JP2011154396A - 撥水・撥油性及び耐擦傷性が向上した反射防止フィルムの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 透明プラスチック基材フィルム上に、直接又は他の層を介して、最表面層として低屈折率層を形成して反射防止フィルムを製造する方法である。該低屈折率層内には、撥水・撥油性基の導入処理及び架橋基の導入処理が施された空隙を有するシリカ微粒子が含まれている。該撥水・撥油性基の導入処理及び架橋基の導入処理が施された空隙を有するシリカ微粒子は、以下の1)〜3)の工程を用いて製造する。
1)空隙を有するシリカ微粒子をイオン交換樹脂にて前処理することにより、不純物イオンを取り除いてシリカ微粒子表面にあるシラノール基の活性を高める工程。
2)該シラノール基の活性が高められた空隙を有するシリカ微粒子に対して撥水・撥油処理剤を添加し加熱を行うことにより、撥水・撥油性基を導入する工程。
3)該撥水・撥油性基を導入した空隙を有するシリカ微粒子に対して架橋性基を有する化合物を添加し還流することにより架橋基を導入する工程。
【選択図】なし
Description
1)空隙を有するシリカ微粒子をイオン交換樹脂にて前処理することにより、不純物イオンを取り除いてシリカ微粒子表面にあるシラノール基の活性を高める工程。
2)該シラノール基の活性が高められた空隙を有するシリカ微粒子に対して撥水・撥油処理剤を添加し加熱を行うことにより、撥水・撥油性基を導入する工程。
3)該撥水・撥油性基を導入した空隙を有するシリカ微粒子に対して架橋性基を有する化合物を添加し還流することにより架橋基を導入する工程。
シリカ微粒子
本発明で使用するシリカ微粒子は、通常のシリカ微粒子よりも屈折率が低い「空隙を有するシリカ微粒子」を用いる。「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造及び/または気体を含む多孔質構造をとった結果、或いは微粒子が集合体を形成した結果、気体が屈折率1.0の空気である場合、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の空気の占有率に反比例して、屈折率が低下した微粒子及びその集合体のことを言う。微粒子の平均粒子径は、5nm以上300nm以下であり、好ましくは下限が8nm以上であり上限が100nm以下であり、より好ましくは下限が10nm以下であり上限が80nm以下である。シリカ微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、低屈折率層に優れた透明性を付与することが可能となる。
シリカ微粒子の表面に撥水性基を導入する方法としては、シリカ微粒子の表面にシラノール基が多数存在するため、該シラノール基と、疎水性基を有する疎水性化合物を反応させることにより撥水性基を導入する方法、疎水性基を有する界面活性剤でシリカ微粒子表面を処理する方法、疎水性基を有する重合体でシリカ微粒子表面を被覆する方法、疎水性基を含有するガス存在下でプラズマ重合膜をシリカ表面に軽水する方法が挙げられる。
撥水・撥油性処理を施したシリカ微粒子に、架橋性基を有する化合物で処理することにより架橋性基を導入することで、シリカ微粒子とバインダー樹脂とが結合するため、該シリカ微粒子を含有する塗膜は耐擦傷性が向上する。架橋性基をシリカ微粒子に導入する方法としては、上記撥水・撥油性化合物をシリカ微粒子に導入する方法と同手法を用いることができるため、例えば、架橋性基を1つ以上有する金属アルコキシ化合物、金属ハロゲン化合物、金属イソシアネート化合物を用いることができる。架橋性基として、光ラジカル重合、光カチオン重合、光アニオン重合のような重合反応、或いは、光二量化を経て進行する付加重合又は縮重合等の反応形式により反応が進行するものが挙げられる。その中でも、特に、アクリル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基は、紫外線、電子線のような電離放射線の照射により直接的に、又は開始剤の作用を受けて間接的に光ラジカル重合反応を生じるものであり、光硬化の工程を含む取り扱いが比較的容易なものとして好ましい。
上記、撥水・撥油性処理、架橋性基導入処理においては、撥水・撥油性処理剤をシリカ微粒子の表面に反応させた後に、架橋性基を有する化合物(硬化性処理剤)を反応させて、架橋性基を導入することが好ましい。該順序で撥水・撥油性処理、及び架橋性基導入処理を行うことにより、未反応の撥水・撥油性化合物が減少し、塗膜面の外観を損なうことが防止できるからである。
低屈折率層は、前記した撥水・撥油性処理且つ硬化性処理が行われたシリカ微粒子を、バインダー樹脂として電離放射線硬化型樹脂、及び溶剤中に混合分散してなる低屈折率層用コーティング組成物を塗布、電離放射線硬化して形成し、下層の屈折率よりも低くなるようにする。電離放射線硬化型樹脂及び溶剤には下記に示すものが使用できる。
電離放射線硬化型樹脂には、電離放射線の照射を受けたときに直接、又は開始剤の作用を受けて間接的に、重合や二量化等の大分子化を進行させる反応を起こす重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー及びポリマーを用いることができる。具体的には、アクリル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性のモノマー、オリゴマーが好ましく、バインダー成分の分子間で架橋結合が生じるように、一分子内に重合性官能基を2個以上、好ましくは3個以上有する多官能のバインダー成分であることが望ましい。しかしながら、その他の電離放射線硬化性のバインダー成分を用いることも可能であり、例えば、エポキシ基含有化合物のような光カチオン重合性のモノマーやオリゴマーを用いてもよい。
固形成分を溶解分散するための有機溶剤が必須であり、その種類は限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ハロゲン化炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。
透明プラスチック基材フィルム
透明プラスチック基材フィルムの材質は、特に限定されないが、反射防止フィルムに用いられる一般的な材料を用いることができ、例えば、トリアセテートセルロース (TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルサルホン、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、トリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、(メタ)アクリロニトリル等の各種樹脂で形成したフィルム等を例示することができる。基材の厚さは、通常25μm〜1000μm程度である。
ハードコート層は、反射防止積層体に耐擦傷性、強度等の性能を向上させる目的で、必要に応じて、形成されてよい。「ハードコート層」とは、JIS5600−5−4:1999で規定される鉛筆硬度試験で「H]以上の硬度を示すものをいう。
帯電防止層は、反射防止積層体に、静電気の発生の抑制、ゴミの付着の排除、および外部からの静電気障害の抑制を図るために、必要に応じて、設けられてよい。帯電防止層は反射防止積層体の表面抵抗値を1012Ω/□以下とする働きを担うものが好ましいが、その一方で、表面抵抗値が1012Ω/□以上であっても、静電気発生の抑制等の上記諸機能を発揮できるのであれば帯電防止層を設けることが好ましい。
本実施例1、2及び比較列1〜4の透明プラスチック基材フィルム/ハードコート層/低屈折率層からなる反射防止フィルムの作製は以下のようにして行った。
下記組成の成分を混合して低屈折率層形成用組成物を調製した。
28.56質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA) 1.90質量部
イルガキュア907(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.02質量部
イルガキュア184(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製) 0.07質量部
TSF4460(商品名、GE東芝シリコーン(株)製) 0.24質量部
メチルイソブチルケトン 69.21質量部
最低反射率
5℃正反射測定装置を備えた分光光度計(島津製作所(株)製、UV−3100PC:商品名)を用いて反射率を測定した。なお、反射率は波長550nm付近で極小値となったときの値(最低反射率)を示した。
反射防止積層体の表面を、#0000番のスチールウールを用いて、所定の摩擦荷重(200g)で30往復摩擦し、反射防止積層体の表面に傷がないものには○、傷の本数が1〜10本以内のものには△、傷の本数が10本以上のものには×として、反射防止積層体の耐擦傷性を評価した。
協和界面科学(株)製の顕微鏡式接触角計CA−QIシリーズを用いて、撥水性については水、撥油性については流動パラフィンにて測定した。
1晩イオン交換樹脂(AG r 501-x8(D) Resin: 商品名、BIO-RAD Laboratories INC.)にて、不純物イオンをとり除いた空隙を有するシリカゾル(イソプロピルアルコールの10%溶液)93質量部にフッ素系シランカップリング剤(TSL−8233:商品名、東芝シリコーン社製)0.5質量部を添加し、溶剤としてイソプロピルアルコールを5.5質量部加えた。得られた混合物に対して、更に、水を添加した。該水の添加量はフッ素系シランカップリング剤1molに対し3molとした。また、HCl水溶液にて全体の溶液をpH=4に調節した後、80℃、2.5時間過熱攪拌を行った。次いで、得られた処理物に対してメタアクリル系シランカップリング剤(KBM−503:商品名、信越化学社製)を1質量部添加し、さらに80℃、2.5時間還流攪拌を行い、撥水・撥油性及び耐擦傷性のシリカ微粒子を得た。作製した溶液は、イソプロピルアルコールからメチルイソブチルケトンに溶剤置換を行った。
前記実施例1のシリカ微粒子の表面処理において、フッ素系シランカップリング剤(TSL−8233:商品名、東芝シリコーン社製)を1質量部に変更した以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、本実施例2の表面処理シリカ微粒子を得た。
1晩イオン交換樹脂にて、不純物イオンをとり除いた空隙を有するシリカゾル(イソプロピルアルコールの10%溶液)を用いた。
前記実施例1のシリカ微粒子の表面処理において、メタアクリル系シランカップリング剤による処理を施さない以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、比較例2の表面処理シリカ微粒子を得た。
前記実施例1のシリカ微粒子の表面処理において、フッ素系シランカップリング剤による処理を施さない以外は、前記実施例1と同様の処理を行い、比較例3の表面処理シリカ微粒子を得た。
前記実施例1のシリカ微粒子の表面処理において、フッ素系シランカップリング剤による処理、及びメタアクリル系シランカップリング剤による処理を常温で行った以外は、前記実施例1と同様な処理を行い、比較例4の表面処理シリカ微粒子を得た。
Claims (5)
- 透明プラスチック基材フィルム上に、直接又は他の層を介して、最表面層として低屈折率層を形成する反射防止フィルムの製造方法であって、
該低屈折率層内には、撥水・撥油性基の導入処理及び架橋基の導入処理が施された空隙を有するシリカ微粒子が含まれており、
該撥水・撥油性基の導入処理及び架橋基の導入処理が施された空隙を有するシリカ微粒子は、以下の1)〜3)の工程を用いて製造することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法:
1)空隙を有するシリカ微粒子をイオン交換樹脂にて前処理することにより、不純物イオンを取り除いてシリカ微粒子表面にあるシラノール基の活性を高める工程、
2)該シラノール基の活性が高められた空隙を有するシリカ微粒子に対して撥水・撥油処理剤を添加し加熱を行うことにより、撥水・撥油性基を導入する工程、
3)該撥水・撥油性基を導入した空隙を有するシリカ微粒子に対して架橋性基を有する化合物を添加し還流することにより架橋基を導入する工程。 - 前記撥水・撥油処理剤は、パーフルオロアルキル基を有する化合物であり、該基の末端がトリフルオロ基であり、且つ、該基のアルキル基の長さが(CF 2 ) 3 以上である請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
- 前記撥水・撥油処理剤は、フッ素系シランカップリング剤であり、且つ、前記架橋性基を有する化合物は、メタアクリル系シランカップリング剤である請求項1に記載の反射防止フィルムの製造方法。
- 前記撥水・撥油処理剤の前記シリカ微粒子への処理量は、シリカ微粒子100質量部に対して3質量部〜25質量部であり、
前記架橋性基を有する化合物の前記シリカ微粒子への処理量は、シリカ微粒子100質量部に対して5質量部〜25質量部であり、
前記撥水・撥油処理剤と前記架橋性基を有する化合物との合計量が、前記シリカ微粒子100質量部に対し8質量部〜30質量部である請求項1、2又は3に記載の反射防止フィルムの製造方法。 - 請求項1乃至3の何れか1項に記載の反射防止フィルムの製造方法により製造されてなる反射防止フィルム。
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