JP2018004692A - 導波路型光カプラ - Google Patents

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Abstract

【課題】加工偏差に対して光結合率特性の変動が小さく、広い波長域に亘って所望の光結合率特性で動作する小さな回路規模の導波路型光カプラを提供する。【解決手段】光カプラ400は、位相差付与部における2本のアーム導波路404、405の一方のアーム導波路404の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路405の幅と異なる導波路部分406を含む。幅の異なる導波路部分は、2本のアーム導波路の導波路幅より広くても狭くても良い。幅の異なる導波路部分の幅、2本のアーム導波路の光路長差は、所定の手順で求められる。【選択図】図4

Description

本発明は導波路型光カプラに関する。より詳細には、加工偏差に対して光結合率特性の変動が小さく、広い波長域に亘って動作する導波路型光カプラに関する。
光導波路を用いた平面光波回路(Planer Lightwave Circuit:PLC)は、伝送装置等に用いられる光合分波器、光スイッチ、光スプリッタ等の集積回路を実現するプラットフォームとして広く利用されている。これらの集積回路の中には、光カプラ、移相器、遅延線などが基本回路として集積されている。中でも光カプラは、光の分岐/結合を行う重要な光信号処理の基本回路の1つである。近接した2本の導波路で構成される方向性結合器型の光カプラは、損失が低いという優れた特徴を持つが、一般的に、その結合率には波長依存性がある。
波長依存性を低減した光カプラの構成として、非特許文献1に開示されているように、2個の方向性結合器の間をわずかな導波路長差を持つ2本のアーム導波路で縦続接続した一種のマッハツェンダ干渉計(Mach-Zehnder Interferometer:MZI)からなる波長無依存カプラ(Wavelength INsensitive Coupler:WINC)が知られている。
図1は、従来技術のWINCの構成を示す図である。図1のWINC100は、第1の方向性結合器101と、位相差付与部102と、第2の方向性結合器103とがこの順に縦続接続された構成を持つ。位相差付与部102は、所定の光路長差を持つ2本のアーム導波路104、105からなる。第1の方向性結合器101の結合率κ、第2の方向性結合器103の結合率κ、位相差付与部102での2本のアーム導波路104、105間の導波路長差ΔLMZI´を適切に設計することで、広帯域動作が実現される。実際に石英系導波路を用いて、数100nmの波長範囲に亘って光結合率がほとんど変らない広帯域動作可能な光カプラが実現されている。
また非特許文献2に開示されているように、作製誤差による方向性結合器の光結合率の変動や上記波長依存性による光結合率の変動を緩和する構成として、4個の方向性結合器および3組の2本のアーム導波路を交互に接続したラティス干渉計からなる安定化光カプラも知られている。
K.Jinguji, et al., "Mach-Zehnder interferometer type optical waveguide coupler with wavelength-flattened coupling ratio," IEE electronics letter, vol.26, no.17, pp.1326-1327, 1990 M.Oguma, et al., "Compact and low-loss interleave filter employing lattice-form structure and silica-based waveguide," Journal of Lightwave Technology, vol.22, no.3, pp.895-902, 2004
方向性結合器の特性は、導波路のコアとクラッドとの間の屈折率差Δn、コア幅W、コア高H、近接した2本の導波路のコア間のギャップG、近接した2本の導波路の長さ(結合長)LDCなどで決まる。しかしながら、実際に作製された方向性結合器では、例えば導波路パターンの加工偏差によるコア幅Wのズレ、ギャップGのズレなどの作製誤差によって、その特性にバラつきが生じるという問題があった。
図2は、石英系導波路を用いて作製した3dB方向性結合器の光結合率の典型的な波長依存性を示す図である。横軸に波長(μm)を、縦軸に光結合率(%)にとって、3つの場合を示している。曲線201は導波路コア幅が設計値の場合を、曲線202は導波路コア幅が設計値+0.2μmの場合を、曲線203は導波路コア幅が設計値−0.2μmの場合を示している。曲線201からわかるように、この方向性結合器では波長1550nmにおいて50%の光結合率となるようにコア幅を設計している。尚、以降のグラフ上の諸特性の説明においては、特に断わらない限り、実質的に直線状のものも含めて簡単のため曲線と称する。曲線201〜203のように、方向性結合器では一般的に長波長側になるほど結合が強くなる特性となる。この特性は導波路の加工誤差によって変動し、例えば、孤立導波路でのコア幅wが設計値よりも0.2μm太くなった場合、図2の曲線202に示すように光結合率は3%程度大きくなる。孤立導波路におけるコア幅変動値と、2本の導波路が近接している方向性結合器におけるコア幅変動値とでは厳密には一致しないこともあるが、概ね一致していると考えて良い。図2の方向性結合器の例の場合では、方向性結合器のコア幅Wが約0.2μm太くなり、2つの導波路の相対する側がそれぞれ0.1μm太くなり、結果として2つの導波路間のギャップGは約0.2μm狭くなっていると考えることができる。このような加工偏差によって生じる方向性結合器の特性ズレは、方向性結合器を要素回路として用いているWINC100においても、光結合率のズレを引き起こす問題となる。
図3は、石英系導波路を用いて作製したWINCの光結合率の典型的な波長依存性を示す図である。横軸に波長(μm)を、縦軸に光結合率(%)にとって、3つの場合を示している。図1のWINC100に対応しており、波長1.5〜1.6μm帯で50%の結合率となるように、位相差付与部102の2本のアーム導波路104、105間の導波路長差ΔLMZI´は約0.725μm、方向性結合器101の結合長LDCは約125μmで結合率κは波長1550nmにおいて19.6%、方向性結合器103の結合長LDCは約483μmで結合率κは波長1550nmにおいて74.2%に設計されている。この構成によって、100nm以上の広い波長範囲に亘って50%の光結合率が得られている。図3では、アーム導波路のコア幅が設計値の場合の曲線301、コア幅が設計値+2μmとなった場合の曲線302、コア幅が設計値−2μmとなった場合の曲線303を示している。孤立導波路でのコア幅が設計値よりも0.2μm太くなった場合、図3の曲線302に示すように、波長平坦性はある程度維持されているものの光結合率は2%程度大きくなる。
前述のもう一つの従来技術の構成例のラティス干渉計からなる安定化光カプラでは、加工偏差に対しての光結合率変動は小さくなるが、干渉計の段数が3段であり素子が大型化するという問題があった。さらに、この安定化光カプラは50%結合設計に対して100nm帯域において±5%の波長依存性が生じており、干渉計の段数が1段であるWINCよりもむしろ波長依存性が大きいという問題もあった。
本発明は、このような問題を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、広い波長域に亘って所望の結合率が得られ、作製加工偏差に対する光結合率特性の変動が小さく、作製トレランスが大きい導波路型光カプラを、小さい回路規模で提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、1つ以上の光を分岐または結合する導波路型光カプラにおいて、前記1つ以上の光が入力される第1の方向性結合器と、2本のアーム導波路からなり、前記第1の方向性結合器と縦続接続された位相差付与部であって、前記2本のアーム導波路の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている導波路部分を含む、位相差付与部と、前記位相差付与部にさらに縦続接続された第2の方向性結合器とを備え、Rを光カプラ全体としての光結合率とし、前記第1の方向性結合器の光結合率κ1を結合位相角θ1によってκ1=(sin(θ1))2で角度表現し、前記第2の方向性結合器の光結合率κ2を結合位相角θ2によってκ2=(sin(θ2))2で角度表現したとき、導波路幅変動δwに対する、前記位相差付与部により与えられる位相差φの変動δφの比率であるdφ/dwが、所定の動作波長において
Figure 2018004692
の関係を満たすように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたことを特徴とする導波路型光カプラである。
ここで前記導波路部分は、2本のアーム導波路の導波路幅よりも広い幅LBを持つ太幅導波路、または、より狭い幅LNを持つ細幅導波路とすることができる。また、前記導波路部分は、テーパー導波路を介して前記2本のアーム導波路へ連続的に接続することができる。
請求項2に記載の発明は、1つ以上の光を分岐または結合する導波路型光カプラにおいて、前記1つ以上の光が入力される第1の方向性結合器と、同一の導波路幅Wを有する2本のアーム導波路からなり、前記第1の方向性結合器と縦続接続された位相差付与部であって、前記2本のアーム導波路の少なくとも一方に前記同一の幅Wとは異なる導波路幅を有する導波路部分を含む、位相差付与部と、前記位相差付与部にさらに縦続接続された第2の方向性結合器とを備え、Rを光カプラ全体としての光結合率とし、前記第1の方向性結合器の光結合率κ1を結合位相角θ1によってκ1=(sin(θ1))2で角度表現し、前記第2の方向性結合器の光結合率κ2を結合位相角θ2によってκ2=(sin(θ2))2で角度表現したとき、導波路幅変動δwに対する、前記位相差付与部により与えられる位相差φの変動δφの比率であるdφ/dwが、所定の動作波長において
Figure 2018004692
の関係を満たすように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたことを特徴とする導波路型光カプラである。
請求項3の発明は、請求項1または2の導波路型光カプラであって、所定の動作波長域の複数の波長において、
Figure 2018004692
の自乗の和が最小になるように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1乃至3いずれかの導波路型光カプラであって、前記所定の動作波長域の1つ以上の波長において、波長λに対する前記光結合率Rの微分
Figure 2018004692
の自乗の和が最小になるように、前記方向性結合器の結合長の長さ、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項2乃至4いずれかの導波路型光カプラであって、前記導波路部分は、前記同一の導波路幅Wよりも広い幅LBを持つ太幅導波路、または、前記同一の導波路幅Wよりも狭い幅LNを持つ細幅導波路であることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項2乃至5いずれかの導波路型光カプラであって、前記導波路部分は、テーパー導波路を介して前記2本のアーム導波路の前記同一の導波路幅Wの部分へ連続的に接続されていることを特徴とする。
請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかの導波路型光カプラであって、前記導波路部分がテーパー導波路で構成されていることを特徴とする。
請求項8の発明は、請求項6または7の導波路型光カプラであって、前記テーパー導波路は、前記第1の方向性結合器または前記第2の方向性結合器の端部において、導波路の距離が離れてゆく展開部分の曲線導波路部分の一部分がテーパー導波路として構成されたものであることを特徴とする。
本発明の導波路型光カプラの他の態様として、1つ以上の光を分岐または結合する導波路型光カプラにおいて、前記1つ以上の光が入力される第1の方向性結合器と、導波路幅W1を有するアーム導波路およびW1とは異なる導波路幅W2を有するアーム導波路を含む2本のアーム導波路からなり、前記第1の方向性結合器と縦続接続された位相差付与部であって、前記2本のアーム導波路の少なくとも一方に、当該一方のアーム導波路の導波路幅とは異なる導波路幅を有する導波路部分を含む、位相差付与部と、前記位相差付与部にさらに縦続接続された第2の方向性結合器とを備え、Rを光カプラ全体としての光結合率とし、前記第1の方向性結合器の光結合率κ1を結合位相角θ1によってκ1=(sin(θ1))2で角度表現し、前記第2の方向性結合器の光結合率κ2を結合位相角θ2によってκ2=(sin(θ2))2で角度表現したとき、導波路幅変動δwに対する、前記位相差付与部により与えられる位相差φの変動δφの比率であるdφ/dwが、所定の動作波長において
Figure 2018004692
の関係を満たすように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定された導波路型光カプラとしても実施できる。
本発明によれば、加工偏差に対して光結合率特性の変動が小さく、広い波長域に亘って所望の光結合率特性で動作する導波路型光カプラを、小さな回路規模で実現することができる。
図1は、従来技術の波長無依存カプラの構成を示した図である。 図2は、石英系導波路を用いて作製した3dB方向性結合器の光結合率の典型的な波長依存性を示した図である。 図3は、石英系導波路を用いて作製したWINCの光結合率の典型的な波長依存性を示した図である。 図4は、本発明の広帯域導波路型光カプラの構成を示した図である。 図5は、方向性結合器の結合位相角が変動した時のMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。 図6は、位相差付与部の位相差φが変動した時のMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。 図7は、石英系導波路での典型的な設計の方向性結合器において、導波路コア幅wが変動した時の結合位相角θiの変動の態様を示した図である。 図8は、導波路コア幅wが変動した時のMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。 図9は、導波路コア幅wが変動した時の位相差付与部の位相差φの変動の態様を示した図である。 図10は、位相差付与部が理想特性を持っていた場合における、導波路コア幅wが変動した時のMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。 図11は、石英系導波路における実効屈折率nの導波路コア幅w依存性の例を示した図である。 図12は、位相差付与部の異なる構成の計算例において、導波路コア幅wが変動した時の位相差付与部の位相差φの変動の態様を示した図である。 図13は、位相差φが異なる他の目標特性で設計した位相差付与部の位相差φの態様を示した図である。 図14は、dφ/dwが異なる他の目標特性で設計した位相差付与部の位相差φの態様を示した図である。 図15は、本発明のパラメータ1の構成の光カプラおよび従来技術のWINCにおける波長λ変化に対する光結合率Rの変化の態様を示した図である。 図16は、波長無依存最適化されたパラメータによる光カプラにおける波長λ変化に対する光結合率Rの変動の態様を、波長毎に示した図である。 図17は、波長無依存最適化されたパラメータによる光カプラにおける導波路コア幅変化Δwに対する光結合率Rの変動の態様を示した図である 図18は、本発明の実施例1の光結合率50%設計の光カプラにおける光結合率の波長依存性を示した図である。 図19は、本発明の実施例2の光結合率20%設計の光カプラにおける光結合率の波長依存性を示した図である。 図20は、本発明の実施例2の光結合率70%設計の光カプラにおける光結合率の波長依存性を示した図である。 図21は、本発明の実施例3の波長依存特性を持つよう設計された光カプラの光結合率の波長依存性を示した図である。 図22は、実際に作製した本発明の実施例1の構成の光カプラの光結合率の波長依存性を示した図である。 図23は、実際に作製した従来技術のWINCの光結合率の波長依存性を示した図である。 図24は、本発明の光カプラの位相差付与部分でテーパー導波路のみで構成した導波路部分の形状例を示した図である。 図25は、本発明の光回路の実際の導波路パターンに近い状態で描いた構成例を示した上面図である。 図26は、本発明の光回路の実際の導波路パターンに近い状態で描いたさらに別の構成例を示した上面図である。
以下、詳細に本発明の導波路型光カプラの構成について説明する。光カプラの方向性結合器では、コア幅W、近接する導波路間ギャップGの設計値は、パターン加工精度から求められる制約や、伝搬過剰損失の抑制の要請、結合長Lの短尺化の要請などの要因から決まることが多い。したがって、設計値としてのコア幅W、ギャップGは所与のものであるという条件下で、導波路型光カプラを提供できることが望ましい。以下の本発明の導波路型光カプラの説明では、一定のコア幅W、ギャップGの条件が与えられたときに、さらに広帯域動作性を持ち、加工誤差に対する高いトレランス特性を満足する新規な構成および設計手法が提示される。
本発明の導波路型光カプラは、位相差付与部に、2本のアーム導波路の内の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている導波路部分を設けている。また、本発明の別の態様の導波路型光カプラは、位相差付与部における2本のアーム導波路の内の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている導波路部分を設けている。幅の異なる導波路部分は、2本のアーム導波路の共通の通常の導波路幅より広くても狭くても良い。上述の幅の異なる導波路部分の幅、2本のアーム導波路の光路長差が、本発明に特有の手順にしたがって求められる。従来技術の光カプラと同様な構成要素をわずかに変更するだけで、広帯域動作性および加工誤差に対する高いトレランス特性を満足する導波路型光カプラが提供される。
図4は、本発明の導波路型光カプラの構成を示す図である。高加工トレランスな導波路型光カプラ400は、第1の方向性結合器401と、位相差付与部402と、第2の方向性結合器403とが、この順に縦続接続された構成を持つ。ここで、光カプラ自体の動作説明は省略するが、第1の方向性結合器401の入力ポートへ1つ以上の光信号が入力され、第2の方向性結合器403の出力ポートから1つ以上の光信号が出力される。入力信号の入力方法、出力信号の出力方法によって、光信号を分岐または結合するように動作する。光カプラ400の全体構成の点では、図1に示した従来技術の光カプラ100と差異はない。本発明の光カプラの位相差付与部402は、2本のアーム導波路の内の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている導波路部分を設けている。また別の観点から見れば、2本のアーム導波路404、405とからなり、少なくとも一方のアーム導波路の一部の導波路部分の導波路幅が2本のアーム導波路の通常の導波路幅とは異なっているものでもある。導波路幅変動δwに対する位相差付与部402の位相差φの変動δφの比率、すなわち微分dφ/dwが動作波長において次式を満たすように、導波路部分の導波路幅および長さ、並びに、2本のアーム導波路404、405間の導波路長差が設定されている。
Figure 2018004692
式(1)において、Rは光カプラ400全体としての光結合率を表し、結合位相角θ1は第1の方向性結合器401の光結合率κ1を角度表現した量、結合位相角θ2は第2の方向性結合器403の光結合率κ2を角度表現した量である。結合位相角θと光結合率κとの間には、κ1=(sin(θ1))2、κ2=(sin(θ2))2の関係がある。
図1に示した従来技術のWINC100では、位相差付与部102が所定の導波路長差ΔLMZI‘を持つ2本のアーム導波路104、105で構成されていた。これに対して、本発明の光カプラ400では、位相差付与部402の2本のアーム導波路404、405において、2本のアーム導波路の内の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている「導波路部分」を設けている。別の言い方をすれば、少なくとも一方のアーム導波路の一部の「導波路部分」の導波路幅が2本のアーム導波路の通常の導波路幅とは異なっている。本発明の光カプラは、導波路幅変動δwに対する位相差付与部402の位相差φの変動δφの比率、すなわち微分dφ/dwが式(1)を満たすように構成されている点で従来技術のWINCと相違する。2本のアーム導波路404、405の内、一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている導波路部分を持っているか、または、2本のアーム導波路404、405は少なくとも一方が導波路幅の異なる導波路部分を持っており、2本のアーム導波路404、405および導波路部分の導波路幅および長さ、2本のアーム導波路404、405間の導波路長差ΔLMZIが、式(1)を満たすよう設定されている。尚、図4に示した構成例では、導波路部分として、上側のアーム導波路404のみに通常の導波路幅Wとは異なる導波路幅WBの太幅導波路406を設けた例を示している。また、光学的な損失増加を避けるために、太幅導波路406と通常の導波路との間は徐々に導波路幅が変化するテーパー導波路部を介して接続している。
本発明の光カプラ400は、従来技術と比べてより広い波長域に亘って所望の光結合率特性で動作し、同時に、作製加工偏差に対して光結合率特性の変動が小さく、作製トレランスが大きい。これらの優れた特徴は、以下のように説明できる。
図4の本発明の光カプラ400および図1の従来技術のWINC100の基本構成となっている2入力2出力のMZIの伝達行列Tについて検討する。方向性結合器の伝達行列Cp、位相差付与部の伝達行列Psは、次式によって表される。
Figure 2018004692
このとき、MZIの伝達行列Tは次式のように記述される。
Figure 2018004692
MZI全体を光カプラとみなした時の光結合率Rは、2入力2出力回路のクロス経路におけるパワー透過率|T122または|T212になる。例えば、図4では入力光信号407から出力光信号408へのクロス経路のパワー透過率となる。したがって、2入力2出力のMZIの光結合率Rは、次式のように表される。
Figure 2018004692
ここで、導波路コア幅wの変動に対して光結合率Rがどのように変動するのか、その変動の態様を検討してみる。光カプラの製造工程において、導波路コア幅wの変動に対して、式(4)で求めた光結合率Rの変化率dR/dwが小さければ、作製加工偏差に対するトレランスが大きいことを意味する。式(4)に示したように光結合率Rは、θ1、θ2、φの関数であるので、dR/dwは次式で表される。
Figure 2018004692
式(5)の右辺第1項は導波路コア幅wの変動に対する第1の方向性結合器401の特性変動に起因する光結合率Rの変化率を、第2項は導波路コア幅wの変動に対する第2の方向性結合器403の特性変動に起因する光結合率Rの変化率を、第3項は導波路コア幅wの変動に対する位相差付与部402の特性変動に起因する光結合率Rの変化率をそれぞれ表している。
先ず光結合率Rの式(4)を用いて、θ1、θ2およびφが変動した時に光結合率Rがどのように変動するか、すなわち∂R/∂θ1、∂R/∂θ2、∂R/∂φの振る舞いについて検討する。簡単のため、波長は1550nmのみに着目するものとして、従来技術のWINC100で用いた設計パラメータの光結合率κ≒19.6%、κ≒74.2%、ΔLMZI´≒0.725μmを用いる。これらは、結合位相角および位相差付与部で与えられる位相差に換算すると、それぞれθ1≒0.15π、θ2≒0.33πおよびφ≒1.36πに相当する。
図5は、方向性結合器の結合位相角が変動した時のMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。横軸には結合位相角の変動量Δθ1、Δθ2(0.01πラジアン)を、縦軸にはMZI全体での光結合率R(%)を示す。曲線501は第1の方向性結合器401の結合位相角θ1が変動した場合の光結合率Rの変動を、曲線502は第2の方向性結合器403の結合位相角θ2が変動した場合の光結合率Rの変動をそれぞれ示している。図5の曲線501、曲線502における線の傾きが、それぞれ式(5)における∂R/∂θ1、∂R/∂θ2に対応する。
図6は、位相差付与部の位相差φが変動した時のMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。横軸には位相差の変動量Δφ(0.01πラジアン)を、縦軸にMZI全体での光結合率R(%)を示す。図6における曲線の傾きが式(5)における∂R/∂φに対応する。
次に、式(5)におけるdθ1/dw、dθ2/dwの振る舞いについて検討してみる。dφ/dwについては後述する。図1に示したような石英系導波路における方向性結合器の典型的な設計例では、孤立導波路でのコア幅が設計値よりも太くなると、方向性結合器の光結合率は設計値よりも大きくなる。
図7は、石英系導波路での典型的な設計の方向性結合器において、導波路コア幅wが変動した時の方向性結合器の波長1550nmでの結合位相角θiの変動態様を示した図である。横軸にはコア幅の変動量Δw(μm)を、縦軸には結合位相角θiの変動量(0.01πラジアン)を示す。曲線701は設計結合率19.6%の方向性結合器の場合の結合位相角θiの変動量を、曲線702は設計結合率74.2%の方向性結合器の場合の結合位相角θiの変動量を、曲線703は参考までに設計結合率50%の方向性結合器の場合の結合位相角θiの変動量を、それぞれ示している。図7の曲線701、702における線の傾きが、それぞれ式(5)におけるdθ1/dw、dθ2/dwに対応する。結合率が大きい設計の方向性結合器は、方向性結合器の作用長が長くなるように2本の導波路の近接部分が長く設計されている。このため、導波路コア幅wの変動の影響を強く受け、結合率が小さい設計の方向性結合器と比べてdθi/dwが大きくなる。
式(5)の右辺第1項および第2項の和は、導波路コア幅wが変動した時の第1の方向性結合器401の特性変動および第2の方向性結合器403の特性変動に両方に起因する光結合率Rの変化率を表している。第1項および第2項の和の各要素は、図5の各曲線の傾きに基づいた∂R/∂θ1、∂R/∂θ2と、図7の各曲線の傾きに基づいた∂θ1/∂w、∂θ2/∂wから求めることができる。
図8は、導波路コア幅wが変動した時の波長1550nmにおけるMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。横軸にはコア幅の変動量Δw(μm)を、縦軸にはMZI全体での光結合率R(%)を示す。図8の各曲線は、式(4)、図5の各曲線、並びに、図7の各曲線から算出している。曲線801は第1の方向性結合器401(設計結合率19.6%)の特性変動だけに起因する光結合率Rの変化を表し、その傾きは式(5)の右辺第1項を表す。曲線802は第2の方向性結合器403(設計結合率74.2%)の特性変動だけに起因する光結合率Rの変化を表し、その傾きは式(5)の右辺第2項を表す。曲線803は両方の方向性結合器の特性変動が同時に起きた時の光結合率Rの変化を表し、その傾きは概ね曲線801の傾きと曲線802の傾きの和になっている。この曲線803の傾きが、式(5)の右辺第1項および第2項の和を表していることになる。よって、石英系導波路における方向性結合器の典型的な設計では、コア幅wが太くなった時、2つの方向性結合器401、403の特性変動は光カプラの光結合率Rを大きくする方向に作用する。上述の式(4)および式(5)に関する光結合率Rの変動のこれまでの論議は、従来技術の光カプラ100および本発明の光カプラ400に共通な構成部分に関するものである点に留意されたい。
図9は、従来技術のWINCにおいて導波路コア幅wが変動した時の位相差付与部の波長1550nmでの位相差φの変動の態様を示した図である。横軸にはコア幅の変動量Δw(μm)を、縦軸には位相差(0.01πラジアン)の変動を示す。従来技術のWINC100では、位相差付与部102の2本のアーム導波路104、105の導波路長差ΔLMZI‘が0.725μmと非常に小さいため、アーム導波路104、105のコア幅が設計値からずれても、位相差付与部102の位相差φはほとんど変動しない。図9の曲線901は位相差付与部102の導波路長差ΔLMZI‘が0.725μmであった時の位相差φの変動を示している。図9の曲線901における傾きがdφ/dwとなり、曲線901の傾きはほぼ0であって、dφ/dw≒0であることが分かる。したがって従来技術のWINC100では、光結合率Rの変化率を示す式(5)の右辺第3項はゼロになる。結局、2つの方向性結合器に起因した図8の曲線803で示した光結合率Rの変動が、そのまま、図3に示したようなコア幅変動に対するMZI全体での光結合率Rの変化となっていた。
ここで、位相差付与部の位相差φのコア幅wに対する変化率dφ/dwがゼロではなく、式(5)の右辺第1項および第2項の和を打ち消すような特性、すなわち式(1)に示した特性を持っていれば、方向性結合器のコア幅の変動に起因する光結合率Rの変化が打ち消されて式(5)の全体のdR/dwがゼロとなり、導波路コア幅wの加工偏差に対して光結合率Rの変動が生じず、作製トレランスが大きい光カプラを実現できることになる。ここで位相差付与部が、図9の曲線902で示したような、方向性結合器のコア幅の変動に起因する光結合率Rの変化を打ち消すような理想特性を持っているものと仮定する。この理想特性902は、図8で示した2つの方向性結合器に起因した特性の曲線803に対して、式(1)の関係を概ね満たす特性となっている。
図10は、位相差付与部が図9に示したコア幅変動に対する位相差φの理想特性を持っていた場合に、導波路コア幅wが変動した時のMZI全体の光結合率Rの変動の態様を示した図である。横軸にはコア幅の変動量(μm)を示し、縦軸にはMZI全体での光結合率R(%)を示す。曲線1001は位相差付与部の特性変動だけに起因する光結合率Rの変化を示す。曲線1001の傾きが式(5)の右辺第3項を表している。曲線1002は2つの方向性結合器の特性変動だけに起因する光結合率Rの変化を示し、図8における曲線803と同じである。曲線1002の傾きは前述のように式(5)の右辺第1項および第2項の和となる。曲線1003は位相差付与部と方向性結合器の特性変動が同時に起きた時の光結合率Rの変化を示す。曲線1003の傾きは、式(5)で示したdR/dwを表しており、曲線1003から明らかなように傾きはゼロとなる。このように、もし、位相差付与部のコア幅変動に対する位相差φが曲線902のような理想特性を持っていれば、この光カプラでは、dR/dw≒0の状態が実現できる。すなわち、導波路コア幅wの加工偏差に対して光結合率Rの変動が生じない、作製トレランスが大きい光カプラが得られる。
そこで次に、どのようにすれば位相差付与部が曲線902のようなコア幅変化に対する位相差の変動の理想特性を実際に持つことができるのかについて説明する。本発明の光カプラでは、図4の位相差付与部401に、コア幅変化に対する位相差の変動が曲線902のような理想特性を持たせることによって、広帯域動作性および加工偏差対する高トレランス性を得ている。従来技術の光カプラと比べて、図4に示した位相差付与部401における構成上の差異によって、本発明の特徴が実現される。
図11は、石英系導波路における実効屈折率nの導波路コア幅w依存性の例を示した図である。横軸にはコア幅w(μm)を、縦軸には実効屈折率nを示し、波長が1450、1550、1650nmの3つの場合を示している。尚、横軸のコア幅wの値は実際にはフォトマスク上のパターン幅を示している。図11に示した3つの曲線から明らかなように、各曲線の線の傾き、すなわちdn/dwにはコア幅w依存性があることが分かる。例えば、コア幅が6μmの場合のdn/dwの値は、12μmの場合のdn/dwの値と比べて約4.3倍の大きさを持つ。これは、6μm幅の導波路と12μm幅の導波路との間では、コア幅変動(バラつき)による実効屈折率への影響の程度が異なることを意味している。このコア幅に依存したdn/dwの大きさの差異を利用することで、位相差付与部401に任意のdφ/dwを持たせることができる。
例えば、図4に示した本発明の光カプラ400の位相差付与部402のように、上側アーム導波路404の一部を、長さLBに亘って通常の導波路幅Wよりも太い、導波路幅WBの「導波路部分」とする。以後、本明細書においては、通常の導波路幅Wとは異なる導波路幅を持つ部分のことを「導波路部分」と呼ぶ。簡単のため、通常の導波路幅よりも広い導波路部分406のことを「太幅導波路」と呼ぶことにする。また、「通常の導波路幅W」とは、2本以上のアーム導波路で構成される位相差付与部分の各アーム導波路が同じ導波路幅を持っているときのその共通の導波路幅Wのことを言う。位相差付与部分のアーム導波路は、通常は同じ導波路幅、すなわち「通常の導波路幅W」に設定される。一般にPLC上で光信号を伝搬させて要素回路ブロック間を引き回すための導波路は、コア材料、コア高さ、屈折率、伝搬させる光のモードなどにしたがって、通常の導波路幅Wが決定される。例外的に、光ファイバと低損失で接続する入力/出力導波路や、方向性結合器における近接した2本の導波路などでは、通常の導波路幅とは異なる導波路幅が使用される場合もあるが、原則的にはPLCでは共通の「通常の導波路幅」が使用される。ただし、本発明の光カプラの位相差付与部402では、異なる幅の2本アーム導波路を使用することもできることに留意されたい。以下の説明では、簡単のため位相差付与部402は、2本のアーム導波路の導波路幅は同じであって、通常の導波路幅Wを持つものとする。また以下の検討では、太幅導波路406と通常の導波路との接続にはテーパー導波路を用いずに直接接続し、導波路幅の急激な変化による過剰損失は発生しないものと仮定する。
図4において、下側アーム導波路405の導波路長L1と、太幅導波路406も含めた上側アーム導波路404の導波路長L2との差をΔLMZI(=L1−L2)とすると、上側アーム導波路404を伝搬した光は、実効屈折率n(WB)の導波路を距離LB伝搬し、実効屈折率n(W)の導波路を距離(L1−LB)伝搬している。したがって、その位相は上側アーム導波路404を伝搬する間に、次の分だけ変化する。
Figure 2018004692
下側アーム導波路405を伝搬した光は、実効屈折率n(W)の導波路をL2伝搬しているので、その位相はその位相は下側アーム導波路405を伝搬する間に、次の分だけ変化する。
Figure 2018004692
従って、位相差付与部402における上下アーム導波路404、405の伝搬光位相差φは次式で表される。
Figure 2018004692
また、導波路コア幅wの変動に対する式(6)の位相差φの変化率dφ/dwは、n’=dn/dwとすると次式で表される。
Figure 2018004692
図9に示した位相差付与部の位相差φの理想特性902は、想定しているコア幅の変動量の範囲では、概ね直線であると言える。理想特性902を実現するには、設計コア幅wにおけるφおよびdφ/dwが理想特性902に一致すれば良い。したがって、φおよびdφ/dwが理想特性となるように、式(6)および式(7)の変数である通常の導波路幅W、太幅導波路(導波路部分)406の幅WB、太幅導波路406の長さLBおよび2つのアーム導波路間の導波長差ΔLMZIを定めれば良い。変数が4つある2連の連立方程式となるので、複数の解の組が存在する。ここでは例として、通常の導波路幅Wを所与の値として7μmに固定し、いくつかの太幅導波路の幅WBについて解を求めてみると、以下のような異なる解の組が得られる。
例1: WB=12μm,LB=180μm,ΔLMZI=0.522μm
例2: WB=10μm,LB=225μm,ΔLMZI=0.542μm
例3: WB= 8μm,LB=462μm,ΔLMZI=0.566μm
図12は、本発明の光カプラの異なる計算例において、導波路コア幅wが変化した時の位相差付与部402の位相差φの変動の態様を示した図である。横軸に太幅導波路のコア幅の変動量Δw(μm)を、縦軸に位相差付与部の位相φ(0.01πラジアン)を示す。図12には、図9のΔwおよびφの間の理想特性902ならびに上述の例1〜例3の計算例の3種類のLBおよびΔLMZIの解の組に対応する3つの曲線が描かれている。4つの曲線がほぼ重複して区別が難しいくらい近接しているため、3種類のいずれのLBおよびΔLMZIの解の組の場合でも、理想特性902と概ね同様の、コア幅変化Δw−位相差φの変動特性が得られていることが分かる。例2のWB=10μmの場合のLBおよびΔLMZIの組み合わせは、後にさらに本発明の光カプラの波長依存特性を検討する際に利用するので、例2のLBおよびΔLMZIの組み合わせをパラメータ1としておく。
上述の異なる太幅導波路の幅WBの3種類の解は、それぞれ次のような計算によって求めている。基本的には式(6)および式(7)の連立方程式を解けば良い。本発明の光カプラの位相差付与部402で実現すべきコア幅変動Δw−位相φの理想特性902(図9)は、±0.3μmのコア幅変動Δwの範囲では直線と見なせる。したがって、φは理想特性902のΔw=0における値となり、dφ/dwは理想特性902のΔw=0における傾きとなる。通常の導波路幅Wおよび太幅導波路の幅WBは所与の値としているので、実効屈折率n(W)、n(WB)、および、コア幅wの変化に対する屈折率の変化率n’(W)、n’(WB)は、図11に示した各曲線において対応するコア幅wでの実効屈折率値およびその傾きとなる。ここでは、波長λを1550nmとしている。上述の各値を使用すれば、式(6)および式(7)はLBおよびΔLMZIを変数(未知数)とする2元連立線形方程式となり、代数的にLBおよびΔLMZIを求めることができる。図9のΔwおよびφの間の理想特性902が厳密には直線ではないし、図11に示した実効屈折率のコア幅依存性も直線ではない。したがって実際の計算では、想定するコア幅変動Δwの各点(例1〜例3の計算例では、Δw=−0.2、0、+0.2μmの3点)において位相差φに関する式(6)が最も成り立つように、すなわち、各Δwにおける式(6)の左辺と右辺との差をE(Δw)とすると、下の式(7−2)で表される自乗和が最小になるように、数値計算によってLBおよびΔLMZIを求めている。
Figure 2018004692
以下の計算例でも同様の方法で解を求めている。
上述の本発明の光カプラ400の位相差付与部402の構成(構成例1)では、上側アーム導波路404の一部に太幅導波路406を設けたが、位相差付与部におけるアーム導波路のコア幅の違いは相対的なものである。したがって、上側アーム導波路404は通常の導波路幅Wの導波路だけで構成し、下側アーム導波路405の一部に長さLNに亘って通常の導波路幅Wよりも細い導波路幅WNの導波路部分を設ける構成としても良い。簡単のため、通常の導波路幅Wよりも細い導波路幅WNを持つ導波路部分を「細幅導波路」と呼ぶ。例えば、通常の導波路幅Wが7μm、細幅導波路の導波路幅WNが6μmの場合を考える。この時、連立方程式を解くことによって未知数LNおよびΔLMZIの組み合わせを求めると、LN=274μm、ΔLMZI=0.593μmとなる(構成例2)。この組み合わせによって位相差付与部を設計することで、図9に示したΔwおよびφの間の理想特性902とほぼ同様の、コア幅変化Δwに対する位相差φの変動特性が得られる。
本発明の光カプラ400の位相差付与部402の構成は、上述のようなアーム導波路のいずれか一方の側だけに導波路部分を含む構成だけに限られず、上側アーム導波路404の一部に太幅導波路を、下側アーム導波路405の一部にも細幅導波路を設け、両方のアーム導波路上に導波路部分を設ける構成としても良い。その場合、上側アーム導波路404を伝搬した光は、実効屈折率n(WB)の導波路を距離LB伝搬し、実効屈折率n(W)の導波路を距離(L1−LB)伝搬しているので、その位相は次の分だけ変化する。
Figure 2018004692
下側アーム導波路405を伝搬した光は、実効屈折率n(WN)の導波路を距離LN伝搬し、実効屈折率n(W)の導波路を距離(L2−LN)伝搬しているので、その位相は次の分だけ変化する。
Figure 2018004692
したがって、位相差付与部402の位相差φおよび変化率dφ/dwの一般式は、それぞれ次の2式のようになる。
Figure 2018004692
Figure 2018004692
式(8)および式(9)では、変数が5つとなり、式(6)および式(7)の場合と比べて自由度が1つ増えているので、例えば、2つの導波路部分の長さが同じである(LBN=LB=LN)として増えた自由度を制限して解を求めれば良い。通常の導波路幅Wを7μm、太幅導波路の導波路幅をWB=8μm、細幅導波路の導波路幅をWN=6μmとした場合で、LBNおよびΔLMZIを求めると、LBN=172μm、ΔLMZI=0.587μmが得られる(構成例3)。この設計でも、図9に示した実現すべきコア幅変動Δw−位相φ理想特性902とほぼ同様の特性が得られる。尚、上述の構成例2および構成例3においても、構成例1と同様に、2本のアーム導波路間の導波路長差ΔLMZIは、下側アーム導波路405の導波路長に対する上側アーム導波路404の導波路長の差が正の場合を前提としている。すなわち、下側アーム導波路405と比べて上側アーム導波路404の導波路長が長いことを意味している。逆に導波路長差ΔLMZIが負の場合は、下側アーム導波路405と比べて上側アーム導波路404の導波路長が短いことを意味しており、以下の例でも同様とする。また、式(8)および式(9)における上述の自由度の制限の方法は、LB=LNとすることだけに限られず、LBおよびLNの比率を任意に設定することによってもできるのは言うまでも無い。
上述の構成例1〜構成例3では、図8に示した2つの方向性結合器の特性変動に起因したコア幅変動Δwによる光結合率R変化の曲線803に合わせて、位相差付与部402に与えるべきΔwおよびφ間の目標特性を図9に示した理想特性902として決定した。方向性結合器の特性変動に起因した光結合率Rの変化は、第1の方向性結合器401および第2の方向性結合器403の光結合率Rの具体的な設計値によって異なる。さらに、方向性結合器の特性変動に起因した光結合率Rの変化は、方向性結合器のコア幅W、コア高H、2本のアーム導波路の近接している部分のコア間ギャップGなどの詳細構成によっても異なる。したがって、本発明の光カプラにおいて位相差付与部に与えるべき目標特性も、2つの方向性結合器の具体的な構成およびその光結合率Rのコア幅Δw変動に対する特性変動に応じて異なってくる。上述の構成例1〜構成例3で例示的に説明をした、Δwおよびφの間の理想特性902に適合する位相差付与部の構成を連立方程式の未知数を求めて特定した手順は、目標特性が、理想特性902とは異なるどのような他の場合に対しても適用できる。
図13は、Δwおよびφ間の異なる目標特性を実現する位相差付与部402のコア幅変動に対する位相差φ変化の態様を示した図である。図9に示した目標特性の例(位相差φ=1.36π)と比べて、位相差付与部によって実現する位相差φの絶対値(位相差φ=0.36π)が大きく異なっている。横軸にコア幅変動Δw(μm)を、縦軸に位相差付与部の位相差φ(0.01πラジアン)を示す。図13には、目標特性と次に述べる本発明にしたがって求めた設計構成の実際の特性を示している。具体的には、位相差付与部402は、上側アーム導波路404のみに太幅導波路を設けた構成とし、通常の導波路幅がW=7μm、太幅導波路の導波路幅がWB=10μm、太幅導波路の長さはLB=224μm、2本のアーム導波路間の導波路長差はΔLMZI=0.010μmとした。目標特性と、本発明にしたがって求めた設計構成の特性とは、ほぼ一致する。
図14は、Δwおよびφ間のもう1つの異なる目標特性を実現する位相差付与部402のコア幅変動に対する位相差φ変化の態様を示した図である。図9に示した目標特性の例(傾きは正)と比べて、位相差付与部によって実現する傾きすなわちdφ/dwが異なっている(傾きは負)。横軸にコア幅変動Δw(μm)を、縦軸に位相差付与部の位相差φ(0.01πラジアン)を示す。図14には、目標特性と次に述べる本発明にしたがって求めた設計構成の実際の特性を示している。具体的には、下側アーム導波路405のみに太幅導波路を設ける構成とし、通常の導波路幅がW=7μm、太幅導波路の導波路幅がWB=10μm、太幅導波路の長さがLB=223μm、2本のアーム導波路間の導波路長差はΔLMZI=0.906μmとした。目標特性と、本発明にしたがって求めた設計構成の特性はほぼ一致している。図13および図14のいずれの目標特性の例においても、本発明にしたがって、式(6)および式(7)、または、式(8)および式(9)を使って、位相差付与部を設計することで、2つの方向性結合器のコア幅変動Δwによる光結合率Rの変化を打ち消すような位相差付与部の目標特性を概ね実現できることが分かる。
以上のように、本発明の光カプラでは、位相差付与部402の2本のアーム導波路404、405において、2本のアーム導波路の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている「導波路部分」を備えるか、または、少なくとも一方のアーム導波路上に、通常の導波路幅とは異なる導波路幅を持つ「導波路部分」(太幅導波路または細幅導波路)を備える。導波路幅変動δwに対する位相差付与部402の位相差φの変動δφの比率、すなわち微分dφ/dwが式(1)を満たすように、「導波路部分」の領域の導波路幅および長さ、並びに、2本のアーム導波路404、405の間の導波路長差ΔLMZIを設定する。これによって、dR/dw≒0、すなわち導波路コア幅の変動Δwに対して光結合率Rの変動がほとんど生じない光カプラを実現できる。すなわち、光カプラの作製工程における加工偏差に対して光結合率Rの変動を抑え、作製トレランスが大きい光カプラを得ることができる。
したがって、本発明の光カプラは、1つ以上の光を分岐または結合する導波路型光カプラにおいて、前記1つ以上の光が入力される第1の方向性結合器401と、同一の導波路幅Wを有する2本のアーム導波路404、405からなり、前記第1の方向性結合器と縦続接続された位相差付与部であって、前記2本のアーム導波路の少なくとも一方に前記同一の幅Wとは異なる導波路幅を有する導波路部分406を含む、位相差付与部と、前記位相差付与部にさらに縦続接続された第2の方向性結合器403とを備え、Rを光カプラ全体としての光結合率とし、前記第1の方向性結合器の光結合率κ1を結合位相角θ1によってκ1=(sin(θ1))2で角度表現し、前記第2の方向性結合器の光結合率κ2を結合位相角θ2によってκ2=(sin(θ2))2で角度表現したとき、導波路幅変動δwに対する、前記位相差付与部により与えられる位相差φの変動δφの比率であるdφ/dwが、所定の動作波長において
Figure 2018004692
の関係を満たすように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたものとして実施できる。
上述の導波路コア幅の変動Δwに対してトレランスの大きい光カプラの設計手法は、波長依存性が少なく、広帯域動作が可能な光カプラを実現するためにも適用することができる。所定の動作波長範囲、例えば1.5〜1.6μmにおいて作製トレランスが大きい光カプラを実現しようとする場合には、この動作波長域において式(1)を満たすように、上述の未知数パラメータ(「導波路部分」の領域の長さおよび2本のアーム導波路間の導波路長差ΔLMZIを)を選定する。全ての動作波長域で式(1)を厳密に満たさなくても、動作波長域の所定の1つ以上の各波長λにおけるdR/dwの自乗の和(下の式(9−2))が最小になるように設計することで、実質的に十分に作製トレランスが大きい光カプラを実現することができる。
Figure 2018004692
また、所定の動作波長域において光結合率Rがほぼ一定となる動作を実現するためには、各波長λの変動に対する光結合率Rの変化率dR/dλが、その動作波長域においてほぼゼロであれば良い。光結合率Rの式(4)に示したように、光結合率Rはθ1、θ2およびφの関数であるので、dR/dλは次式によって表される。
Figure 2018004692
式(10)の右辺第1項は波長変化に対する第1の方向性結合器に起因した光結合率Rの変化率を、第2項は波長変化に対する第2の方向性結合器に起因した光結合率Rの変化率を、第3項は波長変化に対する位相差付与部に起因した光結合率Rの変化率をそれぞれ表している。前述の式(5)から式(7)において、コア幅wが変動した時の光結合率Rの変化を求めた時と同様の手順で、波長変化に対する光結合率Rの変動の態様を求めることができる。
図15は、本発明のパラメータ1の構成の光カプラおよび従来技術のWINCにおける波長λ変化に対する光結合率Rの変化の態様を示した図である。横軸に波長λを、縦軸に光カプラ全体での光結合率Rを示す。ここで、導波路コア幅wの変動はないもの、すなわちΔw=0としている。曲線1501は本発明のパラメータ1の構成における位相差付与部402の波長依存性だけに起因する光結合率Rの変化を示す。曲線1501の傾きが式(10)の右辺第3項を表している。曲線1502は2つの方向性結合器の波長依存性だけに起因する光結合率Rの変化を示す。曲線1502の線の傾きは式(10)の右辺第1項および第2項の和を表している。曲線1503は本発明のパラメータ1の構成における位相差付与部402および2つの方向性結合器の両方の波長依存性が同時に影響した時の光結合率Rの変化を示す。曲線1503の線の傾きは式(10)、すなわちdR/dλを表しており、この傾きがゼロになれば波長無依存の光結合率特性が得られることになる。曲線1504は図1に示した従来技術のWINC100における位相差付与部102の波長依存性だけに起因した光結合率Rの変化を示す。また曲線1505はWINC100における位相差付与部102および2つの方向性結合器の両方の波長依存性が同時に影響した時の光結合率Rの変化を示す。
曲線1503と曲線1505との比較からわかるように、WINC100で概ね実現されていた波長無依存特性が、本発明のパラメータ1の構成の光カプラ400ではむしろ悪化して、光結合率Rにやや波長依存性が生じている。曲線1501および曲線1504の間の比較から分かるように、この悪化の要因は、位相差付与部402の波長特性が、当初のWINC100の位相差付与部102の波長特性から変わってしまったためである。前述のように位相差付与部402の設計パラメータは個々の方向性結合器の具体的な特性に適合させて設計されている。波長依存性は、方向性結合器のパラメータを変えることでも変化する。したがって、本発明の光カプラで、さらに光結合率Rの所望の波長依存性を得るには、位相差付与部だけでなく、方向性結合器の設計パラメータも併せて最適化を行う必要がある。
具体的には、以下のように各パラメータを最適化した。方向性結合器401の近接している導波路の長さ(結合長)LDC1を約165μmとして、結合率κ1が波長1550nmにおいて25.0%にした。方向性結合器403の結合長LDC2を約528μmとして、結合率κ2が波長1550nmにおいて80.3%にした。位相差付与部402の構成は、上側アーム導波路404のみに太幅導波路を設ける構成とし、通常の導波路幅をW=7μm、太幅導波路部の導波路幅をWB=10μm、太幅導波路部の導波路長をLB=189μm、2本のアーム導波路の導波路長差をΔLMZI=0.569μmとした。
本例の波長依存性の最適化では、通常の導波路幅W、太幅導波路部の導波路幅WBは所与の値とし、LDC1、LDC2、LB、ΔLMZIを求めるパラメータとして最適化を行っている。式(4)から得られる光結合率の値Rと目標光結合率Rtとの差の自乗を、各波長λ(1.49〜1.65μm)で積分し、さらに各コア幅の変動量Δw(以下の実施形態ではΔw=−0.2、0、+0.2μmの3点)において取った和(下の式(10−2))が最小になるように、数値計算でLDC1、LDC2、LB、ΔLMZIを解として求めている。
Figure 2018004692
以下の実施形態での計算例でも同様の方法で解を求めている。
図16は、波長無依存最適化されたパラメータによる光カプラ400における波長λ変化に対する光結合率Rの変動の態様を示した図である。横軸に波長λを、縦軸に光カプラ全体での光結合率R(%)を示す。曲線1601は波長無依存最適化されたパラメータによる位相差付与部402の波長依存性だけに起因する光結合率Rの変化である。曲線1602は波長無依存最適化されたパラメータによる方向性結合器の波長依存性だけに起因する光結合率Rの変化を示す。曲線1603は波長無依存最適化されたパラメータによる位相差付与部402および2つの方向性結合器の両方の波長依存性が同時に影響した時の光結合率Rの変化を示す。図16を見てわかるように、方向性結合器の設計パラメータも併せて最適化を行うことで、方向性結合器に起因した光結合率Rの変化、すなわち式(10)の右辺第1項および第2項の和と、位相差付与部に起因した光結合率Rの変化、すなわち式(10)の右辺第3項とが相殺し、dR/dλ≒0になって波長無依存特性が得られる。
図17は、波長無依存最適化されたパラメータによる光カプラ400における導波路コア幅wが変動した時のMZI全体での光結合率Rの変動の態様を示した図である。図17のいずれも、横軸はコア幅変動量Δw(μm)、縦軸は光カプラ全体での光結合率R(%)を示し、(a)は波長1500nmの場合、(b)は1550nmの場合、(c)は1600nmの場合をそれぞれ示している。いずれの波長においても位相差付与部402の特性変動に起因する光結合率Rの変化1701a、1701b、1701cと、方向性結合器401、403の特性変動に起因する光結合率Rの変化1702a、1702b、1702cが相殺している。結果として、位相差付与部および2つの方向性結合器の両方の波長依存性が同時に影響した時の光結合率Rの傾きdR/dwは、dR/dw≒0となって、導波路コア幅wの加工偏差に対して光結合率Rの変動が抑えられ、作製トレランスが大きい光カプラが実現されていることが確認できる。
尚、図11に示したような実効屈折率nの導波路コア幅w依存性があり、dn/dwにコア幅依存性があることは、石英系導波路だけに限られない。シリコン(Si)導波路やインジウムリン(InP)系導波路、高分子系導波路など他の材料系の導波路においても、本発明の手法を用いて広帯域動作性および加工誤差に対する高いトレランス特性を満足する広帯域導波路型光カプラが提供される。以下、より具体的な実施例について説明する。
[50%光カプラ]
本発明の光カプラの実施例1として、結合率が50%の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラについて詳しく述べる。実際の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラの設計では、導波路幅の異なる導波路部分をアーム導波路上に構成する場合、テーパー導波路を利用する。図4にも示したように、通常の導波路幅のアーム導波路404、405と導波路部分との接続箇所で生じる損失を低減するため、テーパー導波路を用いて徐々に導波路幅を変換する。また、アーム導波路404、405の長さを短くするために、テーパー導波路はアーム導波路の直線部だけに配置するのではなく、方向性結合器401、403の展開部分の曲線導波路部にも掛るように配置する。一般に方向性結合器の両端部では、別個の光ファイバや光回路との結合のために、曲線導波路を用いて、物理的なポート間隔が取れるよう導波路の間隔を徐々に離して展開する。方向性結合器の展開部分では曲線導波路を用いてS字形状を描く導波路パターンとすることで2本の導波路間隔を変えているが、この曲線導波路部分の一部分をテーパー導波路にして、曲線導波路であって同時に導波路幅も徐々に変わる構成とする。したがって、本発明の光カプラでは、テーパー導波路は、前記第1の方向性結合器または前記第2の方向性結合器の端部において、導波路の距離が離れていく展開部分の曲線導波路部分の一部分がテーパー導波路として構成されることができる。
また本実施例の光カプラでは、後述するように導波路幅の変更幅がそれほど大きくないことから、「導波路部分」として導波路幅が一定で所定の長さを持った太幅導波路または細幅導波路とせずに、テーパー導波路のみで太幅導波路や細幅導波路による幅変更の効果を得る構成とする。
図24は、本発明の光カプラの位相差付与部分でテーパー導波路のみで構成した導波路部分の形状例を示す図である。図24の(a)は、テーパー導波路のみで太幅導波路相当の導波路部分を構成した例である。図24の(a)に示したように、通常の導波路幅の部分2401から第1のテーパー導波路2402で導波路幅を徐々にWTBまで太くしていった後に、一定幅の部分を介さずに、直ちに第2のテーパー導波路2403でテーパー幅を徐々に細くして元の通常の導波路幅に戻す構成とする。以降ではこの図24の(a)の構成を太幅テーパー導波路と呼ぶことにする。図24の(b)は、テーパー導波路のみで細幅導波路相当の導波路部分を構成した例である。図24の(a)と同様に、通常の導波路幅の部分2404から第1のテーパー導波路2405で導波路幅を徐々にWTNまで細くしていった後に、一定幅の部分を介さずに、直ちに第2のテーパー導波路2406でテーパー幅を徐々に太くして元の通常の導波路幅に戻す構成とする。以降ではこの図24の(b)の構成を、細幅テーパー導波路と呼ぶことにする。
本実施例では、波長1.5〜1.6μm帯で50%の結合率となるように、波長依存性も考慮して設計を行った。具体的には、方向性結合器401の結合長LDC1を約161μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて24.5%となるように設計し、方向性結合器403の結合長LDC2を約524μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて79.9%となるように設計した。位相差付与部402は、上側のアーム導波路404のみに太幅テーパー導波路を設ける構成とした。通常の導波路幅をW=7μm、太幅テーパー導波路の中央部の最も導波路幅が太くなった部分の導波路幅WTBを9.35μm、太幅テーパー導波路の長さLTBを440μm、下側アーム導波路405の導波路長に対する上側アーム導波路404の導波路長の差ΔLMZIは0.579μmとした。
図18は、本発明の実施例1の光結合率50%設計の光カプラにおける光結合率の波長依存性を示す図である。横軸には波長(μm)を、縦軸には光結合率R(%)を示す。ここで、要素回路である方向性結合器の光結合率の波長依存性や導波路コア幅変動依存性は、前述の図2および図7で示した方向性結合器の特性と同じであるとした。また、導波路の実効屈折率の波長依存性や導波路コア幅依存性は前述の図11で示した導波路の特性と同じであるとした。図18には、光カプラにおける導波路幅が設計値の場合の曲線1801、設計値+0.2μmとなった場合の曲線1802、設計値−0.2μmとなった場合の曲線1803がそれぞれ示されている。曲線1802、1803のように、コア幅が設計値から±0.2μmずれたとしても、100nm以上の広い波長範囲に亘って光結合率Rの変動がほとんど無く、導波路幅の変化Δwに対するトレランスが大きい50%の光結合率Rが得られている。
〔20%光カプラ、70%光カプラ〕
次に、本発明の光カプラの実施例2として、結合率が20%の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラについて詳しく述べる。その基本的な構成は、実施例1の光カプラと同じであり、図4に示したように位相差付与部402は、上側のアーム導波路404のみに太幅テーパー導波路を設ける構成としている。本実施例では、方向性結合器401の結合率LDC1を約131μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて20.4%となるよう設計し、方向性結合器403の結合率LDC2を約333μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて51.0%の設計となるように設計した。位相差付与部402は、通常の導波路幅をW=7μm、太幅テーパー導波路の中央部の最も導波路幅が太くなった部分の導波路幅WTBを8.55μm、太幅テーパー導波路の長さLTBを440μm、下側アーム導波路405の導波路長に対する上側アーム導波路404の導波路長の差ΔLMZIは0.536μmとした。
図19は、実施例2の光結合率20%設計の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラの光結合率の波長依存性を示した図である。横軸には波長(μm)を、縦軸には光結合率R(%)を示す。図19には、光カプラにおける導波路幅が設計値の場合の曲線1901、設計値+0.2μmとなった場合の曲線1902、設計値−0.2μmとなった場合の曲線1903がそれぞれ示されている。曲線1902、1903のように、コア幅が設計値から±0.2μmずれたとしても、100nm以上の広い波長範囲に亘って結合率の変動がほとんど無く、導波路幅の変化Δwに対するトレランスが大きく、安定した20%の光結合率Rが得られている。
同様に、実施例2のもう1つの例として、光結合率が70%の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラについては以下のようになる。もう1つの実施例2においては、方向性結合器401の結合長LDC1を約137μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて21.2%となるように設計し、方向性結合器403の結合長LDC2を約652μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて93.5%となるように設計した。位相差付与部402は、通常の導波路幅をW=7μm、太幅テーパー導波路の中央部の最も導波路幅が太くなった部分の導波路幅WTBを9.30μm、太幅テーパー導波路の長さLTBを440μm、下側アーム導波路405の導波路長に対する上側アーム導波路404の導波路長の差ΔLMZIは0.595μmとした。
図20は、実施例2の光結合率70%設計の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラの光結合率の波長依存性を示した図である。横軸には波長(μm)を、縦軸には光結合率R(%)を示す。図19の場合と同様に、光カプラにおける導波路幅が設計値の場合の曲線2001、設計値+0.2μmとなった場合の曲線2002、設計値−0.2μmとなった場合の曲線2003がそれぞれ示されている。曲線2002、2003のように、コア幅が設計値から±0.2μmずれたとしても、100nm以上の広い波長範囲に亘って結合率の変動がほとんど無く、導波路幅の変化Δwに対するトレランスが大きく、安定した70%の光結合率Rが得られている。
上述の各実施例のように、本発明の光カプラによって、様々な光結合率Rの設計においても、導波路コア幅wの加工偏差に対して光結合率Rの変動が抑えられ、作製トレランスが大きい光カプラを得ることができる。
〔波長依存50%光カプラ〕
上述の実施例1〜実施例2では、所定の波長範囲で一定の光結合率となり波長依存性を抑えた広帯域光カプラについて説明をしてきた。しかしながら本発明の適用範囲は、一定の光結合率の光カプラだけに限定されず、光結合率が波長によって異なる特性であって波長依存性を持つ光カプラに対しても本発明を適用することができる。例えば通常の方向性結合器では、図2に示したように長波長側になる程光結合率Rが大きくなる右上がりの特性を持っているが、以下に述べるように、図2とは逆の右下がりの波長依存特性を持った光カプラを構成することもできる。
本発明の実施例3の光カプラは、光結合率が波長1500nmで53%となり、波長1600nmで48%となり、20nm毎に光結合率が1%ずつ減少する波長依存を持つ光カプラである。その基本的な構成は、実施例1と同じであり、位相差付与部402は、上側のアーム導波路404上のみに太幅テーパー導波路を設けた構成としている。
本実施例では、方向性結合器401の結合長LDC1を約206μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて31.0%となるように設計し、方向性結合器403の結合長LDC2を約549μmとし、結合率κが波長1550nmにおいて83.0%となるように設計した。位相差付与部402は、通常の導波路幅をW=7μm、太幅テーパー導波路の中央部の最も導波路幅が太くなった部分の導波路幅WTBを7.88μm、太幅テーパー導波路の長さLTBを440μm、下側アーム導波路405の導波路長に対する上側アーム導波路404の導波路長の差ΔLMZIは0.669μmとした。
図21は、本発明の実施例3の波長依存設計の光カプラの光結合率の波長依存性を示した図である。横軸には波長(μm)を、縦軸には光結合率R(%)を示す。図21には、光カプラにおける導波路幅が設計値の場合の曲線2101、設計値+0.2μmとなった場合の曲線2102、設計値−0.2μmとなった場合の曲線2103がそれぞれ示されている。曲線2101〜2103のように、100nm以上の波長範囲に亘って光結合率が直線状であって負の傾きを持っており、特定の波長依存性を持った光結合率が実現できている。
最後に、本発明の実施例1の構成の光結合率50%設計の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラおよび比較のため従来技術の構成の広帯域導波路型光カプラであるWINCを、石英系平面光波回路(石英系PLC)技術を用いて作製した結果を示す。
本発明の光カプラは、導波路の最小曲げ半径2mmで設計を行った。光カプラの回路長は、本発明の光カプラで約3.58mm、従来技術のWINCで約3.53mmであり、本発明の高トレランス化した構成による回路長の増加はほとんど無く、コンパクトに回路を実現できた。
本発明の光カプラは、火炎堆積(FHD)法等のガラス膜堆積技術と反応性イオンエッチング(RIE)等の微細加工技術の組み合わせを用いて作製した。具体的には、シリコン基板上に下部クラッド層となるガラス膜を堆積/透明化し、引き続き、屈折率がクラッド層よりもやや高いコア層を堆積した。次に、光導波回路となるコアパターンを微細加工技術によりパターン化し、上部クラッド層となるガラス膜を堆積/透明化することで埋め込み型の光導波路を作製した。
本発明の高加工トレランス特性を確認するために、同一の光カプラを導波路コア幅のみを変えて3水準のコア幅で回路を作製した。コアパターンの微細加工は、フォトマスクに描かれた回路パターンをコア膜の上面に塗布されたフォトレジストに転写するフォト工程と、転写されたフォトレジストパターンをマスクにして不要なコア膜を除去するエッチング工程の2工程で行われる。このフォト工程において、回路パターンを転写する際の露光量を3段階に変えることで導波路コア幅を変化させ、同一基板上にコア幅が異なる3水準(#1、#2、#3)の回路を作製した。また、同一水準のコア幅の回路を基板上の右側(R)と左側(L)に2回路作製している。尚、本発明の高加工トレランス広帯域導波路型光カプラおよび従来技術のWINCを、共に同一基板上に作製した。
図22は、実際に作製した本発明の実施例1の構成の光カプラの光結合率の波長依存性を示した図である。図23は、実際に作製した従来技術のWINC100の光結合率の波長依存性を示す図である。図22および図23において、横軸には波長(μm)を、縦軸には光結合率R(%)を示す。#1、#2、#3は3水準のコア幅の回路での特性を示し、それぞれ孤立導波路におけるコア幅が設計値と比べて、+0.22μm、+0.04μm、−0.13μmになっている。R、Lはそれぞれ基板上の右側、左側に作製した回路での特性を示している。
図23からわかるように、1500〜1600nmの波長域において、コア幅の変化(#1、#2、#3)および回路の基板位置(R、L)によって、従来技術のWINCでは光結合率特性には±4%程度のバラつきがみられる。一方で、図22からわかるように、実施例1の構成による本発明の光カプラでは、光結合率特性のバラつきは±1.5%程度に低減でき、50%の光結合率の設計値に対して安定した光結合率特性が広い波長帯域で得られている。
上述の本発明の光カプラの設計手順や、実施例では、位相差付与部の2つのアーム導波路の導波路幅が、通常の導波路Wを持つものとして説明した。しかし、一方のアーム導波路の導波路幅W1と、他方のアーム導波路の導波路幅W2が異なる場合(W1≠W2)であっても良い。また、位相差付与部の1つのアーム導波路の全体が「導波路部分」となっても良い。そのような構成例は、図25および図26において詳細に言及する。
2本のアーム導波路の幅(W1≠W2)が異なる場合には、本発明の光回路は、1つ以上の光を分岐または結合する導波路型光カプラにおいて、前記1つ以上の光が入力される第1の方向性結合器と、導波路幅W1を有するアーム導波路およびW1とは異なる導波路幅W2を有するアーム導波路を含む2本のアーム導波路からなり、前記第1の方向性結合器と縦続接続された位相差付与部であって、前記2本のアーム導波路の少なくとも一方に、当該一方のアーム導波路の導波路幅とは異なる導波路幅を有する導波路部分を含む、位相差付与部と、前記位相差付与部にさらに縦続接続された第2の方向性結合器とを備えた、光カプラに本発明を適用できる。このとき、導波路幅変動δwに対する位相差付与部の位相差φの変動δφの比率、すなわち微分dφ/dwが動作波長において式(1)を満たすように、導波路部分の導波路幅および長さ、並びに、2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されれば良い。
また、「導波路部分」のアーム導波路上の位置は、アーム導波路上の位置と基本的に関係ない。第1の方向性結合器側に寄せて配置しても、第2の方向性結合に寄せて配置しても、また上下アーム導波路でその寄せ方が逆になっても、本発明の作製加工偏差に対する光結合率特性の高トレランス化および広帯域動作化の効果には変わりはない。また、「導波路部分」が1つのアーム導波路上に2つ以上に分割して配置されても良い。「導波路部分」が導波路幅一定の部分の他にその一部としてテーパー導波路を含んでいても良い。さらに図24に示したように、導波路幅一定の部分を持たずに、導波路幅が漸増する部分と、漸減する部分とが連続的に接続された構成であっても良い。さらに、上述の説明では、位相差付与部分のアーム導波路が2本の場合についてのみ言及したが、3本以上の構成に対しても、同様の手順が適用可能である。
最後に、本発明の光回路における「導波路部分」の様々なバリエーションについて説明する。本発明の光回路では、「導波路部分」の幅が、「導波路部分」が設置されるアーム導波路とは反対のアーム導波路の導波路幅と異なっていれば良い。また、図4に示した本発明の光回路に限らず、一般に特別の目的が無い限りは、無用な損失や反射を抑えるために、導波路の曲げには緩やかな曲線が用いられると共に、導波路幅は連続的に滑らかに変化させて、所望の機能を実現するための光回路の導波路パターンを形成するのが原則である。したがって、例えば図4の方向性結合器401と位相差付与部402との境界は図面上では明確に表現されていない。
方向性結合器は、上下の導波路の近接部分があり、近接部分からやがて展開していく間のある位置までは、上下の導波路が対称構造となっている。したがって、上下の導波路の幅や、幅の変化の仕方、長さ、形状が上下対称である限界範囲を、方向性結合器と位相差付与部分との間の境界と考えれば良い。この範囲内では、上下対称の導波路間には、追加の位相差が生じないため、この範囲内を方向性結合器とみなすことができる。したがって、上述のすべての実施形態では、この境界(上下対称である限界範囲)を過ぎた領域は、位相差付与部分に含まれるものと考えることができる。
図25は、本発明の光回路の実際の導波路パターンに近い状態で描いた構成例を示す上面図である。図25の(a)の光回路2500は、方向性結合器2501、位相差付与部2502、方向性結合器2503がこの順に縦続接続されている。ここで、2つの方向性結合器の結合部分は、通常の導波路幅Wよりも狭く構成されている点に留意されたい。また、3つの要素の境界が点線で示されている。方向性結合器2501、2503の点線領域内では、上下の導波路が対称の構造となっている点に留意されたい。
図25の(a)の例の位相差付与部2502では、両端のテーパー導波路部分を除いて、位相差付与部2502の上側のアーム導波路のほぼ全体が幅WBの太幅導波路(「導波路部分」)になっている。一方、下側のアーム導波路が通常の導波路幅Wとなっている。したがって、一方のアーム導波路の少なくとも一部(概ねすべての上側のアーム導波路)の導波路幅が、他方のアーム導波路(下側のアーム導波路部分)の導波路幅と異なっていることになる。
図25の(b)の光回路2510は、方向性結合器2511、位相差付与部2512、方向性結合器2513がこの順に縦続接続されている。ここでも、2つの方向性結合器2511、2513の結合部分は、通常の導波路幅Wよりも狭く構成されている。また、3つの要素の境界が点線で示されている。方向性結合器2511、2513の点線領域内では、上下の導波路が対称の構造となっている点に留意されたい。
図25の(b)の例の位相差付与部2512では、両端のテーパー導波路部分を除いて、位相差付与部2512の上側のアーム導波路のほぼ全体が幅WBの太幅導波路(「導波路部分」)になっている。一方、下側のアーム導波路のほぼ全体が幅WNの細幅導波路(「導波路部分」)になっている。したがって図25の(b)場合でも、一方のアーム導波路の少なくとも一部(概ねすべての上側のアーム導波路部分)の導波路幅が、他方のアーム導波路(下側のアーム導波路)の導波路幅と異なっていることになる。
図26は、本発明の光回路の実際の導波路パターンに近い状態で描いたさらに別の構成例を示す上面図である。図26の構成例では、方向性結合器内の導波路が通常の導波路幅Wで構成されている。図26の(a)は、の光回路2600は、方向性結合器2601、位相差付与部2602、方向性結合器2603がこの順に縦続接続されている。また、3つの要素の境界が点線で示されている。方向性結合器2601、2603の点線領域内では、やはり上下の導波路が対称の構造となっている点に留意されたい。図26の(a)の例の位相差付与部2602では、上側のアーム導波路の全体が幅WBの太幅導波路(「導波路部分」)になっている。一方、下側のアーム導波路の全体が幅WNの細幅導波路(「導波路部分」)になっている。尚、図26の(a)では、導波路幅の差が見やすいように、テーパー導波路が無い状態で示している。この場合でも、一方のアーム導波路の少なくとも一部(すべての上側のアーム導波路部分)の導波路幅が、他方のアーム導波路(下側のアーム導波路)の導波路幅と異なっていることになる。
図26の(b)は、の光回路2600は、方向性結合器2611、位相差付与部2612、方向性結合器2613がこの順に縦続接続されている。(a)同様に、3つの要素の境界が点線で示されている。方向性結合器2611、2613の点線領域内では、上下の導波路が対称の構造となっている点に留意されたい。図26の(b)の例の位相差付与部2612では、上側のアーム導波路の一部が幅WBの太幅導波路(「導波路部分」)になっており、残りは通常の導波路幅Wとなっている。一方、下側のアーム導波路の一部が幅WNの細幅導波路(「導波路部分」)になっており、残りは通常の導波路幅Wとなっている。尚図26の(b)でも、導波路幅の差が見やすいように、テーパー導波路が無い状態で示している。この場合でも、一方のアーム導波路の少なくとも一部(一部の上側のアーム導波路部分)の導波路幅が、他方のアーム導波路(下側のアーム導波路)の導波路幅と異なっていることになる。
上述の図25および図26の実際の「導波路部分」の様々なバリエーションで説明したように、本発明の光回路では、位相差付与部分の、2本のアーム導波路の内の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている導波路部分を含んでいることになる。ここで、一方のアーム導波路の「少なくとも一部」とは、一方のアーム導波路の全体を含んでいても良い。
以上のように、本発明の光カプラによって、導波路コア幅の加工偏差に対して光結合率の変動が十分に抑えられ、作製トレランスが大きい光カプラをコンパクトな回路サイズで実現することができる。
本発明は、一般的に通信システムに利用することができる。特に、光通信システムの光回路に利用できる。
100、400、2500、2510、2600、2610 光カプラ
101、103、401、403、2501、2503、2511、2513、2601、2603、2611、2613 方向性結合器
102、402、2502、2512、2602、2612 位相差付与部
104、105、404、405、2401、2404 アーム導波路
406 導波路部分(太幅導波路、細幅導波路)
2402、2403、2405、2406 テーパー導波路

Claims (8)

  1. 1つ以上の光を分岐または結合する導波路型光カプラにおいて、
    前記1つ以上の光が入力される第1の方向性結合器と、
    2本のアーム導波路からなり、前記第1の方向性結合器と縦続接続された位相差付与部であって、前記2本のアーム導波路の一方のアーム導波路の少なくとも一部の幅が他方のアーム導波路の幅と異なっている導波路部分を含む、位相差付与部と、
    前記位相差付与部にさらに縦続接続された第2の方向性結合器と
    を備え、
    Rを光カプラ全体としての光結合率とし、前記第1の方向性結合器の光結合率κ1を結合位相角θ1によってκ1=(sin(θ1))2で角度表現し、前記第2の方向性結合器の光結合率κ2を結合位相角θ2によってκ2=(sin(θ2))2で角度表現したとき、導波路幅変動δwに対する、前記位相差付与部により与えられる位相差φの変動δφの比率であるdφ/dwが、所定の動作波長において
    Figure 2018004692
    の関係を満たすように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたこと
    を特徴とする導波路型光カプラ。
  2. 1つ以上の光を分岐または結合する導波路型光カプラにおいて、
    前記1つ以上の光が入力される第1の方向性結合器と、
    同一の導波路幅Wを有する2本のアーム導波路からなり、前記第1の方向性結合器と縦続接続された位相差付与部であって、前記2本のアーム導波路の少なくとも一方に前記同一の幅Wとは異なる導波路幅を有する導波路部分を含む、位相差付与部と、
    前記位相差付与部にさらに縦続接続された第2の方向性結合器と
    を備え、
    Rを光カプラ全体としての光結合率とし、前記第1の方向性結合器の光結合率κ1を結合位相角θ1によってκ1=(sin(θ1))2で角度表現し、前記第2の方向性結合器の光結合率κ2を結合位相角θ2によってκ2=(sin(θ2))2で角度表現したとき、導波路幅変動δwに対する、前記位相差付与部により与えられる位相差φの変動δφの比率であるdφ/dwが、所定の動作波長において
    Figure 2018004692
    の関係を満たすように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたこと
    を特徴とする導波路型光カプラ。
  3. 所定の動作波長域の複数の波長において、
    Figure 2018004692
    の自乗の和が最小になるように、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたことを特徴とする請求項1または2に記載の導波路型光カプラ。
  4. 前記所定の動作波長域の1つ以上の波長において、波長λに対する前記光結合率Rの微分
    Figure 2018004692
    の自乗の和が最小になるように、前記方向性結合器の結合長の長さ、前記導波路部分の長さ、前記導波路部分の導波路幅、および、前記2本のアーム導波路間の導波路長差が設定されたことを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の導波路型光カプラ。
  5. 前記導波路部分は、前記同一の導波路幅Wよりも広い幅LBを持つ太幅導波路、または、前記同一の導波路幅Wよりも狭い幅LNを持つ細幅導波路であることを特徴とする請求項2乃至4いずれかに記載の導波路型光カプラ。
  6. 前記導波路部分は、テーパー導波路を介して前記2本のアーム導波路の前記同一の導波路幅Wの部分へ連続的に接続されていることを特徴とする請求項2乃至5いずれかに記載の導波路型光カプラ。
  7. 前記導波路部分がテーパー導波路で構成されていることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載の導波路型光カプラ。
  8. 前記テーパー導波路は、前記第1の方向性結合器または前記第2の方向性結合器の端部において、導波路の距離が離れてゆく展開部分の曲線導波路部分の一部分がテーパー導波路として構成されたことを特徴とする請求項6または7に記載の導波路型光カプラ。
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