JP2011179037A - 超硬合金スクラップの処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】超硬合金スクラップを経済性よく処理し、純度の高いコバルト等を回収することができる処理方法を提供する。
【課題手段】超硬合金スクラップを塩化第二鉄の塩酸水溶液に浸漬して該スクラップ中のコバルトと鉄を溶出し(浸出工程)、この浸出液を酸化し(酸化工程)、酸化した浸出液から第二鉄を回収して塩化第二鉄の塩酸水溶液とし、これを浸出工程に戻して浸出液として用いることを特徴とする超硬合金スクラップの処理方法、およびコバルトと鉄を溶出した浸出液に酸化剤を導入して液中の鉄を酸化した後に、該浸出液にアルカリを添加して水酸化第二鉄を沈澱させ、該沈澱を回収して塩酸に溶解し、生成した塩化第二鉄の塩酸水溶液を浸出工程に戻して浸出液として用いる超硬合金スクラップの処理方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、コバルトと鉄を含む超硬合金スクラップの処理方法に関し、より詳しくは、炭化タングステン等を主体とし、コバルト等を結合相とする超硬合金スクラップからコバルト等を経済的に純度よく回収し、また浸出処理工程の経済性を高める処理方法に関する。本発明の回収方法は超硬合金スクラップからタングステンを回収する処理方法において、合金結合相の分解処理方法として好適である。
タングステンまたはタングステン化合物を主体とし、コバルト、鉄、ニッケル、およびクロムを結合相とする超硬合金から製造される超硬工具が一般に用いられている。これらの超硬合金スクラップからタングステンを回収する方法として、乾式処理法(亜鉛法)や湿式処理法が実施されており、湿式処理法として超硬合金スクラップを浸出処理してコバルト等の結合相を溶出させ、浸出残渣を粉砕して炭化タングステン粉等を回収する以下の方法が知られている。
(イ)超硬合金スクラップを、塩化第二鉄、 硝酸第二鉄、または塩化第二銅の溶液、またはこれらの溶液に無機酸を添加した溶液を用いて80℃以下の温度で浸漬することによって、結合相の鉄、ニッケル、コバルト、または銅等を溶出せしめ、残渣を粉砕して炭化タングステン粉を回収する方法(特許文献1:特公昭56−36692号公報)
(ロ)炭化タングステンを主体とする合金スクラップを、塩化第二鉄と塩酸を含む溶液を用い、81℃〜100℃の温度で、コバルト等の結合相を溶出させる金属の回収方法(特許文献2:特開2009−179818号公報、特許文献3:特開2009−191328号公報)。
(ハ)炭化タングステンを主体とする超硬合金スクラップを粉砕したものを鉱酸で処理してコバルトを溶出させ、固液分離したコバルト含有鉱酸溶液からコバルトを回収し、残渣を焙焼したものをアルカリ浸出してタングステンを溶出させ、該浸出液を処理してタングステンを回収する方法(特許文献4:特開2004−2927号公報)。
特公昭56−36692号公報 特開2009−179818号公報 特開2009−191328号公報 特開2004−2927号公報
従来の処理方法では、超硬合金スクラップの浸出溶液や、抽出溶媒が使い捨てになるか、あるいはその割合が大きいために処理費が嵩む問題がある。また、従来の処理方法は浸出溶液や抽出溶媒をリサイクルするとこの溶液にコバルト等が含まれているため、スクラップの浸出処理や抽出処理に悪影響を及ぼし、さらには回収したコバルトの純度が低いなどの問題がある。
本発明は、従来の処理方法における上記問題を解決したものであり、超硬合金スクラップを経済性よく処理し、さらには純度の高いコバルト等を回収することができる処理方法を提供する。
本発明は、以下の構成によって上記問題を解決した、超硬合金スクラップの処理方法に関する。
〔1〕超硬合金スクラップを塩化第二鉄の塩酸水溶液に浸漬して該スクラップの結合相のコバルトを溶出し(浸出工程)、この浸出液を酸化し(酸化工程)、酸化した浸出液から第二鉄を回収して塩化第二鉄の塩酸水溶液とし、これを浸出工程に戻して浸出液として用いることを特徴とする超硬合金スクラップの処理方法。
〔2〕上記[1]に記載する処理方法において、浸出液に酸化剤を導入して液中の鉄を酸化した後に、該浸出液にアルカリを添加して水酸化第二鉄を沈澱させ、該沈澱を回収して塩酸に溶解し、生成した塩化第二鉄の塩酸水溶液を浸出工程に戻して浸出液として用いる超硬合金スクラップの処理方法。
〔3〕上記[1]または上記[2]に記載する処理方法において、浸出液から第二鉄を固液分離した後に、その濾液からコバルトを回収する超硬合金スクラップの処理方法。
〔4〕上記[3]の処理方法において、浸出液から第二鉄を固液分離した濾液をコバルト抽出溶媒に接触させてコバルトを選択的に抽出し(Co抽出工程)、次いでコバルトを含む上記抽出溶媒に塩酸水を接触させてコバルトを逆抽出し(Co逆抽出工程)、該逆抽出液を中和して水酸化コバルトを回収し、または該逆抽出液からコバルトを電解採取する超硬合金スクラップの処理方法。
〔5〕タングステンまたはタングステン化合物を主体とし、コバルトを結合相とし、またはコバルトと共に鉄、ニッケル、およびクロムの一種または二種以上を結合相とする超硬合金スクラップからタングステンを回収する処理工程における合金結合相の分解処理に適用される上記[1]〜上記[4]の何れかに記載する超硬合金スクラップの処理方法。
本発明の処理方法では、コバルトと鉄を含む浸出液に酸化剤を導入し、浸出液に含まれる塩化第一鉄〔FeCl2〕を塩化第二鉄〔FeCl3〕に酸化して回収し、これを塩酸に溶解してスクラップの浸出工程に戻し、浸出液として再び利用するので、浸出処理の効果と経済性を高めることができる。
本発明の処理方法では、浸出液から鉄が沈澱化して除去され、液中のコバルトから分離されるので、沈澱化した第二鉄を回収して塩化第二鉄の塩酸水溶液にし、浸出工程に戻して再び使用しても、該塩酸水溶液中のコバルトは少ないので浸出効果を低下させずに再利用することができる。
本発明の処理方法では、浸出液から鉄が沈澱化して除去されるので、濾液に残る鉄含有量は格段に少なく、従って、濾液から鉄含有量が少ない高純度のコバルトを回収することができる。
本発明の処理方法は、超硬合金の結合相を経済的に分離性よく処理できるので、タングステンまたはタングステン化合物を主体とし、コバルトを結合相とし、またはコバルトと共に鉄、ニッケル、およびクロムの一種または二種以上を結合相とする超硬合金スクラップの処理方法として最適であり、上記超硬合金スクラップからタングステンを回収する処理方法において、上記結合相の分解処理方法として利用することができ、鉄、ニッケル、クロム等の不純物金属が格段に少ない高純度のコバルトを回収することができる。
本発明に係る処理方法の一例を示す工程図。
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
本発明の処理方法の一例を図1に示す。図示するように、本発明の処理方法は、超硬合金スクラップを塩化第二鉄の塩酸水溶液に浸漬して該スクラップの結合相のコバルトを溶出し(浸出工程)、この浸出液を酸化し(酸化工程)、酸化した浸出液から第二鉄を回収して塩化第二鉄の塩酸水溶液とし、これを浸出工程に戻して浸出液として用いることを特徴とする超硬合金スクラップの処理方法である。
また、本発明の処理方法は、浸出液から第二鉄を固液分離した後に、その濾液からコバルトを回収する超硬合金スクラップの処理方法を含む。なお、図1に示す処理工程は、第二鉄の沈澱物を固液分離した後に、その濾液からコバルトを抽出する工程を含むが、超硬合金スクラプの種類に応じて不純物が少ない場合には、コバルトの溶媒抽出工程を省略することができる。
〔超硬合金スクラップ〕
本発明の処理方法に用いる超硬合金スクラップは、超硬合金からなる超硬工具の製造工程において生じるスクラップ等を用いることができる。一般に、超硬合金は金属タングステンや炭化タングステン等の複合炭化物を主体とし、鉄、ニッケル、コバルト、銅などを結合相とする合金である。本発明の処理方法は、炭化タングステン等の複合炭化物を主体とし、上記結合金属を含有する超硬合金スクラップ等について適用することができる。
〔浸出工程〕
超硬合金スクラップを、塩化第二鉄の塩酸水溶液に浸漬し、該スクラップの結合相のコバルトを溶出する。結合相金属のコバルトは、次式に示すように、塩化第二鉄〔FeCl3〕と反応して塩化コバルト〔CoCl2〕になって溶出する。結合相金属に鉄などが含まれている場合には、鉄などの結合相金属(M)も同様に塩化第二鉄〔FeCl3〕と反応して溶出する。
Co + 2FeCl3 → CoCl2 + 2FeCl2
M + 2FeCl3 → MCl2 + 2FeCl2
〔CoとFeの分離〕
超硬合金スクラップの浸出液には、結合相金属のコバルトと、浸出に用いた鉄が含まれている。なお、コバルトの他に結合相金属Mがあるときには溶出した結合金属も含まれる。
この浸出液から鉄を選択的に回収してコバルトと分離する。この分離工程において、浸出液に含まれる塩化第一鉄〔FeCl2〕を塩化第二鉄〔FeCl3〕に酸化するのが好ましい〔酸化工程〕。塩化第一鉄を塩化第二鉄に戻して分離することによって、この回収液をスクラップ浸出工程の浸出液として利用することができる。
〔酸化工程〕
塩化コバルトと塩化第一鉄を含有する浸出液に酸化剤を導入して塩化第一鉄を塩化第二鉄に酸化する。酸化剤としては塩素ガスや、過酸化水素と塩酸の混合水溶液などを用いることができる。次式に示すように、塩化第一鉄はこれらの酸化剤と反応して塩化第二鉄になる。
2FeCl2 + Cl2 → 2FeCl3
2FeCl2 + H2O2 + 2HCl → 2FeCl3 + 2H2O
浸出液のFe濃度、Co濃度、HCl濃度は以下の範囲が好ましい。
Fe:0.5〜1mol/L、Co:0.05〜0.5mol/L、pH:2以下。
浸出液のFe濃度が1mol/Lより高いと沈澱量が多くなり、沈殿を含む母液が粘性の高いスラリー状になって固液分離が困難になるので好ましくない。また、Fe濃度が0.5mol/Lより低いと処理液量が多くなり経済的に好ましくない。一方、Co濃度が0.5mol/Lより高いと沈澱に取り込まれる量が多くなり、0.05mol/Lより低いとCoの回収量が少なくなるので好ましくない。さらに、pHが2より高いとFeが沈殿し始めるので浸出液のpHは2以下が好ましい。
〔Fe沈澱化工程〕
酸化工程後の浸出液に水酸化ナトリウム等のアルカリを添加し、pH4〜6の酸性域で鉄を沈澱させる。次式に示すように、浸出液に含まれる塩化第二鉄は水酸化ナトリウムと反応して加水分解し、水酸化第二鉄の沈澱を生じる。
FeCl3 + 3NaOH → Fe(OH)3 + 3NaCl
浸出液のpHが6より高いと、コバルトが加水分解して水酸化物〔Co(OH)2〕の沈澱を生成するので、液中の鉄を選択的に沈澱させてコバルトと分離するには、浸出液のpHを6以下に調整する。また、pHが4より低いと第二鉄の加水分解が十分に進まず、水酸化第二鉄の沈澱生成が不十分になる。
添加する水酸化ナトリウム溶液のNaOH濃度は2〜4mol/Lが好ましい。これより濃いと添加時の発熱が激しく、液温が不必要に上昇するため好ましくない。一方、pHを微調整するには薄いほうが良いが、処理液量が多くなるので適当ではない。
〔沈澱溶解〕
上記水酸化第二鉄沈澱を固液分離して回収し、水洗して乾燥する。これを塩酸に溶解して塩化第二鉄の塩酸水溶液にし、スクラップの浸出工程に戻し、浸出液として用いる。上記水酸化第二鉄沈澱に含まれるコバルト量は微少であるので、浸出効果を低下させずにスクラップ中の鉄およびコバルトを溶出させることができる。
〔Co回収工程〕
浸出液に含まれるコバルトは、上記水酸化第二鉄沈澱の固液分離によって、大部分が濾液に残る。超硬合金スクラップの種類によって不純物が少ない場合には、この濾液からコバルトを回収することができる。回収方法は、電解採取によって金属コバルトを回収する方法、またはアルカリによる加水分解沈殿法によりコバルト水酸化物を回収する方法など利用することができる。
〔水酸化Co回収〕
水酸化第二鉄沈澱を固液分離した濾液に、水酸化ナトリウムを添加してpH8以上にし、水酸化コバルト〔Co(OH)2〕の沈澱を生成させる。この沈殿スラリーを固液分離して乾燥し、水酸化コバルトを回収する。
〔Co電解採取〕
水酸化第二鉄沈澱を固液分離した濾液から通常の電解採取によってコバルトを回収することができる。電解浴のCo濃度は60〜100g/Lが好ましい。
〔Co抽出工程〕
超硬合金スクラップにCo、Feと共にNi、Crなどが含まれている場合、これらはCoやFeと共に溶出して浸出液に含まれるので、これらの不純物が多いときには、上記濾液からCoを選択的に抽出する。Co抽出溶媒としては第3級アミンを用いることができる。
Co抽出において、推奨される抽出条件を以下に示す。
有機溶媒組成:20〜40vol%3級アミン+希釈剤(芳香族系)
液中Co濃度:0.05〜0.5mol/L
液中HCl濃度:1〜5mol/L
O/A流量比:1〜4
抽出段数(ミキサセトラ):3〜5
〔Co逆抽出〕
Coを含む上記溶媒(有機相)に塩酸水(水相)を混合してCoを水相に移行させる。水相は0.2mol/L程度以下の塩酸を含むものが好ましい。O/A比は1〜4が好ましい。抽出段数(ミキサセトラ)は4〜6段がよい。
上記Co抽出およびCo逆抽出によって、Ni、Crなどの不純物を殆ど含まない塩酸酸性Co水溶液が得られる。この溶液からCoを回収する。回収方法は電解採取によって金属Coを回収する方法、またはアルカリによる加水分解沈殿法によりCo水酸化物を回収する方法などを利用することができる。
上記塩酸酸性Co水溶液からCo水酸化物を回収するには、水酸化第二鉄沈澱を固液分離した濾液からコバルトを回収する場合と同様に、電解採取によって金属コバルトを回収する方法、またはアルカリによる加水分解沈殿法によりコバルト水酸化物を回収する方法など利用することができる。電解採取および加水分解は先の場合と同様である。
以下、本発明の実施例を示す。
〔実施例1〕
超硬スクラップ(WC-20%Co)約150gを、3Lの塩酸性塩化第二鉄水溶液(FeCl3+HCl、Fe:1mol/L、HCl:0.25mol/L)に、60℃で約48時間浸漬して壊砕し、Coを溶出させた。この浸出液の全Fe濃度、Co濃度、HCl濃度は以下のとおりである。
全Fe濃度:55.3g/L(Fe2+は36g/L)、Co濃度:10.3g/L、HCl濃度:0.25mol/L。
この浸出液にCl2ガスを約10NL吹き混み、Fe+2をFe+3に酸化した。酸化処理後の浸出液中のFe+2濃度を測定したところ、<0.05g/Lであり、Feのほぼ全量が3価に酸化されていることが確認された。
この浸出液1Lに6mol/LのNaOH溶液を撹拌しながら添加し、約10minかけてpHを5に調整し、沈澱を生成させた。
上記沈澱を含むスラリー溶液をヌッチェ濾過器を用いて固液分離し、沈澱を回収し、これを300mlの純水で2回洗浄した後、約100℃で乾燥した。乾燥後に約110gの沈澱を得た。この沈殿中のFeとCoの組成比は、Co/Fe=0.65wt%であり、Feが分離回収されており、沈澱のCo濃度は充分に低くかった。この沈澱を塩酸に溶解して塩化第二鉄の塩酸水溶液にし、これをスクラップの浸出液としてリサイクル使用した。
一方、上記沈澱を分離した濾液1200mlを回収した。この濾液のFe濃度は80ppmであり、Co濃度は6.9g/Lであった。この結果からFeは濾液から除去され、濾液に含まれるCoと分離されていることが確認された。
次に、この濾液と、上記沈澱の洗浄液を混合してCo回収原料液とした。この溶液のCo濃度は5.4g/Lであった。
このCo回収原料液に、6mol/L濃度のNaOH溶液を撹拌しながら添加し、約10minかけてpHを9に調整し、沈澱を生成させた。
この沈澱を含むスラリー溶液をヌッチェ濾過器を用いて固液分離し、沈澱を回収し、これを100mlの純水で1回洗浄した後、約100℃で乾燥した。乾燥後に約17gの沈殿を得た。この沈殿中のFeとCoの組成比はCo/Fe=1.5wt%であり、Feと分離されたCoが回収されたことを確認した。
一方、Co含有沈澱を固液分離した濾液を約1700mlを回収した。この濾液のCo濃度は25ppmであり、Coが水酸化物としてほぼ100%沈殿として回収されていることが確認された。
〔実施例2〕
超硬スクラップ(WC-20%Co)を実施例1と同様に処理し、Coを溶出させた。この浸出液の全Fe濃度、Co濃度、HCl濃度は以下のとおりである。
全Fe濃度:55.8g/L、Co濃度:9.5g/L、HCl濃度:0.25mol/L
この浸出液にCl2ガスを約10NL吹き混み、Fe+2をFe+3に酸化した。
この浸出液を約2倍に希釈して、Fe濃度27.9g/L(0.5mol/L)、Co濃度4.8g/L(0.08mol/L)に調整した。
酸化処理した浸出液1Lに4mol/LのNaOH溶液を撹拌しながら添加し、約10minかけてpHを5に調整し、沈澱を生成させた。
上記沈澱を含むスラリー溶液をヌッチェ濾過器を用いて固液分離し、沈澱を回収し、これを300mlの純水で1回洗浄した後、約100℃で乾燥した。乾燥後に約55gの沈澱を得た。この沈殿中のFeとCoの組成比は、Co/Fe=0.46wt%であり、Feが分離回収されており、沈澱のCo濃度は充分に低くかった。この沈澱を塩酸に溶解して塩化第二鉄の塩酸水溶液にし、これをスクラップの浸出液としてリサイクル使用した。
一方、上記沈澱を分離した濾液1200mlを回収した。この濾液のFe濃度は60ppmであり、Co濃度は4.7g/Lであった。この結果からFeは濾液から除去され、濾液に含まれるCoと分離されていることが確認された。
次に、この濾液と、上記沈澱の洗浄液を混合してCo回収原料液とした。この溶液のCo濃度は3.1g/Lであった。
このCo回収原料液に、4mol/L濃度のNaOH溶液を撹拌しながら添加し、約10minかけてpHを9に調整し、沈澱を生成させた。
この沈澱を含むスラリー溶液をヌッチェ濾過器を用いて固液分離し、沈澱を回収し、これを100mlの純水で1回洗浄した後、約100℃で乾燥した。乾燥後に約7.8gの沈殿を得た。この沈殿中のFeとCoの組成比はCo/Fe=0.9wt%であり、Feと分離されたCoが回収されたことを確認した。
一方、Co含有沈澱を固液分離した濾液を約1450mlを回収した。この濾液のCo濃度は45ppmであり、Coが水酸化物としてほぼ100%沈殿として回収されていることが確認された。
〔実施例3〕
超硬スクラップ(WC-20%Co)を実施例1と同様に処理し、Coを溶出させた。この浸出液の全Fe濃度、Co濃度、HCl濃度は以下のとおりである。
全Fe濃度:55.5g/L、Co濃度:9.8g/L、HCl濃度:0.25mol/L。
この浸出液にCl2ガスを約10NL吹き混み、Fe+2をFe+3に酸化した。
酸化処理した浸出液1Lに炭酸ナトリウム粉末〔Na2CO3〕を撹拌しながら添加し、約10minかけてpHを5に調整し、沈澱を生成させた。
上記沈澱を含むスラリー溶液をヌッチェ濾過器を用いて固液分離し、沈澱を回収し、これを300mlの純水で2回洗浄した後、約100℃で乾燥した。乾燥後に約113gの沈澱を得た。この沈殿中のFeとCoの組成比は、Co/Fe=0.76wt%であり、Feが分離回収されており、沈澱のCo濃度は充分に低くかった。この沈澱を塩酸に溶解して塩化第二鉄の塩酸水溶液にし、これをスクラップの浸出液としてリサイクル使用した。
一方、上記沈澱を分離した濾液740mlを回収した。この濾液のFe濃度は80ppmであり、Co濃度は9.6g/Lであった。この結果からFeは濾液から除去され、濾液に含まれるCoと分離されていることが確認された。
次に、この濾液と、上記沈澱の洗浄液を混合してCo回収原料液とした。この溶液のCo濃度は7.3g/Lであった。
このCo回収原料液に、炭酸ナトリウム粉末〔Na2CO3〕を撹拌しながら添加し、約10minかけてpHを9に調整し、沈澱を生成させた。
この沈澱を含むスラリー溶液をヌッチェ濾過器を用いて固液分離し、沈澱を回収し、これを100mlの純水で1回洗浄した後、約100℃で乾燥した。乾燥後に約16.4gの沈殿を得た。この沈殿中のFeとCoの組成比はCo/Fe=1.3wt%であり、Feと分離されたCoが回収されたことを確認した。
一方、Co含有沈澱を固液分離した濾液を約1200mlを回収した。この濾液のCo濃度は60ppmであり、Coが水酸化物としてほぼ100%沈殿として回収されていることが確認された。
〔実施例4〕
超硬スクラップ(WC-20%Co)を実施例1と同様に処理し、Coを溶出させた。この浸出液の全Fe濃度、Co濃度、HCl濃度は以下のとおりである。
全Fe濃度:55.3g/L(Fe2+は36g/L)、Co濃度:10.3g/L、HCl濃度:0.25mol/L。
この浸出液に塩化ニッケル〔NiCl2〕と塩化クロム〔CrCl3〕を添加して、Ni濃度を4g/L、Cr濃度を2g/Lに調整し、Co+Ni+Crをバインダーとするスクラップの浸出試験液を調製した。
この試験液にCl2ガスを約10NL吹き混み、Fe+2をFe+3に酸化した。酸化処理後の浸出液中のFe+2濃度を測定したところ、<0.05g/Lであり、Feのほぼ全量が3価に酸化されていることが確認された。
この試験液1Lに、6mol/LのNaOH溶液を撹拌しながら添加し、約10minかけてpHを4に調整し、沈澱を生成させた。なお、pHを5以上にするとCrが沈澱し始めるのでpHを4程度に調整することが好ましい。
上記沈澱を含むスラリー溶液をヌッチェ濾過器を用いて固液分離し、沈澱を回収し、これを300mlの純水で2回洗浄した後、約100℃で乾燥した。乾燥後に約110gの沈澱を得た。この沈殿中のFeとCoの組成比は、Co/Fe=0.65wt%であり、NiとCrではNi/Fe=0.35wt%、Cr/Fe=0.28wt%であり、Feが分離回収されており、沈澱のCo、Ni、Cr濃度は充分に低くかった。
この沈澱を塩酸に溶解して塩化第二鉄の塩酸水溶液にし、これをスクラップの浸出液としてリサイクル使用した。
一方、上記沈澱を分離した濾液1200mlを回収した。この濾液のFe濃度は75ppmであり、Co濃度は7.1g/Lであった。またNi、Cr濃度は各々3.9g/Lと1.8g/Lであった。これによりFeが濾液から除去されCo、Ni、Crから分離されていることが確認された。
次に、この濾液と、上記沈澱の洗浄液、35%HCl溶液を混合してHCl濃度が2mol/LのCo回収原料液を調製した。この溶液のCo濃度、Ni濃度、Cr濃度、HCl濃度は以下のとおりである。
Co濃度:4.4g/L(0.075mol/L)、Ni濃度:2.6g/L、Cr濃度:1.2g/L、
HCl濃度:2mol/L
このCo回収原料液からCo抽出溶媒を用いてCoを抽出した。Co抽出溶媒としてアミン系溶媒(商品名Alamine336)を用い、これに希釈剤(Solvesso)を加えて40vol%にして用いた。ミキサセトラ溶媒抽出装置を用い、4段の向流接触による抽出操作を行った。有機相/水相流量比(O/A)は1.0、水相流量は20ml/minである。操作時間は約5時間で、装置内が定常状態になる約2.5時間以降の有機相および抽出残液をタンクに分取し、各々約3Lの処理液を得た。液中のFe濃度、Co濃度を以下に示す。
〔抽出残液〕Co濃度:<10ppm、Ni濃度:2.4g/L、Cr濃度:1.0g/L
〔有機相〕 Co濃度:4.6g/L、Ni濃度:<20ppm、Cr濃度:20ppm
この結果から、キミサセトラの定常運転時には、抽出残液中のCoはほぼ全量が有機相に抽出され、他の元素は抽出残液にほぼ全量残っていることが確認され、Coが他元素から分離されていることが確認できた。HCl濃度2mol/Lで、Co抽出溶媒(40Vol%Alamine336希釈液)へのCoの抽出可能な濃度は約12g/Lであることから、O/A比を0.5程度まで下げることができるが、これ以下であると、Coの全量を溶媒中に回収できなくなる。また、段数を少なくすると抽出残液にCoが漏れるので好ましくない。
次に、Coを含む上記有機溶媒を約15Lと、塩酸水溶液(0.2mol/L濃度)を用い、ミキサセトラ溶媒抽出装置にて、4段の向流接触を行い、有機相から水相にCoを逆抽出した。有機相/水相流量費(O/A)は4.0、有機相流量は50ml/minである。抽出時間は約5時間で、装置内が定常状態になる約2.5時間以降の逆抽出水相と有機相をタンクに分取し、各々約2L、約7.5Lの処理液を得た。液中のCo濃度、およびHCl濃度を以下に示す。
〔逆抽出水相〕Co濃度:18.5g/L、Ni濃度およびCr濃度:各約50ppm、
HCl濃度:0.3mol/L
〔有機相〕 Co濃度:<10ppm、Ni濃度およびCr濃度:<10ppm
この結果から、有機相中のCoはほぼ全量が水相に逆抽出されていることがわかる。またこの有機溶媒はCo、Ni、Crが除去されているので、Co抽出溶媒として再利用することができる。なお、逆抽出処理において、塩酸水溶液(0.2mol/L濃度)へのCoの分配係数は1より充分に大きいことから、O/A比を高く設定できるので、本例では水相のCo濃度を高くするためにO/A比を4に設定した。後のCo回収(電解採取や加水分解)を考慮するとCo濃度は高いほうが好ましい。
このCo逆抽出液からは、実施例1〜3と同様に、加水分解処理してCo沈殿を回収することができ、また電解採取によって金属Coを回収するて処理するができる。
なお、本実施例では、抽出操作と逆抽出操作をここに行ったが、通常のミキサセトラ装置のように8の装置を使用し同時に実施することも可能である。

Claims (5)

  1. 超硬合金スクラップを塩化第二鉄の塩酸水溶液に浸漬して該スクラップ中のコバルトと鉄を溶出し(浸出工程)、この浸出液を酸化し(酸化工程)、酸化した浸出液から第二鉄を回収して塩化第二鉄の塩酸水溶液とし、これを浸出工程に戻して浸出液として用いることを特徴とする超硬合金スクラップの処理方法。
  2. 請求項1の処理方法において、コバルトと鉄を溶出した浸出液に酸化剤を導入して液中の鉄を酸化した後に、該浸出液にアルカリを添加して水酸化第二鉄を沈澱させ、該沈澱を回収して塩酸に溶解し、生成した塩化第二鉄の塩酸水溶液を浸出工程に戻して浸出液として用いる超硬合金スクラップの処理方法。
  3. 請求項1または請求項2の処理方法において、浸出液から第二鉄を固液分離した後に、その濾液からコバルトを回収する超硬合金スクラップの処理方法。
  4. 請求項3の処理方法において、浸出液から第二鉄を固液分離した濾液をコバルト抽出溶媒に接触させてコバルトを選択的に抽出し(Co抽出工程)、次いでコバルトを含む上記抽出溶媒に塩酸水を接触させてコバルトを逆抽出し(Co逆抽出工程)、該逆抽出液を中和して水酸化コバルトを回収し、または該逆抽出液からコバルトを電解採取する超硬合金スクラップの処理方法。
  5. タングステンまたはタングステン化合物を主体とし、コバルトを結合相とし、またはコバルトと共に鉄、ニッケル、およびクロムの一種または二種以上を結合相とする超硬合金スクラップからタングステンを回収する処理工程における合金結合相の分解処理に適用される請求項1〜請求項4の何れかに記載する超硬合金スクラップの処理方法。
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