JP2011168454A - 多孔質石英ガラス母材の製造方法 - Google Patents

多孔質石英ガラス母材の製造方法 Download PDF

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喬宏 三森
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    • C03B37/01Manufacture of glass fibres or filaments
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    • C03B37/014Manufacture of preforms for drawing fibres or filaments made entirely or partially by chemical means, e.g. vapour phase deposition of bulk porous glass either by outside vapour deposition [OVD], or by outside vapour phase oxidation [OVPO] or by vapour axial deposition [VAD]
    • C03B37/01406Deposition reactors therefor

Abstract

【課題】母材の落下による反応炉の破損や母材への金属不純物の混入といった問題を解消することができる、多孔質石英ガラス母材の製造方法の提供。
【解決手段】反応炉内の酸水素火炎中でガラス形成原料を加水分解して得られるガラス微粒子を、ターゲット上に堆積、成長させて多孔質石英ガラス母材を得る多孔質石英ガラス母材の製造方法であって、前記反応炉の基材材料が、引っ張り強度が300N/mm2以上の金属材料であり、前記反応炉の内壁をなす基材表面に、SiO2含有量が90質量%以上で、かつ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が合計で9質量%以下の石英ガラス材料からなるコーティングが形成されており、前記基材材料をなす金属材料と、前記コーティングをなす石英ガラス材料と、の熱膨張係数の差が30%未満であることを特徴とする多孔質石英ガラス母材の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、気相軸付け法(VAD法)による多孔質石英ガラス母材の製造方法に関する。
なお、本明細書における多孔質石英ガラス母材とは、石英、すなわち、SiO2のみで構成されるガラス母材以外に、TiO2のようなドーパントを含む多孔質石英ガラス母材も包含する。
気相軸付け法(VAD法)による多孔質石英ガラス母材の製造方法では、反応炉内の酸水素火炎中で、ハロゲン化ケイ素のようなガラス形成原料を火炎加水分解させ、生成するガラス微粒子をターゲット(シリカ微粒子が堆積する出発材料)上に堆積、成長させて多孔質石英ガラス母材を得る。得られた多孔質石英ガラス母材を真空中または不活性ガス雰囲気中で加熱して透明ガラス化して石英ガラス母材を得る(特許文献1参照)。
VAD法による多孔質石英ガラス母材の製造方法は、当初、光ファイバ用プリフォームを製造する方法として開発された。この方法は金属成分を含まない多孔質石英ガラス母材を製造できることから、波長170〜400nmの紫外領域の波長の光を光源とする光学装置、より詳細には、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、重水素ランプ(波長170〜400nm)、Xe2エキシマランプ(波長172nm)、水銀ランプ等を光源とした光学装置の、レンズ、プリズム、エタロン、回折格子、フォトマスク、ペリクル(ペリクル材およびペリクルフレーム)、ミラー、窓材などの光学部品材料として用いられる光学部材用合成石英ガラスの製造にも応用されている。
また、VAD法は、波長0.2〜100nm程度の軟X線領域または真空紫外域の波長帯の光(EUV光)を光源とする光学装置の、フォトマスク、ミラーなどの光学部品材料として用いられる光学部材用ドーパント石英ガラスの製造にも応用されている。
このような用途でVAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する場合、製造される多孔質石英ガラス母材における金属不純物の含有量がきわめて少ないこと、具体的には、金属不純物の含有量が、個々の金属元素について10質量ppb未満、それらの合計量が50質量ppb以下であるとされている。
また、このような用途でVAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する場合、光ファイバ用プリフォームを製造する場合に比べて大型の多孔質石英ガラス母材を製造することが必要となり、その質量も大きくなる。例えば、径が30cmで長さ1mの多孔質石英ガラス母材の場合、1本当たり約14kg相当のものとなる。
VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する際に使用する反応炉には、耐熱性、耐久性を有することに加えて、反応炉内でガラス微粒子が浮遊することから密封性を有することが求められる。また、ガラス形成原料として、四塩化ケイ素のような塩化物を使用する場合には、反応系内で塩酸が生じるため、反応炉材料には酸に対する耐食性を有することも求められる。
上記の要求を満たす材料として、ニッケル、インコネル、ハステロイのような耐熱性、耐食性に優れた金属材料や、石英ガラス材料が反応炉材料として用いられている。
特開昭62−72536号公報
しかしながら、上記の従来の反応炉材料は、上述したような紫外領域を光源とする光学部材に用いられる多孔質石英ガラス母材を製造する場合に問題点を有している。
ニッケル、インコネル、ハステロイといった金属材料は、耐熱性、耐食性に優れた金属材料であるが、多孔質石英ガラス母材の製造時は高温かつ酸性雰囲気化のため微量であるが徐々に揮発し多孔質石英ガラス母材の金属不純物となる。このような揮発によって生じる金属不純物は微量であるが、紫外領域を光源とする光学部材に用いられる多孔質石英ガラス母材では、上述したように、金属不純物の含有量がきわめて少ないことが求められることから問題となる。
一方、石英ガラス製の反応炉の場合、上述したような低沸点の金属成分の揮発による不純物は生じることないが、上述した金属材料に比べると耐衝撃性に劣るため、製造時の多孔質石英ガラス母材が落下した場合の反応炉の破損が問題となる。
上述したように、紫外領域を光源とする光学部材に用いられる多孔質石英ガラス母材を製造する場合、光ファイバ用プリフォームを製造する場合に比べて大型の多孔質石英ガラス母材を製造することが必要となることから、製造時に何らかの原因で多孔質石英ガラス母材が落下するおそれが高くなる。また、落下する多孔質石英ガラス母材の質量も大きくなるため、落下による反応炉の破損のおそれも高くなる。
上記した従来技術の問題点を解決するため、本発明は、母材の落下による反応炉の破損や母材への金属不純物の混入といった問題を解消することができる、多孔質石英ガラス母材の製造方法を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明は、反応炉内の酸水素火炎中でガラス形成原料を加水分解して得られるガラス微粒子を、ターゲット上に堆積、成長させて多孔質石英ガラス母材を得る多孔質石英ガラス母材の製造方法であって、
前記反応炉の基材材料が、引っ張り強度が300N/mm2以上の金属材料であり、
前記反応炉の内壁をなす基材表面に、SiO2含有量が90質量%以上で、かつ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が合計で9質量%以下の石英ガラス材料からなるコーティングが形成されており、
前記基材材料をなす金属材料と、前記コーティングをなす石英ガラス材料と、の熱膨張係数の差が30%未満であることを特徴とする多孔質石英ガラス母材の製造方法を提供する。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法において、前記反応炉の基材材料が、ニッケル、インコネルおよびハステロイからなる群から選択されるいずれか1つであることが好ましい。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法において、前記石英ガラス材料からなるコーティングは、石英ガラス材料の微粒子を溶媒に分散させた懸濁液を、前記反応炉の内壁をなす基材表面に塗布し乾燥させた後、前記反応炉を200〜700℃の温度で熱処理することによって形成することができる。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法において、前記石英ガラス材料からなるコーティングは、前記反応炉の内壁をなす基材表面に石英ガラス材料を溶射することによって形成することができる。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法において、前記石英ガラス材料からなるコーティングは、前記反応炉の内壁をなす基材表面に石英ガラス材料をスパッタリングすることによって形成することができる。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法によれば、多孔質石英ガラス母材の製造時における母材の落下による反応炉の破損や、母材への金属不純物の混入といった問題を解消することができる。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法について説明する。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法では、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する際に、反応炉の基材材料が金属材料からなり、反応炉の内壁をなす基材表面に石英ガラス材料からなるコーティングが形成された反応炉を用いる。
反応炉の基材材料としては、引っ張り強度が300N/mm2以上の金属材料を用いる。引っ張り強度が300N/mm2以上の金属材料であれば、十分な耐衝撃性を有しているため、多孔質石英ガラス母材の製造時に何らかの原因で多孔質石英ガラス母材が落下した場合であっても反応炉が破損することがない。
反応炉の基材材料としては、引っ張り強度が320N/mm2以上の金属材料を用いることが好ましく、引っ張り強度が350N/mm2以上の金属材料を用いることがより好ましい。
上記の引っ張り強度を満たす金属材料としては、ニッケル、インコネルおよびハステロイが挙げられる。但し、インコネルおよびハステロイは非常に高価であり、大型の反応炉を作るとなると非常に高額になり量産設備用としては不向きな材料である、ニッケルは前記の材料に比べれば安価であるため、量産設備用の材料として好ましい。
ニッケルの場合、炭素含有量が少ない低炭素ニッケル(LC−Ni)が好ましい。その理由は、一般的に低炭素化することで不純物濃度が低下し耐食性が向上するからである。また純ニッケルに比べて安価であるため大型の反応炉用の基材として適している。
コーティングをなす石英ガラス材料としては、不純物含有量が少ない高純度の石英ガラス材料を用いる必要がある。このため、SiO2含有量が90質量%以上の石英ガラス材料を用いる。不純物の中でも、アルカリ金属、アルカリ土類金属は、石英ガラス中での拡散速度が比較的早いため、これらの不純物が揮発・拡散した場合は多孔質石英ガラス母材への汚染度が大きい問題があるので、これらの含有量が合計で9質量%以下の石英ガラス材料を用いる必要がある。
コーティングをなす石英ガラス材料は、SiO2含有量が93質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
コーティングをなす石英ガラス材料は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の合計含有量が7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する際に使用する反応炉が上述したような構成であることにより、多孔質石英ガラス母材の製造時における母材の落下による反応炉の破損や母材への金属不純物の混入といった問題が解消される。
すなわち、多孔質石英ガラス母材の製造時に何らかの原因で母材が落下した場合でも、反応炉の基材材料が十分な耐衝撃性を有しているため、母材の落下によって反応炉が破損することがない。
そして、反応炉の内壁をなす基材表面に、高純度の石英ガラス材料からなるコーティングが形成されているため、多孔質石英ガラス母材の製造時において、反応炉の基材材料をなす金属材料に不可避不純物として含まれる低沸点の金属成分が揮発して、製造される多孔質石英ガラス母材の金属不純物となることもない。
なお、多孔質石英ガラス母材の落下により、石英ガラス材料からなるコーティングにクラックが生じる可能性はあるが、反応炉自体が破損した場合とは違い、容易に補修することができるため問題となることはない。
VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する際に使用する反応炉において、基材材料をなす金属材料と、コーティングをなす石英ガラス材料と、の熱膨張係数の差が大きいと、反応炉内の温度変化によって基材表面からコーティングが剥離するおそれがある。このため、基材材料をなす金属材料と、コーティングをなす石英ガラス材料と、の熱膨張係数の差が30%未満となるように、両者の材料を選定する必要がある。なお、ここで言う熱膨張係数の差とは、反応炉が使用時に経験し得る温度域における熱膨張係数の差であり、この温度域において、両者の熱膨張係数の差が常に30%未満となる必要がある。反応炉が使用時に経験し得る温度域は、合成時のガス条件によっても異なるが、通常は200〜700℃である。
金属材料および石英ガラス材料の熱膨張係数は、それらの材料に含まれる成分やその量比によって調節することができる。
基材材料をなす金属材料と、コーティングをなす石英ガラス材料と、の熱膨張係数の差は20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。
VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する際に使用する反応炉において、反応炉の内壁をなす基材表面が露出している部分が存在すると、基材材料をなす金属材料に不可避不純物として含まれる低沸点の金属成分が揮発して、製造される多孔質石英ガラス母材の金属不純物となる。このため、反応炉の内壁をなす基材表面には、石英材料からなるコーティングが隙間なく形成されている必要がある。基材表面に石英材料からなるコーティング隙間なく形成する手段を以下に示す。
第一の方法として、石英ガラス材料の微粒子を溶媒に分散させた懸濁液を反応炉の内壁をなす基材表面に塗布し乾燥させた後、反応炉を200〜700℃の温度で熱処理することによってコーティングを形成する方法がある。
この方法において、懸濁液に含まれる石英ガラス材料の微粒子の平均粒径は、0.01〜5μmであることが好ましい。平均粒径が5μmを超えると、懸濁液を塗布する際に、石英ガラス材料の微粒子が基材表面から部分的に剥がれ落ちるおそれがある。平均粒径が0.01μm未満だと、懸濁液を均一に塗布することができなくなり、形成されるコーティングの厚さにばらつきが生じるおそれがある。コーティングの厚さにばらつきがあると、基材表面からコーティングが剥離するおそれが増加するので好ましくない。
懸濁液に含まれる石英ガラス材料の微粒子の平均粒径は、0.01〜3μmであることがより好ましく、0.02〜0.1μmであることがさらに好ましい。
石英ガラス材料の微粒子の平均粒径は以下の手順で測定することができる。
石英ガラス材料の粉体を分散媒(例えば水)に分散させた懸濁液をレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)を用いて測定することにより、石英ガラス材料の微粒子の平均粒径を測定することができる。また、質量測定とBET比表面積測定(例えば、島津製作所製ASAP2020を用いて)による粉体表面積から、粒子1つあたりの体積が換算でき、石英ガラス材料の微粒子の平均粒径が求められる。
基材表面に対する石英ガラス材料の微粒子の単位面積当たりの塗布量は、0.005〜0.2g/cm2とすることが好ましい。単位面積当たりの塗布量が0.005g/cm2未満だと、石英ガラス材料の微粒子の塗布量が少なすぎるため、基材表面に隙間なくコーティングを形成できないおそれがある。一方、0.2g/cm2超だと、懸濁液を塗布する際に、石英ガラス材料の微粒子が基材表面から部分的に剥がれ落ちるおそれがある。
基材表面に対する石英ガラス材料の微粒子の単位面積当たりの塗布量は、0.01〜0.1g/cm2であることがより好ましい。
単位面積当たりの塗布量は以下の手順で測定する。
塗布対象物である基材の質量を予め測定した後、石英ガラス材料の微粒子を含む懸濁液を基材表面に塗布する。塗布後、塗布面を乾燥させた後、基材の質量を測定する。塗布前後での基材の質量増加量を塗布面積で除することで単位面積当たりの塗布量を測定することができる。
懸濁液に用いる溶媒の種類は、塗布後の乾燥や取り扱い易さなどの理由で、有機溶媒、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、ジエチルエーテル、アセトンが好ましい。これらの中でも、エチルアルコールがコスト面、安全性、および環境面に優れることから好ましい。
懸濁液の塗布方法は、塗布面に対して懸濁液を均一に塗布できる限り特に限定されず、例えば、刷毛塗りが挙げられる。
懸濁液中の石英ガラス材料の微粒子の濃度は、500〜2000g/lであることが好ましい。懸濁液中の石英ガラス材料の微粒子の濃度が低すぎると、上記の単位面積当たりの塗布量を達成するのに、多量の懸濁液を塗布することが必要となり、かつ、懸濁液を均一に塗布することが困難となる。加えて、塗布後の乾燥に時間がかかる。一方、懸濁液中の石英ガラス材料の微粒子の濃度が高すぎると、懸濁液の濃度が高すぎて、均一に塗布することが困難になる。
懸濁液の塗布後、塗布面を乾燥させる。これにより、懸濁液中の溶媒が揮発除去されて、塗布面上に石英ガラス材料の微粒子が存在した状態となる。
乾燥に要する条件は、懸濁液に使用する溶媒によって異なるが、溶媒がエチルアルコールの場合、5〜35℃で15〜60分で乾燥させればよい。
塗布面を乾燥させた後、反応炉を200〜700℃の温度で熱処理すると、石英ガラス材料の微粒子が基材表面に焼結することによって、該基材表面に石英材料からなるコーティングが隙間なく形成される。ここで、熱処理を実施する環境は特に限定されず、大気雰囲気中で実施したのでよい。
熱処理温度が200℃未満だと、基材表面に石英ガラス材料の微粒子が焼結せず、コーティングを形成することができない。一方、熱処理温度が700℃よりも高いと、石英ガラス材料が昇華するおそれがある。
上記の手順で形成されるコーティングの厚さは特に限定されないが、0.01〜5mmであることが好ましく、0.5〜3mmであることがより好ましい。コーティングの厚さが、0.01mm以上であれば、基材の腐食による金属不純物の拡散を抑える効果が見込まれる理由から好ましい。一方、コーティングの厚さが、5mm以下であれば、基材とのわずかな熱膨張差による剥がれも起こらない理由から好ましい。
なお、以下に述べる方法でコーティングを形成する場合もコーティングの厚さは上記の範囲であることが好ましい。
第二の方法として、基材表面に石英ガラス材料を溶射することによって、該基材表面に石英材料からなるコーティングを形成する方法が挙げられる。
第三の方法として、基材表面に石英ガラス材料をスパッタリングすることによって、該基材表面に石英材料からなるコーティングを形成する方法が挙げられる。
これらの第二、第三の方法によっても、基材表面に石英材料からなるコーティングを隙間なく形成することができる。
これらの方法において、基材表面に石英ガラス材料を溶射する条件、および、基材表面に石英ガラス材料をスパッタリングする条件は特に限定されず、公知の条件から適宜選択すればよい。
本発明の多孔質石英ガラス母材の製造方法において、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する手順は特に限定されない。したがって、通常の手順にしたがって、反応炉内の酸水素火炎中でガラス形成原料を火炎加水分解させ、生成するガラス微粒子をターゲット上に堆積、成長させることによって多孔質石英ガラス母材を得ることができる。
本発明の方法により製造される多孔質石英ガラス母材が、石英、すなわち、SiO2のみで構成される場合、ガラス形成原料としてSiO2前駆体を用いる。
SiO2前駆体の具体例としては、四塩化ケイ素(SiCl4)、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Clなどの塩化物、四塩化フッ素(SiF4)、SiHF3、SiH22などのフッ化物、四臭化ケイ素(SiBr4)、SiHBr3などの臭化物、SiI4などのヨウ化物といったハロゲン化ケイ素化合物、またRnSi(OR)4-n(ここでRは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数。なお、Rは同一でも異なっていてもよい。)で示されるアルコキシシラン等が例示される。
本発明の方法により製造される多孔質石英ガラス母材が、TiO2等の金属ドーパントを含有する場合、上述したSiO2前駆体に加えて、該金属ドーパントの前駆体をガラス形成原料として用いる。たとえば、金属ドーパントとして、TiO2を含有する場合、上述したSiO2前駆体に加えて、TiO2前駆体をガラス形成原料として用いる。
TiO2前駆体の具体例としては、TiCl4、TiBr4などのハロゲン化チタン化合物、またRnTi(OR)4-n(ここでRは炭素数1〜4のアルキル基、nは0〜3の整数。なお、Rは同一でも異なっていてもよい。)で示されるアルコキシチタン等が例示される。
ガラス微粒子を堆積、成長させる基材としては、石英ガラス製の種棒(例えば特公昭63−24937号公報記載の種棒)を使用できる。また棒状に限らず板状の基材を使用してもよい。
本発明の方法により製造される多孔質石英ガラス母材を真空中または不活性ガス雰囲気中で加熱して透明ガラス化することによって石英ガラス母材を得ることができる。ここで、透明ガラス化するための加熱条件は、多孔質石英ガラス母材の組成に応じて適宜選択すればよい。透明ガラス化した後、または、透明ガラス化の際に公知の手順でガラス母材を、必要に応じて所望の形状に成型する。また、透明ガラス化後(ガラス母材を所望の形状に成型する場合は成型後)のガラス母材に対し、必要に応じてアニール処理を施す。
[実施例1]
本実施例では、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造する際に以下の反応炉を使用した。
基材材料が低炭素ニッケル(LC−Ni、引っ張り強度350N/mm2)の反応炉の内壁表面に、平均粒径0.2μmである石英ガラス材料の微粒子をエチルアルコールに1000g/lの割合で懸濁させた懸濁液を単位面積当たりの塗布量が0.03g/cm2となるように塗布した。
ここで、石英ガラス材料の組成(酸化物基準の質量%表示)は以下の通りである。
SiO2:91%
Na2O:4%
Al23:1%
ZrO2:2%
2O:1%
アルカリ金属、アルカリ土類金属の合計含有量:5%
15℃30分で塗布面を乾燥させて、懸濁液中のエチルアルコールを揮発させて除去した後、反応炉を大気雰囲気下、500℃で熱処理することによって、反応炉の内壁表面に石英ガラス材料からなるコーティングを隙間なく形成させた。コーティングの厚さは2mmであった。
反応炉が使用時に経験し得る温度域(200〜700℃)において、反応炉の基材材料をなす低炭素ニッケルと、コーティングをなす石英ガラス材料と、の線熱膨張係数の差は最大で0.8%であった。
この反応炉を使用し、ガラス形成原料としてSiO2前駆体を用いて、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造した。製造された多孔質石英ガラス母材を分析したところ、金属不純物の存在は認められなかった。
また、製造時における多孔質石英ガラス母材の落下を想定して、質量20kgの多孔質石英ガラスを、製造時における母材位置に相当する高さから反応炉底面に落下させたが、反応炉は破損しなかった。
[実施例2]
基材材料がインコネル(引っ張り強度600N/mm2)の反応炉を使用し、実施例1と同様の手順を反応炉の内壁表面に石英ガラス材料からなるコーティングを隙間なく形成させた。
反応炉が使用時に経験し得る温度域(200〜700℃)において、反応炉の基材材料をなすインコネルと、コーティングをなす石英ガラス材料と、の線熱膨張係数の差は最大で0.8%であった。
この反応炉を使用し、ガラス形成原料としてSiO2前駆体を用いて、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造した。製造された多孔質石英ガラス母材を分析したところ、金属不純物の存在は認められなかった。
また、製造時における多孔質石英ガラス母材の落下を想定して、質量20kgの多孔質石英ガラスを、製造時における母材位置に相当する高さから反応炉底面に落下させたが、反応炉は破損しなかった。
[比較例1]
基材材料が石英ガラス(引っ張り強度49N/mm2)の反応炉を使用し、反応炉の内壁表面にはコーティングは形成しなかった。
この反応炉を使用し、ガラス形成原料としてSiO2前駆体を用いて、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造した。製造された多孔質石英ガラス母材を分析したところ、金属不純物の存在は認められなかった。
また、製造時における多孔質石英ガラス母材の落下を想定して、質量20kgの多孔質石英ガラスを、製造時における母材位置に相当する高さから反応炉底面に落下させたところ反応炉が破損した。
[比較例2]
懸濁液に含まれる石英ガラス材料の微粒子が下記組成(酸化物基準の質量%表示)である点を除いて実施例1と同様の手順で反応炉の内壁表面にコーティングを形成した。
SiO2:85%
Na2O:5%
Al23:2%
ZrO2:3%
2O:5%
アルカリ金属、アルカリ土類金属の合計含有量:10%
反応炉が使用時に経験し得る温度域(200〜700℃)において、反応炉の基材材料をなす低炭素ニッケルと、コーティングをなす石英ガラス材料と、の線熱膨張係数の差は最大で0.8%であった。
この反応炉を使用し、ガラス形成原料としてSiO2前駆体を用いて、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造した。製造された多孔質石英ガラス母材を分析したところ、金属不純物の含有量が合計で70ppbであった。
また、製造時における多孔質石英ガラス母材の落下を想定して、質量20kgの多孔質石英ガラスを、製造時における母材位置に相当する高さから反応炉底面に落下させたが、反応炉は破損しなかった。
[比較例3]
懸濁液に含まれる石英ガラス材料の微粒子として、アルミナを主成分とし、アルカリ金属、アルカリ土類金属の合計含有量が酸化物基準の質量%表示で4%の石英ガラス材料の微粒子を使用した点を除いて実施例1と同様の手順で反応炉の内壁表面にコーティングを形成した。
反応炉が使用時に経験し得る温度域(200〜700℃)において、反応炉の基材材料をなす低炭素ニッケルと、コーティングをなす石英ガラス材料と、の線熱膨張係数の差は最大で40%であった。
この反応炉を使用し、ガラス形成原料としてSiO2前駆体を用いて、VAD法により多孔質石英ガラス母材を製造したところ、基材材料をなす低炭素ニッケルと、コーティングをなす石英ガラス材料と、の線熱膨張係数の差が大きいため、反応炉内壁のコーティングの一部が剥離していた。製造された多孔質石英ガラス母材を分析したところ、金属不純物の含有量が合計で20ppbであった。
また、製造時における多孔質石英ガラス母材の落下を想定して、質量20kgの多孔質石英ガラスを、製造時における母材位置に相当する高さから反応炉底面に落下させたが、反応炉は破損しなかった。

Claims (5)

  1. 反応炉内の酸水素火炎中でガラス形成原料を加水分解して得られるガラス微粒子を、ターゲット上に堆積、成長させて多孔質石英ガラス母材を得る多孔質石英ガラス母材の製造方法であって、
    前記反応炉の基材材料が、引っ張り強度が300N/mm2以上の金属材料であり、
    前記反応炉の内壁をなす基材表面に、SiO2含有量が90質量%以上で、かつ、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の含有量が合計で9質量%以下の石英ガラス材料からなるコーティングが形成されており、
    前記基材材料をなす金属材料と、前記コーティングをなす石英ガラス材料と、の熱膨張係数の差が30%未満であることを特徴とする多孔質石英ガラス母材の製造方法。
  2. 前記反応炉の基材材料が、ニッケル、インコネルおよびハステロイからなる群から選択されるいずれか1つである請求項1に記載の多孔質石英ガラス母材の製造方法。
  3. 前記石英ガラス材料からなるコーティングが、石英ガラス材料の微粒子を溶媒に分散させた懸濁液を、前記反応炉の内壁をなす基材表面に塗布し乾燥させた後、前記反応炉を200〜700℃の温度で熱処理することによって形成される請求項1または2に記載の多孔質石英ガラス母材の製造方法。
  4. 前記石英ガラス材料からなるコーティングが、前記反応炉の内壁をなす基材表面に石英ガラス材料を溶射することによって形成される請求項1または2に記載の多孔質石英ガラス母材の製造方法。
  5. 前記石英ガラス材料からなるコーティングが、前記反応炉の内壁をなす基材表面に石英ガラス材料をスパッタリングすることによって形成される請求項1または2に記載の多孔質石英ガラス母材の製造方法。
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