JP2011184494A - タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】従来技術よりも氷上摩擦力および耐摩耗性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分100質量部に対し、下記のゲルを1〜20質量部配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物と、該ゴム組成物をトレッド(3)に使用した空気入りタイヤ。ゲル:ポリビニルアルコール粉末を、水、または、水と水酸基、アミノ基およびアミド基から選択された基を有する有機溶媒とからなる水溶液に溶解させ、そこに架橋剤を添加して架橋させたゲル。
【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、氷上摩擦力および耐摩耗性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
近年、乗用車用スタッドレスタイヤにおいては、その氷上摩擦性能を高めることが課題となっている。そこで、ゴムに硬質異物、発泡剤、中空微粒子を配合し、表面にミクロな凹凸をつくることによって、氷の表面に発生する水膜を除去し、氷上摩擦力を向上させる手法が数多く検討されている。しかしながら、これらの方法では、添加剤の材質がもろいため、混合後に添加剤の一部が微細化または破壊されて所定の効果を発揮できない場合があるという問題がある。また、ゴム組成物にこれらの異物粉体を混入した場合には、ゴム加硫物の耐摩耗性が著しく低下するのが一般的である。
そこで上記課題を解決するため下記特許文献1には、ジエン系ゴムに特定サイズの膨張黒鉛を添加したタイヤ用ゴム組成物が提案されている。
特許第3553890号公報
本発明の目的は、従来技術よりも氷上摩擦力および耐摩耗性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ゴム成分にポリビニルアルコールのゲルを特定量配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.ゴム成分100質量部に対し、ポリビニルアルコールのゲルを1〜20質量部配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物。
2.前記ゲルが、ポリビニルアルコール粉末を、水、または、水と水酸基、アミノ基およびアミド基から選択された基を有する有機溶媒とからなる水溶液に溶解させ、そこに架橋剤を添加して架橋させて得られたゲルであることを特徴とする前記1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
3.前記架橋剤を、前記ポリビニルアルコール粉末に対して0.1〜60質量%の割合で添加することを特徴とする前記2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
4.前記1〜3のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
本発明によれば、ゴム成分にポリビニルアルコールのゲルを特定量配合することにより、従来技術よりも氷上摩擦力および耐摩耗性に優れたタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、乗用車用の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール2と、両サイドウォール2に連なるトレッド3からなり、ビード部1、1間に繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。トレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。また、ビード部1においてはリムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
以下に説明する本発明のゴム組成物は、とくにトレッド3に有用である。
(ゴム成分)
本発明で使用されるゴム成分は、タイヤトレッド用ゴム組成物に配合することができる任意のゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
これらの中でも、本発明の効果の点からジエン系ゴムはNR、BRが好ましい。
(ゲル)
本発明で使用されるゲルは、ポリビニルアルコールをゲル化させたものであればとくに制限されないが、好適には、ポリビニルアルコール粉末を、水、または、水と水酸基、アミノ基およびアミド基から選択された基を有する有機溶媒とからなる水溶液に溶解させ、そこに架橋剤を添加して架橋させて得られるゲルである。
本発明で使用されるポリビニルアルコールは、通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化して得られるものが例示される。ケン化度としては、75モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは85〜94モル%である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコールの重合度としては、例えば300〜3000、好ましくは400〜1600である。なお、ポリビニルアルコールは変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども使用し得る。なお、上記水への溶解性を考慮すると、ポリビニルアルコールは粉末化して用いるのがよい。
また、前記有機溶媒としては、とくに制限されないが、下記のものが挙げられる。
水酸基を有する有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、トリメチレングリコール、1,3−オクチレングリコール、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブタンジオール、ヘキシレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ベンジルアルコール、2−エチルヘキサノール、n−オクタノール、エチレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
アミノ基を有する有機溶媒としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン等の脂肪族アミン;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン等の環状アミン類等が挙げられる。
アミド基を有する有機溶媒としては、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N−メチルプロパンアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、アセトアミド等が挙げられる。
上記各種溶媒は2種以上を混合してもよい。
架橋剤としては、例えば、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩(例えば、オルトホウ酸塩、InBO、ScBO、YBO、LaBO、Mg(BO)、Co(BO)、二ホウ酸塩(例えば、Mg、Co)、メタホウ酸塩(例えば、LiBO、Ca(BO)、NaBO、KBO)、四ホウ酸塩(例えば、Na・10HO)、五ホウ酸塩(例えば、KB・4HO、Ca11・7HO、CsB)等のホウ素化合物;チタンラクテート、ジヒドロキシチタンビス(ラクテート)、ジヒドロキシチタンビス(グリコレート)ジヒドロキシビス(ラクテート)、チタンラクテートアンモニウム塩、チタンジアンモニウム、ジヒドロキシビス(スレート)チタンアンモニウム、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジ−n−ブトキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、チタンテトラキス(アセチルアセトナート))等の乳酸チタンや有機チタン化合物;モノヒドロキシトリス(ラクテート)ジルコニウムアンモニウム、テトラキス(ラクテート)ジルコニウムアンモニウム、モノヒドロキシトリス(スレート)ジルコニウムアンモニウム等の水溶性有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。中でも耐摩耗性の観点から有機チタン化合物を使用するのがより好ましい。
ポリビニルアルコール粉末と、水または前記水と前記有機溶媒とからなる水溶液と、の混合比は、前者の質量を1としたときに、後者の質量を5〜55に設定するのが好ましい。
また、前記架橋剤は、前記ポリビニルアルコール粉末に対して0.1〜60質量%の割合で添加することが好ましい。架橋剤の添加量が0.1質量%未満では、ゲル化が不十分となる恐れがある。逆に60質量%を超えると必要以上に硬くなるためミクロな柔軟体を形成できず氷上摩擦力が低下する傾向にある。さらに好ましい架橋剤の添加量は、架橋剤の種類によって異なるが、四ホウ酸ナトリウムでは6〜60質量%である。
(タイヤトレッド用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対し、上記のゲルを1〜20質量部配合してなることを特徴とする。ゲルの配合量が1質量部未満であると配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量部を超えると、耐摩耗性が悪化する。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物において、上記ゲルのさらに好ましい配合量は、ゴム成分100質量部に対し、5〜15質量部である。
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ゴム中にゲルが粒状のミクロな柔軟体となって存在し、これによりトレッドと氷との密着性が高まり、氷上摩擦力が向上する。また、走行中にゲルがトレッドから脱離し、トレッドの表面が粗くなり、氷上摩擦力が向上する。
本発明に係るタイヤトレッド用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、充填剤、老化防止剤、可塑剤などのタイヤトレッド用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
実施例1〜7および比較例1〜3
サンプルの調製
まず、下記表1に示す配合(質量部)において、ポリビニルアルコール粉末PVA(関東化学(株)製ポリビニルアルコール#500、ケン化度=86.5モル%、平均重合度=500)と、水または水と有機溶媒とからなる水溶液と、架橋剤とを混合し、ゲルを作製した。なお架橋剤としての四ホウ酸ナトリウムは、健栄製薬(株)製のホウ砂を使用した。また有機チタン化合物はジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)を用い、マツモトファインケイミカル株式会社製のオルガチックスTC400(を使用した。有機溶媒としてのジエチレングリコールは、ナガセ化成(株)製Ex850を使用した。
次に、表2に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、約150℃でミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えて混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃で20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で物性を測定した。
氷上摩擦力:上記加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムにはりつけ、インサイドドラム型氷上摩擦試験機にて氷上摩擦係数を測定した。測定温度は−1.5℃、荷重5.5kg/cm3、ドラム回転速度は25km/hである。結果は比較例1の値を100として指数表示し、この数字が大きいほどゴムと氷の摩擦力が良好であることを示す。
耐摩耗性:JIS K6264に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所(株)製)を使用して荷重4.0kg(=39N)、スリップ率30%の条件で測定した。(比較例1の摩耗量)×(加硫ゴム試験片の摩耗量)を100として指数表示した。この数字が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
結果を表2に併せて示す。
Figure 2011184494
Figure 2011184494
*1:NR(RSS#3)
*2:BR(日本ゼオン(株)製Nipol BR1220)
*3:カーボンブラック(東海カーボン(株)製シースト6)
*4:シリカ(東ソー・シリカ(株)製Niosil AQ)
*5:シリカカップリング剤(エボニックデグッサジャパン(株)製Si69)
*6:亜鉛華(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*7:ステアリン酸(日油(株)製ビーズステアリン酸)
*8:老化防止剤(FLEXSYS製SANTOFLEX 6PPD)
*9:ワックス(大内新興化学工業(株)製パラフィンワックス)
*10:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)製エキストラクト4号S)
*11:PVA(関東化学(株)製ポリビニルアルコール#500)
*12:硫黄(鶴見化学工業(株)製金華印油入微粉硫黄)
*13:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ−G)
上記の表から明らかなように、実施例1〜7で調製されたタイヤトレッド用ゴム組成物は、ゴム成分にポリビニルアルコールのゲルを特定量配合したので、従来の代表的な比較例1に比べて、氷上摩擦力および耐摩耗性に優れている。
これに対し、比較例2は、PVAをゲル化せずにそのままゴム組成物に添加した例であるので、氷上摩擦力および耐摩耗性が共に改善されない。
比較例3は、ゲルの配合量が本発明で規定する上限を超えているので、耐摩耗性が悪化した。
1 ビード部
2 サイドウォール
3 トレッド
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション

Claims (4)

  1. ゴム成分100質量部に対し、ポリビニルアルコールのゲルを1〜20質量部配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物。
  2. 前記ゲルが、ポリビニルアルコール粉末を、水、または、水と水酸基、アミノ基およびアミド基から選択された基を有する有機溶媒とからなる水溶液に溶解させ、そこに架橋剤を添加して架橋させて得られたゲルであることを特徴とする請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
  3. 前記架橋剤を、前記ポリビニルアルコール粉末に対して0.1〜60質量%の割合で添加することを特徴とする請求項2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
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