JP2011162157A - シートベルト用リトラクタ - Google Patents

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Abstract

【課題】軽衝突等において破断部を有するクラッチハウジングが破断した場合に、ユーザー等に破損していることを認知させて、リトラクタの交換を促すことができるシートベルト用リトラクタを提供する。
【解決手段】クラッチハウジング50は、所定の回転トルクが作用したときに破断する薄肉破断部54を備え、クラッチハウジング50とギヤホイール57の互いに対向する軸方向側面には、噛み合い可能な歯面52b,61aがそれぞれ形成されている。スピンドル12の回転と共に回転し、クラッチハウジング50を軸方向に付勢するスプリング45が設けられる。スプリング45は、クラッチハウジング50の薄肉破断部54が破断したときに、互いの歯面52b,61aを噛み合わせるようにクラッチハウジング50をギヤホイール57に向けて移動させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、シートベルト用リトラクタに関し、特に、電動アクチュエータと火薬式のプリテンショナーとを備えたシートベルト用リトラクタに関する。
従来のシートベルト用リトラクタでは、車両の急減速状態をセンサで検出し、モータによってスピンドルを巻取方向に回転させる。そして、衝突の可能性がある場合には、シートベルト(ウェビング)を一定量巻き取って乗員を軽拘束し、また、衝突時には、火薬式のプリテンショナーを作動させて、シートベルトを強制的に巻き取り、乗員を確実に保持する。
ここで、電動アクチュエータからの動力をスピンドルに伝達する動力伝達機構において、ロードリミッター又はエネルギー吸収機構が作動したとき、モータからスピンドルへの動力伝達を遮断して、モータがロードリミッター又はエネルギー吸収機構の特性に影響を与えない構造が種々考案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のリトラクタでは、過負荷が作用したときに破断する破断部をクラッチハウジングに備え、プリテンショナーが作動した後、エネルギー吸収機構が作動する前に該破断部が破断して、モータからスピンドルへの動力伝達を遮断している。
特開2009−525908号公報
ところで、通常の衝突において、ロードリミッター荷重を安定させるためにモータからスピンドルへの動力伝達経路を遮断する必要があり、特許文献1に記載のようなクラッチハウジングの破断部を利用することができる。この場合、ロードリミッター荷重への影響を少なくするために破断荷重は通常1kN程度に設定されるため、プリテンショナーが作用しない軽衝突時に乗員側からの動力伝達が過負荷となった場合にも破断することがある。
上記軽衝突でクラッチハウジングの破断部が破断した場合、モータによる巻き取り駆動ができなくなることからクラッチハウジングの交換が必要となるが、通常の巻き取りや引き出しではユーザー等が破損していると認知し難いため、別途この破損検知用のセンサーを設ける等、別の検知システムが必要とされる場合がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、軽衝突等において破断部を有するクラッチハウジングが破断した場合に、前述のような破損検知システムがなくてもユーザー等に容易に破損していることを認知させて、リトラクタの交換を促すことができるシートベルト用リトラクタを提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の構成によって達成される。
(1) シートベルトを巻き取るスピンドルと、
該スピンドルを回転する動力を発生する電動アクチュエータと、
前記スピンドルと共に回転し、被係合部を有する第1回転部材、該第1回転部材の被係合部と係合可能な係合部を有する係合部材、及び、前記電動アクチュエータの回転に応じて回転し、該係合部材を移動可能に保持する第2回転部材、を備え、前記第1回転部材の被係合部と前記係合部材の係合部の係脱によって、前記電動アクチュエータからの動力を前記スピンドルに伝達可能及び遮断可能に構成される動力伝達機構と、
を備えるシートベルト用リトラクタであって、
前記第1回転部材は、所定の回転トルクが作用したときに破断する破断部を備え、
前記第1回転部材と前記第2回転部材の互いに対向する軸方向側面には、噛み合い可能な歯面がそれぞれ形成されており、
前記スピンドルの回転と共に回転し、前記第1回転部材を軸方向に付勢する付勢部材が設けられ、該付勢部材は、前記第1回転部材の破断部が破断したときに、互いの前記歯面を噛み合わせるように前記第1回転部材を前記第2回転部材に向けて移動させることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
(2) 前記第1回転部材は、前記付勢部材と接触可能な部分を備え、
当該接触可能な部分は、前記スピンドルが巻き取り方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分を越えて前記第1回転部材に対して回転するのを許容し、前記スピンドルが引き出し方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分に引っ掛かって前記ウェビングの引き出し抵抗を増加するように形成されることを特徴とする(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(3) 前記第1回転部材は、
前記被係合部が内周面に形成されるとともに、前記歯面が軸方向側面に形成される筒部と、
前記歯面が形成される軸方向側面と反対側の該筒部の軸方向一端寄り部分で径方向内側に延びる内向き延出部と、
該内向き延出部よりさらに径方向内側で、前記破断部を介して前記内向き延出部と連結され、前記スピンドルと結合可能な結合部と、
を有し、
前記第1回転部材の破断部が破断したとき、前記付勢部材によって前記内向き延出部を介して前記筒部が前記第2回転部材に向けて移動し、前記筒部の歯面と前記第2回転部材の歯面とが噛み合うことを特徴とする(1)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(4) 前記第1の回転部材の内向き延出部は、前記付勢部材と接触可能な部分を備え、
当該接触可能な部分は、前記スピンドルが巻き取り方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分を越えて前記第1回転部材に対して回転するのを許容し、前記スピンドルが引き出し方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分に引っ掛かって前記ウェビングの引き出し抵抗を増加するように形成されることを特徴とする(3)に記載のシートベルト用リトラクタ。
(5) 前記付勢部材は、前記スピンドルと結合可能なリング部と、該リング部から径方向外側に延出し、且つ円周方向に延出する複数の弾性変形部と、を備え、
前記第1回転部材の前記接触可能な部分は、前記付勢部材の弾性変形部が接触可能な凹部であることを特徴とする(4)に記載のシートベルト用リトラクタ。
本発明のシートベルト用リトラクタによれば、第1回転部材は、所定の回転トルクが作用したときに破断する破断部を備え、第1回転部材と第2回転部材の互いに対向する軸方向側面には、噛み合い可能な歯面がそれぞれ形成されており、スピンドルの回転と共に回転し、第1回転部材を軸方向に付勢する付勢部材が設けられ、該付勢部材は、第1回転部材の破断部が破断したときに、互いの歯面を噛み合わせるように第1回転部材を第2回転部材に向けて移動させるようにしたので、軽衝突等において第1回転部材が破断した場合に、ユーザー等に破損していることを認知させて、リトラクタの交換を促すことができる。
本発明にかかるシートベルト用リトラクタを示す分解斜視図である。 電動アクチュエータ及び動力伝達機構を示す分解斜視図である。 (a)は、破断部が破断する前の動力伝達機構を示す断面図であり、(b)は、(a)のIII−III線に沿った断面図である。 クラッチハウジングを示す斜視図である。 (a)は、破断部が破断する前のクラッチハウジングの正面図であり、(b)は、(a)のクラッチハウジングとスプリングを示す背面図である。 モータが作動していないクラッチの非係合状態を説明するための図である。 モータからの動力を伝達するクラッチの係合状態を説明するための図である。 (a)は、破断部が破断した後の動力伝達機構を示す断面図であり、(b)は、(a)のVIII−VIII線に沿った断面図であり、(c)は、クラッチハウジングの正面図である。 (a)は、破断部が破断した後にベルトの巻き取りが行われた場合のクラッチハウジングとギヤホイールの関係を示す正面図であり、(b)は、(a)のクラッチハウジングとギヤホイールを外周側から見た図であり、(c)は、クラッチハウジングとスプリングの関係を示す図である。 (a)は、破断部が破断した後にベルトの引き出しが行われた場合のクラッチハウジングとギヤホイールの関係を示す正面図であり、(b)は、(a)のクラッチハウジングとギヤホイールを外周側から見た図であり、(c)は、クラッチハウジングとスプリングの関係を示す図である。
次に、本発明の一実施形態にかかるシートベルト用リトラクタについて図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のシートベルト用リトラクタ10は、シートベルト(図示せず)を巻き取るスピンドル12と、スピンドル12をシートベルトの巻き取り方向へ付勢する巻き取りバネ装置13と、加速度センサ27によって検出される加速度に応じてシートベルトの引出動作をロックするロック機構14と、スピンドル12を回転させる動力を発生する電動アクチュエータであるモータ34と、スピンドル12を回転させる他の動力を発生するプリテンショナー15と、モータ34からの動力をスピンドル12に伝達可能な動力伝達機構19と、を有している。
スピンドル12は、両端がリトラクタフレーム11によって回転可能に支持されている。また、スピンドル12内には、一端側(図1において左端側)でスピンドル12に接続され、他端側(図1において右端側)でプリテンショナー15からの力が入力されるトレッドヘッド(図示せず)と接続される、エネルギー吸収機構を構成するトーションバー28が設けられている。
プリテンショナー15は、火薬を点火して発生したガスによってボール(図示せず)を強く押し出し、ボールがピニオン(図示せず)の溝に沿って移動する。ピニオンの回転は、ロック機構を介してトレッドヘッド、トーションバー28、スピンドル12へと伝達される。なお、図1中、符号17は、ロック機構14や加速度センサ27を収容するシステムカバーである。
また、リトラクタフレーム11の図中左側面には、モータアセンブリ16が取り付けられるとともに、動力伝達機構19が収容されるギヤハウジング26が取り付けられている。さらに、ギヤハウジング26の左側面には、巻き取りバネ装置13が取り付けられている。
リトラクタフレーム11の上方に位置するモータアセンブリ16は、モータケース31、モータ34、第1ギヤ35から構成されている。なお、第1ギヤ35はモータ34の回転軸に取り付けられており、動力伝達機構19の第2ギヤ70と噛合する。
動力伝達機構19では、第1ギヤ35と噛合する第2ギヤ70が支持軸71の一端に取り付けられるともに、支持軸71の他端には第3ギヤ72が取り付けられ、第3ギヤ72は第2回転部材であるギヤホイール57の外周面に形成されたファイナルギヤ58と噛合する。支持軸71は、ベアリング73によりアウターギヤカバー26に回転自在に支持される。なお、本実施形態では、第1ギヤ35、第2ギヤ70、第3ギヤ72、ファイナルギヤ58によってギヤアッセンブリを構成している。
また、動力伝達機構19を構成するクラッチ46は、図1及び図2に示すように、外周面にファイナルギヤ58が形成されたギヤホイール57、係合部材である一対のパウル41、ばね部材であるフリクションリング42、カバーリング43、ギヤカバー44、第1回転部材であるクラッチハウジング50、及びスプリング45とから構成される。
図3から図5に示すように、クラッチハウジング50は、スピンドル12に形成されたジョイント部と加締め等によってスプライン結合されるリング状の結合部51と、内周面にパウル41が係合する被係合部である内歯52aが形成された筒部52と、筒部52の軸方向一端寄り(リトラクタフレーム11寄り)部分から径方向内側に延びる内向き延出部53と、結合部51と内向き延出部53とを円周方向複数箇所(本実施形態では、4箇所)で繋ぐ複数の薄肉破断部54と、を有する。また、筒部52の軸方向他端側面には、歯面52bが円周方向に亘って形成されている。
スプリング45は、スピンドルと結合可能なリング部75と、リング部75から径方向外側に延出し、且つ円周方向に延出する複数の弾性変形部76と、を備える。弾性変形部76は、リング部75に対してクラッチハウジング50を付勢する向きに湾曲しており、弾性変形部76の先端部76aは、クラッチハウジング50の内向き延出部53の軸方向端面を摺動するとともに、内向き延出部53の軸方向端面に形成され、円周方向に沿って徐々に深溝となる複数(本実施形態では、4つ)の凹部55と接触可能である。
ギヤホイール57は、外周面にファイナルギヤ58が形成された大径側筒部60と、大径側筒部60の軸方向他端寄り(アウターギヤカバー26寄り)部分から内径側に延びる内向き鍔部61と、該内向き鍔部61の内径部分からリトラクタフレーム11側に延び、大径側筒部60より軸方向長さの短い小径側筒部62と、を有する。図3にも示すように、小径側筒部62と大径側筒部60との間には、クラッチハウジング50の筒部52がフレーム11側から内向き鍔部61に向けて挿入され、ギヤホイール57内にクラッチハウジング50を収容する。大径側筒部60の内周面はクラッチハウジング50の筒部52の外周面と相対回転自在に対向し、小径側筒部62の外周面はクラッチハウジング50の内周面に形成された内歯52aと相対回転自在に対向する。小径側筒部62の内周面はアウターギヤカバー26の非駆動部分である凸部26aに回転自在に支持される。この凸部26aは、アウターギヤカバー26から軸方向に沿って環状に突出し、クラッチハウジング50と同心に形成される。また、クラッチハウジングの筒部52の軸方向他端側面が対向する内向き鍔部61の軸方向側面には、歯面52bと噛み合い可能な歯面61aが形成されている。
図6に示すように、ギヤホイール57の小径側筒部62の外周部には、ギヤカバー44側の端面に、一対のパウル41を保持する溝部である一対のパウル摺動溝62aが形成される。一対のパウル摺動溝62aは小径側筒部62の外周面の対極位置(180°回転した位置)に、パウル41の係合部41aがクラッチハウジング50の内歯50aに臨むように開口する開口部62bを有し、開口部62bからパウル41の形状に沿って互いに反対方向に伸びる。
一対のパウル41は、それぞれ一端側に係合部41aを有し一端側から他端側に僅かに湾曲する湾曲形状をなして、パウル摺動溝62aに摺動可能に保持される。そして、パウル摺動溝62a内で、モータ34が作動していない時に位置する第1の位置P1(図6参照)と、モータ34が作動して係合部41aがクラッチハウジング50の内歯50aと係合する時に位置する第2の位置P2(図7参照)と、を移動する。
フリクションリング42は、環状に形成され、アウターギヤカバー26に形成された非駆動部分である凸部26aの内周面に、複数(本実施形態では、6本)の爪部42bによる自身の付勢力によって径方向外側に凸部26aを付勢することで当接保持され、カバーリング43で覆われている(図3参照。)。フリクションリング42には、外径側に突出する一対の屈曲部42aが設けられ、各パウル41の保持凹部41b内に保持される。これにより、フリクションリング42は、回転方向の力を受けると、アウターギヤカバー26の凸部26aとの間で、回転方向と逆方向の摩擦力を発生する。
次に、本実施形態のシートベルト用リトラクタ10の作動について説明する。図示しない監視センサ等によって衝突の可能性が検出されると、図示しないECUによって衝突前にモータ34を駆動して、動力伝達機構19を介してスピンドル12を回転させてシートベルトを巻き取る。また、衝突の可能性がなくなると、モータ34を逆転させて、シートベルトを引き出し可能な状態に戻す。一方、衝突時には、プリテンショナー15が作動して、シートベルトを強制的に巻き取る。
ここで、クラッチ46の作動について図6及び図7を参照して説明する。
まず、図6に示すように、モータ34による巻き取りが行なわれていない場合は、パウル41は、パウル摺動溝62aの最奥部に位置し、パウル41の係合部41aはクラッチハウジング50の内歯52aより内径側に位置し、クラッチハウジング50とパウル41とは非係合である。このため、スピンドル12と一体のクラッチハウジング50のみ回転可能となり、シートベルトの通常の巻き取り及び引き出しが可能である。
モータ34が巻き取り側に回転すると、モータ34の回転軸に取り付けられた第1ギヤ35から第2ギヤ70に伝達された駆動力は第3ギヤ72からファイナルギヤ58に伝達され、ギヤホイール57が時計方向(矢印A)へ回転する。この際、フリクションリング42に保持された各パウル41はフリクションリング42とアウターギヤカバー26の凸部26aとの間の摩擦力により付勢され、その場に留まろうとする。従って、パウル41がパウル摺動溝62a内で最奥部から開口部62bへ相対的に移動することになる。
そして、図7に示すように、ギヤホイール57が所定の角度だけ回転すると、パウル41の係合部41aが開口部62bを超えて移動しクラッチハウジング50の内歯52aとの係合を完了する。
そして、ギヤホイール57がシートベルト巻き取り方向(矢印A)に所定の角度を越えてさらに回転すると、パウル41の係合部41aとクラッチハウジング50の内歯52aとが係合した状態で、ギヤホイール57、クラッチハウジング50、フリクションリング42、及びパウル41が巻き取り方向(矢印A)に一体回転して、電動アクチュエータからの動力がスピンドル12に伝達される。
なお、モータ34が解除側(引き出し方向)に回転した場合には、ギヤホイール57が反時計回り(矢印Aとは反対方向)に回転する。その場合、パウル41はフリクションリング42とアウターギヤカバー26の凸部26aとの間の摩擦力により、パウル41はその場に留まろうとするため、ギヤホイール57の回転に伴ってパウル摺動溝62a内を開口部62bから奥側に相対的に移動し、パウル41の係合部41aはクラッチハウジング50の内歯50aから離れ、第1の位置P1に戻される。
PP(プリ・プリテンショナ)作動時(モータ34が巻き取り方向に回転)、パウル41の係合部41aとクラッチハウジング50の内歯52aとが係合した状態で、ベルトに設定値以上の引き出し方向への入力があると、クラッチハウジング50の薄肉破断部54が破断して、結合部51のみが回転可能となり、モータ34からの動力伝達が遮断される。
薄肉破断部54によって結合部51から破断されたクラッチハウジング50の筒部52及び内向き延出部53は、スプリング45によって軸方向に移動し、筒部52の軸方向他端側面に形成された歯面52bが、ギヤホイール57の内向き鍔部61の歯面61aと係合する。
ここで、前述したように薄肉破断部54の破断荷重(ベルトの引き出し方向の設定値)は、1kN程度に設定されているため、薄肉破断部54は、上述した作動以外に、軽衝突時に乗員側からの動力伝達が過負荷が作用した場合にも破断する場合がある。図8乃至図10を参照して、このような軽衝突で薄肉破断部54が破断した場合に、クラッチハウジング50の部品交換がなされるまでの、巻取り及び引き出し動作について説明する。
薄肉破断部54が破断した後、巻き取りバネ装置13によってウェビングが巻き取られる場合、スピンドル12とともにクラッチハウジング50の結合部51とスプリング45が一体回転する。スプリング45は、弾性変形部76がクラッチハウジング50の筒部52や内向き延出部53をスラスト方向に付勢しつつ、凹部55を乗り越えてクラッチハウジング50の内向き延出部53の軸方向側面と摺接しながら多少の回転抵抗を持ってクラッチハウジング50に対して回転する。クラッチハウジング50の筒部52や内向き延出部53には、スプリング45の摺接回転によって回転トルクが作用するが、スプリング45のスラスト方向の付勢力が作用しているので、クラッチハウジング50とギヤホイール57の歯面52b、61aの噛み合いにより回転しない。このため、回転抵抗が多少大きくなるが、クラッチハウジング50を交換するまで自走する際にウェビングの巻き取り動作時を確実に行うことができる。
一方、薄肉破断部54が破断した後、ウェビングが引き出される場合には、図9に示すように、スプリング45の弾性変形部76の先端部76aがクラッチハウジング50の内向き延出部53の凹部55に引っ掛かり、スピンドル12の回転が、スプリング45を介してクラッチハウジング50に伝達される。この場合にも、クラッチハウジングにはスプリング45によるスラスト方向の付勢力が作用しているが、クラッチハウジング50に作用する回転トルクは、クラッチハウジング50とギヤホイール57の歯面52b,61aとの噛み合いを外すか、または、ギヤホイール57を引きずって回転する。ギヤホイール57が回転する場合には、電動モータを含む複数のギヤがウェビングの引き出し抵抗となる。このため、ウェビングを引き出そうとした場合には、ユーザーはクラッチハウジング50の破損を容易に認知することができる。
以上、説明したシートベルト用リトラクタ10によれば、クラッチハウジング50は、所定の回転トルクが作用したときに破断する薄肉破断部54を備え、クラッチハウジング50とギヤホイール57の互いに対向する軸方向側面には、噛み合い可能な歯面52b,61aがそれぞれ形成されており、スピンドル12の回転と共に回転し、クラッチハウジング50を軸方向に付勢するスプリング45が設けられ、スプリング45は、クラッチハウジング50の薄肉破断部54が破断したときに、互いの歯面52b,61aを噛み合わせるようにクラッチハウジング50をギヤホイール57に向けて移動させる。これにより、薄肉破断部54を有するクラッチハウジング50が破断した場合に、ユーザー等に破損していることを認知させて、リトラクタの交換を促すことができる。
また、クラッチハウジング50は、内歯52aが内周面に形成されるとともに、歯面52bが軸方向側面に形成される筒部52と、歯面52bが形成される軸方向側面と反対側の筒部52の軸方向一端寄り部分で径方向内側に延びる内向き延出部53と、内向き延出部53よりさらに径方向内側で、薄肉破断部54を介して内向き延出部53と連結され、スピンドル12と結合可能な結合部51と、を有する。そして、クラッチハウジング50の薄肉破断部54が破断したとき、スプリング45によって内向き延出部53を介して筒部52がギヤホイール57に向けて移動し、筒部52の歯面52bとギヤホイール57の歯面61aとが噛み合う。これにより、クラッチハウジング50の簡単な構成で、上記効果を達成することができる。
クラッチハウジング50の内向き延出部53には、スプリング45が接触可能な凹部55を有し、凹部55は、スピンドル12が巻き取り方向に回転したとき、スプリング45が凹部55を乗り越えてクラッチハウジング50に対して回転するのを許容し、スピンドル12が引き出し方向に回転したとき、付勢部材45が凹部55に引っ掛かってウェビングの引き出し抵抗を増加するように形成される。これにより、クラッチハウジング50の破断をウェビング引き出し時に認知させることができると共に、クラッチハウジング50を交換するまで自走する際に、ウェビングの巻き取り動作を行うことができる。
また、スプリング45は、スピンドル12と結合可能なリング部75と、リング部75から径方向外側に延出し、且つ円周方向に延出する複数の弾性変形部76と、を備え、スプリング45の弾性変形部76が凹部55と接触するようにしたので、比較的簡単なスプリング45の構成で上記効果を奏することができる。
以上に説明したシートベルト用リトラクタは、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施又は遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
例えば、クラッチハウジング50の内向き延出部53の軸方向端面に形成される、スプリング45の弾性変形部76が当接する凹部55は、単純な溝形状であってもよい。即ち、本発明のクラッチハウジング50に形成されるスプリング45と接触可能な部分は、凹部55に限定されるものでなく、スピンドル12が巻き取り方向に回転したとき、スプリング45が接触可能な部分を越えてクラッチハウジング50に対して回転するのを許容し、スピンドル12が引き出し方向に回転したとき、スプリング45が凹部55に引っ掛かってウェビングの引き出し抵抗を増加するように形成されるものであればよい。
10 シートベルト用リトラクタ
12 スピンドル
15 プリテンショナー
19 動力伝達機構
26 アウターギヤカバー(ケース部材)
26a 凸部(非駆動部分)
34 モータ(電動アクチュエータ)
41 パウル(係合部材)
41b 保持凹部(凹部)
42 フリクションリング(ばね部材)
45 スプリング(付勢部材)
46 クラッチ
50 クラッチハウジング(第1回転部材)
52a 内歯(被係合部)
52b 歯面
54 薄肉破断部
57 ギヤホイール(第2回転部材)
61a 歯面

Claims (5)

  1. シートベルトを巻き取るスピンドルと、
    該スピンドルを回転する動力を発生する電動アクチュエータと、
    前記スピンドルと共に回転し、被係合部を有する第1回転部材、該第1回転部材の被係合部と係合可能な係合部を有する係合部材、及び、前記電動アクチュエータの回転に応じて回転し、該係合部材を移動可能に保持する第2回転部材、を備え、前記第1回転部材の被係合部と前記係合部材の係合部の係脱によって、前記電動アクチュエータからの動力を前記スピンドルに伝達可能及び遮断可能に構成される動力伝達機構と、
    を備えるシートベルト用リトラクタであって、
    前記第1回転部材は、所定の回転トルクが作用したときに破断する破断部を備え、
    前記第1回転部材と前記第2回転部材の互いに対向する軸方向側面には、噛み合い可能な歯面がそれぞれ形成されており、
    前記スピンドルの回転と共に回転し、前記第1回転部材を軸方向に付勢する付勢部材が設けられ、該付勢部材は、前記第1回転部材の破断部が破断したときに、互いの前記歯面を噛み合わせるように前記第1回転部材を前記第2回転部材に向けて移動させることを特徴とするシートベルト用リトラクタ。
  2. 前記第1回転部材は、前記付勢部材と接触可能な部分を備え、
    当該接触可能な部分は、前記スピンドルが巻き取り方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分を越えて前記第1回転部材に対して回転するのを許容し、前記スピンドルが引き出し方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分に引っ掛かって前記ウェビングの引き出し抵抗を増加するように形成されることを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
  3. 前記第1回転部材は、
    前記被係合部が内周面に形成されるとともに、前記歯面が軸方向側面に形成される筒部と、
    前記歯面が形成される軸方向側面と反対側の該筒部の軸方向一端寄り部分で径方向内側に延びる内向き延出部と、
    該内向き延出部よりさらに径方向内側で、前記破断部を介して前記内向き延出部と連結され、前記スピンドルと結合可能な結合部と、
    を有し、
    前記第1回転部材の破断部が破断したとき、前記付勢部材によって前記内向き延出部を介して前記筒部が前記第2回転部材に向けて移動し、前記筒部の歯面と前記第2回転部材の歯面とが噛み合うことを特徴とする請求項1に記載のシートベルト用リトラクタ。
  4. 前記第1の回転部材の内向き延出部は、前記付勢部材と接触可能な部分を備え、
    当該接触可能な部分は、前記スピンドルが巻き取り方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分を越えて前記第1回転部材に対して回転するのを許容し、前記スピンドルが引き出し方向に回転したとき、前記付勢部材が前記接触可能な部分に引っ掛かって前記ウェビングの引き出し抵抗を増加するように形成されることを特徴とする請求項3に記載のシートベルト用リトラクタ。
  5. 前記付勢部材は、前記スピンドルと結合可能なリング部と、該リング部から径方向外側に延出し、且つ円周方向に延出する複数の弾性変形部と、を備え、
    前記第1回転部材の前記接触可能な部分は、前記付勢部材の弾性変形部が接触可能な凹部であることを特徴とする請求項4に記載のシートベルト用リトラクタ。
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