JP2011190166A - 薄片化黒鉛化合物の製造方法及び薄片化黒鉛化合物 - Google Patents

薄片化黒鉛化合物の製造方法及び薄片化黒鉛化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】 本発明は、薄片化黒鉛化合物を容易に製造することができる薄片化黒鉛化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、黒鉛化合物を高圧流体に接触させた後、上記高圧流体に加わっている圧力を減圧することにより、上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とし、好ましくは、流体中に黒鉛化合物を存在させて混合体を作製し、この混合体中の流体を高圧下にて加熱して高圧流体とすると共に上記黒鉛化合物を上記高圧流体に接触させた後、上記高圧流体に加わっている圧力を減圧し、上記黒鉛化合物を薄片化することによって、黒鉛化合物の層面同士を円滑に剥離して薄片化黒鉛化合物を効率良く製造することができる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、薄片化黒鉛化合物の製造方法及び薄片化黒鉛化合物に関する。
近年、炭素骨格を有し且つ形状異方性の高い物質として、黒鉛をその層面間で剥離し、層面(グラフェン)の重なりが数十層以下になるまで薄片化した薄片化黒鉛化合物が注目されており、薄片化黒鉛化合物は非常に大きな表面積を有するため、樹脂などと複合化すると、少量の薄片化黒鉛化合物の添加で各種機能が発現すると期待されている。
上記薄片化黒鉛化合物の製造方法としては、例えば、特許文献1に、硫酸・硝酸及び過マンガン酸カリウムを用いて酸化させた黒鉛層間化合物を精製し、遠心分離した後、上澄みを除去することによって薄片化酸化黒鉛が得られることが提案されている。
又、特許文献2には、硫酸、硝酸、塩素酸などを用いて酸化させた黒鉛層間化合物を2000℃/分の急速加熱により剥離し、剥離された酸化黒鉛を得ることが提案されている。そして、加熱時に不活性雰囲気下におくことにより、酸化黒鉛が部分的に還元されることが記載されている。
しかしながら、上記製造方法では、薄片化黒鉛化合物を得るために黒鉛層間化合物を酸化させる必要があり、薄片化酸化黒鉛の製造に時間を要するという問題点を有している。又、黒鉛層間化合物を酸化させた上で黒鉛層間化合物の剥離を行っていることから、黒鉛の層面の酸化が不充分な部分においては、黒鉛の層面間への化合物の挿入が不充分になるという問題があり、黒鉛層間化合物の酸化状態が、得られる薄片化酸化黒鉛の形状に影響を及ぼすという問題点を有している。
特開2002−53313号公報 特表2009−511415号公報
本発明は、薄片化黒鉛化合物を容易に製造することができる薄片化黒鉛化合物の製造方法及びこの製造方法によって製造された薄片化黒鉛化合物を提供する。
本発明の薄片化黒鉛化合物の製造方法は、黒鉛化合物を高圧流体に接触させた後、上記高圧流体に加わっている圧力を減圧することにより、上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とする。
本発明において用いられる黒鉛化合物としては、黒鉛、黒鉛層間化合物、及び膨張黒鉛の何れであってもよい。なお、黒鉛に官能基が化学的に結合してしても、或いは、黒鉛に官能基が弱い相互作用により疑似的に結合していてもよい。
黒鉛としては、粒子全体で単一の多層構造を有する黒鉛が好ましく、例えば、天然黒鉛、キッシュ黒鉛、高配向性熱分解黒鉛などが挙げられる。天然黒鉛とキッシュ黒鉛は、各層面(基本層)が略単一の方位を有する単独の結晶であり、高配向性熱分解黒鉛の各層面(基本層)は異なる方位を有する多数の小さな結晶の集合体である。
黒鉛層間化合物は、上記黒鉛の層面間にインターカレーターを挿入することによって形成されている。黒鉛層間化合物における黒鉛の層面間に挿入されるインターカレーターとしては、特に限定されず、例えば、酸、酸化剤、金属、金属塩、気体、ハロゲン化合物などが挙げられる。インターカレーターは単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
酸としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸、カルボン酸、クロム酸、リン酸、ヨウ素酸などが挙げられる。酸化剤としては、例えば、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、塩素酸カリウム、臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウムなどが挙げられる。金属としては、例えば、カリウム、ナトリウムなどが挙げられる。金属塩としては、例えば、塩化銅、塩化鉄、塩化銀、塩化アルミニウムなどが挙げられる。気体としては、例えば、水素、塩素などが挙げられる。ハロゲン化合物としては、例えば、塩化ヨウ素、塩化臭素、臭化ヨウ素、フッ化ヨウ素、フッ化臭素、フッ化塩素、フッ素、塩素、塩化アルミニウムなどが挙げられる。
黒鉛の層面間にインターカレーターを挿入して黒鉛層間化合物を製造する方法としては、公知の方法を採用することができ、例えば、黒鉛をインターカレーターの溶液に分散させて、分散液中において黒鉛とインターカレーターとを反応させて黒鉛層間化合物を製造する方法、黒鉛と気体状のインターカレーターとを高圧下にて反応させて黒鉛層間化合物を製造する方法、酸化剤を用いてHummers−Offeman法によって黒鉛層間化合物を製造する方法などが挙げられ、酸化剤を用いてHummers−Offeman法によって黒鉛層間化合物を製造する方法が好ましい。
黒鉛層間化合物は、粉砕などの物理的応力を加えて粉砕し、或いは、超音波を照射するなどして黒鉛層間化合物の層面をある程度剥離させておくことが好ましい。
膨張黒鉛は、上記黒鉛層間化合物を加熱するなどして層面間の結合を切断し、上記黒鉛層間化合物の層面間の間隔を広げることによって得ることができる。
黒鉛化合物において、レーザー光回折法により粒度分布を測定した場合に50%体積平均径として得られる値は、小さいと、黒鉛化合物を薄片化して得られる薄片化黒鉛化合物において異方性が得られないことがあり、或いは、黒鉛化合物を薄片化して得られる薄片化黒鉛化合物を樹脂と混合して複合体とした場合に複合体の強度などが低下することがあり、大きいと、黒鉛化合物が凝集した状態であり、黒鉛化合物の薄片化に長時間を要することがあるので、5〜50μmが好ましい。
なお、レーザー光回折法により粒度分布を測定した場合に50%体積平均径として得られる値が20μm未満である黒鉛化合物は、例えば、SECカーボン社から商品名「SNO−15」などのSNOシリーズにて、中越黒鉛工業所から商品名「CX−3000」にて、伊藤黒鉛社からCNP−シリーズにて、XGSience社から商品名「XGnP−5」にて市販されている。
上記黒鉛化合物を高圧流体に接触させた後、上記高圧流体に加わっている圧力を減圧することにより、黒鉛化合物を薄片化して薄片化黒鉛化合物を製造する。高圧流体、特に、亜臨界流体及び超臨界流体は、黒鉛化合物の層面間に進入しやすい。このような高圧流体を黒鉛化合物の層面間に進入させた上で高圧流体に加わっている圧力を減圧することにより、黒鉛化合物の層面間に進入した高圧流体が膨張して層面間に存在するファンデルワールス結合を切断し、黒鉛化合物の層面同士を離間させて、黒鉛化合物の層面を剥離して薄片化黒鉛化合物を製造することができる。
高圧流体とは圧力が加えられた状態の流体を意味し、高圧流体としては亜臨界流体又は超臨界流体が好ましく、超臨界流体がより好ましい。
なお、超臨界流体とは、臨界点における温度(臨界温度Tc)以上の温度とし且つ臨界点における圧力(臨界圧力Pc)以上の圧力とした状態の流体をいう。亜臨界流体とは、臨界点近傍の、臨界温度Tcよりもやや温度が低い状態又は臨界圧力Pcよりもやや圧力が低い状態の流体をいう。亜臨界流体は、流体の温度Tと臨界温度Tcとの比(T/Tc)が0.9以上で且つ1未満であり、且つ流体の圧力Pを臨界圧力Pc以上とした状態の流体、又は流体の温度を臨界温度Tc以上とし、且つ流体の圧力Pと臨界圧力Pcとの比(P/Pc)が0.9以上で且つ1未満とした状態の流体であるのが好ましい。
流体は流動性を有しておればよく、常温で且つ常圧下にて液体状態の流体又は常温で且つ常圧下にて気体状態の流体の何れであってもよい。
常温で且つ常圧下にて液体状態の流体としては、例えば、水、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びジクロロベンゼンなどの炭化水素類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、及びジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、及び酢酸ブチルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、及びN−メチルピロリドンなどのケトン類、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシド、N,N′−ジメチルホルムアミド、N,N′−ジメチルアセトアミド、及びN−メチル−2−ピロリドンなどが挙げられる。なかでも、水、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールなどのアルコール類などの流体は、これに圧力を加えて高圧流体とした際に、黒鉛化合物の表面状態に関わらず黒鉛化合物の層面間に進入し易く、黒鉛化合物の薄片化を容易に行うことができるため、好ましく用いられる。
常温で且つ常圧下にて気体状態の流体としては、例えば、窒素、亜酸化窒素、二酸化炭素、クロロジフルオロメタン、ジクロロトリフルオロエタンなどのクロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、n−ブタン、プロパン、エタンなどの低分子量アルカン、エチレンなどの低分子量アルケン、ジメチルアミン、エチルアミン、トリエチルアミン、アニリン、及びピリジン、アンモニア、酸素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。このような常温で且つ常圧下にて気体状態の流体は、これを用いて製造した薄片化黒鉛化合物の回収を容易に行うことができる。すなわち、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体に圧力を加えて高圧流体とし、この高圧流体を黒鉛化合物に接触させて薄片化黒鉛化合物を製造した後に、反応系内の圧力を開放することによって上記流体を速やかに気化させて反応系外へ排出できるため、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体によれば反応系内に残っている薄片化黒鉛化合物の回収を容易に行うことが可能となる。
常温で且つ常圧下にて気体状態の流体としては、比較的低温、低圧で超臨界流体とすることができ且つ黒鉛化合物の各層面の表面状態に影響を及ぼさないことから、二酸化炭素、窒素が好ましい。
上記流体は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。二種以上の流体を用いる場合、常温で且つ常圧下にて液体状態の流体と、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体とを用いるのが好ましく、水又はアルコール類と、二酸化炭素とを用いるのがより好ましい。これらの流体を組合せて用いることにより、比較的低温、低圧で超臨界流体とすることができると共に、得られる超臨界流体は黒鉛化合物の表面状態に関わらず黒鉛化合物の層面間に進入し易く、黒鉛化合物の薄片化を容易に行うことができる。
高圧流体に加えられる圧力としては、低いと、高圧流体が黒鉛化合物の層面間に進入し難くなり、黒鉛化合物の薄片化が円滑に進行しない虞れがあるので、0.5MPa以上が好ましく、5MPa以上がより好ましく、臨界点における圧力(臨界圧力Pc)以上の圧力が特に好ましい。また、高圧流体に加えられる圧力は、高くても、黒鉛化合物の薄片化の効果に変化はないので、100MPa以下が好ましく、80MPa以下がより好ましく、50MPa以下が特に好ましい。
黒鉛化合物を高圧流体に接触させる方法としては、特に限定されない。常温で且つ常圧下にて液体状態の流体に圧力を加えることにより高圧流体とする場合には、例えば、常温で且つ常圧下にて液体状態の流体中に黒鉛化合物を供給し分散させて混合体を作製し、この混合体に、好ましくは混合体を加熱しながら、圧力を加えて高圧流体とすると共に、黒鉛化合物を高圧流体に接触させる方法、常温で且つ常圧下にて液体状態の流体を、好ましくは加熱しながら、加圧して高圧流体とした上で、この高圧流体内に黒鉛化合物を供給、分散させて黒鉛化合物を高圧流体に接触させる方法などが挙げられる。高圧流体を加熱する場合、高圧流体を20〜600℃に加熱することが好ましく、30〜400℃に加熱することがより好ましく、臨界点における温度(臨界温度Tc)以上の温度に高圧流体を加熱することが特に好ましい。高圧流体の加熱温度を上記範囲内とすることにより高圧流体を黒鉛化合物の層面間に十分に進入させることができる。
常温で且つ常圧下にて気体状態の流体に圧力を加えることにより高圧流体とする場合には、例えば、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体中に黒鉛化合物を供給して混合体を作製し、この混合体の気体状態の流体に、好ましくは混合体の気体状態の流体を加熱しながら、圧力を加えて高圧流体とすると共に、黒鉛化合物を高圧流体に接触させる方法、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体を、好ましくは加熱しながら、加圧して高圧流体とした上で、この高圧流体内に黒鉛化合物を供給して黒鉛化合物を高圧流体に接触させる方法などが挙げられる。高圧流体を加熱する場合、高圧流体を20〜600℃に加熱することが好ましく、30〜400℃に加熱することがより好ましく、臨界点における温度(臨界温度Tc)以上の温度に高圧流体を加熱することが特に好ましい。高圧流体の加熱温度を上記範囲内とすることにより高圧流体を黒鉛化合物の層面間に十分に進入させることができる。
常温で且つ常圧下にて液体状態の流体と、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体とを含む流体に圧力を加えることにより高圧流体とする場合には、例えば、常温で且つ常圧下にて液体状態の流体と、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体とを含む流体中に黒鉛化合物を供給して混合体を作製し、この混合体の流体に、好ましくは混合体の流体を加熱しながら、圧力を加えて高圧流体とすると共に、黒鉛化合物を高圧流体に接触させる方法、常温で且つ常圧下にて液体状態の流体と、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体とを含む流体を、好ましくは加熱しながら、加圧して高圧流体とした上で、この高圧流体内に黒鉛化合物を供給して黒鉛化合物を高圧流体に接触させる方法などが挙げられる。高圧流体を加熱する場合、高圧流体を20〜600℃に加熱することが好ましく、30〜400℃に加熱することがより好ましく、臨界点における温度(臨界温度Tc)以上の温度に高圧流体を加熱することが特に好ましい。高圧流体の加熱温度を上記範囲内とすることにより高圧流体を黒鉛化合物の層面間に十分に進入させることができる。
高圧流体は常温で且つ常圧下にて気体状態の流体を含んでいるのが好ましい。常温で且つ常圧下にて気体状態の流体を含んでいる高圧流体は、これに加わる圧力を開放した時に気化することにより体積が特に大きくなることから、黒鉛化合物の層面同士を剥離する力に優れ、層面の積層数がより少なく高度に薄片化された薄片化黒鉛化合物を得ることができる。
上述のようにして、黒鉛化合物を高圧流体に接触させる際に、黒鉛化合物若しくは混合体に超音波を照射し、又は、混合体をビーズミルを用いて攪拌してもよい。又、黒鉛化合物を高圧流体に接触させるにあたっては、汎用の装置を用いればよく、ヒーターを備えた密閉可能な耐圧容器を備えた装置、具体的には、オートクレーブなどを用いればよい。
黒鉛化合物を高圧流体に接触させた後は、高圧流体に加わっている圧力を減圧するが、減圧後の流体に加わっている圧力が高過ぎると黒鉛化合物を十分に薄片化ができない虞れがあることから、高圧流体に加わっている圧力の減圧は、減圧後の流体に加わっている圧力が、好ましくは110kPa以下、より好ましくは105kPa以下となるまで行うのが好ましい。
また、高圧流体に加わっている圧力は急速に減圧するのが好ましい。高圧流体に加わっている圧力の減圧速度は、50MPa/秒以上が好ましく、500〜10,000MPa/秒がより好ましい。黒鉛化合物を高圧流体に接触させて高圧流体を黒鉛化合物の層面間に進入させた後に、高圧流体に加わっている圧力を急速に開放することで、黒鉛化合物の層面間に進入している高圧流体による黒鉛化合物の層面同士の剥離力を向上させることができる。
上述のようにして、黒鉛化合物を薄片化して得られた薄片化黒鉛化合物を流体から分離する方法は特に限定されない。流体が常温で且つ常圧下にて液体状態の流体である場合には、例えば、流体を常温で且つ常圧とした上で、遠心分離などによって薄片化黒鉛化合物を流体から分離すればよい。流体が常温で且つ常圧下にて気体状態の流体である場合には、例えば、流体を常温で且つ常圧とした上で、流体中から薄片化黒鉛化合物を取り出せばよい。
図1に、本発明の薄片化黒鉛化合物の製造方法に用いられる製造装置の一例を示す。図1において、1は金属塩溶融浴槽であり、その内部には金属塩2が貯留されている。また、金属塩溶融浴槽1内部には、金属塩の温度を測定するための熱電対3が配設されていると共に、金属塩2を加熱、溶融させるためのヒーター4が配設されており、熱電対3によってヒーター4がオン、オフされ、金属塩2の温度が所望温度に維持されるように構成されている。
5は黒鉛化合物と流体とを投入する製造容器であり、6は製造容器5内で製造された薄片化黒鉛化合物を回収するための回収容器である。製造容器5と回収容器6とは連結管7を介して連結、連通された状態となっている。具体的には、製造容器5には連結管7の一端部が連結、連通されていると共に、連結管7の他端部は回収容器6内に連結、連通されており、製造容器5内と回収容器6内とは連結管7を介して連結、連通されている。
又、連結管7には三方弁7aを介して流体供給管71の一端部が連結、連通されていると共に、流体供給管71の他端部には、流体を貯蔵している流体ボンベ(図示せず)が連結されており、流体ボンベと製造容器5とは連結管7及び流体供給管71とを介して連結、連通した状態となっており、流体ボンベ内の流体はポンプ(図示せず)によって製造容器5内に圧入されるように構成されている。
更に、9は真空ポンプであり、回収容器6と真空ポンプ9とは接続管10を介して連結、連通された状態となっている。具体的には、回収容器6には接続管10の一端部が連結、連通されていると共に、真空ポンプ9には接続管10の他端部が連結、連通されていることによって、回収容器6内と真空ポンプ9とが接続管10を介して連結、連通した状態となっている。そして、接続管10には開閉自在な開閉弁11が介在されており、この開閉弁11を開放することによって回収容器6内と真空ポンプ9内とが連結、連通した状態となる一方、開閉弁11を閉止させることによって回収容器6内と真空ポンプ9内とが遮断されるように構成されている。
上記では、加熱手段として金属塩溶融浴を用いたが、その他にも、例えば、電気ヒーター、バーナー、燃焼ガス、蒸気、熱媒、サンドバス等の加熱手段を用いてもよい。
製造容器5は、製造容器5がその内部に充填した流体を高圧流体、特に亜臨界流体又は超臨界流体とするための圧力及び温度に耐えられるものであればよい。製造容器5を構成している材料としては、例えば、炭素鋼、Ni、Cr、V、Mo等の特殊鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、ハステロイ、チタンなどの金属、又はこれらの金属にガラス、セラミック、カーバイト等をライニング処理したライニング材、上記金属のうち二種類の異なる金属を溶接などにより張り合わせたクラッド鋼が挙げられる。
製造容器5の形状は、特に制限されないが、耐熱性及び耐圧性を考慮すると、槽型又は管型であるのが好ましい。
又、製造容器5内には、黒鉛化合物及び流体の他に、金属やセラミックなどからなる硬質ボールを投入しておくのが好ましい。黒鉛化合物と高圧流体とを接触させる際に製造容器5を振とうさせることによって硬質ボールを製造容器5内において不規則に変位させて高圧流体に乱流を生じさせることができ、高圧流体を黒鉛化合物に効率的に接触させて黒鉛化合物の層面間に進入し易くすることが可能となる。
次に、上記製造装置を用いて薄片化黒鉛化合物を製造する要領について説明する。先ず、製造容器5を開放して製造容器5内に黒鉛化合物及び流体を供給した後、製造容器5を閉止する。
なお、製造容器5内に供給する流体の量及び製造容器5内の圧力は、後工程で製造容器5を所定の温度に加熱した時に、製造容器5内の流体が高圧流体、特に亜臨界流体又は超臨界流体となるように予め調整する。
ここで、製造容器5内に常温で且つ常圧下にて気体状態の流体を供給する場合には、三方弁7aを操作して製造容器5内と流体ボンベ(図示せず)とを連結、連通させた状態とすると共に、製造容器5及び流体ボンベと、回収容器6内とは遮断された状態とする。そして、ポンプを駆動させて流体ボンベ内に充填されている流体を流体供給管71及び連結管7を通じて製造容器5内に供給して、三方弁7aと製造容器5との間の連結管7部分、及び、製造容器5内の空気を流体によって完全に置換した後、三方弁7aを操作して、製造容器5内と流体ボンベと回収容器6とが互いに遮断された状態とする。
又、流体が常温で且つ常圧下にて液体状態である場合には、製造容器5内に直接、流体を供給する。しかる後、三方弁7aを操作して製造容器5内と流体ボンベ(図示せず)とを連結、連通させた状態とすると共に、製造容器5及び流体ボンベと、回収容器6内とは遮断された状態とする。
更に、流体ボンベに代えて、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを充填した不活性ガスボンベ(図示せず)を流体供給管71の他端部に接続し、不活性ガスボンベ内に充填されている不活性ガスを流体供給管71及び連結管7を通じて製造容器5内に供給して、三方弁7aと製造容器5との間の連結管7部分、及び、製造容器5内の空気を不活性ガスによって完全に置換した後、三方弁7aを操作して、製造容器5内と不活性ガスボンベと回収容器6とが互いに遮断された状態とすればよい。
更に、流体として、常温で且つ常圧下にて液体状態である流体と、常温で且つ常圧下にて気体状態である流体とを併用する場合には、製造容器5内に黒鉛化合物と共に直接、常温で且つ常圧下にて液体状態である流体を供給した後、上述と同様の要領にて常温で且つ常圧下にて気体状態である流体を製造容器5内に供給すればよい。
しかる後、製造容器5全体を金属塩溶融浴槽1の溶融状態の金属塩2中に投入し、製造容器5内の流体の温度を上昇させると共に製造容器5内の圧力を上昇させて、製造容器5内の流体を高圧流体、特に亜臨界流体又は超臨界流体とし、高圧流体(亜臨界流体又は超臨界流体)と黒鉛化合物とを所定時間に亘って接触させて、黒鉛化合物の層面間に高圧流体(亜臨界流体又は超臨界流体)を進入させる。製造容器5内で高圧流体と黒鉛化合物とを接触させている間は、黒鉛化合物の層面間に高圧流体(亜臨界流体又は超臨界流体)が進入していると共に、黒鉛化合物の周囲に存在している高圧流体(亜臨界流体又は超臨界流体)によって黒鉛化合物には圧力が加わっている。
一方、接続管10に介在させた開閉弁11を開放した上で真空ポンプを駆動させて回収容器6内を減圧状態とした後に、開閉弁11を閉止して真空ポンプを停止させる。なお、減圧状態とした後の回収容器6の内部圧力は0.1〜1,000kPaが好ましく、1〜100kPaがより好ましい。
次に、三方弁7aを操作して製造容器5と回収容器6とを連通させた状態とすると、製造容器5の内部圧力よりも回収容器6の内部圧力の方が低いため、製造容器5内の高圧流体は連結管7を通じて回収容器6内へ急速に移動し高圧流体に加わっている圧力が急速に減圧されると共に、上記高圧流体の移動に伴って製造容器5内の黒鉛化合物も連結管7を通じて回収容器6内へ流れる。このようにして高圧流体及び黒鉛化合物が回収容器6内へ流入する際、先ず、黒鉛化合物内に進入せずに黒鉛化合物の周囲に存在している高圧流体に加わっている圧力が急速に開放されることで黒鉛化合物に加わっている高圧流体による圧力も急速に開放される。一方、黒鉛化合物の層面間の隙間は極めて狭いことから、黒鉛化合物の周囲に存在している高圧流体に加わっている圧力が開放されても、その圧力の開放が黒鉛化合物の層面間の高圧流体に瞬時に伝達せず、その結果、黒鉛化合物の層面間に存在する高圧流体は、黒鉛化合物の周囲に存在する高圧流体に比して圧力が高くなった状態が発現する。この状態においては、黒鉛化合物の層面間に一旦、進入した高圧流体は、黒鉛化合物の層面間の隙間が狭いこともあって黒鉛化合物の層面間から容易に外部に出ることができず、黒鉛化合物の層面間において膨張し、この高圧流体の膨張によって黒鉛化合物の層面同士が剥離されて薄片化黒鉛化合物が得られる。特に、黒鉛化合物に接触させている高圧流体が亜臨界流体又は超臨界流体である場合、亜臨界流体又は超臨界流体は、黒鉛化合物の層面間に進入し易い一方、上述のように、高圧流体に加えられる圧力が開放されて減圧された状態においては、高圧流体はもはや亜臨界流体又は超臨界流体ではなく気体又は液体状態となっていることから、黒鉛化合物の層面間から外部に出ることが難しくなっており、黒鉛化合物の層面間に進入した高圧流体は黒鉛化合物の層面間において確実に膨張し、その結果、黒鉛化合物の層面同士をより高度に剥離させてなる薄片化黒鉛を得ることができる。しかる後、回収容器6を開放して回収容器6内から薄片化黒鉛化合物を取り出せばよい。
なお、常温で且つ常圧下にて気体状態の流体を用いた場合には、回収容器6内の容積及び圧力を予め調整しておき、回収容器6内に流体が流入した時点で流体が気化して気体状態となるようにして流体の回収を行ってもよいし、或いは、回収容器6内を開放して回収容器6内の圧力を常圧とし、回収容器6内の流体を気化させると共に流体の回収を行ってもよい。
本発明の薄片化黒鉛化合物の製造方法は、上述のように、黒鉛化合物の酸化物を経ることなく黒鉛化合物を薄片化することが可能であるため、原料となる黒鉛化合物と同様の層面状態を有する薄片化黒鉛化合物を得ることができる。特に、薄片化黒鉛化合物を導電性材料に使用したい場合には、黒鉛化合物の薄片化後に薄片化黒鉛化合物の還元などの工程を経なくても炭素原子含有率が高く且つ導電性の高い薄片化黒鉛化合物を高効率で得ることができる。
得られた薄片化黒鉛化合物において、元素分析方法によって得られたC/O比は、50以上が好ましく、100以上がより好ましく、500以上が特に好ましい。そして、薄片化黒鉛化合物において、元素分析方法によって得られたC/O比はCHNO元素分析によって測定することができる。
薄片化黒鉛化合物の炭素元素量は、60原子%以上が好ましく、80原子%以上がより好ましい。薄片化黒鉛化合物の炭素元素量が60原子%未満である薄片化黒鉛化合物は、これを構成している炭素−炭素SP2混成軌道が減少し且つ他の原子の存在によって薄片化黒鉛化合物の平滑性が損なわれ、或いは、薄片化黒鉛化合物を構成している炭素−炭素SP2混成軌道の共役性が損なわれて導電性が低下することがあるからである。
又、得られた薄片化黒鉛化合物において、層面の積層数は、20層以下が好ましく、10層以下がより好ましく、5層以下が特に好ましい。なお、薄片化黒鉛化合物における層面の積層数は、電子顕微鏡を用いて薄片化黒鉛化合物を観察することによって測定することができる。
得られた薄片化黒鉛化合物における層面の面方向に沿った大きさは、小さいと、後述するように、薄片化黒鉛化合物と合成樹脂とを混合して複合体とした場合、複合体において、剛性、バリア性、低い熱膨張性(寸法安定性)などの所望の性能が発現しにくいことがあり、大きいと、複合体の表面に薄片化黒鉛化合物が露出して複合体の外観が低下することがあるので、5〜200μmが好ましい。なお、得られた薄片化黒鉛化合物における層面の面方向に沿った大きさは、SEMやTEMによって観察された値をいう。
又、得られた薄片化黒鉛化合物において、層面の面方向に沿った大きさと厚さとの比(層面の面方向に沿った大きさ/厚さ)は、小さいと、後述するように複合体として用いた場合に薄片化黒鉛化合物の性能を充分に発揮させることができないことがあるので、100以上が好ましく、100〜10000がより好ましい。
更に、薄片化黒鉛化合物は、薄片化する前の黒鉛化合物よりも高い比表面積を有する。具体的には、薄片化黒鉛化合物のBET比表面積は、100m2/g以上が好ましく、200〜2600m2/gがより好ましい。なお、BET比表面積とは、窒素ガスを用いたBET法により測定した物質1g当たりの表面積を意味する。
得られた薄片化黒鉛化合物は合成樹脂と混合することによって複合体として用いることができ、複合体は、バリア性材料、耐熱性材料、耐候性材料、電気伝導性材料、熱伝導性材料、IR反射性材料、寸法安定性に優れた低膨張性材料などとして用いることができる。
合成樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリフッ素化エチレン、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブタジエン、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。なお、合成樹脂は単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、モノマーとしては、上述の合成樹脂を構成しているモノマーが挙げられ、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、エチレン、プロピレン、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。
黒鉛層間化合物を形成するために用いたインターカレーターが酸化剤又は酸である場合、黒鉛層間化合物の各層面は酸化物を形成している。この黒鉛層間化合物を上述の要領で薄片化して得られた薄片化黒鉛化合物はその各層面が酸化しており、各層面は酸化グラフェンと呼ばれる。
この酸化グラフェンからなる薄片化黒鉛化合物を導電膜などの用途に用いる場合には、高い導電性を得るために、酸化グラフェンを還元することが好ましい。薄片化黒鉛化合物を構成している酸化グラフェンの還元方法としては、特に限定されず、例えば、薄片化黒鉛化合物を構成している酸化グラフェンに還元剤を接触させる方法が挙げられる。
本発明は、上述のように、黒鉛化合物を高圧流体に接触させて上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とするので、黒鉛化合物の層面同士を円滑に剥離して薄片化黒鉛化合物を効率良く製造することができる。
本発明の方法に好適に用いられる薄片化黒鉛化合物の製造装置を示した模式図である。
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
(実施例1)
図1に示した製造装置を用いて、以下の要領に従って薄片化黒鉛化合物を製造した。先ず、管型の製造容器5(SUS316ステンレス鋼、松菱鋼機株式会社製 Tube Bomb Reacter、内容積0.01リットル)を開放して、製造容器5内に黒鉛シート(東洋炭素社製 PF100−UHP)0.5gを投入した上で製造容器5を閉止した。
次に、三方弁7aを操作して製造容器5と流体ボンベ(図示せず)とを連通させた状態とすると共に、製造容器5及び流体ボンベと、回収容器6内とが遮断された状態とした。そして、ポンプを駆動させて流体ボンベ内に充填されている常温で且つ常圧下にて気体状態である二酸化炭素4.8gを流体供給管71及び連結管7を通じて製造容器5内に供給した後、三方弁7aを操作して製造容器5内と流体ボンベと回収容器6とが互いに遮断された状態とした。なお、三方弁7aと製造容器5との間の連結管7部分、及び、製造容器5内は完全に二酸化炭素で置換されていた。
一方、接続管10に介在させた開閉弁11を開放した上で真空ポンプを駆動させて回収容器6内部の空気を真空ポンプ9によって外部へ排出し、回収容器6内の圧力が10kPaとなるまで減圧した後に、開閉弁11を閉止して真空ポンプを停止させた。
しかる後、製造容器5全体を金属塩溶融浴槽1の溶融状態の金属塩2中に投入し、製造容器5内の流体の温度を90℃まで上昇させると共に製造容器5内の圧力を18MPaまで上昇させて、二酸化炭素の超臨界流体を得ると共に、超臨界流体と黒鉛シートを1.5時間に亘って接触させ、黒鉛シートの層面間に二酸化炭素の超臨界流体を進入させた。
そして、三方弁7aを操作して、製造容器5と回収容器6内とを連通させた状態とし、製造容器5内の二酸化炭素の超臨界流体を連結管7を通じて回収容器6内に移動させると共に、二酸化炭素の超臨界流体に加わっていた圧力を1,000MPa/秒の減圧速度で0.1MPaまで減圧した。また、二酸化炭素の超臨界流体は減圧に伴って気化して気体状態となった。上記二酸化炭素の超臨界流体の移動及び減圧に伴って、黒鉛シートもまた製造容器5内から回収容器6内に移動すると共に薄片化されて薄片化黒鉛化合物を得た。その後、回収容器内を開放して常圧とした後に回収容器6内部をエタノールで洗浄することによって、回収容器6の内部に残っている薄片化黒鉛化合物を更に回収した。
(実施例2)
図1に示した製造装置を用いて、以下の要領に従って薄片化黒鉛化合物を製造した。先ず、管型の製造容器5(SUS316ステンレス鋼、松菱鋼機株式会社製 Tube Bomb Reacter、内容積10cm3)を開放して、製造容器5内に黒鉛シート(東洋炭素社製 PF100−UHP)0.5gを投入した。
更に、製造容器5内に、常温で且つ常圧下にて流体状態であるエタノール1.8gを直接、供給した後に製造容器5を閉止した。窒素ガスを充填した窒素ガスボンベ(図示せず)を流体供給管71の他端部に接続し、三方弁7aを操作して製造容器5と窒素ガスボンベとを連結、連通させた状態とすると共に、製造容器5及び窒素ガスボンベと、回収容器6内とは遮断された状態とした。そして、ポンプを駆動させて窒素ガスボンベ内に充填されている窒素ガスを流体供給管71及び連結管7を通じて製造容器5内に供給して、三方弁7aと製造容器5との間の連結管7部分、及び、製造容器5内の空気を窒素ガスによって完全に置換した後、三方弁7aを操作して、製造容器5内と窒素ガスボンベと回収容器6とが互いに遮断された状態とした。なお、ここで充填した窒素ガスは0.9mgと非常に微量であるので、後工程においてエタノールを加圧及び加熱することにより超臨界流体として黒鉛化合物を薄片化する際に窒素ガスが黒鉛化合物の薄片化に影響を及ぼすことはない。
一方、接続管10に介在させた開閉弁11を開放した上で真空ポンプを駆動させて回収容器6内部の空気を真空ポンプ9によって外部へ排出し、回収容器6内の圧力が10kPaとなるまで減圧した後に、開閉弁11を閉止して真空ポンプを停止させた。
しかる後、製造容器5全体を金属塩溶融浴槽1の溶融状態の金属塩2中に投入し、製造容器5内のエタノールの温度を285℃まで上昇させると共に製造容器5内の圧力を13MPaまで上昇させて、エタノールの超臨界流体を得ると共に、超臨界流体と黒鉛シートを0.5時間に亘って接触させ、黒鉛シートの層面間にエタノールの超臨界流体を進入させた。
そして、三方弁7aを操作して、製造容器5と回収容器6内とを連通させた状態として、製造容器5内のエタノールの超臨界流体を連結管7を通じて回収容器6内に移動させると共に、エタノールの超臨界流体に加わっていた圧力を1,000MPa/秒の減圧速度で0.1MPaまで減圧した。上記エタノールの超臨界流体の移動及び減圧に伴って、黒鉛シートもまた製造容器5内から回収容器6内に移動すると共に薄片化されて薄片化黒鉛化合物を得た。その後、回収容器内を開放して常圧とした後に回収容器6内部をエタノールで洗浄することによって、回収容器6の内部に残っている薄片化黒鉛化合物を回収した。
(実施例3)
エタノールに代えて、メタノール1.8gを用いた以外は、実施例2と同様にして薄片化黒鉛化合物を製造した。
(実施例4)
図1に示した製造装置を用いて、以下の要領に従って薄片化黒鉛化合物を製造した。先ず、管型の製造容器5(SUS316ステンレス鋼、松菱鋼機株式会社製 Tube Bomb Reacter、内容積10cm3)を開放して、製造容器5内に黒鉛シート(東洋炭素社製 PF100−UHP)0.5gを投入した。
次に、製造容器5内に、常温で且つ常圧下にて流体状態である水2.5gを直接、供給した後に製造容器5を閉止した。しかる後、三方弁7aを操作して製造容器5と流体ボンベ(図示せず)とを連通させた状態とすると共に、製造容器5及び流体ボンベと、回収容器6内とが遮断された状態とした。そして、ポンプを駆動させて流体ボンベ内に充填されている常温で且つ常圧下にて気体状態である二酸化炭素1.2gを流体供給管71及び連結管7を通じて製造容器5内に供給した後、三方弁7aを操作して製造容器5内と流体ボンベと回収容器6とが互いに遮断された状態とした。なお、三方弁7aと製造容器5との間の連結管7部分、及び、製造容器5内の空気は完全に二酸化炭素で置換されていた。
一方、接続管10に介在させた開閉弁11を開放した上で真空ポンプを駆動させて回収容器6内部の空気を真空ポンプ9によって外部へ排出し、回収容器6内の圧力が10kPaとなるまで減圧した後に、開閉弁11を閉止して真空ポンプを停止させた。
しかる後、製造容器5全体を金属塩溶融浴槽1の溶融させた金属塩2中に投入し、製造容器5内の水及び二酸化炭素の温度を390℃まで上昇させると共に製造容器5内の圧力を38MPaまで上昇させて、水及び二酸化炭素の超臨界流体を得ると共に、超臨界流体と黒鉛シートを1.5時間に亘って接触させ、黒鉛シートの層面間に水及び二酸化炭素の超臨界流体を進入させた。
そして、三方弁7aを操作して、製造容器5と回収容器6内とを連通させた状態とし、製造容器5内の二酸化炭素及び水の超臨界流体を連結管7を通じて回収容器6内に移動させると共に、水及び二酸化炭素の超臨界流体に加わっていた圧力を2,000MPa/秒の減圧速度で0.1MPaまで減圧した。また、二酸化炭素の超臨界流体は減圧に伴って気化して気体状態となった。上記水及び二酸化炭素の超臨界流体の移動及び減圧に伴って、黒鉛シートもまた製造容器5内から回収容器6内に移動すると共に薄片化されて薄片化黒鉛化合物を得た。その後、回収容器内を開放して常圧とした後に回収容器6内部をエタノールで洗浄することによって、回収容器6の内部に残っている薄片化黒鉛化合物を更に回収した。
(実施例5〜8)
黒鉛シートに代えて、以下の要領に従って作製した黒鉛層間化合物0.5g用い、製造容器5に供給した流体の量をそれぞれ表1の通りに変更した以外は、実施例1〜4と同様にして薄片化黒鉛化合物を製造した。
(黒鉛層間化合物の作製)
黒鉛単結晶粉末0.25gを65重量%濃硫酸11.5ミリリットルに供給して、得られた混合物を10℃の水浴により冷却しながら撹拌した。次に、黒鉛単結晶粉末と濃硫酸との撹拌によって得られた混合物に、過マンガン酸カリウム1.5gを徐々に加えながら混合物を撹拌し、混合物を35℃で30分に亘って反応させた。
次に、反応混合物に水23gを徐々に加えて、混合物を98℃で15分に亘って反応させた。しかる後、反応混合物に水70gと30重量%の過酸化水素水4.5gを加えて反応を停止させた。混合物を14000rpmの回転速度にて30分に亘って遠心分離した後、得られた酸化黒鉛を5重量%の希塩酸及び水により十分に洗浄して、しかる後に乾燥させることにより黒鉛層間化合物を得た。
(実施例9)
実施例1において、三方弁7aを操作して、製造容器5と回収容器6内とを連通させた状態とし、製造容器5内の二酸化炭素の超臨界流体を連結管7を通じて回収容器6内に移動させる際に、三方弁7aを操作して、製造容器5内の二酸化炭素の超臨界流体を連結管7を通じて回収容器6内に移動させると共に、二酸化炭素の超臨界流体に加わっていた圧力を70MPa/秒の減圧速度で0.1MPaまで減圧した以外は、実施例と同様にして薄片化黒鉛化合物を製造した。
(評価)
上記で作製した薄片化黒鉛化合物について、回収率、比表面積、及び炭素元素量を以下の手順に従って評価し、これらの結果を表1に示す。又、各実施例において原料として用いた黒鉛シート及び黒鉛層間化合物についても、比表面積、及び炭素元素量を以下の手順に従って評価し、これらの結果を参考例1及び参考例2として表1に示す。なお、表1において、エタノールは「EtOH」とし、メタノールは「MeOH」として記載した。
(回収率)
原料として用いた黒鉛シート又は黒鉛層間化合物の重量W1と、薄片化黒鉛化合物の重量W2とを測定した後、得られた値から式:回収率(%)=W2/W1により、薄片化黒鉛化合物の回収率を算出した。
(比表面積)
薄片化黒鉛化合物、黒鉛シート又は黒鉛層間化合物のBET比表面積(m2/g)を、比表面積測定装置(島津製作所(株)製 ASAP−2000)を使用し、吸着ガスとして窒素ガスを用いたBET法により測定した。
(炭素元素量)
薄片化黒鉛化合物、黒鉛シート又は黒鉛層間化合物の炭素元素量(原子%)を、質量分析計(ION−TOF社製 TOF−SIMS Type−5)を用いて測定した。
Figure 2011190166
1 金属塩溶融浴槽
2 金属塩
3 熱電対
4 ヒーター
5 製造容器
6 回収容器
7a 三方弁
7 連結管
9 真空ポンプ
10 接続管
11 開閉弁
71 流体供給管

Claims (5)

  1. 黒鉛化合物を高圧流体に接触させた後、上記高圧流体に加わっている圧力を減圧することにより、上記黒鉛化合物を薄片化することを特徴とする薄片化黒鉛化合物の製造方法。
  2. 流体中に黒鉛化合物を存在させて混合体を作製し、この混合体中の流体を高圧下にて加熱して高圧流体とすると共に上記黒鉛化合物を上記高圧流体に接触させた後、上記高圧流体に加わっている圧力を減圧することを特徴とする請求項1に記載の薄片化黒鉛化合物の製造方法。
  3. 高圧流体中に黒鉛化合物を供給して上記黒鉛化合物を上記高圧流体に接触させた後、上記高圧流体に加わっている圧力を減圧することを特徴とする請求項1に記載の薄片化黒鉛化合物の製造方法。
  4. 高圧流体が、亜臨界流体又は超臨界流体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の薄片化黒鉛化合物の製造方法。
  5. 請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の薄片化黒鉛化合物の製造方法によって製造されたことを特徴とする薄片化黒鉛化合物。
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