JP2011185242A - ディーゼルエンジンの燃焼室 - Google Patents

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Abstract

【課題】噴孔が上下二段に千鳥配置されたノズルを備えたディーゼルエンジンの燃焼室において、ノズルの各噴孔から噴射された燃料の噴霧がキャビティ壁面に衝突した後、燃料同士の干渉を抑制する。
【解決手段】ピストン1の頂面10に、ピストン1の上方に配置された燃料噴射ノズル3から噴射された燃料の噴霧が衝突するキャビティ2を凹設したディーゼルエンジンの燃焼室であって、燃料噴射ノズル3が、周方向に間隔を隔てて形成された複数の上段噴孔4aと、上段噴孔4a同士の間で且つ上段噴孔4aよりも下方において周方向に間隔を隔てて形成された複数の下段噴孔4bとを有し、キャビティ2の壁面2xが、上段噴孔4aから噴射された燃料の噴霧が衝突する部分よりも、下段噴孔4bから噴射された燃料の噴霧が衝突する部分の方がキャビティ2の内方に隆起するように、周方向に交互に凸凹に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ピストンの頂面に凹設されたキャビティに、ピストンの上方に配置された燃料噴射ノズルから燃料が噴射されるディーゼルエンジンの燃焼室に関する。
ディーゼルエンジンのピストンの頂面には、燃焼室となるキャビティが凹設されている。キャビティの一般的な形状を図3、図4に示す。図3は、ピストン1の頂面に凹設されたキャビティ2の開口が絞られていない浅皿型(Shallow dish)の燃焼室を示し(特許文献1参照)、図4は、ピストン1の頂面に凹設されたキャビティ2の開口が絞られたリエントラント型(Re-entrant)の燃焼室を示す(特許文献2参照)。
図5に示すように、キャビティ2には、ピストン1の上方に配置された燃料噴射ノズル(以下、ノズルという。)3から燃料が噴射される。このように筒内(シリンダ内)に直接噴射された燃料は、空気と混合し、ピストン1の上昇に伴って圧縮され、着火に至る。そのため、燃焼室となるキャビティ2の形状は、燃料と空気との混合気の形成に大きく影響し、ひいては燃焼効率及び排ガス性状等のエンジン性能に多大な影響を及ぼすことが知られている。
ところで、燃焼効率の改善を図るためにノズル3の噴孔の面積を小さくし、且つ噴孔の数を増やして(例えば10以上)総噴孔面積を確保するようにしたものが知られている。噴孔の数をある程度以上に増やそうとした場合、通常のノズル3のように各噴孔を周方向に間隔を隔てて一列に配置することが困難となるため、図6に示すように、噴孔4を上下二段の所謂千鳥配置とすることが行われる。
千鳥配置された噴孔4は、ノズル3に周方向に間隔を隔てて配設された複数の上段噴孔4aと、上段噴孔4a同士の間で且つ上段噴孔4aよりも下方において周方向に間隔を隔てて配設された複数の下段噴孔4bとの二種から成り、周方向に間隔を隔てて一列に配置された通常の噴孔よりも噴孔数を増やすことができる。
特開2002−122024号公報 浅皿型 特開2008−267155号公報 リエントラント型
しかし乍ら、このようにして噴孔4の数を増やすほど、夫々の噴孔4間の距離が短くなり、隣り合う上段噴孔4aと下段噴孔4bとから噴射された燃料の噴霧がキャビティ2の壁面2xに衝突した後、噴霧同士の干渉が強くなる。
詳しくは、上段噴孔4aから噴射された燃料の噴霧は、図5に実線矢印Aで示すようにキャビティ2の壁面2xの比較的上部分に衝突し、下段噴孔4bから噴射された燃料の噴霧は、図5に破線矢印Bで示すようにキャビティ2の壁面2xの比較的下部分に衝突する。隣り合う上段噴孔4aと下段噴孔4bとから噴射されキャビティ2の壁面2xに衝突した噴霧は、衝突位置から壁面2xに沿って夫々上下左右に広がる。このため、隣り合う上段噴孔4aと下段噴孔4bとの距離が短くなると、噴霧同士の干渉が強くなってしまう。
噴霧同士の干渉が強くなると、その干渉部分では相対的に空気の量に対して燃料量が増えるため、その部分の混合気は燃料過濃となり、煤(スート:SOOT)や一酸化炭素(CO)の多量排出を招く要因となる。
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、噴孔が上下二段に千鳥配置されたノズルを備えたディーゼルエンジンの燃焼室において、ノズルの各噴孔から噴射された燃料の噴霧がキャビティの壁面に衝突した後、噴霧同士の干渉を抑制したディーゼルエンジンの燃焼室を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明は、ピストンの頂面に、該ピストンの上方に配置された燃料噴射ノズルから噴射された燃料の噴霧が衝突するキャビティを凹設したディーゼルエンジンの燃焼室であって、前記燃料噴射ノズルが、周方向に間隔を隔てて形成された複数の上段噴孔と、該上段噴孔同士の間で且つ前記上段噴孔よりも下方において周方向に間隔を隔てて形成された複数の下段噴孔とを有し、前記キャビティの壁面が、前記上段噴孔から噴射された燃料の噴霧が衝突する部分よりも、前記下段噴孔から噴射された燃料の噴霧が衝突する部分の方がキャビティの内方に隆起するように、周方向に交互に凸凹に形成されたものである。
前記上段噴孔から噴射された燃料の噴霧が前記キャビティの壁面に衝突する衝突位置が、前記下段噴孔から噴射された燃料の噴霧が前記キャビティの壁面に衝突する衝突位置よりも高いことが好ましい。
本発明に係るディーゼルエンジンの燃焼室によれば、燃料噴射ノズルの下段噴孔から噴射された燃料の噴霧は、キャビティ壁面に周方向に交互に凸凹に形成された凸の部分に衝突して広がり、燃料噴射ノズルの上段噴孔から噴射された燃料の噴霧は、キャビティ壁面に周方向に交互に凸凹に形成された凹の部分に衝突して広がる。このように、隣り合う下段噴孔と上段噴孔とから夫々噴射された燃料の噴霧は、キャビティの内外方向に位置が異なる凸の部分と凹の部分とに衝突して広がるので、衝突後に広がった際の干渉が抑えられる。よって、燃料の過濃領域が生成されることを抑制でき、スート、COの排出量を低減できる。
本発明の一実施形態に係るディーゼルエンジンの燃焼室の概要を示す説明図であり、(a)はピストンの平面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)のc−c線断面図である。 図1のピストンの要部破断斜視図である。 従来例を示すディーゼルエンジンの燃焼室(浅皿型)の説明図であり、(a)はピストンの平面図、(b)はピストンの側断面図である。 別の従来例を示すディーゼルエンジンの燃焼室(リエントラント型)の説明図であり、(a)はピストンの平面図、(b)はピストンの側断面図である。 従来例に係るディーゼルエンジンの燃焼室のキャビティに、噴孔が上下二段に千鳥配置された燃料噴射ノズルの各噴孔から燃料を噴射する様子を示すピストン及び燃料噴射ノズル等の断面図である。 図5のVI−VI線矢視図であり、噴孔が上段噴孔と下段噴孔とから千鳥配置された燃料噴射ノズルの下面図である。
本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1(a)、図1(b)、図1(c)及び図2に示すように、本実施形態に係るディーゼルエンジンの燃焼室は、シリンダ内を昇降するピストン1の頂面に凹設されたキャビティ2を備えている。キャビティ2の形状は、浅皿型の他、リエントラント型、トロイダル型、バスタブ型等、様々な形状であってよい。ピストン1の上方には、キャビティ2の壁面2xに向けて燃料を噴射する燃料噴射ノズル(以下、ノズルという。)3が配置されている。ノズル3はシリンダヘッドに装着されている。
ノズル3の下部には、図6に示すように、周方向に間隔を隔てて複数の上段噴孔4aが形成されていると共に、上段噴孔4a同士の間で且つ上段噴孔4aよりも下方において周方向に間隔を隔てて複数の下段噴孔4bが形成されている。すなわち、このノズル3は、上段噴孔4aと下段噴孔4bとから上下二段の千鳥配置された噴孔4を有する。上段噴孔4aからは、図1(c)に実線矢印Aで示すようにキャビティ2の壁面2xの比較的上部分に向けて燃料の噴霧が噴射され、下段噴孔4bからは、図1(b)に破線矢印Bで示すようにキャビティ2の壁面2xの比較的下部分に向けて燃料の噴霧が噴射される。
上段噴孔4a及び下段噴孔4bの孔径は、噴霧の微細化を図って燃焼効率の改善を推進するため、非常に小さく、例えば100μm〜50μm程度に形成されている。但し、この数値に限定されるものではない。このように、各噴孔4a、4bの孔径を小さくした場合、全負荷時等における燃料の噴射量を確保するため、噴孔4a、4bの数を通常よりも増やして総噴孔面積を稼ぐ必要が生じる。本実施形態では、図6に示すように、上段噴孔4aの数を10、下段噴孔4bの数を10とし、計20個の噴孔としているが、この数値に限定されるものではない。
このように上段噴孔4a及び下段噴孔4bの数を増やすと、隣り合う上段噴孔4aと下段噴孔4bとの距離が短くなり、これら噴孔4a、4bから噴射されてキャビティ2の壁面2xに衝突した噴霧同士の干渉が強くなり易い。そこで、この干渉を和らげる(抑える)ために、キャビティ2の壁面2xに、上段噴孔4aから噴射された燃料の噴霧が衝突する部分よりも、下段噴孔4bから噴射された燃料の噴霧が衝突する部分の方がキャビティ2の内方に隆起するように、周方向に交互に凸凹に凸の部分(凸部7b)と凹の部分(凹部7a)とを形成している。
図1(a)、図1(b)、図1(c)及び図2において、破線矢印Bは下段噴孔4bから凸部7bに向けて噴射された燃料の噴射方向を表し、実線矢印Aは上段噴孔4aから凹部7aに向けて噴射された燃料の噴射方向を表している。凸部7bの数は下段噴孔4bの数と等しく、凹部7aの数は上段噴孔4aの数と等しい。なお、実線矢印A及び破線矢印Bは、図2では見易くするために一つずつしか表示していないが、実際には周方向に間隔を隔てて複数存在する(図1(a)参照)。また、図2において、凸部7bと凹部7aとの接続部8、凸部7bの角部9は、アール形状となっていてもよい。
図1(b)に示すように、凸部7bは、ピストン1の頂面10とキャビティ2の底面11との間に、キャビティ2の内方(径方向内方)且つ斜め上方に向けてスムーズに隆起された山部12を有する。この山部12の頂部13には、圧縮行程時にピストン1が上昇する際に上死点の前(上死点近傍)で、ノズル3の下段噴孔4bから噴射された燃料の噴霧が衝突する。すなわち、ノズル3の下段噴孔4bの孔の向きは、圧縮行程の上死点前に下段噴孔4bから噴射された燃料の噴霧が、山部12の頂部13に衝突する向きに形成されている。ノズル3の下段噴孔4bから燃料が噴射されるとき、同時に上段噴孔4aからも燃料が噴射される。
図1(c)に示すように、ノズル3の上段噴孔4aから噴射された燃料の噴霧は、凹部7aのピストン頂面10に近い上端部分14に衝突する。すなわち、ノズル3の上段噴孔4aの孔の向きは、圧縮行程の上死点前に、上述したように下段噴孔4bから燃料が噴射されると同時に上段噴孔4aから噴射された燃料の噴霧が、凹部7aの上端部分14に衝突する向きに形成されている。また、凹部7aの上端部分14と繋がるピストン1の頂面10には、緩斜面15が形成されている。緩斜面15は、凹部7aの上端部分14に衝突した噴霧をスムーズにピストン頂面10の外方に導く機能を発揮する。
本実施形態の作用を述べる。
図1(a)、図1(b)、図1(c)及び図2に示すように、ノズル3の下段噴孔4bから噴射された燃料の噴霧は、キャビティ壁面2xに周方向に交互に凸凹に形成された凸部7bの山部12の頂部13に衝突して上下左右に広がり、ノズル3の上段噴孔4aから噴射された燃料の噴霧は、キャビティ壁面2xに周方向に交互に凸凹に形成された凹部7aの上端部分14に衝突して上下左右に広がる。
ここで、上段噴孔4aから噴射された噴霧のキャビティ壁面2xへの衝突位置(凹部7aの上端部分14)に対し、下段噴孔4bから噴射された噴霧のキャビティ壁面2xへの衝突位置(凸部7bの頂部13)は、キャビティ2の内方にずれている。よって、隣り合う上段噴孔4aと下段噴孔4bとから同時に噴射された燃料の噴霧は、キャビティ2の内外方向に位置が異なる凹部7aと凸部7bとに夫々衝突して広がることになり、衝突後に広がった噴霧同士の干渉が抑えられる。
すなわち、噴孔4が千鳥配置されたノズル3においては、上段噴孔4aと下段噴孔4bとから噴射される燃料の噴霧がキャビティ壁面2xに衝突する位置が上段噴孔4aと下段噴孔4bとで上下に異なることから、それぞれの噴孔から噴射された噴霧に対応するように、夫々の噴霧が衝突するキャビティ壁面2xの形状を、キャビティ2の内外方向に凸凹に形成している。
具体的には、下段噴孔4bに対してはその噴孔4bから比較的近い位置で噴霧が衝突するようにキャビティ壁面2xに凸部7bを形成し、上段噴孔4aに対しては衝突距離が長くなるようにキャビティ壁面2に凹部7aを形成している。これにより、噴孔4が千鳥配置されたノズル3に対して、筒内の空気利用率を高めることができ、スートやCO等の排出物を低減できる。
また、各噴孔4a、4bから燃料が同時に噴射されるとき、下段噴孔4bからキャビティ壁面2xへの衝突位置(凸部7bの頂部13)までの距離の方が上段噴孔4aからキャビティ壁面2xへの衝突位置(凹部7aの上端部分14)までの距離よりも近いので、上段噴孔4aと下段噴孔4bとから同時に燃料が噴射されると、下段噴孔4bから噴射された噴霧が凸部7bの頂部13に衝突して或る程度広がった後、上段噴孔4aから噴射された噴霧が凹部7aの上端部分14に衝突することになる。よって、衝突後に噴霧が広がるタイミングに下段噴孔4bと上段噴孔4aとで時間差が生じ、これによっても隣り合う噴霧が広がって重なることによる干渉が抑えられる。
以上述べたように、隣り合う上段噴孔4aと下段噴孔4bとから夫々噴射された燃料の噴霧は、キャビティ壁面2xに衝突した後、隣り合う噴霧同士の干渉が抑えられるので、燃料の過濃領域が生成されることが抑制され、スート、COの排出量が低減される。
また、図1(b)、図1(c)に示すように、上方の上段噴孔4aから噴射された燃料の噴霧がキャビティ壁面2xに衝突する衝突位置が、下方の下段噴孔4bから噴射された燃料の噴霧がキャビティ壁面2xに衝突する衝突位置よりも高い。このため、各噴孔4a、4bから噴射された燃料の噴霧は、キャビティ壁面2xに衝突する以前においても、側方視で交差(クロス)することはなく、噴霧同士が干渉し難い。
1 ピストン
2 キャビティ
2x 壁面
3 燃料噴射ノズル
4 噴孔
4a 上段噴孔
4b 下段噴孔
7a 凹部
7b 凸部
10 頂面

Claims (2)

  1. ピストンの頂面に、該ピストンの上方に配置された燃料噴射ノズルから噴射された燃料の噴霧が衝突するキャビティを凹設したディーゼルエンジンの燃焼室であって、
    前記燃料噴射ノズルが、周方向に間隔を隔てて形成された複数の上段噴孔と、該上段噴孔同士の間で且つ前記上段噴孔よりも下方において周方向に間隔を隔てて形成された複数の下段噴孔とを有し、
    前記キャビティの壁面が、前記上段噴孔から噴射された燃料の噴霧が衝突する部分よりも、前記下段噴孔から噴射された燃料の噴霧が衝突する部分の方がキャビティの内方に隆起するように、周方向に交互に凸凹に形成された
    ことを特徴とするディーゼルエンジンの燃焼室。
  2. 前記上段噴孔から噴射された燃料の噴霧が前記キャビティの壁面に衝突する衝突位置が、前記下段噴孔から噴射された燃料の噴霧が前記キャビティの壁面に衝突する衝突位置よりも高い
    請求項1に記載のディーゼルエンジンの燃焼室。
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