JP2011187510A - 金属微細構造体及びその製造方法並びに樹脂成形物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】凹凸パターン14が形成された母型10の表面に下記式(I)で表されるシランカップリング剤の膜16を形成する。シランカップリング剤の膜上に金属膜18を形成した後、金属膜と該金属膜を支持する支持部材20とを一体化させる。金属膜を支持部材とともに母型から剥離させることにより、母型の凹凸パターンが反映された金属膜と、該金属膜と一体化した前記支持部材とを有する金属微細構造体30を得る。
【選択図】図1
Description
ガラスや樹脂等の基板上にμmオーダー、あるいはnmオーダーの金属からなる微細な配線パターンを形成する方法の一つとして、形成すべき微細なパターンに対応した型(原版)を用いて転写を行う方法がある。例えば、ガラス基板上に導電性膜を形成し、導電性膜上にフォトレジストで所定のパターンを形成した後、導電性膜が露出する部分にめっき膜を形成し、さらにそのめっき膜にベースフィルムを貼り合わせてめっき膜を転写させる方法が開示されている(特許文献1参照)。
しかし、このような方法では、μmオーダーあるいはnmオーダーのレベルの微細なパターンを有する配線基板を作製することは困難である。
<1> 表面に凹凸パターンが形成された母型を用い、該母型の前記凹凸パターンが形成された表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成する工程と、
前記シランカップリング剤の膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜と該金属膜を支持する支持部材とを一体化させる工程と、
前記金属膜を前記支持部材とともに前記母型から剥離させることにより、前記母型の前記凹凸パターンが反映された前記金属膜と、該金属膜と一体化した前記支持部材とを有する金属微細構造体を得る工程と、
を含むことを特徴とする金属微細構造体の製造方法。
(式(I)中、nは8、10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す加水分解性基である。)
<2> 前記金属膜を形成する工程において、前記金属膜を蒸着法によって形成することを特徴とする<1>に記載の金属微細構造体の製造方法。
<3> 前記金属膜を形成する工程において、前記シランカップリング剤の膜上に金属インクを付与した後、加熱することによって前記金属膜を形成することを特徴とする<1>に記載の金属微細構造体の製造方法。
<4> 前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記支持部材として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムを前記金属膜に押し付けた状態で加熱して接着させることにより、前記金属膜と前記支持部材とを一体化させることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の金属微細構造体の製造方法。
<5> 前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記金属膜に熱硬化性樹脂または光硬化製樹脂を付与して未硬化の樹脂層を設けた後、加熱または紫外線照射をして前記樹脂層を硬化させることにより前記支持部材とすることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の金属微細構造体の製造方法。
<6> 前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記金属膜に熱硬化性樹脂または光硬化製樹脂を付与して未硬化の樹脂層を設け、該樹脂層上に樹脂フィルムを配置した後、加熱または紫外線照射をして前記樹脂層を硬化させることにより、前記硬化した樹脂層と前記樹脂フィルムとを含む前記支持部材とすることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の金属微細構造体の製造方法。
<7> 前記シランカップリング剤の膜を形成する工程において、前記母型として前記凹凸パターンの凸部が配線パターンに相当する母型を用い、
前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記支持部材として片面に粘着層を有するシート部材を用い、該シート部材の前記粘着層を前記金属膜に圧接させることにより、前記凹凸パターンの前記凸部に相当する前記金属膜の一部を前記粘着層に接着させ、
前記金属微細構造体を得る工程において、前記シート部材とともに前記金属膜の一部を剥離させることにより、前記金属微細構造体として配線基板を製造することを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載の金属微細構造体の製造方法。
<8> 前記シランカップリング剤の膜を形成する工程の前工程として、表面に前記凹凸パターンが形成された母型を用意する工程をさらに含むことを特徴とする<1>〜<7>のいずれかに記載の金属微細構造体の製造方法。
<9> 前記シランカップリング剤の膜を形成する工程において、前記母型の前記凹凸パターンが形成された表面に前記シランカップリング剤を含む液を付与した後、加熱処理を行い、該加熱処理の前又は後に、前記シランカップリング剤を含む液が付与された前記母型の表面をリンスすることを特徴とする<1>〜<8>のいずれかに記載の金属微細構造体の製造方法。
<10> <1>〜<9>のいずれかに記載の方法によって製造される金属微細構造体。
<11> 高さが1μm未満であり、アスペクト比が2以上の微細な突起群を含む凹凸パターンを有する金属膜と支持部材とからなることを特徴とする金属微細構造体。
<12> <10>又は<11>に記載の金属微細構造体を金型として用い、前記金属微細構造体の前記金属膜に前記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成する工程と、
前記シランカップリング剤の膜上に熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を付与した後、加熱または紫外線照射をして前記付与した樹脂を硬化させる工程と、
前記硬化した樹脂を前記金属膜から剥離することにより凹凸パターンを有する樹脂組成物を得る工程と、
を含むことを特徴とする樹脂成形物の製造方法。
本発明者らの検証結果によれば、母型に高さが数μm以下、特にnmオーダーで、しかも、アスペクト比が高い微細な凹凸パターンが密に形成されていると、母型の転写パターン面に予め離型剤を付与した後に、蒸着によって金属膜を形成し、その後に剥離を試みても種々の問題が生じることが確認された。具体的には、既存の離型剤は耐熱性が低く、金属膜を真空蒸着する際の高温に対して分解などしてしまうため、金属膜を形成できない、金属膜を他の部材に転写できない、金属膜が他の部材に転写されても母型の凹凸パターンが忠実に反映されない(すなわち解像度が悪い)、金属膜にクラックが発生する、あるいは、金属膜を無理に剥離させると母型の凹凸パターンが破壊されてしまい、繰り返して使用することができない、といった問題が生じる。
本発明において金属膜を高い解像度で転写して金属微細構造体を作製することができたのは、本発明者等が凹凸パターンを設けた母型の作製を可能としたことと、高温耐熱性の前記シランカップリング剤を開発できたことに因るものである。
微細な凹凸パターンの転写では、微細な突起間の空間が離型剤で埋まってしまうとその後の転写が不可能となるため、可能な限り薄く、しかも、転写パターン上に可能な限り同じ厚さの離型剤層を形成することが不可欠と考えられる。本発明で用いられるシランカップリング剤は、母型を構成する基材(母型の凹凸パターン表面)との間に厚さ0.25nm程度の単分子層を形成しやすいものと推察されるため、上記の条件を満足し、しかも表面自由エネルギーが小さいので、高い離型性を有し、熱的にも安定で種々の物理的刺激に対する破壊が少ないことが、凹凸パターンの転写に有効であると考えられる。
本発明による金属微細構造体の製造方法は、
表面に凹凸パターンが形成された母型を用い、該母型の前記凹凸パターンが形成された表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成する工程と、
前記シランカップリング剤の膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜と該金属膜を支持する支持部材とを一体化させる工程と、
前記金属膜を前記支持部材とともに前記母型から剥離させることにより、前記母型の前記凹凸パターンが反映された前記金属膜と、該金属膜と一体化した前記支持部材とを有する金属微細構造体を得る工程と、
を含む。
シロキサン結合が完了すると、分子間距離が小さくなって基材表面をフッ素系シランカップリング剤が密に覆うことになって離型性を向上させる効果を発揮するものと考えられる。
リンス液としては、有機溶媒、水などを用いることができ、例えば、HFE−7100(住友スリーエム社製)等のフッ素系溶媒を用いることができる。フッ素溶媒でリンスした後、さらに水でリンスし、メトキシ基をOH基に変えることでカップリング効果を向上させることもできる。
以下、各工程及び部材についてより具体的に説明する。
表面に凹凸パターンが形成されている母型10を用意する。
母型10の本体となる基材12の材質、形状、サイズ、凹凸パターン14は、特に限定されず、転写すべき材料や用途等に応じて選択すればよい。
基材12の材質(モールド材料)としては、凹凸パターン14の形成性、母型10としての機械的強度、耐熱性、金属膜の成膜性などの観点から、例えば、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)、シリコン、SOG、石英、セラミックス、又は、ニッケル、特にめっきで作製されるニッケル板、タンタルのような金属、あるいはクロム、ニッケル、アルミナ、チタニア等の金属の酸化物を挙げることができ、また、非可撓性である材料が好ましく用いられる。
また、基材の形状は、通常シート状の平板状であるが、ロール形状のものでも使用することができ、さらに、凹凸パターンを設けた薄膜平板状のものをロールに巻きつけて、ロール・トウ・ロール転写方式に用いることもできる。
例えば、シリコン基板等の基材12の表面(片面)に、リソグラフィ(フォトリソグラフィ、電子ビームリソグラフィなど)とエッチングにより所望の配線パターンを形成することができる。また、シリコン基板等の平坦な基板上に、SOG(Spin on Glass)を焼成した後、所定の凹凸パターンに成形することもできる。
反応ガスとしては酸素を含むガスを用い、酸素のみでもよいし、酸素にCF4等のCF系のガスを混ぜたガスも用いることができる。
そして、ガラス状炭素基材において、上記のような先端に向けて縮径する形状を有する微細突起群が形成された表面は、柱状体の突起が形成されている場合に比べて入射光が反射し難く、より高い反射防止効果を奏するものと考えられる。
そして、無反射構造となるには、理論上、突起のピッチ(P)<137nm、高さ(h)>200nmが条件となる。これより、2θ<37.8°の場合に無反射構造となる。従って、突起14の先端部分の角度が上記の関係を満たすときに無反射又はそれに近い反射率を達成できると考えられる。ただし、突起先端部の角度が小さすぎる場合は、転写時に突起が折れ易く、また、径が均一な柱状に近づいて反射率が上昇してしまうものと考えられる。従って、突起14が針状又は円錐状の場合、先端部の角度は好ましくは3°以上、より好ましくは10°以上、特に好ましくは15°以上である。
以上、母型10を構成する基材12の材質(モールド材料)として、ガラス状炭素(グラッシーカーボン)を用いた場合を中心に説明したが、ガラス状炭素に限定されるわけではなく、前述のように、シリコン、SOG、石英、セラミックス、又は、ニッケル特にめっきで作製されるニッケルあるいはタンタルのような金属等も用いることができる。
本発明では、離型剤として、下記一般式(I)で表されるペルフルオロビフェニルアルキル鎖を有するシランカップリング剤(以下、適宜、「シランカップリング剤」、あるいは、「離型剤」という。)を用い、前記母型10の凹凸パターン14が形成されている表面に、該シランカップリング剤の膜16を形成する(図1(A))。
(式(I)中、nは8、10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す加水分解性基である。)
F(CF2)nI (3)
(式中、nは8〜14の正数である。)
下記一般式(4)で表される4−ペルフルオロアルキル−4’−ブロモビフェニルを合成する。
CH2=CH(CH2)p−Br (5)
(式中、pは1〜4の正数である。)
下記一般式(6)で表される4−ペルフルオロアルキル−4’−ビニルアルキルビフェニルを合成する。
なお、離型剤層は、凹凸パターン上全体に形成してもよいし、凹凸パターンの大きさ、密度、転写されたパターンの用途、被転写部材の材質などによっては、パターンの一部、例えば凸部のみに形成してもよい。
本発明で用いるシランカップリング剤は、ペルフルオロアルキル基及びビフェニルアルキル基を有するため、上記離型剤膜16はモノレーヤー(分子一層)となり、しかも加熱処理によって、2次元ないし3次元の網状のシロキサン結合を形成するシロキサンネットワークが構築されるので、凹凸パターン14の転写に効果的であると推察される。
次に、シランカップリング剤の膜16上に金属膜18を形成する(図1(B))。
シランカップリング剤の膜16が形成された母型10の表面に金属膜18を付与する方法は限定されないが、真空蒸着法、めっき法、あるいは金属インクを付与後、加熱する方法などが好ましく用いられ、製造する金属微細構造体の使用目的あるいは母型10の材質等に応じて選択することができる。
特に、本発明で用いるシランカップリング剤は高い耐熱性を有するために、該シランカップリング剤の膜16を形成した母型10の凹凸パターン14上に、通常、200℃〜400℃の温度条件で行なう真空蒸着法を使って金属膜18を形成することができる。
また、金属インクを用いる前記方法においても、シランカップリング剤の高耐熱性を活かすことができる。母型10の凹凸パターン14が形成されている表面に金属インク分散液を塗布した後に、分散液に含まれる、例えばバインダーなどの金属以外の材料を加熱によって昇華除去する。このように加熱によってバインダー等の材料を昇華除去する際、母型に予め付与されているシランカップリング剤が分解などを起こさずに、主として金属からなる膜を形成することができる。
製造する金属微細構造体の用途が、例えば、触媒あるいはプラズモンセンサー(SPR)の場合には、母型10の凹凸パターン14が形成された面全体に金属膜18を形成した後、金属膜全体を支持部材20と一体化させる。
凹凸パターンの凸部が配線パターンに相当する母型を用意し、凹凸パターンが形成されている面に金属膜を形成する。次いで、支持部材として片面に粘着層を有するシート部材を用い、好ましくは該シート部材に張力をかけながら、シート部材の粘着層を金属膜に圧接させることにより、凹凸パターンの凸部に相当する金属膜の一部を粘着層に接着させる。その後、シート部材とともに金属膜の一部を剥離させることにより、母型の凸パターンに対応した金属膜の一部を配線として有する配線基板を製造することができる。
粘着シートのような厚みが薄くかつフレキシブルな支持部材を用いて作製される配線基板は、例えば、携帯電話機の狭い内部の屈曲部などに使用される。
金属膜の厚さは、母型の凹凸パターンの深さに影響されるが、金属膜の厚みが薄過ぎると配線の高抵抗化や断線を招き易く、厚過ぎると成膜に時間を要し、製造コストの上昇を招いてしまう。これらの観点から、金属膜の厚みは20〜1000nm程度であることが好ましい。
金属膜を構成する金属材料としては、製造すべき金属微細構造体の用途、目的等に応じて選択すればよく、例えば、AU、Ag、Cu、Al、Co、Ni、W、Ptなどを用いることができる。
次に、金属膜18と一体化させる支持部材20について説明する。
支持部材20は、製造すべき金属微細構造体に応じて選択すればよく、ガラス、セラミック、プラスチックなどが用いられ、例えば、PETのような樹脂フィルムを用いることもできる。例えば、熱可塑性の樹脂フィルムを金属膜18に押し付けた状態で加熱すると、該樹脂フィルムが軟化して金属膜18と接着し、必要に応じて、その後冷却して再度硬化させる(図1(C))。これにより金属膜18と支持部材20とが接着する。
このように金属膜18に樹脂フィルム20を接着させて一体化した合体物をシランカップリング剤の膜16から剥離することで、金属微細構造体30を得ることができる(図1(D))。
また、先述したように、粘着テープのような、片面に粘着層が設けられた樹脂フィルムを支持部材20として用いて、凹凸パターンの凸部上に形成された金属膜18と接着した後、剥離させることで、配線基板を作製することもできる。
なお、熱硬化性樹脂を用いて支持部材を得る際、母型なども含めて全体が加熱されるが、本発明に用いるシランカップリング剤は高い耐熱性を有するため、加熱しても特に問題ない。
なお、紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線を透過する樹脂フィルムを用い、樹脂フィルム側から紫外線を照射して硬化させることが好ましい。
また、金属膜18との接合強度を向上させるため、支持部材20、特に樹脂フィルムの表面を粗面化してもよい。例えば、支持部材20の表面に微粒子を付着させる方法、微粒子を高圧で吹き付ける方法(ブラスト)、などによって支持部材20の表面を荒らすことで、凹凸が形成され、被転写材料(金属膜)18との接合強度を向上させることができる。
前記金属膜18を前記支持部材20とともに前記母型12から剥離させることにより、前記母型12の前記凹凸パターン14が反映された前記金属膜18と、該金属膜18と一体化した前記支持部材20とを有する金属微細構造体30を得る(図1(D))。
金属膜18と一体化した支持部材20を保持して母型10から引き離せばよい。これにより、シランカップリング剤の膜16と金属膜18とが剥離し、母型10の微細パターン14が精度良く反映された金属膜18と支持部材20とを有する金属微細構造体30が得られる。本発明では、前記一般式(I)で表されるシランカップリング剤を離型剤として用いているため、母型10の凹凸パターン14が反映された金属膜18(被転写部材)を母型10から容易に剥離することができるとともに、母型10の微細パターン14の破壊を効果的に抑制することができる。
例えば、金属微細構造体の凹凸パターンを有する金属膜上に、前記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成した後、先述したような方法で、樹脂フィルム又は、熱硬化性樹脂あるいは紫外線硬化性樹脂からなる硬化樹脂に凹凸パターンを再転写する。例えば、シランカップリング剤の膜上に熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を付与した後、加熱または紫外線照射をして前記付与した樹脂を硬化させ、硬化した樹脂を金属膜から剥離する。これにより凹凸パターンを有する樹脂組成物を得る。これを繰り返すことで、凹凸パターンを有する樹脂成形物を大量に生産することもできる。
表面が研磨されたグラッシーカーボン(東海カーボン株式会社製)の基板(厚さ:1mm、縦横:10mm×10mm)を、図2に示したような構成のECR(電子サイクロトン共鳴)型のイオンビーム加工装置(株式会社エリオニクス製、商品名:EIS−200ER)を用いて表面にイオンビーム加工を施した。
このイオンビーム加工装置50は、基板52を保持するためのホルダ66、ガス導入管54、プラズマ生成室56、エクストラクター58、電磁石60、イオンビーム引き出し電極62、ファラデーカップ64等を備えている。なお、例えば500V以下の低加速電圧では電流密度が小さくなるので、エクストラクター58は、電流密度を上げるために引き出し電極62よりプラズマ側でイオンを引き出すためのグリッドである。エクストラクター58を用いれば、加速電圧が低くても、電流密度が大きくなり加工速度を高めることができる。
ビーム照射角度:加工面に対して垂直(基板の転写パターン面に対して90°)
反応ガス:酸素
ガス流量:3.0SCCM
マイクロ波:100W
加速電圧:500V
加工時間:45分
真空度: 1.3×10−2Pa
以下の工程により、一般式(I)において、X、Y、Zが全てメトキシ基であり、(1)RがF(CF2)8のもの(8F2P3S3M)、(2)F(CF2)10のもの(10F2P3S3M)、(3)F(CF2)12のもの(12F2P3S3M)をそれぞれ合成した。
得られた留出物について1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより分析を行った。得られた留出物は、1H−NMR、FT−IR、Mass(m/z 651)の各スペクトルにより、8F2PBであると同定した。
収量 22.9g(35.2mmol)
収率 44%
沸点 134−135℃/30Pa
性状は、白色固体であった。
黄褐色に変化した溶液に触媒CuI0.42g(22.2mmol)を加えた後、アリルブロミド3.82ml(45.18mmol)を滴下し、2時間攪拌後、飽和NH4Cl水溶液を沈殿が生じなくなるまで加え反応を停止した。酢酸エチルで抽出後、硫酸マグネシウムで脱水し、酢酸エチルを減圧除去した。残留物を減圧蒸留により精製して留出物を得た。
得られた留出物について1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより分析を行った。得られた留出物は、1H−NMR、FT−IR、Mass(m/z 612)の各スペクトルにより、8F2PAであると同定した。
収量 1.86g(3.04mmol)
収率 41%
沸点 164−167℃/80Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物について1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより分析を行った。得られた留出物は、1H−NMR、FT−IR、Massの各スペクトルにより、8F2P3S3Mであると同定した。
収量 1.50g(2.04mmol)
収率 67%
沸点 160−165℃/30Pa
性状は、白色固体であった。
収量 28.2g(37.5mmol)
収率 59%
沸点 139−143℃/32Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物についてMassスペクトルの分析結果、m/z(分子量)712により、10F2PAであると同定した。
収量 2.16g(3.04mmol)
収率 41%
沸点 169−173℃/77Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物についてNMR、FT−IR、Massの各スペクトルに分析を行った。FT−IR、Massの各スペクトルを図4、図5、図6に示す。
各スペクトルの分析結果、得られた留出物は、10F2P3S3Mであると同定された。HRMS=834.1083(計算値:834.5323)。
収量 1.65g(1.98mmol)
収率 65%
沸点 164−167℃/28Pa
性状は、白色固体であった。
得られた留出物について、Massスペクトルを分析した結果、m/z(分子量)934により、12F2P3S3Mであると同定した。
収量 1.96g(2.09mmol)
収率 65%
沸点 172−174℃/26Pa
性状は、白色固体であった。
スライドガラス(マツナミ製S−7214)を1N水酸化カリウム水溶液(pH>9)に2時間浸した後に取り出し、蒸留水で十分に洗浄した。その後、スライドガラスをデシケーター中で乾燥し、次の表面改質に使用した。
各種のペルフルオロアルキル鎖を有するシランカップリング剤をiso−C4F9OCH3(3M製HFE−7100)溶媒に濃度15mmol/lとなるように調製してガラスの表面改質に用いた。
改質ガラスに対する水の接触角を測定した。接触角の測定は、協和界面科学社製CA−X型接触角測定装置を使用し、0.9μlの水滴を水平なガラス板上に滴下して接触角を測定する液滴法を用いた。
シランカップリング剤として8F2P3S3Mを用いた場合について、その特性試験結果を示す。
前記ガラスの表面改質の方法で、試料の改質ガラスを作製した。
次に、この改質ガラスを、所定温度(200、250、300、350、370、400℃)のオーブン中で2時間、加熱処理した。加熱処理後はデシケーター中で室温まで冷却し、改質ガラスに対する水の接触角を測定した。接触角の測定は、前記した方法で行った。結果を表1に示す。
前記と同様にして、8F2P3S3M溶液を用いて作製した改質ガラスに対し、350℃の熱曝露時間に対する改質ガラス表面の接触角(水)変化を調べ、耐熱耐久性を調べた。その結果を表2に示す。
比較のために、シランカップリング剤として、8F2P3S3M、8F2P2S3M、及び8F2S3Mを用いて調製した各改質溶液を用いて作製した改質ガラスに対し、前記と同様にして、350℃の熱曝露時間に対する改質ガラス表面の接触角(水)について、各時間経過後の接触角を測定した。その結果を表3に示す。
シランカップリング剤として10F2P3S3Mを用いた場合について、その特性試験結果を示す。
前記ガラスの表面改質の方法で、試料の改質ガラスを作製した。
次に、この改質ガラスを、所定温度(250、300、350、400、450℃)のオーブン中で2時間、加熱処理した。加熱処理後はデシケーター中で室温まで冷却し、改質ガラスに対する水の接触角を測定した。接触角の測定は、前記した方法で行った。8F2P3S3Mを用いた場合と比較した結果を表4に示す。
前記と同様にして、10F2P3S3M溶液を用いて作製した改質ガラスに対し、400℃の熱曝露時間に対する改質ガラス表面の接触角(水)の変化を調べ、耐熱耐久性を調べた。その結果を表5に示す。
Si基板上にSOG(Honeywell社製のAcuglass512B)により高さが180nm、スペース幅が270nmの凹凸パターンを有するモールドを下記条件で作製した。
EB露光条件
・加速電圧:10KV ・ビーム電流:10pA ・ドーズ量:800μC/cm2
現像条件
・現像液:BHF ・現像時間:1分間
この凹凸パターンを有するモールドを8F2P3S3Mのシランカップリング剤を含む0.1%溶液(溶媒:住友スリーエム社製、「HFE−7100」)で24時間液相処理し、次にハイドロフルオロエーテル(住友スリーエム社製、 HFE−7100)で1分間リンスした後、100℃、30分間加熱した。
次に、加熱処理された前記シランカップリング剤層上に、VPC−260F(ULVAC KIKO社製)の装置を使って真空蒸着により膜厚約330nmのAu膜を形成した。 この表面をSEMで観察したところ、図8に示すように、表面にクラックの無いAu膜が形成されていた。
次いで、Au膜上にPET基板を押し当てるとともに90℃で10分間加熱した後、PET基板を剥離してAu膜とPET基板からなる金属微細構造体を作製した。
該金属微細構造体をSEMで観察したところ、図9に示すように、PET基板の表面にはモールドの凹凸が反映されたAu膜が転写されていた。
実施例1と同様にして、Si基板上に凹凸パターンを有するモールドを作製した。
この凹凸パターンを有するモールドを、先ずアセトンで、その後エタノールでそれぞれ15分間超音波洗浄した後、約1時間オゾン洗浄した。次に、該モールドを前記10F2P3S3Mのシランカップリング剤を含む0.1%溶液(溶媒:住友スリーエム社製、「HFE−7100」)に約30分間ディッピングで液相処理した後、ハイドロフルオロエーテル(住友スリーエム社製、 HFE−7100)とテトラヒドロフランとを8対1の割合で混合したリンス液で約45分間超音波をかけながらリンスした。
こうして処理したモールドの前記シランカップリング剤の層上に、実施例1と同様にして真空蒸着によって、膜厚約330nmのAu膜を形成した。
次いで、Au膜上にPET基板を押し当てるとともに90℃で10分間加熱した後、PET基板を剥離して、Au膜とPET基板からなる金属微細構造体を作製した。
図11は、パターンの転写状態を観察したSEM画像である。(A)はパターンを設けたモールド自体であり、(B)はAuをパターンの凹凸部全体に蒸着後、PET基板に転写した状態を観察したSEM画像である。Au膜をPET基板上に転写した後も当初のパターン線が転写されていることが確認できる。
離型剤としてオプツールを用いた以外、実施例2と同様にして実験を行なった。
図12は、このAu膜の表面を観察したSEM画像である。(A)は転写前のモールド上のAu膜、(B)は転写後のPET基板上のAu膜を示している。いずれも表面にクラックが入っていることがわかる。
図13は、パターンの転写状態を観察したSEM画像である。(A)はパターンが設けたモールド自体であり、(B)はAuをパターンの凹凸部全体に蒸着後、PET基板に転写した状態を観察したSEM画像である。Au膜をPET基板上に転写した後ではパターン線が転写されていないことが確認できる。
図2に示した構成の装置を用い、以下の条件によりグラッシーカーボン基板(GC基板)の表面を微細加工した。
ビーム照射角度:加工面に対して垂直(基板の転写パターン面に対して90°)
反応ガス:酸素
ガス流量:3.0SCCM
マイクロ波:100W
加速電圧:500V
時間:30分
真空度:1.3×10−2Pa
この微細加工面を図14に示す。錐状の微細突起群(ピッチ62nm、高さ540nm)からなる微細構造パターンが形成されたものである。
さらに、このAu膜上にPET基板を押し当てるとともに90℃で30分間加熱した後、PET基板を剥離してSEMで観察したところ、図15に示すように、PET基板の表面にはモールドの凹凸が反映された高さ550nm、ピッチが122nmのAu膜が転写されていた。
加熱処理されたシランカップリング剤層上に、光硬化性樹脂(PAK−01、東洋合成工業社製)を塗布した後、5J/cm2の条件で紫外線照射して樹脂を硬化させた後、剥離して、表面に凹凸パターンを有する樹脂成型物を作製した。
この樹脂成型物の表面には、図16に示されるように、最初のグラッシーカーボン基板に形成されたモールドの凹凸形状が反映されており、突起の平均高さは217nm、平均ピッチ91nmであった。
実施例3と同様にしてGC基板の表面を微細加工し、Cr膜を形成した。次いで、離型剤としてオプツールを用い、Cr膜の表面に離型剤層を設けた後、真空蒸着によってAu膜を形成したところ、図17に示すようにAu膜の表面にクラックが多数形成されていた。蒸着時の熱で離型剤にクラックが入ってAu膜にもクラックが生じたと推察される。
12・・・基材
14・・・凹凸パターン(転写パターン)
16・・・シランカップリング剤(離型剤)
18・・・金属膜
20・・・支持部材
30・・・金属微細構造体
50・・・ECR型イオンビーム加工装置
P・・・ピッチ
Claims (12)
- 表面に凹凸パターンが形成された母型を用い、該母型の前記凹凸パターンが形成された表面に、下記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成する工程と、
前記シランカップリング剤の膜上に金属膜を形成する工程と、
前記金属膜と該金属膜を支持する支持部材とを一体化させる工程と、
前記金属膜を前記支持部材とともに前記母型から剥離させることにより、前記母型の前記凹凸パターンが反映された前記金属膜と、該金属膜と一体化した前記支持部材とを有する金属微細構造体を得る工程と、
を含むことを特徴とする金属微細構造体の製造方法。
(式(I)中、nは8、10、12、又は14の整数を示し、mは3又は4の整数を示し、X、Y、Zは、それぞれ独立して、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、又はハロゲン原子を表す加水分解性基である。) - 前記金属膜を形成する工程において、前記金属膜を蒸着法によって形成することを特徴とする請求項1に記載の金属微細構造体の製造方法。
- 前記金属膜を形成する工程において、前記シランカップリング剤の膜上に金属インクを付与した後、加熱することによって前記金属膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の金属微細構造体の製造方法。
- 前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記支持部材として樹脂フィルムを用い、該樹脂フィルムを前記金属膜に押し付けた状態で加熱して接着させることにより、前記金属膜と前記支持部材とを一体化させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属微細構造体の製造方法。
- 前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記金属膜に熱硬化性樹脂または光硬化製樹脂を付与して未硬化の樹脂層を設けた後、加熱または紫外線照射をして前記樹脂層を硬化させることにより前記支持部材とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属微細構造体の製造方法。
- 前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記金属膜に熱硬化性樹脂または光硬化製樹脂を付与して未硬化の樹脂層を設け、該樹脂層上に樹脂フィルムを配置した後、加熱または紫外線照射をして前記樹脂層を硬化させることにより、前記硬化した樹脂層と前記樹脂フィルムとを含む前記支持部材とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属微細構造体の製造方法。
- 前記シランカップリング剤の膜を形成する工程において、前記母型として前記凹凸パターンの凸部が配線パターンに相当する母型を用い、
前記金属膜と前記支持部材とを一体化させる工程において、前記支持部材として片面に粘着層を有するシート部材を用い、該シート部材の前記粘着層を前記金属膜に圧接させることにより、前記凹凸パターンの前記凸部に相当する前記金属膜の一部を前記粘着層に接着させ、
前記金属微細構造体を得る工程において、前記シート部材とともに前記金属膜の一部を剥離させることにより、前記金属微細構造体として配線基板を製造することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の金属微細構造体の製造方法。 - 前記シランカップリング剤の膜を形成する工程の前工程として、表面に前記凹凸パターンが形成された母型を用意する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の金属微細構造体の製造方法。
- 前記シランカップリング剤の膜を形成する工程において、前記母型の前記凹凸パターンが形成された表面に前記シランカップリング剤を含む液を付与した後、加熱処理を行い、該加熱処理の前又は後に、前記シランカップリング剤を含む液が付与された前記母型の表面をリンスすることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の金属微細構造体の製造方法。
- 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の方法によって製造される金属微細構造体。
- 高さが1μm未満であり、アスペクト比が2以上の微細な突起群を含む凹凸パターンを有する金属膜と支持部材とからなることを特徴とする金属微細構造体。
- 請求項10又は請求項11に記載の金属微細構造体を金型として用い、前記金属微細構造体の前記金属膜に前記一般式(I)で表されるシランカップリング剤の膜を形成する工程と、
前記シランカップリング剤の膜上に熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂を付与した後、加熱または紫外線照射をして前記付与した樹脂を硬化させる工程と、
前記硬化した樹脂を前記金属膜から剥離することにより凹凸パターンを有する樹脂組成物を得る工程と、
を含むことを特徴とする樹脂成形物の製造方法。
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