance)素子及びTMR(Tunneling MagnetoResistance)素子が挙げられる。光変調素子としてCPP−GMR素子を用いた場合には、膜面に垂直に電流を流すことができるので、構造上、空間光変調器の微細化に適している。また、光変調素子としてTMR素子は、磁気抵抗変化が大きいために、信頼性に優れている。
本発明に係る空間光変調器によれば、所定の画素においてその光状態を決める光変調素子の形態が、隣接する画素を構成する光変調素子の駆動の影響を受け難くなるために、例えば、空間光変調器を用いた映像や画像の精密な階調表現が可能になる。また、本発明によれば、簡単な制御によって、このような精密な階調表現が可能になる。さらに、画素が具備する光変調素子として磁気光学素子を用いることによって、高速変調が可能となり、また、画素の微細化により高精細な映像や画像を表現することができるようになる。
以下、本発明の空間光変調器を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、ここでは本発明に係る空間光変調器を用いて構成された映像表示装置を例に挙げて、図面を参照して詳細に説明する。
《映像表示装置の概略構造》
図1に本発明の一実施形態に係る空間光変調器を用いて構成された映像表示装置の概略構成図を示し、図2に図1に示した空間光変調器の構造を模式的に表した平面図を示す。映像表示装置1は、レーザ光源2と、スクリーン3と、偏光フィルタ4a,4bと、空間光変調器10とを備えている。空間光変調器10は、その駆動制御を行うための制御部18を備えている。
図1に本発明の一実施形態に係る空間光変調器を用いて構成された映像表示装置の概略構成図を示し、図2に図1に示した空間光変調器の構造を模式的に表した平面図を示す。映像表示装置1は、レーザ光源2と、スクリーン3と、偏光フィルタ4a,4bと、空間光変調器10とを備えている。空間光変調器10は、その駆動制御を行うための制御部18を備えている。
空間光変調器10は反射型変調器であり、映像表示装置1では、レーザ光源2から照射された光が偏光フィルタ4aを介して空間光変調器10に入射し、その反射光が偏光フィルタ4bを介してスクリーン3に出射されることで、スクリーン3に映像が表現される。
空間光変調器10では、光変調素子として、後記するように、磁気光学素子(スピン注入磁化反転素子)を用いることが好ましく、これによりスクリーン3に映し出される映像の高精細化と高速表示が可能となる。空間光変調器10は、磁気光学素子のカー効果を利用する場合には、空間光変調器10のように反射型変調器となり、磁気光学素子のファラデー効果を利用する場合には透過型(図示せず)となる。したがって、本発明の別の実施形態に係る空間光変調器として、透過型のものを用いて映像表示装置を構成することができる。
《空間光変調器の概略構造》
図1に示されるように、空間光変調器10は、図示しない基板上に設けられた下部電極12と、下部電極12上に一定の間隔で設けられた2個を1組とする光変調素子13a,13b〔光変調素子13a,13bは図1が描かれた紙面に垂直な方向に位置しており、図1では重複している(図3参照)〕と、光変調素子13a,13b上に設けられた上部電極11とを備えている。
図1に示されるように、空間光変調器10は、図示しない基板上に設けられた下部電極12と、下部電極12上に一定の間隔で設けられた2個を1組とする光変調素子13a,13b〔光変調素子13a,13bは図1が描かれた紙面に垂直な方向に位置しており、図1では重複している(図3参照)〕と、光変調素子13a,13b上に設けられた上部電極11とを備えている。
[下部電極]
下部電極12は、光変調素子13a,13bを駆動するための一対の電極の一方であり、短冊状の形状を有し、その幅方向に一定間隔で平行に配置されている。下部電極12は、例えば、Ta,Cr,Au,Pt,Al,Cu等の一般的な電極用金属材料で構成することができる。
下部電極12は、光変調素子13a,13bを駆動するための一対の電極の一方であり、短冊状の形状を有し、その幅方向に一定間隔で平行に配置されている。下部電極12は、例えば、Ta,Cr,Au,Pt,Al,Cu等の一般的な電極用金属材料で構成することができる。
[上部電極]
上部電極11は、光変調素子13a,13bを駆動するための一対の電極の他方であり、図2に示されるように、短冊状の形状を有し、その幅方向に一定間隔で平行に、かつ、その長手方向が下部電極12の長手方向と直交するように、配設されている。上部電極11には、入射光が光変調素子13a,13bに効率よく到達できるように、酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide;ITO)等の透明電極材料が用いられる。なお、空間光変調器を透過型とする場合には、下部電極12としても、透明電極材料を用いる。
上部電極11は、光変調素子13a,13bを駆動するための一対の電極の他方であり、図2に示されるように、短冊状の形状を有し、その幅方向に一定間隔で平行に、かつ、その長手方向が下部電極12の長手方向と直交するように、配設されている。上部電極11には、入射光が光変調素子13a,13bに効率よく到達できるように、酸化インジウム錫(Indium Tin Oxide;ITO)等の透明電極材料が用いられる。なお、空間光変調器を透過型とする場合には、下部電極12としても、透明電極材料を用いる。
[画素]
空間光変調器10は、図2に示されるように、4本の下部電極12と4本の上部電極11とをそれぞれ直交させた構造を有しており、図2の平面視における下部電極12と上部電極11とが交差する16カ所の領域部がそれぞれ、画素20となる。すなわち、空間光変調器10は、16個の画素20が、互いに直交する行方向(4行)と列方向(4列)とに一定間隔で配置された二次元マトリックスパターンで配置された構造を有しており、1つの画素20が、レーザ光源2から入射する光を変調して出射する1つのユニットとなっている。そして、複数の画素20は、それぞれが複数の光変調素子を具備する。
空間光変調器10は、図2に示されるように、4本の下部電極12と4本の上部電極11とをそれぞれ直交させた構造を有しており、図2の平面視における下部電極12と上部電極11とが交差する16カ所の領域部がそれぞれ、画素20となる。すなわち、空間光変調器10は、16個の画素20が、互いに直交する行方向(4行)と列方向(4列)とに一定間隔で配置された二次元マトリックスパターンで配置された構造を有しており、1つの画素20が、レーザ光源2から入射する光を変調して出射する1つのユニットとなっている。そして、複数の画素20は、それぞれが複数の光変調素子を具備する。
[光変調素子]
図3(a)に画素の構成を表した平面図を示し、図3(b)に図3(a)の矢視B−B断面図を示し、図3(c)に図3(a)の矢視C−C断面図を示す。各画素20に1組の光変調素子13a,13bが配設されている。光変調素子13a,13bはそれぞれ、実質的に同じ形状及び構造を有しており、ここでは、図3(a)に示すように平面視で長方形のものを例示している。なお、光変調素子13a,13bの形状は、これに限定されるものではなく、画素20の形状に応じて、適宜、好適な形状を選択することができる。例えば、下部電極12の幅と上部電極11の幅とに差を設けた場合には、画素20の形状が平面視で長方形となるため、その画素20の長手方向に正方形の光変調素子13a,13bを2個配置した構造とすることができる。
図3(a)に画素の構成を表した平面図を示し、図3(b)に図3(a)の矢視B−B断面図を示し、図3(c)に図3(a)の矢視C−C断面図を示す。各画素20に1組の光変調素子13a,13bが配設されている。光変調素子13a,13bはそれぞれ、実質的に同じ形状及び構造を有しており、ここでは、図3(a)に示すように平面視で長方形のものを例示している。なお、光変調素子13a,13bの形状は、これに限定されるものではなく、画素20の形状に応じて、適宜、好適な形状を選択することができる。例えば、下部電極12の幅と上部電極11の幅とに差を設けた場合には、画素20の形状が平面視で長方形となるため、その画素20の長手方向に正方形の光変調素子13a,13bを2個配置した構造とすることができる。
1つの画素20において、光変調素子13a,13bは、上部電極11及び下部電極12に対して並列接続された状態となっている(適宜、図1,2参照)。光変調素子13a,13b同士の間隔を“L”とする。この間隔Lは、光変調素子13a,13bの光変調特性に影響を与えるパラメータであり、後に1個の画素20において光変調素子13a,13bが取り得る形態について説明する際に、詳細に説明する。
光変調素子13a,13bはそれぞれ、下部電極12上に設けられた固定層(磁化固定層)101と、固定層101上に設けられた中間層102と、中間層102上に設けられた反転層(磁化反転層)103とを備えており、反転層103上に上部電極11が設けられている。画素20の領域内において光変調素子13a,13bが形成されている空間以外の空間は、絶縁体(封止材)104で占有されている。
光変調素子13a,13bはスピン注入磁化反転素子であり、具体的には、CPP−GMR素子又はTMR素子である。したがって、固定層101は、強磁性材料からなり、磁化方向が所定方向(長さ方向と平行な方向の一方の向き)に固定されている。中間層102は非磁性材料からなる非磁性層又は絶縁材料からなる絶縁層であり、光変調素子13a,13bは、中間層102が非磁性層の場合にはCPP−GMR素子となり、中間層102が絶縁層の場合にはTMR素子となる。反転層103は、強磁性材料からなり、一般的に初期状態では、その磁化方向は固定層101での磁化方向とは反対に揃えられる。
[空間光変調器の製造方法]
例えば、シリコン(Si)、石英又は石英ガラス(SiO2)、マグネシア(MgO)等の基板上に、下部電極12としての金属層(例えば、Cu等)を、蒸着法やスパッタリング法等により成膜した後、この金属層をフォトリソグラフィ法とドライエッチング法等によって、短冊状(図2参照)にパターニングし、その後、下部電極12間をSiO2等の絶縁材料で埋める。なお、この下部電極12の形成には、所謂、リフトオフ法を用いてもよい。
例えば、シリコン(Si)、石英又は石英ガラス(SiO2)、マグネシア(MgO)等の基板上に、下部電極12としての金属層(例えば、Cu等)を、蒸着法やスパッタリング法等により成膜した後、この金属層をフォトリソグラフィ法とドライエッチング法等によって、短冊状(図2参照)にパターニングし、その後、下部電極12間をSiO2等の絶縁材料で埋める。なお、この下部電極12の形成には、所謂、リフトオフ法を用いてもよい。
続いて、下部電極12上に、固定層101、中間層102及び反転層103を逐次成膜する。ここでは、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法やスパッタリング法等を用いることができる。固定層101には、例えば、ホイスラー合金(Co2FeSi、Cu2MnAl等)等の磁性合金が用いられるが、これとIrMn等のスピン固着層とを組み合わせた積層構造としてもよい。
光変調素子13a、13bがCPP−GMR素子である場合には、中間層102には、Au,Al,Cu,Cu合金等の非磁性金属又は合金が好適に用いられる。このうちCuは電気抵抗が小さくバリア効果が高いので、特に好適に用いられる。光変調素子13a,13bがTMR素子である場合には、中間層102は、例えば、アルミナ(Al2O3)やマグネシア(MgO)等の絶縁材料から構成され、その厚さは、スピン偏極電子がトンネルできる程度の厚さである数nm以下とされる。
反転層103は、固定層101と同じ材料で構成することもできるが、スピン注入により容易に磁化方向が反転することができる材料であって、磁気光学カー効果の大きい材料(偏極率が比較的高い強磁性材料)を選択することが好ましい。なお、偏極率が低いほど磁化反転に必要な電流の値が大きくなるため、偏極率は50%以上であることが好ましい。
こうして反転層103が形成された後に、光変調素子13a,13bを形成すべき領域をレジストパターン等でマスクし、露出面を下部電極12の上面の高さまでドライエッチング等により掘り下げる。こうして形成された溝(空間)をSiO2等の絶縁材料にて封止することで、絶縁体104を形成する。続いて、レジストパターンを除去し、必要に応じてCMP等の平坦化処理を施す。その後、上部電極11を成膜することにより、16カ所に画素20が形成される。上部電極11間には、下部電極12間と同様に、SiO2等の絶縁材料が充填される。
なお、空間光変調器10は反射型構造であるため、反転層103は透光性の高い材料で構成されることが好ましく、固定層101及び中間層102は、入射光に対する反射率の大きい材料で構成されることが好ましい。また、空間光変調器を透過型とする場合には、固定層101、中間層102及び反転層103のみならず、これらを支持する基板についても、透光性の高い材料で構成することが好ましい。
[制御部]
制御部18は、4本の上部電極11から電流を流す上部電極を選択する上部電極選択部14と、4本の下部電極12から電流を流す下部電極を選択する下部電極選択部15と、上部電極選択部14及び下部電極選択部15に電流を供給する電流源16と、上部電極選択部14、下部電極選択部15及び電流源16を制御する電流制御手段17とを備えている。
制御部18は、4本の上部電極11から電流を流す上部電極を選択する上部電極選択部14と、4本の下部電極12から電流を流す下部電極を選択する下部電極選択部15と、上部電極選択部14及び下部電極選択部15に電流を供給する電流源16と、上部電極選択部14、下部電極選択部15及び電流源16を制御する電流制御手段17とを備えている。
上部電極選択部14は、電流制御手段17からの指令(信号)を受けて、16カ所の画素20の中から図2に示した縦方向に配置された画素を選択し、下部電極選択部15は、電流制御手段17からの指令(信号)を受けて、横方向に配置した画素を選択する。これら上部電極選択部14及び下部電極選択部15によって、1個の画素20が特定されることとなる。電流源16は、電流制御手段17からの指令(信号)を受けて、画素20にパルス電流(又は直流電流)を供給する。電流制御手段17は、所謂、コンピュータであり、各画素20に流れる電流の方向および大きさを決定し、制御する。
[光変調素子による光変調(空間光変調器の動作)]
図4に光変調素子による空間光変調の形態(空間光変調器の動作の形態)を模式的に表した説明図を示す。ここで、図4(a)は明状態を示し、図4(b)は暗状態を示している。「明状態」とは、光変調素子13a(13b)からの反射光が偏光フィルタ4bを通過してスクリーン3に照射される状態をいい、このとき「光変調素子13a(13b)が明状態にある」ということとする。また、「暗状態」とは、光変調素子13a(13b)からの反射光が偏光フィルタ4bによって遮光されて、スクリーン3に照射されない状態をいい、このとき「光変調素子13a(13b)が暗状態にある」ということとする。
図4に光変調素子による空間光変調の形態(空間光変調器の動作の形態)を模式的に表した説明図を示す。ここで、図4(a)は明状態を示し、図4(b)は暗状態を示している。「明状態」とは、光変調素子13a(13b)からの反射光が偏光フィルタ4bを通過してスクリーン3に照射される状態をいい、このとき「光変調素子13a(13b)が明状態にある」ということとする。また、「暗状態」とは、光変調素子13a(13b)からの反射光が偏光フィルタ4bによって遮光されて、スクリーン3に照射されない状態をいい、このとき「光変調素子13a(13b)が暗状態にある」ということとする。
レーザ光源2から照射された光は様々な偏光成分を含んでいるが、偏光フィルタ4aによって、ある方向の偏光成分だけを含むようにフィルタリングされる。こうしてフィルタリングされた光が透明な上部電極11を透過して光変調素子13a(13b)に入射し、光変調素子13a(13b)で反射される。光変調素子13a(13b)の固定層101における磁化方向は、図4(a),(b)に示すように、左向き矢印で示される向きに固定されているとする。電流制御手段17は光変調素子13a(13b)に流す電流の大きさや向きを変えることで、光変調素子13a(13b)にスピン注入を行い、反転層103の磁化方向の向きを制御する。
図4(a)に示す明状態では、光変調素子13a(13b)には電流は流れておらず、又は、電流源16によって、下部電極12から光変調素子13a(13b)を通して上部電極11へ向かう方向に電流が流されている。この状態では、反転層103の磁化方向は右向きの矢印で示される向きとなっており、反射光は偏光面を変えることなく、光変調素子13a(13b)で反射され、偏光フィルタ4b(偏光フィルタ4aと同特性)を通過して、スクリーン3に到達する。その結果、スクリーン3には明るい映像が表示されることとなる。
一方、図4(b)に示す暗状態では、電流源16によって、上部電極11から光変調素子13a(13b)を通して下部電極12へ向かう方向に電流が流されている。この電流によって、固定層101から中間層102を介して反転層103へ電子がスピンを保ったまま注入されるため、反転層103の磁化方向は、固定層101と同じ左向きの矢印の向きとなるように回転(反転)する。この反転状態では、反転層103の磁化方向(左向きの矢印)にしたがう磁気光学的カー効果により、反射光の偏光面が回転する。こうして、反射光は入射光とは異なる偏光成分を有することとなるために、偏光フィルタ4bを通過することができない。その結果、スクリーン3は暗くなることとなる。このように、下部電極12と上部電極11との間で流す電流の向きを切り替えることによって、光変調素子13a(13b)における、光を検出可能な明状態と光を検出不能な暗状態とを切り替えることができる。
[1画素内において2個の光変調素子が取り得る形態]
図5に1画素において2個の光変調素子が取り得る形態を模式的に表した平面図を示す。ここで、図5(a)は光変調素子の固定層の磁化方向の向きを示しており、図5(b)は光変調素子の反転層の磁化方向の向きとその変化の形態を示している。図5(a)に示すように、光変調素子13a,13bの各固定層101における磁化方向は、右から左に向かう矢印で示される向きに固定されているものとする。
図5に1画素において2個の光変調素子が取り得る形態を模式的に表した平面図を示す。ここで、図5(a)は光変調素子の固定層の磁化方向の向きを示しており、図5(b)は光変調素子の反転層の磁化方向の向きとその変化の形態を示している。図5(a)に示すように、光変調素子13a,13bの各固定層101における磁化方向は、右から左に向かう矢印で示される向きに固定されているものとする。
光変調素子13a,13bの各固定層101と各反転層103は、前記したように強磁性材料からなる磁性体(磁気光学素子(スピン注入磁化反転素子))であり、近接する複数の磁性体は、外部磁界のない状態では擬似的に一体の磁性体として磁気的に安定するために、互いに異なる磁化方向を示して磁気エネルギーを小さくしようとする。光変調素子13a,13b同士の間隔L(図3参照)は、この性質に大きな影響を与えるパラメータであり、光変調素子13a,13b同士の間隔Lを所定の範囲とすることにより、図4を参照して説明した明状態と暗状態のみならず、図5(b)に示す「中間状態」を作り出すことができる。
図5(b)に示す「中間状態」を説明するために、図6に光変調素子に流れる電流の大きさと抵抗との関係を模式的に表した説明図(グラフ)を示す。スピン注入磁化反転素子には、固定層と反転層の磁化方向が同じ向きであるときに電気抵抗(以下単に「抵抗」という)が小さく、逆向きであるときに抵抗が大きいという性質があり、この性質は光変調素子13a,13bにも当てはまる。したがって、光変調素子13a,13bの抵抗は、明状態→中間状態→暗状態の順で段階的に小さくなる。下部電極12から光変調素子13a,13bを通って上部電極11へ流れる電流の向きを正方向として「+I」で示し、逆に、上部電極11から光変調素子13a,13bを通って下部電極12へ流れる電流の向きを負方向として「−I」で示すこととする。
例えば、画素20が図5(b)に示す「明状態」にあるときには、光変調素子13a,13bが共に明状態にあり、光変調素子13a,13bの反転層103の磁化方向は、固定層101の磁化方向とは反対の左から右に向かう矢印の向きとなっている。このとき、図6に示されるように、光変調素子13a,13bには電流+I1が流れており、抵抗値(光変調素子13a,13b全体の抵抗値)はR3を示しているとする。なお、電流+I1の大きさは、光変調素子13a,13bの明状態を安定に維持することができる大きさである。
この状態から光変調素子13a,13bに流す電流の絶対値を徐々に小さくしていっても、反転層103の磁化方向が変化しなければ抵抗値R3は殆ど変化しない。その後、電流の向きを反転させて電流の絶対値を徐々に大きくしていくと、電流−I2になった時点で、光変調素子13a,13bのいずれか一方の反転層103の磁化方向が反転して暗状態となるが、他方の反転層103は反転せずに明状態を維持する。この状態が中間状態であり、抵抗はR2(R2<R3)となる。この中間状態では、1つの画素20から反射されて偏光フィルタ4bを通過する光の量は、原理的には、明状態の場合の1/2となる。図5(b)に示される2つの中間状態は実質的に同じものであり、偏光フィルタ4bを通過する光の量は同じとなる。
さらに電流の絶対値を徐々に大きくしていくと、電流−I3になった時点で、光変調素子13a,13bのうち中間状態において明状態を維持していた素子の反転層103の磁化方向が反転して、図5(b)に示す「暗状態」となり、抵抗はR1(R1<R2)となる。このように、電流−I2〜−I3の間で中間状態が維持され、この電流−I2〜−I3の範囲が広いほど、中間状態で維持する制御は容易となる。光変調素子13a,13bの両方が暗状態となって画素20が暗状態となった後には、さらに電流−I4まで電流の絶対値を大きくしても、光変調素子13a,13bの抵抗はR1で維持される。なお、電流−I4の大きさは、光変調素子13a,13bの暗状態を安定に維持することができる大きさとする。
暗状態にある光変調素子13a,13bに流す電流の絶対値をその向きを変えずに徐々に小さくしていっても、反転層103の磁化方向が変化しなければ抵抗値R1は殆ど変化しない。その後、電流の向きを反転させて電流の絶対値を徐々に大きくしていくと、電流+I5になった時点で、光変調素子13a,13bのいずれか一方の反転層103の磁化方向が反転して明状態となるが、他方の反転層103は反転せずに暗状態を維持し、中間状態となる。さらに電流の絶対値を大きくしていくと、電流+I6になった時点で、光変調素子13a,13bのうち中間状態において暗状態を維持していた素子の反転層103の磁化方向が反転して明状態となる。こうして、画素20全体が明状態となる。さらに、電流+I1まで大きくしても、光変調素子13a,13bの明状態は維持される。
[中間状態を安定して作り出すことができる光変調素子の具体例]
図7(a)〜(c)に3種類の画素の概略構成と抵抗−電流密度特性を表したグラフを示す。各画素が備える光変調素子は、平面視で300nm×100nmの長方形形状を有する。図7(a)は、1画素が1つの光変調素子を備えている場合(1画素−1素子構造)の特性を示している。図7(b)は1画素が2個の光変調素子を備えており(1画素−2素子構造)、2個の光変調素子が間隔L=0.3μmで並べられた場合の特性を示している。図7(c)は1画素が2個の光変調素子を備えており、2個の光変調素子が間隔L=1μmで並べられた場合の特性を示している。
図7(a)〜(c)に3種類の画素の概略構成と抵抗−電流密度特性を表したグラフを示す。各画素が備える光変調素子は、平面視で300nm×100nmの長方形形状を有する。図7(a)は、1画素が1つの光変調素子を備えている場合(1画素−1素子構造)の特性を示している。図7(b)は1画素が2個の光変調素子を備えており(1画素−2素子構造)、2個の光変調素子が間隔L=0.3μmで並べられた場合の特性を示している。図7(c)は1画素が2個の光変調素子を備えており、2個の光変調素子が間隔L=1μmで並べられた場合の特性を示している。
図7(a)〜(c)の各グラフでは、縦軸に抵抗値(dV/dI)を、横軸に光変調素子の電流密度を取っている。電流密度は、1個の光変調素子に流れる電流値を平面視面積で除したものである。図7(b),(c)の特性を示す画素では光変調素子は並列接続されているために、その駆動のためには、図7(a)の特性を示す画素の駆動に必要な電流の2倍の電流が必要である。電流に代えて電流密度を用いることにより、1個の光変調素子の特性に標準化できる。光変調素子の層構造を表1に示す。ここでは、光変調素子の抵抗変化を正確に測定する観点から、上部電極として導電性に優れるCuを用いている。なお、光変調素子の製造プロセスにおいて、反転層(磁化反転層)を保護するために保護層を設けている。
図7(a)〜(c)に示す3種類の画素の全ての光変調素子の磁化方向を、パルス幅:500μsのパルス電流により、明状態(図4、図5参照)となるようにした後、光変調素子の反転層から固定層に向けてパルス電流の大きさを次第に大きくしながら供給し、このときに上部電極と下部電極との間の抵抗値を測定して、電流値から換算した電流密度との関係を調べた結果が、図7(a)〜(c)に示されている。なお、固定層から反転層へ流れる電流の向きを「+」としているために、電流密度は負の値で示されている。また、スピン注入磁化反転素子において反転層の磁化方向が反転するときの電流密度(以下「反転電流密度」という)には一定のばらつき(分布幅)を有することが知られているため、この測定を120回行って得られた平均値から反転電流密度Jcが求められている。
図7(a)に示されるように、1画素−1素子構造の場合には、他の光変調素子からの磁化の影響を受けないために、反転層の磁化方向の反転を示す急激な抵抗変化は1ステップのみ観察され、このときの反転電流密度Jcは、平均で−3.9×107A/cm2である。一方、図7(b)に示されるように、1画素−2素子構造で間隔Lが0.3μmの場合には、抵抗は2ステップで最大(明状態)から最小(暗状態)へと変化している。抵抗が最大値から最大値と最小値のほぼ中間の値に変化する1ステップ目(反転電流密度Jc1=−3.6×107A/cm2)は、明状態から中間状態への変化を示している。抵抗が中間値から最小値に変化する2ステップ目(反転電流密度Jc2=−4.5×107A/cm2)は、中間状態から暗状態への変化を示している。このように、光変調素子(反転層)の磁化反転における1ステップ目と2ステップ目との電流密度の差が大きいほど、画素を安定した中間状態に維持することができる。
図7(c)に示されるように、1画素−2素子構造で間隔Lが1μmの場合にも、抵抗は2ステップで最大(明状態)から最小(暗状態)へと変化しているが、1ステップ目(反転電流密度Jc1=−3.7×107A/cm2)と2ステップ目(反転電流密度Jc1=−3.9×107A/cm2)との電流密度の差が極めて小さい。これは、測定を行った120回のうち、抵抗の最大値から最小値への変化が1ステップで終了したときと2ステップ抵抗が変化したときとがあり、その平均値を取ったことによる。このことは、光変調素子同士の間隔Lを広く取ったことで、光変調素子同士の磁化の相互作用が小さくなっていることを示しており、このような画素では、安定して中間状態を維持することができない。図7(b),(c)に示される特性から、1画素−2素子構造において中間状態が安定して得られる光変調素子間の間隔Lは、0.3μm以上1μm未満と判断することができる。
図7(b),(c)から明らかなように、1画素内に複数の光変調素子が隣接して配置された場合に、光変調素子同士の間隔Lを適切に設定することにより、光変調素子同士の磁化の相互作用を利用して中間状態を安定して作り出し、維持することができる。このようにして、複数(ここでは、明状態、暗状態、中間状態の3つ)の光状態を光の階調に割り当てることより、空間光変調器10の階調表現を精密に行うことができる。
すなわち、空間光変調器10は、複数の光変調素子(磁気光学素子)を駆動したときに各光変調素子が取り得る状態の組合せによって、反射光(又は透過光)の強さの異なる複数の光状態の中から選択される所定の光状態を取り得、この複数の光状態によって光の階調を作り出すものである。ここで、1つの画素20内において、複数の磁気光学素子(光変調素子)は、隣接する磁気光学素子同士の磁気的な結合によって磁化方向の向きが変化するように配置され、複数の磁気光学素子の磁化方向の向きの組合せが、複数の磁気光学素子(光変調素子)が取り得る状態の組合せとなる。そして、制御部18により、複数の画素20ごとに磁化方向の向きの組合せが制御される。
《空間光変調器の駆動方法》
空間光変調器10では、光変調素子13a,13bとして、図7(b)に示した特性を有するものが好適に用いられる。しかし、図7(b)は1画素のみの測定結果を示すものである。これに対して、空間光変調器10は、多数の画素20が隣接配置された構造を有している。そのため、空間光変調器10では、ある所定の画素20が具備する光変調素子13a,13bのいずれか一方又は両方が、その画素20に隣接する別の画素20が具備する光変調素子13a,13bのいずれか一方又は両方の磁化の影響を受けることによって、図7(b)に示した特性が再現されないことが生じるおそれがある。
空間光変調器10では、光変調素子13a,13bとして、図7(b)に示した特性を有するものが好適に用いられる。しかし、図7(b)は1画素のみの測定結果を示すものである。これに対して、空間光変調器10は、多数の画素20が隣接配置された構造を有している。そのため、空間光変調器10では、ある所定の画素20が具備する光変調素子13a,13bのいずれか一方又は両方が、その画素20に隣接する別の画素20が具備する光変調素子13a,13bのいずれか一方又は両方の磁化の影響を受けることによって、図7(b)に示した特性が再現されないことが生じるおそれがある。
そこで、このような問題を回避する観点から、空間光変調器10の制御部18は、16個の画素20のうち所定の画素を所定の光状態(明状態、暗状態及び中間状態のいずれか)としたときに、その画素に隣接する少なくとも1つの画素が具備する複数の光変調素子を駆動しないことによって、この画素20の光状態を制御し、これにより光の階調を制御する。なお、「駆動しない」とは、画素を所定の光状態(明状態、暗状態及び中間状態のいずれか)にしないことをいう。
図8に空間光変調器を構成する複数の画素の具体的な光状態の制御形態を模式的に示す。ここで、図8(a)〜(c)は画素の組分けの例を示す模式図であり、(d)は組分けされた画素の駆動波形(縦軸:電流、横軸:時間)の一例を示す模式図である。ここでは、画素20の配置のパターンは、複数の画素20を互いに直交する行方向と列方向とに一定間隔で配置した二次元マトリックスパターンである。
図8(a)に示す画素20の駆動形態は、16個の画素20を二次元マトリックスパターンの奇数行に位置する一群(「第1群」とする)と偶数行に位置する一群(「第2群」とする)とに組分けし、一方の群に属する画素20を所定の光状態にする際に、他方の群に属する画素20が具備する2個の光変調素子(図8(a)に図示せず)を駆動しない駆動方法である。
図8(b)に示す画素20の駆動形態は、16個の画素20を二次元マトリックスパターンの奇数列に位置する一群(第1群)と偶数列に位置する一群(第2群)とに組分けし、一方の群に属する画素20を所定の光状態にする際に、他方の群に属する画素20が具備する2個の光変調素子(図8(b)に図示せず)を駆動しない駆動方法である。
図8(c)に示す画素20の駆動形態は、16個の画素20を二次元マトリックスパターンにおいて千鳥状に位置する第1群と第2群とに組分けし、一方の群に属する画素20を所定の光状態にする際に、他方の群に属する画素20が具備する2個の光変調素子(図8(c)に図示せず)を駆動しない駆動方法である。
図8(d)に示されるように、第2群駆動波形において電流を流しておらず、したがって、第2群に属する画素20の光変調素子を駆動していない状態にあるときに、第1群に属する画素20の光変調素子を第1群駆動波形により駆動し、第1群に属する画素を所定の光状態とする。また、これとは逆の制御が行われる。空間光変調器10をこのように制御することにより、駆動する画素20について、これに隣接する画素からの影響を抑制して、所望の光状態を得ることができるようになるため、映像等の階調表現を高めることができる。
なお、図8(d)に示される第1群駆動波形と第2群駆動波形は、電流値の絶対値が異なる2種類のパルスを有しているが、絶対値の大きいパルスは画素20を明状態(+I側)又は暗状態(−I側)とするパルスであり、絶対値の小さいパルスは画素20を中間状態にするパルスである。
ところで、1画素−1素子構造を有する複数の画素を備えた空間光変調器において、1画素の大きさが小さくなり、かつ、画素同士の間隔が狭くなった場合には、隣接する2画素を同じ電流で同時に駆動したときに、実質的に、1画素−2素子構造としての挙動が現れて、図7(b)に示す中間状態が作り出される可能性がある。ここで、1画素−1素子構造を有する複数の画素を備えた空間光変調器は、元来、明状態と暗状態との組合せで光の階調を表現することを目的としたものであり、このような中間状態を作り出されてしまうことで、本来得られるべきコントラストが得られなくなるおそれがある。1画素−1素子構造を有する複数の画素を備えた空間光変調器においても、所定の画素を所定の光状態(明状態、暗状態)としたときに、その画素に隣接する少なくとも1つの画素が具備する光変調素子を駆動しないことによって、その画素の光状態を所望する光状態に制御することができる。
なお、所定の画素を所定の光状態としたときに、その画素に隣接する全ての画素が具備する複数の光変調素子を駆動しないことが好ましいが、その画素に隣接する1つの画素のみについて光変調素子を駆動しないことでも、効果は得られる。
ここで、複数の光変調素子で構成される画素において、材料の磁気異方性に基づいて複数の光変調素子の配置を設計することで、その画素に隣接する1つの画素のみについて光変調素子を駆動しないことも可能である。
配置の設計としては、例えば、光変調素子について磁化方向が水平方向(層方向に平行な方向)である材料を用いた場合、「縦:0.02〜0.2μm,横:0.05〜0.5μm、かつ、縦<横」の長方形の形状で、隣接する複数の光変調素子間の距離(画素内の光変調素子と、この画素に隣接する画素内の光変調素子との距離も含む)が、「(縦側面と縦側面の間の距離)<(横側面と横側面の間の距離)、かつ、0.3μm以上」の配置が好ましい。
また、光変調素子について磁化方向が垂直方向(層表面と直交する方向)である場合、「縦:0.02〜0.5μm,横:0.02〜0.5μm、かつ、縦≦横」の長方形(正方形を含む)の形状で、隣接する複数の光変調素子間の距離(画素内の光変調素子と、この画素に隣接する画素内の光変調素子との距離も含む)が、0.03μm以上」の配置が好ましい。
ここで、複数の光変調素子で構成される画素において、材料の磁気異方性に基づいて複数の光変調素子の配置を設計することで、その画素に隣接する1つの画素のみについて光変調素子を駆動しないことも可能である。
配置の設計としては、例えば、光変調素子について磁化方向が水平方向(層方向に平行な方向)である材料を用いた場合、「縦:0.02〜0.2μm,横:0.05〜0.5μm、かつ、縦<横」の長方形の形状で、隣接する複数の光変調素子間の距離(画素内の光変調素子と、この画素に隣接する画素内の光変調素子との距離も含む)が、「(縦側面と縦側面の間の距離)<(横側面と横側面の間の距離)、かつ、0.3μm以上」の配置が好ましい。
また、光変調素子について磁化方向が垂直方向(層表面と直交する方向)である場合、「縦:0.02〜0.5μm,横:0.02〜0.5μm、かつ、縦≦横」の長方形(正方形を含む)の形状で、隣接する複数の光変調素子間の距離(画素内の光変調素子と、この画素に隣接する画素内の光変調素子との距離も含む)が、0.03μm以上」の配置が好ましい。
次に本発明に係る空間光変調器の実施例について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ここでは、本発明に属さない構成についても適宜取り上げて、対比説明することとする。
《階調動作試験》
まず、基板Siウエハ上に、下部電極としてCu電極を形成し、Cu電極上に前記した光変調素子の製造方法にしたがって、光変調素子を形成した。光変調素子は、マグネトロンスパッタリングにより、固定層として、第1ピンド膜層(膜厚:5nmのCoFe膜)および第2ピンド膜層(膜厚10nmのCoFeSi膜)、中間層(膜厚6nmのCu膜)、反転層(膜厚6nmのCoFeSi膜)、保護層(Ru膜)を、この順序で積層形成することにより行った。本試験では、1画素4素子による階調効果を確認するために、本来は保護層上に形成すべき上部電極を設けずに(図9(a)では、破線で示している)、直接に光変調素子に電流を流して反転層の磁化の向きを抵抗より測定することとした。このときのパルス幅は5msで、測定磁化として100Oeを印加して行った。図9(a)に、作製した光変調素子の概略構成を、(b)に4素子配置(素子サイズ:100nm×240nm)の構成を示す。また、試験結果を図10に示す。
まず、基板Siウエハ上に、下部電極としてCu電極を形成し、Cu電極上に前記した光変調素子の製造方法にしたがって、光変調素子を形成した。光変調素子は、マグネトロンスパッタリングにより、固定層として、第1ピンド膜層(膜厚:5nmのCoFe膜)および第2ピンド膜層(膜厚10nmのCoFeSi膜)、中間層(膜厚6nmのCu膜)、反転層(膜厚6nmのCoFeSi膜)、保護層(Ru膜)を、この順序で積層形成することにより行った。本試験では、1画素4素子による階調効果を確認するために、本来は保護層上に形成すべき上部電極を設けずに(図9(a)では、破線で示している)、直接に光変調素子に電流を流して反転層の磁化の向きを抵抗より測定することとした。このときのパルス幅は5msで、測定磁化として100Oeを印加して行った。図9(a)に、作製した光変調素子の概略構成を、(b)に4素子配置(素子サイズ:100nm×240nm)の構成を示す。また、試験結果を図10に示す。
図10に示されるように、スピン注入駆動電流を流すことによって4段階、すなわち4素子が1素子づつ磁化反転していることわかる。この現象の詳細な解析をマイクロ磁気シミュレーション(LLG法;Landau-Liftshitz-Gilbert-Langevin)によって行った(図11参照(参考文献:JOURNAL OF APPLIED PHYSICS 103, 07A713(2008)))。本試験で用いているスピン注入駆動電流による磁化反転では、反転層(磁化反転層)の磁化が、定常磁化状態(図11(a))から、前面にわたってインコヒーレントな中間状態(図11(b))を取ることがシミュレーションから分かっており、この中間状態から最終状態に変化する過程で近接した光変調素子が微弱な磁気的な相互作用を受けることにより、段階的に変化(階調動作)する。このために、隣接する画素を構成する光変調素子が駆動すると、その画素の状態の影響を受けて、本来の明状態又は暗状態とならないおそれがある。そこで、隣接する画素を同時に駆動しないことで、隣接する画素を構成する光変調素子の駆動の影響を受けなくなり、精密な階調表現を可能にする空間光変調器及びその駆動法を提供できるようになる。一方、外部磁場駆動による磁化反転では、中間状態としてインコヒーレントな状態とはならない(図11(c)(Hは、磁化方向を示す))。このため、微弱な磁気的な相互作用に反応せず、階調動作を実現することはできない。
以上、本発明の実施形態及び実施例について説明したが、本発明は前記した説明に係る形態に限定されるものではない。例えば、空間光変調器を構成する画素として、2個の光変調素子(実施例では4個)を備えたものを取り上げたが、1画素は、さらに多くの光変調素子を備えていてもよく、各画素を、光変調素子に流す電流の向きと大きさにしたがって、明状態から暗状態(又は暗状態から明状態)へと段階的に変化させることで、複数の異なる中間状態を作り出すことが可能となる。このような画素を備えた空間光変調器を用いて構成された映像表示装置では、映像等の階調表現を、高めることができる。
また、画素20として同一形状の光変調素子13a,13bを備えた構造のものを取り上げたが、これに限定されず、例えば、本発明者らによる特開2008−64825号公報に開示された画素、すなわち、形状の異なる複数の光変調素子を備えた画素を用いることができる。
画素20の駆動形態として、画素20を第1群と第2群との2組に組分けしたが、この組分けを3組以上としてもよい。例えば、駆動する画素が定まったときに、これに隣接する画素(上下左右斜めの8個)の全ての光変調素子を駆動しないようにして、駆動する画素を逐次移動させる方法を用いることもできる。これにより、駆動する画素に対して、その隣接画素が具備する光変調素子の磁化方向の影響をさらに小さく抑えることができる。
前記した光変調素子13a,13bとしては、磁化方向が水平方向(層表面に平行な方向)である材料を用いたものを示したが、磁化方向が垂直方向(層表面と直交する方向)であるスピン注入磁化反転素子を用いてもよい。また、図4では、図4(a)に示す状態を明状態とし、図4(b)に示す状態を暗状態としたが、偏光フィルタ4a,4bの特性を変更することにより、光変調素子13aが図4(a)に示した状態にあるときに、反射光が偏光フィルタ4bを通過できないようにして暗状態とすることができ、光変調素子13aが図4(b)に示した状態にあるときに、反射光が偏光フィルタ4bを通過できるようにして明状態とすることができる。
1 映像表示装置
2 レーザ光源
3 スクリーン
4a,4b 偏光フィルタ
10 空間光変調器
11 上部電極
12 下部電極
13a,13b 光変調素子
14 上部電極選択部
15 下部電極選択部
16 電流源
17 電流制御手段
18 制御部
20 画素
101 固定層
102 中間層
103 反転層
104 絶縁体(封止材)
2 レーザ光源
3 スクリーン
4a,4b 偏光フィルタ
10 空間光変調器
11 上部電極
12 下部電極
13a,13b 光変調素子
14 上部電極選択部
15 下部電極選択部
16 電流源
17 電流制御手段
18 制御部
20 画素
101 固定層
102 中間層
103 反転層
104 絶縁体(封止材)
Claims (5)
- 複数の画素が所定パターンで二次元配置され、
前記複数の画素のそれぞれが複数の光変調素子を具備し、
前記複数の光変調素子を駆動したときに各光変調素子が取り得る状態の組合せによって、反射光又は透過光の強さの異なる複数の光状態の中から選択される所定の光状態を取り得、
前記複数の光状態によって光の階調を作り出す空間光変調器であって、
前記複数の画素のうち所定画素を前記所定の光状態としたときに、前記所定画素に隣接する少なくとも1つの画素が具備する複数の光変調素子を駆動しないことによって、前記所定画素の光の階調を制御する制御部を具備することを特徴とする空間光変調器。 - 前記所定パターンは、前記複数の画素を互いに直交する行方向と列方向とに一定間隔で配置した二次元マトリックスパターンであり、
前記制御部は、前記二次元マトリックスパターンの奇数行に位置する一群の画素と偶数行に位置する一群の画素の一方を前記所定の光状態にする際に他方が具備する複数の光変調素子を駆動せず、又は、前記二次元マトリックスパターンの奇数列に位置する一群の画素と偶数列に位置する一群の画素の一方を前記所定の光状態にする際に他方が具備する複数の光変調素子を駆動せず、又は、前記二次元マトリックスパターンで千鳥状に位置する二群の画素の一方を前記所定の光状態にする際に他方が具備する複数の光変調素子を駆動しないことを特徴とする請求項1に記載の空間光変調器。 - 前記複数の光状態とは、光を検出可能な明状態と、光を検出不能な暗状態と、前記明状態と前記暗状態との中間状態であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空間光変調器。
- 前記光変調素子は磁気光学素子であり、かつ、前記複数の光変調素子が取り得る状態の組合せとは、複数の前記磁気光学素子の磁化方向の向きの組合せであり、
1つの前記画素内において、複数の前記磁気光学素子は、隣接する前記磁気光学素子同士の磁気的な結合によって磁化方向の向きが変化するように配置され、
前記制御部は、前記複数の画素ごとに前記磁化方向の向きの組合せを制御することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空間光変調器。 - 前記磁気光学素子はスピン注入磁化反転素子であり、
前記制御部は、前記スピン注入磁化反転素子の磁化方向の向きを、パルス電流又は直流電流の流れる方向によって制御することを特徴とする請求項4に記載の空間光変調器。
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