JP2011156557A - スプロケットセグメントの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本製造方法は、特定の歯部30の一部に最終製品の形状に対して欠肉した欠肉部15を形成し、スプロケットセグメント10の歯面12aが加圧方向に対して傾いた状態で斜め鍛造成形を行う鍛造成形ステップと、鍛造成形ステップにおいて金型からはみ出した不要なバリ14を除去するバリ抜きステップと、特定の歯部30の歯面12aに対して変形部材を当接させた状態で歯部30の歯筋方向に移動させて欠肉部15を含む特定の歯部30の形状を所望の形状に変形させる変形ステップと、を備えている。
【選択図】図11
Description
例えば、特許文献1,2には、縦打ちによる5枚歯のスプロケットセグメントの鍛造成形において、アンダーカットを生じないように両端の歯部を予め変形させておき、鍛造後(通常はバリ抜き後)に変形させておいた歯部を、専用の設備、金型等を用いて所望の形状に変形させる方法について開示されている。
すなわち、上記公報に開示されたスプロケットセグメントの製造方法では、アンダーカットを考慮して成形された歯部を変形させるために高い成形力が必要であることから、特殊な設備や加圧能力の高いプレス装置等が必要になる。
また、上記変形工具には、例えば、変形させた後の歯部の歯形形状に倣って歯筋方向に沿って移動する部材等を用いることができる。また、変形工具によって変形させる鍛造成形後の歯部の歯筋は、他の所望の形状の歯部に対して平行に形成されていてもよいし、斜めに形成されていてもよい。
これにより、鍛造成形ステップ時の金型内における材料の充填性を向上させつつ、その後の変形ステップにおいて、アンダーカットが生じないように成形された特定の歯部を変形させる際に最終製品の形状になるように整形と充填とを同時に行うことができる。この結果、鍛造成形時の金型内における材料の充填のために金型にかかる圧力を低減し、歯部を変形させるための特殊な設備や加圧能力の高い設備等を設置することなく、低コストで所望の形状のスプロケットセグメントを製造することができる。
ここでは、鍛造成形時において金型内で最も充填しにくいスプロケットセグメントの歯部の端部に、充填されやすい形状(R部分)を設けている。
これにより、最も充填しにくい部分の形状を工夫したことで、鍛造成形時の金型内におけるスプロケットセグメントの元になる部材の成形性を向上させることができる。そして、鍛造成形時に金型にかかる圧力を小さくすることができる。また、鍛造成形時に生じるバリの量を減らして製品歩留まりを向上させることができる。
ここでは、鍛造成形後のスプロケットセグメントに対して、変形させる歯部の歯面に対してロール工具を当接させた状態で回転させながら歯筋方向に沿って移動させて、歯部を所望の形状に変形させる。
これにより、予め変形させた歯部を所望の形状に変形させることと、歯部をつぶしながら延伸させて欠肉部を製品形状まで充填させることとを、簡素な構成を用いて同時に効率よく実施することができる。
これにより、鍛造成形によって成形された欠肉部を含む歯部をロール工具等を用いて所望の形状に変形させる際に、欠肉した部分も所望の形状になるように変形させることができる。この結果、歯部の変形と製品形状への充填とを、同時に効率よく処理することができる。
これにより、スプロケットセグメントに対して左右両端からほぼ均等な圧力を付与してバランスよく歯部を変形させることができる。
これにより、変形させる歯部の歯筋方向が他の歯部の歯筋方向に対して平行な場合と比較して、変形させる量を少なくすることができる。
[ブルドーザ1の構成]
本実施形態に係るブルドーザ1は、不整地において整地作業を行う建設機械であって、図1に示すように、主として、キャブ2、車体フレーム3、ブレード4、リッパ(作業機)5、および走行装置7を備えている。
車体フレーム3は、ブレード4やリッパ5等の作業機構および走行装置7が取り付けられており、その上部にはキャブ2が載置されている。
ブレード4は、車体フレーム3の前方に設けられており、地面を削り取って土砂を押し運ぶための作業機であって、ブレード操作レバーの操作に応じて油圧シリンダによって駆動される。
走行装置7は、スプロケット9(図2参照)を介して、車体フレーム3の左右下部にそれぞれ設けられた一対の無端状の履帯7aを回転させることで不整地における走行を可能としている。
本実施形態に係るスプロケットセグメント10は、図2および図3(a)〜図3(c)に示すように、ブルドーザ1等の装軌車両の下部走行体に用いられるスプロケット9が周方向に分割された5枚歯を含む略円弧状の部材である。
このスプロケットセグメント10の詳細な成分としては、C(0.4wt%)、Si(0.2wt%)、Mn(1.45wt%)、P(0.01wt%)、S(0.01wt%)、Cr(0.18wt%)、Mo(0.03wt%)、B(0.0015wt%)を含み、それ以外の残部がFeおよび不可避的不純物によって構成されている。
取付部11は、複数のスプロケットセグメント10を組み合わせて円環状のスプロケットを構成した際に下部走行体の駆動部に対して取り付けられる部分であって、図3(a)〜図3(c)に示すように、略円弧状のスプロケットセグメント10における径方向における最内部(最内周側)に配置されており、内周側に向かって突出している。
5つの歯部13は、スプロケットセグメント10の最外周側の面(歯面12a)から径方向外側に向かって突出するように形成されている。また、5つの歯部13のうち、両端に配置された歯部13は、スプロケットセグメント10の鍛造成形時には、金型50の抜き勾配を考慮してアンダーカットが生じないように予め両端側を変形させ、一部が欠肉した欠肉部15を含む歯部(特定の歯部)30(図12および図13参照)として成形されている。歯部30は、後述するしごき成形装置20によってしごき成形処理されて、他の歯部13と同じ形状になるように変形される。なお、このアンダーカットが生じない形状であって欠肉部15を含む歯部30のしごき成形処理については、後段にて詳述する。
バリ部14は、図4に示すように、仕上げ成形時(鍛造成形時)に、スプロケットセグメント10の稜線付近から側面部分、取付部11の端部にかけて形成される。本実施形態では、バリ部14は、上記稜線付近であって、歯部13の幅方向における一方の端部に形成されたR面か、それよりも外側の側面に沿って形成されている。よって、バリ部14が歯面12aに影響することはなく、歯面12aおよび歯部13を精度よく成形することができる。
本実施形態では、上述した構成を備えたスプロケットセグメント10の製造工程において、図6に示す鍛造成形用の金型50を用いている。
金型50は、主として、上型となる第1金型部51と下型となる第2金型部52とを備えている。金型50内では、取付部11の長手方向両端を結ぶ線を回転軸として鍛造方向に対して所定の角度だけ歯筋方向が傾いた状態でスプロケットセグメント10が鍛造成形(荒成形、仕上げ成形)される。この鍛造成形時には、金型50内においてスプロケットセグメント10が斜めに配置されるため、歯面12aに掛からないようにスプロケットセグメント10の稜線付近に沿ってバリ部14を形成することができる。また、金型50内において鍛造方向に対して傾けた歯面がそのまま抜け勾配となるため、抜け勾配を意識した形状、取り代を設ける必要がない。
第2金型部52は、図6に示すように、金型50の下半分として配置されており、図8に示すように、第1金型部51と同様に、3つのステップ(つぶし成形、荒成形、仕上げ成形(図9(a)参照))にしたがって順次成形するための型彫りがなされている。
また、本実施形態の金型50では、図6に示すように、上述したバリ部14のうち、取付部11側のバリ部14aと、歯部13側のバリ部14bとが、金型取付面に対して略平行になるように形成される。
本実施形態では、図14および図15に示すしごき成形装置20を用いて、アンダーカットが生じないように予め変形させ欠肉部15を含む両端の歯部30を所望の形状に変形させるようにしごき成形を行う。
なお、図14は、しごき成形装置20の正面図、図15は、図14のしごき成形装置20を図中A方向から見た側面図、図16は、図15のしごき成形装置20を図中B方向を手前側として示した平面図である。
しごき成形装置20は、図14、図15および図16に示すように、ロールユニット21と、油圧シリンダ22a,22bと、受け台23a,23bと、クランプ用シリンダ24と、クランプ用ウェッジ25と、ロール用ホルダ26と、を備えている。
ロール工具21a,21bは、図15および図16に示すように、回転軸21aa,21baを中心として回転する部材であって、ロールユニット21内に左右一対で設けられている。また、ロール工具21a,21bは、略半球状の部材の曲面同士を互いに連結させたような輪郭形状であって、歯部の歯形に倣った形状である。そして、この略半球状の曲面は、当接するスプロケットセグメント10の特定の歯部30を所望の形状に変形させるように設計されている。左右それぞれのロール工具21a,21bは、スプロケットセグメント10の両端に設けられた特定の歯部30,30に対して対応する位置に設けられている。つまり、左右一対のロール工具21a,21bは、アンダーカットが生じないように成形され欠肉部15を含む特定の歯部30,30に対してそれぞれ当接し、特定の歯部30,30を歯筋方向にしごくように移動させて所望の形状の歯部13,13になるように変形させる。なお、このロール工具21a,21bを用いた特定の歯部30,30のしごき成形処理については、後段にて詳述する。
油圧シリンダ22a,22bは、図14に示すように、左右一対のロール工具21a,21bをそれぞれ駆動するために左右一対で設けられている。そして、油圧シリンダ22a,22bは、図15に示すように、本体部22aa,22ba、ロッド22ab,22bbを有している。油圧シリンダ22a,22bは、本体部22aa,22baからロッド22ab,22bbを伸縮させることで、油圧シリンダ22a,22bの下部にそれぞれ配置されたロール工具21a,21bを上下方向において移動させる。これにより、ロール工具21a,21bをスプロケットセグメント10における特定の歯部30の歯面に対して当接させた状態で、油圧シリンダ22a,22bがロール工具21a,21bを下向きに移動させることで、鍛造成形後のスプロケットセグメント10に含まれる特定の歯部30を所望の形状に変形させることができる。
クランプ用シリンダ24は、受け台23a,23bにセットされたスプロケットセグメント10を、受け台23a,23b間に挟み込む力を付与する。具体的には、クランプ用シリンダ24は、楔状のクランプ用ウェッジ25を略水平方向に押圧することで、間接的に接触している上側の受け台23bを下向きに押圧する。これにより、クランプ用シリンダ24から付与される押圧力が、受け台23a,23bに作用してスプロケットセグメント10が固定される。
クランプ用ウェッジ25は、クランプ用シリンダ24のロッド先端に取り付けられた楔状の部材であって、クランプ用シリンダ24から付与される横向きの押圧力を下向きに変換する。
ここで、上述したスプロケットセグメント10の製造工程について、図9〜図11を用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、本実施形態のスプロケットセグメント10は、図9(a)および図9(b)に示すような工程を経て、丸棒状態の素材からスプロケットセグメント10へと成形されていく。
具体的には、図10のフローチャートに示すように、まず、ステップS11において、素材を加熱処理する。
次に、ステップS13(鍛造成形ステップ)において、つぶし成形後の成形体を金型50内の第2成形ステップで、図9(a)および図11に示すように、鍛造用ハンマによって荒成形を行う。このとき、荒成形後の成形体10aには、稜線付近に沿ってバリ部14が形成される。
その後、ステップS16において、図9(b)に示すように、スプロケットセグメント10に含まれる複数の歯部13のうち、両端に配置された特定の歯部30を、適正な形状に変形させるために、上述したしごき成形装置20の受け台23a,23bにスプロケットセグメント10を固定する。
最後に、ステップS18において、スプロケットセグメント10を熱処理した後、図9(b)に示すように、機械加工によってボルト穴等を形成する。
本実施形態では、上述したように、図14、図15および図16に示すしごき成形装置20を用いて、ステップS16およびステップS17のしごき成形処理を行う。
より詳細には、まず、図15に示すように、受け台23a,23b間に、鍛造成形直後のスプロケットセグメント10を横向きにセットする。
これにより、アンダーカットが生じないように予め変形させ欠肉部15を含む歯部30は、ロール工具21a,21bが当接しながら歯筋方向に沿って移動する際に付与される荷重によって、適正な形状の歯部13に変形・延伸するように加工される。
また、本実施形態では、スプロケットセグメント10の両端に配置された歯部30を同時に変形させることで、左右のバランスよくしごき成形処理を実施することができる。よって、受け台23a,23bによって、変形中のスプロケットセグメント10を保持する荷重も小さくすることができる。
ここで、上述した本実施形態のしごき成形装置20によってスプロケットセグメント10のしごき成形を実施した場合に必要な圧力を、従来のしごき成形装置と比較した結果について説明する。
ここでは、成形に必要な工具にかかる荷重Pは、以下の式によって求められる。
P=S×σ
ただし、Sは工具と歯面との接触面積、σはスプロケットセグメント10の材料の変形抵抗(鋼の熱間時)(ここでは、20kg/mm2=2ton/cm2)である。
また、特許文献2に開示された従来のしごき成形装置では、工具にかかる荷重Pは376tonであった。
これに対して、上述した本実施形態に係るしごき成形装置20では、ロール工具21a,21bにかかる荷重Pは10ton程度であった。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、アンダーカットが生じないように成形された特定の歯部30を所望の形状に変形させる変形工具として、一対のロール工具21a,21bを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、変形工具としては、上述したロール工具に限らず、単に歯面に当接しながら歯部をしごくように歯筋方向に移動して所望の形状に変形させる部材であればよい。
つまり、本発明によれば、変形工具の種類や形状、回転の有無によらず、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
上記実施形態では、5枚歯のスプロケットセグメント10の両端に配置された歯部30の一部に欠肉部15を設けた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、欠肉部は必ずしもスプロケットセグメントの両端の歯部に設けられている必要はなく、後工程においてロール工具等によって変形させる歯部の一部に形成されていえばよい。
上記実施形態では、左右一対のロール工具21a,21bを、5枚歯を含むスプロケットセグメント10の両端に配置された歯部13に対して当接させて所望の形状に変形させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
ただし、5枚歯の両端に配置された歯部が、アンダーカットが生じないように最終製品の形状から変形させて成形されている場合には、バランスよく両端の歯部を同時に所望の形状に変形させることができるという点では、上記実施形態のような構成とすることがより好ましい。
上記実施形態では、つぶし成形、荒成形、仕上げ成形の3工程の鍛造成形を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、荒成形を省略して、つぶし成形と仕上げ成形の2段階でスプロケットセグメントを成形してもよい。
2 キャブ
3 車体フレーム
4 ブレード
5 リッパ
7 走行装置
7a 履帯
9 スプロケット
10 スプロケットセグメント
10a 成形体
11 取付部
12 フランジ部
12a 歯面
13 歯部
14 バリ部
14a,14b バリ部
14c バリ除去加工部
15 欠肉部
15a R面(R部分)
20 しごき成形装置(スプロケットセグメントの製造装置)
21 ロールユニット
21a,21b ロール工具
21aa,21ba 回転軸
22a,22b 油圧シリンダ(駆動部)
22aa,22ba 本体部
22ab,22bb ロッド
23a,23b 受け台(支持部)
24 クランプ用シリンダ
25 クランプ用ウェッジ
26 ロール用ホルダ
30 歯部(特定の歯部)
50 金型
51 第1金型部
52 第2金型部
S ステップ
Claims (6)
- アンダーカットを考慮した形状で鍛造成形された特定の歯部を所望の形状に変形させるスプロケットセグメントの製造方法であって、
前記所望の形状に変形させる前記特定の歯部の一部に、最終製品の形状に対して欠肉した欠肉部を形成し、前記スプロケットセグメントの歯面が加圧方向に対して傾いた状態で斜め鍛造成形を行う鍛造成形ステップと、
前記鍛造成形ステップにおいて金型からはみ出した不要なバリを除去するバリ抜きステップと、
前記特定の歯部の歯面に対して変形工具を当接させた状態で前記歯部の歯筋方向に移動させて前記欠肉部を含む前記特定の歯部の形状を前記所望の形状に変形させる変形ステップと、
を備えているスプロケットセグメントの製造方法。 - 前記欠肉部は、前記歯部の先端付近に形成されたR部分を含む、
請求項1に記載のスプロケットセグメントの製造方法。 - 前記変形ステップでは、前記変形工具として、前記スプロケットセグメントの特定の歯部の歯面に対して当接した状態で回転しながら移動して前記歯部の形状を前記所望の形状に変形させるロール工具を用いている、
請求項1または2に記載のスプロケットセグメントの製造方法。 - 前記鍛造成形ステップでは、5つの歯部を有する前記スプロケットセグメントにおける両端に配置された前記歯部の部分に前記欠肉部を形成する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスプロケットセグメントの製造方法。 - 前記変形ステップでは、前記スプロケットセグメントの両端に配置された前記歯部を、ほぼ同時に前記所望の形状に変形させる、
請求項4に記載のスプロケットセグメントの製造方法。 - 前記変形ステップでは、他の歯部の歯筋方向に対して斜めに成形された前記特定の歯部の歯筋方向を、前記他の歯部の歯筋方向に対して平行になるように変形させる、
請求項1から5のいずれか1項に記載のスプロケットセグメントの製造方法。
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