JP2011178631A - カーボンナノチューブの製造方法,カーボンナノチューブ製造用の単結晶基板,およびカーボンナノチューブ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板を用意し(S10)、この基板の表面に鏡面加工処理を施し(S20)、さらに基板の表面にエッチング処理を施す(S30)。これによって、単結晶石英基板を切断・研磨する際に表面に生じた加工層を除去することができる。このため、この単結晶石英基板を用いれば、アニール処理、触媒金属の配置、炭素原料ガスの供給という一連の処理(S40〜S60)によって基板上にカーボンナノチューブを形成する際に、基板に形成された加工層の存在に由来する結晶の格子配列の歪みによって、基板上に形成されるカーボンナノチューブにも歪みが生じてしまうのを抑制することができる。したがって、結晶が本来もつ格子配列に沿って配向性および直線性のよいカーボンナノチューブを製造することができる。
【選択図】図1
Description
まず、カーボンナノチューブを形成するための単結晶基板を用意する(ステップS10)。
ここで、単結晶基板としては、ランバード加工された人工単結晶石英をSTカットしたものやATカットして得られる単結晶石英(SiO2)基板など、カーボンナノチューブを形成するために一般的に用いられているものを用いればよい。
単結晶基板の表面に形成されている凹凸に対して鏡面加工処理を施すことによって、部分的に突出している箇所に対して外力を加えることによって破砕し、表面をより滑らかな状態にすることができる。
ここで、エッチング液としては、たとえば、フッ酸(HF),フッ化アンモニウム(NH4F),バッファードフッ酸(BHF:(HF)1-X(NH4F)X)など、一般的なフッ酸系のエッチング液を用いることができる。エッチング処理を行なう時間については、基板の材料,鏡面加工処理を施した状況,および使用するエッチング液の種別に応じて適宜変更するのが望ましい。
図2および図3は、いずれも、STカット単結晶石英基板に対しフッ酸(HF)を用いてエッチング処理を施したあとに表面をSEMにより観察した結果を示す図である。
図2および図3に示すように、エッチング処理を施す時間の長さによって、単結晶石英基板の表面が変化する様子が観測された。
図4に示すように、エッチング処理を60secにわたって施した場合に表面粗さが最も小さくなることがわかった。エッチング処理が0secのときの表面粗さは小さいが、格子配列の歪みが生じているためにカーボンナノチューブの形成に最適ではない。エッチング処理30secのときは単結晶から基板を切り出すときの加工処理や、表面を鏡面加工する処理(図1のステップS20)によって基板表面の下層に形成された残留応力層が表出するため表面粗さが大きくなっている。その後、60secにわたるエッチング処理によって残留応力層が除去され、単結晶石英の本来の格子面が表出して表面粗さが小さくなったためと考えられる。
一方、図4に示すように、60secよりも長時間にわたってエッチング処理を施したときには基板の表面粗さが逆に大きくなることがわかった。これは、60secにわたってエッチング処理を施すことによって単結晶石英が本来もつ格子面が既に表出しているにもかかわらず、さらにエッチングを行なうことによって逆に単結晶石英が本来もつ格子面を粗らしてしまったためと考えられる。
なお、単結晶石英基板に鏡面加工処理を施した場合、平均研磨材粒度の約2倍の厚さの加工層が生じるものと一般に考えられている。
ここで、アニール処理としては、たとえば、大気中で数時間から数十時間にわたって900℃の雰囲気温度におくことによって行なうことができる。このように、アニール処理を施すことにより、結晶のクラスターが高温状況下で激しく移動するので、このクラスターが微細な凹凸を埋めて表面をより滑らかな状態とすることができる。
たとえば、フォトレジストの塗布およびパターニング、パターニングされたフォトレジストをマスクとしながら触媒金属の微粒子を蒸着、フォトレジストを除去すると共にフォトレジストの上に積層している触媒金属の微粒子をリフトオフによって除去するという一連の処理を行なうことによって、触媒金属の微粒子をパターニングして配置することができる。
このように、基板の上に触媒金属の微粒子をパターニングし、基板の上に触媒金属の微粒子が配置された部分と、配置されていない部分とに分けるのは、ある触媒金属の微粒子を核として成長したカーボンナノチューブが、他のカーボンナノチューブとバンドルを組んだり、他の触媒金属の微粒子といたずらに相互作用すると、カーボンナノチューブの配向性および直線性が悪くなるためである。逆に言えば、触媒金属の微粒子が配置された部分から、触媒金属の微粒子が配置されていない部分に向かって成長するカーボンナノチューブについては、他のカーボンナノチューブとバンドルを組んだり他の触媒金属と相互作用をせず、配向性および直線性がよくなるものと考えられる。
なお、触媒金属の種類としては、たとえば、8族の鉄(Fe),ルテニウム(Ru),オスミニウム(Os)、9族のコバルト(Co),ロジウム(Rh),イリジウム(Ir)、および10族のニッケル(Ni),鉛(Pb),白金(Pt)などからいずれか一つを選択して用いることができ、また、複数を混合して用いることもできる。さらに、補助触媒金属として、モリブデン(Mo)やロジウム(Rh)を用いることもできる。
図5は、フッ酸によってエッチング処理を施したSTカット単結晶基板上に形成されたカーボンナノチューブのSEM写真であり、(a)は0sec,(b)は30sec,(c)は60sec,(d)は120secにわたってエッチング処理を施した基板に形成したカーボンナノチューブのSEM写真である。なお、図5(a)〜(d)のSEM写真は、いずれもSTカットされた単結晶石英基板を大気中にて900℃で8時間にわたってアニール処理を施し、触媒金属となるコバルトを蒸着してパターニングした後、この単結晶石英基板を真空状態かつ800℃の状態に保たれた電気炉に装填したうえで、この電気炉に10分間にわたってエタノールを供給し、単結晶石英基板の表面にカーボンナノチューブを成長させたものを観察したものである。
図5(a)に示すように、エッチング処理を施していない単結晶石英基板ではカーボンナノチューブにキンク(屈曲)が見受けられるのに対し、図5(b),(c)に示すように、30sec,60secにわたってエッチング処理を施した単結晶石英基板では、カーボンナノチューブの配向性および直線性が改善しているのがわかった。しかしながら、図5(d)に示すように、120secにわたってエッチング処理を施した単結晶石英基板では、逆にカーボンナノチューブの配向性および直線性が悪化してしまうことがわかった。
この結果は、上述した、フッ酸を用いてエッチング処理を施した時間と、非接触表面形状測定器(Zygo(登録商標))によって調べた単結晶石英基板の表面粗さとの関係に呼応しており、単結晶石英基板の表面上に形成されるカーボンナノチューブの配向性および直線性が、単結晶石英基板の表面粗さと密接な関係をもつことを裏付けるものである。
なお、上述した本実施の形態では、単結晶石英基板を用いてカーボンナノチューブを製造するものとしたが、単結晶サファイア基板を用いてカーボンナノチューブを製造するものとしてもよい。また、STカットやATカットの単結晶基板に限られず、たとえば、Xカット,Yカット,Zカットなどの他のカットの単結晶基板を用いてもよい。
Claims (9)
- 単結晶基板をエッチング液に浸漬して表面をエッチングする工程と、
前記単結晶基板の前記表面に触媒金属を配置する工程と、
前記単結晶基板を所定の温度まで加熱した後に炭素原料ガスを供給して前記触媒金属を核として前記表面の上にカーボンナノチューブを形成する工程と
を少なくとも備えることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法。 - 前記エッチング液は、フッ酸系の溶液である
ことを特長とする請求項1に記載のカーボンナノチューブの製造方法。 - 前記単結晶基板は、単結晶サファイア基板または単結晶石英基板である
ことを特長とする請求項1または2に記載のカーボンナノチューブの製造方法。 - 前記炭素原料ガスは、一酸化炭素,エタノール,メタノール,エーテル,アセチレン, エチレン,エタン,プロピレン,プロパン,メタンのいずれかである
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。 - 前記エッチングする工程の前に、
前記単結晶基板の前記表面に鏡面加工処理を施す工程
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。 - 前記エッチングする工程の後に、
前記単結晶基板に対してアニール処理を施す工程
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。 - 前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブである
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブの製造方法。 - 単結晶基板の表面に触媒金属を配置する工程と、
前記単結晶基板を所定の温度まで加熱した後に炭素原料ガスを供給して前記触媒金属を核として前記表面の上にカーボンナノチューブを形成する工程と
を少なくとも備えることを特徴とするカーボンナノチューブの製造方法において用いられるカーボンナノチューブ製造用の単結晶基板であって、
前記表面がエッチングされ、前記表面に単結晶格子面が表出された
ことを特徴とするカーボンナノチューブ製造用の単結晶基板。 - 単結晶基板上に形成されたカーボンナノチューブであって、
前記単結晶基板は、表面がエッチングされており、
前記カーボンナノチューブは、エッチングされた前記単結晶基板の前記表面の上に形成されている
ことを特徴とするカーボンナノチューブ。
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