以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における車両用制御装置100が搭載される車両1を模式的に示した模式図である。なお、図1の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両1の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両1の概略構成について説明する。車両1は、図1に示すように、車体フレームBFと、その車体フレームBFを支持する複数(本実施の形態では4輪)の車輪2と、それら複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を回転駆動する車輪駆動装置3と、各車輪2を車体フレームBFに懸架する複数の懸架装置4と、複数の車輪2の内の一部(本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR)を操舵する操舵装置5とを主に備えて構成されている。
次いで、各部の詳細構成について説明する。車輪2は、図1に示すように、車両1の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪2FL,2FRと、車両1の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪2RL,2RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪2FL,2FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪2RL,2RRは、車両1の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
また、車輪2は、図1に示すように、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRが全て同じ形状および特性に構成され、そのトレッドの幅(図1左右方向の寸法)が同一の幅に構成されている。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FRを回転駆動するための装置であり、後述するように電動モータ3aにより構成されている(図3参照)。また、電動モータ3aは、図1に示すように、デファレンシャルギヤ(図示せず)及び一対のドライブシャフト31を介して左右の前輪2FL,2FRに接続されている。
運転者がアクセルペダル61を操作した場合には、車輪駆動装置3から左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力が付与され、それら左右の前輪2FL,2FRがアクセルペダル61の操作量に応じて回転駆動される。なお、左右の前輪2FL,2FRの回転差は、デファレンシャルギヤにより吸収される。
懸架装置4は、路面から車輪2を介して車体フレームBFに伝わる振動を緩和するための装置、いわゆるサスペンションとして機能するものであり、伸縮可能に構成され、図1に示すように、各車輪2に対応してそれぞれ設けられている。また、本実施の形態における懸架装置4は、車輪2のキャンバ角を調整するキャンバ角調整機構としての機能を兼ね備えている。
ここで、図2を参照して、懸架装置4の詳細構成について説明する。図2は、懸架装置4の正面図である。なお、ここでは、キャンバ角調整機構として機能する構成のみについて説明し、サスペンションとして機能する構成については周知の構成と同様であるので、その説明を省略する。また、各懸架装置4の構成は、各車輪2においてそれぞれ共通であるので、右の前輪2FRに対応する懸架装置4を代表例として図2に図示する。但し、図2では、理解を容易とするために、ドライブシャフト31等の図示が省略されている。
懸架装置4は、図2に示すように、ストラット41及びロアアーム42を介して車体フレームBFに支持されるナックル43と、駆動力を発生するFRモータ44FRと、そのFRモータ44FRの駆動力を伝達するウォームホイール45及びアーム46と、それらウォームホイール45及びアーム46から伝達されるFRモータ44FRの駆動力によりナックル43に対して揺動駆動される可動プレート47とを主に備えて構成されている。
ナックル43は、車輪2を操舵可能に支持するものであり、図2に示すように、上端(図2上側)がストラット41に連結されると共に、下端(図2下側)がボールジョイントを介してロアアーム42に連結されている。
FRモータ44FRは、可動プレート47に揺動駆動のための駆動力を付与するものであり、DCモータにより構成され、その出力軸44aにはウォーム(図示せず)が形成されている。
ウォームホイール45は、FRモータ44FRの駆動力をアーム46に伝達するものであり、FRモータ44FRの出力軸44aに形成されたウォームに噛み合い、かかるウォームと共に食い違い軸歯車対を構成している。
アーム46は、ウォームホイール45から伝達されるFRモータ44FRの駆動力を可動プレート47に伝達するものであり、図2に示すように、一端(図2右側)が第1連結軸48を介してウォームホイール45の回転軸45aから偏心した位置に連結される一方、他端(図2左側)が第2連結軸49を介して可動プレート47の上端(図2上側)に連結されている。
可動プレート47は、車輪2を回転可能に支持するものであり、上述したように、上端(図2上側)がアーム46に連結される一方、下端(図2下側)がキャンバ軸50を介してナックル43に揺動可能に軸支されている。
上述したように構成される懸架装置4によれば、FRモータ44FRが駆動されると、ウォームホイール45が回転すると共に、ウォームホイール45の回転運動がアーム46の直線運動に変換される。その結果、アーム46が直線運動することで、可動プレート47がキャンバ軸50を揺動軸として揺動駆動され、車輪2のキャンバ角が調整される。
なお、本実施の形態では、各連結軸48,49及びウォームホイール45の回転軸45aが、車体フレームBFから車輪2に向かう方向(矢印R方向)において、第1連結軸48、回転軸45a、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第1キャンバ状態と、回転軸45a、第1連結軸48、第2連結軸49の順に一直線上に並んで位置する第2キャンバ状態(図2に示す状態)との2つの状態の間で車輪2のキャンバ角が任意に調整され、FRモータ44FRが駆動されていない初期状態では第2キャンバ状態となっている。
また、本実施の形態では、第1キャンバ状態において、車輪2のキャンバ角がマイナス方向(車輪2の中心線が垂直線に対して車両1内側に傾いた状態)の所定の角度(本実施の形態では−3°、以下「第1キャンバ角」と称す)に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。一方、第2キャンバ状態(図2に示す状態)では、車輪2のキャンバ角が0°(以下「定常キャンバ角」と称す)に調整される。また、第1キャンバ状態と第2キャンバ状態との間の範囲では、車輪2のキャンバ角がマイナス方向の任意の角度に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与される。
図1に戻って説明する。操舵装置5は、運転者によるステアリング63の操作を左右の前輪2FL,2FRに伝えて操舵するための装置であり、いわゆるラック&ピニオン式のステアリングギヤとして構成されている。
この操舵装置5によれば、運転者によるステアリング63の操作(回転)は、まず、ステアリングコラム51を介してユニバーサルジョイント52に伝達され、ユニバーサルジョイント52により角度を変えられつつステアリングボックス53のピニオン53aに回転運動として伝達される。そして、ピニオン53aに伝達された回転運動は、ラック53bの直線運動に変換され、ラック53bが直線運動することで、ラック53bの両端に接続されたタイロッド54が移動する。その結果、タイロッド54がナックル55を押し引きすることで、車輪2に所定の舵角が付与される。
アクセルペダル61及びブレーキペダル62は、運転者により操作される操作部材であり、各ペダル61,62の操作状態(踏み込み量、踏み込み速度など)に応じて、車両1の走行速度や制動力が決定され、車輪駆動装置3が駆動制御される。ステアリング63は、運転者により操作される操作部材であり、その操作状態(ステア角、ステア角速度など)に応じて、操舵装置5により左右の前輪2FL,2FRが操舵される。
車両用制御装置100は、上述したように構成される車両1の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置44(図3参照)を作動制御する。
次いで、図3を参照して、車両用制御装置100の詳細構成について説明する。図3は、車両用制御装置100の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置100は、図3に示すように、CPU71、ROM72及びRAM73を備え、それらがバスライン74を介して入出力ポート75に接続されている。また、入出力ポート75には、車輪駆動装置3等の装置が接続されている。
CPU71は、バスライン74により接続された各部を制御する演算装置であり、ROM72は、CPU71により実行される制御プログラム(例えば、図5から図8に図示されるフローチャートのプログラム)や固定値データ等を記憶する書き換え不能な不揮発性のメモリであり、図3に示すように、直進安定キャンバ角マップ72a及び閾値メモリ72bが設けられている。
直進安定キャンバ角マップ72aは、車両1の走行速度(以下「車速」と称す)と、車両1が所定の直進状態(本実施の形態では、車速が所定の車速以上、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下の状態)である場合に調整する車輪2のキャンバ角(以下「直進安定キャンバ角」と称す)との関係を記憶したマップであり、設計段階において予め設定された車速と直進安定キャンバ角との関係が記憶されている。CPU71は、この直進安定キャンバ角マップ72aの内容に基づいて、現在の車速に応じた直進安定キャンバ角を取得する。
ここで、図4を参照して、直進安定キャンバ角マップ72aについて説明する。図4は、直進安定キャンバ角マップ72aの内容を模式的に示した模式図である。なお、図4において、横軸に示す車速は、図4右側が増加方向(高車速側)を、図4左側が減少方向(低車速側)を、それぞれ表している。また、縦軸に示す直進安定キャンバ角は、マイナス方向のキャンバ角の絶対値を表しており、図4上側が絶対値の増加方向を、図4下側が絶対値の減少方向を、それぞれ表している。
直進安定キャンバ角マップ72aには、図4に示すように、車両1の状態量(本実施の形態では横G)を「大」、「中」、「小」の3つの大きさのいずれかに区分し、車両1の状態量が「大」である場合の関係式Iと、車両1の状態量が「中」である場合の関係式IIと、車両1の状態量が「小」である場合の関係式IIIとが、それぞれ記憶されている。なお、車両1の状態量が「大」、「中」、「小」のいずれに相当するかの判断は、後述する加速度センサ装置80(左右方向加速度センサ80b)により検出される車両1の横Gと、その車両1の横Gに対応してROM72の閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値とを比較することで行われる。
関係式Iによれば、車速がVa(車両1が所定の直進状態であるかを判断するための判断基準となる車速)の状態では、直進安定キャンバ角は定常キャンバ角とされている。そして、車速がVaから増加すると、その増加に伴って、直進安定キャンバ角はマイナス方向に直線的に増加し、車速Vbでは、直進安定キャンバ角は第2キャンバ角とされている。また、車速がVbよりも高い状態では、最高車速Vmaxに達するまで、直進安定キャンバ角は第2キャンバ角のまま一定のキャンバ角とされている。なお、関係式Iでは、車速Vaから車速Vbまでの範囲において、直進安定キャンバ角θは、θ=a・Vで表される。但し、車速をVとする。
ここで、第2キャンバ角は、定常キャンバ角よりも絶対値が大きく、且つ、第1キャンバ角よりも絶対値の小さなキャンバ角であって、車両1の状態量が「大」である場合に、車輪2を直進安定キャンバ角に調整することによって得られる効果(本実施の形態では、車両1の直進安定性を確保すること)を最大限に発揮できるキャンバ角であり(図9参照)、第1キャンバ角の絶対値に対して半分の値とされている。
関係式IIによれば、車速がVaの状態では、直進安定キャンバ角は定常キャンバ角とされている。そして、車速がVaから増加すると、その増加に伴って、直進安定キャンバ角はマイナス方向に直線的に増加し、車速Vbよりも大きな車速Vcで、直進安定キャンバ角が第2キャンバ角に達するように規定されている。また、車速がVcよりも高い状態では、最高車速Vmaxに達するまで、直進安定キャンバ角は第2キャンバ角のまま一定のキャンバ角とされている。なお、関係式IIでは、車速Vaから車速Vcまでの範囲において、直進安定キャンバ角θは、θ=b・Vで表され、関係式Iに対して傾きが小さく設定されている(a>b)。
関係式IIIによれば、車速がVaの状態では、直進安定キャンバ角は定常キャンバ角とされている。そして、車速がVaの状態から増加すると、その増加に伴って、最高車速Vmaxに達するまで、直進安定キャンバ角は関係式IIよりも小さな傾きでマイナス方向に直線的に増加するように規定されている。なお、関係式IIIでは、車速Vaから車速Vmaxまでの範囲において、直進安定キャンバ角θは、θ=c・Vで表され、関係式I及びIIに対して傾きが小さく設定されている(a>b>c)。
図3に戻って説明する。閾値メモリ72bは、車両1の状態量(本実施の形態では、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量)が所定の状態量以上であるかを判断するための判断基準となる閾値、及び、車両1が所定の直進状態であるかを判断するための判断基準となる閾値、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある接地荷重(以下「偏摩耗荷重」と称す)であるかを判断するための判断基準となる閾値などを記憶するメモリであり、アクセルペダル61及びブレーキペダル62並びにステアリング63の各操作量などに対応する閾値がそれぞれ記憶されている。
RAM73は、制御プログラムの実行時に各種のデータを書き換え可能に記憶するためのメモリであり、図3に示すように、操縦安定キャンバフラグ73a、直進安定キャンバフラグ73b、状態量フラグ73c、直進状態フラグ73d及び偏摩耗荷重フラグ73eが設けられている。
操縦安定キャンバフラグ73aは、車輪2が操縦安定キャンバ角(本実施の形態では第1キャンバ角)に調整された状態であるか否かを示すフラグであり、CPU71は、この操縦安定キャンバフラグ73aがオンである場合に、車輪2が操縦安定キャンバ角に調整された状態であると判断する。
直進安定キャンバフラグ73bは、車輪2が直進安定キャンバ角に調整された状態であるか否かを示すフラグであり、CPU71は、この直進安定キャンバフラグ73bがオンである場合に、車輪2が直進安定キャンバ角に調整された状態であると判断する。
状態量フラグ73cは、車両1の状態量が所定の状態量以上であるか否かを示すフラグであり、後述する状態量判断処理(図5参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における状態量フラグ73cは、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この状態量フラグ73cがオンである場合に、車両1の状態量が所定の状態量以上であると判断する。
直進状態フラグ73dは、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを示すフラグであり、後述する走行状態判断処理(図6参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。なお、本実施の形態における直進状態フラグ73dは、車速が所定の車速以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合にオンに切り替えられ、CPU71は、この直進状態フラグ73dがオンである場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
偏摩耗荷重フラグ73eは、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを示すフラグであり、後述する偏摩耗荷重判断処理(図7参照)の実行時にオン又はオフに切り替えられる。CPU71は、この偏摩耗荷重フラグ73eがオンである場合に、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であると判断する。
車輪駆動装置3は、上述したように、左右の前輪2FL,2FR(図1参照)を回転駆動するための装置であり、それら左右の前輪2FL,2FRに回転駆動力を付与する電動モータ3aと、その電動モータ3aをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。但し、車輪駆動装置3は、電動モータ3aに限られず、他の駆動源を採用することは当然可能である。他の駆動源としては、例えば、油圧モータやエンジン等が例示される。
キャンバ角調整装置44は、各車輪2のキャンバ角を調整するための装置であり、上述したように、各懸架装置4の可動プレート47(図2参照)に揺動のための駆動力をそれぞれ付与する合計4個のFL〜RRモータ44FL〜44RRと、それら各モータ44FL〜44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。
キャンバ角調整装置44の駆動制御回路は、各モータ44FL〜44RRの回転量を回転センサ(図示せず)により監視し、CPU71から指示された目標値(回転量)に達したFL〜RRモータ44FL〜44RRの回転駆動を停止する。なお、回転センサによる検出結果は、駆動制御回路からCPU71に出力され、CPU71は、その検出結果に基づいて各車輪2の現在のキャンバ角を取得する。
加速度センサ装置80は、車両1の加速度を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、前後方向加速度センサ80a及び左右方向加速度センサ80bと、それら各加速度センサ80a,80bの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
前後方向加速度センサ80aは、車両1(車体フレームBF)の前後方向(図1矢印F−B方向)の加速度、いわゆる前後Gを検出するセンサであり、左右方向加速度センサ80bは、車両1(車体フレームBF)の左右方向(図1矢印L−R方向)の加速度、いわゆる横Gを検出するセンサである。なお、本実施の形態では、これら各加速度センサ80a,80bが圧電素子を利用した圧電型センサとして構成されている。
また、CPU71は、加速度センサ装置80から入力された各加速度センサ80a,80bの検出結果(前後G、横G)を時間積分して、2方向(前後方向および左右方向)の速度をそれぞれ算出すると共に、それら2方向成分を合成することで、車速を算出する。
ジャイロセンサ装置81は、車両1の回転角を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、車両1の重心を通る基準軸(図1矢印F−B,L−R,F−B方向軸)回りの車両1(車体フレームBF)の回転角、いわゆるロール角、ピッチ角およびヨー角をそれぞれ検出するジャイロセンサ81aと、そのジャイロセンサ81aの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
また、ジャイロセンサ装置81は、ジャイロセンサ81aの検出結果(回転角)を時間微分して、車両1の重心を通る基準軸回りの車両1(車体フレームBF)の回転角速度、いわゆるロールレート、ピッチレート及びヨーレートをそれぞれ算出する演算回路(図示せず)を備えており、その演算回路の算出結果を出力回路により処理してCPU71に出力可能に構成されている。
なお、本実施の形態では、ジャイロセンサ81aがサニャック効果により回転角速度および回転角を検出する光学式ジャイロセンサにより構成されている。但し、他の種類のジャイロセンサを採用することは当然可能である。他の種類のジャイロセンサとしては、例えば、機械式や流体式などのジャイロセンサが例示される。
サスストロークセンサ装置82は、各懸架装置4の伸縮量(以下「サスストローク」と称す)を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置4のサスストロークをそれぞれ検出する合計4個のFL〜RRサスストロークセンサ82FL〜82RRと、それら各サスストロークセンサ82FL〜82RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各サスストロークセンサ82FL〜82RRがひずみゲージにより構成されており、これら各サスストロークセンサ82FL〜82RRは、各懸架装置4のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
CPU71は、サスストロークセンサ装置82から入力された各サスストロークセンサ82FL〜82RRの検出結果(サスストローク)に基づいて、各車輪2の接地荷重を算出する。即ち、車輪2の接地荷重WとサスストロークLとは比例関係にあるので、W=k・Lとなる。但し、懸架装置4の減衰定数をkとする。
接地荷重センサ装置83は、各車輪2の接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2の接地荷重をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RR接地荷重センサ83FL〜83RRと、それら各接地荷重センサ83FL〜83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各接地荷重センサ83FL〜83RRがピエゾ抵抗型の荷重センサとして構成されており、これら各接地荷重センサ83FL〜83RRは、各懸架装置4のショックアブソーバ(図示せず)にそれぞれ配設されている。
サイドウォール潰れ代センサ装置84は、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出する合計4個のFL〜RRサイドウォール潰れ代センサ84FL〜84RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ84FL〜84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。
なお、本実施の形態では、各サイドウォール潰れ代センサ84FL〜84RRがひずみゲージにより構成されており、これら各サイドウォール潰れ代センサ84FL〜84RRは、各車輪2内にそれぞれ配設されている。
アクセルペダルセンサ装置61aは、アクセルペダル61の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、アクセルペダル61の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ブレーキペダルセンサ装置62aは、ブレーキペダル62の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ブレーキペダル62の踏み込み量を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
ステアリングセンサ装置63aは、ステアリング63の操作量を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、ステアリング63のステア角を検出する角度センサ(図示せず)と、その角度センサの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを主に備えている。
なお、本実施の形態では、各角度センサが電気抵抗を利用した接触型のポテンショメータとして構成されている。また、CPU71は、各センサ装置61a,62a,63aから入力された各角度センサの検出結果(操作量)を時間微分して、各ペダル61,62及びステアリング63の操作速度を算出する。更に、CPU71は、算出した操作速度を時間微分して、各ペダル61,62及びステアリング63の操作加速度を算出する。
図3に示す他の入出力装置90としては、例えば、GPSを利用して車両1の現在位置を取得すると共にその取得した車両1の現在位置を地図データに対応付けて取得するナビゲーション装置、ワイパ(運転者の視界を確保するためにガラス面に付着した雨滴を払拭する装置)の作動を検出するワイパセンサ装置、路面がドライ路面であるかウェット路面であるかを非接触で検出する路面状況センサ装置などが例示される。
次いで、図5を参照して、状態量判断処理について説明する。図5は、状態量判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の状態量が所定の状態量以上であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、状態量判断処理に関し、まず、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量をそれぞれ取得し(S1、S2、S3)、それら取得した各ペダル61,62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する(S4)。なお、S4の処理では、S1〜S3の処理でそれぞれ取得した各ペダル61,62及びステアリング63の操作量と、それら各ペダル61,62及びステアリング63の操作量にそれぞれ対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2が定常キャンバ角または直進安定キャンバ角に調整された状態で車両1が加速、制動または旋回する場合に、車輪2がスリップする恐れのある限界値)とを比較して、現在の各ペダル61,62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であると判断される場合には(S4:Yes)、状態量フラグ73cをオンして(S5)、この状態量判断処理を終了する。即ち、この状態量判断処理では、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上である場合に、車両1の状態量が所定の状態量以上であると判断する。
一方、S4の処理の結果、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量のいずれも所定の操作量より小さいと判断される場合には(S4:No)、状態量フラグ73cをオフして(S6)、この状態量判断処理を終了する。
次いで、図6を参照して、走行状態判断処理について説明する。図6は、走行状態判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車両1の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、走行状態判断処理に関し、まず、車速を取得し(S11)、その取得した車速が所定の車速以上であるか否かを判断する(S12)。なお、S12の処理では、S11の処理で取得した車速と、その車速に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が受ける外乱(横風や轍などの影響)や車速などに起因して、車両1が姿勢変化を起こし易くなる車速、例えば40km/h)とを比較して、現在の車速が所定の車速以上であるか否かを判断する。
その結果、車速が所定の車速より小さいと判断される場合には(S12:No)、直進状態フラグ73dをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
一方、S12の処理の結果、車速が所定の車速以上であると判断される場合には(S12:Yes)、ステアリング63の操作量を取得し(S13)、その取得したステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S14)。なお、S14の処理では、S13の処理で取得したステアリング63の操作量と、そのステアリング63の操作量に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、図5に示す状態量判断処理において、車両1の状態量が所定の状態量以上であるか否かを判断するための判断基準となるステアリング63の操作量よりも小さい値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S14:Yes)、直進状態フラグ73dをオンして(S15)、この走行状態判断処理を終了する。即ち、この走行状態判断手段では、車速が所定の速度以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合に、車両1の走行状態が所定の直進状態であると判断する。
一方、S14の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S14:No)、直進状態フラグ73dをオフして(S16)、この走行状態判断処理を終了する。
次いで、図7を参照して、偏摩耗荷重判断処理について説明する。図7は、偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、車輪2の接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。
CPU71は、偏摩耗荷重判断処理に関し、まず、各懸架装置4のサスストロークが所定値以下であるか否かを判断する(S21)。なお、S21の処理では、サスストロークセンサ装置82により各懸架装置4のサスストロークを検出すると共に、その検出された各懸架装置4のサスストロークと、その各懸架装置4のサスストロークに対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、懸架装置4のサスストロークと車輪2の接地荷重との比例関係に基づいて、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の各懸架装置4のサスストロークが所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、各懸架装置4の内の少なくとも1の懸架装置4のサスストロークが所定値より大きいと判断される場合には(S21:No)、そのサスストロークの大きい懸架装置4に対応する車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S21の処理の結果、各懸架装置4のサスストロークが所定値以下であると判断される場合には(S21:Yes)、車両1の前後Gが所定値以下であるか否かを判断する(S22)。なお、S22の処理では、加速度センサ装置80(前後方向加速度センサ80a)により検出された車両1の前後Gと、その車両1の前後Gに対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急加速または急制動などして左右の後輪2RL,2RR又は左右の前輪2FL,2FRの接地荷重が偏って大きくなることで、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の車両1の前後Gが所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1の前後Gが所定値より大きいと判断される場合には(S22:No)、左右の前輪2FL,2FR又は左右の後輪2RL,2RRのいずれかの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S22の処理の結果、車両1の前後Gが所定値以下であると判断される場合には(S22:Yes)、車両1の横Gが所定値以下であるか否かを判断する(S23)。なお、S23の処理では、加速度センサ装置80(左右方向加速度センサ80b)により検出された車両1の横Gと、その車両1の横Gに対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急旋回などして左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏って大きくなることで、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の車両1の横Gが所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1の横Gが所定値より大きいと判断される場合には(S23:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S23の処理の結果、車両1の横Gが所定値以下であると判断される場合には(S23:Yes)、車両1のヨーレートが所定値以下であるか否かを判断する(S24)。なお、S24の処理では、ジャイロセンサ装置81により算出された車両1のヨーレートと、その車両1のヨーレートに対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急旋回などして左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏って大きくなることで、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の車両1のヨーレートが所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1のヨーレートが所定値より大きいと判断される場合には(S24:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S24の処理の結果、車両1のヨーレートが所定値以下であると判断される場合には(S24:Yes)、車両1のロール角が所定値以下であるか否かを判断する(S25)。なお、S25の処理では、ジャイロセンサ装置81により検出された車両1のロール角と、その車両1のロール角に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1がロールして左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏って大きくなることで、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の車両1のロール角が所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、車両1のロール角が所定値より大きいと判断される場合には(S25:No)、左右の前輪2FL,2FR又は左右の後輪2RL,2RRのいずれかの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S25の処理の結果、車両1のロール角が所定値以下であると判断される場合には(S25:Yes)、各車輪2の接地荷重が所定値以下であるか否かを判断する(S26)。なお、S26の処理では、接地荷重センサ装置83により検出された各車輪2の接地荷重と、その各車輪2の接地荷重に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値とを比較して、現在の各車輪2の接地荷重が所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、各車輪2の内の少なくとも1の車輪2の接地荷重が所定値より大きいと判断される場合には(S26:No)、かかる車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S26の処理の結果、各車輪2の接地荷重が所定値以下であると判断される場合には(S26:Yes)、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値以下であるか否かを判断する(S27)。なお、S27の処理では、サイドウォール潰れ代センサ装置84により検出された各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代と、その各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代と車輪2の接地荷重との相関に基づいて、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、各車輪2の内の少なくとも1の車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値より大きいと判断される場合には(S27:No)、その潰れ代の大きい車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S27の処理の結果、各車輪2のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値以下であると判断される場合には(S27:Yes)、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S28)。なお、S28の処理では、アクセルペダルセンサ装置61aにより検出されたアクセルペダル61の操作量と、そのアクセルペダル61の操作量に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急加速して左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が偏って大きくなることで、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在のアクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する。
その結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S28:No)、左右の後輪2RL,2RRの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S28の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S28:Yes)、ブレーキペダル62の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S29)。なお、S29の処理では、ブレーキペダルセンサ装置62aにより検出されたブレーキペダル62の操作量と、そのブレーキペダル62の操作量に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急制動して左右の前輪2FL,2FRの接地荷重が偏って大きくなることで、左右の前輪2FL,2FRの接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在のブレーキペダル62の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する。
その結果、ブレーキペダル62の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S29:No)、左右の前輪2FL,2FRの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S29の処理の結果、ブレーキペダル62の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S29:Yes)、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S30)。なお、S30の処理では、ステアリングセンサ装置63aにより検出されたステアリング63の操作量と、そのステアリング63の操作量に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急旋回して左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏って大きくなることで、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在のステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量より大きいと判断される場合には(S30:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S30の処理の結果、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S30:Yes)、ステアリング63の操作速度が所定値以下であるか否かを判断する(S31)。なお、S31の処理では、ステアリング63の操作量を時間微分して算出されるステアリング63の操作速度と、そのステアリング63の操作速度に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急旋回して左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏って大きくなることで、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在のステアリング63の操作速度が所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作速度が所定値より大きいと判断される場合には(S31:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S31の処理の結果、ステアリング63の操作速度が所定値以下であると判断される場合には(S31:Yes)、ステアリング63の操作加速度が所定値以下であるか否かを判断する(S32)。なお、S32の処理では、ステアリング63の操作速度を時間微分して算出されるステアリング63の操作加速度と、そのステアリング63の操作加速度に対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1が急旋回して左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏って大きくなることで、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRの接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在のステアリング63の操作加速度が所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、ステアリング63の操作加速度が所定値より大きいと判断される場合には(S32:No)、左の前後輪2FL,2RL又は右の前後輪2FR,2RRのいずれかの接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S32の処理の結果、ステアリング63の操作加速度が所定値以下であると判断される場合には(S32:Yes)、偏摩耗荷重フラグ73eをオフして(S34)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
次いで、図8を参照して、キャンバ制御処理について説明する。図8は、キャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置100の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を調整する処理である。
CPU71は、キャンバ制御処理に関し、まず、状態量フラグ73cがオンであるか否かを判断し(S41)、状態量フラグ73cがオンであると判断される場合には(S41:Yes)、操縦安定キャンバフラグ73aがオンであるか否かを判断する(S42)。その結果、操縦安定キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)を操縦安定キャンバ角(本実施の形態では第1キャンバ角)に調整し(S43)、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に、操縦安定キャンバフラグ73aをオンする一方、直進安定キャンバフラグ73bをオフして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の状態量以上である場合、即ち、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車両1の加速、制動または旋回の度合いが比較的大きい場合(特に、本実施の形態では、車輪2が定常キャンバ角または直進安定キャンバ角に調整された状態で車両1が加速、制動または旋回すると、車輪2がスリップする恐れのある場合)には、車輪2に発生するキャンバスラストを増加させて、車両1の操縦安定性を確保することができる。
一方、S42の処理の結果、操縦安定キャンバフラグ73aがオンであると判断される場合には(S42:Yes)、車輪2は既に操縦安定キャンバ角に調整されているので、S43及びS44の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S41の処理の結果、状態量フラグ73cがオフであると判断される場合には(S41:No)、直進状態フラグ73dがオンであるか否かを判断し(S45)、直進状態フラグ73dがオンであると判断される場合には(S45:Yes)、直進安定キャンバフラグ73bがオンであるか否かを判断する(S46)。その結果、直進安定キャンバフラグ73bがオフであると判断される場合には(S46:No)、車両1の横G及び車速を取得し(S47、S48)、それら取得した車両1の横G及び車速に応じた直進安定キャンバ角を直進安定キャンバ角マップ72aから読み出して、直進安定キャンバ角を設定する(S49)。
即ち、S49の処理では、まず、S47の処理で取得した車両1の横Gと、その車両1の横Gに対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車両1の横Gを「大」、「中」、「小」の3つの大きさのいずれかに区分するための値)とを比較して、現在の車両1の横Gが「大」、「中」、「小」の3つの大きさのいずれであるかを判断する。そして、直進安定キャンバ角マップ72aから、判断された車両1の横Gの大きさに対応する関係式I,II,IIIに基づいて、S48の処理で取得した車速に応じた直進安定キャンバ角を読み出す。具体的には、例えば、S47の処理で取得した車両1の横Gが「大」であり、S48の処理で取得した車速がV1の場合、直進安定キャンバ角マップ72aの関係式Iに基づいて、車速V1に応じた直進安定キャンバ角をθ1であると読み出す(図4参照)。
S49の処理を実行した後は、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)をS49の処理で設定した直進安定キャンバ角に調整し(S50)、各車輪2にネガティブキャンバを付与すると共に、直進安定キャンバフラグ73bをオンする一方、操縦安定キャンバフラグ73aをオフして(S51)、S52の処理を実行する。
これにより、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車速が所定の車速以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合には、キャンバ角調整装置44による調整が行われていない初期状態(第2キャンバ状態)よりも車輪2に発生するキャンバスラストを増加させて、車両1が受ける外乱(横風や轍などの影響)や車速などに起因する車両1の姿勢変化を抑制することができる。よって、車両1の直進安定性を確保することができる。
一方、S46の処理の結果、直進安定キャンバフラグ73bがオンであると判断される場合には(S46:Yes)、車輪2は既に直進安定キャンバ角に調整されているので、S47〜S51の処理をスキップして、偏摩耗荷重フラグ73eがオンであるか否かを判断する(S52)。その結果、偏摩耗荷重フラグ73eがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)を定常キャンバ角に調整し(S53)、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に、操縦安定キャンバフラグ73a及び直進安定キャンバフラグ73bをいずれもオフして(S54)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車輪2の接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、車輪2のタイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れがある場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制して、タイヤの寿命を向上させることができる。また、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、車輪の転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができる。
一方、S52の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73eがオフであると判断される場合には(S52:No)、車輪2の接地荷重は偏摩耗荷重ではないので、S53及びS54の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
これに対し、S45の処理の結果、直進状態フラグ73dがオフであると判断される場合には(S45:No)、操縦安定キャンバフラグ73a又は直進安定キャンバフラグ73bがオンであるか否かを判断する(S55)。その結果、操縦安定キャンバフラグ73a又は直進安定キャンバフラグ73bの少なくとも一方がオンであると判断される場合には(S55:Yes)、FL〜RRモータ44FL〜44RRを作動させて、各車輪2(左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RR)のキャンバ角を定常キャンバ角に調整し(S56)、各車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除すると共に、操縦安定キャンバフラグ73a及び直進安定キャンバフラグ73bをいずれもオフして(S57)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両1の状態量が所定の状態量よりも小さい場合、且つ、車両1の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両1の操縦安定性や直進安定性を優先して確保する必要がない場合には、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制して、タイヤの寿命を向上させることができる。また、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、車輪2の転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができる。
一方、S55の処理の結果、操縦安定キャンバフラグ73a及び直進安定キャンバフラグ73bがいずれもオフであると判断される場合には(S55:No)、車輪2は既に定常キャンバ角に調整されているので、S56及びS57の処理をスキップして、このキャンバ制御処理を終了する。
以上説明したように、第1実施の形態によれば、車両1の状態量が所定の状態量以上である場合に、車輪2のキャンバ角が、少なくとも絶対値の増加する操縦安定キャンバ角(本実施の形態では第1キャンバ角)に調整されるので、例えば、車両1の加速、制動または旋回の度合いが比較的大きい場合には、車輪2に発生するキャンバスラストを増加させて、車両1の操縦安定性を確保することができる。
また、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合に、車輪2のキャンバ角が直進安定キャンバ角に調整され、車輪2にネガティブキャンバが付与されるので、車両1の直進時には、キャンバ角調整装置44による調整が行われていない初期状態(第2キャンバ状態)よりも車輪2に発生するキャンバスラストを増加させて、車両1が受ける外乱(横風や轍などの影響)や車速などに起因する車両1の姿勢変化を抑制する(車両1の姿勢変化に対する抗力を確保する)ことができる。よって、車両1の直進安定性を確保することができる。
ここで、図9を参照して、車輪2のキャンバ角と車両1の操縦安定性および直進安定性との関係について説明する。図9は、車輪2のキャンバ角と車両1の操縦安定性および直進安定性との関係を表すグラフである。なお、図9において、横軸に示す車輪2のキャンバ角は、マイナス方向のキャンバ角の絶対値を表しており、図9右側が絶対値の増加方向を、図9左側が絶対値の減少方向を、それぞれ表している。また、図9では、車両1の操縦安定性を効果Iの実線で表し、車両1の直進安定性を効果II,III,IVの実線で表している。また、効果IIの実線は、車両1の状態量(本実施の形態では横G)が「大」である場合を、効果IIIの実線は、車両1の状態量が「中」である場合を、効果IVの実線は、車両1の状態量が「小」である場合を、それぞれ表している。
車両1の操縦安定性に関しては、効果Iの実線で表すように、キャンバ角の絶対値が増加するほど、その増加に伴って操縦安定性も向上し、キャンバ角が操縦安定キャンバ角(本実施の形態では第1キャンバ角)の状態で操縦安定性を最大に確保することができる。即ち、車両1の操縦安定性に関しては、車輪2を操縦安定キャンバ角に調整することで、その効果を最大限に発揮することができる。
これに対し、車両1の直進安定性に関しては、効果II,III,IVの実線で表すように、キャンバ角の絶対値が増加するほど、その増加に伴って直進安定性も向上するが、操縦安定キャンバ角よりも絶対値の小さな直進安定キャンバ角の状態で直進安定性を最大に確保することができる。言い換えれば、キャンバ角が直進安定キャンバ角より増加しても、それ以上の車両1の直進安定性の確保は見込めない。これは、車両1が受ける外乱(横風や轍などの影響)や車速などに起因する車両1の姿勢変化を抑制する(車両1の姿勢変化に対する抗力を確保する)ために必要なキャンバスラストが、車輪2を直進安定キャンバ角に調整することで十分に得られるためである。即ち、車両1の直進安定性に関しては、車輪2を操縦安定キャンバ角よりも絶対値の小さな直進安定キャンバ角に調整することで、その効果を最大限に発揮することができる。
このように、車両1の直進安定性を確保するために車輪2に付与する直進安定キャンバ角は、車両1の操縦安定性を確保するために車輪2に付与する操縦安定キャンバ角より小さなキャンバ角であっても、必要な効果を十分に得ることができる。従って、車両1の直進安定性を確保するために、操縦安定キャンバ角と同等の直進安定キャンバ角を車輪2に付与するのでは、車輪2に必要以上のキャンバ角を付与することになる。その結果、キャンバ角が大きくなる分、タイヤ(トレッド)が偏摩耗して、タイヤの寿命が短くなる。また、キャンバ角が大きくなる分、車輪2の転がり抵抗が増加して、燃費の悪化を招く。
これに対し、車両1の走行状態が所定の直進状態である場合に、操縦安定キャンバ角よりも絶対値の小さな直進安定キャンバ角に車輪2のキャンバ角を調整することで、車両1の直進安定性を確保する場合には、車輪2に必要以上のキャンバ角を付与せず、タイヤ(トレッド)の偏摩耗を抑制することができる。よって、タイヤの寿命を向上させることができる。また、車輪2に必要以上のキャンバ角を付与しないので、車輪2の転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができる。
また、第1実施の形態によれば、車両1の状態量に基づいて直進安定キャンバ角を設定するので、車両1の直進安定性を確保しつつ、タイヤの寿命を一層向上させると共に更なる省燃費化を図ることができる。
即ち、車両1の直進安定性を確保するために車輪2に付与する直進安定キャンバ角は、車両1の状態量が大きくなるほど、例えば、車両1が受ける外乱(横風や轍などの影響)や車速が大きくなるほど、車両1が姿勢変化を起こし易くなるので、車両1の状態量に応じて直進安定キャンバ角を大きく設定しなければならない(図9参照)。
従って、車両1の直進安定性を確保する場合に、車両1の状態量に関わらず一定の比較的小さな直進安定キャンバ角を車輪2に付与するのでは、車両1が受ける外乱や車速などが大きいと、車両1の直進安定性を十分に確保することができない。また、車両1の状態量に関わらず一定の比較的大きな直進安定キャンバ角を車輪2に付与するのでは、車両1が受ける外乱や車速などが小さいと、車輪2に必要以上のキャンバ角を付与することになる。その結果、キャンバ角が大きくなる分、タイヤが偏摩耗して、タイヤの寿命が短くなる。また、キャンバ角が大きくなる分、車輪2の転がり抵抗が増加して、燃費の悪化を招く。
これに対し、車両1の状態量に基づいて直進安定キャンバ角を設定することで、車両1の直進安定性を十分に確保しつつも車輪2に必要以上のキャンバ角を付与せず、タイヤの偏摩耗を抑制すると共に車輪2の転がり抵抗を低減することができる。よって、車両1の直進安定性を確保しつつ、タイヤの寿命を一層向上させると共に更なる省燃費化を図ることができる。
更に、第1実施の形態によれば、車両1の横Gと車速との2つの車両1の状態量に基づいて直進安定キャンバ角を設定するので、タイヤの寿命を一層向上させると共に更なる省燃費化を図ることができる。
なお、図5に示すフローチャート(状態量判断処理)において、請求項1記載の第1状態量取得手段としてはS1〜S3の処理が、図6に示すフローチャート(走行状態判断処理)において、請求項1記載の走行状態取得手段としてはS11及びS13の処理が、図8に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の状態量判断手段としてはS41の処理が、操縦安定キャンバ調整手段としてはS43の処理が、直進状態判断手段としてはS45の処理が、直進安定キャンバ調整手段としてはS50の処理が、請求項2記載の第2状態量取得手段としてS47及びS48の処理が、直進安定キャンバ角設定手段としてはS49の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図10から図13を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1が、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRを含む全ての車輪2のキャンバ角をキャンバ角調整装置44により調整可能に構成される場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の後輪202RL,202RRのみのキャンバ角がキャンバ角調整装置244により調整可能とされ、左右の前輪202FL,202FRについてはキャンバ角の調整を行わない構成とされている。
また、第1実施の形態では、左右の前輪2FL,2FR及び左右の後輪2RL,2RRを含む全ての車輪2が同じ構成とされる場合を説明したが、第2実施の形態における車両201は、左右の前輪202FL,202FRと左右の後輪202RL,202RRとが異なる構成とされている。なお、第1実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図10は、第2実施の形態における車両用制御装置200が搭載される車両201を模式的に示した模式図である。なお、図10の矢印U−D,L−R,F−Bは、車両201の上下方向、左右方向、前後方向をそれぞれ示している。
まず、車両201の概略構成について説明する。図10に示すように、車両201は、複数(本実施の形態では4輪)の車輪202を備え、それら車輪202は、車両201の前方側(矢印F方向側)に位置する左右の前輪202FL,202FRと、車両201の後方側(矢印B方向側)に位置する左右の後輪202RL,202RRとを備えている。なお、本実施の形態では、左右の前輪202FL,202FRは、車輪駆動装置3により回転駆動される駆動輪として構成される一方、左右の後輪202RL,202RRは、車両201の走行に伴って従動される従動輪として構成されている。
車輪202は、左右の前輪202FL,202FRが互いに同じ形状および特性に構成されると共に、左右の後輪202RL,202RRが互いに同じ形状および特性に構成されている。また、左右の前輪202FL,202FRは、そのトレッドの幅(図10左右方向の寸法)が、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅よりも広い幅に構成されている。なお、左右の前輪202FL,202FRのトレッドと左右の後輪202RL,202RRのトレッドとは同じ特性に構成されている。
また、車輪202は、左右の前輪202FL,202FRが懸架装置204により車体フレームBFに懸架される一方、左右の後輪202RL,202RRが懸架装置4により車体フレームBFに懸架されている。なお、懸架装置204は、左右の前輪202FL,202FRのキャンバ角を調整する機能が省略されている点(即ち、図2に示す懸架装置4において、FRモータ44FRによる伸縮機能が省略されている点)を除き、その他の構成は懸架装置4と同じ構成であるので、その説明を省略する。
このように、第2実施の形態における車両201は、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅が、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くされているので、前輪202FL,202FRの路面に対する摩擦係数を、後輪202RL,202RRの路面に対する摩擦係数よりも大きくすることができる。その結果、制動力の向上を図ることができる。また、左右の前輪202FL,202FRが駆動輪とされる本実施の形態においては、加速性能の向上を図ることができる。
一方、左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗を、左右の前輪202FL,202FRの転がり抵抗よりも小さくできるので、その分、省燃費化を図ることができる。また、左右の後輪202RL,202RRにキャンバ角を付与できるので、車両201の旋回時には、車両201の旋回特性をアンダステア傾向とすることができ、車両201の旋回安定性を確保することができる。
車両用制御装置200は、上述したように構成される車両201の各部を制御するための装置であり、例えば、各ペダル61,62やステアリング63の操作状態に応じてキャンバ角調整装置244(図11参照)を作動制御する。
次いで、図11を参照して、車両用制御装置200の詳細構成について説明する。図11は、車両用制御装置200の電気的構成を示したブロック図である。車両用制御装置200は、主に、第1実施の形態における車両用制御装置100のキャンバ角調整装置44に代えて、キャンバ角調整装置244を備えている。
キャンバ角調整装置244は、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を調整するための装置であり、左右の後輪202RL,202RRにキャンバ角をそれぞれ付与する合計2個のRL,RRモータ44RL,44RRと、それら各モータ44RL,44RRをCPU71からの指示に基づいて駆動制御する駆動制御回路(図示せず)とを主に備えている。即ち、第2実施の形態におけるキャンバ角調整装置244は、第1実施の形態におけるキャンバ角調整装置44の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FRモータ44FL,44FR)を省略して構成されている。
サスストロークセンサ装置282は、各懸架装置4のサスストロークを検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、各懸架装置4のサスストロークをそれぞれ検出するRL,RRサスストロークセンサ82RL,82RRと、それら各サスストロークセンサ82RL,82RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。即ち、第2実施の形態におけるサスストロークセンサ装置282は、第1実施の形態におけるサスストロークセンサ装置82の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FRサスストロークセンサ82FL,82FR)を省略して構成されている。
接地荷重センサ装置283は、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重をそれぞれ検出するRL,RR接地荷重センサ83RL,83RRと、それら各接地荷重センサ83RL,83RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。即ち、第2実施の形態における接地荷重センサ装置283は、第1実施の形態における接地荷重センサ装置83の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FR接地荷重センサ83FL,83FR)を省略して構成されている。
サイドウォール潰れ代センサ装置284は、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代を検出すると共に、その検出結果をCPU71に出力するための装置であり、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代をそれぞれ検出するRL,RRサイドウォール潰れ代センサ84RL,84RRと、それら各サイドウォール潰れ代センサ84RL,84RRの検出結果を処理してCPU71に出力する出力回路(図示せず)とを備えている。即ち、第2実施の形態におけるサイドウォール潰れ代センサ装置284は、第1実施の形態におけるサイドウォール潰れ代センサ装置84の一部(左右の前輪202FL,202FRに対応するFL,FRサイドウォール潰れ代センサ84FL,84FR)を省略して構成されている。
次いで、図12を参照して、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理について説明する。図12は、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重がタイヤ(トレッド)に偏摩耗を引き起こす恐れのある偏摩耗荷重であるか否かを判断する処理である。なお、第1実施の形態における偏摩耗荷重判断処理と同一の処理については同一の符号を付して、その説明を省略する。
CPU71は、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理に関し、まず、各懸架装置4のサスストロークが所定値以下であるか否かを判断する(S221)。なお、S221の処理では、サスストロークセンサ装置283により検出された各懸架装置4のサスストロークと、その各懸架装置4のサスストロークに対応して閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、懸架装置4のサスストロークと車輪202の接地荷重との比例関係に基づいて、車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の各懸架装置4のサスストロークが所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、各懸架装置4の内の少なくとも1の懸架装置4のサスストロークが所定値より大きいと判断される場合には(S221:No)、そのサスストロークの大きい懸架装置4に対応する車輪202(左右の後輪202RL,202RR)の接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S221の処理の結果、各懸架装置4のサスストロークが所定値以下であると判断される場合には(S221:Yes)、車両1の前後Gが所定値以下であるか否かを判断する(S22)。
また、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理では、S25の処理の結果、車両1のロール角が所定値以下であると判断される場合には(S25:Yes)、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定値以下であるか否かを判断する(S226)。なお、S226の処理では、接地荷重センサ装置283により検出された左右の後輪202RL,202RRの接地荷重と、閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値とを比較して、現在の左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪202RL,202RRの内の少なくとも1の車輪202の接地荷重が所定値より大きいと判断される場合には(S226:No)、かかる車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S226の処理の結果、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が所定値以下であると判断される場合には(S226:Yes)、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値以下であるか否かを判断する(S227)。なお、S227の処理では、サイドウォール潰れ代センサ装置284により検出された左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代と、閾値メモリ72bに予め記憶されている閾値(本実施の形態では、車輪202のタイヤサイドウォールの潰れ代と車輪202の接地荷重との相関に基づいて、車輪202の接地荷重が偏摩耗荷重となる値)とを比較して、現在の左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値以下であるか否かを判断する。
その結果、左右の後輪202RL,202RRの内の少なくとも1の車輪202のタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値より大きいと判断される場合には(S227:No)、その潰れ代の大きい車輪202(左右の後輪202RL,202RR)の接地荷重が偏摩耗荷重であるので、偏摩耗荷重フラグ73eをオンして(S33)、この偏摩耗荷重判断処理を終了する。
一方、S227の処理の結果、左右の後輪202RL,202RRのタイヤサイドウォールの潰れ代が所定値以下であると判断される場合には(S227:Yes)、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S28)。
また、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理では、S28の処理の結果、アクセルペダル61の操作量が所定の操作量以下であると判断される場合には(S28:Yes)、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下であるか否かを判断する(S30)。即ち、第2実施の形態における偏摩耗荷重判断処理では、第1実施の形態における偏摩耗荷重判断処理でのS29の処理が省略されている。
次いで、図13を参照して、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理について説明する。図13は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理を示すフローチャートである。この処理は、車両用制御装置200の電源が投入されている間、CPU71によって繰り返し(例えば、0.2秒間隔で)実行される処理であり、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を調整する処理である。なお、第1実施の形態におけるキャンバ制御処理と同一の処理については同一の符号を付して、その説明を省略する。
CPU71は、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理に関し、S42の処理の結果、操縦安定キャンバフラグ73aがオフであると判断される場合には(S42:No)、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を操縦安定キャンバ角(本実施の形態では第1キャンバ角)に調整し(S243)、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与すると共に、操縦安定キャンバフラグ73aをオンする一方、直進安定キャンバフラグ73bをオフして(S44)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両201の状態量が所定の状態量以上である場合、即ち、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量の内の少なくとも1の操作量が所定の操作量以上であり、車両201の加速、制動または旋回の度合いが比較的大きい場合(特に、本実施の形態では、車輪202が定常キャンバ角または直進安定キャンバ角に調整された状態で車両201が加速、制動または旋回すると、車輪202がスリップする恐れがある場合)には、左右の後輪202RL,202RRに発生するキャンバスラストを増加させて、車両201の操縦安定性を確保することができる。
また、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理では、S49の処理を実行した後、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を、S49の処理で設定した直進安定キャンバ角に調整し(S250)、左右の後輪202RL,202RRにネガティブキャンバを付与すると共に、直進安定キャンバフラグ73bをオンする一方、操縦安定キャンバフラグ73aをオフして(S51)、S52の処理を実行する。
これにより、車両201の走行状態が所定の直進状態である場合、即ち、車速が所定の車速以上であり、且つ、ステアリング63の操作量が所定の操作量以下である場合には、キャンバ角調整装置244による調整が行われていない初期状態(第2キャンバ状態)よりも左右の後輪202RL,202RRに発生するキャンバスラストを増加させて、車両201が受ける外乱(横風や轍などの影響)や車速などに起因する車両201の姿勢変化を抑制することができる。よって、車両201の直進安定性を確保することができる。
また、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理では、S52の処理の結果、偏摩耗荷重フラグ73eがオンであると判断される場合には(S52:Yes)、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を定常キャンバ角に調整し(S253)、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に、操縦安定キャンバフラグ73a及び直進安定キャンバフラグ73bをいずれもオフして(S54)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、左右の後輪202RL,202RRの接地荷重が偏摩耗荷重である場合、即ち、左右の後輪202RL,202RRのタイヤ(トレッド)が偏摩耗する恐れがある場合には、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制して、タイヤの寿命を向上させることができる。また、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができる。
また、第2実施の形態におけるキャンバ制御処理では、S55の処理の結果、操縦安定キャンバフラグ73a又は直進安定キャンバフラグ73bの少なくとも一方がオンであると判断される場合には(S55:Yes)、RL,RRモータ44RL,44RRを作動させて、左右の後輪202RL,202RRのキャンバ角を定常キャンバ角に調整し(S256)、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除すると共に、操縦安定キャンバフラグ73a及び直進安定キャンバフラグ73bをいずれもオフして(S57)、このキャンバ制御処理を終了する。
これにより、車両201の状態量が所定の状態量よりも小さい場合、且つ、車両201の走行状態が所定の直進状態でない場合、即ち、車両201の操縦安定性や直進安定性を優先して確保する必要がない場合には、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、タイヤの偏摩耗を抑制して、タイヤの寿命を向上させることができる。また、左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除することで、左右の後輪202RL,202RRの転がり抵抗を低減して、省燃費化を図ることができる。
なお、図13に示すフローチャート(キャンバ制御処理)において、請求項1記載の状態量判断手段としてはS41の処理が、操縦安定キャンバ調整手段としてはS243の処理が、直進状態判断手段としてはS45の処理が、直進安定キャンバ調整手段としてはS250の処理が、請求項2記載の第2状態量取得手段としてS47及びS48の処理が、直進安定キャンバ角設定手段としてはS49の処理が、それぞれ該当する。
次いで、図14を参照して、第3実施の形態について説明する。第1及び第2実施の形態における直進安定キャンバ角マップ72a(図4参照)では、車両1,201の状態量が「大」又は「中」のいずれに相当する場合でも、直進安定キャンバ角の最大値を第2キャンバ角とすると共に、車両1の状態量が「小」の場合には、車速が最高車速Vmaxに達するまで直進安定キャンバ角を増加させ続けるように規定されていたが、第3実施の形態における直進安定キャンバ角マップでは、車両1,201の状態量が「大」、「中」、「小」のそれぞれの場合において、直進安定キャンバ角の最大値が個別に規定されている。なお、第1及び第2実施の形態と同一の部分については同一の符号を付して、その説明を省略する。
図14は、第3実施の形態における直進安定キャンバ角マップの内容を模式的に示した模式図である。なお、図14において、横軸に示す車速は、図14右側が増加方向(高車速側)を、図14左側が減少方向(低車速側)を、それぞれ表している。また、縦軸に示す直進安定キャンバ角は、マイナス方向のキャンバ角の絶対値を表しており、図14上側が絶対値の増加方向を、図14下側が絶対値の減少方向を、それぞれ表している。
第3実施の形態における直進安定キャンバ角マップには、図14に示すように、車両1,201の状態量が「大」である場合の関係式IVと、車両1,201の状態量が「中」である場合の関係式Vと、車両1,201の状態量が「小」である場合の関係式VIとが、それぞれ記憶されている。
関係式IVによれば、車速がVa(車両1,201が所定の直進状態であるかを判断するための判断基準となる車速)の状態では、直進安定キャンバ角は定常キャンバ角とされている。そして、車速がVaから増加すると、その増加に伴って、直進安定キャンバ角はマイナス方向に直線的に増加し、車速Vbでは、直進安定キャンバ角は第2キャンバ角とされている。また、車速がVbよりも高い状態では、最高車速Vmaxに達するまで、直進安定キャンバ角は第2キャンバ角のまま一定のキャンバ角とされている。なお、関係式IVでは、車速Vaから車速Vbまでの範囲において、直進安定キャンバ角θは、θ=a・Vで表される。但し、車速をVとする。
ここで、第2キャンバ角は、定常キャンバ角よりも絶対値が大きく、且つ、第1キャンバ角よりも絶対値の小さなキャンバ角であって、車両1,201の状態量が「大」である場合に、車輪2,202(202RL及び202RR)を直進安定キャンバ角に調整することによって得られる効果(車両1,201の直進安定性を確保すること)を最大限に発揮できるキャンバ角であり(図9参照)、第1キャンバ角の絶対値に対して半分の値とされている。
関係式Vによれば、車速がVaの状態では、直進安定キャンバ角は定常キャンバ角とされている。そして、車速がVaから増加すると、その増加に伴って、直進安定キャンバ角はマイナス方向に直線的に増加し、車速Vbよりも小さな車速Vdで、直進安定キャンバ角は第3キャンバ角とされている。また、車速がVdよりも高い状態では、最高車速Vmaxに達するまで、直進安定キャンバ角は第3キャンバ角のまま一定のキャンバ角とされている。なお、関係式Vでは、車速Vaから車速Vdまでの範囲において、直進安定キャンバ角θは、θ=b・Vで表され、関係式IVに対して傾きが小さく設定されている(a>b)。
ここで、第3キャンバ角は、定常キャンバ角よりも絶対値が大きく、且つ、第1キャンバ角および第2キャンバ角よりも絶対値の小さなキャンバ角であって、車両1,201の状態量が「中」である場合に、車輪2,202(202RL及び202RR)を直進安定キャンバ角に調整することによって得られる効果(車両1,201の直進安定性を確保すること)を最大限に発揮できるキャンバ角であり(図9参照)、第2キャンバ角の絶対値に対して2/3の値とされている。
関係式VIによれば、車速がVaの状態では、直進安定キャンバ角は定常キャンバ角とされている。そして、車速がVaの状態から増加すると、その増加に伴って、直進安定キャンバ角はマイナス方向に直線的に増加し、車速Vdよりも小さな車速Veで、直進安定キャンバ角は第4キャンバ角とされている。また、車速がVeよりも高い状態では、最高車速Vmaxに達するまで、直進安定キャンバ角は第4キャンバ角のまま一定のキャンバ角とされている。なお、関係式VIでは、車速Vaから車速Veまでの範囲において、直進安定キャンバ角θは、θ=c・Vで表され、関係式IV及びVに対して傾きが小さく設定されている(a>b>c)。
ここで、第4キャンバ角は、定常キャンバ角よりも絶対値が大きく、且つ、第1キャンバ角および第2キャンバ角ならびに第3キャンバ角よりも絶対値の小さなキャンバ角であって、車両1,201の状態量が「小」である場合に、車輪2,202(202RL及び202RR)を直進安定キャンバ角に調整することによって得られる効果(車両1,201の直進安定性を確保すること)を最大限に発揮できるキャンバ角であり(図9参照)、第2キャンバ角の絶対値に対して1/3の値とされている。
なお、上述した第3実施の形態における直進安定キャンバ角マップは、直進安定キャンバ角マップ72aに代えてROM72に設けられ、図8及び図13に示すキャンバ制御処理のS49の処理において直進安定キャンバ角を設定する際に使用される。
以上説明したように、第3実施の形態によれば、車両1,201の姿勢変化に対する抗力を確保するために必要な絶対値の最小となるキャンバ角を直進安定キャンバ角の最大値(本実施の形態では、第2キャンバ角、第3キャンバ角および第4キャンバ角)とするので、車両1,201の直進安定性を最大限に確保しつつ、タイヤの寿命を向上させると共に省燃費化を図ることができる。
即ち、車両1,201の直進安定性は、キャンバ角の絶対値が増加するほど、その増加に伴って直進安定性も向上するが、所定のキャンバ角(本実施の形態では、第2キャンバ角、第3キャンバ角および第4キャンバ角)の状態で直進安定性を最大に確保することができる。言い換えれば、所定のキャンバ角以上のキャンバ角を車輪2,202(202RL及び202RR)に付与しても、それ以上の車両1,201の直進安定性の確保は見込めない(図9参照)。これは、車両1,201が受ける外乱(横風や轍などの影響)や車速などに起因する車両1,201の姿勢変化を抑制する(車両1,201の姿勢変化に対する抗力を確保する)ために必要なキャンバスラストが、かかる所定のキャンバ角に車輪を調整することで十分に得られるためである。
よって、車両1,201の直進安定性を確保する場合に、車両1,201の姿勢変化に対する抗力を確保するために必要な絶対値の最小となるキャンバ角を直進安定キャンバ角の最大値(本実施の形態では、第2キャンバ角、第3キャンバ角および第4キャンバ角)とすることで、車両1,201の直進安定性を最大限に確保しつつ、タイヤの寿命を向上させると共に省燃費化を図ることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。例えば、上記各実施の形態で説明した定常キャンバ角および第1キャンバ角の値は任意に設定することができる。
上記各実施の形態では、アクセルペダル61、ブレーキペダル62及びステアリング63の操作量に基づいて、車両1,201の状態量が所定の操作量以上であるか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量に代えて、他の状態量に基づいて車両1,201の状態量が所定の操作量以上であるか否かを判断することは当然可能である。他の状態量としては、例えば、各ペダル61,62及びステアリング63の操作速度や操作加速度のように、運転者により操作される操作部材の状態量を示すものでも良く、或いは、車両1,201自体の状態量を示すものでも良い。車両1,201自体の状態量を示すものとしては、車両1,201の前後G、横G、ヨーレート、ロール角などが例示される。
上記各実施の形態では、車速およびステアリング63の操作量に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ステアリング63の操作量のみに基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良い。また、ステアリング63の操作量に代えて、ステアリング63の操作速度や操作加速度のように、ステアリング63の操作状態に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良く、或いは、車両1,201の横G、ヨーレートなどのように、車両1,201自体の状態量に基づいて、車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断しても良い。また、車速およびステアリング63の操作量に代えて、他の情報に基づいて車両1,201の走行状態が所定の直進状態であるか否かを判断することは当然可能である。他の情報としては、例えば、他の入出力装置90として例示したナビゲーション装置により取得される情報であって、車両1,201の現在位置が地図データの高速道路上や幹線道路上など所定の区間にわたって直進が続くと判断される直線道路上に位置する場合などが例示される。この場合には、進行先にカーブが存在したり進行先で右左折を必要とする状況において、車両1,201が旋回するたびにキャンバ角調整装置44,244を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
上記各実施の形態では、車両1,201の状態量が所定の状態量以上であるか否かを判断する状態量判断処理において、各ペダル61,62及びステアリング63の操作量が所定の操作量以上であるか否かを判断するための判断基準が、それぞれ閾値メモリ72bに予め記憶された一定値である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、他の入出力装置90として例示したワイパセンサ装置や路面状況センサ装置により天候や路面の状況を取得し、その取得した天候や路面の状況に応じて各判断基準を変更する構成としても良い。この場合には、天候や路面の状況に応じて車両1,201の状態量が所定の状態量以上であるか否かを判断することができるので、車両1,201の操縦安定性を向上させることができる。
同様に、上記各実施の形態では、車輪2,202の接地荷重が偏摩耗荷重であるか否かを判断する偏摩耗荷重判断処理において、懸架装置4の伸縮量、車両1,201の前後G、横G、ヨーレート、ロール角、車輪2,202の接地荷重、タイヤサイドウォールの潰れ代、アクセルペダル61の操作量、ブレーキペダル62の操作量、ステアリング63の操作量、操作速度、操作加速度が所定値以下であるかを判断するための判断基準が、それぞれ閾値メモリ72bに予め記憶された一定値である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、他の入出力装置90として例示したワイパセンサ装置や路面状況センサ装置により天候や路面の状況を取得し、その取得した天候や路面の状況に応じて各判断基準を変更する構成としても良い。この場合には、天候や路面の状況に応じて車輪2,202の接地荷重が偏摩耗荷重であるか否かを判断することができるので、タイヤの寿命を一層向上させると共に更なる省燃費化を図ることができる。
上記各実施の形態では、車両1,201の横G及び車速に基づいて直進安定キャンバ角を設定する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、車両1,201の横G又は車速のいずれか一方のみに基づいて、直進安定キャンバ角を設定しても良い。また、車両1,201の横Gに代えて、他の車両1,201の状態量に基づいて、直進安定キャンバ角を設定しても良い。他の車両1,201の状態量としては、車両1のロール角やヨーレート等が例示される。
上記各実施の形態では説明を省略したが、キャンバ制御処理のS56及びS256の処理において、各車輪2又は左右の後輪202RL,202RRを定常キャンバ角に調整し、各車輪2又は左右の後輪202RL,202RRへのネガティブキャンバの付与を解除する場合に、所定時間(例えば3秒など)の経過を待ってから解除しても良い。この場合には、山道などの車両1,201が頻繁に旋回する道路状況において、車両1,201が旋回するたびにキャンバ角調整装置44,244を作動させてしまうことがなく、キャンバ角の頻繁な切り替わりを防止することができる。
上記各実施の形態では説明を省略したが、各実施の形態における車両1,201の車輪2,202の一部または全部を、他の実施の形態における車輪2,202の一部または全部と置換しても良い。例えば、第1実施の形態における車両用制御装置100により制御される車両1の車輪2を、第2実施の形態における車両201の車輪202に変更しても良い。
上記第1実施の形態では、車両用制御装置100の制御対象である車両1の車輪2が、全て同じ形状および特性に構成され、そのトレッドの幅が同一の幅に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図15に示すように、第1トレッド21及び第2トレッド22の2種類のトレッドを備える構成としても良い。この場合には、各車輪2において、第1トレッド21を車両1の内側に配置し、第2トレッド22を車両1の外側に配置すると共に、第2トレッド22を第1トレッド21よりも硬度の高い材料により構成し、第1トレッド21を第2トレッド22に比してグリップ力の高い特性(高グリップ特性)に構成する一方、第2トレッド22を第1トレッド21に比して転がり抵抗の小さい特性(低転がり特性)に構成することが好ましい。これにより、車輪2のキャンバ角を第1キャンバ角に調整し、車輪2にネガティブキャンバを付与することで、第1トレッド21の高グリップ特性を発揮させて、車両1の操縦安定性を確保することができる。一方、車輪2のキャンバ角を定常キャンバ角に調整し、車輪2へのネガティブキャンバの付与を解除することで、第2トレッド22の低転がり特性を発揮させて、省燃費化を図ることができる。なお、図15は、車両1を模式的に示した模式図である。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRを、左右の前輪202FL,202FRよりも低転がり抵抗とするための手法として、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くする手法を一例として説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、他の手法を採用しても良い。
例えば、他の手法としては、左右の後輪202RL,202RRのトレッドを、左右の前輪202FL,202FRのトレッドよりも硬度の高い材料から構成し、左右の前輪202FL,202FRのトレッドを左右の後輪202RL,202RRのトレッドよりもグリップ力の高い特性(高グリップ性)とする一方、左右の後輪202RL,202RRのトレッドを左右の前輪202FL,202FRのトレッドよりも転がり抵抗の小さい特性(低転がり抵抗)とする第1の手法、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンを、左右の前輪202FL,202FRのトレッドのパターンよりも低転がり抵抗のパターンとする(例えば、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンをラグタイプ又はブロックタイプとし、左右の後輪202RL,202RRのトレッドのパターンをリブタイプとする)第2の手法、左右の後輪202RL,202RRの空気圧を、左右の前輪202FL,202FRの空気圧よりも高圧とする第3の手法、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの厚み寸法を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの厚み寸法よりも薄い寸法とする第4の手法、或いは、これら第1から第4の手法および第2実施の形態における手法(トレッドの幅を異ならせる手法)の一部または全部を組み合わせる第5の手法、が例示される。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くする場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅と同一の幅としても良い。この場合でも、かかる構成に上述した第1から第4の手法の一部または全部を組み合わせることで、左右の後輪202RL,202RRを、左右の前輪202FL,202FRよりも低転がり抵抗とすることができる。
また、上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅が、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くされる場合を説明したが、これに加え、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を次のように構成することが好ましい。即ち、タイヤ幅L([mm])をタイヤ外径R([mm])で除した値(L/R)を0.1より大きく、かつ、0.4より小さくすることが好ましく(0.1<L/R<0.4)、0.1より大きく、かつ、0.3より小さくすることが更に好ましい(0.1<L/R<0.3)。これにより、車両201の走行安定性を確保しつつ、転がり抵抗を小さくして、省燃費化の向上を図ることができる。なお、トレッドの幅は、リム幅よりも大きくタイヤ幅よりも小さな値となる。
上記第2実施の形態では、左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭く構成する場合を説明した。この場合の左右の後輪202RL,202RRのトレッドの幅の設定方法について説明する。
図16は、懸架装置4に支持された後輪1202RL,1202RRの正面図であり、図17は、懸架装置4に支持された後輪202RL,202RRの正面図である。なお、これら図16及び図17は、図2に対応する正面図であり、右の後輪1202RR,202RRのみを図示すると共に、懸架装置4の図示が簡略化されている。また、図16及び図17では、車体Bの外形を通る鉛直線(矢印U−D方向線、図2参照)を外形線S(即ち、車両201の全幅を示す線)として二点鎖線を用いて図示している。
後輪1202RL,1202RRは、第2実施の形態で説明した前輪202FL,202FRと同一の幅に構成された車輪である。ここで、車両201は、前後の全車輪202を懸架装置204により支持する既存の車両に対し、後輪側の懸架装置204にのみRL,RRモータ44RL,44RRによる伸縮機能を追加して懸架装置4とすることで構成された車両である。よって、車両201は、図16(a)に示すように、少なくともキャンバ角が定常キャンバ角(=0°)においては、後輪1202RL,1202RRを外形線Sから外側に突出させない(即ち、保安基準を満たす)ように装着可能とされている。
しかしながら、後輪1202RL,1202RRのキャンバ角を調整する制御を行う場合には、図16(b)に示すように、後輪1202RL,1202RRが外形線Sを越えて外側へ突出し、保安基準を満たすことができないという問題点があった。そのため、後輪1202RL,1202RRのキャンバ角を調整可能な範囲が限定され、十分な角度のキャンバ角を付与することができないという問題点があった。
この場合、懸架装置4自体の配設位置を車両201の内側(図16(a)右側)へ移動させることで、キャンバ角の調整可能範囲を確保することも考えられるが、車両201に大幅な構造の変更を加えることが必要となるため、コストが嵩み、現実的でない。一方、後輪1202RL,1202RRのホイールオフセットを車輪中心線Cから車両201の外側(図16(a)左側)に移動させることで、車両201への構造の変更を行うことなく、比較的大きな角度のキャンバ角を後輪1202RL,1202RRに付与することが可能となる。しかしながら、この場合には、ホイールオフセットの分だけ、後輪1202RL,1202RR自体が車両201の内側へ移動することとなるので、車体Bとの干渉が避けられない。
そこで、本願出願人は、図17に示すように、後輪202RL,202RRのタイヤ幅Wlを狭くすることで、既存の車両(車両201)に大幅な構造の変更を加えることを不要とし、かつ、保安基準を満たしながら、キャンバ角の調整可能範囲を十分に確保することを可能とする構成に想到した。
後輪202RL,202RRのタイヤ幅Wlの設定方法について、図16から図18を参照して説明する。図18は、懸架装置4に支持された車輪の正面図を模式的に図示した模式図であり、キャンバ角θのネガティブキャンバが付与された状態が図示されている。
図18に示すように、車輪の幅寸法をタイヤ幅Wと、直径をタイヤ径Rと、タイヤ中心線(車輪中心線)Cからホイール座面Tまでの距離をホイールオフセットAと、それぞれ規定する。この場合、車輪が外側へ最も突出する位置であるタイヤ外側端Mから、車輪の回転軸とホイール座面Tとの交点である原点Oまでの水平方向の距離である距離Lは次のように算出される。
即ち、図18に示すように、車輪の回転軸と車輪の外側面との交点である位置Pと原点Oとを結ぶ距離は、タイヤ幅Wの半分の値からホイールオフセットAを除算した値(W/2−A)となるので、位置Pから原点Oまでの水平方向の距離である距離Jは、三角比の関係から、J=(W/2−A)・cosθとなる。
一方、位置Pとタイヤ外側端Mとを結ぶ距離は、タイヤ径Rの半分の値(R/2)となるので、タイヤ外側端Kから位置Pまでの水平方向の距離である距離Kは、三角比の関係から、K=(R/2)・sinθとなる。
よって、距離Lは、距離Jと距離Kとの和であるので、これらを加算して、L=(W/2−A)・cosθ+(R/2)・sinθとなる。この関係式をタイヤ幅Wでまとめると、W=2A−R・tanθ+2L/cosθとなる。
車輪のタイヤ外側端Mが車両201の外形線Sを越えて外側へ突出せず、保安基準を満たすためには、距離Lが、原点Oから外形線Sまでの水平方向の距離である距離Z(図16(b)及び図17(b)参照)より小さくなれば良い。よって、タイヤ幅Wを定める上記の式に対し、距離Lの最大値(即ち、距離Z)と、車輪に付与するキャンバ角θの最大値(例えば、3°)とを当てはめることで、車輪のタイヤ幅Wの最大値を決定することができる。
即ち、図16に示す後輪1202RL,1202RRについては、タイヤ外側端Mが外形線Sを越えて外側に突出しないための最大のキャンバ角をθwとすると、そのタイヤ幅Wwは、W=2A−R・tanθw+2Z/cosθwとなり、図17に示す後輪202RL,202RRについては、タイヤ外側端Mが外形線Sを越えて外側に突出しないための最大のキャンバ角をθlとすると、そのタイヤ幅Wlは、W=2A−R・tanθl+2Z/cosθlとなる。
なお、各車輪のトレッドの幅は、タイヤ幅Wを越えない範囲に設定される。なお、タイヤ幅Wの最小値は、タイヤ外側端Mをホイール座面Tよりも内側へ配置できないことから、ホイールオフセットAの2倍の値となる。
以上のように、タイヤ幅Wを定める上記の式によれば、車輪のタイヤ幅W(即ち、トレッドの幅)を狭くすることで、車輪に付与するキャンバ角θの最大値を大きくすることができる。即ち、第2実施の形態で説明したように、後輪202RL,202RRのトレッドの幅(タイヤ幅W)を、前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くすることで、既存の車両(車両201)に大幅な構造の変更を加えることを不要とし、かつ、保安基準を満たしつつ、後輪202RL,202RRにおけるキャンバ角の調整可能範囲を確保することができる。
なお、この場合には、前輪202FL,202FRのトレッドの幅を広くすることができるので、制動力の向上を図ることができる。特に、前輪202FL,202FRが駆動輪とされる第2実施の形態においては、加速性能の向上を図ることができる。一方、後輪202RL,202RRのトレッドの幅を、左右の前輪202FL,202FRのトレッドの幅よりも狭くすることで、これら後輪202RL,202RRの転がり抵抗を、前輪202FL,202FRの転がり抵抗よりも小さくすることができ、その分、省燃費化を図ることができる。