JP4939489B2 - 磁気光学式空間光変調器 - Google Patents

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Description

本発明は、入射した光を透過あるいは反射させた際に、磁気光学効果により光の位相や振幅等を空間的に変調する空間光変調器に関する。
空間光変調器は、画素として光学素子(光変調素子)を用い、これを2次元アレイ状に配列して光の位相や振幅等を空間的に変調するものであって、ディスプレイ技術や記録技術等の分野で広く利用されている。空間光変調器として、従来より液晶が用いられているが、近年では、高速処理かつ画素の微細化の容易な磁気光学材料を用いた磁気光学式空間光変調器の開発が進められている(例えば、特許文献1〜4)。
磁気光学式空間光変調器においては、選択された画素(選択画素)における光変調素子の磁化方向とそれ以外の画素(非選択画素)における光変調素子の磁化方向の違いにより、選択画素を透過(または反射)した光と非選択画素を透過(または反射)した光で、その偏光の回転角(旋光角)に差が生じる、ファラデー効果(反射の場合はカー効果)を利用している。以下に、光変調素子としてスピン注入磁化反転素子を用いた場合の磁化方向と透過光の旋光を、図7を参照して説明する。図7は、スピン注入磁化反転素子の磁化反転と透過光の旋光を説明するための断面模式図である。
一般的に、スピン注入磁化反転素子150は、TMR(Tunnel Magneto Resistance:トンネル磁気抵抗)素子や、CPP−GMR(Current Perpendicular to the Plane Giant Magneto Resistance:垂直通電型巨大磁気抵抗)素子等であり、図7に示すように、磁化固定層151、中間層152、磁化反転層153を積層してなる。スピン注入磁化反転素子150の磁化固定層151および磁化反転層153が面内磁気異方性を有する場合、磁化固定層151の磁化方向は膜面方向における一方向に固定され、磁化反転層153の磁化方向は膜面方向において回転可能である。また、中間層152は、CPP−GMR素子においては非磁性金属、TMR素子においては絶縁材料からなる。そして、スピン注入磁化反転素子150の上下には一対の電極102,103が接続されて、垂直方向に電流を供給する。
スピン注入磁化反転素子150は、電流の向きを反転させて逆方向のスピンを持つ電子を注入することにより、磁化反転層153の磁化方向を反転(スピン注入磁化反転)させることができる。図7(a)に示すように、磁化反転層153側から磁化固定層151へ電流を供給すると、磁化反転層153の磁化方向は磁化固定層151の磁化方向と同じ方向になる(平行:Parallel)。反対に、図7(b)に示すように、磁化固定層151側から磁化反転層153へ電流を供給すると、磁化反転層153の磁化方向は磁化固定層151の磁化方向と逆方向になる(反平行:Anti−Parallel)。
これら磁化が平行、反平行の状態のスピン注入磁化反転素子150を透過した偏光の旋光角(θ,θAP)は、磁化固定層151のファラデー効果による旋光角(ファラデー旋光角)をθFpin、磁化反転層153のファラデー旋光角をθFfreeとした場合、図7(a)、(b)にそれぞれ示すように、θ=θFfree+θFpin、θAP=−θFfree+θFpinとなる。このように、スピン注入磁化反転素子150の磁化反転により旋光角が変化するが、磁化固定層151については磁化が一定であるので、磁化反転層153のファラデー旋光角θFfreeの分だけ出射偏光に差が生じる。そして、スピン注入磁化反転素子150を画素として2次元配列し、例えば入射偏光に対して(−θFfree+θFpin)旋光した偏光のみ透過する偏光フィルタをスピン注入磁化反転素子150の出射側に配すれば、磁化方向の平行、反平行を画素毎に選択することにより、所望の画素における出射偏光のみを取り出すことあるいは取り除くことができる空間光変調器となる。
特開2002−107684号公報(段落0033〜0035、図4) 特開2006−38944号公報(請求項1、図1) 特開2006−154727号公報(請求項1、図1,2) 特開2008−83686号公報(請求項1、図1A)
このようなスピン注入磁化反転素子を光変調素子とした空間光変調器は、特に高精細化に対応できるものであるが、さらに改良する余地がある。すなわち、所望の画素からの出射偏光のみを効率よく取り出すために、選択画素におけるスピン注入磁化反転素子150の旋光角が非選択画素におけるスピン注入磁化反転素子150の旋光角に対して十分に差があること(図7におけるθとθAPとの差が十分に大きいこと)が望まれている。したがって、磁化反転層153のファラデー旋光角θFfreeを大きくすることが求められる。ここで、一般にファラデー旋光角は、磁気光学材料の種類、偏光の波長、磁化方向に対する入射角等に依存し、また、磁気光学材料を透過する偏光の光路長に比例する。したがって、ファラデー旋光角θFfreeは磁化反転層153の厚さに比例する。しかし、磁化反転層153の厚さは一般的に磁化固定層151より薄く、十数nm以下に制限されており、磁化反転層153を厚くしてファラデー旋光角θFfreeを大きくするには限界がある。また、例えば特許文献3のように、画素の両側に配線を設けて電流を供給することで選択画素における磁化反転を確実なものとする技術が開示されているが、選択画素からの出射偏光の取り出し効率の向上、すなわち画素の選択性の向上には至らないという問題がある。
本発明は前記問題点に鑑み創案されたもので、画素のいっそうの選択性を向上させた磁気光学式空間光変調器を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明者らは、近年発見された、細線加工された強磁性体における電流供給による磁壁移動を用いて、一画素内で磁壁を移動させることにより光の入射領域における磁化方向を反転させる思想に至った。
すなわち、請求項1に係る磁気光学式空間光変調器は、2次元配列された複数の画素を有する画素アレイと、この画素アレイから1つ以上の画素を選択する画素選択手段と、この画素選択手段が選択した画素に所定の電流を供給する電流供給手段と、を備え、前記画素選択手段が選択した画素に入射した光の偏光方向を特定の方向に変化させて出射する磁気光学式空間光変調器において、前記画素は、細線状の強磁性体およびこの強磁性体の両端に接続された一対の電極を有し、前記強磁性体は、その長さ方向に沿って、当該画素に入射した光が透過する透過領域と、この透過領域を挟む2つの外部領域と、を有し、前記強磁性体は、前記一対の電極から前記所定の電流が供給されたときに、当該強磁性体をその長さ方向に区切る磁壁が、一方の前記外部領域から前記透過領域を経由して他方の前記外部領域へ前記長さ方向に沿って移動して、前記透過領域における磁化方向を変化させることを特徴とする。
かかる構成により、磁気光学式空間光変調器は、画素に備えた細線状の強磁性体において、電流を供給することにより磁壁が長さ方向に沿って移動して、光が透過する領域全体の磁化方向を変化させることができるため、光路長が長くなって、ファラデー効果により透過した光の旋光角の変化を大きくする。
また、請求項2に係る磁気光学式空間光変調器は、2次元配列された複数の画素を有する画素アレイと、この画素アレイから1つ以上の画素を選択する画素選択手段と、この画素選択手段が選択した画素に所定の電流を供給する電流供給手段と、を備え、前記画素選択手段が選択した画素に入射した光の偏光方向を特定の方向に変化させて出射する磁気光学式空間光変調器において、前記画素は、細線状の強磁性体およびこの強磁性体の両端に接続された一対の電極を有し、前記強磁性体は、その長さ方向に沿って、当該画素に入射した光が反射する面を含む反射領域と、この反射領域を挟む2つの外部領域と、を有し、前記強磁性体は、前記一対の電極から前記所定の電流が供給されたときに、当該強磁性体をその長さ方向に区切る磁壁が、一方の前記外部領域から前記反射領域を経由して他方の前記外部領域へ前記長さ方向に沿って移動して、前記反射領域における磁化方向を変化させることを特徴とする。
かかる構成により、磁気光学式空間光変調器は、画素に備えた細線状の強磁性体において、電流を供給することにより磁壁が長さ方向に沿って移動して、光が反射する面を含む領域の磁化方向を変化させることができるため、カー効果により強磁性体に反射した光の旋光角を変化させる。
請求項3に係る磁気光学式空間光変調器は、請求項1または請求項2に記載の磁気光学式空間光変調器において、前記強磁性体は、前記外部領域に、前記磁壁を生成し一時的に固定する括れ部を形成されていることを特徴とする。
また、請求項4に係る磁気光学式空間光変調器は、請求項1または請求項2に記載の磁気光学式空間光変調器において、前記強磁性体は、前記外部領域に、前記磁壁を生成し一時的に固定する屈曲部を形成されていることを特徴とする。
かかる構成により、強磁性体の括れ部または屈曲部まで磁壁が移動して、入射した光を旋光させる領域内に磁壁が停止しない。
請求項5に係る磁気光学式空間光変調器は、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の磁気光学式空間光変調器において、前記複数の画素は行方向と列方向とに2次元配列され、前記複数の画素の一対の電極は、その一方の電極が同じ行に配列された画素に共有され、他方の電極が同じ列に配列された画素に共有されて、格子状に形成されていることを特徴とする。
かかる構成により、画素アレイにおける電極が格子状の配線となる。
請求項1に係る磁気光学式空間光変調器によれば、選択画素−非選択画素間の出射偏光の旋光角の差が増大し、出射偏光の取り出しの効率が向上する。また、1つの強磁性体を光変調素子として用いた、簡素な構成の透過型の空間光変調器とすることができる。請求項2に係る磁気光学式空間光変調器によれば、1つの強磁性体を光変調素子として用いた、簡素な構成の反射型の空間光変調器とすることができる。
請求項3および請求項4に係る磁気光学式空間光変調器によれば、強磁性体の所望の位置に磁壁を停止させることができ、出射した光の偏光方向を安定させることができる。
請求項5に係る磁気光学式空間光変調器によれば、少ない配線により2次元配列された画素を選択的に駆動させることができる。
以下、本発明に係る磁気光学式空間光変調器(以下、適宜「空間光変調器」と称する)を実現するための最良の形態について、図を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る空間光変調器の構成を模式的に示す平面図である。なお、本明細書における平面(上面)は、空間光変調器の光の入射面である。図2は第1実施形態に係る空間光変調器の画素選択の動作を説明するための模式図で、図1のA−A断面図である。
空間光変調器1は、図1に示すように、基板7(図2参照)上に2次元アレイ状に配列された複数の画素4からなる画素アレイ40と、画素アレイ40から1以上の画素4を選択して駆動する駆動制御部10と、を備える。なお、本明細書における画素とは、空間光変調器による表示の最小単位での情報(明/暗)を提示する手段を指す。
図1に示すように、画素アレイ40は、平面視で行(横)方向に延設された複数のストライプ状の上部電極2と、同じくストライプ状で、平面視で上部電極2と直交するように列(縦)方向に延設された複数の下部電極3と、を備え、上部電極2と下部電極3との交点毎に1つの画素4を構成する。したがって、画素アレイ40において、行方向に配列された画素4,4,…が1つの上部電極2を共有し、列方向に配列された画素4,4,…が1つの下部電極3を共有する構造となっている。本実施形態の画素アレイ40は、一例として、5行×5列の25個の画素4を備える構成として示す。また、上部電極2と下部電極3は、適宜、両者をまとめて電極2,3と称する。そして、画素4は、上部電極2および下部電極3の隙間に設けられた細線状の強磁性体(以下、強磁性細線)5を備え、この強磁性細線5は、その両端を画素4毎に異なる組み合わせの上部電極2と下部電極3とに接続されている。また、画素アレイ40における隙間、すなわち上部電極2,2間、下部電極3,3間、および強磁性細線5,5間は絶縁部材6で埋められている。
上部電極2および下部電極3は、Cu,Al,Ta,Cr,W,Ag,Au,Pt等の金属やその合金のような一般的な電極用金属材料からなり、基板7上にスパッタリング法等により成膜、フォトリソグラフィ等によりストライプ状に成形される。その厚さおよび幅は、材料や供給する電圧・電流等によって設定されるが、好ましくは厚さ10nm〜5μm、幅20nm〜500μmである。また、上部電極2および下部電極3の各ピッチ(配線ピッチ)は40nm〜1mm程度であり、これがいわゆる画素サイズとなる。
強磁性細線5は、Ni,Ni−Fe,Fe,Ni−Fe−Mo,Co,Co−Pt,Co−Cr等の強磁性体である金属や合金、あるいは磁性ガーネット等の磁性材料からなり、これらの強磁性材料はスパッタリング法等の公知の方法により成膜される。そして強磁性細線5は、厚さ10nm〜2μm、幅20nm〜100μm、長さ100nm〜500μmの、長さに対して厚さおよび幅が小さい細線状に形成されることで、後記するように、磁区が長さ方向のみに分割されるようになる。なお、透過型の空間光変調器1における強磁性細線5は、磁性ガーネットのような透明な材料以外を適用する場合には、光を透過するように、厚さを200nm以下にすることが好ましい。強磁性細線5は、フォトリソグラフィおよびエッチングまたはリフトオフにより、前記形状に成形される。
さらに、図2に示すように、強磁性細線5は、光が入射する領域(透過領域)5aの外部の両側の領域(外部領域)5e,5eに、括れ部5c1,5c2をそれぞれ形成されることが好ましい。これらの括れ部5c1,5c2に、後記の磁壁DWが生成され、また固定(トラップ)されるため、光が入射する領域5aにおける磁化方向が一様になり易い。なお、括れ部5c1,5c2は、図2においては強磁性細線5の上面に凹状に示しているが、平面視で幅狭となるように側面を凹ませて形成してもよく、例えば、強磁性細線5を細線状に成形すると同時に括れた部分を形成してもよいし、細線状に成形した後にその表面を局所的にエッチングして薄くしてもよい。括れ部5c1,5c2は、その幅または厚さが5〜100nm程度で、他の部分に対して1〜99%に狭くまたは薄くすることが好ましい。また、括れ部5c1,5c2の位置は、強磁性細線5のそれぞれの端から強磁性細線5の全長の5〜40%、括れ部5c1,5c2間の長さは同全長の30〜90%とすることが好ましい。なお、2つの括れ部5c1,5c2の強磁性細線5のそれぞれの端からの距離は均等でなくてもよく、さらに、強磁性細線5の一方の外部領域5eのみに括れ部が1つだけ形成されてもよい。
絶縁部材6は、強磁性細線5,5間、上部電極2,2間および下部電極3,3間に配され、例えば、SiOやAl等の透明な絶縁材料からなる。基板7は、強磁性細線5を透過した光をその下方の検出器94に入射させるため、透明な材料からなり、例えば、Si,SiO、酸化マグネシウム(MgO)、GdGa12(ガドリニウム・ガリウム・ガーネット:GGG)、ガラスなどからなる。
次に、本発明に係る磁気光学式空間光変調器の画素(画素アレイ)の製造方法について、その一例を説明する。
まず、下部電極3を形成する。基板7の表面に、金属電極材料をスパッタリング法により成膜、フォトリソグラフィ等によりストライプ状に成形する。そして、絶縁部材6を成膜して下部電極3,3間に堆積させる。
次に、強磁性細線5を形成する。下部電極3を形成した基板7の表面に、強磁性材料をスパッタリング法により成膜、フォトリソグラフィおよびイオンミリング(イオンエッチング)により画素4毎に2箇所の括れ部5c1,5c2を有する細線状に成形する。または、下部電極3を形成した基板7の表面に、強磁性細線5のネガパターンのレジストマスクを形成した後、その上から強磁性材料を成膜して、レジストマスクと共にその上の強磁性材料を除去してもよい(リフトオフ)。そして、絶縁部材6を成膜して強磁性細線5,5間に堆積させる。
そして、上部電極2を形成する。強磁性細線5を形成した基板7の表面に、下部電極3と同様に、金属電極材料をスパッタリング法により成膜、フォトリソグラフィ等によりストライプ状に成形する。最後に、絶縁部材6を成膜して上部電極2,2間および表面に堆積させて画素アレイ40とする。
次に、駆動制御部10の構成とその動作について説明する。図1に示すように、駆動制御部10は、上部電極2を選択する上部電極選択部12と、下部電極3を選択する下部電極選択部13と、これらの電極選択部12,13を制御する画素選択部(画素選択手段)14と、電極2,3に電流を供給する電源(電流供給手段)11と、を備える。これらはそれぞれ公知のものでよい。
上部電極選択部12は、上部電極2の特定の1つ以上を選択し、電源11から所定の電流を供給させる。下部電極選択部13は、下部電極3の特定の1つ以上を選択し、電源11から所定の電流を供給させる。画素選択部14は、例えば図示しない外部からの信号にしたがって画素アレイ40の特定の1つ以上の画素4を選択し、その選択に基づいて電極選択部12,13を制御する。すなわち、選択した画素4に接続する上部電極2および下部電極3をそれぞれの電極選択部12,13に選択させる。電源11は、強磁性細線5を動作させるために適正な電圧・電流を供給する。このような構成により、特定の画素4が選択され、この画素4の強磁性細線5が所定の電流を供給されて後記の動作を行う。
次に、本発明の第1実施形態に係る空間光変調器および画素の動作を、図2および図3を参照して説明する。図3は、第1実施形態に係る空間光変調器の画素における磁化方向と透過光の旋光の挙動を説明するための模式図で、強磁性細線の長さ方向に沿った断面図である。
まず、磁気光学式空間光変調器1の動作を説明する。図2に示すように、空間光変調器1の画素4(画素アレイ40)の上方には、画素アレイ40に向けて光を照射する光源93と、光源93から照射された光を画素アレイ40に入射する前に偏光とする入射偏光フィルタ91とを配置し、下方には、画素アレイ40から出射した光から特定の向きの偏光のみを透過する出射偏光フィルタ92と、出射偏光フィルタ92を透過した光を検出する検出器94とを配置する。光源93から照射された光(レーザー光等)は様々な偏光成分を含んでいるので、これを入射偏光フィルタ91に透過させて、1つの偏光成分の入射偏光とする。この入射偏光は所定の入射角で画素アレイ40(画素4)に入射する。入射偏光は上部電極2,2間を通って強磁性細線5を透過し、下部電極3,3間を通り、さらに透明な基板7を透過して出射偏光フィルタ92に到達する。出射偏光フィルタ92は、入射偏光に対して所定の角度で旋光した偏光のみを透過させ、この透過した偏光は検出器94に入射される。検出器94は、スクリーン等の画像表示手段やカメラ等である。
ここで、本発明の第1実施形態に係る空間光変調器の画素(強磁性細線)における磁化方向と透過光の旋光について、図3を参照して説明する。
一般に、強磁性体は、その内部が複数の磁区に分割されることで、全体の磁気エネルギーが最低になる安定した状態となる。そして、幅方向および厚さ方向に短い細線状の強磁性体(強磁性細線)の場合は、長さ方向のみに複数の磁区に分割され、したがって磁区と磁区との境界領域である磁壁は、強磁性細線を長さ方向に区切るように存在する。また、強磁性細線は、その形成時に幅方向、厚さ方向に磁区が分割されている場合には、外部から所定の向きの磁界を印加されて磁化容易軸の向きを一つに揃えられることによって、磁区が長さ方向のみに分割された状態にすることもできる。これは、磁化容易軸の向きが一つに揃えられて、強磁性細線の各磁区の磁化方向が所望の一方向およびその逆方向の2方向のみとなるので、磁区の並びが一列になり易く、距離の比較的長い強磁性細線の長さ方向に磁区が列をなした状態、すなわち長さ方向のみに分割された状態になるからである。本実施形態に係る強磁性細線5は、その形状によって、または適当な強さの外部磁界を印加されることによって、磁区が長さ方向に分割されている。また、その各磁区の磁化方向は長さ方向に沿った方向を示している。
図3(a)に示すように、本実施形態に係る強磁性細線5は、その長さ方向に沿った磁化方向を示し、磁化方向の180°異なる2つの磁区D1,D2に分割される。そして、磁区D1,D2間には、磁壁DWが生成される。磁壁DWは、その領域の長さ(強磁性細線5の長さ方向長)が10〜3000nmであり、磁壁DW内では磁区D1の磁化方向(右方向)から磁区D2の磁化方向(左方向)へと磁化が徐々に変化すなわち回転している。また、強磁性細線5の長さ方向における中央部を、光が入射する領域5aとする。
図3(a)において、磁壁DWは領域5aの左側に存在し、したがって領域5aは磁区D2に含まれて左方向の磁化を示す。ここで、右方向の磁化を有する磁性体を透過した偏光が正方向に回転(旋光)すると定義し、強磁性細線5のファラデー効果による旋光角(ファラデー旋光角)をθとする。このとき、強磁性細線5の領域5aを透過した出射偏光は入射偏光に対して−θ旋光した偏光となる。
次に、図3(b)に示すように、強磁性細線5に、その両端に接続した電極2,3から、右方向に電子を注入する(左方向に電流を供給する)。すると、電子スピンのトルクに影響されて、磁壁DWが右へ移動する。すなわち、磁区D1が右側へ拡張し、反対に磁区D2が縮小する。そして、図3(c)に示すように、磁壁DWが領域5aの右側に到達すると、領域5aが磁区D1に含まれて右方向の磁化を示すようになる。したがって、領域5aにおける磁化方向が反転したことになる。このとき、領域5aを透過した出射偏光は入射偏光に対してθ旋光した偏光となる。なお、図3(c)の状態の強磁性細線5に左方向に電子を注入する(右方向に電流を供給する)と、磁壁DWが左へ移動して図3(a)の状態に戻る。
以上のようにして、強磁性細線5に、電子の流れの向きすなわち電流の向きを制御して供給することによって、領域5aにおける磁化方向を反転させてこの領域5aを透過した出射偏光の向きを切り換えることができる。また、磁化方向の反転による出射偏光の向きの差は、強磁性細線5のファラデー旋光角θの2倍であり、前記したようにファラデー旋光角θは強磁性細線5の膜厚に比例するので、スピン注入磁化反転素子の磁化反転層の旋光角(図7参照)より大きくすることができる。
さらに、磁壁DWは、外部磁界のない状態すなわち電流の供給が停止した状態では、強磁性細線5の断面積の小さい領域に生成、固定され易い。したがって、図2に示すように、強磁性細線5における偏光の入射しない外部領域5e,5eに括れ部5c1,5c2をそれぞれ形成することが好ましい。このように、領域5aの外部に括れ部5c1,5c2を設けることで、磁壁DWが領域5a内で停止せずに括れ部5c1,5c2の一方まで移動するので、領域5aにおける磁化方向が一様になって強磁性細線5からの出射偏光の向きが安定する。
強磁性細線5に供給される電流は、パルス幅10ns〜10μs、電流密度10〜1013A/mのパルス電流が好ましく、電源11により供給される。パルス電流の供給によれば磁壁の移動を制御し易いためと、連続電流を供給されると強磁性細線が発熱するためである。パルス電流の供給により、磁壁DWは、供給されたパルスの数だけステップ的に移動し、1ステップの移動距離はパルス幅等に依存する。したがって、領域5aにおける磁化方向を反転させる際には、磁壁DWが領域5aを横断、すなわち外部領域5e,5eの一方から他方までを移動させるだけのパルス電流を供給する。それ以上電流を供給し続けると、駆動電力の効率がよくない上、磁壁DWが外部領域5eを通り越して、強磁性細線5から磁壁が消失する場合がある。強磁性細線5に磁壁がない(単一磁区である)と、再び領域5aの磁化方向を反転させるために磁壁の生成から始めることになって反転動作が遅くなるので好ましくない。このように、磁壁の移動距離は電流の供給によって制御できるが、磁壁の到達位置の制御を容易にするために、括れ部5c1,5c2のような磁壁が固定され易い部分を強磁性細線5に設けることが好ましい。
なお、前記したように、外部磁界のない状態、例えば製造時の強磁性細線5が形成された時点では、強磁性細線5は、それぞれが磁気エネルギー的に安定した状態となるようにその内部が複数の磁区に分割されているので、磁壁の数および位置は制御されていない。そのため、初期化作業(リセット)として、すべての強磁性細線5(画素アレイ40)に数10G〜5kG程度の磁界を外部から印加して、外部領域5e,5eの所定の一方(括れ部5c1,5c2の所定の一方、括れ部が1つである場合は当該括れ部)に1つの磁壁DWだけが生成、固定されるようにする。例えば、本実施形態のような一直線状の強磁性細線5は、その長さ方向の磁界を印加すればよい。また、これは同時に、前記したような長さ方向のみに磁区が分割(二分割)された状態でもある。なお、この初期化後や画素4の選択動作による磁壁DWの生成、固定後は、この磁壁DWを挟んだ磁区D1,D2のそれぞれで磁化が保持されるので、新たに電流の供給や磁界の印加を行うまでは磁壁DWの移動や消失は起こらない。また、前記初期化作業によって1つの強磁性細線5に磁壁が1つとなるように、強磁性細線5は括れ部5c1,5c2も含めてその形状が設計される。
強磁性細線5への外部磁界の印加は、強磁性細線5の形成時または形成後に、ヘルムホルツコイル等により発生させた平行磁界中に強磁性細線5を導入することにより行われる。磁界の印加は、強磁性材料の成膜中から画素アレイ40の完成以降における任意の工程において可能であるが、特に、画素アレイ40の製造時における、磁界中アニールによる磁界の印加が効率的である。これは、強磁性細線5(画素アレイ40)を、真空または不活性ガス雰囲気中でキュリー点付近まで加熱して、ヘルムホルツコイル等により外部磁界を印加する方法である。また、強磁性材料の成膜時に磁界を印加する場合は、成膜装置(スパッタリング装置等)のチャンバー内にコイルや永久磁石等で磁界を発生させて、この磁界中に基板7を導入して成膜すればよい。このとき、完成時の強磁性細線5の長さ方向が磁界印加方向に沿うように、基板7をチャンバー内に載置する。あるいは、リフトオフ法により強磁性細線5に成形する場合は、予め強磁性細線5のネガパターンのレジストマスクを形成した基板7を、形成される強磁性細線5の長さ方向が磁界印加方向に沿うようにチャンバー内に載置し、成膜する。
図2の説明に戻る。図2において、左側の画素4を非選択状態または初期状態(非選択画素)、右側の画素4を選択状態(選択画素)とする。左側の非選択画素4では、強磁性細線5において、磁壁DWは左側の括れ部5c1に固定されて、入射偏光が透過する領域5aは左向きの磁化を示し、入射偏光は−θ旋光して出射する(図3(a)の状態)。この出射偏光は出射偏光フィルタ92を透過して検出器94に到達するので、左側の非選択画素4は検出器94に明るく表示される。一方、右側の選択画素4では、強磁性細線5において、磁壁DWは右側の括れ部5c2に固定されて、領域5aは右向きの磁化を示し、入射偏光はθ旋光して出射する(図3(c)の状態)。この出射偏光は出射偏光フィルタ92で遮られるので、右側の選択画素4は検出器94に暗く表示される。
左側の非選択画素4が選択される、すなわち選択画素とされると、上部電極2を「+」、下部電極3を「−」として、強磁性細線5に左向きに電流が供給される。すると、磁壁DWが括れ部5c1から右へ移動して右側の選択画素4の状態となる。反対に、右側の選択画素4が非選択画素とされると、上部電極2を「−」、下部電極3を「+」として、強磁性細線5に右向きに電流が供給されて、磁壁DWが括れ部5c2から左へ移動して左側の非選択画素4の状態となる。なお、電流は、それぞれ磁壁DWが反対側の括れ部5c2,5c1に到達した時点で供給を停止する。このように、画素4毎に明/暗を切り分けられ、さらに、電流を所定の向きに供給すれば明/暗が切り換わる。
光の入射角は、磁化方向に平行または反平行に近いほど磁気光学効果が大きく、ファラデー旋光角を大きくすることができる。したがって、本実施形態に係る空間光変調器1においては、入射角を強磁性細線5の長さ方向と平行に近付けることが好ましい。ただし、偏光の入射角が画素アレイ40に対しても平行(入射角0°)に近付いて、入射偏光が上部電極2に遮られて強磁性細線5に到達する光量が減ることになるため、入射角は磁化方向すなわち強磁性細線5の長さ方向に対して10°〜60°とすることが好ましい。
また、第1実施形態では、強磁性細線5を有する層と上部電極2または下部電極3を有する層とは互いに隣接し、平面視で重なる部分で強磁性細線5に電極2,3を接続しているが、各層の間にも絶縁部材6の層を設けて、強磁性細線5の端部の直上または直下にコンタクトホールを形成して上部電極2または下部電極3を接続する構成としてもよい。
本実施形態に係る強磁性細線5の各磁区の磁化方向は強磁性細線5の長さ方向であるが、画素アレイ40に垂直な磁化方向とすることもできる。強磁性材料としてCo−Cr,Co−Pt,Co−Cr−Pt等の合金を用いると、これらの材料(結晶粒)は成膜された膜面に対して垂直な磁化方向を示し易い。このような場合も強磁性細線5は、その形状によって、または適当な強さの外部磁界を印加されることによって、磁区が長さ方向に分割される。そして、図2および図3において、それぞれの磁区は磁壁DWを挟んで上方向の磁化と下方向の磁化を示し、さらに図3(a)、(b)、(c)のように、電流を供給することで強磁性細線5の長さ方向に沿って磁壁DWを移動させることができる。この場合、偏光の入射角は画素アレイ40に対して垂直(入射角90°)として、光源93および入射偏光フィルタ91は画素アレイ40の直上に、出射偏光フィルタ92および検出器94は画素アレイ40の直下に配置することが好ましい。
以上のように、第1実施形態によれば、選択画素−非選択画素間で旋光角の差が従来の空間光変調器よりも大きいため、画素の明/暗の切り分けおよび切り換えのための選択性に優れた透過型空間光変調器となる。
[第2実施形態]
次に、図4を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図4は第1実施形態に係る空間光変調器の画素選択の動作を説明する模式図で、図1のA−A断面図である。第1実施形態(図2参照)と同一の要素については同じ符号を付し、その説明は省略する。第1実施形態の空間光変調器1は透過型であるのに対し、本実施形態の空間光変調器1Aは反射型の空間光変調器である。
反射型空間光変調器1Aにおいて、強磁性細線5は反射率の高い材料からなるが、その形状は第1実施形態と同様である。また、出射偏光は入射偏光と同じく画素4(画素アレイ40)の上方へ出射されるので、図4に示すように、出射偏光フィルタ92および検出部94は画素アレイ40の上方に、入射偏光の光路を遮らない位置に配する。同様に、光源93および入射偏光フィルタ91も、出射偏光の光路を遮らない位置に配する。また、本実施形態の基板7は、出射偏光の光路に配置されていないので透明な材料でなくてよく、例えば表面を熱酸化したSi基板等が適用できる。なお、図4では、偏光フィルタ91,92を画素アレイ40と平行にして設置しているが、互いの光路を遮らない位置であり、集光率等に支障がなければ、任意の傾きで設置してよく、例えば偏光の入射角および出射角に対して垂直に設置してもよい。これは、第1実施形態の空間光変調器1においても同様である。
次に、本実施形態の空間光変調器1Aの動作を説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同様に左側の画素4を非選択画素、右側の画素4を選択画素とし、電流の供給の向きも同じとする。入射偏光が画素4に入射するまでは第1実施形態と同様であるので省略する。そして、入射偏光は強磁性細線5の表面で反射し、上方へ出射し、第1実施形態と同様に出射偏光フィルタ92に到達する。ここで、右方向の磁化を有する磁性体の表面に反射した偏光が正方向に旋光すると定義し、強磁性細線5のカー効果による旋光角(カー旋光角)をθとする。すると、図4の左側の画素4の出射偏光は入射偏光に対して−θ旋光した偏光であり、右側の画素4の出射偏光は入射偏光に対してθ旋光した偏光である。そして、出射偏光フィルタ92は、入射偏光に対して−θ旋光した偏光を透過する。
本実施形態に係る反射型の空間光変調器1Aにおいても、光の入射角は、磁化方向に平行または反平行に近いほど磁気光学効果が大きく、カー旋光角を大きくすることができる。したがって、第1実施形態に係る空間光変調器1と同様に、入射角は強磁性細線5の長さ方向に対して10°〜60°とすることが好ましい。
本実施形態に係る強磁性細線5の磁化方向は、画素アレイ40に垂直な方向であってもよい。この場合は、第1実施形態で説明した通り、偏光の入射角は90°とすることが旋光角を大きくする上で望ましいが、このとき、出射偏光の光路が入射偏光の光路と一致する。そこで、入射角90°から5°〜30°程度傾けて、出射偏光フィルタ92および検出部94、光源93および入射偏光フィルタ91が、それぞれ入射偏光および出射偏光の光路を遮らない配置となるようにする。すなわち、偏光の入射角は、画素アレイ40に対して60°〜85°とすることが好ましい。または、入射角90°として、入射偏光フィルタ91と画素アレイ40との間にハーフミラーを配置して、出射偏光のみを側方へ反射させてもよい。この場合、出射偏光フィルタ92および検出器94は画素アレイ40の側方に配置する。
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、画素の明/暗の切り分けおよび切り換えのための選択性に優れた反射型空間光変調器となる。
[第3実施形態]
次に、図5および図6を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図5は第3実施形態に係る空間光変調器の画素アレイの平面模式図で、第1実施形態と同様に5行×5列の25個の画素を配列したものである。図6は第3実施形態に係る空間光変調器の画素の動作を説明するための拡大平面図である。第1実施形態(図1、図2参照)と同一の要素については同じ符号を付し、その説明は省略する。
図5および図6に示すように、第3実施形態における強磁性細線5Aは、2箇所の平面視90°の屈曲部5f1,5f2を有する略コの字型であり、第1実施形態と同様に、両端が上部電極2および下部電極3にそれぞれ接続されている。また、本実施形態の強磁性細線5Aにおける光が入射する領域5aは、屈曲部5f1,5f2間の、図6で左右方向の直線部分である。強磁性細線5Aの材料、厚さ、幅、および長さ(直線状の領域の長さの合計)は、第1実施形態の強磁性細線5と同様であるため、その説明は省略する。また、本実施形態の強磁性細線5Aを備えた画素4の製造方法も、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
本実施形態に係る空間光変調器の画素における強磁性細線の磁化方向とその変化について、図6を参照して説明する。本実施形態に係る強磁性細線5Aは、第1実施形態と同様に、その形状によって、または適当な強さの外部磁界を印加されることによって、磁区が強磁性細線5Aの長さ方向に分割されている。ここで、長さ方向とは、当該磁区が存在する領域における強磁性細線の長さ方向を指す。また、第1実施形態と同様に、強磁性細線5Aに所定の向きの外部磁界を印加することにより、磁区のそれぞれの磁化方向を強磁性細線5Aの長さ方向に沿った方向とすることができる。そして、一直線状の強磁性細線5と同様、磁気エネルギー的に安定した状態となるように、強磁性細線5Aは、長さ方向に沿って180°異なる複数の磁区に分割される。すなわち、強磁性細線5Aにおいて、平面視で磁化が右回り(時計回り)方向である磁区と、磁化が左回り方向である磁区とが存在し、この右回りの磁化方向の磁区と左回りの磁化方向の磁区との境界領域が磁壁となる。
ここで、細線状の強磁性体において、磁壁は、外部磁界のない状態では、括れ部のような断面積の小さい部分と同様に、屈曲部に生成、固定され易い。したがって、本実施形態に係る強磁性細線5Aにおいては、屈曲部5f1,5f2の一方または両方に磁壁が生成、固定されることになるが、第1実施形態と同様に、すべての画素4における強磁性細線5Aに外部磁界を印加して、屈曲部5f1,5f2の所定の一方に1つの磁壁DWだけが生成、固定されるようにすることができる(初期化作業)。そして、強磁性細線5Aは、この磁壁DWを挟んで、図6における右回り方向の磁化の磁区D1と左回り方向の磁化の磁区D2とに分割される。なお、例えば、図6(a)に示す強磁性細線5Aにおいては、屈曲部5f2を挟んだ2つの直線状の領域で、磁化方向は90°回転しているが左回りに揃っており(磁区D2)、屈曲部5f2には磁壁は生成されない、または生成されても比較的領域の狭い磁壁となる。本実施形態においては、このように、磁化方向が右回り、左回りで揃っていれば、屈曲部5f1または屈曲部5f2を挟んで磁化方向が90°回転している領域も1つの磁区と定義する。
強磁性細線5Aへの外部磁界の印加は、第1実施形態と同様の方法で行うことができるが、本実施形態においては、画素アレイ40の製造時に行うことが好ましく、特に強磁性材料の成膜時に行うことが好ましく、その場合にはリフトオフ法で成形することがさらに好ましい。そして、本実施形態のような2箇所の屈曲部を備える強磁性細線5Aにおいて、例えば図6(a)に示すように屈曲部5f1に磁壁DWを生成するためには、平面方向における、強磁性細線5Aの中央の直線状の領域(領域5a)の長さ方向に垂直な方向(図6(a)における上下方向、一点鎖線で示す)に対して、屈曲部5f1の側へ5°〜15°傾けた向きの磁界を印加すればよい。この外部磁界の印加により、図6(a)に示すように、屈曲部5f1に1つの磁壁DWを生成、固定して、同時に磁区D1,D2の磁化方向をそれぞれの直線状の領域の長さ方向に沿った方向に揃えることができる。
図6(a)において、磁壁DWは領域5aの左側の屈曲部5f1に生成され、領域5aは磁区D2に含まれて左方向の磁化を示す。この状態の強磁性細線5Aに、図6(b)に示すように左回り(領域5a上で左向き)に電流を供給すると、第1実施形態(図3(b)参照)と同様に、磁壁DWは電流の向きと反対方向に移動するので、領域5a内を右へ移動する。そして、図6(c)に示すように、磁壁DWは領域5aの右側の屈曲部5f2に到達し、領域5aは磁区D1に含まれて右方向の磁化を示す。反対に、図6(c)の状態の強磁性細線5Aに右回り(領域5a上で右向き)に電流を供給すると、磁壁DWが領域5a内を左へ移動して図6(a)の状態に戻る。このように、強磁性細線5Aを2箇所で屈曲した形状とすることで、屈曲部5f1,5f2間の領域5aにおける磁化方向を安定して制御できる。そして、領域5aを入射偏光の透過する領域として、第1実施形態に係る一直線状の強磁性細線5と同様に透過型空間光変調器の光変調素子とすることができる。
磁壁DWが固定され易くするための屈曲部5f1,5f2の好ましい屈曲の角度は、15°〜135°である。また、強磁性細線5Aにおける屈曲部5f1,5f2の位置は、第1実施形態の括れ部5c1,5c2の位置と同等とする。さらに、第1実施形態の括れ部と同様に、強磁性細線5Aの一方の外部領域5eのみに屈曲部が1つだけ形成されてもよい。
本実施形態に係る空間光変調器においても、第1実施形態に係る空間光変調器1と同様に、光の入射角を強磁性細線5Aの磁化方向に近付けるほど旋光角を大きくすることができる。したがって、本実施形態においては、入射角は強磁性細線5Aの光が入射する領域5aの長さ方向に対して10°〜60°とすることが好ましい。
強磁性細線5Aを反射率の高い材料で形成すれば、第2実施形態に係る反射型空間光変調器にも適用できる(図4参照)。また、第1実施形態で説明したように、画素アレイ40に垂直な磁化方向を示す強磁性材料で強磁性細線5Aを形成しても、同様に磁壁DWを移動させることができる。
本実施形態の強磁性細線5Aは細線を屈曲させるので、画素サイズに対して細線の長さを長くすることができ、画素の微細化が容易である。さらに、光が入射する領域5aを隣り合う上部電極2,2間および下部電極3,3間の中央付近に配置することが容易となり、入射偏光および出射偏光の電極2,3に遮られる量が少なくなって集光率が向上する。
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べてきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
第1実施形態に係る空間光変調器の構成を模式的に示す平面図である。 第1実施形態に係る透過型空間光変調器の画素選択の動作を説明する模式図で、図1のA−A断面図である。 第1実施形態に係る画素における磁化方向の変化と透過光の旋光を説明するための強磁性細線の断面模式図である。 第2実施形態に係る反射型空間光変調器の画素選択の動作を説明する模式図で、図1のA−A断面図である。 第3実施形態に係る空間光変調器の画素アレイの平面模式図である。 第3実施形態に係る空間光変調器の画素選択の動作を説明するための拡大平面図である。 従来の空間光変調器の画素における磁化方向の変化と透過光の旋光を説明するためのスピン注入磁化反転素子の断面模式図である。
符号の説明
1,1A 空間光変調器(磁気光学式空間光変調器)
10 駆動制御部
11 電源(電流供給手段)
14 画素選択部(画素選択手段)
2 上部電極(電極)
3 下部電極(電極)
40 画素アレイ
4 画素
5,5A 強磁性細線(強磁性体)
5a 光が入射する領域(透過領域、反射領域)
5e 外部領域
5c1,5c2 括れ部
5f1,5f2 屈曲部
D1,D2 磁区
DW 磁壁

Claims (5)

  1. 2次元配列された複数の画素を有する画素アレイと、この画素アレイから1つ以上の画素を選択する画素選択手段と、この画素選択手段が選択した画素に所定の電流を供給する電流供給手段と、を備え、前記画素選択手段が選択した画素に入射した光の偏光方向を特定の方向に変化させて出射する磁気光学式空間光変調器において、
    前記画素は、細線状の強磁性体およびこの強磁性体の両端に接続された一対の電極を有し、
    前記強磁性体は、その長さ方向に沿って、当該画素に入射した光が透過する透過領域と、この透過領域を挟む2つの外部領域と、を有し、
    前記強磁性体は、前記一対の電極から前記所定の電流が供給されたときに、当該強磁性体をその長さ方向に区切る磁壁が、一方の前記外部領域から前記透過領域を経由して他方の前記外部領域へ前記長さ方向に沿って移動して、前記透過領域における磁化方向を変化させることを特徴とする磁気光学式空間光変調器。
  2. 2次元配列された複数の画素を有する画素アレイと、この画素アレイから1つ以上の画素を選択する画素選択手段と、この画素選択手段が選択した画素に所定の電流を供給する電流供給手段と、を備え、前記画素選択手段が選択した画素に入射した光の偏光方向を特定の方向に変化させて出射する磁気光学式空間光変調器において、
    前記画素は、細線状の強磁性体およびこの強磁性体の両端に接続された一対の電極を有し、
    前記強磁性体は、その長さ方向に沿って、当該画素に入射した光が反射する面を含む反射領域と、この反射領域を挟む2つの外部領域と、を有し、
    前記強磁性体は、前記一対の電極から前記所定の電流が供給されたときに、当該強磁性体をその長さ方向に区切る磁壁が、一方の前記外部領域から前記反射領域を経由して他方の前記外部領域へ前記長さ方向に沿って移動して、前記反射領域における磁化方向を変化させることを特徴とする磁気光学式空間光変調器。
  3. 前記強磁性体は、前記外部領域に、前記磁壁を生成し一時的に固定する括れ部を形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気光学式空間光変調器。
  4. 前記強磁性体は、前記外部領域に、前記磁壁を生成し一時的に固定する屈曲部を形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気光学式空間光変調器。
  5. 前記複数の画素は行方向と列方向とに2次元配列され、
    前記複数の画素の一対の電極は、その一方の電極が同じ行に配列された画素に共有され、他方の電極が同じ列に配列された画素に共有されて、格子状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の磁気光学式空間光変調器。
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