JP2011168938A - エアバック用ナイロン66繊維およびエアバック - Google Patents
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Abstract
【解決手段】総繊度が150〜550dtex、単糸繊度が0.8〜8dtex、引張強度が7.5cN/dtex以上であり、末端アミノ基濃度が末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計である総末端基濃度に対して25%〜60%であり、かつ、水酸基とフェニル基を分子中に有する有機化合物を1〜1500ppm含有することを特徴とするエアバック用ナイロン66繊維。
【選択図】なし
Description
また一方では、2000年に改訂された米国法規FMVSS208に対応するため、上記エアバックのコンパクト化要求に加え、インフレータの高出力化に対応する必要性が出てきた。
上記、低コストでコンパクト性に優れ、かつインフレータの高出力化に対応できるエアバックの要求を満足すべく、軽量であってもエアバック基布の耐久性を満足しつつ、(1)エアバックの展開が従来より高速膨張展開であっても、目開きが小さく低通気であること、(2)エアバッグが収納される車中の箇所が過酷な環境下であっても、環境安定性の経時劣化が少なく、高速膨張展開安定性に優れていることが重要となってきた。
例えば、特許第4166203号公報には、ポリアミド繊維の応力―ひずみ曲線が(1)1.0g/dの初期応力に置かれた時5%未満伸張し、(2)4.5g/dの中期応力に置かれた時は12%未満伸張し、(3)最小9.0g/dの引張強度から糸が切断されるまで3%以上伸張し、単糸繊度が4デニール以下で、切断時の引張強度値が9.0g/d〜11g/dであることを特徴とするノンコートエアバック用ポリアミド繊維、および、当該繊維を製織して得られた生地を、50℃から100℃にかけて、5℃〜20℃ずつ順次温度が上昇する3個〜10個の水生浴を連続的に通過させて熱収縮させ、その後入口温度140℃程度から出口温度200℃程度の熱風乾燥機を通過させて乾燥させることを特徴とするノンコートエアバック用織物が開示されている。
しかしながら、当該特許では、加工後のポリアミド繊維の応力―ひずみ曲線と通気度の関係については何ら記載されていないばかりか、実施例に記載されている125Paでの通気性が0.5cm3/cm2/sec以上であり、近年要求されている低通気性を十分満足することができなかった。また、環境安定性についての技術は開示されていなかった。
しかしながら、この特許に開示された技術は、展開時の応力集中による破裂を回避するため、経方向と緯方向のST5%値が1.2g/d以下になるように調整することによって、展開時の応力を緩和することにあるが、エアバックが展開する時の圧縮空気の急速な導入による膨張力を、基布が局部的に伸びることで吸収してしまうので、ノンコートエアバックの展開が不均一になって展開速度に遅れを生じたり、また、局部的に高い膨張力を受けた部分に目開きが生じるので、通気性能が低下したり、バッグが破裂する等展開安定性が不安定になる問題が生じる。
さらにこの発明の環境安定性については、自動車メーカーの環境老化試験の一つである120℃×400時間熱処理後の通気度変化を125Pa差圧で確認しているにすぎず、エアバックの展開初期にエアバック基布に加わる100kPa前後の高圧下での環境安定性については不十分な水準であった。
さらにこれらの特許群には、ナイロン66繊維の乾熱収縮率及び沸騰水中収縮率を好適に調整することにより、耐環境性すなわち耐熱性および耐湿性に優れる低通気度のノンコートエアバック基布が可能になると開示されている。その具体的方法は、特許第3849812号公報については、織物を通常の方法にて精練および乾燥し、次いで180℃で熱セットする方法であり、特許第3849818号公報については、精練および乾燥が20℃から100℃の温水中に浸漬し、マングルで絞った後60℃から130℃で乾燥するのみとする方法である。しかしながら、特許第3849818号公報には、特許第3849812号公報に記載されている180℃で熱セットする方法については、「織物を構成する糸条が集束されて織物に隙間が生じるため通気性の面で好ましくない」と記載されており、また一方で、特許第3849812号公報には、特許第3849818号公報の特許請求の範囲内である、150℃乾熱収縮率が1.5%以上、沸騰水中収縮率が5%以上では、織物の形態安定性および環境安定性が劣ると記載されている。したがって、高速膨張展開する際の通気度の抑制や、展開時間の短縮を果たしながら、同時に、環境安定性に優れるための技術開示はなされなかった。さらには、高速膨張展開の際の耐破袋性の環境安定性についても技術開示はなされなかった。
(1)総繊度が150〜550dtex、単糸繊度が0.8〜8dtex、引張強度が7.5cN/dtex以上であり、末端アミノ基濃度が末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計である総末端基濃度に対して25%〜60%であり、かつ、下記AおよびBから選ばれた水酸基とフェニル基を分子中に有する有機化合物を1〜1500ppm含有することを特徴とするエアバック用ナイロン66繊維。
A:フェニル基が置換している炭素から、炭素あるいは酸素からなる分子骨格を数えてγ位またはδ位の炭素に水酸基を有する有機化合物。
B:下記化学式(1)で表される有機化合物。
(φ)mP(O)(OH)n (1)
(ただし、式中、水酸基のHは金属によって置換されていてもよく、nは整数で1または2であり、nが1のときmは2でφがフェニルオキシ基であり、nが2のときmは1でφはフェニル基である。フェニルオキシ基とフェニル基はアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基、水酸基またはハロゲン原子を置換基として有していてもよく、複数の置換基を有する場合はそれぞれの置換基は同じでも異なっていてもよい。)
(2)亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウムから選ばれた少なくとも1種の元素を合計で0.1〜100ppm含有することを特徴とする上記(1)項に記載のナイロン66繊維。
(3)脂肪酸金属塩を添加して溶融紡糸されたポリアミド繊維からなることを特徴とする上記(2)項に記載のナイロン66繊維。
(4)無機系粒子からなる結晶核剤を0.1〜50ppm含有することを特徴とする上記(1)〜 (3)項のいずれかに記載のナイロン66繊維。
(5)無機系粒子からなる結晶核剤がタルク、マイカ、アルミナおよび酸化チタンから選ばれた少なくとも1種の粒子を含有することを特徴とする上記(4)項に記載のナイロン66繊維。
(6)ポリマー中の下記化学式(2)で示される環状ユニマー成分比が0.1〜3.0%であることを特徴とする上記(1)〜(5)項のいずれかに記載のナイロン66繊維。
(8)上記(7)項に記載のエアバック用基布からなるエアバック。
(9)上記(8)項に記載のエアバックからなるエアバックモジュール。
すなわち、本発明によれば、エアバックとしての機械的特性を維持し、低通気で収納性に優れたもので、環境安定性が高く高速展開におけるエアバッグの展開遅延が無い信頼性の高いエアバック用ナイロン66繊維を提供することが可能となる。
すなわち、本発明の環境安定性に優れたエアバック用ナイロン66繊維は、末端アミノ基濃度比率が25%〜60%であることが必要である。末端アミノ基濃度比率が25%未満になると繊維構造の安定性が低下し、とりわけ高湿度高温下で脆化傾向を示し始めるため、目的とする環境安定性を得ることが困難となる。また、末端アミノ基濃度比率が60%を超えるとポリマーのゲル化が進行してポリマー中異物となることから、紡糸工程が不安定となり、単糸切れが発生し易くなり、最終製品としての織物品位が低下するという問題が生じる。末端アミノ基濃度比率のさらに好ましい範囲は30%〜55%である。いっそう好ましい範囲は40〜50%である。末端アミノ基濃度比率は、ナイロン66ポリマーの原料であるアジピン酸とヘキサメチレンジアミンの中和塩の水溶液に、アジピン酸またはヘキサメチレンジアミンを適量添加することでコントロールすることが可能である。
A:フェニル基が置換している炭素から、炭素あるいは酸素からなる分子骨格を数えてγ位またはδ位の炭素に水酸基を有する有機化合物。
B:下記化学式(1)で表される有機化合物。
(φ)mP(O)(OH)n (1)
(ただし、式中、水酸基のHは金属によって置換されていてもよく、nは整数で1または2であり、nが1のときmは2でφがフェニルオキシ基であり、nが2のときmは1でφはフェニル基である。フェニルオキシ基とフェニル基はアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基、水酸基またはハロゲン原子を置換基として有していてもよく、複数の置換基を有する場合はそれぞれの置換基は同じでも異なっていてもよい。)
フェニル基はπσ作用でナイロン66の脂肪族骨格と弱い作用をし、結晶核生成の発生中心となることができ、また、水酸基はアミド結合と水素結合作用するため、適度にナイロン66に分散することができる。
水酸基がナイロン66分子鎖のアミド基に作用して接近し、五員環または六員環位置に存在するフェニル基がナイロン66分子鎖のアミド基付近の脂肪族部分と弱く相互作用して核形成に寄与する。
塩基性水酸基がナイロン66分子鎖のカルボキシル基に作用して接近し、近接するフェニル基がナイロン66分子鎖の脂肪族部分と弱く相互作用して核形成に寄与する。
このポリマー中の環状ユニマー成分比は繊維をNMR溶媒に溶解して13C−NMRスペクトル解析から求めた。スペクトル解析は基本的にデイヴィスの提案(R.D.Davis,et al,Macromolecules 2000,33,7088−7092)に従った。ナイロン66ポリマー中のヘキサメチレンジアミン骨格のアミド窒素結合位からβ位にある炭素は、3種のケミカルシフトを示す。すなわち、(1)環状ユニマーの炭素、(2)鎖状ポリアミド中でトランス型コンフォメーションの炭素および環状ユニマーを除く環状ポリアミド中の炭素、(3)鎖状ポリアミド中でシス型コンフォメーションの炭素である。(1)のNMRピーク強度について、(2)と(3)のピーク強度合計を基準にした百分率(%)で求めたものをポリマー中の環状ユニマー成分比とした。
ポリマー中の環状ユニマー成分比が0.1%以上であれば、高温環境を経た後の繊維において、環状ユニマー成分の緩慢なブリードアウトで引裂き強力保持率が良好である。同様に、高温高湿環境を経た後の織物の摩擦も増大せず滑りが良い。さらに、可塑化作用で粗硬になることなく柔軟性を良く保っている。そのため、高温高湿環境後の形態保持性がよく、フェニル化合物の存在と相俟ってエアバッグ展開時間の変化が少ないことに寄与する。さらには、末端アミノ基濃度比率が比較的低めであってもエアバッグのバースト圧の低下抑制および維持に寄与する。ポリマー中の環状ユニマー成分比が3.0%以内であれば、高温環境を経た後の織物の滑脱抵抗が減少しすぎることがなく、エアバッグとしての耐圧性を損なうことがない。ポリアミドオリゴマーの中でも、この環状ユニマーが、低分子量で、かつ、環状であることにより、可塑化効果を有しつつ緩慢に繊維表面にブリードアウトするために有効である。一方で、水処理などで抽出されきってしまうことがないため繊維加工上も都合が良い。
ナイロン66ポリマーを溶融紡糸する際、環状ユニマーを添加することでナイロン66繊維中の環状ユニマー含有量を適正量に調整できる。環状ユニマーは、ナイロン66ポリマー中のオリゴマーの一種であり、溶融したナイロン66ポリマーから昇華物として得たオリゴマー粉体を再結晶で精製することによって得ることができる。
まず、結晶核剤や熱安定剤等を含む、蟻酸相対粘度40〜50のプレポリマーを公知の溶融重合法で製造し、末端アミノ基濃度比率25%〜50%の範囲に調整したポリマーペレットとなす。無機系粒子の結晶核剤は、この溶液重合時点で水系スラリーとして添加できる。次いでこのポリマーペレットを公知の固相重合法で蟻酸相対粘度80〜120まで高分子量化する。なお、蟻酸相対粘度80〜100程度の高分子量であれば、公知の溶融重合法の最終段階で真空度を調整することで安価に得ることが可能である。
この熱セットされたナイロン66繊維は、熱セットロールと弛緩ロール間で10%以下弛緩された後、2000m/分〜4000m/分の巻取速度で巻き取られる。
ナイロン66繊維を製織する際の織物組織としては、平織、綾織、朱子織およびこれらの変化織が挙げられる。また、組織混合した織物や多軸織などの織物にしてもよい。これらの中でも、特に機械的特性に優れ、地薄な面から平織物が好ましい。さらに、袋織でバッグ形状に製織した織物でもよい。
このようにして得られた織布の通気度を下げる方法として、精練・乾燥工程により収縮加工する方法、精練・乾燥・熱セット工程により収縮加工する方法、熱セット工程のみにより収縮加工する方法等があるが、コスト的には熱セット工程のみにより収縮加工する方法が望ましい。熱セットの温度条件は、通常150℃から200℃であるが、目的とする通気度に合わせて適宜設定すればよい。
織布の通気度は、空気圧を一気に50kPaの圧まで掛ける高速高圧評価において10L/cm2/min以下であることが好ましい。また、140℃で400時間曝露した後に、曝露以前の通気度の115%以下の変化であることが好ましく、もっとも好ましくは通気度の変化が認められないことである。
エアバックにはインフレータが結合され、エアバック部は折畳まれて所定の容器に収納されてエアバックモジュールとして自動車部品として供給される。
まず、実施例における各特性の測定方法及び評価方法について述べる。
(ナイロン66繊維の繊度、強力および伸度)
ナイロン66繊維の繊度、強力および伸度は、JIS L 1017 8.3及び8.5に準じて測定した。
ジクロルメタンで脱脂処理したナイロン66繊維試料を精秤し、これを90%フェノール水溶液に溶解する。完全に溶解した後、0.05Nの塩酸水溶液で溶液のPHが3になるまで滴定する。滴定量からポリマー1kg当りの末端アミノ基濃度を算出した。
前記と同様な方法で脱脂処理したナイロン66繊維試料を精秤し、これを170℃のベンジルアルコールに溶解する。完全に溶解した後にフェノールフタレイン指示薬を添加する。その後、0.1NのNaOHエチレングリコール溶液で比色滴定する。滴定量からポリマー1kg当りの末端カルボキシル基濃度を算出した。
キャピラリー電気泳動で行なった。
前記と同様な方法で脱脂処理した繊維試料10gを4時間熱水還流し抽出した。キャピラリー電気泳動装置G1600(ヒューレットパッカード社製)にてフェニルホスホン酸の標準品を用い定量分析した。
キャピラリー :ヒューズドシリカ75μm×56cm
電気泳動緩衝液 :20mM硼酸塩緩衝液pH9.0
電圧 :negative25kV
注入方式 :加圧法50mbar×3sec
プレコンディショニング:緩衝液4分間
ダイオードアレイ計測 :検知200nm(10nm幅)、参照波長無し
GC/MSで行なった。
繊維試料10gを切り刻み、n−ヘキサン150mlで40℃12時間浸漬抽出した。ガスクロマトグラフ6890質量分析計5973N(ヒューレットパッカード社製)でモノスチレン化フェノール(三光株式会社製)を標準品にトータルイオンクロマトグラムからモノ、ジおよびトリのスチレン化フェノール全体の含有量を定量した。
キャピラリーカラム:DB−1(内径0.25mm、膜厚0.1μm、長さ5m、J&W Scientific社製)
カラム温度 :50℃→20℃/分昇温→300℃
注入口温度 :250℃(インレット温度280℃)
キャリアガス :He 3.0mL/分
注入量 :1μL
イオン化電圧 :70eV
イオン加速電圧 :1.8kV
測定モード :SCAN(m/z40〜700)
繊維試料約0.2gをテフロン(登録商標)製密閉式分解容器に採取し、分析等級の高純度硝酸5mlを加え、マイクロウェーブ分解装置(マイルストーンゼネラル株式会社製ETHOS TC)で200℃、20分の加圧分解をし、試料が完全分解されて無色透明になったことを確認した。超純水で50mlに定容して定量分析溶液を得た。ICP質量分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィク株式会社製Xシリーズ X7 ICP−MS)にて内部標準法で定量した。銅、マグネシウム元素の定量検出限界は0.03ppmであった。また、鉄、亜鉛、アルミニウムの各元素についてそれぞれ定量検出限界は0.01ppmであった。酸化チタン量もチタン元素分析から求めた。チタンの定量検出限界は0.01ppmであった。
前処理として、繊維試料約50mgを酸素封入したフラスコ内で燃焼させ、試料中の沃素を0.01N水酸化ナトリウム水溶液20mLに吸収させ、この溶液を測定用検液とする。定量分析測定は、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製のICP質量分析装置Xシリーズ X7 ICP−MSを用い、インジウム(In)による内標準法で沃素検量線にて定量した。定量検出限界値は0.5ppmであった。
臭素の定量は、たとえば日本ダイオネクス株式会社製のイオンクロマトグラフ装置2000i/spを用い、定量検出限界値は20ppmで定量することができる。今回の実施例ではすべて検出限界以下であった。
繊維をNMR溶媒に溶解し13C−NMRにより測定した。溶液は完溶し、pH調整をせず測定した。13C−NMRスペクトルはBRUKER社製のAVANCE(II)400型NMR装置を使用し、以下の条件にて測定した。
NMR条件
試料濃度:100mg/NMR溶媒0.8ミリリットル
NMR溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール−d2
測定温度:25℃
パルス繰り返し間隔:2秒
積算回数:18000回
化学シフト基準:ヘキサフルオロイソプロパノール−d2のメチン炭素のピークトップとなる分岐中心ピークを71.28ppmとした。
得られたナイロン66および含有される環状ユニマーについて、窒素結合β位炭素(C2)のピーク帰属とピーク強度の積算を実施した計算範囲を表1に示す。
JIS L1096 6.6により測定した。
(エアバック用基布の高速高圧通気度特性)
140℃×400時間の熱処理前後のエアバック基布について、通気性試験機FX3350(Textest社製)を用いて流体(空気)圧50kPaまで20msecで圧力を上昇させた時の空気通過量を測定し比較した。
(織物品位)
織物を500m目視検反して欠点数をカウントし、10個/m以上の箇所が1箇所以上発見された場合に不合格(×)とした。
国際公開第99/28164号パンフレットに記載のエアバックを縫製した。ただし、外周縫製で、縫糸は、エアバック基布を構成するナイロン66繊維が235dtex、350dtexの場合は150dtex/2×3、470dtexの場合は235dtex/2×3とし、運針数は3.5針/cmの二重環縫いとした。展開試験は、マイクロシス社製CGSシステムを使用し、970mLのチャンバーにヘリウムガスを12MPaでチャージした後展開試験を行った。高速度VTR観察から正面展開面積が最大展開面積の98%に達したときを展開時間とした。エアバッグの老化条件を140℃下で400時間熱処理とし、老化処理前後の展開時間の比を求めた。
バースト圧試験は1250mLのチャンバーにヘリウムガスを14MPa程度までチャージした後展開し、エアバッグがバーストする上限圧を検出し、老化試験前後のバースト圧変化率を求めた。評価結果を以下のように整理した。老化条件は140℃下で400時間熱処理とした。
◎:97%以上
○:95−97%
△:90−95%
×:90%未満
公知の溶融重合法を用いて、溶融重合の最終段階で真空状態にすることにより、末端アミノ基濃度比率を各種変えたナイロン66ポリマーを得た。このナイロン66ポリマーは、沃化銅、沃化カリウム及び必要に応じて無機系粒子の結晶核剤を含む。
このポリマーにフェニル化合物、脂肪族金属塩および環状ユニマーを添加後、溶融し、図1に示した紡糸機を用いてエアバック用ナイロン66繊維を得た。具体的には、300℃に設定されたスピンヘッド(1)中に組み込まれた孔径20μmの細孔を有する金属不織布フィルターを組み込んだ紡糸パック(2)中を通過させ、紡糸口金(2)より紡出した。口金直下には設定温度250℃の長さ7cmの加熱ゾーン(3)を設け、加熱雰囲気下を通過させた後、冷却風チャンバー(5)から20℃の冷風を糸条の直角方向から吹きつけ急冷した。
得られたナイロン66繊維は、蟻酸相対粘度が82、銅が70ppm、沃素が1800ppmであった。
このようにして得られたナイロン66繊維をウォータージェットルームにて製織し、平織物を得た。次いで、該織物を精練加工することなしに、80℃で乾燥し、次いで180℃で1分間熱ヒートセットしエアバック用基布を得た。
末端アミノ基濃度を調整したナイロン66ポリマーにフェニルホスホン酸ナトリウムを添加して、図1に示す紡糸機を用いて溶融紡糸し、引張強度が8.5cN/dtexである350dtex/108fのナイロン66繊維を得た。得られたナイロン66繊維は、末端アミノ基濃度32mmol/ポリマーkg、末端カルボキシル基濃度60mmol/ポリマーkg(末端アミノ基濃度比率34.7%)であった。
当該ナイロン66繊維をウォータージェットルームにて製織し平織物を得た。次いで得られた平織物を精練することなく80℃で熱風乾燥し、次いで180℃で1分間ヒートセットして、経糸61本/inch、緯糸61本/inchのエアバック用基布を得た。
得られた基布の高速高圧通気度測定結果及び展開特性結果をナイロン繊維の各種評価値と共に表2に示す。本発明のエアバックは、老化環境後の高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性に優れていた。
酸化チタンを含有するナイロン66ポリマーを用い、繊維中に10ppmの酸化チタンを含有することを除き、実施例1と同じように実施した。得られた結果を表2に併せて示す。老化環境後の高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性がさらに向上した。
溶融紡糸時にモンタン酸アルミニウムを添加し、繊維中に10ppmのアルミニウムを含有することを除き、実施例1と同じように実施した。得られた結果を表2に併せて示す。老化環境後の高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性がさらに向上した。
溶融紡糸時に環状ユニマーを添加し、繊維中にNMR観測で0.91%の環状ユニマーを含有することを除き、実施例1と同じように実施した。得られた結果を表2に併せて示す。老化環境後の高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性がさらに向上し、その上、老化環境後の耐バースト性も向上した。
酸化チタンを含有するナイロン66ポリマーを用い、溶融紡糸時にモンタン酸アルミニウムと環状ユニマーを添加し、繊維中に10ppmのアルミニウムを含有し、さらに、繊維のNMR観測で0.91%の環状ユニマーを含有することを除き、実施例1と同じように実施した。得られた結果を表2に併せて示す。老化環境後の高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性がさらに向上し、その上、老化環境後の耐バースト性も向上した。
末端アミノ基濃度が20mmol/ポリマーkg、末端カルボキシル基濃度が75mmol/ポリマーkgに調整(末端アミノ基濃度比率21%)したナイロン66繊維を用いたこと以外は、実施例1と同様な方法でエアバック用基布を得た。
得られた基布の高速高圧通気度測定結果及び展開特性結果をナイロン繊維の各種評価値と共に表2に併せて示す。このエアバックは、高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性の老化環境前後の変化が大きく、エアバック性能としては不十分な水準であった。織物品位も劣っており、単糸切れ毛羽に由来する織物欠点が多かった。
フェニルホスホン酸ナトリウムを添加していないこと以外は、実施例1と同様な方法でエアバック用基布を得た。
得られた基布の高速高圧通気度測定結果及び展開特性結果をナイロン繊維の各種評価値と共に表2に併せて示す。このエアバックは、高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性ともに、老化環境前後の変化が大きくエアバック性能としては不十分な水準であった。
フェニルホスホン酸ナトリウムを2000ppm含有する以外は、実施例1と同様な方法でエアバック用基布を得た。得られた結果を表2に併せて示す。老化環境後の耐バースト性が劣っていた。織物品位も劣っており、単糸切れおよび毛羽に由来する織物欠点が多かった。
酸化チタンを含有する、末端アミノ基濃度を調整したナイロン66ポリマーに、スチレン化フェノール、モンタン酸アルミニウムおよび環状ユニマーを添加して、図1に示す紡糸機を用いて溶融紡糸し、引張強度が9.3cN/dtexである235dtex/100fのナイロン66繊維を得た。得られたナイロン66繊維は末端アミノ基濃度が45mmol/ポリマーkg、末端カルボキシル基濃度が50mmol/ポリマーkgに調整され(末端アミノ基濃度比率47.3%)、結晶核剤としてスチレン化フェノールを1000ppm含有した。
当該ナイロン66繊維をウォータージェットルームにて製織し平織物を得た。次いで得られた平織物を精練することなく80℃で熱風乾燥し、次いで180℃で1分間ヒートセットして、経糸72本/inch、緯糸72本/inchのエアバック用基布を得た。
得られた基布の高速高圧通気度測定結果及び展開特性結果をナイロン繊維の各種評価値と共に表2に併せて示す。本発明のエアバックは、老化環境後の高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性に優れていた。
結晶核剤であるスチレン化フェノールを含有していないこと以外は、実施例6と同様な方法でエアバック用基布を得た。得られた結果を表2に併せて示す。このエアバックは、高速高圧通気度特性及びエアバック展開速度に関わる特性ともに、老化環境前後の変化が大きくエアバック性能としては不十分な水準であった。老化環境後の耐バースト性も劣っていた。
2 紡糸パック及び紡糸口金
3 加熱ゾーン
4 フィラメント
5 冷却風チャンバー
6 オイリングロール
7 引取りロール
8 第1延伸ロール
9 第2延伸ロール
10 熱セットロール
11 弛緩ロール
12 巻取機
Claims (9)
- 総繊度が150〜550dtex、単糸繊度が0.8〜8dtex、引張強度が7.5cN/dtex以上であり、末端アミノ基濃度が末端アミノ基濃度と末端カルボキシル基濃度の合計である総末端基濃度に対して25%〜60%であり、かつ、下記AおよびBから選ばれた水酸基とフェニル基を分子中に有する有機化合物を1〜1500ppm含有することを特徴とするエアバック用ナイロン66繊維。
A:フェニル基が置換している炭素から、炭素あるいは酸素からなる分子骨格を数えてγ位またはδ位の炭素に水酸基を有する有機化合物。
B:下記化学式(1)で表される有機化合物。
(φ)mP(O)(OH)n (1)
(ただし、式中、水酸基のHは金属によって置換されていてもよく、nは整数で1または2であり、nが1のときmは2でφがフェニルオキシ基であり、nが2のときmは1でφはフェニル基である。フェニルオキシ基とフェニル基はアルキル基、アルコキシ基、フェニル基、フェニルオキシ基、水酸基またはハロゲン原子を置換基として有していてもよく、複数の置換基を有する場合はそれぞれの置換基は同じでも異なっていてもよい。) - 亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウムから選ばれた少なくとも1種の元素を合計で0.1〜100ppm含有することを特徴とする請求項1に記載のナイロン66繊維。
- 脂肪酸金属塩を添加して溶融紡糸されたポリアミド繊維からなることを特徴とする請求項2に記載のナイロン66繊維。
- 無機系粒子の結晶核剤を0.1〜50ppm含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のナイロン66繊維。
- 無機系粒子の結晶核剤がタルク、マイカ、アルミナ、酸化チタンから選ばれた少なくとも1種の粒子を含有することを特徴とする請求項4に記載のナイロン66繊維。
- 請求項1〜6のいずれかに記載のナイロン66繊維からなるエアバック用基布。
- 請求項7に記載のエアバック用基布からなるエアバック。
- 請求項8に記載のエアバックからなるエアバックモジュール。
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