JP2011195765A - 導電性塗料および導電性成形物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、バインダ樹脂と、エポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素含有のエポキシ化合物と、溶剤とを含むことを特徴とする導電性塗料。
【選択図】なし
Description
帯電防止剤としてπ共役系導電性高分子を用いる場合には、π共役系導電性高分子およびバインダ樹脂を含む塗料を樹脂成形品に塗布することにより、帯電防止層を形成する方法が採られる。塗料に含まれるバインダ樹脂としては、π共役系導電性高分子との相溶性、透明性の点から、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂等が使用されている(特許文献1,2参照)。
また、特許文献1,2に記載の導電性塗料を樹脂フィルムに塗工した後に熱成形を施すと、導電性塗膜が汚染されて白濁する上に、金型にバインダ樹脂が移行し、剥離して導電性塗膜が欠損すると共に金型を汚染するという問題を有していた。特に、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂等の軟化点の低い熱可塑性樹脂をバインダ樹脂に用いた場合には、バインダ樹脂が金型に付着しやすかった。
また、特許文献5,6には、バインダ樹脂と架橋剤を併用した塗料が開示されている。架橋剤により架橋されることによりバインダ樹脂の金型への付着は防止できるものの、塗料の保存安定性が低く、さらに未反応の架橋剤により塗膜が汚染されて白濁することがあった。
特許文献7には、ポリテトラフルオロエチレンを用いて防汚性を付与した塗料が提案されている。しかしながら、ポリテトラフルオロエチレンは、ポリエステルやアクリル樹脂との相溶性が低いため、樹脂固形分に対して数%程度しか添加することができず、充分な防汚性を付与することができなかった。また、添加量を少なくしても、π共役系導電性高分子との相溶性が低く、グラビアコーター等で長時間塗工すると、ポリテトラフルオロエチレンが析出してグラビア版に目詰まりすることがあった。
[2]バインダ樹脂(A)とフッ素含有のエポキシ化合物(B)の質量比[(B)/(A)]の値が0.025〜0.400であることを特徴とする[1]に記載の導電性塗料。
[3]フッ素含有のエポキシ化合物は、エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有する直鎖状化合物であることを特徴とする[1]または[2]に記載の導電性塗料。
[4]バインダ樹脂が、ポリエステル、アクリル樹脂及びポリウレタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の導電性塗料。
[5][1]〜[4]のいずれか記載の導電性塗料を基材に塗布して積層体を得た後、該積層体を熱成形することを特徴とする導電性成形物の製造方法。
本発明の導電性成形物の製造方法によれば、導電性塗膜の導電性低下、汚染および欠損を防止でき、金型の汚染を防止できる。
本発明の導電性塗料は、π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、バインダ樹脂と、フッ素含有のエポキシ化合物と、溶剤とを含む。
π共役系導電性高分子としては、主鎖がπ共役系で構成されている有機高分子であれば特に制限されず、例えば、ポリピロール類、ポリチオフェン類、ポリアセチレン類、ポリフェニレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリアニリン類、ポリアセン類、ポリチオフェンビニレン類、及びこれらの共重合体等が挙げられる。空気中での安定性の点からは、ポリピロール類、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましい。極性溶剤との相溶性及び透明性の面から、ポリチオフェン系がより好ましい。
π共役系導電性高分子の中でも、導電性、透明性、耐熱性に優れることから、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
ポリアニオンとしては、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステルであって、アニオン基を有する構成単位のみからなるポリマー、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるポリマーが挙げられる。
なお、ポリアニオンはπ共役系導電性高分子に対するドーパントとしても機能する。
ポリアルケニレンとは、主鎖に不飽和二重結合(ビニル基)が1個含まれる構成単位からなる高分子である。
ポリイミドとしては、ピロメリット酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−[4,4’−ジ(ジカルボキシフェニルオキシ)フェニル]プロパン二無水物等の酸無水物と、オキシジアミン、パラフェニレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン等のジアミンとからのポリイミドを例示できる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10等を例示できる。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を例示できる。
ヒドロキシ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したヒドロキシ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。ヒドロキシ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
アミノ基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したアミノ基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。アミノ基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
フェノール基としては、ポリアニオンの主鎖に直接又は他の官能基を介在して結合したフェノール基が挙げられ、他の官能基としては、炭素数1〜7のアルキル基、炭素数2〜7のアルケニル基、アミド基、イミド基などが挙げられる。フェノール基は、これらの官能基の末端又は中に置換されている。
ポリアルケニレンの具体例としては、プロペニレン、1−メチルプロペニレン、1−ブチルプロペニレン、1−デシルプロペニレン、1−シアノプロペニレン、1−フェニルプロペニレン、1−ヒドロキシプロペニレン、1−ブテニレン、1−メチル−1−ブテニレン、1−エチル−1−ブテニレン、1−オクチル−1−ブテニレン、1−ペンタデシル−1−ブテニレン、2−メチル−1−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、2−ブチル−1−ブテニレン、2−ヘキシル−1−ブテニレン、2−オクチル−1−ブテニレン、2−デシル−1−ブテニレン、2−ドデシル−1−ブテニレン、2−フェニル−1−ブテニレン、2−ブテニレン、1−メチル−2−ブテニレン、1−エチル−2−ブテニレン、1−オクチル−2−ブテニレン、1−ペンタデシル−2−ブテニレン、2−メチル−2−ブテニレン、2−エチル−2−ブテニレン、2−ブチル−2−ブテニレン、2−ヘキシル−2−ブテニレン、2−オクチル−2−ブテニレン、2−デシル−2−ブテニレン、2−ドデシル−2−ブテニレン、2−フェニル−2−ブテニレン、2−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、3−エチル−2−ブテニレン、3−ブチル−2−ブテニレン、3−ヘキシル−2−ブテニレン、3−オクチル−2−ブテニレン、3−デシル−2−ブテニレン、3−ドデシル−2−ブテニレン、3−フェニル−2−ブテニレン、3−プロピレンフェニル−2−ブテニレン、2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−プロピル−2−ペンテニレン、4−ブチル−2−ペンテニレン、4−ヘキシル−2−ペンテニレン、4−シアノ−2−ペンテニレン、3−メチル−2−ペンテニレン、4−エチル−2−ペンテニレン、3−フェニル−2−ペンテニレン、4−ヒドロキシ−2−ペンテニレン、ヘキセニレン等から選ばれる1種以上の構成単位を含む重合体を例示できる。
すなわち、ポリアニオンは、スルホ基及び/又はカルボキシ基を含有する高分子酸である。これらの中でも、π共役系導電性高分子へのドーピング効果の点から、−SO3 −X+、−COO−X+が好ましい。
また、このアニオン基は、隣接して又は一定間隔をあけてポリアニオンの主鎖に配置されていることが好ましい。
フッ素含有エポキシ化合物は、エポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換された化合物である。
フッ素含有エポキシ化合物としては、π共役系導電性高分子との相溶性の点から、脂肪族系の化合物が好ましい。また、分岐した構造よりも直鎖状の構造が好ましい。
直鎖状のフッ素含有エポキシ化合物としては、例えば、下記一般式のものが挙げられる。
Gu−(OCH2)p−{(CF2O)q−(CnF2(n−m))}r−(CH2O)p−Gu
ここで、Guはグリシジル基である。nは1以上の整数であり、優れた成形性を発現させる点では、1〜8であることが好ましい。m,p,qは各々0〜1であり(ただしm<n)、rは1〜3である。
エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有するエポキシ化合物としては、米国のエクスフロー社より、フッ素化トリエチレングリコールジエポキシド(製品名:C6GDEP)、フッ素化テトラエチレングリコールジエポキシド(製品名:C8GDEP)、1H,1H,4H,4H−パーフルオロ−1,4−ブタンジオールジエポキシド(製品名:C4DEP)、1H,1H,5H,5H−パーフルオロ−1,5−ペンタンジオールジエポキシド(製品名:C5DEP)、1H,1H,6H,6H−パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジエポキシド(製品名:C6DEP)、1H,1H,8H,8H−パーフルオロ−1,8−オクタンジオールジエポキシド(製品名:C8DEP)、1H,1H,10H,10H−パーフルオロ−1,10−デカンジオールジエポキシド(製品名:C10DEP)が市販されている。
例えば、製品名C6GDEPは、上記一般式において、m=0、n=1、p=1、q=1、r=2のものであり、C5DEPはm=0、n=3、p=1、q=0、r=0のものである。
また、エーテル結合を有さないフッ素含有エポキシ化合物としては、ダイキン工業(株)より、1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−ヘキサン、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−ブタン、1,2−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−エタンが市販されている。
上記フッ素含有エポキシ化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。さらに、必要に応じて他のエポキシ樹脂、又はアクリル樹脂等の混合物として用いてもよい。
バインダ樹脂としては、π共役系導電性高分子およびポリアニオンと相溶又は混合分散可能であれば熱硬化性樹脂であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド、ポリアミドイミド等のポリイミド;ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド12、ポリアミド11等のポリアミド;ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル等のビニル樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;アラミド樹脂;ポリイミドシリコーン;ポリウレタン;ポリウレア;メラミン樹脂;フェノール樹脂;ポリエーテル;アクリル樹脂及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらバインダ樹脂は、あらかじめ溶剤に溶解されていてもよいし、イソシアネート基、エポキシ基またはアクリル基を有してもよいし、スルホ基やカルボキシ基などの官能基が付与されて水溶液化されていてもよいし、乳化など水に分散されていてもよい。
本発明では、フッ素含有エポキシ化合物とバインダ樹脂に存在する官能基とが架橋することで、得られる導電性塗膜の欠損、バインダ樹脂の剥離による金型汚染を防止できる。
本発明で使用される好ましい溶剤の例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−アミルアルコール、s−アミルアルコール、t−アミルアルコール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−オクタノール、n−オクタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレンカルボナート、プロピレングリコール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン等のケトン類、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、蟻酸イソブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸メチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸メチル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジエチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、フタル酸エチル、フタル酸メチル、フタル酸ブチル、γ―ブチロラクトン、マロン酸エチル、マロン酸メチル等のエステル類などが挙げられる。なかでも、樹脂成分との相溶性の面から、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンが好ましい。
本発明の導電性塗料は、高導電化剤を含有することが好ましい。高導電化剤とは、π共役系導電性高分子またはπ共役系導電性高分子のドーパントと相互作用し、π共役系導電性高分子の導電性を向上させるものである。
高導電化剤としては、例えば、窒素含有芳香族性環式化合物、2個以上のヒドロキシル基を含む化合物、2個以上のカルボキシル基を含む化合物、1個以上のヒドロキシル基及び1個以上のカルボキシル基を含む化合物、スルホ基とカルボキシル基を含む化合物、アミド基を含む化合物、イミド基を含む化合物、ラクタム化合物、グリシジル基を有する化合物等が挙げられる。
高導電化剤の中でも、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、グリコール類が好ましい。
上記フッ素含有エポキシ化合物を含有する導電性塗料によれば、バインダ樹脂の基材に対する密着性および膜強度が高い上に金型剥離性が高い導電性塗膜を形成できる。このような塗料により得た導電性塗膜は、熱成形した際の導電性低下、汚染および欠損を防止できる。
しかも、フッ素含有エポキシ化合物を含んでも保存安定性が損なわれることはない。よって、本発明の導電性塗料は保存安定性にも優れる
本発明の導電性成形物の製造方法は、上記導電性塗料を基材に塗布して積層体を得た後、該積層体を熱成形する方法である。
基材として、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン、アモルファスポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を用いたシートが使用される。
基材の厚みは、0.1〜3mmが好ましい。基材の厚みが0.1mm未満であると、強度が不充分であるため、基材を延伸させた際に破断するおそれがあり、3mmを超えると、基材が軟化しにくくなることがあり、また、二次加工での成形の際の成形性が不充分になることがある。
乾燥する場合には、公知の通風乾燥機、熱風乾燥機、赤外線乾燥機などの乾燥機などが適用される。これらのうち加熱手段を有する乾燥機(熱風乾燥機、赤外線乾燥機など)を用いると、乾燥および加熱を同時に行うことが可能である。
本発明では、塗布後に乾燥しなくても構わない。乾燥せずにそのまま熱成形しても、導電性塗膜の汚染、導電性塗膜の欠損、金型汚染が見られない。そのため、ポリ塩化ビニル等の軟化点の低い基材を用いた場合には、熱乾燥せずに導電性の積層体を製造することができる。
成形温度は基材の融点にもよるが100〜300℃にすることが好ましい。成形温度が100℃以上であれば、目的の形状に容易に成形でき、また、フッ素含有エポキシ化合物が架橋し、300℃以下であれば、熱による劣化を防止できる。
(製造例1)ポリスチレンスルホン酸の調製
1000mlのイオン交換水に206gのスチレンスルホン酸ナトリウムを溶解し、80℃で攪拌しながら、予め10mlの水に溶解した1.14gの過硫酸アンモニウム酸化剤溶液を20分間滴下し、この溶液を2時間攪拌した。
これにより得られたスチレンスルホン酸ナトリウム含有溶液に10質量%に希釈した硫酸を1000mlと10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いてポリスチレンスルホン酸含有溶液の約10000ml溶液を除去し、残液に10000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。上記の限外ろ過操作を3回繰り返した。
さらに、得られたろ液に約10000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約10000ml溶液を除去した。この限外ろ過操作を3回繰り返した。
限外ろ過条件は下記の通りとした(他の例でも同様)。
限外ろ過膜の分画分子量:30K
クロスフロー式
供給液流量:3000ml/分
膜分圧:0.12Pa
得られた溶液中の水を減圧除去して、無色の固形状のポリスチレンスルホン酸を得た。
14.2gの3,4−エチレンジオキシチオフェンと、36.7gの製造例1で得たポリスチレンスルホン酸を2000mlのイオン交換水に溶かした溶液とを20℃で混合した。
これにより得られた混合溶液を20℃に保ち、掻き混ぜながら、200mlのイオン交換水に溶かした29.64gの過硫酸アンモニウムと8.0gの硫酸第二鉄の酸化触媒溶液とをゆっくり添加し、3時間攪拌して反応させた。
得られた反応液に2000mlのイオン交換水を添加し、限外ろ過法を用いて約2000ml溶液を除去した。この操作を3回繰り返した。
そして、上記ろ過処理が行われた処理液に200mlの10質量%に希釈した硫酸と2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去し、これに2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの液を除去した。この操作を3回繰り返した。
さらに、得られた処理液に2000mlのイオン交換水を加え、限外ろ過法を用いて約2000mlの処理液を除去した。この操作を5回繰り返し、約1.2質量%の青色のポリスチレンスルホン酸ドープポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT−PSS)水溶液を得た。
製造例2で得たPEDOT−PSS水溶液70gにメタノール700gとバイロナール1500(東洋紡績製ポリエステル水分散溶液)30gとイミダゾール0.2gとを添加し、次いでエーテル結合を含むフッ素含有エポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP、[化1]参照)を0.3g(バインダ樹脂固形分に対して2.5質量%)、ジメチルスルホキシド(10g)添加した。その後、全量が1000gになるまでメタノールを添加し、攪拌して、導電性塗料を調製した。
実施例1で調製した導電性塗料を、ポリ塩化ビニルシート(信越ポリマー(株)製 商品名:♯5000W、厚み0.2mm、表1では「PVC」と表記する。)の片面に、グラビヤロールA(線数95L/インチ、 深度95μm、格子型)を用い、ダイレクトリバース法により塗布した。その後、50℃乾燥炉(5.0m)、速度5m/分で加熱乾燥して、導電性シートを得た。
実施例1において、フッ素含有エポキシ化合物の添加量を0.60g(バインダ樹脂固形分に対して5質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有エポキシ化合物の添加量を1.2g(バインダ樹脂固形分に対して10質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有エポキシ化合物の添加量を2.4g(バインダ樹脂固形分に対して20質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有エポキシ化合物の添加量を4.8g(バインダ樹脂固形分に対して40質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例3において、フッ素含有エポキシ化合物を、エクスフロー社製、製品名C5DEP、1H,1H,5H,5H−パーフルオロ−1,5−ペンタンジオールジエポキシド、[化2]参照)に変更した以外は、実施例3と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例3において、エーテル結合を有するフッ素含有のエポキシ化合物の代わりに、エーテル結合を有さないフッ素含有のエポキシ化合物(ダイキン工業社製、製品名E−7432、1,6−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)−パーフルオロ−n−ヘキサン、[化3]参照)に変更した以外は、実施例3と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例3において、ポリエステル樹脂バインダをウレタン樹脂(DIC株式会社製、製品名ボンディック1520)に変更した以外は、実施例3と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例3において、ポリエステル樹脂バインダをアクリル系樹脂(日本触媒株式会社製、製品名アクリセット102SJ)に変更した以外は、実施例3と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例3において、ポリ塩化ビニルシートを、アモルファスPETシート(三菱化学(株)製 商品名:ノバクリア SH046、厚み0.5mm、表1では「A−PET」と表記する。)に変更した以外は、実施例3と同様にして導電性シートを作製した。
実施例3において、ポリ塩化ビニルシートを、アクリルシート((株)クラレ製、製品名:コモグラス、厚み0.75mm、表1では「アクリル」と表記する。)に変更した以外は、実施例3と同様にして導電性シートを作製した。
実施例3において、導電性塗料塗布後、乾燥炉により加熱乾燥せず、室温に放置して乾燥した以外は、実施例3と同様にして導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有のエポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有のエポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の代わりに、フッ素系界面活性剤(DIC(株)製、製品名メガファック443)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有のエポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の代わりに、シリコーン系界面活性剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、製品名BYK378)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有のエポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の代わりに、エポキシ含有シランカップリング剤(信越化学(株)製、製品名X−41−1056)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
実施例1において、フッ素含有のエポキシ化合物(エクスフロー社製、製品名C6GDEP)の代わりに、フッ素含有シランカップリング剤(フルオロアルキルシラン(GE東芝シリコーン(株)製、TSL8257)に変更した以外は、実施例1と同様にして導電性塗料を調製した。そして、その導電性塗料を用いて導電性シートを作製した。
各実施例および各比較例で得た導電性塗料80mLを、100mlのガラス製の試料瓶に充填し、40℃にて1週間静置して、塗料の安定性を評価した。1週間静置後の導電性塗料を目視により観察し、全く沈殿の見られないものを「○」、ごくわずかに沈殿が見られるが濾過によって除去することにより実用上許容されるものを「△」、沈殿が多量に見られ、実用上問題のあるものを「×」とした。結果を表1,2に示す。なお、評価が「○」「△」であれば、塗料としての実用性を有する。
導電性シート(375×450mm)を、ホットプレス装置を用い、ステンレス製の加熱成形板により成形した。その際、成形板の表面温度が160℃になるように加熱し、プレス圧力2MPa、プレス時間50分間の条件でプレスし、その後50分間冷却した。
プレス成形後の金型を、メチルエチルケトンを含ませた不織布でふき取り、不織布が全く着色されなかったものを「○」、少しでも着色が見られるものを「×」とした。その結果を表1,2に示す。なお、プレス成形後の金型の汚染評価が、「○」であれば、導電性塗料としての実用性を有する。
また、プレス後の導電性塗膜を目視にて観察して透明性を評価し、曇りや汚れが全く見られないものを「○」、曇りや汚れが少しでも見られるものを「×」とした。その結果を表1,2に示す。なお、プレス成形後の導電性塗膜の透明性評価が、「○」であれば、導電性塗料としての実用性を有する。
プレス成形試験前後の導電性塗膜の表面抵抗値を、三菱化学(株)製(製品名:ハイレスタUP)、UR100プローブを用い、室温25℃、湿度50%雰囲気下にて、10Vの電圧を印加し、10秒後の電流値により求めた。なお、表面抵抗値が109Ω未満であれば、帯電防止性を有するものと判断される。
表1,2には、抵抗値低下度として、log(プレス成形後の抵抗値)−log(プレス成形前の抵抗値)の値を示す。この値が小さい程、成形前後の抵抗値の低下が小さい
また、実施例1〜5の対比より、フッ素含有のエポキシ化合物の添加量が多い程、プレス成形前の抵抗値は上昇するものの、プレス成形後の抵抗値変化は小さくなることがわかった。
実施例6,7の対比より、導電性塗料の安定性は、エーテル結合のないフッ素含有エポキシ化合物ではやや低下するものの、実用上使用できるレベルであった。
実施例3,8,9の対比より、金型汚染防止、導電性塗膜透明性向上、成形前後の抵抗値低下抑制は、バインダ樹脂の種類に依存しないことがわかった。
実施例3,10,11との対比より、金型汚染防止、導電性塗膜透明性向上、成形前後の抵抗値低下抑制は、基材の種類に依存しないことがわかった。
実施例3,12との対比より、導電性塗料塗布後に、加熱乾燥しなくても、金型汚染を防止でき、導電性塗膜の透明性を向上できることがわかった。
フッ素含有エポキシ化合物ではないフッ素化合物を含有する比較例2〜5導電性塗料では、保存安定性が低かった。しかも、フッ素含有エポキシ化合物ではないフッ素化合物を含有する導電性塗料を用いた比較例2〜5では、金型表面に汚れが、導電性塗膜に曇りが見られた。
Claims (5)
- π共役系導電性高分子と、ポリアニオンと、バインダ樹脂と、エポキシ化合物の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されたフッ素含有エポキシ化合物と、溶剤とを含むことを特徴とする導電性塗料。
- バインダ樹脂(A)とフッ素含有エポキシ化合物(B)の質量比[(B)/(A)]の値が0.025〜0.400であることを特徴とする請求項1に記載の導電性塗料。
- フッ素含有エポキシ化合物は、エポキシ基を2つ有すると共にエーテル結合を有する直鎖状化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性塗料。
- バインダ樹脂が、ポリエステル、アクリル樹脂及びポリウレタンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性塗料。
- 請求項1〜4のいずれか記載の導電性塗料を基材に塗布して積層体を得た後、該積層体を熱成形することを特徴とする導電性成形物の製造方法。
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