JP2011195567A - 錠剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】打錠障害が抑制され、主薬の溶出性が良好で、外観不良が抑制された錠剤の提供。
【解決手段】短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下である錠剤。平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下である錠剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、錠剤に関し、より詳細には、形状に特徴を有する錠剤に関する。
錠剤は、医薬品の中で最も多用されている剤形で、大部分は内用で用いられている。錠剤には、2種類以上の薬を層状にした二層錠や三層錠といった多層錠、内核と外層を有する有核錠など、様々な剤形がある。多層錠の製造においては、層間の剥離が起こるという問題が起こりうる。これに対しては、比表面積が大きい乳糖を結合剤として配合する方法(特許文献1:特開平5-163138)、特定の嵩比重を有する結晶セルロースを配合する方法(特許文献2:特開2003-144528)、互いに接する層を形成する粉粒体の平均粒子径を特定の比率にする方法(特許文献3:特開2000-336027)、特定の物性を有する低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを用いる方法(特許文献4:特開2008-280251)などの解決法が提案されている。
錠剤、カプセル剤、顆粒剤などの固形製剤に含まれる主薬がその製剤の周囲の媒液に溶け出す時間を測定することは、溶出試験と呼ばれており、日本薬局方で規定されている試験法の一つである。本試験法は、製剤設計・品質の管理手段として利用されており、例えば、内用固形製剤に溶出規格を設定することにより、医薬品の溶出性に関する品質の確保が図られている。従って、錠剤をはじめとする内用固形製剤の製造・販売にあたっては、溶出の規格値を満たす必要がある。固形製剤の溶出性を改善する方法としては、製剤に含まれる2つの有効成分を製剤中に分離して配合することが提案されている(特許文献5:特表2008-543729)。
また、錠剤にコーティングが施されることがあるが、これは、医薬品の主成分の不快な臭いや味のマスクキング、色の隠蔽、素錠に含まれる主成分の酸化や加水分解による変質の防止、腸溶性や持続性の賦与などを目的としている。錠剤のコーティングの一つとして、酸化チタンを配合したフィルム層によるコーティングがあるが、酸化チタンは非常に硬いため、コーティング中にコーティングパンの内壁と擦れて錠剤が黒変してしまい、商品価値を失うという問題があった。これに対しては、フィルム層にタルクを特定の割合で配合することにより錠剤の黒変を防止するという提案がなされている(特許文献6:特開2000-44464)。
このように、錠剤製造における打錠障害、主薬の溶出性の問題、外観不良といった問題の各々については、解決策の提案がなされているが、これらの3つの問題を同時に解決できる方法は知られていない。
特開平5-163138 特開2003-144528 特開2000-336027 特開2008-280251 特表2008-543729 特開2000-44464
本発明は、打錠障害が抑制され、主薬の溶出性が良好で、外観不良が抑制された錠剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、錠剤の打錠障害抑制、主薬の溶出性改善及び/又は外観不良抑制のための方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、錠剤の短径R2/Cup depth又は平均R2/Cup depthを特定の範囲に制御することにより、錠剤の打錠障害抑制、主薬の溶出性改善及び外観不良抑制に効果があることを見出し、本発明を完成させるに至った。本発明の要旨は以下の通りである。
(1)短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下である錠剤。
(2)長径R2/Cup depthが33.7以上かつ107.9未満である(1)記載の錠剤。
(3)短径R2が7.2mm以上かつ12.52mm未満である(1)又は(2)記載の錠剤。
(4)Cup depthが0.81 mm以上かつ1.39 mm未満である(1)〜(3)のいずれかに記載の錠剤。
(5)長径R2が35mm以上かつ150mm未満である(1)〜(4)のいずれかに記載の錠剤。
(6)バンド厚みが2.78 mm以上かつ3.15 mm未満である(1)〜(5)のいずれかに記載の錠剤。
(7)異型錠である(1)〜(6)のいずれかに記載の錠剤。
(8)平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下である錠剤。
(9)平均R2が8mm以上かつ17.5mm以下である(8)記載の錠剤。
(10)Cup depthが0.63 mm以上かつ1.58 mm以下である(8)又は(9)記載の錠剤。
(11)バンド厚みが2.12 mmを超えかつ3.37 mm以下である(8)〜(10)のいずれかに記載の錠剤。
(12)丸錠である(8)〜(11)のいずれかに記載の錠剤。
(13)多層錠である(1)〜(12)のいずれかに記載の錠剤。
(14)多層錠が第1層と第2層を有する二層錠である(13)記載の錠剤。
(15)多層錠が第1層と第2層の間に中間層を有する三層錠である(13)記載の錠剤。
(16)多層錠が内核と外層を有する有核錠である(13)記載の錠剤。
(17)有核錠が内核と外層の間に中間層を有する(16)記載の錠剤。
(18)多層錠とすることで安定性が改善する有効成分を含有する(13)〜(17)のいずれかに記載の錠剤。
(19)多層錠とすることで溶出性が改善する有効成分を含有する(13)〜(18)のいずれかに記載の錠剤。
(20)アンジオテンシンII受容体拮抗薬とカルシウムチャネルブロッカーが別々の層に配合されている(13)〜(19)のいずれかに記載の錠剤。
(21)アンジオテンシンII受容体拮抗薬がオルメサルタンメドキソミルである(20)記載の錠剤。
(22)カルシウムチャネルブロッカーがアゼルニジピンである(20)又は(21)に記載の錠剤。
(23)中間層が賦形剤を含有する(15)、(17)、(18)、(19)、(20)、(21)又は(22)に記載の錠剤。
(24)賦形剤が、乳糖水和物、結晶セルロース、軽質無水珪酸、ステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される1又は2種以上である(23)記載の錠剤。
(25)コーティングを有する(1)〜(24)のいずれかに記載の錠剤。
(26)コーティングがフィルム層である(25)記載の錠剤。
(27)フィルム層が70μm以下の膜厚である(26)記載の錠剤。
(28)フィルム層が、酸化チタン、タルク、マクロゴール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、酸化鉄からなる群より選択される1又は2種以上の材料を含有する(26)又は(27)記載の錠剤。
(29)高血圧症治療又は予防のための(1)〜(28)のいずれかに記載の錠剤。
(30)(1)〜(29)のいずれかに記載の錠剤を用いることを特徴とする、錠剤の打錠障害抑制、主薬の溶出性改善及び/又は外観不良抑制の方法。
本発明によれば、打錠障害が抑制され、主薬の溶出性が改善され、外観不良が抑制された錠剤を提供することができる。
実施例で用いた錠剤(異型錠)を横から見た図を示す。 実施例1で用いた錠剤の短径R2/Cupdepthと摩損度試験後のキャッピング錠数の関係を示す。 実施例2で用いた錠剤の短径R2/Cupdepthとアゼルニジピン平均溶出率の関係を示す。 実施例3で用いた錠剤の短径R2/Cupdepthと錠剤表面の色差の関係を示す。 実施例で用いた錠剤(丸錠)を横から見た図を示す。 本発明の錠剤(異型錠)の斜視図、正面図、平面図、側面図及び断面図を示す。 本発明の錠剤(丸錠)の斜視図、正面図、平面図、側面図及び断面図を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、「短径」とは、異型錠の場合、短軸方向の直径のことである。
丸錠の場合は、長径及び短径と直径は同じである。図1,5参照。
「長径」とは、異型錠の場合、長軸方向の直径のことである。図1参照。
「短径R1」とは、短径側に配された丸み部分の曲率半径の一部であり、錠剤側面から立ち上がる部分のことである。図1参照。
「短径R2」とは、短径側に配された丸み部分の曲率半径の一部であり、両側の短径R1を結ぶ部分のことである。図1参照。
「長径R1」とは、長径側に配された丸み部分の曲率半径の一部であり、錠剤側面から立ち上がる部分のことである。図1参照。
「長径R2」とは、長径側に配された丸み部分の曲率半径の一部であり、両側の短径R1を結ぶ部分のことである。図1参照。
「平均R2」とは、(「短径R2」+「長径R2」)を2で除した値である。
「Cup depth」とは、錠剤の丸み部分のみの高さを表し、錠剤側面の平らな部分の上端もしくは下端から錠剤天面までの距離のことである。図1,5参照。
「バンド厚み」とは、錠剤側面の平らな部分の高さを表し、錠剤の厚みからCup depthの2倍を差し引くことによっても求められる。図1,5参照。
「短径R2/Cup depth」とは、「短径R2」を「Cup depth」で除した値である。
「長径R2/Cup depth」とは、「長径R2」を「Cup depth」で除した値である。
「平均R2/Cup depth」とは、「平均R2」を「Cup depth」で除した値である。
本発明は、短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下である錠剤を提供する。
本発明の錠剤の短径R2/Cup depthは、8.33以上かつ15.97以下であり、好ましくは、8.5以上かつ14.4未満であり、最も好ましくは、12.5である。
本発明の錠剤の長径R2/Cup depthは、33.7以上かつ107.9未満であるとよく、好ましくは、35以上かつ106.6未満であり、最も好ましくは、70である。
本発明の錠剤の長径は、錠剤の形状を有するものであればいずれでもよく、特に長さが限定されるものではないが、12.5 mm以上かつ15 mm以下であるとよく、好ましくは、13 mm以上かつ15 mm以下であり、最も好ましくは、14 mmである。
本発明の錠剤の短径は、錠剤の形状を有するものであればいずれでもよく、特に長さが限定されるものではないが、6 mm以上かつ8.7 mm以下であるとよく、好ましくは、6 mm以上かつ7.3 mmであり、最も好ましくは、6.5 mmである。
本発明の錠剤のCup depthは、0.81 mm以上かつ1.39 mm未満であるとよく、最も好ましくは、1 mmである。
本発明の錠剤の長径R1は、2.4 mm以上かつ7.2 mm未満であるとよく、好ましくは、2.4 mm以上かつ4.14 mm未満であり、最も好ましくは、2.5 mmである。
本発明の錠剤の長径R2は、35mm以上かつ150mm未満であるとよく、好ましくは、35 mm以上かつ86.3 mm未満であり、最も好ましくは、70 mmである。
本発明の錠剤の短径R1は、2.5 mmであると効果的である。
本発明の錠剤の短径R2は、7.2 mm以上かつ12.52 mm未満であるとよく、好ましくは、8.5 mm以上12.52 mm未満であり、最も好ましくは、12.5 mmである。
本発明の錠剤のバンド厚み(丸み部分を除いた高さ)は、2.78 mmを超えかつ3.15 mm未満であるとよく、最も好ましくは、3.14 mmである。
短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下である錠剤は、好適には、異型錠である。
別の態様において、本発明は、平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下である錠剤を提供する。本発明の錠剤の平均R2/Cup depthは、5.369以上かつ27.822以下であり、最も好ましくは、16.344である。
本発明の錠剤の平均R2は、8 mm以上かつ17.5 mm以下であるとよく、好ましくは、10.42 mmを超え17.5 mm以下であり、最も好ましくは、13.5 mmである。
本発明の錠剤の直径は、錠剤の形状を有するものであればいずれでもよく、特に長さが限定されるものではないが、9.5 mmであると効果的である。
本発明の錠剤のCup depthは、0.63 mm以上かつ1.58 mm以下であるとよく、好ましくは、0.63 mm以上かつ1.58 mm未満であり、最も好ましくは、0.83 mmである。
本発明の錠剤のバンド厚みは、2.12 mmを超えかつ3.37 mm以下であるとよく、好ましくは、2.43 mm以上かつ3.37 mm以下であり、最も好ましくは、3.15 mmである。
平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下である錠剤は、好適には、丸錠である。
本発明の錠剤は、いずれの態様であっても、多層錠であるとよい。多層錠としては、第1層と第2層を有する二層錠、第1層と第2層の間に中間層を有する三層錠、内核と外層を有する有核錠、内核と外層の間に中間層を有する有核錠などを例示することができる。
二層錠について、第1層と第2層の重量比は、1:5〜5:1であるとよく、好ましくは、1:3〜3:1であり、より好ましくは、1:1〜2:1である。三層錠について、中間層の重量は、第1層と第2層の重量の合計に対して、1〜950%であるとよく、好ましくは、4〜320%であり、より好ましくは、5〜63%である。
有核錠について、内核と外層の重量比は、1:7〜1:1であるとよく、好ましくは、3:13〜3:8であり、より好ましくは、6:13〜3:4である。中間層を有する有核錠について、中間層の重量は、内核と外層の重量の合計に対して、10〜70%であるとよく、好ましくは、15〜45%であり、より好ましくは、26〜36%である。
本発明の錠剤は、割線を有してもよい。
本発明の錠剤は、刻印を有してもよい。
本発明の錠剤に含有される有効成分は、多層錠とすることで安定性及び/又は溶出性が改善するものであるとよい。
本発明の錠剤は、アンジオテンシンII受容体拮抗薬とカルシウムチャネルブロッカーが別々の層に配合されているものであってもよい。
錠剤一錠中のアンジオテンシンII受容体拮抗薬の含有量は、5 mg-80 mgであるとよく、好ましくは、10 mg-40 mgであり、カルシウムチャネルブロッカーの含有量は、8 mg-32 mgであるとよく、好ましくは、8 mg-16 mgである。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬とカルシウムチャネルブロッカーの含有量の比率は、重量比で、1:50乃至50:1の範囲内であるとよく、好ましくは、1:5乃至5:1であり、最も好ましくは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬//カルシウムチャネルブロッカーを20 mg/16 mg又は10 mg/8 mg含有する錠剤である。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬としては、オルメサルタンメドキソミルを始めとして、種々の薬剤が提案されており、実際に臨床で使用されているので、当業者は本発明の効果を奏する適宜の薬剤を選択することが可能である。そのようなアンジオテンシンII受容体拮抗剤としては、例えば、ロサルタン(好適にはロサルタンカリウム)、カンデサルタンシレキセチル、バルサルタン、テルミサルタン、プラトサルタン、オルメサルタンメドキソミル又はイルベサルタン、アジルサルタン、アジルサルタンメドキソミルであり、好適には、オルメサルタンメドキソミルである。なお、特にオルメサルタンメドキソミルは特許第2082519号公報(米国特許第5,616,599号公報)
等に記載の方法に従い、容易に製造することができる。
カルシウムチャネルブロッカーとしては、アゼルニジピン、ニフェジピン、ニモジピン、ニルバジピン、マニジピン、バルニジピン、ニトレンジピン、ベニジピン、ニカルジピン、レルカニジピン、アムロジピン、ニソルジピン、エホニジピン、シルニジピン、アゼルニジピン、フェロジピン、アラニジピン又はプラニジピンを選択することが可能である。さらに、アゼルニジピンについては酸付加塩を形成することができ、これらの酸付加塩も本発明に包含される。アゼルニジピンの酸付加塩の酸部分は、アゼルニジピンと酸付加塩を形成し得る酸であれば特に限定はなく、そのような酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、沃化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、コハク酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、または、ナフタレンスルホン酸であり得、好適には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又は、ナフタレンスルホン酸であり、より好適には、臭化水素酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、または、ナフタレンスルホン酸であり、さらに好適には、臭化水素酸、メタンスルホン酸、または、p‐トルエンスルホン酸であり、さらにより好適には、臭化水素酸またはメタンスルホン酸であり、最も好適には、臭化水素酸である。
本発明の錠剤は、さらに、薬理学的に許容される賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の添加剤を含んでもよい。
賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール若しくはソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−澱粉若しくはデキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又はプルランのような有機系賦形剤;或いは、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム若しくはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;又は、硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる。
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス若しくはゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;D,L−ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸若しくは珪酸水和物のような珪酸類;又は、上記澱粉誘導体を挙げることができる。
結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、又は、前記賦形剤と同様の化合物を挙げることができる。
崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム若しくは内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドン;又は、カルボキシメチルスターチ若しくはカルボキシメチルスターチナトリウムのような化学修飾されたデンプン・セルロース類を挙げることができる。
乳化剤としては、例えば、ベントナイト若しくはビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム若しくは水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;又は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル若しくはショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤を挙げることができる。
安定剤としては、例えば、メチルパラベン若しくはプロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール若しくはフェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール若しくはクレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;又は、ソルビン酸を挙げることができる。
矯味矯臭剤としては、例えば、サッカリンナトリウム若しくはアスパルテームのような甘味料;クエン酸、リンゴ酸若しくは酒石酸のような酸味料;又は、メントール、レモン若しくはオレンジのような香料を挙げることができる。
希釈剤としては、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、スクロース、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又はこれらの混合物を挙げることができる。
本発明の錠剤の中間層は、賦形剤を含有するとよい。賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール若しくはソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−澱粉若しくはデキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;又はプルランのような有機系賦形剤;或いは、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム若しくはメタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;又は、硫酸カルシウムのような硫酸塩等の無機系賦形剤を挙げることができる。必要に応じて滑沢剤を含有しても良い。 滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス若しくはゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;D,L−ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム若しくはラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸若しくは珪酸水和物のような珪酸類;又は、上記澱粉誘導体を挙げることができる。
また、さらに必要に応じて、適宜の薬理学的に許容される結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の添加剤を含むことができる。結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤は上記の通りである。
本発明の錠剤は、コーティングを有してもよい。コーティングは、フィルム層であるとよく、フィルム層は、70μm以下の膜厚であるとよく、好ましくは、60μm以下の膜厚であり、より好ましくは、50μm以下の膜厚である。フィルム層の材料としては、酸化チタン、タルク、マクロゴール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、酸化鉄などを例示することができる。
コーティングは、例えば、フィルムコーティング装置を用いて行われ、フィルムコーティング基剤としては、例えば、糖衣基剤、水溶性フィルムコーティング基剤、腸溶性フィルムコーティング基剤、徐放性フィルムコーティング基剤などが挙げられる。
糖衣基剤としては、白糖が用いられ、さらに、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、プルラン、などから選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
水溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール−ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール−アクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマー、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリビニルピロリドン、マクロゴールなどの合成高分子;プルランなどの多糖類などが挙げられる。
腸溶性フィルムコーティング基剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースなどのセルロース誘導体;メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーSなどのアクリル酸誘導体;セラックなどの天然物などが挙げられる。
徐放性フィルムコーティング基剤としては、例えば、エチルセルロースなどのセルロース誘導体;アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチル・共重合体乳濁液などのアクリル酸誘導体などが挙げられる。
上記コーティング基剤は、その2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。また、さらに必要に応じて、適宜の薬理学的に許容される可塑剤、賦形剤、滑沢剤、隠蔽剤、着色剤、防腐剤等の添加剤を含むことができる。
本発明の錠剤は、高血圧症治療又は予防のための錠剤として、利用することができる。また、本発明の錠剤は、高血圧症に由来する疾患(例えば、心臓疾患[狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全若しくは心肥大]、腎臓疾患[糖尿病性腎症、糸球体腎炎若しくは腎硬化症]又は脳血管性疾患[脳梗塞若しくは脳出血]など)の治療又は予防のために利用することもできる。
本発明の錠剤は、以下のようにして製造することができる。
本発明における製剤の製造方法としては、Powder Technology and Pharmaceutical Processes (D. Chulia他, Elsevier Science Pub Co (December 1, 1993))のような刊行物に記載されている一般的な方法を用いて製造すればよく、特別な制限は設けない。
本発明の粒子は、製剤技術分野において慣用の方法に従って造粒することにより、製造することができる。ここで、造粒は、湿式造粒法、乾式造粒法あるいは加熱造粒法のいずれの方法によっても行うことができ、具体的には、高速攪拌造粒機、流動造粒乾燥機、押し出し造粒機、ローラーコンパクターなどを用いて行われる。また、造粒の後、必要により乾燥、整粒などの操作を行ってもよい。
本発明の多層錠は、例えば、それ自体公知の方法で、有効成分を含む各層を直接圧縮成形するか、あるいは、有効成分を各層をそれぞれ通常の湿式顆粒化又は乾式顆粒化(圧縮)技法によって製造し、次いで、各層を圧縮成形することにより、製造することができる。アゼルニジピンを含む第1層、オルメサルタンメドキソミルを含む第2層、その間に中間層を有する三層錠を製造する場合、圧縮圧は、1〜40kNが適当であり、5〜35kNが好ましく、10〜30kNがより好ましい。有核錠は、例えば、それ自体公知の方法で内核部となる内核錠を作成し、次いで、有核打錠機を用いて該内核錠を外層部で被覆することにより製造することができる。
本発明の錠剤のコーティングは、例えば、フィルムコーティング装置を用いて行われるが、一般的なコーティング装置を用いて製造すればよく、特別な制限は設けない。
錠剤1錠の質量は、50〜2000mgが適当であり、200〜800mgが好ましく、300〜600mgがより好ましい。
錠剤1錠の表面積は、30〜1000mm2が適当であり、100〜700mm2が好ましく、200〜500mm2がより好ましい。
錠剤1錠の体積は、30〜1000mm3が適当であり、100〜600mm3が好ましく、200〜400mm3がより好ましい。
錠剤の密度は、0.5〜2.5mg/mm3が適当であり、1.0〜1.7mg/mm3が好ましく、1.3〜1.4mg/mm3がより好ましい。
錠剤の硬度は、2〜30kgが適当であり、4〜20kgが好ましく、5〜15kgがより好ましい。
錠剤の摩損度は、0.0〜3.0%が適当であり、0.0〜2.0%が好ましく、0.0〜1.0%がより好ましい。
錠剤の溶出率は、主薬の溶出規格値を満たすものであるとよい。例えば、アゼルニジピンについては、45分後の溶出率が75%以上であるとよい。
本発明の錠剤は、錠剤の打錠障害が抑制され、主薬の溶出性が改善され、外観不良が抑制されている。
また、本発明は、短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下である錠剤又は平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下である錠剤を用いることを特徴とする、錠剤の打錠障害抑制、主薬の溶出性改善及び/又は外観不良抑制の方法を提供する。
短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下である錠剤及び平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下である錠剤は、上述した通りである。
以下に、実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕異型錠の摩損度測定
異型錠の製造
以下の表1に示す成分とそれらの量を用いて、混合顆粒1を作製した。アゼルニジピンとD−マンニトールを各々1:1(重量比)秤量し、対流式ミキサー(ヘンシェルミキサー)を用いて3分間混合後、混合物をインパクトミル(アトマイザー)にて粉砕した。また、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸を対流式ミキサー(ヘンシェルミキサー)を用いて混合した後、この混合物にポリソルベート80を注加し、ポリソルベート80吸着末を得た。得られたアゼルニジピン粉砕物、ポリソルベート80吸着末、D−マンニトール、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸水素ナトリウム、軽質無水ケイ酸を高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)にて混合し、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液(固形分濃度6.5%)を加え高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)にて7.5分間造粒を行った。得られた練合物をスクリーニングミル(コーミル)を用いて製顆し、入風温度90℃の流動層乾燥機(グラット)にて乾燥させた後、スクリーニングミル(コーミル)にて顆粒を整粒し、顆粒1を得た。顆粒1、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウムを表1に示す割合にて秤量し、タンブルミキサー(トートコンテナ)を用いて混合することにより混合顆粒1を得た。
次に、表2に示す処方にて、乳糖(造粒粉末)、結晶セルロース・軽質無水珪酸 スプレードライ品、ステアリン酸マグネシウムを秤量し、V型混合機にて10分間混合することにより混合顆粒2を得た。
次に、以下の表3に示す成分とそれらの量を用いて、混合顆粒3を作製した。オルメサルタンメドキソミル、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、乳糖を高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)を用いて混合した。得られた混合物を高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)を用いて精製水を注加し3分間撹拌し、造粒した。得られた造粒物をスクリーニングミル(コーミル)を用いて製顆し、入風温度90℃の流動層乾燥機(グラット)にて乾燥させた後、インパクトミル(ピンミル)にて整粒し、顆粒3を得た。顆粒3およびステアリン酸マグネシウムを表3に示す割合にて秤量し、V型混合機を用いて混合して混合顆粒3を得た。
次に、混合顆粒1を1層目に260mg、混合顆粒2を2層目に100mg、混合顆粒3を3層目に120mgとなるよう充填調整し、多層錠剤圧縮機にて長径12.5mm、短径8.7mm、Cup depth1.390mmの異型杵、長径12.5mm、短径8.7mm、Cup depth0.970mmの異型杵、長径12.5mm、短径8.7mm、Cup depth0.810mmの異型杵、長径12.5mm、短径8.7mm、Cup depth0.700mmの異型杵、長径13mm、短径6mm、Cup depth0.950mmの異型杵、長径14mm、短径6.5mm、 Cup depth1.000mmの異型杵、長径15mm、短径7.3mm、 Cup depth0.970mmの異型杵を用いて、20kNの圧縮圧で成形打錠し錠剤を得た。用いた杵の順に試料1、試料2、試料3、試料4、試料5、試料6、試料7とする。
得られた錠剤の摩損度試験を実施した。結果を表Aに示す。表Aに示す長径R1、長径R2、短径R1、短径R2、Cup depthとは図1に示すものを表す。
また、短径R2/Cup depthと摩損度試験後のキャッピング(10錠測定中)錠数の関係を図2に示す。
摩損度の測定方法
摩損度とは、錠剤の衝撃に対する脆さや削れやすさを数量的に表現した物性値である。測定方法は、まず錠剤10錠を精密に量り(この重量をW0とした)、錠剤をガラス筒(全長33.6cm、外径3.5cm、内径2.65cm)に充填する。ガラス筒の全長の中央位置に金属製ふるい(直径4cm、サイズ5.5メッシュ、線径0.5インチ)を有するガラス筒を錠剤摩損度試験機(林間工業)に取り付け、振動幅12.2cmの上下運動を、1分間あたり250往復の条件にて、2分間作動させる。動作終了後,ガラス筒から錠剤を取り出し,ふるいで軽く揺すり,粉および錠剤の破片を除いたのち,ふるい上の錠剤総質量 を精密に量った(この重量をWとした)。また,キャッピングおよび破損を起こした錠剤があれば,その数を明記した。摩損度は、計算式:摩損度(%)=(W0−W)÷W0×100で求めた。
図2より、短径R2/Cup depthが7.2以上であれば、キャッピングが発生しないことがわかる。
〔実施例2〕異型錠の主薬(アゼルニジピン)溶出試験
異型錠の製造
上記実施例1に示した製法にて得られた混合顆粒1を1層目に260mg、混合顆粒2を2層目に100mg、混合顆粒3を3層目に120mgとなるよう充填調整し、多層錠剤圧縮機にて長径14mm、短径6.5mm、Cup depth1.000mmの異型杵、長径12.5mm、短径8.7mm、Cup depth0.810mmの異型杵を用いて、25kNの圧縮圧で成形打錠した。長径14mm、短径6.5mm、Cup depth1.000mmの異型杵にて得られた打錠品にポリビニルアルコール(部分けん化)、酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、黄色三二酸化鉄、精製水からなるコーティング溶液(固形分濃度:20%)をコーティング機(ハイコーター)でコーティングし、錠剤を得た。また、長径12.5mm、短径8.7mm、Cup depth0.810mmの異型杵にて得られた打錠品にポリビニルアルコール(部分けん化)、酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、精製水からなるコーティング溶液(固形分濃度:20%)をコーティング機(ハイコーター)でコーティングし、錠剤を得た。得られた錠剤の溶出性を評価した。溶出性は日本薬局方 一般試験法 溶出試験法第2法(パドル法)に準じて行なった。結果を表Bに示す。長径14mm、短径6.5mm、Cup depth1.000mmの異型杵、長径12.5mm、短径8.7mm、Cup depth0.810mmの異型杵を用いて製造した試料をそれぞれ試料8、試料9とする。
また、短径R2/Cup depthとアゼルニジピン平均溶出率の関係を図3に示す。
溶出試験の方法
本試験法は、錠剤中のアゼルニジピンの溶出率を測定する。溶出試験装置を使用し、試験液として日局溶出試験第1液(pH1.2)900 mLを用い、第十五改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)により、毎分50 rpmで行った。溶出試験開始45分間後の溶出液60 mLを採取し、孔径0.45 μmのフィルターでろ過した。初めのろ液50 mLを除いて次のろ液3 mLを正確に量り、試料溶解液1(アンモニア水(28)のアセトニトリル溶液(1→100)) 3 mLをホールピペットを用いて正確に加えて混和し、試料溶液とした。別に、アゼルニジピン標準物質約30mgを精密に量り、アセトニトリルを加えて溶かし、正確に100 mLとした。更に、この液3 mLを正確に量り、試料溶解液2(日局溶出試験第1液/試料溶解液1 混液(1:1))を加えて200 mLとし、標準溶液とした。また、試料溶液中のアゼルニジピンの定量に用いた高速液体クロマトグラフィー条件を次に示す。
高速液体クロマトグラフィーの試験条件
検出器 :紫外吸光光度計 測定波長:220 nm
カラム :内径4.6 mm、長さ15 cmのステンレス管に5 μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。
カラム温度 :40°C付近の一定温度
移動相 A :0.01 mol / Lリン酸塩緩衝液(pH 4.2)/アセトニトリル混液(4:1)
B :アセトニトリル/0.01 mol / Lリン酸塩緩衝液(pH 4.2)混液(4:1)
グラジエント条件:
流量 :アゼルニジピンの保持時間が約21分になるように調整する(毎分約1.0mL)
測定時間 :25分間
標準溶液及び試料溶液50 μLにつき高速液体クロマトグラフィーにより試験を行い、試料溶液のアゼルニジピンのピーク面積及びアゼルニジピン由来の分解物ピーク面積の和、標準溶液のアゼルニジピンのピーク面積を測定し、そのピーク面積の比から溶出率を求めた。
図3より、アゼルニジピンの溶出率は短径R2/Cup depthが小さいほど高値を示す傾向が認められ、アゼルニジピンの溶出率が70%以上の短径R2/Cup depthは計算上15.97であった。従って、短径R2/Cup depthが15.97以下であれば、アゼルニジピンの溶出率は良好である。
〔実施例3〕異型錠の摩耗試験
異型錠の製造
以下の表4に示す処方にて、乳糖(造粒粉末)、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムを秤量し、タンブルミキサー(V型混合機)にて6分間混合することにより混合顆粒4を得た。混合顆粒4を480mgとなるよう充填調整し、単層錠剤圧縮機にて長径14mm、短径6.5mm(長径R1:2.5mm、長径R2:35mm、短径R1:2.5mm、短径R2:8.5mm)の異形杵、長径14mm、短径6.5mm(長径R1:10mm、長径R2:35mm、短径R1:10mm、短径R2:5mm)の異型杵、長径14mm、短径6.5mm(長径R1:2.5mm、長径R2:70mm、短径R1:2.5mm、短径R2:12.5mm)の異型杵を用いて、予圧4kN、本圧23kNの圧縮圧で成形打錠した。得られた打錠品にポリビニルアルコール(部分けん化)、酸化チタン、タルク、ポリエチレングリコール、精製水からなるコーティング溶液(固形分濃度:20%)をコーティング機でコーティングし、錠剤を得た。長径14mm、短径6.5mm(長径R1:2.5mm、長径R2:35mm、短径R1:2.5mm、短径R2:8.5mm)の異形杵、長径14mm、短径6.5mm(長径R1:10mm、長径R2:35mm、短径R1:10mm、短径R2:5mm)の異型杵、長径14mm、短径6.5mm(長径R1:2.5mm、長径R2:70mm、短径R1:2.5mm、短径R2:12.5mm)の異型杵を用いて製造した試料をそれぞれ試料10、試料11、試料12とする。
得られた錠剤を強制的に金属面と接触させる摩耗試験を行い、黒変の度合いを色差計にて評価した。結果を表Cに示す。また、短径R2/Cup depthと摩耗試験後の色差(黒変)の関係を図4に示す。
摩耗試験
摩耗試験機(スガ摩耗試験機 NUS-ISO3)を用いて、錠剤を台座に固定し上から金属板を約250Nの力で接触させた後、金属板を左右に50回運動させ錠剤表面を摩擦し黒変させた。
色差測定
色差は分光測色計CM-3500d(コニカミノルタ)を用いて測定することができる。分光測色計は、試料から反射された光を分光センサで分光し、各波長の反射率を測定し数値化する機器である。本試験法は、摩耗試験をしていない錠剤と摩耗試験を行い黒変させた錠剤との試料間の差を色差とした。
図4より、錠剤表面の色差(黒変の度合)は短径R2/Cup depthが大きいほど低値を示す傾向が認められ、色差が2.00以下の短径R2/Cup depthは計算上8.33であった。従って、短径R2/Cup depthが8.33以上であれば、色差は小さく、外観上良好である。
図2、図3及び図4より、短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下の場合にキャッピング、アゼルニジピン溶出性及び錠剤の黒変を改善できる杵形状である。最も好適には短径R2/Cup depthが12.5の場合である。
〔実施例4〕丸錠の摩損度測定
丸錠の製造
以下の表5に示す成分とそれらの量を用いて、混合顆粒5を作製した。アゼルニジピンとD−マンニトールを各々1:1(重量比)秤量し、対流式ミキサー(ヘンシェルミキサー)を用いて3分間混合後、混合物をインパクトミル(アトマイザー)にて粉砕した。また、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸を対流式ミキサー(ヘンシェルミキサー)を用いて混合した後、この混合物にポリソルベート80を注加し、ポリソルベート80吸着末を得た。得られたアゼルニジピン粉砕物、ポリソルベート80吸着末、D−マンニトール、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、炭酸水素ナトリウム、軽質無水ケイ酸を高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)にて混合し、ヒドロキシプロピルセルロースの水溶液(固形分濃度6.5%)を加え高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)にて7.5分間造粒を行った。得られた練合物をスクリーニングミル(コーミル)を用いて製顆し、入風温度90℃の流動層乾燥機(グラット)にて乾燥させた後、スクリーニングミル(コーミル)にて顆粒を整粒し、顆粒5を得た。顆粒5、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウムを表5に示す割合にて秤量し、タンブルミキサー(トートコンテナ)を用いて混合することにより混合顆粒5を得た。
次に、以下の表6に示す成分とそれらの量を用いて、混合顆粒6を作製した。オルメサルタンメドキソミル、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、乳糖を高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)を用いて混合した。得られた混合物を高速撹拌造粒機(バーチカルグラニュレーター)を用いて精製水を注加し3分間撹拌し、造粒した。得られた造粒物をスクリーニングミル(コーミル)を用いて製顆し、入風温度90℃の流動層乾燥機(グラット)にて乾燥させた後、インパクトミル(ピンミル)にて整粒し、顆粒6を得た。顆粒6およびステアリン酸マグネシウムを表6に示す割合にて秤量し、V型混合機を用いて混合して混合顆粒6を得た。
次に、混合顆粒5を1層目に160mg、混合顆粒2を2層目に100mg、混合顆粒6を3層目に120mgとなるよう充填調整し、多層錠剤圧縮機にて直径9.5mm、2重R、Cup depth1.578mmの丸型杵、直径9.5mm、単R8.0mm、Cup depth1.490mmの丸型杵、直径9.5mm、単R13.5mm、Cup depth0.826mmの丸型杵、直径9.5mm、単R17.5mm、Cup depth0.629mmの丸型杵を用いて、20kNの圧縮圧で成形打錠し錠剤を得た。得られた錠剤の摩損度試験を実施した。結果を表Dに示す。直径9.5mm、2重R、Cup depth1.578mmの丸型杵、直径9.5mm、単R8.0mm、Cup depth1.490mmの丸型杵、直径9.5mm、単R13.5mm、Cup depth0.826mmの丸型杵、直径9.5mm、単R17.5mm、Cup depth0.629mmの丸型杵を用いて製した製剤をそれぞれ、試料13、試料14、試料15、試料16とする。
また、杵形状に関する情報R1、R2およびCup depthを図5に示す。なお、直径9.5mm、単R8.0mm、Cup depth1.490mmの丸型杵、直径9.5mm、単R13.5mm、Cup depth0.826mmの丸型杵、直径9.5mm、単R17.5mm、Cup depth0.629mmの丸型杵は、単Rのため、R2として示す。
〔実施例5〕丸錠の主薬(アゼルニジピン)溶出試験
丸錠の製造
実施例4に示した製法にて得られた混合顆粒5を1層目に160mg、混合顆粒2を2層目に100mg、混合顆粒6を3層目に120mgとなるよう充填調整し、多層錠剤圧縮機にて直径9.5mm、2重R、Cup depth1.578mmの丸型杵、直径9.5mm、単R8.0mm、Cup depth1.490mmの丸型杵、直径9.5mm、単R13.5mm、Cup depth0.826mmの丸型杵、直径9.5mm、単R17.5mm、Cup depth0.629mmの丸型杵を用いて、15kNの圧縮圧で成形打錠し錠剤を得た。それぞれ、試料17、試料18、試料19、試料20とする。
得られた錠剤のアゼルニジピン溶出性を評価した。結果を表Eに示す。
溶出試験の方法
本試験法は、錠剤中のアゼルニジピンの溶出率を測定する。溶出試験装置を使用し、試験液として日局溶出試験第1液(pH1.2)900
mLを用い、第十五改正日本薬局方溶出試験法第2法(パドル法)により、毎分50 rpmで行った。溶出試験開始45分間後の溶出液60 mLを採取し、孔径0.45 μmのフィルターでろ過した。初めのろ液50 mLを除いて次のろ液3 mLを正確に量り、試料溶解液1(アンモニア水(28)のアセトニトリル溶液(1→100)) 3 mLをホールピペットを用いて正確に加えて混和し、試料溶液とした。別に、アゼルニジピン標準物質約30mgを精密に量り、アセトニトリルを加えて溶かし、正確に100 mLとした。更に、この液3 mLを正確に量り、試料溶解液2(日局溶出試験第1液/試料溶解液1 混液(1:1))を加えて200
mLとし、標準溶液とした。また、試料溶液中のアゼルニジピンの定量に用いた高速液体クロマトグラフィー条件を次に示す。
高速液体クロマトグラフィーの試験条件
検出器 :紫外吸光光度計 測定波長:220 nm
カラム :内径4.6 mm、長さ15 cmのステンレス管に5 μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんする。
カラム温度 :40°C付近の一定温度
移動相 A :0.01 mol / Lリン酸塩緩衝液(pH 4.2)/アセトニトリル混液(4:1)
B :アセトニトリル/0.01 mol / Lリン酸塩緩衝液(pH 4.2)混液(4:1)
グラジエント条件:
流 量 :アゼルニジピンの保持時間が約21分になるように調整する(毎分約1.0mL)
測定時間 :25分間
標準溶液及び試料溶液50 μLにつき高速液体クロマトグラフィーにより試験を行い、試料溶液のアゼルニジピンのピーク面積及びアゼルニジピン由来の分解物ピーク面積の和、標準溶液のアゼルニジピンのピーク面積を測定し、そのピーク面積の比から溶出率を求めた。
平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下の場合にキャッピング及びアゼルニジピン溶出性を改善できる杵形状である。最も好適には平均R2/Cup depthが16.344の場合である。
本発明の錠剤(異型錠)の斜視図、正面図、平面図、側面図及び断面図を図6に示す。
本発明の錠剤(丸錠)の斜視図、正面図、平面図、側面図及び断面図を図7に示す。
本発明によれば、打錠障害が抑制され、主薬の溶出性が良好で、外観不良が抑制された錠剤が得られる。

Claims (30)

  1. 短径R2/Cup depthが8.33以上かつ15.97以下である錠剤。
  2. 長径R2/Cup depthが33.7以上かつ107.9未満である請求項1記載の錠剤。
  3. 短径R2が7.2mm以上かつ12.52mm未満である請求項1又は2記載の錠剤。
  4. Cup depthが0.81 mm以上かつ1.39 mm未満である請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤。
  5. 長径R2が35mm以上かつ150mm未満である請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤。
  6. バンド厚みが2.78 mm以上かつ3.15 mm未満である請求項1〜5のいずれかに記載の錠剤。
  7. 異型錠である請求項1〜6のいずれかに記載の錠剤。
  8. 平均R2/Cup depthが5.369以上かつ27.822以下である錠剤。
  9. 平均R2が8mm以上かつ17.5mm以下である請求項8記載の錠剤。
  10. Cup depthが0.63 mm以上かつ1.58 mm以下である請求項8又は9記載の錠剤。
  11. バンド厚みが2.12 mmを超えかつ3.37
    mm以下である請求項8〜10のいずれかに記載の錠剤。
  12. 丸錠である請求項8〜11のいずれかに記載の錠剤。
  13. 多層錠である請求項1〜12のいずれかに記載の錠剤。
  14. 多層錠が第1層と第2層を有する二層錠である請求項13記載の錠剤。
  15. 多層錠が第1層と第2層の間に中間層を有する三層錠である請求項13記載の錠剤。
  16. 多層錠が内核と外層を有する有核錠である請求項13記載の錠剤。
  17. 有核錠が内核と外層の間に中間層を有する請求項16記載の錠剤。
  18. 多層錠とすることで安定性が改善する有効成分を含有する請求項13〜17のいずれかに記載の錠剤。
  19. 多層錠とすることで溶出性が改善する有効成分を含有する請求項13〜18のいずれかに記載の錠剤。
  20. アンジオテンシンII受容体拮抗薬とカルシウムチャネルブロッカーが別々の層に配合されている請求項13〜19のいずれかに記載の錠剤。
  21. アンジオテンシンII受容体拮抗薬がオルメサルタンメドキソミルである請求項20記載の錠剤。
  22. カルシウムチャネルブロッカーがアゼルニジピンである請求項20又は21に記載の錠剤。
  23. 中間層が賦形剤を含有する請求項15、17、18、19、20、21又は22に記載の錠剤。
  24. 賦形剤が、乳糖水和物、結晶セルロース、軽質無水珪酸、ステアリン酸マグネシウムからなる群より選択される1又は2種以上である請求項23記載の錠剤。
  25. コーティングを有する請求項1〜24のいずれかに記載の錠剤。
  26. コーティングがフィルム層である請求項25記載の錠剤。
  27. フィルム層が70μm以下の膜厚である請求項26記載の錠剤。
  28. フィルム層が、酸化チタン、タルク、マクロゴール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、酸化鉄からなる群より選択される1又は2種以上の材料を含有する請求項26又は27記載の錠剤。
  29. 高血圧症治療又は予防のための請求項1〜28のいずれかに記載の錠剤。
  30. 請求項1〜29のいずれかに記載の錠剤を用いることを特徴とする、錠剤の打錠障害抑制、主薬の溶出性改善及び/又は外観不良抑制の方法。
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