JP2008115329A - 含フッ素硬化性塗液及びそれを用いた減反射材 - Google Patents

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Tetsuji Hayakawa
哲司 早川
Shotaro Noguchi
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Abstract

【課題】硬化皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が良好であると共に、低屈折率化及び低反射率化を実現することができ、かつ硬化皮膜の耐水性を向上させることができる含フッ素硬化性塗液及びそれを用いた減反射材を提供する。
【解決手段】含フッ素硬化性塗液は、成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と、水熱処理が施されると共に、重合性二重結合を有するシランカップリング剤により変性され、中空部の空隙率が40〜45%であり、平均粒子径が10〜100nmの変性中空シリカ微粒子とを含有している。さらに、含フッ素化合物及び変性中空シリカ微粒子の合計量中における含フッ素化合物の含有量が40〜80質量%及び変性中空シリカ微粒子の含有量が20〜60質量%に設定される。減反射材は、含フッ素硬化性塗液の硬化皮膜が、基材の片面上又は両面上に直接又は機能層を介して最表面に形成されたものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表面に適用され、硬化皮膜の低屈折率化及び低反射率化を発揮できると共に、耐擦傷性及び耐摩耗性を高めることができ、かつ耐水性を向上させることができる含フッ素硬化性塗液及びそれを用いた減反射材に関するものである。
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等の電子画像表示装置は、その視認性を高めるために、蛍光灯などの外部光源から照射された光線の反射が少ないことが求められている。そのため、透明プラスチックフィルム基材の表面に、反射防止層を設けて形成された反射防止フィルムをディスプレイ表面に貼り合わせて利用する方法が一般的に知られている。従来、この反射防止フィルムにあって、反射防止層は高い反射防止性能を得るために高屈折率材料と低屈折率材料の複数層を積層させた多層構成が一般的であったが、より低屈折率である材料を用いれば、単層構成であっても広波長域において低屈折率である反射防止フィルムを得ることが可能となる。単層構成の反射防止フィルムは、多層構成のものに比べて層構成が簡易であるため、生産性やコストパフォーマンスに優れている。
低屈折率材料としては、内部に空洞を有する中空シリカ微粒子を用いた低屈折率コーティング剤が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。すなわち、(メタ)アクリロイルオキシ基を分子内に有する化合物を含む活性エネルギー線硬化型樹脂と、0.5〜200nmの中空微粒子からなる低屈折率コーティング剤である。さらに、特許文献1には、コーティング剤によるコーティング膜の屈折率が1.40〜1.33である旨記載されている。また、低屈折率材料として、重合性基を二つ以上有する含フッ素多官能モノマーを含有する組成物が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。すなわち、含フッ素多官能モノマーと、中空シリカ微粒子とを含有する組成物が開示されている。
加えて、光透過性基材上に、屈折率が1.45以下の低屈折率層が設けられて構成されている反射防止積層体が提案されている(例えば、特許文献3を参照)。係る低屈折率層は、電離放射線硬化型樹脂組成物と、電離放射線硬化性基を有するシランカップリング剤で表面処理され、内部が多孔質又は空洞であるシリカ微粒子とを含有している。該低屈折率層には電離放射線硬化型樹脂組成物及びシリカ微粒子に相溶性を有するフッ素系又はケイ素系の化合物を含ませることができる。
特開2003−292831号公報(第2頁及び第5頁) 特開2006−28409号公報(第2頁、第43〜47頁) 特開2005−99778号公報(第2頁及び第22頁)
ところが、特許文献1に記載の低屈折率コーティング剤を形成する活性エネルギー線硬化型樹脂にはフッ素が含まれていないことから、得られるコーティング膜の低屈折率や低反射率の効果を得ることができない。しかも、中空シリカ微粒子自体は表面に反応性を有していないために、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する活性エネルギー線硬化型樹脂との親和性(結合性)が十分ではない。つまり、中空シリカ微粒子がそのマトリックスに組み込まれる訳ではなく、分散相として分離した状態にあるため、得られるコーティング膜の強度及び硬度が低く、その結果皮膜表面における耐擦傷性及び耐摩耗性が不十分であるという問題があった。さらに、中空シリカ微粒子の表面には水分が吸着されやすく、皮膜上に水滴を放置しておくと視認できるシミのような跡(水跡)ができてしまい、その部分の屈折率が上昇して皮膜表面の反射率が上昇するため、反射防止性能が劣化してしまうという問題が生ずる。
また、特許文献2に記載の組成物においては、中空シリカ微粒子がシランカップリング剤によって表面処理されているだけであることから、中空シリカ微粒子の表面には水分が吸着されやすく、特許文献1に記載の低屈折率コーティング剤と同様の問題が生ずる。さらに、特許文献3に記載の低屈折率層を形成する電離放射線硬化型樹脂組成物はフッ素化合物を含有していないため、フッ素化合物に基づく機能を発現することができず、所望とする反射防止性能を得ることはできない。なお、必要によりその他の成分としてフッ素系化合物が配合されると記載されているが、その含有量は0.01〜10質量%という少量であるため、フッ素系化合物に基づく効果が十分に発揮されない。その上、特許文献2に用いられている中空シリカ微粒子と同様に、中空シリカ微粒子の表面には水分が吸着されやすいため、特許文献1又は2と同様の問題が生ずる。
そこで本発明の目的とするところは、硬化皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が良好であると共に、低屈折率化及び低反射率化を実現することができ、かつ硬化皮膜の耐水性を向上させることができる含フッ素硬化性塗液及びそれを用いた減反射材を提供することにある。
前記の目的を達成するために、第1の発明の含フッ素硬化性塗液は、成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と、水熱処理が施されると共に、重合性二重結合を有するシランカップリング剤により変性され、中空部の空隙率が40〜45%であり、平均粒子径が10〜100nmの変性中空シリカ微粒子とを含有するものである。この場合、含フッ素化合物及び変性中空シリカ微粒子の合計量中における含フッ素化合物の含有量が40〜80質量%及び変性中空シリカ微粒子の含有量が20〜60質量%である。
第2の発明の含フッ素硬化性塗液は、第1の発明において、変性中空シリカ微粒子は、中空シリカ微粒子が下記の化学式(1)で示されるシランカップリング剤によって変性され、10℃/分の昇温速度で室温から500℃まで昇温させたときの熱質量減少が2〜10質量%のものである。
Figure 2008115329
(式中、Zは(メタ)アクリロイルオキシ基であり、Rは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Rは水素原子、メチル基又はエチル基である。)
第3の発明の含フッ素硬化性塗液は、第1又は第2の発明において、含フッ素化合物中のフッ素含有率が55〜70質量%である。
第4の発明の含フッ素硬化性塗液は、第1から第3のいずれかに係る発明において、さらに成膜性を有しない下記の化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含有する。
Figure 2008115329
(式中、X及びYは(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基であり、少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
第5の発明の減反射材は、第1から第4のいずれかに係る発明の含フッ素硬化性塗液を硬化してなる硬化皮膜を、基材の片面上又は両面上に直接又は機能層を介して最表面に形成してなるものである。
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
第1の発明の含フッ素硬化性塗液は、成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物が40〜80質量%と、中空部の空隙率が40〜45%の変性中空シリカ微粒子が20〜60質量%とを含有していることから、屈折率を下げ、反射率を抑えることができる。また、変性中空シリカ微粒子は水熱処理が施されていることから、その外殻が緻密化され、含フッ素硬化性塗液から形成される硬化皮膜表面に水分が吸着され難くなる。さらに、変性中空シリカ微粒子は重合性二重結合を有するシランカップリング剤により変性されているため、シランカップリング剤の重合性二重結合と含フッ素化合物の重合性二重結合とが共重合することにより、中空シリカ微粒子が含フッ素化合物に一体的に結合し、硬化皮膜の強度及び硬度を向上させることができる。
従って、第1の発明によれば、硬化皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が良好であると共に、低屈折率化及び低反射率化を実現することができ、かつ硬化皮膜の耐水性を向上させることができる。
第2の発明の含フッ素硬化性塗液では、変性中空シリカ微粒子は、中空シリカ微粒子が前記化学式(1)で示されるシランカップリング剤によって変性され、10℃/分の昇温速度で室温から500℃まで昇温させたときの熱質量減少が2〜10質量%のものである。このため、第1の発明の効果に加え、含フッ素化合物との相溶性が良好になり、硬化皮膜の強度及び硬度を向上させることができる。
第3の発明の含フッ素硬化性塗液では、含フッ素化合物中のフッ素含有率が55〜70質量%である。そのため、第1又は第2の発明の効果に加え、含フッ素化合物中のフッ素含有率が高いほど屈折率が低くなるため、硬化皮膜の低反射率化を向上させることができる。
第4の発明の含フッ素硬化性塗液では、さらに成膜性を有しない前記化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含有することから、第1から第3のいずれかの発明の効果に加え、フッ素に基づく防汚性等の効果を良好に発揮することができる。
第5の発明の減反射材においては、第1から第4のいずれかに係る発明の含フッ素硬化性塗液を硬化してなる硬化皮膜を、基材の片面上又は両面上に直接又は機能層を介して最表面に形成して構成される。このため、硬化皮膜について、第1から第4のいずれかの発明の効果を発揮することができる。従って、係る減反射材をプラズマディスプレイ(PDP)、液晶表示画面(LCD)等の表示材料として好適に用いることができる。
以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。
本実施形態における含フッ素硬化性塗液は、成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と、水熱処理が施されると共に、重合性二重結合を有するシランカップリング剤により変性され、中空部の空隙率が40〜45%であり、平均粒子径が10〜100nmの変性中空シリカ微粒子とを含有するものである。この場合、含フッ素化合物及び変性中空シリカ微粒子の合計量中における含フッ素化合物の含有量は40〜80質量%及び変性中空シリカ微粒子の含有量は20〜60質量%である。
始めに、前記含フッ素化合物について説明する。フッ素原子(以下、単にフッ素ともいう)は分極率が非常に小さいため、フッ素含有モノマーは分子の凝集力が小さくなって成膜後に低表面エネルギー性を得ることができる反面、成膜性に乏しいという性質を有している。ここで成膜性とは、合成樹脂フィルム等の基材上に塗布されたとき、はじかれずに含フッ素硬化性塗液より硬化皮膜(以下、単に皮膜ともいう)が形成される性質を表す。そして、溶媒を含む含フッ素硬化性塗液を基材に塗布し、加熱して溶媒を除去した段階で一定の厚さをもって均一な皮膜を形成できるものが成膜性良好と判断される。
例えば、トリフルオロメチル基が配向したときの臨界表面張力は6dyn/cmであるのに対してテトラフルオロエチレン基では18dyn/cmとなるように、フッ化メチレン基又はフッ化メチン基の形でフッ素を導入することにより成膜性は改善される。また、分子の凝集力を増大させるという観点からは、高分子化するという手法も有効である。従って、前記成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物としては、フッ素原子がフッ化メチレン基又はフッ化メチン基として分子中に導入された構造を有する含フッ素モノマーや、溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマー等が挙げられる。
前記含フッ素化合物から形成される硬化皮膜は、フッ素原子の含有量が高いほど屈折率が低くなると同時に防汚性も向上するため、フッ素化合物中のフッ素含有率は40〜80質量%であり、50〜70質量%であることが好ましく、55〜70質量%であることがより好ましい。フッ素含有率が40質量%未満の場合には、得られる硬化皮膜の低屈折化及び低反射率化の効果を得ることができなくなる。一方、80質量%を越える場合には、硬化皮膜中のフッ素原子含有量が高すぎるため、皮膜の強度及び硬度が低下し、硬化皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が不足する。
前記フッ素原子がフッ化メチレン基又はフッ化メチン基として分子中に導入された構造を有する含フッ素モノマーは、フッ素原子のほぼ全量がフッ化メチレン基又はフッ化メチン基として分子中に導入されたモノマーである限り、公知の全てのモノマーが使用可能である。すなわち、重合性二重結合が1個(単官能)のモノマー又は2個以上(多官能)のモノマーのいずれであってもよく、それらの混合物であってもよい。これらの含フッ素化合物は、硬化皮膜の強度及び硬度を高めることができ、皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させることができる。前記含フッ素化合物の中では、架橋構造を形成でき、硬化した皮膜の強度や硬度が高い点から、含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。なお、本明細書ではアクリルとメタクリルの双方を(メタ)アクリルと称する。
この含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、例えば1,3−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2−ジフルオロプロパン、1,4−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3−テトラフルオロブタン、1,5−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4−ヘキサフルオロペンタン、1,6−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロヘキサン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−デカフルオロヘプタン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロオクタン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−テトラデカフルオロノナン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン、1,11−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10−オクタデカフルオロウンデカン、1,12−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11−エイコサフルオロドデカン、1,8−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,7−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,8−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、2,7−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,8−ジヒドロキシ4,4,5,5−テトラフルオロオクタン、1,10−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,9−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−2,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス{(メタ)アクリロイルオキシ}−1,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,7,8−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5−テトラフルオロデカン、1,2,8,9−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6−ヘキサフルオロノナン、1,2,9,10−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,10,11−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8−デカフルオロウンデカン、1,2,11,12−テトラキス{(メタ)アクリロイルオキシ}−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン、1,10−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,9−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−2,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、2,9−ビス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−1,10−ジヒドロキシ4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,9,10−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7−オクタフルオロデカン、1,2,11,12−テトラキス(α−フルオロアクリロイルオキシ)−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ドデカフルオロドデカン等が挙げられる。使用に際し、これらは単独又は混合物として用いられる。
含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルは、公知の方法により製造される。例えば、相当する含フッ素エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との開環反応や、相当する含フッ素多価アルコール又は前記開環反応で中間体として得られる水酸基(ヒドロキシル基)を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸クロライドとのエステル化反応により製造される。
また、前記溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーとしては、含フッ素エチレン性モノマーに由来する主鎖を有し、架橋硬化のための反応性基をもつものである。溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、イソプロピルアルコール、2−ブタノール等のアルコール系溶媒等が好ましい。反応性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、α−フルオロアクリロイルオキシ基、エポキシ基等が挙げられる。このような溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは高分子量であるため、フッ素を含有しながらも成膜性が良好で、成膜後に反応性基を利用して架橋硬化することで溶媒不溶の硬化皮膜を得ることができる。
係る溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーは、重合性二重結合をもつ基の含有率が通常1〜20質量%、好ましくは5〜15質量%であり、また質量(重量)平均分子量が通常500〜1,000,000、好ましくは1,000〜500,000、より好ましくは2,000〜200,000である。係る含フッ素反応性ポリマーとしては、公知の含フッ素反応性ポリマー(例えば再公表特許WO02/018457号公報に開示されているもの)が用いられる。
前記成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物の含有量は、前記変性中空シリカ微粒子との合計量(固形分)中に40〜80質量%であり、40〜60質量%であることが好ましい。含フッ素化合物の含有量が40質量%より少ない場合には、硬化皮膜の強度及び硬度が低下する傾向を示し、皮膜表面の耐擦傷性や耐摩耗性が不足する。一方、80質量%より多い場合には、相対的に変性中空シリカ微粒子の含有量が減少して全体のバランスが悪くなり、皮膜表面の耐擦傷性や耐摩耗性が不足し、皮膜の反射率も大きくなる。
次に、変性中空シリカ微粒子について説明する。
中空シリカ微粒子は、シリカ(二酸化珪素、SiO)がほぼ球状に形成され、その外殻内に中空部を有する微粒子であり、その平均粒子径は10〜100nm程度である。外殻の厚さは1〜60nm程度、中空部の空隙率は40〜45%であり、屈折率は1.20〜1.29という低い屈折率である。中空部に屈折率が1.0の空気を含んでいることから、含フッ素硬化性塗液の硬化により形成される皮膜について低屈折率化及び低反射率化を図ることができると共に、シリカ微粒子という無機微粒子により皮膜の耐擦傷性及び耐摩耗性を向上させることができる。中空部の空隙率が40%未満の場合には、中空部の空気量が少なくなり、皮膜の低屈折率化及び低反射率化を図ることができなくなる。その一方、中空部の空隙率が45%を越える場合には、空隙率を大きくするために外殻を薄くする必要があり、その製造が困難になる。
さらに、従来の中空シリカ微粒子は外殻が緻密化されていないため、自身が水分を吸着しやすく、該中空シリカ微粒子を含む皮膜上に水滴を放置しておくと、水分が吸着され視認できるようなシミ(水跡)ができる。本実施形態で用いられる中空シリカ微粒子は、水熱処理を施して外殻を緻密化することにより、シリカ表面に水分が吸着され難くなるため、該中空シリカ微粒子を含む皮膜の耐水性が向上する。
その上、中空シリカ微粒子はシランカップリング剤によって変性されているため、従来のシリカ微粒子又は中空シリカ微粒子にはない優れた効果、すなわち含フッ素化合物との相溶性に優れるという効果を発現することができる。このため、変性中空シリカ微粒子を含フッ素化合物と混合した場合、変性中空シリカ微粒子の凝集を抑制することができ、白化がなく、透明性に優れた皮膜を得ることができる。さらに皮膜中では、シランカップリング剤の重合性二重結合と含フッ素化合物の重合性二重結合とが共重合(化学結合)して強固な膜となるため、皮膜の耐擦傷性及び耐摩耗性を飛躍的に向上させることができる。
この場合、変性による効果を高めるため、中空シリカ微粒子は下記の化学式(1)で示される重合性二重結合を有するシランカップリング剤によって変性されることが好ましい。
Figure 2008115329
(式中、Zは(メタ)アクリロイルオキシ基であり、Rは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Rは水素原子、メチル基又はエチル基である。)
前記変性中空シリカ微粒子についてさらに説明すると、変性中空シリカ微粒子は、平均粒子径5〜100nm、比表面積50〜1000m/gである中空シリカ微粒子の表面をシランカップリング剤によって表面処理することにより製造される。具体的には、中空シリカ微粒子表面のシラノール基と前記シランカップリング剤との加水分解反応により、中空シリカ微粒子表面にオルガノシリル基(モノオルガノシリル基、ジオルガノシリル基又はトリオルガノシリル基)が結合すると共に、その表面に多数の珪素原子に直接結合した有機基を有する。
また、従来の中空シリカ微粒子よりも中空部(空洞)が大きいことから、低屈折率化した変性中空シリカ微粒子とフッ素含有率の高い含フッ素化合物とを組み合わせることにより、硬化皮膜の屈折率は1.32〜1.28となり、従来の硬化皮膜よりも低屈折率及び低反射率を実現することができる。
変性中空シリカ微粒子の含有量は、前記含フッ素化合物との合計量中に20〜60質量%であり、40〜60質量%であることが望ましい。この含有量が20質量%を下回る場合には、変性中空シリカ微粒子の含有量が少なく、得られる皮膜の低屈折率化及び低反射率化を図ることができなくなると共に、耐擦傷性及び耐摩耗性が不足する。一方、60質量%を上回る場合には、過剰の変性中空シリカ微粒子が含フッ素化合物と反応できず、変性中空シリカ微粒子が残存し、かえって皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性に欠ける。前記変性中空シリカ微粒子のシランカップリング剤に含まれる(メタ)アクリロイルオキシ基と含フッ素化合物の重合性二重結合とが共重合して結合される結果、変性中空シリカ微粒子の機能と含フッ素化合物の機能とが相乗的に、かつ持続して発現される。
変性中空シリカ微粒子の原料となる中空シリカ微粒子は、具体的には以下の第1から第5工程を経て製造することができる。
すなわち、第1工程では、珪酸塩の水溶液又は酸性珪酸液と、アルカリ可溶性の無機化合物水溶液とを、pH10以上のアルカリ水溶液又は、必要に応じて種粒子が分散されたpH10以上のアルカリ水溶液中に同時に添加し、シリカとシリカ以外の無機化合物のモル比が0.3〜1.0の範囲にある核粒子分散液を調製する。
続いて、第2工程では、前記核粒子分散液にシリカ源を添加して、核粒子表面に第1シリカ被覆層を形成させる。次いで、第3工程では、前記第1シリカ被覆層を形成させた分散液に酸を加え、核粒子を構成する元素の一部又は全部を除去する。次に、第4工程では、第3工程で得られた中空シリカ微粒子の分散液に、アルカリ水溶液と、有機珪素化合物又はその部分加水分解物とを添加し、中空シリカ微粒子に第2シリカ被覆層を形成する。
さらに、第4工程で得られた中空シリカ微粒子分散液を水熱処理する第5工程を加えることが好ましい。水熱処理は、高温の水の存在下に行われる中空シリカ微粒子の変性処理である。この水熱処理により外殻が緻密化された中空シリカ微粒子を得ることができる。外殻が緻密化されることにより、水分が吸着し難くなり、中空シリカ微粒子の耐水性を向上させることができ、その結果中空シリカ微粒子を変性して得られる変性中空シリカ微粒子と含フッ素化合物とを組み合わせた含フッ素硬化性塗液を硬化して得られる皮膜の耐水性を向上させることができる。また、外殻が緻密化されることにより、外殻の厚さを薄くでき、中空部の空隙率を高くすることができる。
水熱処理の条件としては、処理温度200〜280℃であることが好ましく、処理時間5〜20時間であることが好ましく、10〜20時間であることがより好ましい。処理温度が200℃未満の場合、水熱処理が十分に行われず、中空シリカ微粒子の外殻の緻密化が不十分になる傾向を示す。その一方、280℃を越える場合、中空シリカ微粒子の外殻がそれ以上緻密化することがなく、かえって中空シリカ微粒子が凝集して好ましくない。また、処理時間が5時間未満の場合、中空シリカ微粒子の外殻を十分に緻密化できないため好ましくない。一方、20時間を越える場合、中空シリカ微粒子の外殻がさらに緻密化することがなく、中空シリカ微粒子の生産性が低下するため、工業上好ましくない。
シランカップリング剤による中空シリカ微粒子の変性は、以下のようにして行われる。例えば、有機溶媒中に分散された中空シリカ微粒子に対してシランカップリング剤を加えて混合し、この混合物に蒸留水を加えて通常の加水分解反応及び縮合反応を行なう。中空シリカ微粒子の固形分としては1〜70質量%が好ましく、15〜40質量%がより好ましい。この場合、シランカップリング剤を加える順序は特に制限されない。混合する蒸留水の含有量は、シランカップリング剤に対して質量で3〜5倍であることが望ましい。加水分解反応及び縮合反応を行うための操作は、攪拌しながら常圧下で3〜7時間にわたり、有機溶媒の還流を行なうことにより実施される。
変性中空シリカ微粒子の製造方法についてさらに説明すると、シリカ濃度が1〜70質量%のオルガノゾルを調製し、30〜300℃の範囲で、シランカップリング剤とアルカリ触媒を加え、シリカ含有量に対して水分量が0.1〜50質量%の条件で中空シリカ微粒子にシランカップリング剤を反応させる。オルガノゾルの製造方法は、水を分散媒として調製された中空シリカ微粒子からなるシリカゾルを、溶媒置換して、オルガノゾルとする。
シランカップリング剤としては、例えばγ−メタアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタアクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等が用いられる。シランカップリング剤の含有量は、中空シリカ微粒子100質量部に対して、通常1〜50質量部であり、好ましくは3〜25質量部である。この含有量が1質量部未満では未処理の中空シリカ微粒子の割合が高くなり、変性中空シリカ微粒子の収量が少なくなって好ましくなく、50質量部を越えるとシランカップリング剤が過剰となり、過剰のシランカップリング剤が残存して好ましくない。
前記有機溶媒としては、シランカップリング剤による中空シリカ微粒子の表面被覆に悪影響を与えるものでない限り特に制限されるものではない。このような有機溶媒の例としては、アルコール類、グリコール類、エステル類、ケトン類、窒素化合物類、芳香族類などを使用することができる。有機溶媒として具体的には、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。これらのうち、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が好ましい。有機溶媒は単独又は2種類以上を混合して使用することができる。得られた変性中空シリカ微粒子は遠心分離等によって単離することも可能であるが、有機溶媒が存在する状態のまま、後の工程に供することもできる。
前記アルカリ触媒の種類は特に限定されず、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物、アミン化合物などが好適に使用される。これらアルカリ触媒は水溶液の形で添加しても良い。アルカリ触媒の含有量は、特に制限されずアルカリ触媒の種類にもよるが、中空シリカ微粒子が分散されているオルガノゾルに対して望ましくは20〜2000ppmである。この含有量が20ppm未満の場合、中空シリカ微粒子表面でのシラン化合物の反応が十分に進行しないことがある。他方、2000ppmを越える場合、余剰のアルカリ触媒により、中空シリカ微粒子を含フッ素化合物に分散させた際の分散性が低下することがあり、またアルカリ触媒が組成物中に残存することによる弊害が発生することがある。
反応液中の水分量は、シリカ含有量に対して好ましくは10〜50質量%、より好ましくは10〜40質量%である。水分量が10〜50質量%の範囲にあれば、中空シリカ微粒子表面とシランカップリング剤が反応して効果的に表面処理が行なわれる。水分量が10質量%未満では表面処理効率が低く、安定した表面処理が行なわれず、50質量%を越えるとシランカップリング剤同士が反応する傾向が強まり、結果的に中空シリカ微粒子の表面処理が不十分になる。
中空シリカ微粒子にシランカップリング剤を反応させるときの反応温度は、30℃から有機溶媒の沸点未満の温度範囲が好適であり、圧力容器を使用して反応を行う場合を考慮すると30〜300℃であることが好適である。反応温度が30℃未満では、反応速度が遅く、実用的ではない。他方、300℃を越えると、オルガノゾルの溶媒の沸点を越え、溶媒の蒸発により、水分割合の増加などを招く場合があって好ましくない。
また、中空シリカ微粒子にシランカップリング剤を反応させるときの反応時間は、0.1〜100時間が好ましく、3〜30時間がより好ましい。反応時間が0.1時間より短い場合、反応が十分に進行しないときがあり、実用的ではない。他方、100時間より長い場合、収率等の向上は見られず、それ以上の反応の継続は好ましくない。表面処理により変性された中空シリカ微粒子は、必要に応じてさらに前記と同様の方法により有機溶媒置換を行っても良い。
変性中空シリカ微粒子の平均粒子径は、10〜100nmであり、30〜80nmであることが好適である。平均粒子径がこの範囲にある変性中空シリカ微粒子は、透明な皮膜を形成することができる。平均粒子径が10nm未満の変性中空シリカ微粒子は製造が難しい。他方、100nmを越える場合には、光の散乱が大きくなり、薄膜においては反射が大きくなり、反射防止機能を発揮できなくなる。
変性中空シリカ微粒子の比表面積は、溶媒中又は造膜中の変性中空シリカ微粒子の分散性及び安定性を得るうえで50〜1000m/gが好ましく、50〜200m/gがより好ましい。比表面積が50m/g未満の場合には、低屈折率の変性中空シリカ微粒子を得ることが難しくなる。他方、1000m/gを越える場合には、変性中空シリカ微粒子の分散安定性が低下して望ましくない。
変性中空シリカ微粒子において、変性処理により中空シリカ微粒子に結合したシランカップリング剤の量は、熱質量測定法(TG)により簡便に知ることができる。この熱質量測定法(Thermogravimetry Analysis)とは、試料の雰囲気温度の上昇(又は下降)による試料の質量変化を温度に対して測定するものである。係る温度変化に対する質量変化曲線はTG曲線と呼ばれている。
変性中空シリカ微粒子については、200〜500℃の温度範囲で熱質量測定が行われるが、例えば10℃/分の昇温速度で室温から500℃まで昇温させたときの熱質量減少が好ましくは2〜10質量%、より好ましくは3〜10質量%である。熱質量減少が2質量%未満の変性中空シリカ微粒子を配合してなる含フッ素硬化性塗液より形成される皮膜では、白化が発生すると共に、耐擦傷性及び耐摩耗性共に不十分になる。一方、熱質量減少が10質量%を越えると、粒子間の反応が起こりやすくなるため、変性中空シリカ微粒子のゾルとしての安定性、及び含フッ素硬化塗液としての安定性が低下して好ましくない。
硬化皮膜の耐水性は、その皮膜の反射率で評価することができる。耐水性のない皮膜は、皮膜上に水滴を30分間放置しておくと、水分が吸着し、屈折率が上昇するため、結果として皮膜表面における光の反射率が上昇する。水熱処理を施した中空シリカ微粒子を用いて得られた含フッ素硬化性塗液による皮膜では、皮膜上に水滴を30分間放置しても、放置前後での皮膜表面における光の反射率変化を0.3%以下に抑えることができる。
次に、含フッ素硬化性塗液には、さらに成膜性を有しない下記化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含有することが好ましい。
Figure 2008115329
(式中、X及びYは(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基のいずれかであり、少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
上記の含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、自身が成膜性を発揮しないものの、前記成膜性を有する含フッ素化合物に親和性を示し、その成膜性を低下させることがないものである。このため、含フッ素硬化性塗液は優れた成膜性を発揮することができる。また、成膜性を有しない化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、高い防汚性を発現することができる成分である。さらに、含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは重合性二重結合をもつため、前記成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と共重合反応を行ない、硬化皮膜となる。
係る含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、その末端にトリフルオロメチル基(CF−)をもつ炭素数10のフルオロアルキル基を有しており、この含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは少量でもトリフルオロメチル基が表面に配向される。特に、前記成膜性を有し、重合性二重結合をもつ高フッ素含有量の含フッ素化合物による皮膜中であってもトリフルオロメチル基が表面に十分に配向される。従って、得られる含フッ素硬化皮膜は、防汚性、低屈折率性等の特性を発揮することができる。これに対し、炭素数9以下のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、末端のトリフルオロメチル基が表面に十分に配向されず、その効果が得られない。一方、炭素数11以上のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは、製造や入手が困難である。つまり、炭素数10のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルのみが他の鎖長のフルオロアルキル基を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステルと比較しても特異的な機能を発揮できるのである。
化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルとして、具体的には、1−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン及び1,2−ビス(メタ)アクリロイルオキシ4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン等が挙げられる。これらの含フッ素(メタ)アクリル酸エステルは単独で、或いは混合物として用いることができる。
前記化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、前記含フッ素化合物と変性中空シリカ微粒子との合計量に対して0.5〜30質量%であることが好ましい。この含有量が0.5質量%未満の場合には硬化皮膜表面の防汚性が低下し、30質量%を越える場合には透明かつ均一で良好な硬化皮膜を得ることが困難となる傾向にある。
また、含フッ素硬化性塗液中には、塗液の粘度調整や塗布後の表面レベリングのために、反応を阻害しない限り、溶媒を含有させても良い。該溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2−ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒等が挙げられる。さらに、含フッ素硬化性塗液中には、フッ素含有量を調整する等の目的で、フッ素を含有しない多官能(メタ)アクリル酸エステル、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を60質量%以下の割合で配合することができる。この含有量が60質量%を越える場合には皮膜の屈折率の上昇を招き、例えば減反射材として使用するとき好ましくない。
前記硬化皮膜は、電子線等の高エネルギー線により含フッ素硬化性塗液を重合硬化したり、熱分解型重合開始剤や光重合開始剤の存在下に含フッ素硬化性塗液を重合硬化したりすることにより得られる。これらの中では、光重合開始剤を配合した含フッ素硬化性塗液を基材表面に塗布した後、不活性ガス雰囲気下で紫外線を照射して重合硬化させる方法が簡便で好ましい。
前記光重合開始剤としては、紫外線照射による重合開始能を有するものであれば何れでもよい。例えば、1−ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフェリノプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン等のアセトフェノン系重合開始剤、ベンゾイン、2,2−ジメトキシ1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のベンゾイン系重合開始剤、ベンゾフェノン、[4−(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系重合開始剤、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系重合開始剤等が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独又は混合物として用いることができる。
光重合開始剤の含有量は、含フッ素硬化性塗液中の固形分に対し、0.1〜20質量%であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が0.1質量%未満の場合には含フッ素硬化性塗液の重合硬化が不十分となり、20質量%を越える場合には重合硬化後の皮膜の屈折率が上昇するため好ましくない。紫外線照射に用いられる紫外線灯の種類は、一般的に用いられているものであれば特に制限されず、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が使用される。
紫外線照射の条件として、照射量は10mJ以上が好ましく、100mJ以上がさらに好ましい。照射量の上限は、この種の紫外線照射における常法に従って決定される。照射線量が10mJより少ない場合には重合硬化後に得られる皮膜に十分な硬度が得られない。また、重合硬化後にさらに紫外線照射による後硬化を行なってもよい。紫外線照射時の酸素濃度は、重合硬化時及び後硬化時とも、窒素、アルゴン等の不活性ガスを吹き込む等により1000ppm以下に抑えることが良好な重合硬化性を得るために好ましい。また、皮膜の膜厚は好ましくは50〜200nmである。この膜厚が50nm未満又は200nmを越える場合には、減反射効果が低下する。
次に、減反射材は、硬化皮膜を基材の片面上又は両面上に、直接又は機能層を介して最表面の低屈折率層として形成することにより得られる。機能層としては、高屈折率材料による層、ハードコート層、帯電防止層、紫外線防止層、防眩用のアンチグレア層、近赤外線防止層、電磁波遮蔽層等が挙げられる。機能層として減反射効果を高めるために高屈折率材料による層を設けた場合、その高屈折率材料としては、屈折率1.55以上のものが好ましく、その膜厚は50〜500nmであることが好ましい。前記低屈折率材料層及び高屈折率材料層は、基材上に1層ずつ設けてもよいが、それぞれを複数層設けてもよい。複数層設ける場合、最外層には前記低屈折率層を設ける。屈折率の異なる層を100nm程度の光学膜厚で積層することにより、薄膜界面で発生させた界面反射光と最表面の反射光とを干渉させて相殺することで減反射効果を発現させることができる。従って、基材表面には基材側から順に屈折率の異なる層を積層し、最表面に硬化皮膜よりなる低屈折率層が設けられる。
減反射材において表面硬度をさらに高めるために、機能層としてハードコート層を設けることができる。ハードコート層の材料としては特に制限されず、重合性不飽和基を2個以上有する多官能モノマー等から形成される通常のハードコート用樹脂を用いることができる。ハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。
各層の形成方法は特に限定されず、通常行なわれている塗布方法、例えばロールコート法、ディップコート法、スピンコート法等が採用される。減反射材において、さらに防眩性を持たせるために、減反射層と基材との間に、アンチグレア層を設けることができる。アンチグレア層は防眩層のことで、層表面に均一かつ微細な凹凸を形成する手法や層中に屈折率の異なる微粒子を混入する手法で形成され、光を散乱させ、層に入射した光が真直ぐに戻ってこないようにしたものである。このアンチグレア層の厚さは1〜10μmが好ましく、3〜7μmがより好ましい。アンチグレア層の形成方法は特に制限されず、通常使用される方法、例えば微粒子を含む樹脂液を塗工する方法、或は塗工後にエンボスロール等を用いて表面を凹凸状にする方法等が採用される。
前記基材としては、特に制限されるものではないが、フィルム状又はシート状のものが好ましく、量産性の点からフィルム状のものが好ましい。基材を構成する材料としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂等を挙げることができる。
減反射材は通常のフィルムやシートに減反射処理が施してあるため、プラズマディスプレイパネル(PDP)、平面CRT、液晶表示画面(LCD)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)及び表面電界ディスプレイ(SED)に代表される平面状電子ディスプレイの表面に貼り合わせること等によって、背景からくる蛍光灯等の映り込みを少なくすることができる。また、使用に際して汚れの付着を軽減することができると共に、付着した汚れの拭取り性を向上させることができる。これらの効果により視認性を著しく向上できるため、目の疲れ等を軽減することができる。
以上詳述した実施形態によって発揮される作用及び効果について、以下にまとめて記載する。
・ 本実施形態の含フッ素硬化性塗液には、成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物が40〜80質量%と、中空部の空隙率が40〜45%の変性中空シリカ微粒子が20〜60質量%とが含まれている。含フッ素化合物中のフッ素の性質、その高い含有量及び変性中空シリカ微粒子の高い空隙率により、含フッ素硬化性塗液から形成される硬化皮膜の屈折率を下げ、反射率を抑えることができる。また、変性中空シリカ微粒子は水熱処理が施されていることから、その外殻が緻密化され、硬化皮膜表面に水分が吸着され難くなる。さらに、変性中空シリカ微粒子は重合性二重結合を有するシランカップリング剤により変性されているため、シランカップリング剤の重合性二重結合と含フッ素化合物の重合性二重結合とが共重合することにより、中空シリカ微粒子が含フッ素化合物に一体的に結合し、皮膜の強度及び硬度を向上させることができる。これらの作用は、含フッ素硬化性塗液の調製及び硬化皮膜の形成の際に発現され、相乗的かつ持続的に働く。
従って、硬化皮膜表面の耐擦傷性及び耐摩耗性が良好であると共に、低屈折率化及び低反射率化を実現することができ、かつ硬化皮膜の耐水性を向上させることができる。
・ 変性中空シリカ微粒子は、中空シリカ微粒子が前記化学式(1)で示されるシランカップリング剤によって変性され、10℃/分の昇温速度で室温から500℃まで昇温させたときの熱質量減少が2〜10質量%のものである。このため、変性中空シリカ微粒子と含フッ素化合物との相溶性が改善され、硬化皮膜の強度及び硬度を向上させることができる。
・ 含フッ素化合物中のフッ素含有率が55〜70質量%であることにより、含フッ素化合物中のフッ素含有率が高く、それに基づいて硬化皮膜の屈折率が低くなり、低反射率化を向上させることができる。
・ 含フッ素硬化性塗液は、さらに成膜性を有しない前記化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含有することにより、フッ素に基づく防汚性等の効果を良好に発揮することができる。
・ 減反射材は、前記含フッ素硬化性塗液を硬化してなる硬化皮膜を、基材の片面上又は両面上に直接又は機能層を介して最表面に形成して構成される。このため、硬化皮膜について前述した効果を発揮することができ、減反射材をプラズマディスプレイ(PDP)、液晶表示画面(LCD)等の表示材料として好適に用いることができる。
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各例における部は質量部、%は質量%を表す。
(製造例1、表面にハードコート層を有するフィルムの製造)
光重合性ウレタンアクリレート〔商品名:紫光UV7600B、日本合成化学工業(株)製〕50部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート〔商品名:DPHA、日本化薬(株)製〕20部、光重合開始剤〔商品名:IRGACURE184、チバスペシャルティケミカル(株)製〕3部、イソプロパノール(IPA)30部を混合して、ハードコート層用塗液を得た。
これを80μmの厚さのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム〔商品名:KC8UY、コニカミノルタオプト(株)製〕上に、乾燥膜厚がおよそ4μmになるようにスピンコート法で塗布した。この上に紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射し、ハードコート層用塗液を硬化させ、表面にハードコート層を形成したTACフィルム(以下、これをHC−TACと略記する)を作製した。
(製造例2、変性中空シリカゾルαの製造)
第1工程として、平均粒子径5nm、シリカ(SiO2)濃度20%のシリカゾルと純水とを混合して反応母液を調製し、80℃に加温した。この反応母液のpHは10.5であり、同反応母液にSiO2として1.17%の珪酸ナトリウム水溶液と、アルミナ(Al23)として0.83%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは、珪酸ナトリウム及びアルミン酸ナトリウムの添加直後12.5に上昇し、その後ほとんど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のSiO2・Al23一次粒子分散液(核粒子分散液)を調製した。
次いで、第2工程として、このSiO2・Al23一次粒子分散液を採取し、純水を加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、濃度0.5%の硫酸ナトリウムを添加した。続いて、SiOとして濃度1.17%の珪酸ナトリウム水溶液と、Alとして濃度0.5%のアルミン酸ナトリウム水溶液とを添加して複合酸化物微粒子分散液(核粒子に第1シリカ被覆層を形成した微粒子分散液)を得た。そして、これを限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13%の複合酸化物微粒子分散液とした。
第3工程として、この複合酸化物微粒子分散液に純水を加え、さらに濃塩酸(35.5%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lとを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離し、洗浄して固形分濃度20%のシリカ系微粒子(1)の水分散液を得た。
第4工程として、前記固形分濃度20%のシリカ系微粒子(1)の水分散液と、純水、エタノール及び28%アンモニア水との混合液を35℃に加温した後、エチルシリケート(SiO2 28%)を添加してシリカ被膜(第2シリカ被覆層)を形成した。続いて、純水5Lを加えながら、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%のシリカ系微粒子(2)の分散液を調製した。
最後に第5工程として、再びシリカ系微粒子(2)の分散液を200℃にて11時間水熱処理した。その後、純水5Lを加えながら限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20%に調整した。そして、限外濾過膜を用いて、この分散液の分散媒をエタノールに置換し、固形分濃度20%のオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nmで、比表面積が110m/gの中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(以下、「中空シリカゾルA」と称する。)であった。
該中空シリカゾルA(シリカ固形分濃度20%)200gを用意し、限外濾過膜にて、メタノールへの溶媒置換を行い、SiO分が20%のオルガノゾル100g(水分量はSiO分に対して0.5%)を調製した。そこへ28%アンモニア水溶液を前記オルガノゾル100gに対してアンモニアとして100ppmとなるように加え、十分に混合し、次にγ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名:KBM5103、信越化学(株)製〕3.6gを添加し、反応液とした。これを50℃に加温し、攪拌しながら50℃で6時間加熱を行なった。加熱終了後、反応液を常温まで冷却し、さらにロータリーエバポレーターでイソプロピルアルコールへ溶媒置換を行い、SiO濃度20%の被覆中空微粒子からなるオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nm、屈折率1.25、空隙率40〜45%で、比表面積が130m/g、熱質量測定法(TG)による質量減少割合が3.6%の変性中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(以下、「変性中空シリカゾルα」と称する。)であった。
なお、平均粒子径及び比表面積及びTGは以下の方法により測定した。
(平均粒子径)
粒子径分布測定装置(大塚電子(株)製、PAR−III)を使用して、レーザー光による動的光散乱法により平均粒子径を測定した。
(比表面積)
ゾル50mlを110℃で20時間乾燥した試料について、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
(示差熱熱質量同時測定法、TG/DTA)
示差熱熱質量同時測定装置(理学電機(株)製、Themoplus TG8110)を用いて示差熱熱質量同時測定を行なった。なお、TGは熱質量測定法(Thermogravimetry Analysis)を表し、DTAは示差走査熱量測定法(differential scanning calorimetry)を表す。測定条件は、空気雰囲気下、昇温速度10℃/分、室温〜500℃の温度範囲である。なお、示差熱熱質量同時測定法(TG/DTA)用の試料については、前記の通り調製されたオルガノゾルの溶媒を除去した後、ヘキサンで十分に洗浄を行い、ヘキサンを除去した後、減圧乾燥機で乾燥させて粉末の試料として測定に供した。
(製造例3、変性中空シリカ微粒子βの製造)
製造例2において、シリカ系微粒子(2)の分散液を200℃で1時間水熱処理した以外は製造例2と同様に製造して、SiO濃度20%のオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が50nmで、比表面積が120m/gの中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(以下、「中空シリカゾルB」と称する。)であった。
該中空シリカゾルBを原料に用いた以外は、製造例2の変性法と同様にして行い、SiO濃度20%の被覆中空微粒子からなるオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が50nm、屈折率1.30、空隙率30〜35%で、比表面積が90m/g、TGの質量減少割合が3.2%の変性中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(以下、「変性中空シリカゾルβ」と称する。)であった。なお、平均粒子径及び比表面積及びTGは上記の方法により測定した。
(製造例4、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物の製造)
四つ口フラスコにパーフルオロ−(1,1,9,9−テトラハイドロ−2,5−ビスフルオロメチル−3,6−ジオキサノネノール)104部と、ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7−ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイドの8%パーフルオロヘキサン溶液11部とを注入した。そして、その中空部を窒素置換した後、窒素気流下20℃で24時間撹拌して高粘度の固体を得た。得られた固体をジエチルエーテルに溶解させたものをパーフルオロヘキサンに注ぎ、分離後に真空乾燥させて無色透明なポリマーを得た。
このポリマーを19F−NMR(核磁気共鳴スペクトル)、H−NMR、IR(赤外線吸収スペクトル)により分析したところ、上記アリルエーテルの構造単位からなる側鎖末端に水酸基を有する含フッ素ポリマーであった。GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定した数平均分子量は72,000、質量平均分子量は118,000であった。
得られたヒドロキシル基含有含フッ素アリルエーテルポリマー5部、メチルエチルケトン(MEK)43部、及びピリジン1部を四つ口フラスコ中に仕込み、5℃以下に氷冷した。続いて、窒素気流下で撹拌しながらα−フルオロアクリル酸フルオライド1部をMEK9部に溶解したものを10分間かけて滴下した。そして、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物として含フッ素反応性ポリマーの溶液を得た。含フッ素反応性ポリマーのフッ素含有率は64%であった。
得られたMEK溶液の固形分は13%であり、19F−NMRにより分析した結果、α−フルオロアクリロイル基の導入率は40モル%であった。
(製造例5、含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルの製造)
攪拌機、冷却管、ガス導入管を備えた反応器に、1,4−ビス(2’,3’−エポキシプロピル)ペルフルオロブタン314.2g(1mol)、アクリル酸216.2g(3mol)、テトラエチルアンモニウムブロマイド4.4g、tert―ブチルカテコール0.44gを仕込み、油浴中で徐々に加熱して95〜100℃とした。そして、その温度で4時間攪拌した後、室温まで冷却した。得られた反応液を500mlのクロロホルムに溶解し、10%炭酸ナトリウム水溶液で3回、飽和食塩水で3回洗浄した。クロロホルムを減圧留去し、得られた黄色結晶をさらに酢酸エチル/n−ヘキサン混合溶媒(体積比1:2)を展開溶媒としてカラムクロマトグラフにより精製し、さらに溶媒を減圧留去することで含フッ素化合物として生成物Aを得た。生成物Aは下記化学式(3)、(4)及び(5)に示す構造を有する化合物の混合物であった。それぞれの化合物のフッ素含有率は化学式(3)では33%、化学式(4)では32%、化学式(5)では31%であった。
Figure 2008115329
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(実施例1)
製造例2で得られた変性中空シリカゾルαを固形分換算で50部、製造例4で得られた溶媒可溶性の含フッ素反応性ポリマー(フッ素含有率64%)を固形分換算で50部、2−メチル−1−〔4−メチルチオフェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン〔商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表1に示す。
この含フッ素硬化性塗液を前記製造例1のHC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射し、含フッ素硬化性塗液を硬化して塗膜(硬化皮膜)を形成し、減反射材(以下、減反射TACフィルムと略記する)を得た。
得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性の評価を以下に記載する方法で行ない、それらの結果を表2に示す。
(1)反射率の測定
測定面の裏面反射を除くため、裏面をサンドペーパーで粗し、5°正反射測定装置のついた分光光度計〔日本分光(株)製、商品名:U−best50〕を用いて反射率を測定し、光の波長600nmにおける反射率(%)を読み取った。
(2)耐擦傷性の評価
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端に、#0000のスチールウールを固定し、2.5N(250gf)及び1N(100gf)の荷重をかけて、減反射フィルム表面上を10回往復摩擦したあとの表面の傷を目視で観察し、以下のA〜Eの6段階で評価した。
A: 傷なし、A’: 傷1〜3本、B: 傷4〜10本、C: 傷11〜20本、D: 傷21〜30本、E:31本以上
(3)耐摩耗性の評価
本光製作所製消しゴム摩耗試験機の先端に、白ネル〔興和(株)製〕を取り付け、10.0N(1000gf)の荷重をかけて減反射フィルム表面上を往復摩擦し、傷が入るまでに擦った回数を記録した。
(4)接触角の測定
静的接触角計〔和界面化学(株)製、商品名:CA−A〕を用い、蒸留水に対する静的接触角(°)を測定した。
(5)防汚性の評価
マーカー〔ゼブラ(株)製、商品名:マッキー、表2、表4及び表6中マッキーと略記する〕にて減反射フィルム表面上にマーキングを施した。その後、防汚性の評価を次の3段階評価で行った。
◎:インクのハジキがあり、拭取り可能な場合、○:インクのハジキはないが、拭取り可能な場合、△:インクのハジキがなく、拭取り不可能な場合
(6)皮膜の耐水性
得られた皮膜の表面に、蒸留水を30分間放置した後、水分をキムワイプ(ワイパーS−200、(株)クレシア製)で拭き取り、蒸留水を放置前後の皮膜表面について光の波長600nmにおける反射率差を測定した。
○:反射率差が0.3%未満、△:反射率差が0.3〜0.5%、×:反射率差が0.5%より大きい。
(実施例2)
製造例2で得られた変性中空シリカゾルαを固形分換算で50部、製造例4で得られた溶媒可溶性の含フッ素反応性ポリマー(フッ素含有率64%)を固形分換算で50部、1−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,12,12,13,13,13−ヘンエイコサフルオロトリデカン(以下、DHPAと略記する)4部、2−メチル−1−[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン〔商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表1に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記HC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して塗膜を形成し、減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1に記載の方法で行ない、それらの結果を表2に示す。
(実施例3)
製造例2で得られた変性中空シリカゾルαを固形分換算で50部、1,10−ジアクリロイルオキシ−2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9−ヘキサデカフルオロデカン(フッ素含有率53%)〔共栄社化学(株)社製、商品名「16-FDA」〕50部、イルガキュア907を5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表1に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記HC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して塗膜を形成し、減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1に記載の方法で行ない、それらの結果を表2に示す。
(実施例4)
製造例2で得られた変性中空シリカゾルαを固形分換算で50部、16FDA(フッ素含有率53%)50部、DHPA4部、イルガキュア907を5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表1に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記HC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して塗膜を形成し、減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1に記載の方法で行ない、それらの結果を表2に示す。
(実施例5)
製造例2で得られた変性中空シリカゾルαを固形分換算で50部、製造例5で得られた生成物A(フッ素含有率31〜33%)を50部、イルガキュア907を5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表1に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記HC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して塗膜を形成し、減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1に記載の方法で行ない、それらの結果を表2に示す。
(実施例6)
製造例2で得られた変性中空シリカゾルαを固形分換算で50部、製造例5で得られた生成物A(フッ素含有率31〜33%)を50部、DHPA4部、イルガキュア907を5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表1に示す。この含フッ素硬化性塗液の組成を表1に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記HC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して塗膜を形成し、減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1に記載の方法で行ない、それらの結果を表2に示す。
(比較例1〜3)
比較例1においては、実施例1の変性中空シリカゾルαを製造例3で得られた変性中空シリカゾルβに変えたほかは、実施例1と同様に実施した。比較例2においては、実施例3の変性中空シリカゾルαを製造例3で得られた変性中空シリカゾルβに変えたほかは、実施例3と同様に実施した。比較例3においては、実施例5の変性中空シリカゾルαを製造例3で得られた変性中空シリカゾルβに変えたほかは、実施例5と同様に実施した。
そして、得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1に記載の方法で行ない、それらの結果を表2に示す。
Figure 2008115329
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表1及び表2に示した結果から、実施例1〜6では、耐擦傷性についての評価をA〜Cに維持することができた。さらに、耐摩耗性について70回以上を達成することができた。また、反射率を0.4〜1.2%に維持することができた。さらに、実施例2、4及び6では成膜性を有しないDHPAを配合したことから、実施例1、3及び5に比べて接触角を大きくでき、しかも防汚性を向上させることができた。実施例1〜6では耐水性に優れた変性中空シリカゾルαを使用しているため、水跡後による反射率差を0.3%未満に抑えることができた。
一方、比較例1〜3では屈折率の高い中空シリカゾルβを使用したため、耐擦傷性及び耐摩耗性は十分であるものの、硬化皮膜の屈折率は高く、反射防止性能は実施例1〜6と比較して劣る結果であった。また、耐水性を有していないため、得られる皮膜の水跡による反射率差は0.5%以上になった。
(製造例6、変性中空シリカゾルγの製造)
製造例2で得られた中空シリカゾルAを原料に用い、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン〔商品名:KBM5103、信越化学(株)製〕の含有量を1.8gにした以外は、製造例2と同様にしてSiO濃度20%の被覆中空微粒子からなるオルガノゾルを得た。このオルガノゾルは、平均粒子径が60nmで、比表面積が109m/g、TGの質量減少割合が1.4%の中空シリカ微粒子が分散されたオルガノゾル(以下、「変性中空シリカゾルγ」と称する。)であった。
(実施例7)
製造例6で得られた変性中空シリカゾルγを固形分換算で50部、製造例4で得られた溶媒可溶性の含フッ素反応性ポリマー(フッ素含有率64%)を固形分換算で50部、DHPA4部、2−メチル−1−[4−メチルチオフェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン〔商品名:イルガキュア907、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表3に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記製造例1のHC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射し、含フッ素硬化性塗液を硬化して塗膜(硬化皮膜)を形成し、減反射材(以下、減反射TACフィルムと略記する)を得た。
得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定、防汚性及び耐水性の評価を、前記実施例1と同じ方法で行ない、それらの結果を表4に示す。
(実施例8)
製造例6で得られた変性中空シリカゾルγを固形分換算で50部、16FDA(フッ素含有率53%)50部、DHPA4部、イルガキュア907を5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表3に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記HC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して塗膜を形成し、減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定、防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1と同じ方法で行ない、それらの結果を表4に示す。
(実施例9)
製造例6で得られた変性中空シリカゾルγを固形分換算で50部、製造例5で得られた生成物A(フッ素含有率31〜33%)を50部、DHPA4部、イルガキュア907を5部及びイソプロピルアルコール2000部を混合して含フッ素硬化性塗液を得た。この含フッ素硬化性塗液の組成を表3に示す。
係る含フッ素硬化性塗液を前記HC−TAC上に乾燥膜厚がおよそ0.1μmになるようにディップコート法で塗布した。このとき、含フッ素硬化性塗液の成膜性は良好であった。その後、窒素雰囲気下、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、120W高圧水銀灯)を用いて400mJの紫外線を照射して塗膜を形成し、減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定及び防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1と同じ方法で行ない、それらの結果を表4に示す。
Figure 2008115329
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表3及び表4に示した結果より、実施例7〜9では、変性中空シリカゾルγは、変性してあるものの、TGによる質量減少率が実施例2及び4及び6の変性中空シリカゾルαよりも低いため、耐擦傷性及び耐摩耗性は弱い結果となった。
(実施例10〜15)
実施例10及び11では、製造例2で得られた変性中空シリカゾルαと製造例4で得られた含フッ素反応性ポリマーとの配合割合を表5に示すように変えて含フッ素硬化性塗液を得た。そして、実施例2と同様に実施して減反射TACフィルムを得た。実施例12、13では、製造例2で得られた変性中空シリカゾルαと16FDAとの配合割合を表5に示すように変えて含フッ素硬化性塗液を得た。そして、実施例4と同様に実施して減反射TACフィルムを得た。実施例14、15では、製造例2で得られた変性中空シリカゾルαと製造例5で得られた生成物Aとの配合割合を表5に示すように変えて含フッ素硬化性塗液を得た。
そして、実施例6と同様に実施して減反射TACフィルムを得た。得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定、防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1と同じ方法で行ない、それらの結果を表6に示す。
(比較例4〜9)
比較例4及び5では、製造例2で得られた変性中空シリカゾルαと製造例4で得られた含フッ素反応性ポリマーとの配合割合を表5に示すように変えて含フッ素硬化性塗液を得た。そして、実施例1と同様に実施して減反射TACフィルムを得た。比較例6及び7では、製造例2で得られた変性中空シリカゾルαと16FDAとの配合割合を表5に示すように変えて含フッ素硬化性塗液を得た。そして、実施例3と同様に実施して減反射TACフィルムを得た。比較例8及び9では、製造例2で得られた変性中空シリカゾルαと製造例5で得られた生成物Aとの配合割合を表5に示すように変えて含フッ素硬化性塗液を得た。そして、実施例5と同様に実施して減反射TACフィルムを得た。
得られた減反射TACフィルムについて反射率、耐擦傷性、耐摩耗性、膜表面の水に対する接触角の測定、防汚性及び皮膜の耐水性の評価を実施例1と同じ方法で行い、それらの結果を表6に示す。
Figure 2008115329
Figure 2008115329
表5及び表6に示した結果から、実施例10〜15では反射率0.2〜1.5%を維持することができた。また、実施例10、12及び14では含フッ素化合物の配合割合が多くなったため、反射率が若干大きくなったほか、耐擦傷性に及び耐摩耗性共に優れていた。さらに、実施例11、13及び15では、変性中空シリカゾルαの配合割合が多くなったため、耐擦傷性及び耐摩耗性共に若干弱くなったほかは、反射防止性能が優れていた。
一方、比較例4、6及び8では過剰の変性中空シリカが含フッ素化合物と反応できず、耐擦傷性の向上が見られず、Eであった。また、比較例5、7及び9では変性中空シリカの含有量が少なく、耐擦傷性の向上に十分に寄与できず、弱い結果となった。さらに、反射率について、変性中空シリカの含有量が少ないため、1.5〜2.6%と劣る結果となった。
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 変性中空シリカ微粒子として、空隙率が35%を越え、45%以下のものを併用することもできる。
・ 基材表面に対する密着性を向上させるために、含フッ素硬化性塗液に水酸基、カルボキシル基等を有する化合物を配合することもできる。
・ 含フッ素硬化性塗液にフッ素系グラフトコポリマーやフッ素系ブロックコポリマーを配合することもできる。
・ 含フッ素硬化性塗液に充填剤、顔料、増粘剤、可塑剤等を添加することもできる。
・ 含フッ素硬化性塗液にフッ素含有シランカップリング剤として、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等を配合することもできる。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記含フッ素硬化性塗液を硬化してなる硬化皮膜の屈折率が、1.32〜1.28であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかの発明の効果に加え、低屈折率化による低反射率化の効果を十分に発揮することができる。
・ 前記含フッ素化合物が含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液。この場合、形成される硬化皮膜が架橋構造を有するものとなり、請求項1から請求項4のいずれかの発明の効果に加え、硬化皮膜の強度及び硬度を向上させることができる。
・ 前記水熱処理は、処理温度200〜280℃及び処理時間5〜20時間の条件下に行われることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液。この場合、請求項1から請求項4のいずれかの発明の効果に加え、水熱処理を有効に行うことができる。
・ シランカップリング剤により変性された中空シリカ微粒子は、溶媒中でシランカップリング剤と中空シリカ微粒子とを混合し、加水分解反応及び縮合反応を行うことにより得られるものである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかの発明の効果に加え、シランカップリング剤を反応により中空シリカ微粒子に容易に結合させることができる。
・ 成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物は、フッ素原子がフッ化メチレン基又はフッ化メチン基として分子中に導入された構造を有する含フッ素モノマーである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかの発明の効果に加え、含フッ素硬化性塗液の成膜性を向上させることができる。
・ 成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物は、溶媒可溶性で重合性二重結合をもつ含フッ素反応性ポリマーである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかの発明の効果に加え、成膜性が良好で、成膜後に架橋硬化することができ、含フッ素硬化皮膜の強度及び硬度を向上させることができる。

Claims (5)

  1. 成膜性を有し、重合性二重結合をもつ含フッ素化合物と、水熱処理が施されると共に、重合性二重結合を有するシランカップリング剤により変性され、中空部の空隙率が40〜45%であり、平均粒子径が10〜100nmの変性中空シリカ微粒子とを含有し、前記含フッ素化合物及び変性中空シリカ微粒子の合計量中における含フッ素化合物の含有量が40〜80質量%及び変性中空シリカ微粒子の含有量が20〜60質量%であることを特徴とする含フッ素硬化性塗液。
  2. 前記変性中空シリカ微粒子は、中空シリカ微粒子が下記の化学式(1)で示されるシランカップリング剤によって変性され、10℃/分の昇温速度で室温から500℃まで昇温させたときの熱質量減少が2〜10質量%のものであることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素硬化性塗液。
    Figure 2008115329
    (式中、Zは(メタ)アクリロイルオキシ基であり、Rは炭素数1〜4のアルキレン基であり、Rは水素原子、メチル基又はエチル基である。)
  3. 前記含フッ素化合物中のフッ素含有率が55〜70質量%であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の含フッ素硬化性塗液。
  4. さらに成膜性を有しない下記の化学式(2)で示される含フッ素(メタ)アクリル酸エステルを含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液。
    Figure 2008115329
    (式中、X及びYは(メタ)アクリロイルオキシ基又は水酸基であり、少なくとも一方は(メタ)アクリロイルオキシ基である。)
  5. 請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の含フッ素硬化性塗液を硬化してなる硬化皮膜を、基材の片面上又は両面上に直接又は機能層を介して最表面に形成してなることを特徴とする減反射材。
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