JP2011178831A - 被印刷体摺動用樹脂材料および被印刷体摺動用成形体 - Google Patents

被印刷体摺動用樹脂材料および被印刷体摺動用成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】被印刷体の摺動性が高い上に、耐磨耗性に優れ、しかも被印刷体の傷付きを防止できる被印刷体摺動用樹脂材料および被印刷体摺動用成形体を提供する。
【解決手段】本発明の被印刷体摺動用樹脂材料は、スチレン系樹脂と、モース硬度4以下の無機充填材とを含有する。本発明の被印刷体摺動用樹脂材料においては、前記スチレン系樹脂がAES樹脂であることが好ましい。また、前記無機充填材が炭酸カルシウムであることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、被印刷体(例えば、紙、樹脂シート等)が摺動する部品として使用される成形体、その成形体の材料になる被印刷体摺動用樹脂材料に関する。
プリンタ等においては、印刷のずれをなくすために、紙等の被印刷体を所定の印刷位置に供給する必要がある。そのためには、被印刷体に接する部品(例えば、フィーダ等)において、被印刷体に対する摺動性が高いことが要求される。
また、プリンタを長期間使用すると、被印刷体との摺動によって被印刷体に接する部品が磨耗し、その磨耗によって被印刷体との隙間距離が広がるので、印刷の画質(鮮明性)を損ねることがあった。そのため、被印刷体に接する部品として、耐磨耗性に優れるものが求められていた。
また、印刷の際に、被印刷体に傷が付くことがあった。被印刷体に傷が付くと、印刷物としての品質を低下させるため、被印刷体に接する部品として、被印刷体への傷付きを防止できるものが求められていた。
被印刷体に対する摺動性および耐磨耗性が高い材料として、摺動性を向上させるコーティング剤が表面に塗布された鋼板が開示されている(例えば、特許文献1)。しかし、特許文献1に記載の鋼板では、長期間、連続的に使用すると、コーティング剤が摩耗するため、依然として摺動性が損なわれることがあった。
また、近年、製品のデザインが複雑化・多機能化しているため、鋼板に代わって熱可塑性樹脂が広く使用されるようになってきている。
摺動性の高い熱可塑性樹脂としては、例えば、AES樹脂等の熱可塑性樹脂にシリコーンオイル等の潤滑剤やポリエチレン等のポリオレフィン樹脂を添加したものが知られている(特許文献2〜4参照)。
また、特許文献5には、ゴム変性スチレン樹脂にポリオレフィン系樹脂、スチレン−オレフィングラフト共重合体、ジメチルシリコーンを混合した摺動性スチレン系樹脂組成物が開示されている。
一方、合成樹脂の耐磨耗性を向上させる添加剤として、特許文献6に、特定のポリエチレン成分を添加する方法が開示されている。
また、ガラス繊維やガラスビーズ等の充填材を配合する方法も知られている。例えば、ガラスビーズを配合して、耐摩耗性、耐久性、耐衝撃性、耐化学薬品性ならびに光沢を向上させる方法が開示されている。また、特許文献8には、ポリカプロラクトン樹脂やポリメタクリル酸メチル樹脂を配合して、成形品の表面を平滑にし、摩擦・磨耗特性、耐擦傷性等を改善する方法が開示されている。
特開2005−089848号公報 特開昭63−291913号公報 特開昭63−291942号公報 特開昭63−291943号公報 特開昭63−182361号公報 特開昭63−175069号公報 特開平10−130483号公報 特開平8−217951号公報
特許文献2〜5に記載の樹脂材料では、近年の印刷の高速化に対しても摺動性を満たすものの、耐磨耗性が不充分であり、印刷数が多くなると、磨耗が進んで画質に影響を与えることがあった。また、充分な耐磨耗性を有することもあるが、その場合には、摺動性が低下する傾向にあり、被印刷体を傷付けることがあった。
特許文献6〜7に記載の樹脂材料では、摺動性および耐磨耗性に優れるものの、ガラス繊維やガラスビーズによって被印刷体に傷を付けることがあった。特許文献8に記載の樹脂材料では、摺動性が不充分であった。
これらのことから、被印刷体に対する摺動性を有しつつ、耐磨耗性と被印刷体の傷付き防止性とを両立できる被印刷体摺動用樹脂材料および成形品が求められていた。
そこで、本発明は、被印刷体の摺動性が高い上に、耐磨耗性に優れ、しかも被印刷体の傷付きを防止できる被印刷体摺動用樹脂材料および被印刷体摺動用成形体を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を包含する。
[1]スチレン系樹脂と、モース硬度4以下の無機充填材とを含有することを特徴とする被印刷体摺動用樹脂材料。
[2]前記スチレン系樹脂がAES樹脂である[1]に記載の被印刷体摺動用樹脂材料。
[3]前記無機充填材が炭酸カルシウムである[1]または[2]に記載の被印刷体摺動用樹脂材料。
[4][1]〜[3]のいずれかに記載の被印刷体摺動用樹脂材料が成形されたことを特徴とする被印刷体摺動用成形体。
本発明の被印刷体摺動用樹脂材料および被印刷体摺動用成形体は、被印刷体の摺動性が高い上に、耐磨耗性に優れ、しかも被印刷体の傷付きを防止できる。
<被印刷体摺動用樹脂材料>
本発明の被印刷体摺動用樹脂材料(以下、「樹脂材料」と略す。)は、スチレン系樹脂と無機充填材とを含有する。
(スチレン系樹脂)
スチレン系樹脂は、芳香族スチレン単量体単位を有する重合体を含む樹脂である。
具体的には、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−スチレン(AS樹脂)、ゴムにより強化されたゴム強化スチレン系樹脂等が挙げられる。
ゴム強化スチレン系樹脂としては、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、エチレン系のゴム質重合体を用いたアクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体(AES樹脂)等が挙げられる。これらの中でも、被印刷体の摺動性および耐磨耗性がより高くなることから、AES樹脂が好ましい。
ゴム強化スチレン系樹脂は、成形性に優れることから、芳香族スチレン系単量体単位を有するグラフト重合体(C)と、芳香族スチレン系単量体単位を有する共重合体(D)とを含有するものが好ましい。
[グラフト重合体(C)]
グラフト重合体(C)の製造方法としては、例えば、ゴム質重合体(A)に単量体混合物(B)を乳化グラフト重合させる方法が挙げられる。
(i)ゴム質重合体(A)
ゴム質重合体(A)としては、ブタジエン、ポリブタジエンの水素添加物、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体などのエチレン系ゴム質重合体、イソブチレン−イソプレン共重合体、アクリルゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、SEBS等の水素添加ジエン系(ブロック、ランダムおよびホモ)(共)重合体、ポリウレタンゴムおよびシリコーンゴム等が挙げられる。
これらの中でも、樹脂材料の摺動性をより高くできることから、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体(以下、「EPDM」という。)が好ましい。
EPDMは、エチレン含量が75〜90質量%であることが好ましい。エチレン含量が75〜90質量%であれば、長期にわたって使用しても安定した摺動性(動摩擦係数)が得られる。また、摺動性を高くできるため、無機充填材の添加量を少なくすることができ、無機充填材の分散不良による外観不良を防止できる。
EPDMにおける非共役ジエン成分としては特に制限はなく、例えば、1,4−ヘキサジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネンおよびジシクロペンタジエン等が挙げられる。
ゴム質重合体(A)としてEPDMを用いる場合には、変性α−オレフィン共重合体を併用することが好ましい。変性α−オレフィン共重合体をEPDMと併用すると、乳化時の乳化安定性を高くできるので、製造安定性が高くなる。また、変性α−オレフィン共重合体は摺動性を改善する効果も有する。
変性α−オレフィン共重合体は、α−オレフィン共重合体に官能基を有する化合物が付加された重合体であって、質量平均分子量が1000〜5000のものである。例えば、α−オレフィン99.8〜80質量%と不飽和カルボン酸系化合物0.2〜20質量%とが共重合した変性ポリエチレン等が挙げられる。ここで、α−オレフィンとしては、エチレン等が挙げられ、不飽和カルボン酸系化合物としては、例えば、アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸およびマレイン酸モノアミドが挙げられる。
変性α−オレフィン共重合体の含有量は、EPDM100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましい。変性α−オレフィン共重合体の含有量が0.1質量部以上30質量部以下であれば、乳化安定性をより高くでき、より安定に乳化グラフト重合できる。
乳化グラフト重合においては、ゴム質重合体(A)に単量体混合物(B)を重合するに際し、ゴム質重合体(A)をラテックス状にする。
ゴム質重合体(A)がEPDMと変性α−オレフィン共重合体とを含む場合のゴム質重合体ラテックスを調製する方法としては、公知の溶融混練手段でEPDMと変性α−オレフィン共重合体とを所定の割合で配合、混練し、機械的剪断力を与えて充分に分散させ、その混練物を、乳化剤を含む水性媒体に添加する方法が挙げられる。この方法によれば、安定なゴム質重合体(A)のラテックスを得ることができる。
上記ラテックスの調製方法における溶融混練手段としては特に制限はないが、汎用的であることから、ニーダー、バンバリーミキサー、多軸スクリュー押出機が好ましい。
乳化剤としては、例えば、オレイン酸カリウムや不均化ロジン酸カリウム等のアニオン系界面活性剤などが用いられる。乳化剤の添加量は、EPDM100質量部に対して1〜10質量部とすることが好ましい。乳化剤は、例えばオレイン酸をEPDMと低分子量変性α−オレフィン共重合体にあらかじめ混合しておき、これに水酸化カリウム水溶液を添加して、オレイン酸カリウムを生成させることにより、添加することもできる。
EPDMと変性α−オレフィン共重合体を含むゴム質重合体(A)は、未架橋のまま使用してもよいし、架橋処理してもよい。架橋処理する方法としては、未架橋のゴム質重合体ラテックスの固形分100質量部に対して、ジ−t−ブチル−オキシトリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物を0.1〜5質量部およびジビニルベンゼン等の多官能性化合物を0.1〜5質量部添加して、60〜140℃で、0.5〜5時間程度反応させる方法などが挙げられる。
ラテックスに含まれるゴム質重合体(A)は、平均粒子径が0.2〜1μmの粒子であることが好ましい。ゴム質重合体(A)の平均粒子径が0.2μm以上であれば、得られる樹脂材料の耐衝撃性が高くなり、1μm以下であれば、光沢低下を抑制し、表面外観を良好にできる。
ここで、ゴム質重合体(A)の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法で測定した体積 基準の平均粒子径のことである。
(ii)単量体混合物(B)
単量体混合物(B)は、芳香族ビニル系単量体を必須成分として含み、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体およびシアン化ビニル系単量体と重合可能な他のビニル単量体を任意成分として含む混合物である。
芳香族ビニル系単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が挙げられる。
シアン化ビニル系単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
他のビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸アルキルエステル(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピルおよびアクリル酸ブチル等)、メタクリル酸アルキルエステル(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピレンおよびメタクリル酸ブチル等)、N−置換マレイミド系単量体(例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル) マレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等)が挙げられる。これらの中でも、アクリル酸ブチルまたはメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
単量体混合物(B)の組成は、得られる樹脂材料の物性バランスに優れることから、芳香族ビニル系単量体が60〜76質量%、シアン化ビニル系単量体が40〜24質量%、他のビニル系単量体が0〜20質量%であることが好ましい。
(iii)グラフト重合体(C)の製造方法
グラフト重合体(C)を製造する方法としては、ゴム質重合体(A)のラテックスに単量体混合物(B)を添加し、所定の重合温度に加熱して乳化グラフト重合させる方法が挙げられる。中でも、単量体混合物(B)にレドックス系開始剤を混合した上で、単量体混合物(B)を1時間以上にわたって、ゴム質重合体(A)のラテックスに連続的に添加することが好ましい。単量体混合物(B)の添加時間が1時間未満の場合、ラテックス安定性が低下して重合収率が低下することがある。
重合後のグラフト重合体(C)には、必要に応じて酸化防止剤を添加してもよい。ここで使用されるレドックス系開始剤としては、油溶性有機過酸化物と硫酸第一鉄−キレート剤−還元剤とが組み合わされたものが好ましい。油溶性有機過酸化物としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。より好ましいレドックス系開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、硫酸第一鉄、ピロリン酸ナトリウム、デキストロースからなるものである。
グラフト重合体(C)においては、ゴム質重合体(A)40〜80質量%(固形分として)に、単量体混合物(B)60〜20質量%を重合する〔(A)と(B)の合計100質量%〕ことが好ましい。ゴム質重合体(A)が40質量%未満である(単量体混合物が60質量%を超える)場合、ゴム質重合体(A) が80質量%を超える(単量体混合物が20質量%未満である)場合のいずれも、耐衝撃性が低下する傾向にある。
上記グラフト重合体の製造方法によりグラフト重合体ラテックスが得られる。グラフト重合体ラテックスからグラフト重合体(C)を回収する方法としては、例えば、グラフト重合体ラテックスに析出剤を添加し、加熱、攪拌した後、析出剤を分離し、これを水洗、脱水、乾燥する析出法が採用される。
析出法における析出剤としては、例えば、硫酸、酢酸、塩化カルシウムまたは硫酸マグネシウム等の水溶液を単独で使用あるいは併用できる。
[共重合体(D)]
共重合体(D)は、芳香族ビニル単量体とシアン化ビニル系単量体とが共重合したものである。また、この共重合体(D)には、芳香族ビニル単量体およびシアン化ビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体が共重合していてもよい。
芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、他のビニル系単量体の具体例としては、単量体混合物(B)と同様のものが挙げられる。
共重合体(D)の組成には特に制限はないが、芳香族ビニル系単量体60〜76質量%、シアン化ビニル系単量体40〜24質量%およびこれらの単量体と共重合可能な単量体0〜20質量%を含むものが好ましい。
共重合体(D)の製造には、乳化重合や懸濁重合等の重合法が採用される。共重合体(D)を乳化重合で製造する場合、反応器内に各単量体と乳化剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、得られた共重合体ラテックスから析出法により共重合体(D)を回収する。
ここで、乳化剤としては、ロジン酸カリウムおよびアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の一般的な乳化重合用乳化剤を用いることができる。また、重合開始剤としては、有機、無機の過酸化物系開始剤を用いることができ、連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等を用いることができる。析出法としては、グラフト重合体ラテックスからグラフト重合体(C)を回収するのと同様の方法を採用できる。
懸濁重合で製造する場合、反応器内に各単量体と懸濁剤と懸濁助剤と重合開始剤と連鎖移動剤とを仕込み、加熱して重合し、得られた共重合体スラリーを脱水して共重合体(D)を回収する。
ここで、懸濁剤としては、トリカルシウムフォスファイト、ポリビニルアルコール等を用いることができ、懸濁助剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が用いることができる。また、重合開始剤としては、有機パーオキサイド類を用いることができ、連鎖移動剤としては、メルカプタン類、α−メチルスチレンダイマー、テルペン類等を用いることができる。
[他の重合体(E)]
スチレン系樹脂は、グラフト重合体(C)および共重合体(D)以外に、スチレン系単量体単位を有さない他の重合体(E)が含まれてもよい。
他の重合体(E)としては、例えば、ポリメチルメタクリレート系樹脂、ナイロン6樹脂、ナイロン66樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これら他の重合体(E)は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
[(C)成分と(D)成分との配合]
本発明の摺動用材料は、摺動性、耐摩耗性、紙に対する耐傷付き性、表面外観、機械的強度のバランスが特に良くなることから、グラフト重合体(C)と共重合体(D)の合計100質量部に対し、グラフト重合体(C)の含有量が5〜70質量部(共重合体(D)の含有量が95〜30質量部)であることが好ましく、10〜50質量部(共重合体(D)の含有量が90〜50質量部)であることがより好ましい。
(無機充填材)
本発明の樹脂材料は、無機充填材を含有することにより、耐磨耗性が向上する。本発明で使用される無機充填材は、モース硬度が4以下、好ましくは3以下のものである。
ここで、モース硬度は、標準物質に対するひっかき傷の有無で硬さの順列を決定する。
無機充填材のモース硬度が4以下であることにより、被印刷体の傷付き防止性を向上させることができる。
モース硬度4以下の無機充填材としては、例えば、リン青銅、銅、フッ化カルシウム、鐘青銅、白雲石、銀、蛇紋石、大理石、真鍮、重晶石、アンチモン、ウッド合金、方解石、炭酸カルシウム、ホウ酸、雲母、金、セピオライト、亜鉛、方鉛鉱、ビスマス、アルミニウム、テルル、含水珪酸アルミニウム、ミョウバン、琥珀、無煙炭、硫黄、銀、マグネシウム、セレン、岩塩、カドミウム、石膏、ストロンチウム、錫、鉛、ガリウム、カルシウム、塩化銀、珪藻土、インジウム、タルク、黒鉛、リチウム、リン、カリウム、ナトリウム、黄土、ルビジウム、セシウム等の物質を粉体状にしたものが挙げられる。これらの無機充填材は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
上記無機充填材のなかでも、耐摩耗性および被印刷体の傷付き防止性がより高いことから、炭酸カルシウムが好ましい
無機充填材の形状としては、樹脂材料中での分散性に優れ、摺動性、耐摩耗性のバランスが良くなることから、粉体状が好ましい。無機充填材粉体の平均粒子径としては0.4〜10μmであることが好ましく、0.7〜5μmであることがより好ましい。無機充填材の平均粒子径が0.4μm以上であれば、溶融混錬時に凝集して外観不良の原因となる可能性が低減され、10μm以下であれば、耐衝撃性低下の懸念も最小限に留められる。
ここで、無機充填材の平均粒子径とは、島津製作所製粉体比表面積測定装置SS−100型で測定した粉末1g当たりの比表面積値を下記計算式に用いて算出した粉末の平均粒径である。
平均粒子径=6/(比重×比表面積)×10000 〔μm〕
無機充填材の含有量は、スチレン系樹脂100質量部に対して5〜30質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。無機充填材の含有量が5質量部以上であれば、耐摩耗性がより高くなり、30質量部以下であれば、摺動性がより優れる。
(製造方法)
本発明の摺動用材料は、スチレン系樹脂、モース硬度4以下の無機充填材、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、加工助剤、顔料を混合し、例えば、押出機、バンバリーミキサーまたは混練ロール等にてペレット化することで容易に製造される。
<被印刷体摺動用成形体>
次に、本発明の被印刷体摺動用成形体について説明する。
本発明の被印刷体摺動用成形体は、上記被印刷体摺動用樹脂材料を成形したものである。成形方法としては、例えば、射出成形法、プレス成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法などが挙げられる。
本発明の被印刷体摺動用成形体は、上記被印刷体摺動用樹脂材料を成形したものであるから、被印刷体の摺動性が高い上に、耐磨耗性に優れ、しかも被印刷体の傷付きを防止できる。このような被印刷体摺動用成形体は、例えば、プリンタのフィーダ等に使用され、特に紙と摺動する摺動部材等に好適である。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下において、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
[製造例1]ゴム質重合体(A−1)の製造
EPDM (デュポンダウエラストマー(株)製NDR4820P、エチレン含量;85%)84部、低分子量変性ポリエチレン(三井化学(株)製ハイワックス2203A)16部、更に、オレイン酸カリウム5部を混合した。次いで、それらの混合物を2軸スクリュー押出機(池貝鉄鋼(株)製PCM−30型、L/D=40)のホッパーより4kg/時間で供給し、水酸化カリウム15%水溶液を110g/時間で連続的に供給しながら、加熱温度180℃で溶融混練して溶融物を押出した。引き続き、溶融物を前記押出機先端に取り付けた冷却用一軸押出機に連続的に供給し、90℃まで冷却した。一軸押出機より取り出した固体を80℃の温水中に投入し、連続的に分散させて、平均粒子径0.45μmのゴム質重合体ラテックスを得た。
このラテックスの固形分100部に対してジ−t−ブチルパーオキシトリメチルシクロヘキサンを1.15部、ジビニルベンゼンを1.0部添加し、120℃で1時間反応させて、ゴム質重合体(A−1)を調製した。
[製造例2]ゴム質重合体(A−2)の製造
EPDM (デュポンダウエラストマー(株)製NDR4820P、エチレン含量;85%)の代わりにEPDM (三井化学(株)製TP3180、エチレン含量;70%)を使用したこと以外は製造例1と同様にして、ゴム質重合体(A−2)を調製した。
[製造例3]ゴム質重合体(A−3)の製造
EPDM (デュポンダウエラストマー(株)製NDR4820P、エチレン含量;85%)の代わりにEPDM (三井化学(株)製14030、エチレン含量;50%)を使用したこと以外は製造例1と同様にして、ゴム質重合体(A−3)を調製した。
[製造例4]グラフト重合体(C−1)の製造
窒素置換した攪拌機付きステンレス重合槽に、イオン交換水200部、ゴム質重合体(A−1)50部(固形分換算)、オレイン酸カリウム2部、硫酸第一鉄0.004部、ピロリン酸ナトリウム0.2部およびデキストロース0.2部を仕込み、温度を80℃とした。これに、アクリロニトリル17部およびスチレン33部からなる単量体混合物とクメンハイドロパーオキサイド0.6部とを2時間連続的に添加し、重合温度を80℃一定に保ち、乳化グラフト重合を行った。重合終了後に単量体の転化率を求めたところ、93%であった。
重合後、得られたグラフト重合体ラテックスに酸化防止剤を添加し、さらに硫酸を添加して固形分を凝集させた。固形物を回収し、洗浄、脱水、乾燥の工程を経て、粉末状のグラフト重合体(C−1)を得た。
[製造例5]グラフト重合体(C−2)の製造
ゴム質重合体(A−1)の代わりにゴム質重合体(A−2)を使用したこと以外は製造例4と同様にして、粉末状のグラフト重合体(C−2)を得た。
[製造例6]グラフト重合体(C−3)の製造
ゴム質重合体(A−1)の代わりにゴム質重合体(A−3)を使用したこと以外は製造例4と同様にして、粉末状のグラフト重合体(C−3)を得た。
[製造例7]グラフト重合体(C−4)の製造
ゴム質重合体(A−1)の代わりにポリブタジエンラテックス(日本ゼオン(株)製 Nipol LX111NF)を使用したこと以外は製造例4と同様にして、粉末状のグラフト重合体(C−4)を得た。
[製造例8]共重合体の製造法(D)
窒素置換した攪拌機付きステンレス重合反応槽反応器に、イオン交換水120部、ポリビニルアルコール0.1部、アゾビスイソブチロニトリル0.3部、アクリロニトリル30部、スチレン70部、t−ドデシルメルカプタン0.35部を仕込んだ。そして、その反応器の温度を60℃にして5時間加熱した後、120℃に昇温し、4時間重合して共重合体(D)を得た。重合終了後に単量体の転化率を求めたところ、98%であった。また、得られた共重合体(D)の質量平均分子量をゲルパーミエーションクロマトグラフィにより測定したところ、1.0×10(ポリスチレン換算値)であった。
上記製造例で得たグラフト重合体(C)と共重合体(D)と下記に示す材料とを、表1または表2に示す配合比率により、タンブラーミキサーに一括投入し、5分間混合した。次いで、得られた混合物を、溶融温度240℃にて二軸押出機(神戸製鋼所製 KTX30)を用いて混練して、熱可塑性樹脂のペレットを得た。
・アクリル樹脂(表1,2では、「PMMA」と表記する。):三菱レイヨン社製 アクリペット VHSK
・ガラス繊維:日東紡績社製 ガラスチョップドストランド CSF 3PE−332
・ガラスビーズ:ポッターズ・バロティーニ社製 GB301SC
・マイクロビーズ:ポッターズ・バロティーニ社製 EMB−10
・炭酸カルシウム−1:日東粉化工業社製 NS#1000 (平均粒子径:1.2μm)
・炭酸カルシウム−2:日東粉化工業社製 NITOREX30P (平均粒子径:0.7μm)
・炭酸カルシウム−3:日東粉化工業社製 NN#200 (平均粒子径:14.8μm)
・炭酸カルシウム−4:日東粉化工業社製NN#500 (平均粒子径:4.4μm)
・炭酸カルシウム−5:日東粉化工業社製SS#30 (平均粒子径:7.4μm)
・硫酸バリウム:日本化学工業社製 沈降性硫酸バリウム10
・カーボンファイバー(表1,2では、「CF」と表記する。):三菱レイヨン社製 パイロフィル・チョップドファイバー TRO6U−B4J
・タルク:富士タルク工業社製 TP−A25
各無機充填材のモース硬度は、粉体にする前の各無機物質を標準物質でこすり、標準物質に対するひっかき傷の有無で硬さを測定した。繊維状、ビーズ状の無機充填剤はそのまま標準物質でこすり、標準物質に対するひっかき傷の有無で硬さを測定した。測定結果を表1、2に記す。
[評価]
各実施例および各比較例により得た熱可塑性樹脂のペレットを溶融温度240℃の条件で成形加工して耐磨耗性評価用試験片を作製した。ペレットの射出成形加工には、日本製鋼社製J75E−P射出成形機を使用した。
その試験片を用い、RCA磨耗試験機(米国The Norman Tool&Stamping Company製:テープ幅17mm、テープ移動速度65mm/秒)を使用し、無荷重で連続的に試験片に接触させて試験片の磨耗深さ(μm)を測定した。磨耗深さが浅い程、耐磨耗性に優れる。
また、紙の状態を目視で観察し、以下の基準で紙の傷付き防止性を評価した。
○:どの角度から見ても傷がない
△:ある角度から見ると傷が見える
×:どの角度から見ても傷が見える
また、摺動用樹脂材料として、以下の基準で総合評価した。
○:紙の傷付き防止性が○で、前記磨耗深さが210μm未満のもの
△:紙の傷付き防止性が○で、前記磨耗深さが210μm以上300μm未満のもの
×:紙の傷付き防止性が○で、前記磨耗深さが300μm以上のもの、又は、紙の傷付き防止性が△、×のもの
被印刷体摺動用樹脂材料を長期にわたって使用した際の、品質安定性を評価した。すなわち、動摩擦係数の変化を(株)オリエンテック製 EFM−III−N型試験機、試験片形状:外寸直径25.6mm、内寸直径20mm、高さ15mmの円筒形(摺動面積200mm)、相手材としてコピー用紙を用いて、回転速度:300mm/秒,試験荷重/14.7N(試験機の荷重)/60分の条件で測定時間30分後、60分後、240分後の動摩擦係数を測定した。動摩擦係数が試験時間に関係なく安定している程、長期にわたって品質安定性に優れる。
Figure 2011178831
Figure 2011178831
グラフト共重合体(C)と共重合体とモース硬度4以下の無機充填材とを含有する実施例1〜11の熱可塑性樹脂によれば、耐磨耗性に優れる上に、紙の傷付き防止性に優れる成形品を得ることができた。
ゴム質重合体(A)がポリブタジエンである実施例7とEPDMである実施例6を対比すると、EPDMを用いた実施例5は耐摩耗性がさらに優れ、動摩擦係数も試験時間に関係なく安定していた。
エチレン含量が85%のゴム質重合体(A−1)を用いたグラフト重合体(C−1)を含有する実施例1、エチレン含量が70%のゴム質重合体(A−2)を用いたグラフト共重合体(C−2)を含有する実施例5、エチレン含量が50%のゴム質重合体(A−3)を用いたグラフト重合体(C−3)を含有する実施例6を対比すると、実施例1,5では、炭酸カルシウムの配合量をより少ない状態でも実施例6と同等の耐摩耗性を発揮でき、さらに動摩擦係数もより低い値を示していた。
これに対し、グラフト共重合体(C)および共重合体(D)からなる比較例1,2の熱可塑性樹脂では、得られた成形品の磨耗深さが深く、耐磨耗性が低かった。
グラフト共重合体(C)と共重合体(D)と無機充填材とを含有するが、無機充填材のモース硬度が4を超えていた比較例3〜6の熱可塑性樹脂では、得られた成形品の紙の傷付き防止性が不充分であった。

Claims (4)

  1. スチレン系樹脂と、モース硬度4以下の無機充填材とを含有することを特徴とする被印刷体摺動用樹脂材料。
  2. 前記スチレン系樹脂がAES樹脂である請求項1に記載の被印刷体摺動用樹脂材料。
  3. 前記無機充填材が炭酸カルシウムである請求項1または2に記載の被印刷体摺動用樹脂材料。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の被印刷体摺動用樹脂材料が成形されたことを特徴とする被印刷体摺動用成形体。
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