JP2011195910A - 電鋳型とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フォトリソグラフィー法により、微細性、アスペクト比に優れた電鋳型とその製造方法を提供する。
【解決手段】電鋳型1は、紫外線を透過するガラス基板2とその一表面上に形成された透明導電膜3と遮光性を有する金属層4と型の外形形状となる硬化した厚膜フォトレジスト5から構成されており、電鋳時に透明導電膜3と金属層4により導通がとれるようになっている
【選択図】図1

Description

本発明は、電気めっき法による電鋳体を作製するために使用する電鋳型とその製造方法に関する。
電鋳法によれば、精密に加工された電鋳型と呼ばれる部材を用いることにより、非常に高い転写性を有する部材を製造することが出来る。特に近年、シリコンプロセスにより感光性材料を用いて電鋳型形状に加工するLIGA(Lithographie Galvanofomung Abformung)法によって電鋳型を製造し、合わせて微小な形状を有する部品や金型を製造することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
LIGA法による電鋳型の製造では、X線による露光方法と紫外線による露光方法が行われている。
X線による露光では、使用される波長が使用するフォトレジストの厚みや線幅に対して、十分短いため、厚いフォトレジストに対して非常に高い解像度を有する電鋳型を提供できるが、X線源としてシンクロトロン放射装置など特殊で高額な設備を必要とするため、特殊な用途に限られている。
紫外線による露光法では、設備としては、通常のフォトリソグラフィーに使用する設備で対応できるが、使用する波長が比較的長いため、紫外線の拡散や干渉等の影響が現れるので解像度において劣る。フォトレジストとフォトマスクとの間に間隙がある場合、この影響が著しく、特にフォトレジストが厚くなるとフォトレジストの表面に凹凸やウネリが生じやすくなるため、この間隙が大きくなり、解像度に問題をきたし、厚い部品に対して、旨く解像しないことや、厚さ方向に対して、テーパーがつくという問題が生じている。
そこで、フォトレジストとフォトマスクとの間の間隙による解像度に対する影響を排除するために、透明基板の一面上に銅膜からなるパターンを形成し、さらに、この表面にネガ型フォトレジスト層を形成した後、銅膜からなるパターンをフォトマスクにおける遮光部として利用し、この表面とは反対側の面より露光することにより、銅膜パターン部のみが開口している電鋳型を作製し、電鋳体を作製する方法が提案されている(特許文献2参照)。
この方法によれば、フォトマスクの代替として形成された銅膜パターンがフォトレジスト層と一体化しているので、フォトレジストの厚み方向に対するテーパーがつきにくいという利点があるが、所望とする電鋳パターンと電鋳を行うために必要な外部との電気的接続を開口された銅膜パターンを通して行うため、電鋳を行う際、この部分にも電鋳体が形成されることとなり、結果として、所望とする電鋳体と導通のため貫通孔に形成された電鋳体が一体化したものとなるので、後加工で後者を除去することが必要であった。
特開平11−15126号公報 特開平11−61477号公報
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、紫外線による露光で作製されるフォトレジストを用いた電鋳型において、微細性に優れると同時に厚み方向にテーパーが小さく、垂直度に優れたものとすることと、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る電鋳型は、紫外線に対して透過性を有する基板と、前記基板の表面に形成され、導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜と、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面の一部に形成された金属膜と、他方の面に貫通孔を有する第1のフォトレジスト層と、を備えることを特徴とする。
この電鋳型は、紫外線に対して遮光性を有する金属膜のパターンと同じ、もしくは反対のパターンの貫通孔を有する電鋳用のフォトレジスト層を具備した電鋳型となっているので、この金属膜パターンとほぼ同じ精度の電鋳体を提供できるものとなる。
また、本発明に係る電鋳型は、前記第1のフォトレジスト層はネガタイプのフォトレジストで形成され、かつ前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に形成され、前記貫通孔は前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る電鋳型は、前記第1のフォトレジスト層はポジタイプのフォトレジストで形成され、かつ前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に形成され、前記貫通孔は前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする。
この電鋳型は、所望とするパターンを有する金属膜が導電性を有し、紫外線に対して透過性を有する膜の上に形成されているので、この金属膜の形成方法として、気相法、電気めっき法等、多くの手段を用いて形成することができるので、精度面、コスト面等で優れたものとなる。
また、この発明に係る電鋳型は、前記金属膜が、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、シリコン、タングステン、モリブデン、又はこれらの金属を含む合金のいずれかで形成されることを特徴とする。
この電鋳型は、金属膜として、表面に薄い酸化層を形成するクロム、ニッケル、チタン等の金属膜を使用するので、電鋳体や型となるフォトレジストとの密着力を制御することができ、電鋳体を基板から容易に分離することができるものとなる。
また、この発明に係る電鋳型は、導電性を有し紫外線に対して透過性を有する膜が酸化インジウムを含む透明導電膜であることを特徴とする。
この電鋳型は、導電性を有し、紫外線に対して透過性を有する膜として、広く使われている酸化インジウムを含む透明導電膜を用いるので、性能およびコスト面で優れたものとなる。
また、この発明に係る電鋳型の製造方法は、紫外線を透過する基板の表面に導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜を形成する導電膜形成工程と、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面の一部に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面及び前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に第1のフォトレジスト層を形成する第1のフォトレジスト層形成工程と、前記基板の表面と反対側の表面より紫外線による露光を行う露光工程と、前記第1のフォトレジスト層を現像して、前記第1のフォトレジスト層に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、を備えることを特徴とする。
この電鋳型の製造方法は、ガラス、樹脂等の紫外線を透過する基板の一表面に導電性を有し、紫外線に対して透過性を有する膜を形成した後、紫外線を遮光する金属膜を形成し、この金属膜をフォトリソグラフィー法により所望とするパターンとし、次いで、この表面に電鋳型となるべき厚膜フォトレジストをコートし、この厚膜フォトレジストがコートされた面とは反対面から、紫外線を照射することにより、前記パターン化された金属膜部を除く部分が露光され、さらに、この厚膜フォトレジストが現像されることにより電鋳貫通孔が形成されるので、フォトマスクとなるべき金属膜とこの厚膜フォトレジストとの間に間隙が無くなるため、間隙による散乱、屈折、回折等が無くなり、紫外線の直進性が高められ、解像度や垂直性に優れた開口パターンを得ることができ、板厚が厚い電鋳体を形成できる電鋳型を提供できる。
また、この発明に係る電鋳型の製造方法は、前記第1のフォトレジスト形成工程において、前記第1のフォトレジスト層がネガタイプのフォトレジストで形成され、前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔が前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る電鋳型は、前記第1のフォトレジスト形成工程において、前記第1のフォトレジスト層がポジタイプのフォトレジストで形成され、前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔が前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする。
また、前記金属膜形成工程は、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に前記金属膜を形成する工程と、前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面の一部に第2のフォトレジスト層を形成する工程と、前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面のうち露出した部分をエッチングにより除去する工程と、前記第2のフォトレジスト層を除去する工程と、を備えることを特徴とする。
また、前記金属膜形成工程は、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面の一部に前記第2のフォトレジスト層を形成する工程と、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面のうち露出した面に電気めっき法により前記金属膜を形成する工程と、前記第2のフォトレジスト層を除去する工程と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、解像度が高く、基板に対して垂直性が良い電鋳型を作製することができるので、微細で、テーパーが小さい、厚みある電鋳体を提供が可能となる。また、不要な部分に電鋳体を形成することなく所望の形の電鋳体を容易に作製することが可能となる。
本発明の第1および第2の実施形態に係る電鋳型を示す図である。 本発明の第1および第2の実施形態に係る電鋳型を用いて作製した電鋳体を示す図である。 本発明の第1の実施形態に係る電鋳型の作製方法のうち、紫外線を透過する基板の一表面に導電性を有し紫外線に対して透過性を有する膜を形成する工程と、この一表面に金属膜を形成する工程と、この金属膜をフォトリソグラフィー法によりパターン形状に加工する工程とを示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る電鋳型の製造方法のうち、厚膜フォトレジストをコートする工程と、この一表面とは反対側の第二の表面より紫外線による露光を行う工程と、前記厚膜フォトレジストを現像する工程を示す説明図である。 本発明の第1の実施形態に係る電鋳型の製造方法において、電鋳体を製造する方法の例を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳型の作製方法のうち、紫外線を透過する基板の一表面に導電性を有し紫外線に対して透過性を有する膜を形成する工程と、この一表面に金属膜を形成する工程と、この金属膜をフォトリソグラフィー法によりパターン形状に加工する工程とを示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳型の製造方法のうち、厚膜フォトレジストをコートする工程と、この一表面とは反対側の第二の表面より紫外線による露光を行う工程と、前記厚膜フォトレジストを現像する工程を示す説明図である。 本発明の第2の実施形態に係る電鋳型の製造方法において、電鋳体を製造する方法の例を示す説明図である。
本発明に係る第1の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の電鋳型の断面を示す図である。
本発明の電鋳型1は、紫外線に対して透過性を有する基板2と、基板の表面に導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜3と、導電膜の基板に接する面と反対の面の一部に形成された金属膜4と、導電膜の基板に接する面と反対の面に形成された第1のフォトレジスト層5と、第1のフォトレジスト層を貫通し、金属膜の導電膜に接する面と反対の面に形成された貫通孔6と、を備えている。また、貫通孔6の形状・パターンと金属層4の形状・パターンは同じものとなっている。第1のフォトレジスト層は、導電膜の基板に接する面と反対の面のうち、金属膜が形成されていない部分、すなわち導電膜の基板に接する面と反対の面のうち露出している部分に形成されている。
基板2は、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、無機ガラスなどのガラスなどで形成されている。また、後述するフォトレジスト層として、水系現像液を用いるものを使用すれば、アクリルやポリカーボネートを初めとする光透過性が高い樹脂を用いることができる。また、石英やサファイアなどの透明なセラミックなどでも形成することができる。
導電膜3は、例えば、酸化インジウムと酸化スズからなるITО膜、酸化インジウムなどの透明導電膜を用いる。
金属層4は、例えばクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、シリコン、タングステン、モリブデン、またはこれらの金属のいずれかを含む合金などを用いることができる。
第1のフォトレジスト層5は、エポキシ系の化学増幅型のネガタイプフォトレジストを用いることができる。また、他にも、アクリル系のネガタイプのフォトレジストや、ドライフィルムフォトレジストなども用いることができる。また、化学増幅型以外のフォトレジストも用いることができる。
また、金属膜のパターンとフォトレジストの貫通孔のパターンが同じである。金属膜のパターンが第1のフォトレジスト層の貫通孔のパターンと同じであるので、電鋳の際、電鋳体は、この金属膜上に形成され、電鋳体と基板との密着性や剥離・分離性に自由度を持たせることが出来るものとなる。
図2は、本発明の第1の実施形態の電鋳型を用いて作製した電鋳体を示す図である。また、図2(a)は電鋳体の上面図であり、図2(b)は電鋳体の断面図である。この電鋳体は、腕時計ムーブを構成する厚み500μm、歯車外径1500μmからなるカナと呼ばれる歯車である。本発明の電鋳型を用いて、カナ、回転錘、歯車、がんぎ車、アンクル、てんわなどの時計部品を形成することが可能である。また、時計部品に限らず、微細部品や精密部品を形成することができる。
次に、本実施形態に係る電鋳型を製造する方法について図3から図5を用いて説明する。
図3(a)は、紫外線を透過する基板を示す図である。図3(a)に示す基板8は、例えば、ソーダガラス、無アルカリガラス、無機ガラスなどのガラスなどで形成されている。また、アクリルやポリカーボなどの透明なプラスチックや、石英やサファイアなどの透明なセラミックなどでも形成することができる。
図3(b)は、紫外線を透過する基板の第1の表面に導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜を形成する導電膜形成工程を示す図である。この工程では、基板8の第1の表面9に導電膜10を形成する。導電膜10は、例えば、例えば、酸化インジウムと酸化スズからなるITО膜、酸化インジウムなどの透明導電膜を用いる。導電膜10はスパッタリング法などで形成する。また、導電膜10の厚さは、100Å〜10μmで形成する。100Å以下の場合、必要な導電率が得られない。また、10Å以上の場合、透過率が低下する問題が起きる。さらに、好ましくは、数百〜数千Åの厚さで形成する。なお、ガラス基板にあらかじめITO膜が接合されているものを用いた場合、この工程は不要となる。
この工程において、基板8にソーダガラスを用いて、導電膜10としてITO膜を1000Åの厚さで形成した場合、紫外線の透過率は、基板8及び導電膜10を含めた値で65%であり、表面電気抵抗は13Ω/□である。また、無アルカリガラスを基板8として用いて、導電膜10としてITO膜を1000Åの厚さで形成した場合、紫外線の透過率は、基板8及び導電膜10を含めた値で75%であり、表面電気抵抗は13Ω/□である。なお、紫外線の透過率及び表面電気抵抗は、基板8及び導電膜10の材質、膜厚や、電鋳を行う面積によって調整することができる。
図3(c)は、導電膜の基板に接する面と反対の面に金属膜を形成する金属膜形成工程を示す図である。金属膜11としては、例えばクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、シリコン、タングステン、モリブデン、またはこれらの金属のいずれかを含む合金などを用いることができる。また、金属膜は、スパッタリング法などで形成する。また、金属膜の厚さは約100Å〜1μm程度形成する。
図3(d)は、金属膜の一部を除去する工程を示す。この工程では、まず、金属膜11の導電膜に接する面と反対の面の一部に第2のフォトレジスト層(図示しない)をフォトマスク等を用いて形成する。第2のフォトレジスト層により、例えば、図2(a)に示したカナの形状を複数個並べたレジストパターンを形成する。第2のフォトレジスト層は、ポジタイプで形成する。なお、第2のフォトレジスト層はネガタイプでも形成できる。次に、金属膜11のうち導電膜に接する面と反対の面の露出した部分をエッチングにより除去する。ここでは、例えば、酸系エッチング液により不要部の金属膜11をエッチング除去することにより、金属膜のパターン12を形成する。さらに、第2のフォトレジスト層を除去する。これにより、フォトマスクを兼ねた基板13を作製する。
図4(a)は、フォトマスクを兼ねた基板13の断面図である。
図4(b)は、導電膜の基板に接する面と反対の面及び金属膜の導電膜に接する面と反対の面に第1のフォトレジスト層を形成する第1のフォトレジスト層形成工程を示す図である。この工程では、例えばエポキシ系の化学増幅型のネガタイプフォトレジストをスピンコートによりコートする。その後、加熱により溶剤成分を蒸発することにより約50μm〜2mmの厚みを有する第1のフォトレジスト層14を形成する。なお、化学増幅型のフォトレジストを用いない場合、加熱する必要がなくなる。
図4(c)は、前記基板の表面と反対側の表面より紫外線による露光を行う露光工程を示す図である。この工程において、基板8の第1の表面9と反対の第2の表面15より、露光装置により十分平行度がある紫外線光16を照射する。さらに、露光による硬化を増幅させるために、部材全体を加熱することにより、硬化部17と金属膜のパターン12により遮光される未硬化部18を形成する。
図4(d)は、第1のフォトレジスト層を現像して、前記第1のフォトレジスト層に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を示す図である。第1のフォトレジスト層を現像する工程では、露光と加熱により硬化部17と未硬化部18が形成された基板13を現像液にて現像を行うことにより、未硬化部18を除去し、電鋳型20を作製することができる。
このようにして作製される電鋳型20の硬化部17の表面は、第1のフォトレジスト層14のコート時に生じる膜厚分布により若干凹凸を有しているものであるが、通常のフォトマスクを使用した場合に生じるこの凹凸により形成されるフォトマスクとフォトレジストとの間の間隙による露光光の屈折、散乱、回折といった光の直進性を失わせる現象が小さいため、非常に解像度が高いのと同時に貫通孔19の垂直性も極めて良くなる。
さらに、第1のフォトレジスト層14を通過した紫外線光16は、反射等による戻りが無いため、通常用いられる金属表面を有する基板で生じる反射によるフォトレジスト層への影響が無いので寸法への影響がないと同時に露光量の計算も容易に行える。
図5は、このようにして作製した電鋳型20を用いてニッケル電鋳を行い、カナ7を作製した示した図である。
まず、図5(a)に示すように、電鋳型20の貫通孔に硬化部17を超える程度にニッケル電鋳物21を形成する。図5(b)に示すように、電鋳表面の研削と研磨を行うことにより、厚み約50μm〜2mmで、十分な平坦度を有する電鋳体22を形成する。次いで、図5(c)に示すように、硬化部17を除去し、さらに、金属膜のパターン12と電鋳体22の界面で金属膜のパターン12を構成する金属膜の表面に形成された酸化層による密着力の低下を利用することにより引き剥がし、カナ7を得る。
このようにして作製されたカナ7は、断面方向における垂直度は非常に高いものであり、腕時計ムーブ部品として十分使用できるものである。
本発明に係る第2の実施形態について、図6から図8を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の工程を行う部分については、その詳細な説明を省略する。
図6(a)は、紫外線を透過する基板23を示す図である。
図6(b)は、紫外線を透過する基板23の第1の表面24に導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜25を形成する導電膜形成工程を示す図である。
図6(c)は、導電膜25の基板に接する面と反対の面の一部に第2のフォトレジスト層26を形成する工程を示す図である。第2のフォトレジスト層には、ネガタイプ又はポジタイプのフォトレジストを用い図2に示したカナ形状を複数個並べたレジストパターンを形成する。
図6(d)は、導電膜25の基板に接する面と反対の面のうち露出した面に電気めっき法により前記金属膜27を形成する工程を示す図である。この工程では、第2のフォトレジスト層26の貫通孔に電気めっき法により約100Å〜1μm程度の膜厚を有する金属膜27を形成する。
図6(e)は、第2のフォトレジスト層を除去する工程を示す図である。図6(e)の工程では、第2のフォトレジスト層26を除去することにより、金属膜のパターン28を形成し、フォトマスクを兼ねた基板29を作製する。
図7(a)は、フォトマスクを兼ねた基板29の断面図である。
図7(b)は、導電膜の基板に接する面と反対の面及び金属膜の導電膜に接する面と反対の面に第1のフォトレジスト層を形成する第1のフォトレジスト層形成工程を示す図である。この工程では、例えばエポキシ系の化学増幅型のネガタイプフォトレジストをスピンコートによりコートする。その後、加熱により溶剤成分を蒸発することにより約50μm〜2mmの厚みを有する第1のフォトレジスト層30を形成する。なお、化学増幅型のフォトレジストを用いない場合、加熱する必要がなくなる。
図4(c)は、前記基板の表面と反対側の表面より紫外線による露光を行う露光工程を示す図である。この工程において、基板23の第1の表面24と反対の第2の表面31より、露光装置により十分平行度がある紫外線光32を照射する。さらに、露光による硬化を増幅させるために、部材全体を加熱することにより、硬化部33と金属膜のパターン34により遮光される未硬化部18を形成する。
図7(d)は、第1のフォトレジスト層を現像して、前記第1のフォトレジスト層に貫通孔を形成する貫通孔形成工程を示す図である。第1のフォトレジスト層を現像する工程では、露光と加熱により硬化部33と未硬化部34が形成された基板29を現像液にて現像を行うことにより、未硬化部34を除去し、電鋳型36を作製することができる。
このようにして作製される電鋳型36の硬化部33の表面は、第1のフォトレジスト層30のコート時に生じる膜厚分布により若干凹凸を有しているものであるが、通常のフォトマスクを使用した場合に生じるこの凹凸により形成されるフォトマスクとフォトレジストとの間の間隙による露光光の屈折、散乱、回折といった光の直進性を失わせる現象が小さいため、非常に解像度が高いのと同時に貫通孔35の垂直性も極めて良くなる。
さらに、第1のフォトレジスト層30を通過した紫外線光32は、反射等による戻りが無いため、通常用いられる金属表面を有する基板で生じる反射による第1のフォトレジスト層への影響が無いので寸法への影響がないと同時に露光量の計算も容易に行える。
図8は、このようにして作製した電鋳型36を用いてニッケル電鋳を行い、カナ7を作製した示した図である。
まず、図8(a)に示すように電鋳型36の貫通孔に硬化部33を超える程度にニッケル電鋳物37を形成する。次に、図8(b)に示すように、電鋳表面の研削と研磨を行う。これにより、厚み約50μm〜2mmで、十分な平坦度を有する電鋳体38を形成する。次いで、硬化部33を除去する。さらに、金属膜のパターン28と電鋳体38の界面で電鋳体38を金属膜のパターン28を構成するニッケル層表面に形成された酸化層による密着力の低下を利用することにより引き剥がし、カナ7を得る。
このようにして作製されたカナ7は、断面方向における垂直度は非常に高いものであり、腕時計ムーブ部品として十分使用できるものである。
なお、本実施形態では、第2のフォトレジスト層としてポジタイプのフォトレジストを用い、電気めっき法により金属層を形成後、剥離したが、必ずしもその必要性はない。例えば、第2のフォトレジスト層として、エポキシ系の化学増幅型のネガタイプフォトレジストを用い、所望とする貫通孔を有する第2のフォトレジスト層を形成し、貫通孔に電気めっき法により金属層パターンを形成し、この第2のフォトレジスト層を剥離、除去せずに第1のフォトレジスト層をコートする工程を行っても良い。この場合、第2のフォトレジスト層は、フォトマスクとなる金属層パターンを形成することとなるので、十分な解像度を持たせる必要があるため、出来るだけ薄いことが望ましい。
さらに、第1のフォトレジスト層として、ネガタイプを使用したが、ポジタイプのフォトレジストを用いることも可能である。この場合、ポジネガの関係上、電鋳を行うための貫通孔が導電膜となり、フォトレジストに覆われ導通部となる部分が金属膜となる。すなわち、紫外線に対して透過性を有する基板と、基板の表面に導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜と、導電膜の基板に接する面と反対の面の一部に形成された金属膜と、金属膜の導電膜に接する面と反対の面に形成された第1のフォトレジスト層と、第1のフォトレジスト層を貫通し、導電膜の基板に接する面と反対の面に形成された貫通孔と、を備える電鋳型を提供することができる。
以上、本発明による電鋳型およびその製造方法によれば、微細性に優れ、且つ、垂直性が高い電鋳型を提供することが出来ので、この電鋳型を使用することにより、微細性に優れ、且つ、垂直性が高い電鋳部品を製造することが出来る。
1、20、36 電鋳型
2、8、23 基板
3、10、25 導電膜
4、27 金属膜
5 第1のフォトレジスト層
6、19、35 貫通孔
7 カナ
9、24 基板の第1の表面
11 金属膜
12 金属膜のパターン
13、29 フォトマスクを兼ねた基板
14、30 第1のフォトレジスト層
15、31 基板の第2の表面
16、32 紫外線光
17、33 第1のフォトレジスト層の硬化部
18、34 第1のフォトレジスト層の未硬化部
21、37 電鋳物
22、38 電鋳体
26 第2のフォトレジスト層
27 金属膜
28 金属膜のパターン

Claims (11)

  1. 紫外線に対して透過性を有する基板と、
    前記基板の表面に形成され、導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜と、
    前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面の一部に形成された金属膜と、
    前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面又は前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面のうち一方の面に形成されるとともに、他方の面に貫通孔を有する第1のフォトレジスト層と、
    を備えることを特徴とする電鋳型。
  2. 前記第1のフォトレジスト層は、前記基板の表面に対して垂直な前記貫通孔側の側面を有することを特徴とする請求項1に記載の電鋳型。
  3. 前記第1のフォトレジスト層はネガタイプのフォトレジストで形成され、かつ前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に形成され、前記貫通孔は前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする請求項2に記載の電鋳型。
  4. 前記第1のフォトレジスト層はポジタイプのフォトレジストで形成され、かつ前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に形成され、前記貫通孔は前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする請求項2に記載の電鋳型。
  5. 前記金属膜が、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、シリコン、タングステン、モリブデン、又はこれらの金属を含む合金のいずれかで形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電鋳型。
  6. 前記導電膜が酸化インジウムを含む透明導電膜であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電鋳型。
  7. 紫外線を透過する基板の表面に導電性を有し、かつ紫外線に対して透過性を有する導電膜を形成する導電膜形成工程と、
    前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面の一部に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
    前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面及び前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に第1のフォトレジスト層を形成する第1のフォトレジスト層形成工程と、
    前記基板の表面と反対の面より紫外線による露光を行う露光工程と、
    前記第1のフォトレジスト層を現像して、前記第1のフォトレジスト層に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
    を備えることを特徴とする電鋳型の製造方法。
  8. 前記第1のフォトレジスト形成工程において、前記第1のフォトレジスト層がネガタイプのフォトレジストで形成され、前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔が前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする請求項7に記載の電鋳型の製造方法。
  9. 前記第1のフォトレジスト形成工程において、前記第1のフォトレジスト層がポジタイプのフォトレジストで形成され、前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔が前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に形成されることを特徴とする請求項7に記載の電鋳型の製造方法。
  10. 前記金属膜形成工程は、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面に前記金属膜を形成する工程と、前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面の一部に第2のフォトレジスト層を形成する工程と、前記金属膜の前記導電膜に接する面と反対の面のうち露出した部分をエッチングにより除去する工程と、前記第2のフォトレジスト層を除去する工程と、を備えることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の電鋳型の製造方法。
  11. 前記金属膜形成工程は、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面の一部に前記第2のフォトレジスト層を形成する工程と、前記導電膜の前記基板に接する面と反対の面のうち露出した面に電気めっき法により前記金属膜を形成する工程と、前記第2のフォトレジスト層を除去する工程と、を備えることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の電鋳型の製造方法。
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