JP2011182935A - 洗濯機の制振装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】洗濯槽の上下方向の振動に影響を受けずに、洗濯槽および洗濯機筐体の水平方向の振動を簡単な構成で防止する洗濯機の制振装置を提供する
【解決手段】洗濯機の制振装置は、洗濯物を内部に収容するドラム33と、前記ドラム33を収容し、洗濯機筐体に対して支持手段により支持される洗濯槽32と、前記ドラム33を回転駆動する駆動モータと、前記洗濯槽の水平方向振動を検出する加速度センサ21と、前記洗濯機筐体に対して実質的に水平方向に設置され、水平方向の駆動力を発生するリニアモータ1と、前記リニアモータ1の可動軸2と前記洗濯槽32間を接続し、前記リニアモータ1が発生した水平方向の駆動力を前記洗濯槽32に伝達し、水平方向以外の方向の振動は許容する力伝達手段と、前記加速度センサ21で検出した水平方向振動に基づいて、前記リニアモータ1の駆動力を制御する制御手段とを有することを特徴としている。
【選択図】図1

Description

本発明は、洗濯機について生じる振動を抑制する制振装置に関する。
一般的に、洗濯機は、洗濯物が洗濯槽内部で偏り、洗濯槽にアンバランス荷重がかかる。そのアンバランス荷重による洗濯槽の振動は、洗濯機の動作に影響を与える重要な問題である。特に、脱水運転でのドラムの回転数が上昇していく中で、洗濯槽の支持系の共振周波数を通過する際に、洗濯槽の横揺れが大きくなりやすく、洗濯槽と筐体とが接触してエラーが発生し、脱水運転停止の原因となっている。
共振点での振動増加を防ぐためには、サスペンションなどの洗濯槽支持系に大きな減衰を付加するのが有効である。しかし、支持系の減衰付加は、共振周波数よりも高い周波数範囲において、振動の伝達量を増加させてしまうという特性があるため、脱水運転速度が高速に達したときに、洗濯槽の振動を抑えるのと同時に、非常に大きな振動を洗濯機筐体に伝達してしまう可能性がある。そのため、共振振動を十分に抑えるような大きい減衰を付加することはできない。
このような課題に対して、特許文献1には、洗濯機筐体と洗濯槽間で、洗濯槽の下面および側面にアクティブ制振装置を有する振動絶縁機構を配置し、洗濯槽の振動の増加を防止し、かつ、洗濯機筐体側への振動伝達についても抑制するものが挙げられている。
特開平11−179091号公報
しかしながら、特許文献1の制振装置では、洗濯槽と洗濯機筐体間で、洗濯槽の下面および側面に振動絶縁機構を配置するため、配置するためのスペースが必要になる。これを実現するためには、洗濯機筐体サイズを大きくするか、洗濯槽の体積を小さくせざるを得ず、スペース効率が悪化してしまうという課題がある。また、スペースを確保するために、振動絶縁機構を側面のみに配置すると、上下方向に洗濯槽が振動することにより、横方向の振動絶縁機構の性能を十分に発揮することができないという課題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗濯槽の上下方向の振動に影響を受けずに、洗濯槽および洗濯機筐体の水平方向の振動を簡単な構成で防止する洗濯機の制振装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の洗濯機の制振装置は、洗濯物を内部に収容するドラムと、前記ドラムを収容し、洗濯機の筐体に対して支持手段により支持される洗濯槽と、前記ドラムを回転駆動する駆動モータと、前記洗濯槽の水平方向振動を検出する振動検出手段と、前記洗濯機筐体に対して実質的に水平方向に設置され、水平方向の駆動力を発生するリニアアクチュエータと、前記リニアアクチュエータの可動軸と前記洗濯槽間を接続し、前記リニアアクチュエータが発生した水平方向の駆動力を前記洗濯槽に伝達し、水平方向以外の方向の振動は許容する力伝達手段と、前記振動検出手段で検出した水平方向振動に基づいて、前記リニアアクチュエータの駆動力を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
本発明の洗濯機の制振装置によれば、洗濯槽の水平方向以外の方向の振動に影響を受けずに、洗濯槽および洗濯機筐体の水平方向の振動を簡単な構成で防止することができる。
本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機を背面から見た概略構成図 本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機を側面から見た概略構成図 リニアモータの構成を示す概略構成図 本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機の制振動作を示す概略構成図 本発明の実施例2に係るドラム式洗濯乾燥機を背面から見た概略構成図 本発明の実施例3に係るドラム式洗濯乾燥機を背面から見た概略構成図 本発明の実施例4に係るドラム式洗濯乾燥機のドラムの振動量を示す図
(実施例1)
以下、本発明の実施例1について図1乃至図4を参照して説明する。図1はドラム式洗濯乾燥機100(以下、洗濯機100と称す。)を背面から見た概略構成図であり、図2は洗濯機100を側面から見た概略構成図を示す。
洗濯機100の外殻を形成する洗濯機筐体31は、前面に円形状に開口する洗濯物出入口を有しており、この洗濯物出入口は、ドアにより開閉される。洗濯機筐体31の内部には、背面が閉鎖された有底円筒状の洗濯槽32が配置されており、この洗濯槽32の背面中央部には洗濯用モータとしての永久磁石モータ34の固定子がねじ止めにより固着されている。そして、洗濯槽32は、洗濯槽32の下部に2本配置された下方支持部35と、洗濯槽32の上部に配置された上方支持部36とにより洗濯機筐体31とやわらかく支持され、さらに後述する水平方向振動抑制部101により洗濯機筐体31と接続されている。また、洗濯槽32は、洗濯槽32の振動量を検知して加速度信号を出力する振動検出手段である加速度センサ21が任意の場所に設置されている。
永久磁石モータ34の回転軸は、後端部が永久磁石モータ34の回転子に固定されており、前端部が洗濯槽32内に突出している。回転軸の前端部には、背面が閉鎖された有底円筒状のドラム33が洗濯槽32に対して同軸状となるように固定されており、このドラム33は、永久磁石モータ34の駆動により回転軸と一体的に回転する。なお、ドラム33には空気および水を流通可能な複数の流通孔と、ドラム33内の洗濯物の掻き上げやほぐしを行うための複数のバッフルが設けられている。
水平方向振動抑制部101は、洗濯槽32側に固定された第1球面リンク部11と、洗濯機筐体31側に固定されたリニアアクチュエータ1と、リニアアクチュエータ1の可動軸2側に固定された第2球面リンク部12と、第1球面リンク部11と第2球面リンク部12との間に接続された接続部材13とから構成されている。
リニアアクチュエータ1は、例えば、リニアモータ1であり、リニアモータ筐体4が固定用ブラケット3を介して洗濯機筐体31に固定されている。また、リニアモータ1は、水平方向に設置されており、可動軸2は水平方向に可動する構成となっている。図3は、リニアモータ1の構成を示す図である。円筒断面を持つリニアモータ筐体4の内部には、交流磁界を発生させるための固定子コイル7が円筒状に配置されている。また、リニアモータ筐体4の中心軸には、周囲に永久磁石8を列配置した棒状の可動軸2が配置されている。また、リニアモータ筐体4の両端付近には、可動軸2を摺動支持するための摺動子9が配置され、可動軸2をスライド自在に支持している。
第1球面リンク部11は、洗濯槽32に固定された洗濯槽側部材14と接続部材13の一端とをリンクするもので、少なくとも上下方向に回動可能となっている。第2球面リンク部12は、リニアモータ1の可動軸2の先端に配置された可動軸側部材15と接続部材13の他端とをリンクするもので、少なくとも上下方向に回動可能となっている。第1球面リンク部11、第2球面リンク部12および接続部材13とで、リニアモータ1の駆動力を洗濯槽32に伝達する力伝達手段を構成する。
リニアモータ1は、可動軸2を駆動するためのサーボドライバ22と接続されている。サーボドライバ22は、リニアモータ1の駆動力指令信号をリアルタイムに出力する制振制御装置23と接続されている。制振制御装置23は、前述した加速度センサ21と接続されている。制振制御装置23は、加速度センサ21からの加速度信号に基づき、所定の制振制御演算を実施してリニアモータ1の駆動力指令信号をサーボドライバ22にリアルタイムに出力する。サーボドライバ22は、制振制御装置23からの信号を受け、リニアモータ1の可動軸2を駆動する。なお、図1では、制振制御装置23およびサーボドライバ22を洗濯機100の外部に配置しているが、洗濯機100の内部に設置されていても良い。
図1は、制振制御装置23の構成、つまり、洗濯槽32に設置された加速度センサ21から出力される加速度信号に基づき、洗濯槽32の振動を低減するための駆動力をリニアモータ1で発生させるための、制振制御アルゴリズムの一例を示している。加速度信号は、制振制御装置23のA/D変換器24、ローパスフィルタ25、ハイパスフィルタ26、積分器27、ゲイン乗算器28、D/A変換器29を介して、リニアモータ1の駆動力指令信号に変換された上で、リニアモータ1のサーボドライバ22へ出力される。この駆動力指令信号に従い、リニアモータ1はリアルタイムに洗濯槽32の水平振動制御用の駆動力を発生する。
次に、本実施例の作用について説明する。
洗濯機運転時に、ドラム33内部の洗濯物のアンバランス荷重によって、洗濯槽32が水平方向に振動すると、振動センサがその振動加速度をリアルタイムに検出し、制振制御装置23のA/D変換器24へ加速度信号を出力する。A/D変換器24は、加速度信号をA/D変換し、ローパスフィルタ25へ出力する。ローパスフィルタ25は、入力された加速度信号のうち、制振制御に悪影響を及ぼす高周波ノイズ成分を取り除き、ハイパスフィルタ26へ出力する。ハイパスフィルタ26は、入力された加速度信号のうち、制振制御に悪影響を及ぼすDC成分を取り除き、積分器27へ出力する。なお、このハイパスフィルタ26のカットオフ周波数は、洗濯槽32の振動の周波数よりは十分低く設定しておくとよい。積分器27は、ここまでの処理で制振制御に悪影響を及ぼす成分を除去したクリーンな加速度信号を積分することで洗濯槽32の水平方向の振動速度信号に変換し、ゲイン乗算器へ出力する。ゲイン乗算器は、振動速度信号に所定のゲインを乗算し、D/A変換器29へ出力する。D/A変換器29は、入力された信号をD/A変換し、サーボドライバ22へ駆動力指令信号として出力する。
サーボドライバ22は、制振制御装置23から出力された駆動力指令信号に従って、リニアモータ1の固定子コイル7の電流を制御して、駆動力指令信号に従った水平方向の駆動力を可動軸2に発生させる。リニアモータ1が駆動力を発生すると、リニアモータ1の可動軸2が駆動し、その力が第2球面リンク部12、接続部材13、第1球面リンク部11を介して、洗濯槽32に水平方向に加えられる。
次に、第1球面リンク部11、接続部材13、第2球面リンク部12を設けた作用について説明する。
洗濯槽32の振動モードは複数存在し、洗濯槽32が水平方向に振動するモード以外に、洗濯槽32が上下方向に振動するモード、洗濯槽32が重心回りに回転方向に振動するモードなどがある。洗濯槽32が上下方向に振動するモードが発生した場合の第1球面リンク部11、接続部材13、第2球面リンク部12の動きを図4(a)、(b)に示す。図4(a)に示すように、洗濯槽32が振動によって上方向に変位すると、洗濯槽32側に固定された第1球面リンク部11は洗濯槽32と同様に上方向に移動する。一方、リニアモータ1の可動軸2側に固定された第2球面リンク部12は、リニアモータ1に固定されているので、高さは常に一定である。そのため、第1球面リンク部11と第2球面リンク部12の相対的な高さに変動が生じるが、2つの球面リンク部がそれぞれ上下方向に回動自在であるため、各リンク部がそれぞれ一定量だけ回動して、洗濯槽32とリニアモータ1との高さの変動を機構的に吸収する。同様に、図4(b)に示すように、洗濯槽32が振動によって下方向に変位しても、2つの球面リンク部がそれぞれ上下方向に回動自在であるため、各リンク部がそれぞれ一定量だけ回動して、洗濯槽32とリニアモータ1との相対的な高さの変動を機構的に吸収する。従って、洗濯槽32が上下方向に振動しても、その影響がリニアモータ1側に伝わるのを防止できる。さらに、リニアモータ1からの駆動力によって、洗濯槽32を上下方向に振動させることもない。
なお、細かく見ると、第1球面リンク部11と第2球面リンク部12との高さに相違が生じると、両者を接続する接続部材13が水平に対して傾くことになるため、上下方向の相対距離だけでなく、水平方向の相対距離も変化し、水平方向にもわずかな分力成分が生じることになる。しかし、第1球面リンク部11と第2球面リンク部12間の距離に対して、洗濯槽32の上下変位量は十分小さいため、実際にはこの量はほぼ無視できるものとなる。なお、この影響が無視できない状況が生じた場合には、第1球面リンク部11と第2球面リンク12部間の距離を、可能な限り長く設定することにより、この影響を低減することができる。
本実施例の構成によれば、洗濯槽32の水平方向振動に対しては、洗濯槽32の振動が直接、リニアモータ1に伝達するため、リニアモータ1の駆動力で制振できる。一方、洗濯槽32が水平方向以外の上下方向や前後方向へ振動している場合は、第1球面リンク部11、接続部材13、第2球面リンク部12を有することにより、振動による変位がリニアモータ1に直接伝達することはない。つまり、洗濯槽32の上下振動、前後振動に対してはそれぞれの球面リンク部の回動によってその変位が吸収され、水平振動に対しては球面リンク部が動作せずにリニアモータ1の可動軸2と洗濯槽32間が直結された状態に等しくなり、リニアモータ1の駆動力をロスなく洗濯槽32に与えることが可能となる。
また、上記制御方法を用いた場合、洗濯槽32が水平振動を生じると、その水平振動に比例した制振力が、洗濯槽32に加えられることとなる。この制御によれば、特に洗濯槽32の水平方向の共振周波数において、洗濯槽32の振動増加を大幅に抑制し、高い制振効果を発揮することができ、かつ、共振周波数よりも高い周波数においても振動を抑制することができる。また、油圧ダンパなどを設置した場合、高速回転に入ったときに、振動を筐体に伝達させてしまうこととなるが、本実施例では、上記の制御を行うことにより、共振周波数以外の周波数で振動を増加させることが無い。
(実施例2)
本発明の実施例2について図5を参照して説明する。なお、上述した実施例1と同一部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
本実施例の水平方向振動抑制部102は、洗濯槽32側に固定された第1球面リンク部11と、洗濯機筐体31側に固定された第3球面リンク部16と、第1球面リンク11部と第3球面リンク部16との間に配置したリニアモータ1とから構成されている。
第1球面リンク部11は、洗濯槽32に固定された洗濯槽側部材14とリニアモータ1の可動軸2の先端とをリンクするもので、少なくとも上下方向に回動可能となっている。第3球面リンク部16は、洗濯機筐体31に固定された洗濯機筐体側部材17とリニアモータ筐体4とをリンクするもので、少なくとも上下方向に回動可能となっている。第1球面リンク部11と第3球面リンク部16とで、リニアモータ1の駆動力を洗濯槽32に伝達する力伝達手段を構成する。
本実施例の作用について説明する。
洗濯機運転時に洗濯槽32が上下方向に変位すると、洗濯槽32側に固定されている第1球面リンク部11は洗濯槽32の動きに合わせて上下方向に変位する。一方、洗濯機筐体31に固定されている第3球面リンク部16は上下方向に変位しない。そのため、振動により第1球面リンク部11と第3球面リンク部16の相対的な高さに変動が生じるが、2つの球面リンク部がそれぞれ上下方向に回動自在であるため、各リンク部がそれぞれ一定量だけ回動して、その変動を機構的に吸収する。
本実施例の構成によれば、洗濯槽32の水平方向振動に対しては、洗濯槽32の振動が直接、リニアモータ1に伝達するため、リニアモータ1の駆動力で制振できる。一方、洗濯槽32が水平方向以外の上下方向や前後方向へ振動している場合は、第1球面リンク部11、第3球面リンク部16を有することにより、振動による変位がリニアモータ1に直接伝達することはない。つまり、洗濯槽32の上下振動、前後振動に対してはそれぞれの球面リンク部の回動によってその変位が吸収され、水平振動に対しては球面リンク部が動作せずにリニアモータ1の可動軸2と洗濯槽32間が直結された状態に等しくなり、リニアモータ1の駆動力をロスなく洗濯槽32に与えることが可能となる。
また、本実施例では、リニアモータ1が、実施例1の接続部材13を兼ねているため、接続部材13を設置する必要がなくなり、小さい設置スペースに制振装置を設置することが可能となる。
(実施例3)
本発明の実施例3について図6を参照して説明する。なお、上述した実施例1と同一部分については説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図6は、本実施例の制振制御のアルゴリズムを示す。なお、実施例1で記述したA/D変換器24、ローパスフィルタ25、ハイパスフィルタ26、D/A変換器29は、省略する。本実施例の洗濯槽32には、洗濯槽32の下部付近の水平方向の加速度を測定する第1加速度センサ41と、洗濯槽32の上部付近の水平方向の加速度を測定する第2加速度センサ42とが設置されている。第1加速度センサ41からの加速度信号および第2加速度センサ42からの加速度信号は、制振制御装置40に入力される。
制振制御装置40の第1積分器43aは、第1加速度センサ41からの加速度信号を積分して速度信号に変換し、第1ゲイン乗算器44aおよび第2積分器43bへ出力する。第1ゲイン乗算器44aは、速度信号に所定のゲインを乗じて加算器45へ出力する。第2積分器43bは、速度信号を積分して変位信号に変換し、第2ゲイン乗算器44bへ出力する。第2ゲイン乗算器44bは、変位信号に所定のゲインを乗じて加算器45へ出力する。
制振制御装置40の第3積分器43cは、第2加速度センサ42からの加速度信号を積分して速度信号に変換し、第3ゲイン乗算器44cおよび第4積分器43dへ出力する。第3ゲイン乗算器44cは、速度信号に所定のゲインを乗じて加算器45へ出力する。第4積分器43dは、速度信号を積分して変位信号に変換し、第4ゲイン乗算器44dへ出力する。第4ゲイン乗算器44dは、変位信号に所定のゲインを乗じて加算器45へ出力する。
ここで、各ゲイン乗算器44a,44b,44c,44dのゲインは、洗濯槽32の振動特性の数値モデルに基づき、適切に設計したものを用いる。
加算器45は、入力された上記4つの信号の和を演算し、リニアモータ1の駆動力指令信号として、サーボドライバ22へ出力する。
サーボドライバ22は、制振制御装置40から出力された駆動力指令信号に従って、リニアモータ1の固定子コイル7の電流を制御して、駆動力指令信号に従った水平方向の駆動力を可動軸2に発生させる。リニアモータ1が駆動力を発生すると、リニアモータ1の可動軸2が駆動し、その力が第2球面リンク部12、接続部材13、第1球面リンク部11を介して、洗濯槽32に水平方向に加えられる。
次に、本実施例の作用について説明する。一例を示すために第1〜第4ゲイン乗算器44a,44b,44c,44dのうち、第1ゲイン乗算器44aと第3ゲイン乗算器44cのゲインを0.5、第2ゲイン乗算器44bと第4ゲイン乗算器44dのゲインを0と設定した場合の効果について説明する。また、第1加速度センサ41から洗濯槽32重心までの距離L1は、第2加速度センサ42から洗濯槽32重心までの距離L2と等しいものとする。
この状態で、洗濯槽32の重心回りの回転振動が無く、水平方向にだけ振動している場合、第1加速度センサ41からの加速度信号と第2加速度センサ42からの加速度信号は等しく、両者をそれぞれ積分し、0.5のゲインを乗算して加算した信号は、実施例1のセンサ1個の場合と同じになり、効果も全く同等となる。
一方、洗濯槽32が水平方向に振動せず、重心回りの回転振動のみしている場合、洗濯槽32の下部の第1加速度センサ41からの加速度信号と、洗濯槽32の上部の第2加速度センサ42からの加速度信号は、互いに大きさが等しく、向きが逆である。このとき、両者をそれぞれ積分し、0.5のゲインを乗算して加算した信号は、互いに相殺されて0となり、制振力は0となる。
従って、本実施例の制御を行うと、洗濯槽32の水平振動成分だけを抽出して、それに対する制振力を発生させることができ、洗濯槽32の重心回りの回転振動については、不要な制振力を発生しない。
よって、設置スペースの制約などから、リニアモータ1からの駆動力を洗濯槽32下部に与えざるを得ない場合、その制振力によって、洗濯槽32の回転振動が励起される恐れがあるが、本実施例の制御を行うことで、その影響を緩和して、安定した洗濯槽32の水平方向振動制振を実現することができる。
(実施例4)
本発明の実施例4について図7を参照して説明する。
図7(a)は、脱水時のドラム33の回転速度の時間変化を示し、図7(b)は、洗濯槽32の水平振動量の時間変化を示し、図7(c)は洗濯槽32の上下振動量の時間変化を示す。図7(a)に示すように、脱水運転開始から停止までの運転パターンは、内部の洗濯物の状態によって変化するが、段階的に回転速度が上昇していき、最高速度での高速脱水を所定時間実施した後、脱水作業を完了する。
図7(b)で示すように、回転数が低〜中速領域では、水平方向の共振周波数に近いため、水平方向の振動が増大する。一方、図7(c)に示すように、その速度領域を超えると、洗濯槽32の上下方向の共振周波数を通過するため、上下方向の振動が増大する。
本実施例では、ドラム33の回転数を検出する手段を儲け、回転速度に応じて、水平振動の共振周波数を含む低〜中速域でのみ制振制御を行い、それ以上の上下振動が主となる回転数では制振制御を停止する。
これにより、水平振動が大きい範囲では、上述した実施例の制振制御を行うことで、水平振動を大幅に低減することができる。そして、水平振動の共振周波数を超えた領域では制振制御を停止することで、制振装置の消費電力を低減することができる。

以上、本発明に係る発明の実施例について説明したが、これらの実施例をそれぞれ組み合わせること、また、各実施例に示した構成に限られること無く、各実施例で本発明の効果が得られるための構成の趣旨を逸脱しない範囲内で、各構成材料、配置等を変更することも可能である。
例えば、洗濯槽32に対して第1球面リンク部11を固定する固定部の位置を重心位置としてもよい。これにより、制振するためのリニアモータ1からの駆動力が重心回りの回転動作となることを防ぐことができ、水平方向の制振制御の安定性が高くなる。
また、各リンク部は、上下方向への回動のみならず、前後方向等、多様な方向へ回動可能なものとしても上記の効果を得ることができる。
また、上記実施例では、ドラム33式洗濯乾燥機を例に挙げたが、縦型洗濯機に適用しても効果がある。
1…リニアモータ、2…可動軸、3…固定用ブラケット、4…リニアモータ筐体、11…第1球面リンク部、12…第2球面リンク部、13…接続部材、14…洗濯槽側部材、15…可動軸側部材、16…第3球面リンク部、17…洗濯機筐体側部材、21…加速度センサ、22…サーボドライバ、23,40…制振制御装置、31…洗濯機筐体、32…洗濯槽、33…ドラム、34…永久磁石モータ、100…洗濯機、101,102…水平方向振動抑制部

Claims (5)

  1. 洗濯物を内部に収容するドラムと、
    前記ドラムを収容し、洗濯機の筐体に対して支持手段により支持される洗濯槽と、
    前記ドラムを回転駆動する駆動モータと、
    前記洗濯槽の水平方向振動を検出する振動検出手段と、
    前記洗濯機筐体に対して実質的に水平方向に設置され、水平方向の駆動力を発生するリニアアクチュエータと、
    前記リニアアクチュエータの可動軸と前記洗濯槽間を接続し、前記リニアアクチュエータが発生した水平方向の駆動力を前記洗濯槽に伝達し、水平方向以外の方向の振動は許容する力伝達手段と、
    前記振動検出手段で検出した水平方向振動に基づいて、前記リニアアクチュエータの駆動力を制御する制御手段と、
    を有することを特徴とする洗濯機の制振装置。
  2. 前記力伝達手段は、前記洗濯槽側に固定された第1球面リンク部と、前記リニアアクチュエータの可動軸側に固定された第2球面リンク部と、前記第1球面リンク部と前記第2球面リンク部の間を接続する接続部材とを有し、
    前記第1球面リンク部および第2球面リンク部は、その接続部が少なくとも上下方向に回動することを許容する向きに配置されていることを特徴とする請求項1記載の洗濯機の制振装置。
  3. 前記力伝達手段は、前記洗濯槽と前記リニアアクチュエータの可動部とを接続する第1球面リンク部と、前記洗濯機筐体と前記リニアアクチュエータの筐体とを接続する第3球面リンク部とを有し、
    前記第1球面リンク部および前記第3球面リンク部は、その接続部が少なくとも上下方向に回動することを許容する向きに配置されていることを特徴とする請求項1記載の洗濯機の制振装置。
  4. 前記振動検出手段は、洗濯槽の重心位置よりも下部に配置された第1振動センサと、重心位置よりも上部に配置された第2振動センサとを有し、
    前記制御手段は、前記第1振動センサおよび前記第2振動センサの各センサ信号を積分して得られた振動速度および前記振動速度を積分して得られた振動変位に、それぞれゲインを乗じたものの和を、前記リニアアクチュエータへの駆動力指令信号として出力することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の洗濯機の制振装置。
  5. 前記制御手段は、水平振動の少なくとも共振点付近で制振制御を行い、上下振動の共振点付近では制振制御を行わないことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の洗濯機の制振装置。
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