以下、図面を参照して、この発明の実施の形態に係るマッハツェンダ干渉器及びアレイ導波路グレーティングについて説明する。なお、各図は、この発明が理解できる程度に、各構成要素の形状、大きさ、及び配置関係を概略的に示してあるに過ぎない。従って、この発明の構成は、何ら図示の構成例にのみ限定されるものではない。
〈第1の実施の形態〉
第1の実施の形態では、第1入出力光導波路、第2入出力光導波路、第1光導波路、及び第2光導波路を具える、温度無依存で使用可能なマッハツェンダ干渉器について説明する。
図1及び図2は、この発明の第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器を概略的に示す図である。図1は、マッハツェンダ干渉器を、第1入出力光導波路、第2入出力光導波路、第1光導波路、及び第2光導波路が形成されている平面側から見た平面図である。また、図2(A)は、マッハツェンダ干渉器の、図1に示すI−I線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。また、図2(B)は、マッハツェンダ干渉器の、図1に示すII−II線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。
第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11は、基板上の同一平面にプレーナ導波路として形成されている、第1入出力光導波路13と、第2入出力光導波路15と、これら第1及び第2入出力光導波路13及び15の端間、すなわち第1入出力光導波路端13a及び第2入出力光導波路端15aの間を繋ぎ、互いに異なる光路長を有し、及び共通のクラッド、すなわち後述する上部クラッドを用いて形成された第1光導波路17及び第2光導波路19とを具えている(図1参照)。
第1入出力光導波路13と第1及び第2光導波路17及び19とは、第1テーパ光導波路21を介して接続されている。
第1テーパ光導波路21は、第1入出力光導波路13から伝播した光を第1及び第2光導波路17及び19へ分岐させて伝播させるために、または、第1及び第2光導波路17及び19から伝播した光を第1入出力光導波路13へ合流させて伝播させるために設けられている。そのために、第1テーパ光導波路21は、光伝播方向に沿って、第1入出力光導波路13と連続的かつ一体的に、及び第1入出力光導波路端13aと接続されて形成されている。また、第1テーパ光導波路21は、光伝播方向に沿って第1及び第2光導波路17及び19のそれぞれと連続的かつ一体的に、及び第1入出力光導波路端13aと対向する第1テーパ光導波路端21aにおいて、第1及び第2光導波路17及び19とそれぞれ接続されて形成されている。そして、第1テーパ光導波路21は、第1入出力光導波路端13aから第1テーパ光導波路端21aに向かって幅広となる形状で形成されている。
また、第2入出力光導波路15と第1及び第2光導波路17及び19とは、第2テーパ光導波路23を介して接続されている。
第2テーパ光導波路23は、第1及び第2光導波路17及び19から伝播した光を第2入出力光導波路15へ合流させて伝播させるために、または、第2入出力光導波路15から伝播した光を第1及び第2光導波路17及び19へ分岐させて伝播させるために、設けられている。そのために、第2テーパ光導波路23は、光伝播方向に沿って、第2入出力光導波路15と連続的かつ一体的に、及び第2入出力光導波路端15aと接続されて形成されている。また、第2テーパ光導波路23は、光伝播方向に沿って第1及び第2光導波路17及び19のそれぞれと連続的かつ一体的に、及び第2入出力光導波路端15aと対向する第2テーパ光導波路端23aにおいて、第1及び第2光導波路17及び19とそれぞれ接続されて形成されている。そして、第2テーパ光導波路23は、第2入出力光導波路端15aから第2テーパ光導波路端23aに向かって幅広となる形状で形成されている。
なお、上述した第1入出力光導波路13、第2入出力光導波路15、第1光導波路17、第2光導波路19、第1テーパ光導波路21、及び第2テーパ光導波路23は、後に説明するように、コアがその周囲を下部クラッド及び上部クラッドによって被覆されることによって構成されている。そして、図1においては、コアに対して、第1入出力光導波路13、第2入出力光導波路15、第1光導波路17、第2光導波路19、第1テーパ光導波路21、及び第2テーパ光導波路23の各符号を付してある。
第1入出力光導波路13、第2入出力光導波路15、第1光導波路17、第2光導波路19、第1テーパ光導波路21、及び第2テーパ光導波路23は、共通する1つの基板25上に形成されている(図2(A)及び(B)参照)。
すなわち、基板25は、例えば平行平板状の単結晶Siによって構成されている。この基板25上には、例えばSiO2によって構成されている下部クラッド27が積層されている。
そして、下部クラッド27上に、例えばSiを材料としてコア29が形成されている。このコア29の平面的な、すなわち基板面25aに沿った配置及び形状は、第1入出力光導波路13、第2入出力光導波路15、第1光導波路17、第2光導波路19、第1テーパ光導波路21、及び第2テーパ光導波路23に対応して形成されている(図1参照)。
さらに、下部クラッド27上に、コア29の上面29a及び光伝播方向と基板25の厚み方向に沿った側面29bを被覆する上部クラッド31が設けられている。
このように、下部クラッド27、コア29、及び上部クラッド31が形成されることによって、コア29の周囲、すなわちコア29の上面29a、側面29b、及び下面29cが下部クラッド27及び上部クラッド31によって被覆される。その結果、これら下部クラッド27、コア29、及び上部クラッド31から構成される上述した各光導波路、すなわち第1入出力光導波路13、第2入出力光導波路15、第1光導波路17、第2光導波路19、第1テーパ光導波路21、及び第2テーパ光導波路23が、基板25上に形成されている。
なお、製造上の簡易性を向上させるために、第1及び第2光導波路17及び19は、光伝播方向及び基板25の厚み方向に直交する幅が全領域に渡って一定に設定されて形成されるのが好ましい。そのために、コア29は、第1及び第2光導波路17及び19を構成する全領域に渡って好ましくは一定の幅で形成されている。
ところで、既に説明したように、第1光導波路及び第2光導波路17及び19は、共通の上部クラッド31を用いて形成されている。この上部クラッド31は、第1光導波路及び第2光導波路17及び19に共通して用いられているこの上部クラッド31の部分、すなわち上部クラッド部分31bと異なる材質で形成されている上部クラッド部分31aを含んで構成されている。
すなわち、図2(A)に示す領域では、上部クラッド31、すなわち上部クラッド部分31aは、例えばSiN、SiO2、またはこれらSiN及びSiO2の混晶を材料として形成されている。また、図2(B)に示す領域では、上部クラッド31、すなわち上部クラッド部分31bは空気である。
そして、第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11では、このように上部クラッド31を、互いに材質の異なる上部クラッド部分31aと上部クラッド部分31bとによって構成することによって、第1光導波路及び第2光導波路17及び19に、第1屈折率調節領域33、第2屈折率調節領域35、及び屈折率非調節領域37を形成してある(図1参照)。
より詳細には、第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11では、第1光導波路17には第1屈折率調節領域33が、及び第2光導波路19には第2屈折率調節領域35が、それぞれ形成されている。
これら第1及び第2屈折率調節領域33及び35は、第1及び第2光導波路17及び19に共通して設けられているクラッド(すなわち上部クラッド部分31b)とは異なる材質の別のクラッド(すなわち上部クラッド部分31a)を用いて形成されている。
また、第1光導波路及び第2光導波路17及び19の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35以外の領域、すなわち上部クラッド部分31bを用いて形成されている領域は、屈折率非調節領域37となっている。
そして、第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11では、このマッハツェンダ干渉器11を温度無依存で使用可能とするために、第1屈折率調節領域33の光伝播方向に沿った幾何学的な領域長La1と第2屈折率調節領域35の光伝播方向に沿った幾何学的な領域長La2との差、すなわち領域長差ΔLa、及び第1光導波路17の光伝播方向に沿った経路長L1と第2光導波路19の光伝播方向に沿った経路長L2との差、すなわち経路長差ΔLが、次式(1)及び(2)を満足する条件で設定されている。なお、式(1)及び(2)において、Δlは第1光導波路17と第2光導波路19との光路長差、nは第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率、naは屈折率非調節領域37における実効屈折率、dn/dTは第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率の温度変化率、dna/dTは屈折率非調節領域37における実効屈折率の温度変化率をとする。
ΔLa=(Δl/n)/{na/n−(dna/dT)/(dn/dT)} ・・・(1)
ΔL=(Δl/n)+(1−na/n)ΔLa ・・・(2)
これら式(1)及び(2)は、以下のように求められる。
すなわち、まず、第1光導波路17と第2光導波路19との光路長差Δlは、第1光導波路17と第2光導波路19との経路長差ΔL、及び第1屈折率調節領域33と第2屈折率調節領域35との領域長差ΔLaを用いて、次式(3)のように表すことができる。
Δl=n(ΔL−ΔLa)+naΔLa ・・・(3)
式(3)で示されたΔlの温度変化率d(Δl)/dTは、式(3)を温度Tで微分した次式(4)で表される。
d(Δl)/dT=(dn/dT)(ΔL−ΔLa)+(dna/dT)ΔLa ・・・(4)
そして、マッハツェンダ干渉器11の温度依存性を解消するためには、Δlの温度変化率、すなわち上式(4)で表されるd(Δl)/dTを0とすればよい。従って、マッハツェンダ干渉器11の温度依存性を解消する条件は、次式(5)で表される。
(dn/dT)(ΔL−ΔLa)+(dna/dT)ΔLa=0 ・・・(5)
そして、式(3)及び式(5)を連立して解くと、上述した式(1)及び式(2)が得られる。
この第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11は、第1屈折率調節領域33と第2屈折率調節領域35との領域長差ΔLa、及び第1光導波路17と第2光導波路19との経路長差ΔLが、上式(1)及び(2)を満足する条件で設定されているため、その結果、温度無依存で使用することができる。
なお、図1及び図2では、上部クラッド部分31aを例えばSiN、SiO2、またはこれらSiN及びSiO2の混晶を材料として形成することによって第1及び第2屈折率調節領域33及び35を、また、上部クラッド部分31bを空気とすることによって屈折率非調節領域37を、それぞれ形成してある構成例を示している。
しかし、この第1の実施の形態では、図3及び図4に示すように、図1及び図2の構成例における第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37とを形成する各上部クラッド部分の材質を入れ換えて構成することもできる。
そこで、以下、図3及び図4を参照して、図1及び図2の構成例とは異なる構成を有したマッハツェンダ干渉器、すなわちマッハツェンダ干渉器39について説明する。
図3及び図4は、この発明の第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器の変形例を概略的に示す図である。図3は、マッハツェンダ干渉器を、第1入出力光導波路、第2入出力光導波路、第1光導波路、及び第2光導波路が形成されている平面側から見た平面図である。また、図4(A)は、マッハツェンダ干渉器の、図3に示すIII−III線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。また、図4(B)は、マッハツェンダ干渉器の、図3に示すIV−IV線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。
なお、図3及び図4に示すマッハツェンダ干渉器39において、上述した図1及び図2に示すマッハツェンダ干渉器11と共通する構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
マッハツェンダ干渉器39において、第1光導波路及び第2光導波路17及び19は、共通の上部クラッド31を用いて形成されている。この上部クラッド31は、第1光導波路及び第2光導波路17及び19に共通して用いられているこの上部クラッド31の部分、すなわち上部クラッド部分31dと異なる材質で形成されている上部クラッド部分31cを含んで構成されている。
すなわち、図4(A)に示す領域では、上部クラッド31、すなわち上部クラッド部分31cは空気である。また、図4(B)に示す領域では、上部クラッド31、すなわち上部クラッド部分31dは、例えばSiN、SiO2、またはこれらSiN及びSiO2の混晶を材料として形成されている。
そして、このマッハツェンダ干渉器39では、上述したマッハツェンダ干渉器11と同様に、上部クラッド31を、互いに材質の異なる上部クラッド部分31cと上部クラッド部分31dとによって構成することによって、第1光導波路及び第2光導波路17及び19に、第1屈折率調節領域33、第2屈折率調節領域35、及び屈折率非調節領域37を形成してある(図3参照)。
より詳細には、マッハツェンダ干渉器39では、第1光導波路17には第1屈折率調節領域33が、及び第2光導波路19には第2屈折率調節領域35が、それぞれ形成されている。
これら第1及び第2屈折率調節領域33及び35は、上部クラッド部分31dとは異なる材質の上部クラッド部分31cを用いて形成されている。
また、第1光導波路及び第2光導波路17及び19の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35以外の領域、すなわち上部クラッド部分31dを用いて形成されている領域は、屈折率非調節領域37となっている。
マッハツェンダ干渉器39は、上述したマッハツェンダ干渉器11と同様に、第1屈折率調節領域33と第2屈折率調節領域35との領域長差ΔLa、及び第1光導波路17と第2光導波路19との経路長差ΔLが、上式(1)及び(2)を満足する条件で設定されているため、その結果、温度無依存で使用することができる。
ところで、例えば、マッハツェンダ干渉器11及び39の小型化を目的として、当該マッハツェンダ干渉器11の光伝播方向に沿った寸法を短くするためには、上述した式(1)で与えられるΔLaの絶対値を可能な限り小さくするのが好ましい。
そして、式(1)から明らかなように、ΔLaの絶対値を小さくするためには、na/nと(dna/dT)/(dn/dT)との差の絶対値を大きくする必要がある。そのために、この実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11及び39では、naとnとを、また、dna/dTとdn/dTとを、それぞれ可能な限り離れた値に設定することが好ましい。
従って、マッハツェンダ干渉器11及び39を小型化するに当たり、屈折率非調節領域37における実効屈折率と第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率を、また、屈折率非調節領域37における実効屈折率の温度変化率と第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率の温度変化率とを、それぞれ可能な限り離れた値に設定することが好適である。
ここで、この発明に係る発明者は、上述した式(1)及び式(2)を用いて、温度無依存のマッハツェンダ干渉器11及び39を得るに当たり、好適な設計条件を決定するための種々のシミュレーションを行った。以下、これらのシミュレーションについて説明する。
まず、発明者は、上部クラッドの材質に関する特性を確認するためのシミュレーションを行った。
図5は、このシミュレーションの結果を示す図である。図5において、縦軸は、実効屈折率の温度変化率を、また、横軸は実効屈折率を、それぞれ目盛ってある。
このシミュレーションでは、上部クラッドとして空気、SiO2、またはSiNを用いた光導波路を想定し、これら各々について、実効屈折率の温度変化率及び実効屈折率をプロットした。
また、このシミュレーションでは、上部クラッドとして上述した各材質を用いた場合のそれぞれについて、コアの幅(すなわち光伝播方向及び厚み方向に直交する方向の寸法)を0.26μm、0.28μm、及び0.32μmと変化させて当該シミュレーションを行った。
また、このシミュレーションでは、SiO2またはSiNを用いた場合の上部クラッドの厚みを2μm、コアの厚みを0.3μm、及び下部クラッドの厚みを2μmに設定し、波長1.55μmのTE偏波光を伝播させる場合を想定してある。
そして、このシミュレーションでは、コア、上部クラッド、及び下部クラッドの各材質に固有の温度変化率から、導波モードに対する実効屈折率の温度変化率を求めた。
図5に示す線51は上部クラッドが空気である場合の結果を示している。そして、点51aはコアの幅が0.26μmの場合を、点51bはコアの幅が0.28μmの場合を、点51cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線53は上部クラッドがSiO2である場合の結果を示している。そして、点53aはコアの幅が0.26μmの場合を、点53bはコアの幅が0.28μmの場合を、点53cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線55は上部クラッドがSiNである場合の結果を示している。そして、点55aはコアの幅が0.26μmの場合を、点55bはコアの幅が0.28μmの場合を、点55cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
図5の結果から明らかなように、上部クラッドが空気である場合とSiNである場合とにおいて、コアが上述したいずれの幅に設定されている場合であっても、実効屈折率の温度変化率及び実効屈折率の双方に最も大きな差が現れた。
そして、上部クラッドがSiO2である場合には、コアが上述したいずれの幅に設定されている場合であっても、実効屈折率の温度変化率及び実効屈折率が、上部クラッドが空気である場合及びSiNである場合の中間の値となった。
従って、第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11において、空気を上部クラッド部分31aまたは上部クラッド部分31bのいずれか一方の材料として、また、SiNを他方の材料として構成して、上述した第1屈折率調節領域33、第2屈折率調節領域35、及び屈折率非調節領域37をそれぞれ形成することによって、上式(1)のnaとnとの差を、また、dna/dTとdn/dTとの差を、それぞれ大きく設定することができる。
すなわち、第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11の小型化を目的として式(1)のΔLaを小さく設定するためには、図1及び図2の構成例では、第1及び第2屈折率調節領域33及び35をSiNで構成された上部クラッド部分31aを用いて、また、屈折率非調節領域37を空気で構成された上部クラッド部分31bを用いて、それぞれ形成するのが好ましい。また、図3及び図4の構成例によるマッハツェンダ干渉器39では、第1及び第2屈折率調節領域33及び35を空気で構成された上部クラッド部分31cを用いて、また、屈折率非調節領域37をSiNで構成された上部クラッド部分31dを用いて、それぞれ形成するのが好ましい。
また、発明者は、上述した図5の結果に基づき、マッハツェンダ干渉器11における第1及び第2入出力光導波路13及び15を構成するコア29の幅の好適値を決定するためのシミュレーションを行った。以下、図6及び図7を参照してこのシミュレーションについて説明する。
図6は、図1及び図2に示す構成例のマッハツェンダ干渉器11について、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiNで構成された上部クラッド部分31aを用いて、また、屈折率非調節領域37が空気で構成された上部クラッド部分31bを用いて、それぞれ形成されている場合の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37の、実効屈折率の温度変化率及び実効屈折率の相関を同時に示す図である。
図6において、縦軸は、第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率(すなわち式(1)におけるn)及び実効屈折率の温度変化率(すなわち式(1)におけるdn/dT)を目盛ってある。また、横軸は、屈折率非調節領域37における実効屈折率(すなわち式(1)におけるna)及び実効屈折率の温度変化率(すなわち式(1)におけるdna/dT)を目盛ってある。また、図6において、縦軸及び横軸の目盛りは互いに同じ寸法としてある。
このシミュレーションでは、SiNによって構成されている上部クラッド部分31aの厚みを2μm、コア29の厚みを0.3μm、及び下部クラッド27の厚みを2μmに設定し、波長1.55μmのTE偏波光を伝播させる場合を想定してある。そして、コア29は、第1及び第2光導波路17及び19を構成する全領域、すなわち第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37との全領域に渡って一定の幅で形成されている。
図6に示す線61は、このシミュレーションにおけるマッハツェンダ干渉器11の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率nと屈折率非調節領域37における実効屈折率naとの関係を示している。そして、点61aはコアの幅が0.26μmの場合を、点61bはコアの幅が0.28μmの場合を、点61cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。これらの各点は、上述した図5を参照してプロットされている。
また、線63は、このシミュレーションにおけるマッハツェンダ干渉器11の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率の温度変化率dn/dTと屈折率非調節領域37における実効屈折率の温度変化率dna/dTとの関係を示している。そして、点63aはコアの幅が0.26μmの場合を、点63bはコアの幅が0.28μmの場合を、点63cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。これらの各点は、上述した図5を参照してプロットされている。
また、線65は、任意のコアの幅におけるn及びnaをプロットした点と原点とを結ぶ直線である。なお、図6では、一例として点61b(すなわち、コアの幅が0.28μmの場合におけるn及びnaをプロットした点)と原点とを結ぶ直線を示している。
また、線67は、任意のコアの幅におけるdn/dT及びdna/dTをプロットした点と原点とを結ぶ直線である。なお、図6では、一例として点63b(すなわち、コアの幅が0.28μmの場合におけるdn/dT及びdna/dTをプロットした点)と原点とを結ぶ直線を示している。
また、線69は、原点を通る傾き1の1次直線を示している。上述したように、図6において、縦軸及び横軸の目盛りは互いに同じ寸法としてあるため、当然のことながら線69と正の側の横軸とのなす角はπ/4ラジアンとなる。
ここで、図6において、線65と正の側の横軸とのなす角をΘn、及び線67と正の側の横軸とのなす角をΘdnとすると、次式(6)が成立する。
na/n−(dn/dT)/(dna/dT)=tanΘn−tanΘdn ・・・(6)
そして、線69と線65との角度差をΔΘn、及び線69と線67との角度差をΔΘdnとすると、上式(6)から次式(7)が得られる。
na/n−(dn/dT)/(dna/dT)=tan(π/4+ΔΘn)−tan(π/4−ΔΘdn) ・・・(7)
既に説明したように、マッハツェンダ干渉器11の小型化を目的として、上述した式(1)で与えられるΔLaの絶対値を小さくするためには、na/nと(dna/dT)/(dn/dT)との差の絶対値を大きく設定する必要がある。そして、式(7)から明らかなように、na/nと(dna/dT)/(dn/dT)との差の絶対値を大きく設定するためには、ΔΘn及びΔΘdnが大きくなるのが好ましい。
従って、マッハツェンダ干渉器11を小型化するに当たっては、線65と線67とがなす角、すなわちΔΘn+ΔΘdnが、最大となる線65及び線67を設定し得るコア29の幅で第1及び第2光導波路17及び19を形成するのが好ましい。
そして、発明者は、図6に係るシミュレーションを用いて検討した結果、上述したシミュレーションの条件下において、図1及び図2に示す構成例のマッハツェンダ干渉器11を設計する場合には、ΔΘn+ΔΘdnを最大とするために、第1及び第2光導波路17及び19のコア29の幅を0.30μmとするのが好適であることを見出した。
このとき、n=1.83であり、及びna=2.06である。また、dn/dT=2.38×10−4/Kであり、及びdna/dT=1.82×10−4/Kである。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=2.77及びΔL=0.65が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを2.77倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.65倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器11の温度依存性を解消することができる。
また、他の好適例として、上述したシミュレーションの条件下において、第1及び第2光導波路17及び19のコア29の幅を0.28μmとするのが好ましい。
このとき、n=1.65であり、及びna=1.95である。また、dn/dT=1.91×10−4/Kであり、及びdna/dT=1.64×10−4/Kである。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=3.10及びΔL=0.44が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを3.10倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.44倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器11の温度依存性を解消することができる。
また、上部クラッド部分31a及び上部クラッド部分31bの材質を入れ換えた場合、すなわち、図3及び図4に示す構成例のマッハツェンダ干渉器39であって、第1及び第2屈折率調節領域33及び35が空気で構成された上部クラッド部分31cを用いて、また、屈折率非調節領域37がSiO2で構成された上部クラッド部分31dを用いて、それぞれ形成されている場合には、式(1)及び式(2)に入力する、nとnaと、dn/dTとdna/dTとを、図1及び図2に示す構成例のマッハツェンダ干渉器11の場合と入れ換えることによって、温度依存性を解消することができるΔLa及びΔLを算出することができる。
すなわち、上述した図6に係るシミュレーションの条件下において、第1及び第2光導波路17及び19のコア29の幅を0.30μmとしたとき、na=1.83、n=2.06、dna/dT=2.38×10−4/K、及びdn/dT=1.82×10−4/Kとなる。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=−2.38及びΔL=0.73が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを2.38倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.73倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器39の温度依存性を解消することができる。
また、他の好適例として、上述したシミュレーションの条件下において、第1及び第2光導波路17及び19のコア29の幅を0.28μmとするのが好ましい。
このとき、na=1.65であり、及びn=1.95である。また、dna/dT=1.91×10−4/Kであり、及びdn/dT=1.64×10−4/Kである。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=3.20及びΔL=0.51が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを3.20倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.51倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器39の温度依存性を解消することができる。
また、図7は、上述した図6に係るシミュレーションと同様のシミュレーションを、上部クラッド部分31bがSiNである場合のマッハツェンダ干渉器11に対して行った結果を示す図である。
すなわち、図7は、図1及び図2に示す構成例のマッハツェンダ干渉器11において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35をSiO2で構成された上部クラッド部分31aを用いて、また、屈折率非調節領域37を空気で構成された上部クラッド部分31bを用いて、それぞれ形成した場合の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37との、実効屈折率の温度変化率及び実効屈折率の関係を同時に示す図である。
この図7に係るシミュレーションにおいて、上述した図6に係るシミュレーションの条件と変更した点は、上部クラッド部分31aがSiO2によって構成されている点のみである。その他の条件は、上述した図6に係るシミュレーションと同様である。
図7に示す線71は、このシミュレーションにおけるマッハツェンダ干渉器11の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率nと屈折率非調節領域37における実効屈折率naとの関係を示している。そして、点71aはコアの幅が0.26μmの場合を、点71bはコアの幅が0.28μmの場合を、点71cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。これらの各点は、上述した図5を参照してプロットされている。
また、線73は、このシミュレーションにおけるマッハツェンダ干渉器11の、第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率の温度変化率dn/dTと屈折率非調節領域37における実効屈折率の温度変化率dna/dTとの関係を示している。そして、点73aはコアの幅が0.26μmの場合を、点73bはコアの幅が0.28μmの場合を、点73cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。これらの各点は、上述した図5を参照してプロットされている。
また、線75は、任意のコアの幅におけるn及びnaをプロットした点と原点とを結ぶ直線である。なお、図7では、一例として点71b(すなわち、コアの幅が0.28μmの場合におけるn及びnaをプロットした点)と原点とを結ぶ直線を示している。
また、線77は、任意のコアの幅におけるdn/dT及びdna/dTをプロットした点と原点とを結ぶ直線である。なお、図7では、一例として点73b(すなわち、コアの幅が0.28μmの場合におけるdn/dT及びdna/dTをプロットした点)と原点とを結ぶ直線を示している。
また、線79は、原点を通る傾き1の1次直線を示している。上述したように、図6において、縦軸及び横軸の目盛りは互いに同じ寸法としてあるため、当然のことながら線79と正の側の横軸とのなす角はπ/4ラジアンとなる。
そして、当然のことながら、この図7においても、線79と線75との角度差をΔΘn、及び線79と線77との角度差をΔΘdnについて、上述した式(7)が成立する。
従って、上述した図6と同様に、マッハツェンダ干渉器11を小型化するに当たっては、線75と線77とがなす角、すなわちΔΘn+ΔΘdnが、最大となる線75及び線77を設定し得るコア29の幅で第1及び第2光導波路17及び19を形成するのが好ましい。
そして、発明者は、図7に係るシミュレーションを用いて検討した結果、上述したシミュレーションの条件下において、図1及び図2に示す構成例のマッハツェンダ干渉器11を設計する場合には、ΔΘn+ΔΘdnを最大とするために、第1及び第2光導波路17及び19のコア29の幅を0.28μmとするのが好適であることを見出した。
このとき、n=1.65であり、及びna=2.30である。また、dn/dT=1.91×10−4/Kであり、及びdna/dT=1.34×10−4/Kである。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=1.44及びΔL=0.43が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを1.44倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.43倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器11の温度依存性を解消することができる。
また、図6に係るシミュレーションと同様に、上部クラッド部分31a及び上部クラッド部分31bの材質を入れ換えた場合、すなわち、図3及び図4に示す構成例のマッハツェンダ干渉器39であって、第1及び第2屈折率調節領域33及び35が空気で構成された上部クラッド部分31cを用いて、また、屈折率非調節領域37がSiNで構成された上部クラッド部分31dを用いて、それぞれ形成されている場合には、式(1)及び式(2)に入力する、nとnaとを、dn/dTとdna/dTとを、図1及び図2に示す構成例のマッハツェンダ干渉器11の場合と入れ換えることによって、温度依存性を解消することができるΔLa及びΔLを算出することができる。
すなわち、上述した図7に係るシミュレーションの条件下において、第1及び第2光導波路17及び19のコア29の幅を0.28μmとしたとき、na=1.65、n=2.30、dna/dT=1.91×10−4/K、及びdn/dT=1.34×10−4/Kとなる。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=−1.40及びΔL=0.60が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを1.40倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.60倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器39の温度依存性を解消することができる。
ここで、上述した図6における線65と線67のなす角、及び図7における線75と線77のなす角の、それぞれのΔΘn+ΔΘdnを比較すると、線65と線67のなす角の方が大きいことが明白である。既に説明したように、マッハツェンダ干渉器11を小型化するに当たって、上式(7)から明らかなように、ΔΘn+ΔΘdnを大きく設定することが好ましい。そして、線65及び線75は、上述したように、それぞれコアの幅が0.28μmの場合におけるn及びnaをプロットした点と原点とを結ぶ直線を示している。また、線67及び線77は、上述したように、それぞれコアの幅が0.28μmの場合におけるdn/dT及びdna/dTをプロットした点と原点とを結ぶ直線を示している。従って、図6及び図7の結果から、同一の条件下においては、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiNで構成された上部クラッド部分31aを用いて形成されているマッハツェンダ干渉器11は、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiO2で構成された上部クラッド部分31aを用いて形成されている場合と比して、小型化するに当たり有利であることが明らかである。
ところで、上述した図6及び図7に係るシミュレーションでは、第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11において、コア29が、第1及び第2光導波路17及び19を構成する全領域、すなわち第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37との全領域に渡って一定の幅で形成されている場合のシミュレーションについて説明した。
しかしながら、この第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11及び39では、コア29の幅を、第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37とで変更して設計しても良い。
そして、第1の実施の形態によるマッハツェンダ干渉器11及び39は、上述した式(7)を利用したように、図6及び図7を参照して説明したのと同様のシミュレーションから、コア29の幅を第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37とで変更した場合においても、第1及び第2屈折率調節領域33及び35におけるコア29の幅、及び屈折率非調節領域37におけるコア29の幅のそれぞれの好適値を決定することができる。
すなわち、第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率n及び屈折率非調節領域37における実効屈折率naと、第1及び第2屈折率調節領域33及び35における実効屈折率の温度変化率dn/dT及び屈折率非調節領域37における実効屈折率の温度変化率dna/dTとを、それぞれ図6及び図7で説明したのと同様にプロットし、上述したΔΘn+ΔΘdnが最大となるような、第1及び第2屈折率調節領域33及び35におけるコア29の幅、及び屈折率非調節領域37におけるコア29の幅を決定する。
図6及び図7で説明したのと同様の条件下において、コア29の幅を第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37とで変更したマッハツェンダ干渉器39の好適値の具体例として、第1及び第2屈折率調節領域33及び35におけるコア29の幅を0.26μmに、及び屈折率非調節領域37におけるコア29の幅を0.32μmに設定するのが好ましい。
このとき、図3及び図4に示すマッハツェンダ干渉器39では、n=2.24であり、及びna=1.99である。また、dn/dT=1.15×10−4/Kであり、及びdna/dT=2.39×10−4/Kである。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=−0.84及びΔL=0.91が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを0.84倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.91倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器39の温度依存性を解消することができる。
また、図6及び図7で説明したのと同様の条件下において、コア29の幅を第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37とで変更したマッハツェンダ干渉器11の好適値の具体例として、第1及び第2屈折率調節領域33及び35におけるコア29の幅を0.26μmに、及び屈折率非調節領域37におけるコア29の幅を0.28μmに設定するのが好ましい。
このとき、図1及び図2に示すマッハツェンダ干渉器11では、n=1.65であり、及びna=2.24である。また、dn/dT=1.91×10−4/Kであり、及びdna/dT=1.15×10−4/Kである。
これらの値を式(1)及び式(2)に入力すると、Δl/n=1に対して、ΔLa=1.27及びΔL=0.48が得られる。
すなわち、合分波機能を得るために必要な光路長差Δl/nに対して、第1及び第2屈折率調節領域33及び35の領域長差ΔLaを1.27倍とし、また、第1及び第2光導波路17及び19の経路長差ΔLを0.48倍とすることにより、マッハツェンダ干渉器11の温度依存性を解消することができる。
また、図8は、マッハツェンダ干渉器のコア29の幅、及び第1屈折率調節領域33と第2屈折率調節領域35との領域長差ΔLaの相関を示す図である。
図8において、縦軸は、Δl/n=1に対する第1屈折率調節領域33と第2屈折率調節領域35との領域長差ΔLaを目盛ってある。また、横軸は、第1及び第2光導波路17及び19におけるコア29の幅をμm単位で目盛ってある。
図8に示す結果を得たシミュレーションでは、各々異なる構成で第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37を形成した各マッハツェンダ干渉器について、それぞれ第1及び第2光導波路17及び19におけるコア29の幅を変化させ、幅毎のΔLaを各々プロットした。
なお、このシミュレーションでは、上部クラッド部分31aまたは上部クラッド31dの厚みを2μm、コア29の厚みを0.3μm、及び下部クラッド27の厚みを2μmに設定し、波長1.55μmのTE偏波光を伝播させる場合を想定してある。そして、コア29は、第1及び第2光導波路17及び19を構成する全領域、すなわち第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37との全領域に渡って一定の幅で形成されている。
図8に示す線81は、図1及び図2に示すマッハツェンダ干渉器11において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiO2で構成された上部クラッド部分31aを用いて、また、屈折率非調節領域37が空気で構成された上部クラッド部分31bを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点81aはコアの幅が0.26μmの場合を、点81bはコアの幅が0.28μmの場合を、点81cはコアの幅が0.30μmの場合を、点81dはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線83は、図1及び図2に示すマッハツェンダ干渉器11において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiNで構成された上部クラッド部分31aを用いて、また、屈折率非調節領域37が空気で構成された上部クラッド部分31bを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点83aはコアの幅が0.26μmの場合を、点83bはコアの幅が0.28μmの場合を、点83cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線85は、図3及び図4に示すマッハツェンダ干渉器39において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35が空気で構成された上部クラッド部分31cを用いて、また、屈折率非調節領域37がSiO2で構成された上部クラッド部分31dを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点85aはコアの幅が0.26μmの場合を、点85bはコアの幅が0.28μmの場合を、点85cはコアの幅が0.30μmの場合を、点85dはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線87は、図3及び図4に示すマッハツェンダ干渉器39において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35が空気で構成された上部クラッド部分31cを用いて、また、屈折率非調節領域37がSiNで構成された上部クラッド部分31dを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点87aはコアの幅が0.26μmの場合を、点87bはコアの幅が0.28μmの場合を、点87cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
図8の結果から明らかなように、図1及び図2の構成例によるマッハツェンダ干渉器11では、コア29をいずれの幅に設定した場合においても、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiNで構成された上部クラッド部分31aを用いて形成されている場合の方が、SiO2で構成された上部クラッド部分31aを用いて形成されている場合と比して、ΔLaが小さくなっている。
従って、この結果から、上部クラッド部分31aをSiNで構成することによって、図1及び図2の構成例によるマッハツェンダ干渉器11を小型化するに当たり有利となることがわかる。
また、図3及び図4の構成例によるマッハツェンダ干渉器39では、コア29をいずれの幅に設定した場合においても、ΔLaが負の値となっており、屈折率非調節領域37がSiNで構成された上部クラッド部分31dを用いて形成されている場合の方が、SiO2で構成された上部クラッド部分31dを用いて形成されている場合と比して、ΔLaの絶対値が小さくなっている。
従って、この結果から、上部クラッド部分31dをSiNで構成することによって、図3及び図4の構成例によるマッハツェンダ干渉器39を小型化するに当たり有利となることがわかる。
また、図9は、マッハツェンダ干渉器のコア29の幅、及び第1光導波路17と第2光導波路19との経路長差ΔLの相関を示す図である。
図9において、縦軸は、Δl/n=1に対する第1光導波路17と第2光導波路19との経路長差ΔLを目盛ってある。また、横軸は、第1及び第2光導波路17及び19におけるコア29の幅をμm単位で目盛ってある。
図9に示す結果を得たシミュレーションでは、各々異なる構成で第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37を形成した各マッハツェンダ干渉器について、それぞれ第1及び第2光導波路17及び19におけるコア29の幅を変化させ、幅毎のΔLを各々プロットした。
なお、このシミュレーションでは、上部クラッド部分31aまたは上部クラッド31dの厚みを2μm、コア29の厚みを0.3μm、及び下部クラッド27の厚みを2μmに設定し、波長1.55μmのTE偏波光を伝播させる場合を想定してある。そして、コア29は、第1及び第2光導波路17及び19を構成する全領域、すなわち第1及び第2屈折率調節領域33及び35と屈折率非調節領域37との全領域に渡って一定の幅で形成されている。
図9に示す線91は、図1及び図2に示すマッハツェンダ干渉器11において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiO2で構成された上部クラッド部分31aを用いて、また、屈折率非調節領域37が空気で構成された上部クラッド部分31bを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点91aはコアの幅が0.26μmの場合を、点91bはコアの幅が0.28μmの場合を、点91cはコアの幅が0.30μmの場合を、点91dはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線93は、図1及び図2に示すマッハツェンダ干渉器11において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35がSiNで構成された上部クラッド部分31aを用いて、また、屈折率非調節領域37が空気で構成された上部クラッド部分31bを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点93aはコアの幅が0.26μmの場合を、点93bはコアの幅が0.28μmの場合を、点93cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線95は、図3及び図4に示すマッハツェンダ干渉器39において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35が空気で構成された上部クラッド部分31cを用いて、また、屈折率非調節領域37がSiO2で構成された上部クラッド部分31dを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点95aはコアの幅が0.26μmの場合を、点95bはコアの幅が0.28μmの場合を、点95cはコアの幅が0.30μmの場合を、点95dはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
また、線97は、図3及び図4に示すマッハツェンダ干渉器39において、第1及び第2屈折率調節領域33及び35が空気で構成された上部クラッド部分31cを用いて、また、屈折率非調節領域37がSiNで構成された上部クラッド部分31dを用いて、それぞれ形成されている場合の結果を示している。そして、点97aはコアの幅が0.26μmの場合を、点97bはコアの幅が0.28μmの場合を、点97cはコアの幅が0.32μmの場合を、それぞれプロットしてある。
図9の結果から明らかなように、上述した各マッハツェンダ干渉器11及び39のいずれにおいても、各幅のコア29に対するΔLの絶対値が1よりも小さくなっていることから、コア29の幅を0.26〜0.32μmの範囲内で設定することによって、マッハツェンダ干渉器11及び39は構成可能要件を満足していることが明らかになった。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、第1〜第N光導波路(ただしNは2以上の正の整数)を具える、温度無依存で使用可能なアレイ導波路グレーティングについて説明する。
第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティングは、第1〜第N光導波路の各々において、互いに異なる材質のクラッドを用いて形成した屈折率調節領域及び屈折率非調節領域を形成し、かつ上述した第1の実施の形態と同様に、上式(1)及び(2)を満足する条件で設計されることによって、温度無依存で使用することを可能としている。
図10及び図11は、この発明の第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティングを概略的に示す図である。図10は、アレイ導波路グレーティングを、第1〜第N光導波路が形成されている平面側から見た平面図である。また、図11(A)は、アレイ導波路グレーティングの、図10に示すV−V線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。また、図11(B)は、アレイ導波路グレーティングの、図10に示すVI−VI線に沿って切り取った断面の切り口を矢印方向から見た端面図である。
第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティング111は、平行平板状の基板125の基板面125a側に形成された構造体であって、入力光導波路113から入力された複数の波長が合波された光を、分波した上で、波長ごとに規定された出力光導波路115を構成する複数のサブ出力光導波路から出力する機能を有する。
そのために、アレイ導波路グレーティング111は、基板上の同一平面にプレーナ導波路として形成されている、入力光導波路113と、複数のサブ出力光導波路から構成されている出力光導波路115と、これら入力光導波路113及び出力光導波路115の端間、すなわち入力光導波路端113a及び出力光導波路端115aの間を繋ぎ、互いに異なる光路長を有し、及び共通のクラッド、すなわち後述する上部クラッドを用いて形成された第1〜第N光導波路(ただし、Nは2以上の正の整数)とを具えている(図10、図11(A)及び(B)参照)。
なお、図10、図11(A)及び(B)では、Nを6とした場合、すなわち第1〜第6光導波路117a〜117fを具える構成例を示している。そこで、以下、Nを6とした例につき説明する。また、この構成例では、出力光導波路115は、3つのサブ出力導波路、すなわちサブ出力光導波路116a〜116cから構成されている。
また、入力光導波路113と第1〜第6光導波路117a〜117fとは、入力側平面導波路121を介して接続されている。また、第1〜第6光導波路117a〜117fと出力光導波路115とは、出力側平面導波路123を介して接続されている。
入力側平面導波路121は、入力光導波路113から入力される異なる波長の光が混合された混合光を、等分配して第1〜第6光導波路117a〜117fへ伝播する。
また、出力側平面導波路123は、第1〜第6光導波路117a〜117fから入力された光を分波し、分波された光をその波長に応じたサブ出力光導波路116a〜116cへ伝播する。
そして、第1〜第6光導波路117a〜117fは、これら入力側平面導波路121及び出力側平面導波路123間を繋いで並列に設けられている。なお、図10に示す構成例では、一例として、第1〜第6光導波路117a〜117fは、図中に破線で示す中心線Cを中心にしてヘアピン状に折り畳まれた形状で形成されている。
なお、上述した入力光導波路113、出力光導波路115を構成するサブ出力光導波路116a〜116c、第1〜第6光導波路117a〜117f、入力側平面導波路121、及び出力側平面導波路123は、後に説明するように、コアがその周囲を下部クラッド及び上部クラッドによって被覆されることによって構成されている。そして、図10においては、コアに対して、入力光導波路113、サブ出力光導波路116a〜116c、第1〜第6光導波路117a〜117f、入力側平面導波路121、及び出力側平面導波路123の各符号を付してある。
入力光導波路113、出力光導波路115、第1〜第6光導波路117a〜117f、入力側平面導波路121、及び出力側平面導波路123は、共通する1つの基板125上に形成されている(図11(A)及び(B)参照)。
すなわち、基板125は、例えば平行平板状の単結晶Siによって構成されている。この基板125上には、例えばSiO2によって構成されている下部クラッド127が積層されている。
そして、下部クラッド127上に、例えばSiを材料としてコア129が形成されている。このコア129の平面的な、すなわち基板面125aに沿った配置及び形状は、入力光導波路113、出力光導波路115、第1〜第6光導波路117a〜117f、入力側平面導波路121、及び出力側平面導波路123に対応して形成されている(図10参照)。
さらに、下部クラッド127上に、コア129の上面129a及び光伝播方向と基板125の厚み方向に沿った側面129bを被覆する上部クラッド131が設けられている。
このように、下部クラッド127、コア129、及び上部クラッド131が形成されることによって、コア129の周囲、すなわちコア129の上面129a、側面129b、及び下面129cが下部クラッド127及び上部クラッド131によって被覆される。その結果、これら下部クラッド127、コア129、及び上部クラッド131から構成される上述した各光導波路、すなわち入力光導波路113、出力光導波路115、第1〜第6光導波路117a〜117f、入力側平面導波路121、及び出力側平面導波路123が、基板125上に形成されている。
なお、製造上の簡易性を向上させるために、第1〜第6光導波路117a〜117fは、光伝播方向及び基板125の厚み方向に直交する幅が全領域に渡って一定に設定されるのが好ましい。そのために、コア129は第1〜第6光導波路117a〜117fを構成する全領域に渡って好ましくは一定の幅で形成されている。
ところで、既に説明したように、第1〜第6光導波路117a〜117fは、共通の上部クラッド131を用いて形成されている。この上部クラッド131は、第1〜第6光導波路117a〜117fに共通して用いられているこの上部クラッド131の部分、すなわち上部クラッド部分131bと異なる材質で形成されている上部クラッド部分131aを含んで構成されている。
すなわち、図11(A)に示す領域では、上部クラッド131、すなわち上部クラッド部分131aは、例えばSiN、SiO2、またはこれらSiN及びSiO2の混晶を材料として形成されている。また、図11(B)に示す領域では、上部クラッド131、すなわち上部クラッド部分131bは空気である。
そして、第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティング111では、このように上部クラッド131を、互いに材質の異なる上部クラッド部分131aと上部クラッド部分131bとによって構成することによって、第1〜第6光導波路117a〜117fに、これらに各々対応した第1〜第6屈折率調節領域133a〜133f及び屈折率非調節領域137を形成してある(図10参照)。
より詳細には、第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティング111では、第1光導波路117aには第1屈折率調節領域133a、第2光導波路117bには第2屈折率調節領域133b、第3光導波路117cには第3屈折率調節領域133c、第4光導波路117dには第4屈折率調節領域133d、第5光導波路117eには第5屈折率調節領域133e、第6光導波路117fには第6屈折率調節領域133fが、それぞれ形成されている。
これら第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fは、第1〜第6光導波路117a〜117fに共通して設けられているクラッド(すなわち上部クラッド部分131b)とは異なる材質の別のクラッド(すなわち上部クラッド部分131a)を用いて形成されている。
また、第1〜第6光導波路117a〜117fの、第1〜第6屈折率調節領域133a〜133f以外の領域、すなわち上部クラッド部分131bを用いて形成されている領域は、屈折率非調節領域137となっている。
なお、図10に示す構成例では、第1〜第6光導波路117a〜117fの各々に、各対応する第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fが2箇所ずつ、それぞれ中心線Cを中心に互いに線対称となる配置で形成されている。しかし、第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティング111において、第1〜第6光導波路117a〜117fにそれぞれ形成する第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fの例えば数、配置、または形状は、この構成例に限定されるものではなく、設計に応じて適宜変更し得るものである。
そして、第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティング111では、このアレイ導波路グレーティング111を温度無依存で使用可能とするために、第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fのうちの互いに隣接する2つの屈折率調節領域の光伝播方向に沿った領域長差ΔLa、及び第1〜第6光導波路117a〜117fのうちの互いに隣接する2つの光導波路間の経路長差ΔLが、第1の実施の形態において上述した式(1)及び式(2)を満足する条件で設定されている。なお、式(1)及び(2)において、Δlは第1〜第6光導波路117a〜117fのうちの互いに隣接する2つの光導波路間の光路長差、nは第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fにおける実効屈折率、naは屈折率非調節領域137における実効屈折率、dn/dTは第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fにおける実効屈折率の温度変化率、dna/dTは屈折率非調節領域137における実効屈折率の温度変化率とする。また、図1に示す構成例のように、1つの光導波路に複数の屈折率調節領域が形成されている場合には、領域長は、それら複数の屈折率調節領域の光伝播方向に沿った領域長の和となる。従って、互いに隣接する2つの光導波路に形成されている屈折率調節領域の光伝播方向に沿った領域長差ΔLaについても、各々領域長の和の領域長差となる。
この第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティング111は、第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fのうちの互いに隣接する2つの屈折率調節領域の光伝播方向に沿った領域長差ΔLa、及び第1〜第6光導波路117a〜117fのうちの互いに隣接する2つの光導波路間の経路長差ΔLが、上式(1)及び(2)を満足する条件で設定されていることによって、その結果、温度無依存で使用することができる。
なお、この第2の実施の形態では、図10及び図11を参照して、上部クラッド部分131aを例えばSiN、SiO2、またはこれらSiN及びSiO2の混晶を材料として形成することによって第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fを、また、上部クラッド部分131bを空気とすることによって屈折率非調節領域137を、それぞれ形成してある構成例について説明した。
しかし、この第2の実施の形態では、図10及び図11の構成例における第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fと屈折率非調節領域137とを形成する各上部クラッド部分の材質を入れ換えて構成することもできる。
すなわち、第2の実施の形態によるアレイ導波路グレーティング111では、上部クラッド部分131aを空気とすることによって第1〜第6屈折率調節領域133a〜133fを、また、上部クラッド部分131bを例えばSiN、SiO2、またはこれらSiN及びSiO2の混晶を材料として形成することによって屈折率非調節領域137を、それぞれ形成した構成としてもよい。