JP2011176577A - 信号処理回路とこの回路を有する通信装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明は、電力増幅回路5に入力する変調波信号のPAPRを低減するための信号処理回路9に関する。この信号処理回路9は、変調波信号のIQベースバンド信号の瞬時電力Pを算出する電力算出部13と、IQベースバンド信号をその周波数帯域B1,B2ごとの平均電力に対応して相殺可能な相殺信号Ic,Qcを用いて、瞬時電力Pの上限が所定の閾値Pth相当となるようにクリッピング処理等を行ってIQベースバンド信号の振幅を制限する信号処理部17と、を備える。
【選択図】 図3
Description
その一方で、電力増幅器(パワーアンプ)には優れた線形性が要求されるが、最大出力を超えるレベルの信号が入力されると、出力が飽和して非線形歪みが増大する。
ピーク電力に対して非線形歪みを増大させないためには、ダイナミックレンジの広い電力増幅器が必要となるが、頻繁には出現しないピーク電力のために増幅器のダイナミックレンジを広げると、時間軸上の波形の平均電力と短時間のピーク電力との比(PAPR:Peak to Average Power Ratio)が大きくなり、電力効率が悪くなる。
かかるクリッピング処理は、時間軸上でインパルス状の信号を逆向きに印加する処理であるから、周波数軸上では、広い周波数帯域のノイズが印加されるのと同じこととなる。そのため、クリッピング処理のみを単純に行った場合には、帯域外にノイズを生じさせるという問題がある。
このうち、NS−CFR回路は、瞬時電力が閾値を超えるIQベースバンド信号のピーク成分(閾値からの増分)に対して、ローパスフィルタやFIR(Finite Impulse Response )フィルタ等でフィルタリングを行って帯域制限し、この帯域制限後のピーク成分を元のIQベースバンド信号から減算するものである(特許文献1参照)。
この場合、ピーク電力抑制回路に入力されるIQベースバンド信号の平均電力も、周波数帯域ごとに変化することになる。
このため、従来のピーク電力抑制回路では、平均電力が比較的低い周波数帯域については、相殺信号の減算によって必要以上にSNR(Signal to Noise Ratio )が低下して通信不能になるおそれがあった。
このため、周波数帯域ごとに平均電力が異なるIQベースバンド信号の場合でも、SNRを悪化させずに適切に振幅を制限することができる。
(5) 本発明の信号処理回路において、上記閾値からの増分又は減分に相殺用パルスを乗算した相殺信号を用いる場合には、前記周波数帯域ごとに求められた基本パルスにその周波数帯域ごとの平均電力の相対比率をそれぞれ乗算して総和をとることにより、前記相殺用パルスを生成するパルス生成部を、更に備えている必要がある。
この場合、相対比率が変動しない限り乗加算器が乗算及び総和を実行せず、パルス保持部が従前の相殺用パルスを維持する。このため、相殺用パルスを愚直に毎回生成する場合に比べて、回路の演算負荷を低減することができる。
その一方で、デジタル信号処理では演算処理が2進数で実行されるので、2のべき乗で除算するようにすれば、小数点の位置が変化するだけで実質的には除算の必要がない。
この場合、各累積値の小数点の位置を変化させるだけで相対比率を算出できるので、回路規模を増大させなくても、相対比率を正確かつ迅速に算出することができる。
その理由は、上記制御周期内で相対比率の算出を実行すれば、IQベースバンド信号の平均電力が余り変動しない安定状態で相対比率を算出することができ、正確な相対比率が得られるからである。
しかし、従来のピーク電力抑制回路では、IQベースバンド信号の瞬時電力のピークを検出する閾値が固定値であるため、最大通話量に対応して送信電力が大きい時間帯でしか動作しない。このため、従来のピーク電力抑制回路では、通話量が比較的少ないために、IQベースバンド信号の平均電力が小さい時間帯では動作せず、パワーアンプの電力効率を向上できないことがあった。
この場合、上記閾値更新部が、信号処理部で用いる閾値を上記制御周期ごとに更新するので、例えば、IQベースバンド信号の平均電力が比較的小さい時間帯でも、瞬時電力の抑制を確実に行うことができる。
その理由は、LTEでは、OFDMのシンボル周期は送信電力が大きく変動し得る最小の時間単位だからであり、W−CDMAでは、クローズドループ送信電力制御の制御周期が、送信電力が大きく変動し得る最小の時間単位だからである。
〔第1実施形態〕
〔無線通信システム〕
図1は、本発明を好適に適用可能な、第1実施形態に係る無線通信システムの全体構成図である。
図1に示すように、本実施形態の無線通信システムは、基地局装置(BS:Base Station)1と、この装置1のセル内で当該装置1と無線通信を行う複数の移動端末(MS:Mobile Station)2とから構成されている。
かかるLTE方式に基づく基地局装置1では、例えば5MHz単位でダウンリンクフレームの周波数帯域を設定可能であり、セル内の各移動端末2に下り信号を送信する場合において、その周波数帯域ごとに送信電力を変更可能になっている。
このため、図1に破線で示すように、送信電力が大きい第1帯域B1の下り信号が届く通信エリアA1は、送信電力が小さい第2帯域B2の下り信号が届く通信エリアA2よりも遠方でかつ広範囲になっている。
なお、本発明を適用可能な無線通信システムはLTE方式に限られるものではなく、W−CDMA方式であってもよいが、以下では、本発明をLTE方式の基地局装置1に適用した場合を想定して説明を進める。
図7は、LTEのダウンリンクフレームの構造を示す図である。図中、縦軸方向は周波数を示しており、横軸方向は時間を示している。
図7に示すように、ダウンリンク(DL)フレームを構成する合計10個のサブフレーム(subframe♯0〜♯9)は、それぞれ2つのスロット(slot♯0とslot♯1)により構成されており、1つのスロットは7個のOFDMシンボルにより構成されている(Normal Cyclic Prefixの場合)。
従って、例えば、DLフレームの周波数帯域幅が5MHzに設定されている場合には、300個のサブキャリアが配列されるので、リソースブロックは、周波数軸方向に25個配置される。
この制御チャネルには、DL制御情報や、当該サブフレームのリソース割当情報、ハイブリッド自動再送要求(HARQ:Hybrid Automatic Report Request)による受信成功通知(ACK:Acknowledgement)、受信失敗通知(NACK:Negative Acknowledgement)等が格納される。
上記PDSCHに格納されるユーザデータの割り当てについては、各サブフレームの先頭に割り当てられている上記制御チャネル内のリソース割当情報で規定されており、移動端末2は、このリソース割当情報により、自己に対するデータがサブフレーム内に格納されているか否かを判断できる。
図2は、基地局装置1のOFDM送信機3の要部を示す機能ブロック図である。
この送信機3は、送信用プロセッサ4と電力増幅回路5とを備えており、送信用プロセッサ4は、例えば、1又は複数のメモリやCPUを内部に有するFPGA(Field Programmable Gate Array )により構成されている。
すなわち、本実施形態の送信用プロセッサ4は、左から順に、S/P変換部6、マッピング部7、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform:逆高速フーリエ変換)部8、信号処理部9及び直交変調部10を含んでいる。
この各サブキャリア信号f1,f2,……fnは、IFFT部8によって時間軸上で互いに直交するベースバンド信号としてのI信号及びQ信号に変換される。
この第1信号I1,Q1と第2信号I2,Q2は、後段の信号処理部(本実施形態の信号処理回路)9に入力され、この処理部9において所定の信号処理が施される。
なお、本実施形態の信号処理回路9は、第1信号I1,Q1と第2信号I2,Q2の時間軸上の合成信号であるIQベースバンド信号の瞬時電力Pが、所定の閾値Pthよりも大きくならないように、当該IQベースバンド信号をクリッピング処理するものであるが、その詳細については後述する。
本実施形態の電力増幅回路5としては、パワーアンプのドレイン電圧が一定である固定電圧方式であってもよいが、高周波増幅器の高効率化を図る観点からは、ET(Envelope Tracking)方式を採用することが好ましい。
図3は、本発明の第1実施形態に係る信号処理回路9の機能ブロック図である。
なお、以下において、第1信号I1,Q1と第2信号I2,Q2の合成信号を単に「IQベースバンド信号」或いは「IQ信号」というものとする。
また、第1信号I1,Q1の瞬時電力をP1とし、第2信号I2,Q2の瞬時電力をP2とし、IQベースバンド信号の瞬時電力をP(=P1+P2)とする。
このうち、電力算出部13は、IQベースバンド信号のI成分(=I1+I2)とQ成分(=Q1+Q2)の2乗和よりなる瞬時電力Pを算出する。
具体的には、この信号処理部17は、差分率算出部20、比較部21、パルス保持部22及び加減算器23,24を含む。
従って、IQベースバンド信号の閾値Pthを超えた分の増分ΔI,ΔQが、次式に基づいて算出される。なお、この場合、SQRT(・)は、括弧内の変数の平方根を取る関数である(以下、同様)。
ΔI={1−SQRT(Pth/P)}×I
ΔQ={1−SQRT(Pth/P)}×Q
パルス保持部22は、後述するパルス生成部16が出力する相殺用パルスSを一時的に保持する、デュアルポートRAM等よりなるメモリを有しており、比較部21から指令を受けた場合は、その時点で保持している相殺用パルスSを上記増分ΔI,ΔQに乗算して相殺信号Ic,Qcを算出する。
従って、瞬時電力Pが閾値Pthを超えているIQベースバンド信号については、次の式に基づいて算出された相殺信号Ic,Qcが加減算器23,24に入力される。
Ic=ΔI×S={1−SQRT(Pth/P)}×I×S
Qc=ΔQ×S={1−SQRT(Pth/P)}×Q×S
この減算により、瞬時電力Pが閾値Pthを超えるIQベースバンド信号については、閾値Pth相当の瞬時電力の信号に補正される。また、瞬時電力Pが閾値Pth以下のIQベースバンド信号については、補正されずにそのまま出力される。
この図6に示すように、本実施形態の信号処理回路9による信号処理は、IQベースバンド信号の瞬時電力Pの外周側をカットするクリッピング処理である。このため、電力増幅回路5のパワーアンプに対するPAPRが低下するので、パワーアンプの電力効率が向上する。
図4は、パルス生成部16の機能ブロック図である。
このパルス生成部16は、第1及び第2帯域B1,B2ごとに予め求められた基本パルスS1,S2に、その帯域B1,B2ごとの平均電力の相対比率C1,C2をそれぞれ乗算して総和をとることにより、前記相殺用パルスSを生成するものであり、比率算出部26、波形記憶部27及び乗加算部28を有している。
この基本パルスS1,S2は、特許文献3(特開2004−135078号公報)の場合と同様に、下り信号の送信に使用する周波数帯域B1,B2に含まれる複数本(例えば、N本とする。)の搬送波を、振幅を1/Nにしかつ位相を0にして、前記IFFT部8に入力して得られたSinc波形よりなるものである。この場合、IFFT部8の出力には実部Iだけが出現し、虚部Qはゼロになる。
従って、基本パルスS1,S2の周波数帯域は第1及び第2帯域B1,B2と一致しており、閾値Pthを超えるIQ信号の増分に、基本パルスS1,S2を乗算した相殺信号を用いてIQ信号をクリッピングしても、帯域B1,B2外の不要な周波数成分は発生しない。
C1=Σ√P1/(Σ√P1+Σ√P2)
C2=Σ√P2/(Σ√P1+Σ√P2)
上記累積値の除算を含む演算をリアルタイムで正確に処理するためには、有効桁数を大きく取る必要があり回路規模が大きくなるが、累積値の総和(Σ√P1+Σ√P2)が2のべき乗の場合には、小数点の位置が変化するだけで実質的に除算の必要がない。
図5は、比率算出部26が実行する上記演算ロジックを示すフローチャートである。
図5に示すように、比率算出部26は、まず、累積値Sum1,Sum2をそれぞれゼロに初期化する(ステップST1)。
また、比率算出部26は、上記累積値Sum1,Sum2の総和Tが2のべき乗±δ(δは十分に小さい所定値)の範囲になったか否かを判定し(ステップST3)、この判定結果が否定的である場合にはステップST2に戻って累積を繰り返す。
この場合、各累積値Sum1,Sum2の小数点の位置を変化させるだけで相対比率C1,C2を算出できるので、回路規模を増大させなくても、相対比率C1,C2を正確かつ迅速に算出することができる。
Sum2= 681(2進数表示で「1010101001」)
T=1024(2進数表示で「1000000000」)となる。
この場合、これを用いて相対比率C1,C2を算出すると、
C1=343/1024=0.0101010111
C2=681/1024=0.1010101001
C1+C2 =1.0000000000
となり、各累積値Sum1,Sum2の小数点以下における0と1の順序は変化しないので、その小数点の位置を変化させるだけで相対比率C1,C2を算出することができる。
このようにすれば、IQベースバンド信号の平均電力が余り変動しない安定状態で相対比率C1,C2を算出できるので、正確な相対比率C1,C2が得られるという効果がある。
また、加算器31は、各乗算器29,30の乗算結果を加算して相殺用パルスSを生成し、このパルスSを信号処理部17のパルス保持部22に出力する。すなわち、乗加算器16は、次の式に基づいて相殺用パルスSを生成する。
S=C1×S1+C2×S2
このため、相対比率C1,C2がある程度変動しない限り、乗加算器28が乗算及び総和を実行せず、パルス保持部22が従前の相殺用パルスSを維持する。従って、相殺用パルスSを愚直に毎回生成する場合に比べて、回路の演算負荷を低減することができる。
上記相殺用パルスSは、第1帯域B1に対応する第1信号I1,Q1の平均電力の相対比率C1に、その帯域B1用の基本パルスS1を乗算したものと、第2帯域B2に対応する第2信号I2,Q2の平均電力の相対比率C2に、その帯域B2用の基本パルスS2を乗算したものとを、加算した合成パルスになっている。
このため、上記相殺用パルスSを増分ΔI,ΔQに乗算した相殺信号Ic,Qcを元のIQベースバンド信号から減算しても、第1及び第2帯域B1,B2ごとの平均電力に対応してIQベースバンド信号の振幅が相殺されることになる。
図8は、第2実施形態に係る信号処理回路9の機能ブロック図である。
図8に示すように、本実施形態の信号処理回路9(図8)が第1実施形態の信号処理回路9(図3)と異なる点は、更に、平均算出部33と閾値更新部34を備えている点にある。
以下、第1実施形態と共通する構成及び機能は図面に同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態との相違点について重点的に説明する。
すなわち、平均算出部33は、電力算出部13からIQベースバンド信号の瞬時電力Pを取得しており、その瞬時電力Pを上記シンボル周期内で平均化することにより、シンボル周期ごとのIQベースバンド信号の平均電力Pave を算出し、これを閾値更新部34に出力する。
閾値更新部34は、上記のようにしてシンボル周期ごとに閾値Pthを算出して当該閾値Pthを動的に更新し、その更新した閾値Pthを、差分率算出部20と比較部21に出力する。
図9に示すように、本実施形態では、信号処理回路9におけるクリッピング処理に用いる閾値Pthが、シンボル周期(1/14ms)ごとに算出した平均電力Pave に基づいて逐次算出され、そのシンボル周期ごとに更新される。
もっとも、第1実施形態の場合と同様に、LTEでは、リソースブロック(図7参照)がユーザ割当の最小単位になっているので、このリソースブロックの送信周期である7OFDMシンボル(1スロット)を、閾値Pthを更新する制御周期として採用することにしてもよい。
図10は、本発明の第3実施形態に係る無線通信システムの全体構成図である。
図10に示すように、本実施形態の無線通信システムでは、基地局装置1に、CPRI(Common Public Radio Interface)を介してRRH(Remote Radio Head)36が接続されており、このRRH36には、図11に示す第3実施形態に係る信号処理回路9と前記電力増幅回路5とが設けられている。
図11に示すように、本実施形態の信号処理回路9では、上記同期信号38が入力される周期生成部37が設けられている。
上記の通り、本実施形態では、シンボル周期と同期する同期信号38を基地局装置1から取得し、その同期信号38に基づいてシンボル周期を生成するので、RHH36にも本発明の信号処理回路9を搭載することができる。
前記第1〜第3実施形態の信号処理回路9(図3、図8及び図11)では、信号処理部17が、瞬時電力Pの上限を規定するクリッピング用の閾値(第1の閾値)Pthよりも大きいIQベースバンド信号を、当該閾値Pth相当の瞬時電力Pに抑制する「クリッピング処理」を行うが、この処理とは逆に、瞬時電力Pが所定の第2の閾値Pth’(<Pth)よりも小さいIQベースバンド信号を、当該閾値Pth’相当の瞬時電力Pに底上げする処理(以下、これを「ブースティング処理」という。)を行うものであってもよい。
以下、図3を例にとって、上記「ブースティング処理」を行う信号処理部17の動作について説明する。
ΔI’={SQRT(Pth’/P)−1}×I
ΔQ’={SQRT(Pth’/P)−1}×Q
パルス保持部22は、比較部21から上記出力指令を受けた場合には、保持している相殺用パルスSを上記減分ΔI’, ΔQ’に乗算して相殺信号Ic’,Qc’をそれぞれ算出する。
従って、瞬時電力Pが第2の閾値Pth’を下回っているIQベースバンド信号については、次の式に基づいて算出された相殺信号Ic’,Qc’が加減算器23,24に入力される。
Ic’=ΔI’×S={SQRT(Pth’/P)−1}×I×S
Qc’=ΔQ’×S={SQRT(Pth’/P)−1}×Q×S
この加算により、瞬時電力Pが第2の閾値Pth’を下回るIQベースバンド信号については、第2の閾値Pth’相当の瞬時電力の信号に補正される。また、瞬時電力Pが閾値Pth’以上のIQベースバンド信号については、補正されずにそのまま出力される。
従って、ブースティング処理を行う信号処理回路9の場合も、第1及び第2帯域B1,B2における電力が相殺信号Ic’,Qc’の加算によって必要以上に増大することがなく、周波数帯域B1,B2ごとに平均電力が異なるIQベースバンド信号の場合でも、SNRを悪化させずに適切にブースティング処理することができる。
この図12に示すように、本実施形態の信号処理回路9によるブースティング処理は、IQベースバンド信号の瞬時電力Pの外周側をカットする従来のクリッピング処理とは逆に、その瞬時電力Pの内側をカットしてくり抜くような処理となる。このように瞬時電力Pを底上げする「ブースティング処理」の場合も、電力増幅回路5に入力する変調波信号のPAPRが低下するので、パワーアンプの電力効率が向上する。
この場合には、閾値更新部34は、平均算出部33から取得したシンボル周期ごとの平均電力Pave に所定の倍率を乗算した値を、そのシンボル周期におけるブースティング用の閾値Pth’として採用する。例えば、IQベースバンド信号の平均電力Pave と谷間電力(逆ピーク電力)Pvalleyの比率を6dBに絞る場合には、上記所定の倍率は1/2倍となる。
そして、比較部21は、閾値更新部34から取得した閾値Pth’を用いて、電力算出部Pが算出した瞬時電力Pの大小を判定し、瞬時電力Pが更新後の閾値Pth’よりも小さい場合に前記出力指令を発する。
図13に示すように、この場合には、信号処理回路9におけるブースティング処理に用いる閾値Pth’が、シンボル周期(1/14ms)ごとに算出した平均電力Pave に基づいて逐次算出され、そのシンボル周期ごとに更新される。
すなわち、例えば、移動端末2による通話量の変動に対応して、IQベースバンド信号の平均電力Pave が変動しても、信号処理回路9によるブースティング処理が常に行われることになるので、PAPRの低減よるパワーアンプの電力効率の向上を、有効に確保することができる。
更に、前記第1〜第3実施形態の信号処理回路9(図3、図8及び図11)において、信号処理部17が、IQベースバンド信号に対してクリッピング処理とブースティング処理の双方を行うようにしてもよい。
この場合には、差分率算出部20が、クリッピング処理用の第1の閾値Pthと、ブースティング処理用の第2の閾値Pth’の2つの閾値を用いて、各閾値Pth,Pth’に対する瞬時電力Pの増分率{1−SQRT(Pth’/P)}と減分率{SQRT(Pth’/P)−1}の双方を算出する。
そして、比較部21が、電力算出部13で算出された瞬時電力Pと第1及び第2の閾値Pth,Pth’とを比較し、瞬時電力Pが第1の閾値Pthよりも大きい場合と、第2の閾値Pth’よりも小さい場合に、相殺用パルスSの出力指令をパルス保持部22に発する。
また、パルス保持部22は、比較部21から指令を受けてない場合は、上記増分ΔI,ΔQ又は減分ΔI’,ΔQ’にゼロを乗算する。
Ic=ΔI×S={1−SQRT(Pth/P)}×I×S
Qc=ΔQ×S={1−SQRT(Pth/P)}×Q×S
Ic’=ΔI’×S={SQRT(Pth’/P)−1}×I×S
Qc’=ΔQ’×S={SQRT(Pth’/P)−1}×Q×S
この減算又は加算により、瞬時電力Pが第1の閾値Pthを超えるIQベースバンド信号については、その第1の閾値Pth相当の瞬時電力の信号に補正され、瞬時電力Pが第2の閾値Pth’を下回るIQベースバンド信号については、その第2の閾値Pth’相当の瞬時電力の信号に補正される。
この図14に示すように、クリッピング処理とブースティング処理の双方を行う場合には、IQベースバンド信号の瞬時電力Pの外周側がカットされ、かつ、その瞬時電力Pの内側がくり抜かれるので、いずれか一方の処理のみを行う場合に比べて、電力増幅回路5に入力する変調波信号のPAPRを更に低下させることができる。
図15は、基本バルスS1,S2のバリエーションを示す時間領域のグラフであり、図15において、(a)はSinc波形、(b)はチェビシェフ波形、(c)はテーラー波形である。
これらの波形は、数学的には、すべて次の式(1)で表すことができ、Sinc波形の場合にはan=nπとなっている。
これに対して、チェビシェフ波形では、振幅値=0となるxの解を構成する数列anの値を調整することで、サイドローブの振幅を小さくできるが、この場合には振幅が減衰しなくなる。
従って、基本パルスS1,S2を定義する所定の時間区間Tにおける全エネルギー(振幅の2乗)に対する、メインローブ区間のエネルギー局在率を比較すると、Sinc波形の場合には91%であり、チェビシェフ波形の場合には93%であり、テーラー波形の場合には約95%になり、テーラー波形が最も有利となる。
その理由は、エネルギー局在率が100%になると、基本パルスS1,S2がインパルス(デルタ関数)となって、帯域制限がある本発明に適用できなくなり、局在率が85%未満の場合は、パルス形状が鈍化し過ぎて使用できなくなるからである。
特徴1:基本パルスS1,S2は、所定の時間区間T(例えば、1シンボル周期)における全エネルギー(振幅の2乗)に対するメインローブ区間のエネルギー局在率が、85%〜99%の波形により構成できる。
特徴3:より具体的には、基本パルスS1,S2は、Sinc波形、チェビシェフ波形又はテーラー波形よりなる。このうち、Sinc波形は、帯域内の複数本の搬送波を、振幅が同一でかつ位相をゼロにして逆フーリエ変換して得られる実部(I信号)の波形よりなる。
今回開示した実施形態は例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の構成と均等の範囲内での全ての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態では、基地局装置1が2つの周波数帯域B1,B2を使用する場合を例示したが、3つ以上の周波数帯域を使用する場合でも本発明の信号処理回路9を構成することができる。
このW−CDMA方式では、クローズドループ送信電力制御によって基地局装置1の送信電力を制御するようになっており、この制御周期が送信制御の最小時間単位となっている。具体的には、この制御周期は、1無線フレーム周期10msの15分の1(=約0.667ms)である。
また、上記実施形態では、PC−CFRに基づくクリッピング処理を行う信号処理回路9を例示したが、NS−CFRに基づくクリッピング処理を行う信号処理回路9にも、本発明を適用することができる。
2 移動端末
3 送信機
4 送信用プロセッサ
5 電力増幅回路
9 信号処理部(信号処理回路)
13 電力算出部
14 電力算出部
15 電力算出部
16 パルス生成部
17 信号処理部
20 比較部
21 差分率算出部
22 パルス保持部
23,24 加減算器
26 比率算出部
27 波形記憶部
28 乗加算部
33 平均算出部
34 閾値更新部
B1 第1帯域
B2 第2帯域
Pth 第1の閾値(クリッピング用)
Pth’ 第2の閾値(ブースティング用)
ΔI 増分
ΔQ 増分
Ic 相殺信号
Qc 相殺信号
ΔI’ 減分
ΔQ’ 減分
Ic’ 相殺信号
Qc’ 相殺信号
S 相殺用パルス
S1 基本パルス
S2 基本パルス
C1 相対比率
C2 相対比率
Claims (11)
- 電力増幅回路に入力する変調波信号のピーク電力対平均電力比(Peak-to-Average Power Ratio:以下、特許請求の範囲において、「PAPR」という。)を低減するための信号処理回路であって、
前記変調波信号のIQベースバンド信号の瞬時電力を算出する電力算出部と、
前記IQベースバンド信号をその周波数帯域ごとの平均電力に対応して相殺可能な相殺信号を用いて、前記瞬時電力の上限又は下限若しくはこれらの双方が所定の閾値相当となるように前記IQベースバンド信号の振幅を制限する信号処理部と、
を備えていることを特徴とする信号処理回路。 - 前記信号処理部は、前記瞬時電力の上限を規定する第1の閾値からの前記IQベースバンド信号の増分に所定の相殺用パルスを乗算して得られる前記相殺信号を、元の前記IQベースバンド信号から減算して、当該IQベースバンド信号を前記第1の閾値相当の瞬時電力に抑制するクリッピング処理を行う請求項1に記載の信号処理回路。
- 前記信号処理部は、前記瞬時電力の下限を規定する第2の閾値からの前記IQベースバンド信号の減分に所定の相殺用パルスを乗算して得られる前記相殺信号を、元の前記IQベースバンド信号に加算して、当該IQベースバンド信号を前記第2の閾値相当の瞬時電力に底上げするブースティング処理を行う請求項1に記載の信号処理回路。
- 前記信号処理部は、前記クリッピング処理と前記ブースティング処理の双方を実行可能である請求項2又は3に記載の信号処理回路。
- 前記周波数帯域ごとに求められた基本パルスにその周波数帯域ごとの平均電力の相対比率をそれぞれ乗算して総和をとることにより、前記相殺用パルスを生成するパルス生成部を、更に備えている請求項1〜4のいずれか1項に記載の信号処理回路。
- 前記パルス生成部は、前記周波数帯域ごとの前記相対比率をそれぞれ算出する比率算出部と、前記周波数帯域ごとの前記基本パルスを記憶する波形記憶部と、算出された前記相対比率を対応する前記基本パルスにそれぞれ乗算して総和をとる乗加算部と、を有する請求項5に記載の信号処理回路。
- 前記信号処理部は、前記相殺用パルスを保持するパルス保持部を有しており、
前記乗加算部は、算出された前記相対比率が変動した場合にのみその変動後の当該相対比率を用いた乗算及び総和を実行し、その結果生成された前記相殺用パルスを前記パルス保持部に出力する請求項6に記載の信号処理回路。 - 前記比率算出部は、前記周波数帯域ごとの瞬時電力の平方根を累積し、その累積値の総和が2のべき乗±δ(δは十分に小さい所定値)になった場合に、当該2のべき乗で前記累積値を除算することにより、前記相対比率を算出する請求項6又は7に記載の信号処理回路。
- 前記比率算出部は、前記IQベースバンド信号の平均電力が時間的に変動する可能性のある制御周期内に、前記相対比率の算出を実行する請求項6〜8のいずれか1項に記載の信号処理回路。
- 前記信号処理部で用いる前記閾値を前記IQベースバンド信号の平均電力が時間的に変動する可能性のある制御周期ごとに更新する閾値更新部を、更に備えている請求項1〜9のいずれか1項に記載の信号処理回路。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の前記信号処理回路と、その後段に配置された電力増幅回路とが搭載された送信機を有することを特徴とする通信装置。
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