JP2011167960A - 液体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】廃液容器内に設けられた廃液吸収材による液体の吸収速度を増加させる技術を提
供する。
【解決手段】廃液容器内に廃液吸収材を敷設しておき、この廃液吸収材の中で液体が流入
する部分を温めて温度を上昇させる。こうすれば、液体が浸透する廃液吸収材内の毛管の
一端と他端との間に温度差を生じさせることができ、熱毛管現象によって高温側から低温
側へと液体が移動しやすくなるので、廃液吸収材による液体の吸収速度を増加させること
ができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、噴射ヘッドから噴射対象に向けて液体を噴射する技術に関する。
液体噴射装置の一つである、いわゆるインクジェットプリンターでは、噴射ヘッドに設
けられた微細な噴射ノズルから、正確な分量のインクを紙などの噴射対象の正確な位置に
噴射することによって、高画質の画像を印刷することが可能である。また、この技術を利
用して、インクの代わりに各種の液体(例えば、機能材料の微粒子が分散された液体)を
基板に向けて噴射すれば、電極や、センサ、バイオチップなどを製造することも可能であ
る。
このような技術では、噴射ヘッド内に供給されたインクなどの液体は、噴射ノズルから
時間とともに水分が蒸発、あるいは成分が揮発して粘度が増加する。そして、こうした粘
度の増加により、正確な分量の液体を噴射することができなくなってしまう。そこで、液
体の増粘が進んだ場合には、キャップを噴射ヘッドに当接させて噴射ノズルの周囲に閉空
間を形成した状態で、キャップ内を吸引ポンプで負圧にすることにより、噴射ヘッド内の
増粘した液体を噴射ノズルから吸い出して排出する動作(いわゆるクリーニング動作)が
行われる。
クリーニング動作によって噴射ノズルから吸い出された液体は、廃液通路を介して廃液
容器へと送られ蓄えられる。この廃液容器の内部には、液体を吸収する不織布などの廃液
吸収材を敷設しておくことが提案されており(例えば、特許文献1)、廃液容器に流入し
た液体を廃液吸収材に吸収させることで、廃液容器から外に液体が漏れ出すことを防止す
ることが可能となっている。
特開平10−291328号公報
しかし、内部に廃液吸収材が敷設された廃液容器では、短時間に大量の液体が流入する
と、廃液吸収材が液体を吸収しきれないことがあるという問題があった。例えば、前述し
たクリーニングに要する時間を短縮する観点からは、吸引ポンプの吸引力を高めることが
望ましく、それに伴って廃液容器には、クリーニングによって排出された液体が短時間の
うちに大量に流入することになる。そして、廃液吸収材には、クリーニングで排出される
量の液体を吸収する(蓄える)だけの十分な容量が設計上は確保されているものの、この
ように短時間に大量の液体が廃液容器に流入すると、廃液吸収材による液体の吸収が液体
の流入に間に合わず、廃液容器から液体が漏れてしまうおそれがある。
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、
廃液容器内に敷設された廃液吸収材による液体の吸収速度を増加させることが可能な技術
の提供を目的とする。
上述した課題の少なくとも一部を解決するために、本発明の液体噴射装置は次の構成を
採用した。すなわち、噴射ヘッドから噴射対象に向けて液体を噴射する液体噴射装置であ
って、前記噴射ヘッドから前記噴射対象に向けて噴射されることなく排出された液体が流
入する廃液容器と、前記廃液容器内に設けられ、該廃液容器に流入した液体を吸収する廃
液吸収材と、前記廃液吸収材の中で前記液体が流入する部分の温度を上昇させる昇温手段
とを備えることを要旨とする。
このような本発明の液体噴射装置においては、噴射ヘッドから噴射対象に向けて噴射す
ることができなかった液体が排出される廃液容器を搭載している。この廃液容器内には廃
液吸収材が設けられており、廃液容器に流入した液体を廃液吸収材に吸収させることによ
って廃液処理が行われる。そして、本発明の液体噴射装置では、廃液吸収材の中で液体が
流入する部分を昇温させている。
このようにすれば、いわゆる熱毛管現象を利用して、廃液吸収材による液体の吸収を促
進することができる。ここで、熱毛管現象とは、毛管の両端に温度差がある場合に、毛管
の両端で表面張力が異なることによって、毛管内の液体が高温側から低温側へと移動する
現象である。また、廃液吸収材は、液体を通す毛管が無数に集まったものと見ることがで
きることから、廃液吸収材の中で液体が流入する部分の温度を上昇させれば、液体が浸透
する廃液吸収材内の毛管の一端と他端との間に温度差を生じさせることができる。その結
果、熱毛管現象によって高温側から低温側へと液体が移動しやすくなるので、廃液吸収材
による液体の吸収速度を増加させることができる。従って、短時間に大量の液体が廃液容
器に排出されても、廃液吸収材に液体を速やかに吸収することができるので、廃液容器の
外に液体が漏れることを防止することが可能となる。
また、廃液吸収材の中で液体が流入する部分の温度を上昇させることから、次の観点か
らも、廃液容器の外に液体が漏れることを防止することができる。すなわち、液体の流入
する部分の温度を高くすれば、流入する液体からの水分の蒸発や、成分の揮発も促進され
るので、廃液吸収材に吸収しなければならない液体の総量を減少させることができ、その
結果、廃液容器の外に液体が漏れるリスクはより低くなる。
こうした本発明の液体噴射装置においては、次のようにしてもよい。先ず、駆動モータ
ーによって駆動する吸引ポンプを用いて、噴射ヘッドから液体を吸引し廃液容器に排出す
る。そして、駆動モーターの駆動で発生する熱を廃液吸収材まで伝えることにより、液体
が流入する部分の温度を上昇させる。
このように、噴射ヘッドから液体を吸引する際に駆動させる吸引ポンプの駆動モーター
の廃熱を利用すれば、廃液吸収材の一部の温度を上昇させるために、ヒーターといった専
用の熱源を新たに設ける必要がないので、廃液吸収材による液体の吸収速度を簡便に増加
させることができる。
また、上述した本発明の液体噴射装置においては、噴射ヘッドから液体を吸引する動作
の終了後から所定時間が経過するまでの間は、駆動モーターの駆動を継続させることとし
てもよい。尚、噴射ヘッドから液体を吸引する動作を終了した後は、吸引ポンプで負圧を
発生させる必要はないので、駆動モーターの駆動を吸引ポンプに伝えることなく(吸引ポ
ンプによる吸引は停止した状態で)、駆動モーターの駆動だけを継続すればよい。
このような構成によれば、噴射ヘッドからの液体の吸引が終了して廃液容器への液体の
流入が停止した後も、廃液吸収材の中の液体が流入する部分の温度は高く維持される。そ
のため、熱毛管現象による高温側から低温側への廃液吸収材内の液体の移動(浸透)が促
進され、液体を廃液吸収材内により広く分散させて保持することができる。これにより、
廃液吸収材の中で液体が流入する部分に液体が溜まったままになることがなく、次回に液
体が廃液容器に排出される際にも、廃液吸収材に液体を速やかに吸収することができる。
インクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大まかな構成を示した説明図である。 本実施例のインクジェットプリンターに搭載されたメンテナンス機構の構成を示した説明図である。 本実施例のインクジェットプリンターがクリーニングを行う際に実行する処理(クリーニング処理)の流れを示したフローチャートである。 クリーニングによって噴射ヘッドの噴射ノズルからインクが吸引され、その吸引されたインクが廃液容器に流入する様子を示した説明図である。
以下では、上述した本願発明の内容を明確にするために、次のような順序に従って実施
例を説明する。
A.装置構成:
A−1.液体噴射装置の構成:
A−2.メンテナンス機構の構成:
B.本実施例のクリーニング動作:
A.装置構成 :
A−1.液体噴射装置の構成 :
図1は、いわゆるインクジェットプリンターを例に用いて本実施例の液体噴射装置の大
まかな構成を示した説明図である。図示されているように、インクジェットプリンター1
0は、主走査方向に往復動しながら印刷用紙などの印刷媒体2上にインクドットを形成す
るキャリッジ20と、キャリッジ20を往復動させる駆動機構30と、印刷媒体2の紙送
りを行うためのプラテンローラー40と、正常に印刷可能なようにメンテナンスを行うメ
ンテナンス機構100などから構成されている。キャリッジ20には、インクを収容した
インクカートリッジ26や、インクカートリッジ26が装着されるキャリッジケース22
、キャリッジケース22の底面側(印刷媒体2に向いた側)に搭載された噴射ヘッド24
などが設けられている。この噴射ヘッド24にはインクを噴射する複数の噴射ノズルが形
成されており、インクカートリッジ26内のインクを噴射ヘッド24に導いて、噴射ノズ
ルから印刷媒体2に正確な分量だけインクを噴射することによって、画像が印刷されるよ
うになっている。
キャリッジ20を往復動させる駆動機構30は、主走査方向に延設されたガイドレール
38と、内側に複数の歯形が形成されたタイミングベルト32と、タイミングベルト32
の歯形と噛み合う駆動プーリ34と、駆動プーリ34を駆動するためのステップモーター
36などから構成されている。タイミングベルト32の一部はキャリッジケース22に固
定されており、タイミングベルト32を駆動することによって、ガイドレール38に沿っ
てキャリッジケース22を移動させることができる。また、タイミングベルト32と駆動
プーリ34とは歯形によって互いに噛み合っているので、ステップモーター36で駆動プ
ーリ34を駆動すると、駆動量に応じて精度良くキャリッジケース22を移動させること
が可能となっている。
印刷媒体2の紙送りを行うプラテンローラー40は、図示しない駆動モーターやギア機
構によって駆動されて、印刷媒体2を副走査方向に所定量ずつ紙送りすることが可能であ
る。
また、メンテナンス機構100は、印刷領域外のホームポジションと呼ばれる領域に設
けられており、噴射ヘッド24の底面側で噴射ノズルが形成されている面(ノズル面)を
払拭するワイパーブレード110や、噴射ヘッド24のノズル面に押しつけられて噴射ノ
ズルの周囲に閉空間を形成するキャップユニット120、キャップユニット120の下方
の位置に設けられた吸引ポンプ150、更に吸引ポンプ150の下方に設けられた廃液容
器170などから構成されている。以下では、メンテナンス機構100の詳細な構成につ
いて説明する。
A−2.メンテナンス機構の構成 :
図2は、本実施例のインクジェットプリンター10に搭載されたメンテナンス機構10
0の構成を示した説明図である。前述したように、メンテナンス機構100は、ワイパー
ブレード110、キャップユニット120、吸引ポンプ150、廃液容器170などから
構成されているが、ここでは、キャップユニット120、吸引ポンプ150、および廃液
容器170について詳しく説明することとし、図2では、ワイパーブレード110につい
ては、図示が省略されている。
図2に示されているように、キャップユニット120は、略矩形形状をしたキャッププ
レート124の上面側(噴射ヘッド24と向き合う側)に、ゴムなどの弾性材料を用いて
凹状に形成されたキャップ122が設けられて構成されている。このキャップユニット1
20は、図示しないアクチュエーターによって上下動させることが可能となっている。印
刷を行っていないときには、キャリッジ20をホームポジションまで移動させた後、キャ
ップユニット120を上昇させて、キャップ122を噴射ヘッド24のノズル面に押し付
けることによって、噴射ノズルの周囲に閉空間を形成することができる。尚、本明細書中
では、キャップ122によって噴射ノズルの周囲に閉空間を形成することを「キャッピン
グ」と呼ぶことにする。こうしてキャッピングしておくことによって、噴射ノズルからイ
ンクの水分が蒸発、あるいは成分が揮発することを防ぐことが可能となる。
また、凹状に形成されたキャップ122の底面には、図示しない吸引口が設けられてお
り、この吸引口は、弾性材料で形成されたチューブ140によって、吸引ポンプ150と
接続されている。
本実施例の吸引ポンプ150は、いわゆるチューブポンプであり、チューブ140の一
部を収容するハウジング152と、チューブポンプを駆動するモーター154とによって
構成されている。ハウジング152の内部には、チューブ140を押圧して閉塞させるロ
ーラーが取り付けられた回転円板(図示せず)が設けられており、この回転円板は、モー
ター154に接続されている。モーター154の駆動によって回転円板が回転し、それに
伴ってローラーが移動すると、チューブ140の閉塞箇所も移動していくので、チューブ
140内の流体(インクまたは空気)が下流側に押し出される。また、ローラーが通過し
た後は、チューブ140の復元力によって上流側の流体が吸い込まれることから、負力が
発生する。
前述したように、インクジェットプリンター10が印刷を行っていない間は、キャップ
122を噴射ヘッド24のノズル面に押し付けてキャッピングしているものの、噴射ヘッ
ド24内では少しずつインクの水分や揮発成分が減少して増粘が進んでいくので、印刷を
行わないまま長期間が経過すると、適切にインクを噴射することができなくなってしまう
。このような場合には、キャップ122を噴射ヘッド24のノズル面に押し付けた状態で
吸引ポンプ150を作動させて、キャップ122の内側(噴射ノズルの周辺の閉空間)を
負圧にすることにより、噴射ヘッド24内の増粘したインクを噴射ノズルから吸い出す動
作(いわゆるクリーニング)を行う。そして、クリーニングによって噴射ノズルから吸引
されたインクは、吸引ポンプ150の下方に設けられた廃液容器170に流入するように
なっている。尚、本実施例のクリーニング動作の詳細については、後述する。
本実施例のインクジェットプリンター10では、廃液容器170がプラスチック材料に
よって直方体状に形成されており、上面が開放されている。この廃液容器170の内部に
は、不織布などで形成された廃液吸収材172が敷設されており、廃液容器170に流入
したインクを廃液吸収材172に吸収して保持するようになっている。こうして廃液容器
170内の廃液吸収材172に吸収されたインクは、その後、水分が蒸発、あるいは成分
が揮発して徐々に減少する。
また、図2に示されているように、本実施例の廃液容器170は、銅パイプで形成され
た熱伝導管160によって、吸引ポンプ150のモーター154と接続されており、詳し
くは後述するが、モーター154の駆動によって発生する熱を、廃液容器170の内部に
敷設された廃液吸収材172まで熱伝導管160を介して伝えるようになっている。尚、
熱伝導管160の素材は、銅パイプに限られるわけではなく、熱を効率的に伝えられるも
のであればよい。
加えて、前述したクリーニングを行うと、噴射ノズルの周囲には吸い出されたインクが
付着した状態となっており、そのまま放置しておけば、噴射ノズルが目詰まりするなどの
不具合の原因になる。そこで、クリーニングの終了後には、噴射ノズルの周囲に付着して
いるインクを、ワイパーブレード110(図1参照)を用いて拭き取る動作(ワイピング
)を行うようになっている。
本実施例のインクジェットプリンター10では、以上のようなメンテナンス機構100
によって各種のメンテナンスを行うことにより、正常に印刷可能な状態を維持している。
以下では、本実施例のインクジェットプリンター10で行われるクリーニング動作につい
て詳しく説明する。
B.本実施例のクリーニング動作 :
図3は、本実施例のインクジェットプリンター10がクリーニングを行う際に実行する
処理(クリーニング処理)の流れを示したフローチャートである。この処理は、キャリッ
ジ20をホームポジションまで移動させ、キャップ122を噴射ヘッド24のノズル面に
押し付けてキャッピングした状態で開始される。
クリーニング処理を開始すると、先ず初めに、大気開放弁を開いた状態で吸引ポンプ1
50のモーター154を作動させる(ステップS100)。本実施例のキャップ122に
は、図示しない大気開放弁が接続されている。この大気開放弁を開いた状態では、キャッ
プ122内に大気が流入可能なので、吸引ポンプ150のモーター154を作動させても
、キャップ122内が負圧になることはない。
吸引ポンプ150のモーター154を作動させると、次いで、モーター154の作動か
らの経過時間が所定の予熱時間に達したか否かを判断する(ステップS102)。この予
熱時間は、作動したモーター154が発する熱によって、モーター154の温度が所定温
度に達するまでの時間を基準に予め定められている。そして、予熱時間が未だ経過してい
ない場合は(ステップS102:no)、予熱時間が経過するまでそのまま待機する。尚
、前述したように、吸引ポンプ150のモーター154は、熱伝導管160によって廃液
容器170と接続されており、モーター154の熱が熱伝導管160を通って、廃液容器
170の内部の廃液吸収材172に伝わるようになっている。
一方、モーター154の作動から予熱時間が経過した場合は(ステップS102:ye
s)、大気開放弁を閉じてキャップ122内を負圧にすることにより、噴射ノズルからの
インクの吸引を開始する(ステップS104)。前述したように、噴射ノズルから吸引さ
れたインクは、廃液容器170に流入するようになっている。尚、クリーニングによって
噴射ヘッド24の噴射ノズルからインクが吸引され、その吸引されたインクが廃液容器1
70に流入する様子については、後ほど別図を用いて詳しく説明する。
こうして噴射ノズルからのインクの吸引を開始したら、所定の吸引時間が経過したか否
かを判断する(ステップS106)。そして、吸引時間が未だ経過していない場合は(ス
テップS106:no)、噴射ヘッド24内の増粘したインクを吸引しきれていないと判
断されるので、吸引時間が経過するまでそのまま待機する。
これに対して、吸引時間が経過した場合は(ステップS106:yes)、大気開放弁
を開いてキャップ122内に大気を導入することによりキャップ122内の負圧を解除し
、噴射ノズルからのインクの吸引を終了する(ステップS108)。尚、大気開放弁を開
いた後も、吸引ポンプ150は駆動させたままなので、噴射ノズルから吸い出されてキャ
ップ122内に溜まっていたインクは、キャップ122の底面に設けられた吸引口からチ
ューブ140へと吸い込まれ、廃液容器170へと排出される。
キャップ122内の負圧を解除すると、続いて、吸引ポンプ150のモーター154を
駆動させたまま、キャップ122を下降させる(ステップS110)。前述したように、
クリーニングの終了後には、噴射ノズルの周囲のインクを拭き取る動作(ワイピング)を
行うようになっている。本実施例のインクジェットプリンター10では、キャップ122
を下降させると同時に、ワイパーブレード110(図1参照)を上昇させ、キャリッジ2
0をホームポジションからワイパーブレード110に向けて(すなわち印刷領域側に向け
て)移動させることにより、噴射ヘッド24のノズル面をワイパーブレード110で払拭
するようになっている。
また、図3のクリーニング処理では、キャップ122を下降させたら、所定の加温時間
が経過したか否かを判断する(ステップS112)。本実施例のインクジェットプリンタ
ー10では、キャップ122を下降させた後も、所定の加温時間が経過するまでは、吸引
ポンプ150のモーター154を駆動させたままにしておき、モーター154が発する熱
を、熱伝導管160を通じて廃液容器170の内部の廃液吸収材172に供給するように
なっている。そして、加温時間が未だ経過していない場合は(ステップS112:no)
、加温時間が経過するまでそのまま待機する。一方、加温時間が経過した場合は(ステッ
プS112:yes)、吸引ポンプ150のモーター154を停止させて(ステップS1
14)、図3のクリーニング処理を終了する。
本実施例のインクジェットプリンター10では、以上のようなクリーニング処理を実行
して、噴射ヘッド24内で増粘したインクを噴射ノズルから吸引することにより、噴射ヘ
ッド24内に新しいインクを供給するようになっている。以下では、クリーニング処理を
実行することによって、噴射ヘッド24の噴射ノズルからインクが吸引され、その吸引さ
れたインクが廃液容器170に流入する様子について説明する。
図4は、クリーニングによって噴射ヘッド24の噴射ノズルからインクが吸引され、そ
の吸引されたインクが廃液容器170に流入する様子を示した説明図である。先ず、図4
(a)に示されているように、大気開放弁を閉じることでキャップ122内が閉空間にな
ると、キャップ122と接続された吸引ポンプ150で発生する負圧によって、噴射ヘッ
ド24内のインクが噴射ノズルからキャップ122内へと吸い出される。こうしてキャッ
プ122内に吸い出されたインクは、キャップ122の底面に設けられた吸引口からチュ
ーブ140へと吸い込まれ、吸引ポンプ150を介して、廃液容器170へと排出される
。また、廃液容器170に排出されたインクは、廃液容器170の内部に敷設された廃液
吸収材172に吸収される。
ここで、前述したように、本実施例の廃液容器170は、銅パイプで形成された熱伝導
管160によって吸引ポンプ150のモーター154と接続されており、モーター154
の駆動により発生する熱は、熱伝導管160を伝わって廃液容器170へと供給される。
この熱伝導管160の廃液容器170側の端部は、廃液容器170の内部に敷設された廃
液吸収材172の一端に差し込まれた状態となっており、熱伝導管160を伝わったモー
ター154の熱によって、廃液吸収材172の一端(熱伝導管160が差し込まれた部分
)が温められる。本実施例のインクジェットプリンター10では、廃液吸収材172の中
でインクが流入する部分が、モーター154の熱で温められるようになっている。尚、図
4中の波線矢印は、熱が伝わる様子を表している。
そして、図4(b)に示すように、モーター154の熱は、熱伝導管160の端部から
廃液吸収材172に伝わることから、例えば、廃液吸収材172内の点Aにおける温度は
、点Aよりも熱伝導管160から離れた位置にある点Bに比べて高く、点Aと点Bとの間
には温度差が生じる。
本実施例のインクジェットプリンター10では、このように廃液吸収材172の一部を
温めて廃液吸収材172内に温度差を生じさせることにより、いわゆる熱毛管現象を利用
して、廃液吸収材172によるインクの吸収を促進することが可能となっている。以下で
は、この点について詳しく説明する。
先ず、熱毛管現象とは、毛管の両端に温度差がある場合に、その温度差により毛管の両
端で表面張力の差が生じて、毛管内の液体が高温側から低温側に移動する現象である。ま
た、インクなどの液体を吸収可能な廃液吸収材172は、液体を通す無数の毛管が集まっ
たものと捉えることができる。例えば、廃液吸収材172が不織布である場合は、繊維間
で形成される毛管が連続しており、この毛管にインクが浸透する。そのため、廃液吸収材
172の一部の温度を上昇させると、廃液吸収材172内の毛管の一端と他端との間に温
度差が生じ、廃液吸収材172に吸収されたインクは熱毛管現象によって高温側から低温
側(図4(b)では、破線矢印で示した方向)へと移動しやすくなることから、廃液吸収
材172によるインクの吸収速度を増加させることができる。結果として、クリーニング
に伴って短時間に大量のインクが廃液容器170に流入しても、廃液容器170内にある
廃液吸収材172にインクが速やかに吸収されるので、廃液容器170の外にインクが漏
れることを防止することができる。
また、本実施例のインクジェットプリンター10では、廃液吸収材172の一部の温度
を上昇させるのに、クリーニングの実行に伴って駆動させる吸引ポンプ150のモーター
154が発する廃熱を利用している。そのため、廃液吸収材172の一部を温めるための
ヒーターといった新たな熱源を設ける必要がなく、廃液吸収材172によるインクの吸収
速度の増加を簡便に実現することができる。
加えて、前述したように、本実施例のインクジェットプリンター10では、キャップ1
22の大気開放弁を開いた状態で吸引ポンプ150のモーター154を駆動させる予熱時
間が設けられている。そのため、大気開放弁を閉じて噴射ノズルからのインクの吸引を開
始する際には、モーター154が発する熱によって廃液容器170内の廃液吸収材172
の一部が既に温められた状態となっている。このように噴射ノズルからのインクの吸引に
先立って、廃液吸収材172内に温度差を生じさせていることから、噴射ノズルから吸引
されたインクが廃液容器170に流入し始める時点において、廃液吸収材172にインク
をより速やかに吸収することができる。
さらに、本実施例のインクジェットプリンター10では、噴射ノズルからのインクの吸
引を終了してキャップ122を下降させてから所定の加温時間が経過するまでの間は、吸
引ポンプ150のモーター154の駆動を継続している。これにより、廃液容器170へ
のインクの流入が停止した後も、廃液容器170内の廃液吸収材172の一部が加温され
、熱毛管現象によって廃液吸収材172の高温側から低温側へのインクの移動(浸透)が
促進されるので、インクを廃液吸収材172内により広く分散させて保持することができ
る。結果として、廃液吸収材172の中でインクが流入する部分にインクが溜まったまま
になることがないので、次回に廃液容器170にインクが流入する際に、廃液吸収材17
2にインクをより速やかに吸収することが可能となる。
また、本実施例のインクジェットプリンター10では、廃液吸収材172の中のインク
が流入する部分を、モーター154の廃熱で温めるようになっている。廃液吸収材172
の一部を加熱すると、加熱部分から離れるほど温度は低く(室温に近く)なる傾向にある
。そして、このような温度勾配の最も高い位置(加熱部分)にインクを流入させれば、加
熱部分から離れた位置にインクを流入させる場合に比べて、熱毛管現象を利用して高温側
から低温側へと廃液吸収材172内にインクを広く拡散(浸透)させることができる。そ
のため、廃液吸収材172によるインクの吸引を促進する上で効率的である。加えて、廃
液吸収材172の加熱部分(最も高温の部分)にインクを流入させることによって、イン
クの水分の蒸発、あるいは成分の揮発も促進されることから、廃液吸収材172に吸収し
なければならないインク量が減少するという効果も得られる。結果として、廃液容器17
0の外にインクが漏れるリスクを低減することができる。
以上、本発明の液体噴射装置について実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態
に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施すること
が可能である。
例えば、上述した実施例では、吸引ポンプ150のモーター154の発する熱を、熱伝
導管160で伝えることにより、廃液吸収材172の一部の温度を上昇させるようになっ
ていた。しかし、これに限られるわけではなく、熱源となる専用のヒーターなどを設けて
おくこととして、このヒーターを用いて廃液吸収材172の一部を温めるようにしてもよ
い。また、吸引ポンプ150のモーター154を、廃液容器170の側部に配置したり、
廃液容器170の側部に設けた凹部に潜り込ませるように配置したりすることにより、廃
液吸収材172を温めても良い。なお、従来でも廃液容器の近傍に吸引ポンプのモーター
を配置することはあるかもしれないが、インクを吸引したり排出したりする間だけモータ
ーを駆動しても、廃液容器内の廃液吸収材を温めるほどの熱を発することはない。
また、前述した実施例では、モーター154が吸引ポンプ150に一体に構成されてお
り、モーター154の駆動中は吸引ポンプ150で負圧が発生するようになっていた。し
かし、モーター154が吸引ポンプ150と一体ではなく、モーター154の駆動を吸引
ポンプ150に伝えて負圧を発生させる場合と、モーター154の駆動を吸引ポンプ15
0に伝えずに負圧を発生させない場合とを切換可能に構成しておいてもよい。この場合は
、モーター154が駆動していても吸引ポンプ150で負圧が発生しないようにすること
ができるので、図3のステップS100では、吸引ポンプ150で負圧を発生させること
なくモーター154だけを駆動させるとともに、ステップS104では、モーター154
の駆動によって吸引ポンプ150で負圧を発生させるようにすればよい。また、噴射ノズ
ルからのインクの吸引を終了してキャップ122を下降させた(ステップS110)後は
、吸引ポンプ150で負圧を発生させる必要はないので、モーター154の駆動だけを継
続すればよい。
10…インクジェットプリンター、 20…キャリッジ、
22…キャリッジケース、 24…噴射ヘッド、 30…駆動機構、
40…プラテンローラー、 100…メンテナンス機構、
110…ワイパーブレード、 120…キャップユニット、
122…キャップ、 124…キャッププレート、 140…チューブ、
150…吸引ポンプ、 154…モーター、 160…熱伝導管、
170…廃液容器、 172…廃液吸収材

Claims (3)

  1. 噴射ヘッドから噴射対象に向けて液体を噴射する液体噴射装置であって、
    前記噴射ヘッドから前記噴射対象に向けて噴射されることなく排出された液体が流入す
    る廃液容器と、
    前記廃液容器内に設けられ、該廃液容器に流入した液体を吸収する廃液吸収材と、
    前記廃液吸収材の中で前記液体が流入する部分の温度を上昇させる昇温手段と
    を備える液体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の液体噴射装置であって、
    前記噴射ヘッドから前記液体を吸引して前記廃液容器に排出する吸引ポンプと、
    前記吸引ポンプを駆動する駆動モーターと
    を備え、
    前記昇温手段は、前記駆動モーターの駆動により発する熱を、前記廃液吸収材に伝える
    ことにより、前記液体が流入する部分の温度を上昇させる手段である液体噴射装置。
  3. 請求項2に記載の液体噴射装置であって、
    前記噴射ヘッドから前記液体を吸引する動作の終了後から所定時間が経過するまでの間
    は、前記駆動モーターの駆動を継続させる駆動継続手段を備える液体噴射装置。
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