JP2011179787A - 水切り乾燥方法および水切り乾燥システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水が付着した物品と、特定の含フッ素エーテルを主成分とし、アルコール類を含む処理液41とを接触させて物品から水を分離し、該物品を乾燥させる水切り乾燥工程と、処理液41をエーテル層(a1)と水層(b1)に二層分離する工程と、エーテル層(a1)に、前記アルコール類を含むアルコール濃度40〜60質量%のアルコール水溶液(c)を接触させて、アルコール濃度を調整したエーテル層(a2)を得る工程と、前記エーテル層(a2)を処理液41として供給する工程と、を有する水切り乾燥方法。また、該水切り乾燥方法を実施できる水切り乾燥システム。
【選択図】図1
Description
物品に付着した水分を除去する方法としては、アルコール類とハロゲン化炭化水素を含む処理液と物品とを接触させることで、該物品に付着した水分を除去し、乾燥させる方法が知られている(特許文献1)。該方法においては、物品に付着した水分にアルコール類が溶解することで、物品から分離される。物品から分離した水分は、ハロゲン化炭化水素との比重の差によって処理液の液面へと浮上する。
(i)処理液のアルコール濃度を定期的に測定し、アルコール濃度が低下していればアルコールを補充して、処理液のアルコール濃度を維持しながら水切り乾燥を実施する方法。
(ii)処理液に一定量のアルコール類を連続的に供給しながら水切り乾燥を実施する方法。
[1]下記工程(I)〜(IV)を有する水切り乾燥方法。
(I)水が付着した物品と、下式(1)で表される含フッ素エーテルを主成分とし、アルコール類を含む処理液とを接触させて物品から水を分離し、該物品を乾燥させる水切り乾燥工程。
(II)前記物品を接触させて水切りした処理液を、比重の違いによりエーテル層(a1)と水層(b1)の二層に分離させる工程。
(III)分離したエーテル層(a1)に、前記アルコール類を含むアルコール濃度40〜60質量%のアルコール水溶液を接触させ、アルコール濃度を調整したエーテル層(a2)を得る工程。
(IV)前記エーテル層(a2)を前記処理液として前記工程(I)に供給する工程。
Rf−O−R (1)
(ただし、式(1)中、Rfは炭素原子数が3〜6の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数が1または2のアルキル基である。)
[2]さらに、下記工程(V)を有する、前記[1]に記載の水切り乾燥方法。
(V)前記工程(IV)のエーテル層(a2)上に形成される水層(b2)のアルコール濃度を40〜60質量%に調整して前記アルコール水溶液を再生し、前記工程(III)に供給する工程。
[3]前記工程(I)が、前記物品を前記処理液に接触した後、該物品を、前記処理液の蒸気または前記含フッ素エーテルの蒸気に接触させて乾燥させる工程である、前記[1]または[2]に記載の水切り乾燥方法。
[4]前記工程(V)におけるアルコール濃度を比重を測定して管理する、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水切り乾燥方法。
[5]前記アルコール類が、メタノール、エタノールおよび2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の水切り乾燥方法。
[6]水が付着した物品と、下式(1)で表される含フッ素エーテルを主成分とし、アルコール類を含む処理液とを接触させて物品から水を分離し、該物品を乾燥させる水切り乾燥部と、前記水切り乾燥部の処理液を抜き出して、比重の違いによりエーテル層(a1)と水層(b1)の二層に分離し、該エーテル層(a1)に、前記アルコール類を含むアルコール濃度40〜60質量%のアルコール水溶液を接触させて、アルコール濃度を調整したエーテル層(a2)を得て、該エーテル層(a2)を前記処理液として前記水切り乾燥部に供給する処理液再生部と、を有する水切り乾燥システム。
Rf−O−R (1)
(ただし、式(1)中、Rfは炭素原子数が3〜6の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数が1または2のアルキル基である。)
[7]前記処理液再生部において前記エーテル層(a2)上に形成される水層(b2)のアルコール濃度を、40〜60質量%に調整して、前記アルコール水溶液として前記処理液再生部に供給するアルコール水溶液再生部を有する、前記[6]に記載の水切り乾燥システム。
また、本発明の水切り乾燥システムでは、処理液のアルコール濃度が一定に保たれ、水が付着した物品の水切り乾燥が安定して実施される。
本発明の水切り乾燥システムは、本発明の水切り乾燥方法を実施して、水が付着した物品(被洗物)の水を物品から分離して乾燥するシステムである。本発明の水切り乾燥システムは、例えば、精密機械工業等の分野において、物品を水系洗浄剤で洗浄した後の濯ぎ工程、水での洗浄工程、めっき後のめっき液の濯ぎ工程等の後に、物品に付着した水を除去するとき等に用いる。以下、本発明の水切り乾燥システムの実施形態の一例を示して詳細に説明する。
本実施形態の水切り乾燥システム1は、図1に示すように、水切り乾燥部10と、処理液再生部20と、アルコール水溶液再生部30とを有する。
水切り乾燥部10の下部は、水切り槽11と蒸気発生槽12とから構成されている。また、水切り乾燥部10の上部には、冷却コイル13が設置されている。
水切り槽11には、ヒータ11aおよび超音波振動子11bが設置されており、処理液41が収容されている。蒸気発生槽12には、ヒータ12aが設置され、処理液42が収容されている。
蒸気発生槽12は、収容されている処理液42をヒータ12aにより加熱して蒸気を発生させる槽である。蒸気発生槽12により発生された蒸気は、冷却コイル13により冷却され、水切り乾燥部10の外に放出されることが抑制されており、水切り乾燥部10内に蒸気ゾーン10Aが形成される。また、冷却コイル13により冷却され、凝縮して液化した蒸気43は、後述の比重分離槽21に送られる。
Rf−O−R (1)
ただし、式(1)中、Rfは炭素原子数が3〜6の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数が1または2のアルキル基である。パーフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の全てがフッ素原子に置換された基を意味する。
Rfのパーフルオロアルキル基の炭素原子数は、3〜6であり、4〜5が好ましく、4が特に好ましい。
Rは、メチル基またはエチル基であり、メチル基が好ましい。
アルコール類としては、炭素数が1〜3で、かつ沸点が60〜90℃のアルコールが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノールが挙げられる。なかでも、物品の水切り乾燥の性能が高く、取扱性に優れる点から、2−プロパノールが特に好ましい。
アルコール類は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
処理液42は、処理液41と同じ処理液が用いられる。
処理液再生部20は、比重分離槽21および接触槽22を有している。比重分離槽21は、流路51により水切り槽11と連結されている。また、比重分離槽21と接触槽22は、流路52で連結されている。また、接触槽22は、水切り槽11および蒸気発生槽12とそれぞれ結ばれる各々独立した流路を有する。一方の流路は、接触槽22と水切り槽11を結び、接触槽22から水切り槽11へ処理液を循環させる流路53であり、ポンプ61が設けられている。他方の流路は、接触槽22と蒸気発生槽12を結び、蒸気発生槽12へ処理液を供給する流路54である。
流路51の上流端は、水切り槽11の処理液41の液面近くに開口している。これにより、水切り槽11からオーバーフローした処理液41が流路51を通じて比重分離槽21に流入するようになっている。
また、比重分離槽21では、エーテル層(a1)が収容される部分に、流路52の上流端が開口しており、アルコール濃度が低下したエーテル層(a1)が接触槽22に流入するようになっている。
流路52の下流端は、水層(b2)の液面付近に開口していることが好ましい。これにより、エーテル層(a1)は水層(b2)の上方から接触し、下方へと移動してエーテル層(a2)を形成するため、水層(b2)(アルコール水溶液(c))とエーテル層(a1)の接触が効率良く行える。
また、接触槽22は、エーテル層(a2)が収容される部分に、水切り槽11および蒸気発生槽12とそれぞれ結ばれる流路53、54を有する。流路53の上流端は接触槽22の底面または側面に形成されており、ポンプ61により、流路53を通じて接触槽22から水切り槽11にエーテル層(a2)が送られ、処理液が循環する。また、流路54の上流端はエーテル層(a2)の液面付近に開口しており、流路54を通じて接触槽22から蒸気発生槽12にエーテル層(a2)が送られるようになっている。
また、接触槽22は、エーテル層(a2)が収容される部分が、仕切り22aにより2つに分断されており、ポンプ61によりエーテル層(a2)を流路53に吸引する際に接触槽22内の液面が乱れて二層分離に悪影響を及ぼすことを抑制できるようになっている。
水層(b2)のアルコール濃度は、エーテル層(a1)との接触により低下するので、水層(b2)はアルコール水溶液再生部30に戻す。
アルコール水溶液(c)のアルコール濃度は、40〜60質量%である。アルコール水溶液(c)のアルコール濃度が40質量%以上であれば、アルコール水溶液(c)とエーテル層(a1)の接触後のエーテル層(a2)にアルコール類が充分に供給される。アルコール水溶液(c)のアルコール濃度が60質量%以下であれば、エーテル層(a2)のアルコール濃度が高くなりすぎて、処理液41が引火する組成になることを抑制できる。
アルコール水溶液再生部30は、濃度調整槽31と蒸留器32とを有している。濃度調整槽31と接触槽22は、接触槽22から水層(b2)を取り出す流路55と、濃度調整槽31から接触槽22にアルコール水溶液(c)を送液する流路56とで、それぞれ連結されている。また、比重分離槽21と蒸留器32とが、流路57で連結されている。蒸留器32と濃度調整槽31とは、流路58で連結されている。濃度調整槽31には、アルコールを供給する流路59が設けられている。蒸留器32には、廃液を排出する流路60が設けられている。
また蒸留器32で蒸留後の釜残として得られる、アルコール濃度の低い水溶液は、廃液として流路60から排出する。
各流路における送液は、ポンプ等の送液機構により行える。
以下、本発明の水切り乾燥方法の実施形態の一例として、前記水切り乾燥システム1を用いた水切り乾燥方法について説明する。
水切り乾燥方法を適用できる物品としては、例えば、プリント基板、フープ剤関係、液晶表示器、磁気記録部品、半導体材料、電歪用水晶、磁気記録部品、光電変換部品等の電子部品、電動機部品、発券用等部品、貨幣検査用等部品等の電機部品、ベアリング、時計等の精密機械部品、光学レンズ、プリズム、ポリゴンミラー、光学フィルター等の光学部品、超硬チップ等の加工用精密機械部品等、様々な物品が挙げられる。
これらの物品を構成する基材の材質としては、例えば、鉄、ステンレス、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、銀、銅、銅合金、錫、硫酸アルマイト等の金属、および、銅、亜鉛、ニッケル、クロム、金で材料表面をめっき処理した金属、炭素、ケイ素、タングステン、ニッケル、チタン、モリブデン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等を焼結させた焼結金属材料、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、フェノール樹脂、ABS樹脂、ナイロン6、ナイロン66、PTFE樹脂、PCTFE樹脂、エポキシ樹脂のようなプラスチック材料、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタレートとパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、フェノールおよびフタル酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体、2,6−ヒドロキシナフトエ酸とパラヒドロキシ安息香酸との重縮合体等の高分子材料、ガラスが挙げられる。
本発明における処理液は、これらの物品に悪影響を及ぼさない。
(I)水が付着した物品と、含フッ素エーテル(化合物(1))を主成分とし、アルコール類を含む処理液とを接触させて物品から水を分離し、該物品を乾燥させる水切り乾燥工程。
(II)前記物品を接触させて水切りした処理液を、比重の違いによりエーテル層(a1)と水層(b1)の二層に分離させる工程。
(III)前記工程(II)で分離したエーテル層(a1)に、前記アルコール類を含むアルコール濃度40〜60質量%のアルコール水溶液(c)を接触させ、アルコール濃度を調整したエーテル層(a2)を得る工程。
(IV)前記エーテル層(a2)を処理液として前記工程(I)に供給する工程。
(V)前記工程(IV)のエーテル層(a2)上に形成される水層(b2)のアルコール濃度を40〜60質量%に調整してアルコール水溶液(c)を再生し、前記工程(III)に供給する工程。
(VI)工程(II)で分離した水層(b1)を蒸留し、前記工程(V)におけるアルコール水溶液(c)の再生に供する高アルコール濃度のアルコール水溶液を得る工程。
水切り乾燥部10において、水が付着した物品を処理液41に浸漬することで、物品と処理液41とを接触させる。これにより、該物品に付着した水に処理液41中のアルコール類が溶解し、水が物品から分離する。分離した水は、含フッ素エーテルとの比重の差により処理液41の液面へと浮上する。その際、処理液のアルコール類の一部は、物品に付着していた水に抽出されて液面に浮上する。さらに、接触槽22のエーテル層(a2)が、ポンプ61により吸引され、水切り槽11に供給されることで、水切り槽11の処理液41の液面に浮上した水が、処理液41とともに比重分離槽21に流れ込む。
処理液41への物品の浸漬は、水切りの効率が向上する点から、超音波振動子11bにより処理液41に超音波振動を与えながら行うことが好ましい。
また、処理液41は、沸騰していてもよい。
処理液が物品の表面から揮発する際には、蒸発潜熱により物品の表面温度が低下する。物品の表面温度が室温より下がると、空気中の水分が物品表面に結露して乾燥シミが生じるおそれがある。しかし、物品を蒸気に接触させることで、該蒸気の温度まで物品が温められ、乾燥時に表面温度の低下が抑制されるので、物品の水切り乾燥における仕上がりの品質が向上する。
水切り槽11において物品と接触させた処理液41には、該物品に付着していた水が液面近くに混入している。処理液41は、オーバーフローして処理液再生部20の比重分離槽21に流入する。工程(II)では、水切り槽11から流入してきた処理液41を静置することで、比重の違いを利用してエーテル層(a1)と水層(b1)の二層に分離させる。該二層分離では、比重がより大きいエーテル層(a1)が下層、水層(b1)が上層となる。
処理液41のアルコール類の一部は、物品に付着していた水に抽出されて浮上するので、水層(b1)にもアルコール類が含まれている。そのため、エーテル層(a1)のアルコール濃度は、物品と接触させる前の処理液41のアルコール濃度よりも低くなっている。エーテル層(a1)におけるアルコール濃度の低下の度合いは、物品に付着している水の量が多いほど大きい。
比重分離槽21で二層分離したエーテル層(a1)を接触槽22に取り出し、該エーテル層(a1)と、アルコール濃度40〜60質量%のアルコール水溶液(c)を接触させ、アルコール濃度を調整したエーテル層(a2)を得る。アルコール水溶液(c)は、比重の違いにより水層(b2)となる。
エーテル層(a1)とアルコール水溶液(c)とを接触させる方法としては、水層(b2)(アルコール水溶液(c))の上方からエーテル層(a1)を供給する方法が好ましい。また、接触槽22に攪拌翼等を設置して、アルコール水溶液(c)とエーテル層(a1)の接触液を攪拌してもよく、接触槽22自体を振って接触液を振り混ぜてもよく、それらを組み合わせてもよい。接触液を攪拌したり振り混ぜたりする場合には、エーテル層(a1)は水層(b2)の下方に供給してもよい。その他、アルコール水溶液(c)とエーテル層(a1)との接触面積を大きくするために、エーテル層(a1)をスプレー状に水層(b2)に供給する方法を用いてもよい。
具体的には、処理液の含フッ素エーテルが含フッ素エーテル(α)で、アルコール類が2−プロパノールである場合、アルコール水溶液(c)として、アルコール濃度が40質量%の2−プロパノール水溶液を用いれば、アルコール濃度が4質量%のエーテル層(a2)が得られる。また、アルコール水溶液(c)として、アルコール濃度が60質量%の2−プロパノール水溶液を用いれば、アルコール濃度が6質量%のエーテル層(a2)が得られる。
エーテル層(a2)は、処理液41として工程(I)に供給する。これにより、水切り槽11では、アルコール濃度が低下した処理液41が取り除かれつつ、アルコール濃度が再生されたエーテル層(a2)が供給されるため、処理液41のアルコール濃度が一定に保たれる。
また、本実施形態では、エーテル層(a2)は、処理液42として蒸気発生槽12にも供給され、蒸発により処理液42が枯渇することを防止している。
工程(III)では、アルコール水溶液(c)から含フッ素エーテルへとアルコール類が移動するため、そのまま接触を続けると水層(b2)のアルコール濃度は低下していく。
そこで、接触槽22から水層(b2)を取り出して濃度調整槽31に戻し、濃度調整槽31において該水層(b2)に高濃度のアルコール水溶液を加えることで、アルコール濃度を40〜60質量%に調整してアルコール水溶液(c)を再生し、再度接触槽22(工程(III))に供給する。これにより、工程(III)において、安定したアルコール濃度のエーテル層(a2)が得られる。アルコール水溶液(c)の再生は、蒸留器32から供給される高濃度のアルコール水溶液を加える他に、流路59からアルコール類を加えることで行ってもよい。
例えば、含フッ素エーテル(α)を含むアルコール濃度50質量%の2−プロパノール水溶液と、含フッ素エーテル(α)を含まないアルコール濃度50質量%の2−プロパノール水溶液では比重が異なる。そのため、含フッ素エーテル(α)を含まない2−プロパノール水溶液の比重では濃度管理が行えない。そのため、50質量%の2−プロパノール水溶液を再生する際には、図3に示す、飽和濃度の含フッ素エーテル(α)を含む2−プロパノール水溶液の温度−比重管理図を用いる。
工程(II)の比重分離槽21で分離した水層(b1)にはアルコール類が含まれている。水層(b1)を取り出して蒸留器32にて蒸留することにより、工程(V)においてアルコール水溶液(c)の再生に用いる高アルコール濃度のアルコール水溶液を得る。廃液は、流路60を通じて排出する。蒸留器32は特に限定されず、公知の蒸留器が用いられる。例えば、アルコール類として2−プロパノールを用いる場合、水層(b1)を蒸留器32で蒸留することで、水との共沸組成である87質量%、もしくはそれに類似の2−プロパノール水溶液が得られる。また、公知の蒸留器に薄膜蒸留を組み合わせて、より高濃度のアルコール水溶液が得られるようにしてもよい。
工程(VI)を行うことにより水層(b1)に含まれるアルコール類を再利用できるため、工程(II)からの廃液量が減少する。
工程(I)において水が付着した物品の水切り乾燥を行うと、該処理液においては、含フッ素エーテル(化合物(1))に溶解していたアルコール類が、処理液に加わった水と共に液面へと浮上して除去されるため、処理液のアルコール濃度が低下する。つまり、処理液をそのまま使用し続けると、物品の水切り乾燥を実施するにつれて、処理液に含まれるアルコール類の量が減少し、水切り乾燥の効率が低下することになる。
しかし、本発明の水切り乾燥方法では、工程(II)〜工程(IV)により、水切り乾燥した処理液を取り出しつつ、アルコール濃度を調整して再生した処理液(エーテル層(a2))を供給するため、工程(I)で用いる処理液に含まれるアルコール類の量の減少を抑制できる。そのため、処理液のアルコール濃度が一定に保たれ、安定した水切り乾燥が実現できる。
工程(V)を有さない場合としては、例えば、アルコール水溶液再生部を有さない水切り乾燥システムを用いて、水層(b2)は廃棄してアルコール水溶液(c)を再生せずに、アルコール水溶液(c)を別途用意して接触槽(工程(III))に供給する方法が挙げられる。
また、工程(VI)を有さない場合としては、例えば、蒸留器を有さないアルコール水溶液再生部を備えた水切り乾燥システムを用いて、水層(b1)は廃棄して再利用せずに、別途用意した高濃度のアルコール水溶液によりアルコール水溶液(c)を再生する方法が挙げられる。
また、流路53には、水分を除去するコアレッサー型フィルターを設けてもよい。これにより、流路53を通じて送られるエーテル層(a2)に、万一水分が大量に持ち込まれた場合でも、該フィルターで水分を除去することで、装置内を循環する処理液が水分の混合により白濁することを抑制できる。また、流路53には、異物を除去する異物除去用フィルターを設けてもよく、水分除去用コアレッサー型フィルターと異物除去用フィルターを併せて設けてもよい。
また、エーテル層(a2)を処理液42として、蒸気発生槽に供給しない方法であってもよい。この場合、処理液42は、処理液41と異なる組成であってもよい。また、蒸気発生槽に処理液の代わりに含フッ素エーテルを収容し、含フッ素エーテルの蒸気を含む蒸気ゾーンに物品を引き上げて、該蒸気と物品を接触させる方法であってもよい。
また、蒸気発生槽を有さない水切り乾燥部を有する水切り乾燥システムを用いて、処理液から引き上げた物品を、そのまま放置したり加熱することで乾燥する方法であってもよい。
本実施例では、水切り乾燥試験を行う物品(被洗物)として、あらかじめよく洗浄したガラス板(縦25mm×横30mm×厚さ2mm)を水に浸漬したものを用いた。
また、アルコール類と含フッ素エーテルを含む処理液として、ノベックHFE−71IPA(住友スリーエム社製、CF3CF2CF2CF2−O−CH3とCF3−CF(CF3)−CF2−O−CH3を混合したもの(含フッ素エーテル(α))に、5質量%の2−プロパノールが含まれている混合物、沸点54.5℃)を用いた。
図1に例示した水切り乾燥システム1において、濃度調整槽31から接触槽22に水を供給し、接触槽22において、比重分離槽21から流入してきたエーテル層(a1)に水を接触させるようにした。この水切り乾燥システムを1時間運転した後に、水切り乾燥試験を実施した。本試験にはHFE−71IPAを100kg使用した。
まず、物品100枚を治具に乗せ、水切り槽11にて45℃の処理液に浸漬し、超音波振動を与えながら1分間水切りを行った。次に、処理液の蒸気ゾーン10Aで1分間蒸気洗浄を行った。これらの操作を100回(100枚×100回=10000枚)繰り返して行った。
なお、本試験において、100枚のガラス板が載った治具に付着している水の量は、水切り乾燥1回あたり50gであった。
濃度調整槽31から接触槽22に供給する水を、表1に示す2−プロパノール濃度(IPA濃度)の2−プロパノール水溶液(IPA水溶液)に変更した以外は、例1と同様にして100枚×100回の水切り乾燥試験を実施した。
濃度調整槽31において、エーテル層(a1)と接触させる2−プロパノール水溶液(アルコール水溶液(c))の濃度は、図3に示す比重管理表を用いて、100枚の物品の水切り乾燥10回毎に比重測定を行いながら維持した。
(1)水切り槽の処理液の2−プロパノール濃度
100回の水切り乾燥試験の終了後に、水切り槽11の処理液をサンプリングし、アジレント社製ガスクロマトグラフ(アジレント6890GCシステム)により処理液の2−プロパノール濃度を測定し、下記基準で評価した。
○:2−プロパノール濃度が4質量%以上6質量%以下であった。
×:2−プロパノール濃度が4質量%未満、または6質量%超であった。
100回目の水切り乾燥試験の終了後、目視および呼気によりガラス板表面のシミの有無を確認し、乾燥状態を評価した。
○:ガラス板表面にシミがなかった。
×:ガラス板表面にシミが確認された。
例1〜6における各評価結果を表1に示す。
また、エーテル層(a1)に2−プロパノール濃度35質量%の2−プロパノール水溶液を接触させた例2では、アルコール類の供給量が少ないため、処理液の2−プロパノール濃度が4質量%未満となり、ガラス板表面にシミが見られた。
エーテル層(a1)に2−プロパノール濃度65質量%の2−プロパノール水溶液を接触させた例6では、ガラス板表面にシミが見られることはなかったものの、処理液の2−プロパノール濃度が6質量%よりも高かった。そのため、蒸気発生槽12において2−プロパノールが濃縮されて引火する2−プロパノール濃度となった。
Claims (7)
- 下記工程(I)〜(IV)を有する水切り乾燥方法。
(I)水が付着した物品と、下式(1)で表される含フッ素エーテルを主成分とし、アルコール類を含む処理液とを接触させて物品から水を分離し、該物品を乾燥させる水切り乾燥工程。
(II)前記物品を接触させて水切りした処理液を、比重の違いによりエーテル層(a1)と水層(b1)の二層に分離させる工程。
(III)分離したエーテル層(a1)に、前記アルコール類を含むアルコール濃度40〜60質量%のアルコール水溶液を接触させ、アルコール濃度を調整したエーテル層(a2)を得る工程。
(IV)前記エーテル層(a2)を前記処理液として前記工程(I)に供給する工程。
Rf−O−R (1)
(ただし、式(1)中、Rfは炭素原子数が3〜6の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数が1または2のアルキル基である。) - さらに、下記工程(V)を有する、請求項1に記載の水切り乾燥方法。
(V)前記工程(IV)のエーテル層(a2)上に形成される水層(b2)のアルコール濃度を40〜60質量%に調整して前記アルコール水溶液を再生し、前記工程(III)に供給する工程。 - 前記工程(I)が、前記物品を前記処理液に接触させた後、該物品を、前記処理液の蒸気または前記含フッ素エーテルの蒸気と接触させて乾燥させる工程である、請求項1または2に記載の水切り乾燥方法。
- 前記工程(V)におけるアルコール濃度を比重を測定して管理する、請求項1〜3のいずれかに記載の水切り乾燥方法。
- 前記アルコール類が、メタノール、エタノールおよび2−プロパノールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の水切り乾燥方法。
- 水が付着した物品と、下式(1)で表される含フッ素エーテルを主成分とし、アルコール類を含む処理液とを接触させて物品から水を分離し、該物品を乾燥させる水切り乾燥部と、
前記水切り乾燥部の処理液を抜き出して、比重の違いによりエーテル層(a1)と水層(b1)の二層に分離し、該エーテル層(a1)に、前記アルコール類を含むアルコール濃度40〜60質量%のアルコール水溶液を接触させて、アルコール濃度を調整したエーテル層(a2)を得て、該エーテル層(a2)を前記処理液として前記水切り乾燥部に供給する処理液再生部と、
を有する水切り乾燥システム。
Rf−O−R (1)
(ただし、式(1)中、Rfは炭素原子数が3〜6の直鎖状または分岐鎖状のパーフルオロアルキル基であり、Rは炭素原子数が1または2のアルキル基である。) - 前記処理液再生部において前記エーテル層(a2)上に形成される水層(b2)のアルコール濃度を、40〜60質量%に調整して、前記アルコール水溶液として前記処理液再生部に供給するアルコール水溶液再生部を有する、請求項6に記載の水切り乾燥システム。
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JP2015085222A (ja) * | 2013-10-28 | 2015-05-07 | オリンパス株式会社 | 物品の洗浄方法および洗浄システム |
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