JP5534838B2 - スプロケットセグメントの製造装置および製造方法 - Google Patents
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例えば、特許文献1,2には、縦打ちによる5枚歯のスプロケットセグメントの鍛造成形において、アンダーカットを生じないように両端の歯部を予め変形させておき、鍛造後(通常はバリ抜き後)に変形させておいた歯部を、専用の設備、金型等を用いて所望の形状に変形させる方法について開示されている。
すなわち、上記公報に開示されたスプロケットセグメントの製造方法では、アンダーカットを考慮して成形された歯部を変形させるために高い成形力が必要であることから、特殊な設備や加圧能力の高いプレス装置等が必要になる。
そして、上記ロール工具が移動するスプロケットセグメントの歯筋方向とは、所望の形状に形成された歯部の歯筋方向を意味している。つまり、アンダーカットを考慮して鍛造成形された歯部が他の歯部に対して斜めになっている場合には、ロール工具は変形させる歯部の歯筋方向に対して斜めに移動することで、歯部を所望の形状に変形させる。
これにより、アンダーカットが生じないように予め変形させた歯部を鍛造成形した後、ロール工具を歯面に当接させた状態で歯筋方向に沿って移動させることで、小さな圧力で容易に所望の形状に変形させることができる。よって、歯部を変形させるための特殊な設備や加圧能力の高い設備等を設置することなく、低コストで所望の形状のスプロケットセグメントを製造することができる。
ここで、上述したロール工具を移動させる径方向とは、略円弧状のスプロケットセグメントを組み合わせたスプロケットの円の中心から径方向に沿った方向を意味している。
これにより、スプロケットセグメントの大小に関わらず、特定の歯部を所望の形状に変形させることができる。
ここでは、スプロケットセグメントの両端の歯部に対応する一対のロール工具を用いて、スプロケットセグメントを製造する。
これにより、両端部分の歯部を同時に変形させることができるため、スプロケットセグメントの製造を効率よく実施することができる。また、左右両端の歯部に対して同様の負荷をかけながら歯部を変形させるため、スプロケットセグメントをバランスよく成形することができる。
ここで、上記略半球状部材の曲面は、スプロケットセグメントの変形後の歯部の形状に合わせて形成されていることが好ましい。
これにより、変形させるスプロケットセグメントの歯部の歯面に対して、ロール工具を当接させた状態で回転させながらしごくように移動させるだけで、効果的に所望のスプロケットセグメントを製造することができる。
ここでは、スプロケットセグメントの歯面に当接させたロール工具を駆動する駆動部として、油圧シリンダを用いている。
本実施形態に係るブルドーザ1は、不整地において整地作業を行う建設機械であって、図1に示すように、主として、キャブ2、車体フレーム3、ブレード4、リッパ(作業機)5、および走行装置7を備えている。
キャブ2には、運転者(オペレータ)が着座するためのオペレータシート(運転席)や各種操作のためのレバー、ペダルおよび計器類等が内装されている。
車体フレーム3は、ブレード4やリッパ5等の作業機構および走行装置7が取り付けられており、その上部にはキャブ2が載置されている。
ブレード4は、車体フレーム3の前方に設けられており、地面を削り取って土砂を押し運ぶための作業機であって、ブレード操作レバーの操作に応じて油圧シリンダによって駆動される。
走行装置7は、スプロケット9(図2参照)を介して、車体フレーム3の左右下部にそれぞれ設けられた一対の無端状の履帯7aを回転させることで不整地における走行を可能としている。
本実施形態に係るスプロケットセグメント10は、図2および図3(a)〜図3(c)に示すように、ブルドーザ1等の装軌車両の下部走行体に用いられるスプロケット9が周方向に分割された5枚歯を含む略円弧状の部材である。
このスプロケットセグメント10の詳細な成分としては、C(0.4wt%)、Si(0.2wt%)、Mn(1.45wt%)、P(0.01wt%)、S(0.01wt%)、Cr(0.18wt%)、Mo(0.03wt%)、B(0.0015wt%)を含み、それ以外の残部がFeおよび不可避的不純物によって構成されている。
取付部11は、複数のスプロケットセグメント10を組み合わせて円環状のスプロケットを構成した際に下部走行体の駆動部に対して取り付けられる部分であって、図3(a)〜図3(c)に示すように、略円弧状のスプロケットセグメント10における径方向における最内部(最内周側)に配置されており、内周側に向かって突出している。
5つの歯部13は、スプロケットセグメント10の最外周側の面(歯面12a)から径方向外側に向かって突出するように形成されている。また、5つの歯部13のうち、両端に配置された歯部13は、スプロケットセグメント10の鍛造成形時には、金型50の抜き勾配を考慮してアンダーカットが生じないように予め両端側を変形させた歯部(特定の歯部)30(図14(a)および図16(a)参照)として成形されている。歯部30は、後述するしごき成形装置20によってしごき成形されて、他の歯部13と同じ形状になるように加工される。なお、このアンダーカットが生じないように予め両端側を変形させた歯部30のしごき成形については、後段にて詳述する。
バリ部14は、図4に示すように、仕上げ成形時(鍛造成形時)に、スプロケットセグメント10の稜線付近から側面部分、取付部11の端部にかけて形成される。本実施形態では、バリ部14は、上記稜線付近であって、歯部13の幅方向における一方の端部に形成されたR部(R面)13aか、それよりも外側の側面に沿って形成されている。よって、バリ部14が歯面12aに影響することはなく、歯面12aおよび歯部13を精度よく成形することができる。
本実施形態では、上述した構成を備えたスプロケットセグメント10の製造工程において、図6に示す鍛造成形用の金型50を用いている。
金型50は、主として、上型となる第1金型部51と下型となる第2金型部52とを備えている。金型50内では、取付部11の長手方向両端を結ぶ線を回転軸として鍛造方向に対して所定の角度だけ歯筋方向が傾いた状態でスプロケットセグメント10が鍛造成形(荒成形、仕上げ成形)される。この鍛造成形時には、金型50内においてスプロケットセグメント10が斜めに配置されるため、歯面12aに掛からないようにスプロケットセグメント10の稜線付近に沿ってバリ部14を形成することができる。また、金型50内において鍛造方向に対して傾けた歯面がそのまま抜け勾配となるため、抜け勾配を意識した形状、取り代を設ける必要がない。
第2金型部52は、図6に示すように、金型50の下半分として配置されており、図8に示すように、第1金型部51と同様に、3つのステップ(つぶし成形、荒成形、仕上げ成形(図9(a)参照))にしたがって順次成形するための型彫りがなされている。
本実施形態では、図11および図12に示すしごき成形装置20を用いて、アンダーカットが生じないように予め変形させた両端の歯部30を所望の形状に変形させるようにしごき成形を行う。
なお、図11は、しごき成形装置20の正面図、図12は、図11のしごき成形装置20を図中A方向から見た側面図、図13は、図12のしごき成形装置20を図中B方向を手前側として示した平面図である。
しごき成形装置20は、図11、図12および図13に示すように、ロールユニット21と、油圧シリンダ(駆動部)22a,22bと、受け台(支持部)23a,23bと、クランプ用シリンダ24と、クランプ用ウェッジ25と、ロール用ホルダ26と、を備えている。
ロール工具21a,21bは、図13に示すように、回転軸21aa,21baを中心として回転する部材であって、ロールユニット21内に左右一対で設けられている。また、ロール工具21a,21bは、略半球状の部材の曲面同士を互いに連結させたような輪郭形状であって、歯部の歯形に倣った形状である。そして、この略半球状の曲面は、当接するスプロケットセグメント10の特定の歯部30を所望の形状に変形させるように設計されている。左右それぞれのロール工具21a,21bは、スプロケットセグメント10の両端に設けられた特定の歯部30,30に対して対応する位置に設けられている。つまり、左右一対のロール工具21a,21bは、アンダーカットが生じないように成形された特定の歯部30,30に対してそれぞれ当接した状態で歯筋方向に移動して、特定の歯部30,30を所望の形状の歯部13,13になるように変形させる。なお、このロール工具21a,21bを用いた特定の歯部30,30のしごき成形については、後段にて詳述する。
油圧シリンダ22a,22bは、図11に示すように、左右一対のロール工具21a,21bをそれぞれ駆動するために左右一対で設けられている。そして、油圧シリンダ22a,22bは、図12に示すように、本体部22aa,22ba、ロッド22ab,22bbを有している。油圧シリンダ22a,22bは、本体部22aa,22baからロッド22ab,22bbを伸縮させることで、油圧シリンダ22a,22bの下部にそれぞれ配置されたロール工具21a,21bを上下方向において移動させる。これにより、ロール工具21a,21bをスプロケットセグメント10における特定の歯部30の歯面に対して当接させた状態で、油圧シリンダ22a,22bがロール工具21a,21bを下向きに移動させることで、鍛造成形後のスプロケットセグメント10に含まれる特定の歯部30を所望の形状に変形させることができる。
クランプ用シリンダ24は、受け台23a,23bにセットされたスプロケットセグメント10を、受け台23a,23b間に挟み込む力を付与する。具体的には、クランプ用シリンダ24は、楔状のクランプ用ウェッジ25を略水平方向に押圧することで、間接的に接触している上側の受け台23bを下向きに押圧する。これにより、クランプ用シリンダ24から付与される押圧力が、受け台23a,23bに作用してスプロケットセグメント10が固定される。
クランプ用ウェッジ25は、クランプ用シリンダ24のロッド先端に取り付けられた楔状の部材であって、クランプ用シリンダ24から付与される横向きの押圧力を下向きに変換する。
ここで、上述したスプロケットセグメント10の製造工程について、図9(a)〜図10を用いて説明すれば以下の通りである。
具体的には、図10のフローチャートに示すように、まず、ステップS11において、素材を加熱処理する。
次に、ステップS13において、つぶし成形後の成形体を金型50内の第2成形ステップで、図9(a)に示すように、鍛造用ハンマによって荒成形を行う。このとき、荒成形後の成形体10aには、稜線付近に沿ってバリ部14が形成される。
次に、ステップS15において、図9(a)に示すように、仕上げ成形後の成形体10aのバリ部14をプレスによって除去するバリ抜き処理を行う。これにより、スプロケットセグメント10が成形される。
続いて、ステップS17において、しごき成形装置20において、ロール工具21a,21bをスプロケットセグメント10の歯部30の歯面に対して当接させた状態で回転させながら歯筋方向に沿って下向きに移動させて歯部30を所望の形状に変形させる。なお、このアンダーカットが生じないように予め変形させた歯部30のしごき成形工程については、後段にて詳述する。
最後に、ステップS18において、スプロケットセグメント10を熱処理した後、図9(b)に示すように、機械加工によってボルト穴等を形成する。
本実施形態では、上述したように、図11、図12および図13に示すしごき成形装置20を用いて、ステップS16およびステップS17のしごき成形を行う。
次に、図12示すように、油圧シリンダ22a,22bによって一対のロール工具21a,21bを、上部の初期位置からスプロケットセグメント10に当接して歯部30の変形を完了する位置まで、スプロケットセグメント10の歯筋方向に沿って下向きに移動させる。このとき、スプロケットセグメント10は、受け台23a,23bに支持された状態で固定されている。そして、スプロケットセグメント10は、歯部30の内側の歯面12aにおいてロール工具21a,21bの一部が当接した状態で、油圧シリンダ22a,22bがロール工具21a,21bを図中下向きに移動させることで、図14(a)〜図14(c)に示すように、歯部30が所望の形状に変形していく。
ここで、上述した本実施形態のしごき成形装置20によってスプロケットセグメント10のしごき成形を実施した場合に必要な圧力を、従来の装置と比較した結果について説明する。
なお、ここで用いたスプロケットセグメント10は、両端の歯間距離L=509mmの大きさのワークを用いた(図3(b)参照)。
ここでは、成形に必要な工具にかかる荷重Pは、以下の式によって求められる。
P=S×σ
ただし、Sは工具と歯面との接触面積、σはスプロケットセグメント10の材料の変形抵抗(鋼の熱間時)(ここでは、20kg/mm2=2ton/cm2)である。
また、特許文献2に開示された従来のしごき成形装置では、工具にかかる荷重Pは376tonであった。
これに対して、上述した本実施形態に係るしごき成形装置20では、ロール工具21a,21bにかかる荷重Pは10ton程度であった。
以上のことから、大型プレス装置のない製造ラインにも用いることができ、かつ装置全体として従来よりも小型化できる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
上記実施形態では、1種類の大きさのスプロケットセグメント10に対して、装置内に固定配置された左右一対のロール工具21a,21bを当接させて、特定の歯部13を所望の形状に変形させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
この場合には、スプロケットセグメントの大きさに応じて、ロール工具の位置を径方向に移動させることで、それぞれのスプロケットセグメントの大きさに合わせた位置にロール工具をセットすることができる。これにより、スプロケットセグメントの大きさにかかわらず、上記と同様に、簡素な構成によって効率よくスプロケットセグメントを製造することができる。
上記実施形態では、図16(a)に示すように、アンダーカットが生じないように予め変形させた状態で成形された特定の歯部30,30の歯筋方向を、他の歯部13の歯筋方向に対して斜めになるように外側へずれた位置に成形した後、しごき成形装置20によって所望の形状に変形させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
この場合でも、ロール工具21a,21bを歯部30,30の歯面12a,12aに当接させた状態で、他の歯部13の歯筋方向に沿って移動させることで、特定の歯部30,30を所望の形状に変形させることができる。
ただし、アンダーカットが生じない形状であって、かつロール工具による変形量を最小限にできるという点では、上記実施形態のように、他の歯部の歯筋方向に対して歯筋方向が斜めに成形されたスプロケットセグメントであることがより好ましい。
上記実施形態では、左右一対のロール工具21a,21bを、5枚歯を含むスプロケットセグメント10の両端に配置された歯部13に対して当接させて所望の形状に変形させる例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
ただし、5枚歯の両端に配置された歯部が、アンダーカットが生じないように最終製品の形状から変形させて成形されている場合には、バランスよく両端の歯部を同時に所望の形状に変形させることができるという点では、上記実施形態のような構成とすることがより好ましい。
上記実施形態では、つぶし成形、荒成形、仕上げ成形の3工程の鍛造成形を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、荒成形を省略して、つぶし成形と仕上げ成形の2段階でスプロケットセグメントを成形してもよい。
2 キャブ
3 車体フレーム
4 ブレード
5 リッパ
7 走行装置
7a 履帯
9 スプロケット
10 スプロケットセグメント
10a 成形体
11 取付部
12 フランジ部
12a 歯面
13 歯部
13a R部
14 バリ部
14a,14b バリ部
14c バリ除去加工部
20 しごき成形装置(スプロケットセグメントの製造装置)
21 ロールユニット
21a,21b ロール工具
21aa,21ba 回転軸
22a,22b 油圧シリンダ(駆動部)
22aa,22ba 本体部
22ab,22bb ロッド
23a,23b 受け台(支持部)
24 クランプ用シリンダ
25 クランプ用ウェッジ
26 ロール用ホルダ
30 歯部(特定の歯部)
50 金型
51 第1金型部
52 第2金型部
110 スプロケットセグメント
110a〜110c スプロケットセグメント(大・中・小)
127 移動機構
P 中心
S ステップ
Claims (4)
- アンダーカットを考慮した形状で鍛造成形された歯部を所望の形状に変形させるスプロケットセグメントの製造装置であって、
前記スプロケットセグメントを固定する支持部と、
前記支持部において固定された前記スプロケットセグメントの特定の歯部の歯面に対して当接した状態で回転しながら移動して前記歯部の形状を前記所望の形状に変形させるロール工具と、
前記ロール工具を前記スプロケットセグメントの歯筋方向に沿って移動させる駆動部と、
前記スプロケットセグメントの大きさに応じて、前記スプロケットセグメントの略円弧状の中心から径方向において前記ロール工具を移動させる移動機構と、
を備えているスプロケットセグメントの製造装置。 - 前記ロール工具は、前記スプロケットセグメントの両端に形成された前記歯部に対応する位置にそれぞれ配置されている、
請求項1に記載のスプロケットセグメントの製造装置。 - 前記ロール工具は、一対の略半球状部材を曲面側において互いに接合したような輪郭形状を有している、
請求項1または2に記載のスプロケットセグメントの製造装置。 - 前記駆動部は、油圧シリンダである、
請求項1から3のいずれか1項に記載のスプロケットセグメントの製造装置。
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