JP2011201440A - 車両用シートリクライニング装置 - Google Patents

車両用シートリクライニング装置 Download PDF

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Abstract

【課題】軽量化及び製造コストの低廉化を実現できる車両用シートリクライニング装置を提供する。
【解決手段】車両用シートリクライニング装置1において、ラッチ機構60は、中心軸線S1に沿ってレール10に列設された複数個のラッチ穴19A〜19Eと、各ラッチ穴19A〜19Eと対向してスライダ30に貫設されたスライダ穴32と、スライダ30に設けられた支持部61と、支持部61に中心軸線S1と略平行な揺動軸62回りで揺動可能に支持され、先端にスライダ穴32を介して各ラッチ穴19A〜19Eに係合可能なラッチ爪69Aを有するレバー69とを有する。支持部61とレバー69との間には、中心軸線S1と平行な方向に第1の遊びA1が確保され、スライダ穴32とラッチ爪69Aとの間には、中心軸線S1と平行な方向に第1の遊びA11−A12より小さい第2の遊びP3−A21が確保されている。
【選択図】図9

Description

本発明は車両用シートリクライニング装置に関する。
特許文献1に従来の車両用シートリクライニング装置が開示されている。この車両用シートリクライニング装置は、車体側に設けられ、車両用シートの傾動するバックレストに固定されるロック装置と協働して、バックレストの傾動姿勢を段階的に固定するものであり、レールと、スライダと、ラッチ機構とを備える。
レールは、中心軸線に沿って延び、バックレストの傾動時に描かれるロック装置の軌跡に合わせて車体側に固定されるものである。スライダは、レールに摺動可能に設けられ、ロック装置に係合するストライカが設けられたものである。ラッチ機構は、レールとスライダとの間に設けられ、スライダの摺動を規制又は許容するものである。
より詳しくは、ラッチ機構は、中心軸線に沿ってレールに列設された複数個のラッチ穴と、各ラッチ穴と対向してスライダに貫設されたスライダ穴と、スライダに設けられた支持部と、支持部に中心軸線と略平行な揺動軸回りで揺動可能に支持され、先端にスライダ穴を介して各ラッチ穴に係合可能なラッチ爪を有するレバーとを有する。
上記構成である車両用シートリクライニング装置では、ラッチ機構を動作させて、ラッチ爪と各ラッチ穴とを係合させなくすることにより、スライダをレールに沿って摺動させてバックレストの傾動姿勢を変化させることができる。そして、ラッチ爪と任意のラッチ穴とを係合させることにより、バックレストを所望の傾動姿勢で固定することができる。
特開2003−312329号公報
ところで、上記従来の車両用シートリクライニング装置では、支持部とレバーとの間にある中心軸線と平行な方向の遊びをできるだけ小さくすることにより、傾動姿勢で固定されたバックレストのがたつきを抑制するのが一般的である。すなわち、固定されたバックレストに荷重が作用すると、その荷重は、ロック装置〜ストライカ〜スライダ〜支持部〜レバー〜ラッチ爪を介してラッチ穴に伝達され、レールがその荷重を支持する。この際、ラッチ爪には、係合するラッチ穴から中心軸線と平行な方向の反力が作用する。そうすると、その反力によりラッチ爪を有するレバーが上記遊びの範囲内で中心軸線と平行な方向にずれて支持部に当て止まり、支持部が反力を支持する。このため、上記遊びが小さいほど、バックレストのがたつきも小さくなる。
しかしながら、このような構成を採用する場合、高い耐久性を確保するために、上記反力を支持する支持部を強度の高い構造にする必要があり、重量増加及び製造コストの高騰を招き易いという問題がある。
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、軽量化及び製造コストの低廉化を実現できる車両用シートリクライニング装置を提供することを解決すべき課題としている。
本発明の車両用シートリクライニング装置は、車体側に設けられ、車両用シートの傾動するバックレストに固定されるロック装置と協働して、前記バックレストの傾動姿勢を段階的に固定する車両用シートリクライニング装置において、
中心軸線に沿って延び、前記バックレストの傾動時に描かれる前記ロック装置の軌跡に合わせて前記車体側に固定されるレールと、
前記レールに摺動可能に設けられ、前記ロック装置に係合するストライカが設けられたスライダと、
前記レールと前記スライダとの間に設けられ、前記スライダの摺動を規制又は許容するラッチ機構とを備え、
前記ラッチ機構は、前記中心軸線に沿って前記レールに列設された複数個のラッチ穴と、各前記ラッチ穴と対向して前記スライダに貫設されたスライダ穴と、前記スライダに設けられた支持部と、前記支持部に前記中心軸線と略平行な揺動軸回りで揺動可能に支持され、先端に前記スライダ穴を介して各前記ラッチ穴に係合可能なラッチ爪を有するレバーとを有し、
前記支持部と前記レバーとの間には、前記中心軸線と平行な方向に第1の遊びが確保され、
前記スライダ穴と前記ラッチ爪との間には、前記中心軸線と平行な方向に前記第1の遊びより小さい第2の遊びが確保されていることを特徴とする(請求項1)。
本発明の車両用シートリクライニング装置において、支持部とレバーとの間には、中心軸線と平行な方向に第1の遊びが確保され、スライダ穴とラッチ爪との間には、中心軸線と平行な方向に第1の遊びより小さい第2の遊びが確保されている。このため、傾動姿勢で固定されたバックレストに荷重が作用すると、その荷重は、ロック装置〜ストライカ〜スライダに伝達された後、スライダ穴〜ラッチ爪を介してラッチ穴に伝達され、レールがその荷重を支持する。すなわち、上記荷重は、上記従来技術のようにスライダから支持部〜レバーを介してラッチ爪に伝達されるのではなく、スライダからスライダ穴を介してラッチ爪に伝達される。この際、ラッチ爪には、係合するラッチ穴から中心軸線と平行な方向の反力が作用する。そうすると、その反力によりラッチ爪を有するレバーが中心軸線と平行な方向にずれるが、第1の遊びより第2の遊びが小さいので、レバーは、支持部に当て止まるよりも先にラッチ爪によってスライダ穴に当て止まる。このため、反力をスライダ穴が支持し、支持部は反力を支持しない。このため、反力の支持のために支持部を強度の高い構造、すなわち、重量増加及び製造コストの高騰を招き易い構造にする必要がなくなる。
したがって、本発明の車両用シートリクライニング装置は、重量軽減及び製造コストの低廉化を実現できる。
また、上記従来技術では、ラッチ爪から離れた支持部が反力を支持するため、反力が作用する際におけるレバー全体の変位が大きくなり易い。このため、急ブレーキや荷積みによりバックレストに衝撃荷重が作用する場合、レバーに大きな慣性力が作用し易くなり、その結果、非操作時にも関わらず慣性力によりレバーが揺動してラッチ爪がラッチ穴から外れるというような不具合が生じるおそれがある。特に、上記従来技術では、ラッチ爪におけるラッチ穴と直接当接する箇所がテーパ形状とされることが多く、この場合には、上記衝撃荷重により、ラッチ爪がラッチ穴から抜ける方向の分力が作用して、ラッチ爪がラッチ穴から外れる不具合が生じ易くなる。
この点、この車両用シートリクライニング装置では、ラッチ爪近傍のスライダ穴が反力を支持するため、上記従来技術と比較して、反力が作用する際におけるレバー全体の変位を抑制できる。このため、急ブレーキや荷積みによりバックレストに衝撃荷重が作用する場合でも、レバーにかかる慣性力を減らすことができる。その結果、非操作時にも関わらず慣性力によりレバーが揺動してラッチ爪がラッチ穴から外れるというような不具合を防止できる。
レールは例えば、中心軸線に沿って直線状又は円弧状に延び得る。
本発明の車両用シートリクライニング装置において、ラッチ機構は、ラッチ爪に対して中心軸線と平行な方向にはみ出した状態でラッチ爪に固定され、ラッチ爪がレールに対して進行する際、スライダ穴及びラッチ穴に当接して弾性変形可能なダンパ部材を有することが好ましい(請求項2)。
この場合、ラッチ爪がスライダ穴とラッチ穴とに接触するより先に、ラッチ爪からはみ出したダンパ部材がスライダ穴とラッチ穴とに当接して弾性変形するので、ラッチ爪と、スライダ穴及びラッチ穴との衝突を抑制でき、異音を発生し難くできる。
ダンパ部材の構成材料としては、弾性変形可能な材料であればどのようなものでも採用可能であるが、例えば、ゴム、軟質樹脂、エラストマーその他の軟質材を採用することが好ましい。また、ラッチ爪にダンパ部材を固定する方法としては、例えば、接着、かしめ、ねじ止め、嵌合その他の一般的な固定方法を採用できる。ゴム製のダンパ部材をラッチ爪に加硫接着する場合、広い接着面積を確保できるので、ダンパ部材がラッチ爪から剥がれ難くなり、高い耐久性を実現できる。また、ダンパ部材をラッチ爪にかしめ、ねじ止め又は嵌合により固定する場合、製造工程の簡略化を実現できる。
本発明の車両用シートリクライニング装置において、レールは中心軸線に沿って直線状に延び、レールとスライダとの間には、ラッチ穴と係合しているラッチ爪の軸芯である回動軸芯に直交し、かつ中心軸線に直交する方向である幅方向の間隙が確保され得る。この場合において、スライダには、回動軸芯から径外方向に突出して間隙を狭めて、スライダがレールに対して回動軸芯周りで回動することを許容する回動部が設けられていることが好ましい(請求項3)。
円弧状に延びるレール及びそのレールに沿って摺動するスライダを採用する場合と比較して、直線状に延びるレール及びそのレールに沿って摺動するスライダを採用すれば、製造コストを低廉化できる。
但し、直線状に延びるレール及びそのレールに沿って摺動するスライダを採用する場合、バックレストを傾動させると、ロック装置は円弧状の軌跡を描く一方、スライダは直線状の軌跡を描くので、双方の軌跡のずれが生じ得る。
この点、上記構成によれば、レールとスライダとの間に、ラッチ穴と係合しているラッチ爪の軸芯である回動軸芯に直交し、かつ中心軸線に直交する方向である幅方向の間隙が確保されている。そして、スライダに回動部が設けられている。この回動部は、回動軸芯から径外方向に突出して幅方向の間隙を狭めて、スライダがレールに対して回動軸芯周りで回動することを許容する。このため、スライダに固定されたストライカも回動軸芯周りで回動できるので、ロック装置及びストライカの軌跡のずれを吸収できる。また、バックレストに取り付けられたロック装置と、車体に取り付けられたストライカの位置とがずれた場合でも、その位置ずれを吸収できるので、組み付け後の調整が不要となる。さらに、回動部は、レールとスライダとの幅方向の間隙を狭めているので、スライダがレールに対して幅方向に位置ずれすることが規制され、スライダがレールに沿って摺動する際のガタツキや異音を抑制できる。さらに、ストライカはスライダに固定されているので、ストライカがスライダに揺動軸周りで揺動可能に支持された従来技術と比較して、ストライカをスライダに強固に結合させ易い。このため、スライダがレールに沿って摺動する際、ストライカ及びスライダの周辺にガタツキや異音が生じ難い。
さらに、上記回動により、ラッチ爪及びレバーを捻る力が作用し易いが、その捻る力もラッチ爪近傍のスライダ穴が支持するので、支持部に大きな負荷が作用し難い。このため、この車両用シートリクライニング装置は、支持部を強度の高い構造にする必要が一層なくなり、重量軽減及び製造コストの低廉化を確実に実現できる。
本発明の車両用シートリクライニング装置において、ストライカは、スライダがレールに対して回動軸芯周りで回動していない状態において、中心軸線上に位置し、レール、スライダ及びストライカは、中心軸線を基準として線対称となる形状とされていることが好ましい(請求項4)。
この場合、この車両用シートリクライニング装置は、スライダがレールに対して回動軸芯周りで回動していない状態において、ストライカを中心軸線上に位置させることにより、ロック装置とストライカとの係合位置と、ラッチ爪とラッチ穴との係合位置とを中心軸線上に位置させ易くなるので、スライダをレールに対して回動軸芯周りで回動させようとするモーメントを小さくできる。その結果、スライダの回動部に作用する負荷を小さくでき、耐久性が向上する。
また、この場合、この車両用シートリクライニング装置は、レール、スライダ及びストライカが中心軸線を基準として線対称となる形状とされていることにより、車体の左側に取り付けられるものと右側に取り付けられるものとの間で部品を共通化できるので、製造コストの一層の低廉化を実現できる。
本発明の車両用シートリクライニング装置において、各ラッチ穴は、中心軸線と交差し、中心軸線から離れる方向に延びる第1辺と、中心軸線と交差し、第1辺と対向する第2辺とを有し、ラッチ爪と係合する際に第1辺と第2辺とが中心軸線上でラッチ爪を挟むものであり、第1辺と第2辺との間隔は、ラッチ爪がレールから後退する際の軌跡に沿って、中心軸線から離れる程広くなるように設定されることが好ましい。また、スライダ穴は、中心軸線と交差し、中心軸線から離れる方向に延びる第3辺と、中心軸線と交差し、第3辺と対向する第4辺とを有し、ラッチ爪がラッチ穴と係合する際に第3辺と第4辺とが中心軸線上でラッチ爪を挟むものであり、第3辺と第4辺との間隔は、ラッチ爪がレールから後退する際の軌跡に沿って、中心軸線から離れる程広くなるように設定されていることが好ましい(請求項5)。
上記構成によれば、レバーが中心軸線と略平行な揺動軸回りで揺動してラッチ爪がラッチ穴に係合又は離反する際、ラッチ爪は第1辺と第2辺とに挟まれながら、中心軸線に接近又は離反する。この際、第1辺と第2辺との間隔は、ラッチ爪がレールから後退する際の軌跡に沿って、中心軸線から離れる程広くなっている。このため、ラッチ爪が中心軸線上にある場合、第1辺及び第2辺と、ラッチ爪との隙間を小さくして、ラッチ爪とラッチ穴とのガタツキを防止できる。また、この際、第3辺と第4辺との間隔は、ラッチ爪がレールから後退する際の軌跡に沿って、中心軸線から離れる程広くなっている。このため、ラッチ爪が中心軸線上にある場合、第3辺及び第4辺と、ラッチ爪との隙間を小さくして、ラッチ爪とスライダ穴とのガタツキを防止できる。その結果、レールに対してスライダを確実に固定できる。
その一方、ラッチ爪が中心軸線から離れる位置にある場合、第1辺及び第2辺と、第3辺及び第4辺とがラッチ爪との隙間を広くするので、ラッチ穴及びスライダ穴に対してラッチ爪をスムーズに進退させることができる。その結果、リクライニング操作の操作感を軽くできる。
実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、バックレストと、ロック装置と、シートリクライニング装置との相対位置関係を示す概略側面図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置の斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置の斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置の分解斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、レールに対するスライダの回動軸芯周りの回動を説明する側面図(部分断面図)である(スライダが回動していない状態)。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、図5のVI−VI断面を示す断面図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、スライダの斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、支持部、揺動軸、レバー及びダンパ部材を拡大して示す分解斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、図6のIX−IX断面を示す断面図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、ラッチ爪に固定されたダンパ部材を示す要部拡大斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、レールに対するスライダの回動軸芯周りの回動を説明する側面図(部分断面図)である(スライダが回動した状態)。 従来のロック装置を説明する模式図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、ラッチ爪がレールから後退する際の軌跡を示す断面図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、ラッチ穴の形状及びラッチ爪とのラッチ穴との相対位置関係を説明する上面図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、スライダ穴の形状及びラッチ爪とのスライダ穴との相対位置関係を説明する上面図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、ダンパ部材の変形例を示す斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、ダンパ部材の変形例を示す斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、ラッチ穴及びスライダ穴の変形例を示す断面図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、ラッチ穴及びスライダ穴の変形例を示す斜視図である。 実施例の車両用シートリクライニング装置に係り、レバーの変形例を示す断面図である。
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。なお、図1において、紙面右側を車両の前側と規定し、紙面左側を車両の後側と規定し、紙面手前側を車両の右側と規定し、紙面奥側を車両の左側と規定して表示する。また、各図に表示する左右方向、前後方向及び上下方向は、全て図1に対応させている。
(実施例)
図1に示すように、実施例の車両用シートリクライニング装置1は、ロック装置90ととともに、車体9に設置された車両用シート8に適用されるものである。車両用シート8は、搭乗者が腰掛けるシート本体6と、搭乗者がもたれ掛かるバックレスト7とにより構成されている。バックレスト7は、シート本体6の後端部に設けられた支持軸6Aに傾動可能に支持されており、シート本体6の後端部から斜め後方に立ち上がっている。
バックレスト7の左側面(図1において、バックレスト7より紙面奥側)の上方には、ロック装置90が固定されている。ロック装置90は、進入口91及びその進入口91を塞ぐように変位可能なフォーク(図示省略)等を有する公知の構成を備えている。詳細は後述するが、進入口91に車両用シートリクライニング装置1のストライカ39が進入した状態でフォークが進入口91を塞ぐことにより、ロック装置90がストライカ39と係合して、バックレスト7の傾動姿勢を固定する。そして、ストライカ39が前後方向に段階的に変位することにより、その変位がロック装置90を介してバックレスト7に伝達され、バックレスト7の傾動姿勢が段階的に変化するようになっている。バックレスト7が傾動する際、ロック装置90は、支持軸6Aを中心とする円弧状の軌跡C1を描く。
図示は省略するが、車両用シート8の近傍には、ロック装置90とストライカ39との係合を解除する解除レバーが設けられている。例えば、大きな荷物を積載するためにバックレスト7を前方に倒す場合、搭乗者がその解除レバーを操作すると、ロック装置90がストライカ39と係合しなくなり、バックレスト7を支持軸6A周りで前方に倒すことができる。
車両用シートリクライニング装置1は、車体9側においてロック装置90の左側(図1において、ロック装置90より紙面奥側)に設けられており、レール10と、スライダ30と、ラッチ機構60とを備えている。
図2〜図5に詳しく示すように、レール10は、金属鋼板が略「C」字断面形状に折り曲げ加工されたものであり、中心軸線S1に沿って直線状に延びる形状とされている。図6(図5のVI−VI断面)に示すように、レール10の内壁面において、中心軸線S1と平行に延びる面が第1案内面11とされ、第1案内面11の幅方向(図6の紙面左右方向)両端縁からそれぞれ直角に立ち上がり、中心軸線S1と平行に延びる一対の面が第2案内面12A、12Bとされ、各第2案内面12A、12Bの第1案内面11から離れた端縁からそれぞれ幅方向内側に向かって第1案内面11と平行に延びる一対の面が第3案内面13A、13Bとされている。レール10をこのような断面形状とすることにより、レール10の高さを抑えつつ、レール10の曲げ強度を向上させ易くなっている。
図2及び図3に示すように、レール10の前端側及び後端側には、クランク形状に折り曲げられた取り付け部10A、10Bが形成されている。この取り付け部10A、10Bを止めネジ等を用いて車体9に締結することにより、レール10が車体9に固定される。この際、図1に示すように、レール10の中心軸線S1がロック装置90の円弧状の軌跡C1に合うように、すなわち、円弧状の軌跡C1の接線と略平行で、軌跡C1と重なるように、レール10が車体9に位置決めされる。
図3〜図5に示すように、レール10の第1案内面11には、中心軸線S1に沿って、5個のラッチ穴19A、19B、19C、19D、19Eが貫設されている。各ラッチ穴19A〜19Eは、第1案内面11の幅方向に長い略矩形状とされている。なお、図14を示して後述する通り、第1辺191及び第2辺192は中心軸線S1上で互いに接近するように屈曲している。
図4〜図7に示すように、スライダ30は、スライダ本体31と、一対の摺動層40A、40Bとからなる。
図4に示すように、スライダ本体31は、金属鋼板が打ち抜きプレス加工されたものであり、中心軸線S1方向に長い矩形状とされている。スライダ本体31の前方には、2つのポスト穴31A、31Bが貫設されている。一方、スライダ本体31の後方には、スライダ穴32が貫設され、そのスライダ穴32を前後で挟むように突出する一対のボス部33A、33Bが凸設されている。スライダ穴32は、スライダ本体31の幅方向に長い略矩形状とされている。なお、図15を示して後述する通り、第3辺193及び第4辺194は中心軸線S1上で互いに接近するように屈曲している。図5、図14及び図15に示すように、スライダ穴32は、各ラッチ穴19A〜19Eと形状及び大きさがほぼ同一とされている。
図2に示すように、スライダ本体31には、ストライカ39が固定されている。図4に示すように、ストライカ39は、金属丸棒が略「U」字形状に折り曲げ加工されたものであり、その前側端部39A及び後側端部39Bを各ポスト穴31A、31Bに挿通させて溶接や熱加締めをすることにより、スライダ本体31に強固に結合されている。ストライカ39の前側端部39A近傍は、上述したロック装置90の進入口91に進入してロック装置90と係合する。
図4、図6及び図7に示すように、各摺動層40A、40Bは、スライダ本体31の上縁及び下縁を略「C」字状に包む樹脂部材である。各摺動層40A、40Bは、ストライカ39が固定された後のスライダ本体31をインサート成形金型内にセットして、熱可塑性樹脂をインサート成形することによりスライダ本体31に一体化される。各摺動層40A、40Bを構成する樹脂としては、耐摩耗性や摺動性に優れた樹脂材料(例えば、POM(ポリアセタール)樹脂又はPA(ナイロン)樹脂等)が採用される。
図6に示すように、スライダ30はレール10内に収容される。この際、各摺動層40A、40Bにおいて第1案内面11と対面する面が第1被案内面41A、41Bとされ、各第2案内面12A、12Bと対面する一対の面が第2被案内面42A、42Bとされ、各第3案内面13A、13Bと対面する一対の面が第3被案内面43A、43Bとされている。
第1被案内面41と第3被案内面43A、43Bとは、インサート成形金型のキャビティ形状に基づいて高い精度で形成される。このため、第1案内面11と各第1被案内面41A、41Bとがガタツキなく摺接するとともに、各第3案内面13A、13Bと各第3被案内面43A、43Bとがガタツキなく摺接するようになっている。一方、各第2案内面12A、12Bと各第2被案内面42A、42Bとの間には、幅方向(図6の紙面左右方向)の間隙W1、W2が確保されている。なお、各第2被案内面42A、42Bから幅方向外側に突出する回動部45A、45Bについては後述する。このような構成であるスライダ30は、レール10の中心軸線S1に沿って摺動可能となっている。そして、ストライカ39は、各第3案内面13A、13Bの間からレール10の外側に突出した状態で、中心軸線S1に沿ってスライダ30とともに移動可能となっている。
図2、図3及び図4に示すように、スライダ本体31には、支持部61が固定されている。支持部61は、金属鋼板が打ち抜きプレス加工されたものであり、スライダ穴32を覆う形状とされている。支持部61の前後一対の側壁には、さらに前後方向に突出する一対の切片が形成され、その各切片がボス部33A、33Bにより加締め固定されている。
図8及び図9に示すように、支持部61の上端側には略「コ」字形状に折り曲げられて、スライダ本体31に向けて突出する一対の切片61M、61Nが形成されている。各切片61M、61Nには、揺動軸62が中心軸線S1と平行な姿勢で両端支持されている。揺動軸62には、ねじりコイルバネ62Aが外挿されている。
支持部61は、レバー69を揺動軸62回りで揺動可能に支持している。より詳しくは、レバー69は、金属鋼板が打ち抜きプレス加工されたものであり、その中間部から幅方向に突出して略「コ」字形状に折り曲げられた一対の切片69M、69Nを有する。各切片69M、69Nには、軸穴69P、69Qが貫設されている。レバー69は、軸穴69P、69Qに揺動軸62が挿入され、各切片69M、69Nが支持部61の各切片61M、61Nに挟まれた状態で支持部61に支持される。各切片61M、61Nの対向する内壁面の間隔A11は、各切片69M、69Nの対向する外壁面の間隔A12に対して、0.数mm〜数mm程度大きくされている。すなわち、支持部61とレバー69との間には、中心軸線S1と平行な方向に第1の遊びA11−A12が確保されている。
図8及び図9に示すように、レバー69は、揺動軸62より下方に延びて左方に屈曲するラッチ爪69Aと、揺動軸62より上方に伸びて左方に屈曲する入力部69Bとを有する。ねじりコイルバネ62Aは、ラッチ爪69Aがレール10の第1案内面11に対して進行するようにレバー69を付勢している。ラッチ爪69Aの中心軸線S1と平行な方向の幅A21は、各ラッチ穴19A〜19Eの中心軸線S1と平行な方向の間隔P1(図9及び図14参照)に対して僅かに大きくされている。また、ラッチ爪69Aの中心軸線S1と平行な方向の幅A21は、スライダ穴32の中心軸線S1と平行な方向の間隔P3(図9及び図15参照)に対しても僅かに大きくされている。すなわち、スライダ穴32とラッチ爪69Aとの間には、中心軸線S1と平行な方向に第2の遊びP3−A21が確保されている。本実施例では、第2の遊びP3−A21は、第1の遊びA11−A12より小さくされている(例えば、0.1〜0.数mm程度)。これにより、ラッチ爪69Aは、スライダ穴32に進行した状態において、第2の遊びP3−A21の範囲内で、中心軸線S1と平行な方向に位置ずれし得る。それに伴って、レバー69は、第1の遊びA11−A12の範囲内で、揺動軸62に沿って、中心軸線S1と平行な方向に位置ずれする。しかしながら、第2の遊びP3−A21が第1の遊びA11−A12より小さいことにより、レバー69が支持部61に当て止まらないようになっている。
なお、支持部61及びレバー69は、第2の遊びP3−A21を必ず第1の遊びA11−A12より小さくするため、製造工程において、加工後の寸法ばらつきが所定範囲内となるように管理される。また、図9に示すように、ラッチ爪69Aがスライダ穴32に対して中心軸線S1と平行な方向の中央に位置する際に、切片61M及び切片69Mの対向する側面同士の間隔A13と、切片61N及び切片69Nの対向する側面同士の間隔A14とが等しくなるように、支持部61に対する設計上のレバー69の相対位置が決定される。
上記構成により、ラッチ爪69Aがレール10のラッチ穴19A〜19Eのいずれか1つと対向すれば、ラッチ爪69Aがその内部に進行して、双方が互いに係合するようになっている。その結果、レール10に対するスライダ30の中心軸線S1に沿う摺動が規制される。なお、ラッチ爪69Aの先端は、角部が面取りされてテーパー形状とされることにより、各ラッチ穴19A〜19E及びスライダ穴32にスムーズに進入可能となっている。また、この車両用シートリクライニング装置1では、上記構成により、レール10の第1案内面11と、スライダ本体31との面間距離を短くできており、ラッチ爪69Aやレバー69に係る負荷を低減できている。
図10に示すように、ラッチ爪69Aにおいて、揺動軸62とは反対側を向く側面には、ゴム製のダンパ部材101が加硫接着されている。ダンパ部材101の形状は、弾性変形していない状態において、ラッチ爪69Aに対して僅かに大きな相似形状とされている。図8に示すように、ダンパ部材101の中心軸線S1と平行な方向の幅A22は、弾性変形していない状態において、ラッチ爪69Aの幅A21に対して0.数mm〜1mm程度はみ出すように大きくされている。すなわち、図9に示すように、ラッチ爪69Aがスライダ穴32を介してラッチ穴19A〜19Eのいずれか1つに進行する際、ラッチ爪69Aが、スライダ穴32と、ラッチ穴19A〜19Eとに接触するより先に、ラッチ爪69Aからはみ出したダンパ部材101がスライダ穴32と、ラッチ穴19A〜19Eとに当接して弾性変形するようになっている(図9は、ダンパ部材101が幅方向で圧縮変形した状態を示している)。なお、ダンパ部材101の先端も、ラッチ爪69Aと同様に、角部が面取りされてテーパー形状とされることにより、各ラッチ穴19A〜19E及びスライダ穴32にスムーズに進入可能となっている。
図3に示すように、入力部69Bには、伝達ケーブル65の一端が連結されている。図示は省略するが、車両用シート8の近傍には、バックレスト7の傾動姿勢を調整する調整レバーが設けられており、その調整レバーに伝達ケーブル65の他端が連結されている。バックレスト7の傾動姿勢を調整する場合、搭乗者がその調整レバーを操作すると、その操作が伝達ケーブル65を介して入力部69Bに伝達されて、図3に示すように、入力部69Bが引き下げられる。そうすると、レバー69がねじりコイルバネ62Aの付勢力に抗しつつ揺動軸62周りで揺動するので、ラッチ爪69Aがレール10の第1案内面11から後退して、ラッチ爪69Aがラッチ穴19A〜19Eと係合しなくなる。その結果、レール10に対するスライダ30の中心軸線S1に沿う摺動が許容される。
図5及び図11では、ラッチ爪69Aがラッチ穴19Aに係合しており、ストライカ39が最前方に位置している。図示は省略するが、ラッチ爪69Aがラッチ穴19Eと係合する場合、ストライカ39は最後方に位置することとなる。
ラッチ爪69Aを有するレバー69と、5個のラッチ穴19A〜19Eとを有して本発明のラッチ機構60が構成されている。ここで、ラッチ穴19A〜19Eのいずれか1つと係合しているラッチ爪69Aの軸芯を回動軸芯R1として、図3、図5、図6及び図11に表示する。
図5〜図7及び図11に示すように、各摺動層40A、40Bには、回動軸芯R1から径外方向に突出する一対の回動部45A、45Bが一体成形されている。各回動部45A、45Bを構成する曲面は、回動軸芯R1を軸芯とし、回動軸芯R1と各第2案内面12A、12Bとの距離(すなわち、第2案内面12A、12Bの相互間距離の1/2)を半径とする円筒面の一部である。このため、各回動部45A、45Bは、各第2案内面12A、12Bと各第2被案内面42A、42Bとの間の間隙W1、W2を狭めている。そして、スライダ30が中心軸線S1に沿う位置(図5に示す位置)から、回動軸芯R1周りで回動しようとする際、各回動部45A、45Bが各第2案内面12A、12Bと常に摺接するようになっている。その結果、スライダ30は、レール10に対して幅方向に位置ずれすることなく、回動軸芯R1周りで回動できる。この際、図5及び図11に示すように、ダンパ部材101は、ラッチ穴19A〜19Eのいずれか1つとスライダ穴32とに当接したまま弾性変形できるので、上記回動を妨げない。
各摺動層40A、40Bの前端部には、各第2案内面12A、12Bに向けて一対のストッパ部48A、48Bが凸設されている。ストッパ部48Aが第2案内面12Aに当接するか、又はストッパ部48Bが第2案内面12Bに当接する(図11に示す状態)ことにより、スライダ30の回動軸芯R1周りでの回動範囲が制限される。
各摺動層40A、40Bにおいて、各回動部45A、45Bと各ストッパ部48A、48Bとの間には一対の付勢部46A、46Bが一体成形され、各摺動層40A、40Bの後端部には、一対の付勢部47A、47Bが一体成形されている。各付勢部46A、46B、47A、47Bは、各摺動層40A、40Bから幅方向外側に向けて斜めに突出し、幅方向の隙間W1、W2を介して各第2案内面12A、12Bに弾性変形しつつ摺接している。
ストライカ39の前端部39A側がロック装置90と係合していない状態では、図5に示すように、スライダ30が回動軸芯R1周りで回動しておらず、ストライカ39が中心軸線S1上に位置している。
一方、図11に示すように、円弧状の軌跡C1に対して中心直線S1が上方にずれた位置においてストライカ39の前端部39A側がロック装置90と係合する場合、スライダ30を回動軸芯R1周りで右周りに回動させようとするモーメントが作用する。そうすると、スライダ30が軌跡C1と中心直線S1とのずれを吸収するように回動軸芯R1周りで回動する。この際、付勢部46Bが第2案内面12Bに強く押し付けられてさらに弾性変形する。また、付勢部47Aも第2案内面12Aに強く押し付けられてさらに弾性変形する。その結果、付勢部46B、47Aの復元力がスライダ30に作用して、スライダ30を回動軸芯R1周りで元の位置に復帰させようとする。このため、ストライカ39の前端部39A側がロック装置90と係合しなくなる場合や、スライダ30が後方に移動する場合に、スライダ30を回動軸芯R1周りで元の位置に復帰し易い。
図示は省略するが、レール10に対してスライダ30が回動軸芯R1周りで上記とは逆方向に回動する場合、付勢部46A、47Bがスライダ30を回動軸芯R1周りで元の位置に復帰させようとする。
<作用効果>
実施例の車両用シートリクライニング装置1において、支持部61とレバー69との間には、中心軸線S1と平行な方向に第1の遊びA11−A12が確保され、スライダ穴32とラッチ爪69Aとの間には、中心軸線S1と平行な方向に第1の遊びA11−A12より小さい第2の遊びP3−A21が確保されている。このため、傾動姿勢で固定されたバックレスト7に荷重が作用すると、その荷重は、図9に示すように、ロック装置90〜ストライカ39〜スライダ30に伝達された後、スライダ穴32〜ラッチ爪69Aを介していずれか1つのラッチ穴19A〜19Eに伝達され、レール10がその荷重を支持する。すなわち、上記荷重は、上記従来技術のようにスライダ30から支持部61〜レバー69を介してラッチ爪69Aに伝達されるのではなく、スライダ30からスライダ穴32を介してラッチ爪69Aに伝達される。この際、ラッチ爪69Aには、係合するいずれか1つのラッチ穴19A〜19Eから中心軸線S1と平行な方向の反力が作用する。そうすると、その反力によりラッチ爪69Aを有するレバー69が中心軸線S1と平行な方向にずれるが、第1の遊びA11−A12より第2の遊びP3−A21が小さいので、レバー69は、支持部61に当て止まるよりも先にラッチ爪69Aによってスライダ穴32に当て止まる。このため、反力をスライダ穴32が支持し、支持部61は反力を支持しない。このため、反力の支持のために支持部61を強度の高い構造、すなわち、重量増加及び製造コストの高騰を招き易い構造にする必要がない。
したがって、実施例の車両用シートリクライニング装置1は、重量軽減及び製造コストの低廉化を実現できる。
また、この車両用シートリクライニング装置1では、ラッチ爪69A近傍のスライダ穴32が反力を支持するため、ラッチ爪69Aから離れた支持部61が反力を支持する従来技術と比較して、反力が作用する際におけるレバー69全体の変位を抑制できる。このため、急ブレーキや荷積みによりバックレスト7に衝撃荷重が作用する場合でも、レバー69にかかる慣性力を減らすことができる。その結果、非操作時にも関わらず慣性力によりレバー69が揺動してラッチ爪69Aがラッチ穴から外れるというような不具合を防止できる。
さらに、この車両用シートリクライニング装置1では、ラッチ爪69Aにダンパ部材101が固定されている。そして、ラッチ爪69Aがレール10に対して進行する際、ラッチ爪69Aがスライダ穴32とラッチ穴19A〜19Eとに接触するより先に、ラッチ爪69Aからはみ出したダンパ部材101がスライダ穴32とラッチ穴19A〜19Eとに当接して弾性変形するので、ラッチ爪69Aと、スライダ穴32とラッチ穴19A〜19Eとの衝突を抑制でき、異音を発生し難くできる。
特に本実施例では、ゴム製のダンパ部材101がラッチ爪69Aに加硫接着されることにより、広い接着面積が確保されているので、ダンパ部材101がラッチ爪69Aから剥がれ難くなっており、高い耐久性を実現できる。
また、この車両用シートリクライニング装置1では、直線状に延びるレール10及びそのレール10に沿って摺動するスライダ30を採用しているので、円弧状に延びるレール及びそのレールに沿って摺動するスライダを採用する場合と比較して、製造コストを低廉化できる。
但し、直線状に延びるレール10及びそのレール10に沿って摺動するスライダ30を採用する場合、バックレスト7を傾動させると、ロック装置90は円弧状の軌跡C1を描く一方、スライダ30は中心軸線S1に沿って直線状の軌跡を描くので、双方の軌跡のずれが生じ得る。
この点、この車両用シートリクライニング装置1では、レール10とスライダ30との間に、回動軸芯R1に直交し、かつ中心軸線S1に直交する方向である幅方向の間隙W1、W2が確保されている。そして、スライダ30に一対の回動部45A、45Bが設けられている。各回動部45A、45Bは、幅方向の間隙W1、W2を狭めて、スライダ30がレール10に対して回動軸芯R1周りで回動することを許容する。このため、スライダ30に固定されたストライカ39も回動軸芯R1周りで回動できるので、ロック装置90及びストライカ39の軌跡のずれを吸収できる。また、バックレスト7に取り付けられたロック装置90と、車体9に取り付けられたストライカ39の位置とがずれた場合でも、その位置ずれを吸収できるので、組み付け後の調整が不要となる。さらに、各回動部45A、45Bは、レール10とスライダ30との幅方向の間隙W1、W2を狭めているので、スライダ30がレール10に対して幅方向に位置ずれすることが規制され、スライダ30がレール10に沿って摺動する際のガタツキや異音を抑制できる。さらに、ストライカ39はスライダ30に固定されているので、ストライカ39をスライダ30に強固に結合させ易い。このため、スライダ30がレール10に沿って摺動する際、ストライカ39やスライダ30の周辺にガタツキや異音が生じ難い。
さらに、上記回動によりラッチ爪69A及びレバー69を捻る力が作用し易いが、その捻る力もラッチ爪69A近傍のスライダ穴32が支持するので、支持部61に大きな負荷が作用し難い。このため、この車両用シートリクライニング装置1は、支持部61を強度の高い構造にする必要が一層なくなり、重量軽減及び製造コストの低廉化を確実に実現できる。
また、この車両用シートリクライニング装置1が上記構成によりバックレスト7のスムーズな傾動動作を実現できることに伴い、実施例の車両用シートリクライニング装置1のストライカ39と係合するロック装置90(図1参照)は、図12に示す従来のロック装置990における進入口991の間口G1よりも、進入口91の間口を狭くできる。また、従来のロック装置990では、広い間口G1に対応して、フォーク992や、ゴムやエラストマーからなるダンパ993も長くされているので、フォーク992及びダンパ993と、ストライカ939との噛み合い位置が変動する。このため、ロック装置990とストライカ939との噛み合い強度が変動し、噛み合い強度の向上が難しい。また、リクライニング操作時に、ストライカ939がダンパ993に食い込んだままフォーク992とダンパ993との間を移動するので、バックレスト7のスムーズな傾動動作が阻害され易い。これに対して、実施例の車両用シートリクライニング装置1のストライカ39と係合するロック装置90は、フォークやダンパを短くできるので、フォーク及びダンパと、ストライカ39との噛み合い位置が殆ど変動しない。このため、ロック装置90とストライカ39との噛み合い強度が変動し難く、噛み合い強度を向上させ易い。また、リクライニング操作時に、ストライカ39がダンパに食い込んだままフォークとダンパとの間を移動することがないので、バックレスト7のスムーズな傾動動作が阻害され難い。
さらに、この車両用シートリクライニング装置1において、ストライカ39は、スライダ30がレール10に対して回動軸芯R1周りで回動していない状態において、中心軸線S1上に位置している。このため、ロック装置90とストライカ39との係合位置と、ラッチ爪69Aとラッチ穴19A〜19Eとの係合位置とを中心軸線S1上に位置させ易くなっているので、スライダ30をレール10に対して回動軸芯R1周りで回動させようとするモーメントを小さくできる。その結果、スライダ30の回動部45A、45Bに作用する負荷を小さくでき、耐久性が向上する。また、図5等に示すように、レール10、スライダ30及びストライカ39は、中心軸線S1を基準として線対称となる形状とされている。このため、車体9の左側に取り付けられるものと右側に取り付けられるものとの間でレール10、スライダ30及びストライカ39を共通化できるので、製造コストの一層の低廉化を実現できる。
また、この車両用シートリクライニング装置1において、揺動軸62は、図3、図9及び図13に示すように、中心軸線S1と平行である。そして、図14に示すように、各ラッチ穴19A〜19Eは、中心軸線S1と交差し、中心軸線S1から離れる方向に延びる第1辺191と、中心軸線S1と交差し、第1辺191と対向する第2辺192とを有する。第1辺191と第2辺192との中心軸線S1上の間隔P1は、上述したように、ラッチ爪69Aの幅A21に対して僅かな隙間を有するように設定されている。このため、各ラッチ穴19A〜19Eがラッチ爪69Aと係合する際には、第1辺191と第2辺192とが中心軸線S1上でラッチ爪69Aを挟むようになっている。また、第1辺191と第2辺192との間隔は、ラッチ爪69Aがレール10から後退する際の軌跡K1に沿って、中心軸線S1から幅方向の両側に離れる程広くなるように設定されている(間隔P2>間隔P1。なお、図14では、間隔P2と間隔P1との差を強調して図示しているが、実際には、0.数mm〜2mm程度の差で充分である。)。
さらに、図15に示すように、スライダ穴32は、中心軸線S1と交差し、中心軸線S1から離れる方向に延びる第3辺193と、中心軸線S1と交差し、第3辺193と対向する第4辺194とを有する。第3辺193と第4辺194との中心軸線S1上の間隔P3は、上述したように、ラッチ爪69Aの幅A21に対して僅かな隙間を有するように設定されている(スライダ穴32とラッチ爪69Aとの間に第2の遊びP3−A21が確保される)。このため、スライダ穴32がラッチ爪69Aと係合する際には、第3辺193と第4辺194とが中心軸線S1上でラッチ爪69Aを挟むようになっている。また、第3辺193と第4辺194との間隔は、ラッチ爪69Aがレール10から後退する際の軌跡K1に沿って、中心軸線S1から幅方向の両側に離れる程広くなるように設定されている(間隔P4>間隔P3。なお、図15では、間隔P4と間隔P3との差を強調して図示しているが、実際には、間隔P2と間隔P1との差と同様に、0.数mm〜2mm程度の差で充分である。)。
上記構成によれば、図13〜図15に示すように、レバー69が中心軸線S1と平行な揺動軸62回りで揺動してラッチ爪69Aが各ラッチ穴19A〜19Eに係合又は離反する際、ラッチ爪69Aは第1辺191と第2辺192とに挟まれながら、中心軸線S1に接近又は離反する。ラッチ爪69Aが中心軸線S1上にある場合、第1辺191と第2辺192との中心軸線S1上の間隔P1が上記の通り設定されているので、ラッチ爪69Aと各ラッチ穴19A〜19Eとのガタツキを防止できる。また、第3辺193と第4辺194との中心軸線S1上の間隔P3も上記の通り設定されているので、ラッチ爪69Aとスライダ穴32とのガタツキも防止できる。その結果、レール10に対してスライダ30を確実に固定できる。
その一方、ラッチ爪69Aが中心軸線S1から離れる位置にある場合、第1辺191及び第2辺192と、第3辺193及び第4辺194とがラッチ爪69Aとの隙間を広くするので、各ラッチ穴19A〜19E及びスライダ穴32に対してラッチ爪69Aをスムーズに進退させることができる。その結果、リクライニング操作の操作感を軽くできる。
また、図14及び図15に示すように、各ラッチ穴19A〜19E及びスライダ穴32は、中心軸線S1を基準として線対称となる形状とされているので、車体9の左側に取り付けられるものと右側に取り付けられるものとの間でレール10及びスライダ30を共通化できる。
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施例の車両用シートリクライニング装置1において、ダンパ部材101の代わりに、図16に示すダンパ部材102をラッチ爪69Aに加締め固定してもよい。より詳しくは、ダンパ部材102は、円環状のゴム部材であり、その外径はダンパ部材101の幅A22と同等である。ラッチ爪69Aの中央には、リベット穴102Aが貫設されている。ダンパ部材102をラッチ爪69Aの揺動軸62側の面に当接させて、リベット102Bをダンパ部材102の中央孔を介してリベット穴102Aに挿入する。そして、リベット102Bを加締めることにより、ダンパ部材102がラッチ爪69Aに圧接する状態で固定される。この構成によっても、ダンパ部材101と同様の作用効果を奏することができるとともに、製造工程の簡略化を実現できる。
また、図17に示すダンパ部材103をラッチ爪69Aにねじ止め固定してもよい。より詳しくは、ダンパ部材103も、円環状のゴム部材であり、その外径はダンパ部材101の幅A22と同等である。ラッチ爪69Aの中央には、貫通穴103Aが貫設されている。ダンパ部材103をラッチ爪69Aの揺動軸62から離れる側の面に当接させて、ダンパ部材102の中央孔にカラー部材103Cを装着する。そして、タッピングビス103Bをダンパ部材102の中央孔及びカラー部材103Cを介してリベット穴102Aに螺入する。そうすると、タッピングビス103Bが貫通穴103Aの内周面に食い付きながら貫通穴103Aの奥まで進入するので、ダンパ部材103がラッチ爪69Aに圧接する状態で固定される。この際、カラー部材103Cは、タッピングビス103Bのねじ山がダンパ部材103を傷つけないように保護する。この構成によっても、ダンパ部材101、102と同様の作用効果を奏することができるとともに、製造工程の簡略化を実現できる。
さらに、図18及び図19に示すように、レール10の第1案内面11にラッチ穴19A〜19Eを貫設する際、バーリング加工を実施してもよい。バーリング加工とは、下穴成形ポンチにより、板材を打ち抜いて下穴を明け、次に、下穴成形ポンチより大きな本成形ポンチにより、下穴の周縁を筒状に折り曲げつつ、本穴を形成する加工方法である。下穴成形ポンチと本成形ポンチとを一体化して、一度の工程でバーリング加工を行うことも可能である。
この場合、ラッチ穴19A〜19Eは、その筒状に折り曲げられた周縁により補強されるとともに、その内壁面が第1案内面11の厚さ方向に長くなって、ラッチ爪69Aとの接触面積が増加する。このため、ラッチ穴19A〜19Eがラッチ爪69Aと係合する際に変形し難くなり、ラッチ爪69Aの反力をより確実に支持できる。
また、図18及び図19に示すように、スライダ本体31にスライダ穴32を貫設する際、同様にバーリング加工を実施してもよい。
この場合、スライダ穴32は、その筒状に折り曲げられた周縁により補強されるとともに、その内壁面がスライダ本体31の厚さ方向に長くなって、ラッチ爪69Aとの接触面積が増加する。このため、スライダ穴32がラッチ爪69Aと係合する際に変形し難くなり、ラッチ爪69Aの反力をより確実に支持できる。
また、図13では、ラッチ爪69Aがレバー69の中間部に対して略直角に折れ曲がっているが、図20に示すように、ラッチ爪69Aがレバー69の中間部に対して鋭角に折れ曲がるようにしてもよい。
この場合、図13に示す場合と比較して、ラッチ爪69Aの先端が揺動軸62に接近する。このため、レバー69が揺動軸62周りに揺動する際、ラッチ爪69Aが第1案内面11の幅方向(図2の紙面左右方向)に移動する距離を短くできる。このため、ラッチ穴19A〜19E及びスライダ穴32の上記幅方向の長さL(図20参照)を短くできる。その結果、ラッチ穴19A〜19E及びスライダ穴32がラッチ爪69Aと係合する際に変形し難くなり、ラッチ爪69Aの反力をより確実に支持できる。
本発明は車両用シートリクライニング装置に利用可能である。
9…車体
8…車両用シート
7…バックレスト
90…ロック装置
1…車両用シートリクライニング装置
S1…中心軸線
C1…ロック装置の軌跡
10…レール
39…ストライカ
30…スライダ
60…ラッチ機構
19A、19B、19C、19D、19E…ラッチ穴
32…スライダ穴
61…支持部
62…揺動軸
69A…ラッチ爪
69…レバー
A11−A12…第1の遊び
P3−A21…第2の遊び
101、102、103…ダンパ部材
R1…回動軸芯
W1、W2…幅方向の間隙
45A、45B…回動部
191…第1辺
192…第2辺
P1、P2…第1辺と第2辺との間隔
193…第3辺
194…第4辺
P3、P4…第1辺と第2辺との間隔

Claims (5)

  1. 車体側に設けられ、車両用シートの傾動するバックレストに固定されるロック装置と協働して、前記バックレストの傾動姿勢を段階的に固定する車両用シートリクライニング装置において、
    中心軸線に沿って延び、前記バックレストの傾動時に描かれる前記ロック装置の軌跡に合わせて前記車体側に固定されるレールと、
    前記レールに摺動可能に設けられ、前記ロック装置に係合するストライカが設けられたスライダと、
    前記レールと前記スライダとの間に設けられ、前記スライダの摺動を規制又は許容するラッチ機構とを備え、
    前記ラッチ機構は、前記中心軸線に沿って前記レールに列設された複数個のラッチ穴と、各前記ラッチ穴と対向して前記スライダに貫設されたスライダ穴と、前記スライダに設けられた支持部と、前記支持部に前記中心軸線と略平行な揺動軸回りで揺動可能に支持され、先端に前記スライダ穴を介して各前記ラッチ穴に係合可能なラッチ爪を有するレバーとを有し、
    前記支持部と前記レバーとの間には、前記中心軸線と平行な方向に第1の遊びが確保され、
    前記スライダ穴と前記ラッチ爪との間には、前記中心軸線と平行な方向に前記第1の遊びより小さい第2の遊びが確保されていることを特徴とする車両用シートリクライニング装置。
  2. 前記ラッチ機構は、前記ラッチ爪に対して前記中心軸線と平行な方向にはみ出した状態で前記ラッチ爪に固定され、前記ラッチ爪が前記レールに対して進行する際、前記スライダ穴及び前記ラッチ穴に当接して弾性変形可能なダンパ部材を有する請求項1記載の車両用シートリクライニング装置。
  3. 前記レールは前記中心軸線に沿って直線状に延び、
    前記レールと前記スライダとの間には、前記ラッチ穴と係合している前記ラッチ爪の軸芯である回動軸芯に直交し、かつ前記中心軸線に直交する方向である幅方向の間隙が確保され、
    前記スライダには、前記回動軸芯から径外方向に突出して前記間隙を狭めて、前記スライダが前記レールに対して前記回動軸芯周りで回動することを許容する回動部が設けられている請求項1又は2記載の車両用シートリクライニング装置。
  4. 前記ストライカは、前記スライダが前記レールに対して前記回動軸芯周りで回動していない状態において、前記中心軸線上に位置し、
    前記レール、前記スライダ及び前記ストライカは、前記中心軸線を基準として線対称となる形状とされている請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用シートリクライニング装置。
  5. 各前記ラッチ穴は、前記中心軸線と交差し、前記中心軸線から離れる方向に延びる第1辺と、前記中心軸線と交差し、前記第1辺と対向する第2辺とを有し、前記ラッチ爪と係合する際に前記第1辺と前記第2辺とが前記中心軸線上で前記ラッチ爪を挟むものであり、
    前記第1辺と前記第2辺との間隔は、前記ラッチ爪が前記レールから後退する際の軌跡に沿って、前記中心軸線から離れる程広くなるように設定され、
    前記スライダ穴は、前記中心軸線と交差し、前記中心軸線から離れる方向に延びる第3辺と、前記中心軸線と交差し、前記第3辺と対向する第4辺とを有し、前記ラッチ爪が前記ラッチ穴と係合する際に前記第3辺と前記第4辺とが前記中心軸線上で前記ラッチ爪を挟むものであり、
    前記第3辺と前記第4辺との間隔は、前記ラッチ爪が前記レールから後退する際の軌跡に沿って、前記中心軸線から離れる程広くなるように設定されている請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用シートリクライニング装置。
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