しかし、特許文献1に記載のコージェネレーションシステムでは、出力上昇処理において燃料電池を運転するための時間帯及び発電出力を決定するに際して、複数の時間帯及び複数の候補発電出力の全ての組み合わせについての省エネルギ度を導出して相互に比較する。このように、特許文献1の出力上昇処理では非常に緻密に省エネルギ度の検討がなされているため、実際の電力需要及び熱需要が予測電力需要及び予測熱需要に一致した場合には省エネルギに大きく寄与することができる一方で、出力上昇処理実行時の演算処理負荷は大きくなりがちだった。また、仮に実際の電力需要及び熱需要が予測電力需要及び予測熱需要から外れてしまった場合には、経時的にその差分が蓄積されていくので、その前提が崩れて熱不足時間帯及び電力不足時間帯の予測も大きく外れてしまう。そのため、出力上昇処理において決定された燃料電池を運転するための時間帯及び発電出力は、不正確な前提に基づいて決定されたことになり、非常に緻密に省エネルギ度の検討がなされる割には、本来求められる省エネルギ度を確保することができなかった。
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、比較的小さな演算処理負荷でかつ許容され得る高い精度で、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することができるコージェネレーションシステムを提供することを目的とする。
本発明に係る、電力と熱とを併せて発生させる熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生された熱を回収して蓄熱しかつ当該蓄えられた熱を熱負荷へ供給する熱回収手段と、少なくとも前記熱電併給装置を所定の運転計画に従って運転制御する計画運転制御を実行する運転制御手段と、を備えたコージェネレーションシステムの特徴構成は、前記熱電併給装置で発生された電力を蓄電しかつ当該蓄えられた電力を電力負荷へ供給する蓄電手段と、将来の所定の運転周期内に前記熱負荷において需要があると予測される時系列的な予測熱需要を導出するエネルギ需要予測手段と、前記計画運転制御を継続して実行すると仮定した場合に、前記熱回収手段により回収されると予測される予測回収熱量が前記予測熱需要よりも小さい状態である熱不足状態となること予測する熱不足予測手段と、を備え、前記運転制御手段は、前記熱不足状態となることが予測された場合には前記熱不足状態となる時点以前の所定の直前期間だけ、前記計画運転制御に代えて、前記熱電併給装置を最大出力で運転制御する最大出力運転制御を実行し、当該直前期間に発生する余剰電力を前記蓄電手段に蓄電する点にある。
なお、本願では、「最大出力」は、熱電併給装置が発電を行うことができる発電出力の上限値を意味する。このような「最大出力」は、エネルギ効率が最大となる状態で発電を行う場合における発電出力(定格出力)に等しくなることが一般的である。
上記の特徴構成によれば、コージェネレーションシステムは、基本的には運転制御手段により計画運転制御されて、熱電併給装置は運転計画に従って運転制御される。この状態で、エネルギ需要予測手段により時系列的な予測熱需要が導出されると共に、熱不足予測手段により、計画運転制御を継続して実行すると仮定した場合に将来熱不足状態となるか否かが予測される。そして、熱不足状態となることが予測された場合には、当該熱不足状態となる以前の所定の直前期間だけ、計画運転制御に代えて最大出力運転制御が実行される。最大出力運転制御が実行されている間は、熱電併給装置は予測熱需要を上回る余剰熱を発生させるので、熱回収手段によりその余剰熱を回収して蓄熱することで、将来発生すると予測される熱不足状態の発生を抑制することができる。
その際、直前期間では、熱電併給装置は一般にエネルギ効率が最大に近い状態となる最大出力で発電を行うので、コージェネレーションシステム全体のエネルギ効率を向上させることができる。また、最大出力運転制御を実行する期間を、熱不足状態となる時点以前の所定の直前期間のみとすることで、熱電併給装置が発生した余剰熱が回収されてから実際に熱負荷に供給されるまでの間(蓄熱されている間)の放熱量を極力小さく抑えることができる。よって、蓄熱中における放熱によるエネルギ損失を低減することができるので、最大出力運転制御を実行する期間を短縮し或いは補助熱源を使用する場合にはその使用量を低減して、エネルギ消費量を有効に低減することができる。また、最大出力運転制御の実行により熱電併給装置が発電した電力のうちの余剰電力を蓄電手段に蓄電することで、将来電力負荷において熱電併給装置の最大出力を超える電力需要があった際に、当該蓄電した電力を電力負荷に供給することができる。なお、蓄電手段に蓄電し或いは蓄電手段から電力を持ち出す際の電力ロスによるエネルギ損失は、無視できる程度に小さい。
従って、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することが可能なコージェネレーションシステムを提供することができる。
また、上記の特徴構成では、将来熱不足状態となることが予測された場合における熱電併給装置の運転制御は、当該熱不足状態となる時点以前の所定の直前期間だけ計画運転制御に代えて最大出力運転制御を実行するという、非常に簡素な運転制御である。よって、そのような運転制御を実行する際の演算処理負荷を大幅に低減することができる。更に、最大出力運転制御では、熱電併給装置の発電出力が一律に最大出力となるように制御されるので、仮に実際の熱需要が予測熱需要から外れてしまった場合であっても、当該予測外れによる実際の熱需要と予測熱需要との間の差分の蓄積が熱不足状態の解消や省エネルギ性に与える影響は比較的小さい。また、所定の運転計画が将来の運転周期内に電力負荷において需要があると予測される予測電力需要等に基づくものであって、かつ、仮に実際の電力需要や熱需要が予測電力需要や予測熱需要から外れてしまった場合についても同様である。
以上より、上記の特徴構成によれば、比較的小さな演算処理負荷でかつ許容され得る高い精度で、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することが可能なコージェネレーションシステムを提供することができる。
ここで、前記熱不足予測手段は、更に、前記予測熱需要に対して前記予測回収熱量が不足する量である予測不足熱量を導出するように構成され、前記運転制御手段は、前記予測不足熱量に基づいて、前記予測不足熱量が大きいほど前記直前期間が長くなるように前記直前期間の長さを設定する構成とすると好適である。
予測熱需要に対する予測回収熱量の不足量である予測不足熱量が大きいほど、熱不足状態となる時点までにより多くの熱を熱回収手段により回収して蓄熱しておく必要がある。そして、最大出力運転制御では熱電併給装置は一律に最大出力で運転制御されるので、熱回収手段により回収されて蓄熱される回収熱量は概ね直前期間の長さに応じたものとなる。
この構成によれば、予測不足熱量に応じて回収熱量を調節することが容易となり、最大出力運転制御により将来の予測熱需要を略過不足なく賄うことが容易となる。すなわち、必要最小限の最大出力運転制御で熱不足状態の発生を容易に抑制することができる。
また、前記運転計画を決定する運転計画決定手段を備え、前記運転計画決定手段は、所定の運転計画に従って前記熱電併給装置を運転制御すると仮定した場合において前記熱不足状態となることが予測される場合には、少なくとも前記熱不足状態となる時点以前の仮設直前期間に前記熱電併給装置を最大出力で運転制御させる特別運転計画を、前記運転計画として決定する構成とすると好適である。
この構成によれば、所定の運転計画に従って熱電併給装置を運転制御すると仮定した場合に発生すると予測される熱不足状態に対して、当該熱不足状態となる時点以前の仮設直前期間だけ熱電併給装置が最大出力で運転制御されるような特別運転計画が決定される。運転制御手段が、このような特別運転計画に従って熱電併給装置を運転制御することで、熱電併給装置は仮設直前期間では余剰熱を発生させるので、熱回収手段によりその余剰熱を回収して蓄熱することで、将来発生すると予測される熱不足状態の発生を抑制することができる。よって、上記の構成によれば、運転計画を決定する段階で、熱不足状態の発生を抑制することが可能な運転計画を決定することができる。
なお、そのような特別運転計画が決定されたにも関わらず、実際に特別運転計画に従って熱電併給装置が運転制御された際に、実際に熱不足状態となると予測された場合には、実際に熱不足状態となると予測される時点以前の直前期間では、特別運転計画に対応する計画運転制御に代えて最大出力運転制御が実行される。これにより、特別運転計画における仮設直前期間の開始時点よりも前の期間を、必要に応じて適宜直前期間として熱電併給装置を最大出力で運転制御して、熱不足状態の発生を略確実に防止することができる。
また、前記運転計画決定手段は、前記仮設直前期間の長さを仮設定すると共に、当該仮設定された長さの前記仮設直前期間に応じた前記特別運転計画に従って前記熱電併給装置を継続して運転制御すると仮定した場合における前記蓄電手段の状態の将来予測及び前記熱回収手段の状態の将来予測の一方又は双方に基づいて、前記仮設直前期間の長さを調節する構成とすると好適である。
この構成によれば、仮設定された特別運転計画に従って熱電併給装置を継続して運転制御すると仮定した場合における、蓄電手段の状態の将来予測及び熱回収手段の状態の将来予測の一方又は双方に基づいて、特別運転計画における仮設直前期間の長さを適正化することができる。
より具体的には、前記蓄電手段の状態の将来予測として、前記仮設直前期間内に前記蓄電手段が所定の満充電状態となると予測されるか否かが判定され、前記運転計画決定手段は、前記満充電状態となると予測される場合には、前記仮設直前期間の長さを短くする構成とすると好適である。
なお、本願では、蓄電手段の「満充電状態」とは、蓄電手段がそれ以上は有効に蓄電(充電)を行うことができない状態を言う。より具体的には、蓄電手段の充電残量が所定の満充電判定閾値以上である状態を言う。ここで、所定の満充電判定閾値は、蓄電手段の充電容量の上限値付近の、当該上限値よりも小さな値に設定されていると好適である。
仮設定された特別運転計画に従って熱電併給装置を継続して運転制御すると仮定した場合に、蓄電手段の状態が満充電状態となると予測される場合には、一旦仮設定された仮設直前期間の長さが長過ぎると判定することができる。よって、そのような場合には仮設直前期間の長さを短くする構成を採用することで、特別運転計画に従って熱電併給装置を最大出力で運転制御する期間を短縮して、必要最小限の最大出力での運転制御で熱不足状態の発生を抑制することができる。
また、前記熱回収手段の状態の将来予測として、前記仮設直前期間内に前記予測回収熱量が前記予測熱需要よりも大きい状態である熱余剰状態となると予測されるか否か、又は、前記熱回収手段が所定の満蓄熱状態となると予測されるか否かが判定され、前記運転計画決定手段は、前記熱余剰状態又は前記満蓄熱状態となると予測される場合には、前記仮設直前期間の長さを短くする構成とすると好適である。
なお、本願では、熱回収手段の「満蓄熱状態」とは、熱回収手段が熱を回収したとしてもそれ以上は有効に蓄熱を行うことができない状態を言う。より具体的には、熱回収手段が蓄熱を行うために保有する熱媒の略全量の温度が所定の高温判定温度以上である状態を言う。ここで、所定の高温判定温度は、熱回収手段が余剰熱を回収する際に熱媒が達し得る温度の上限値付近の値に設定されていると好適である。
仮設定された特別運転計画に従って熱電併給装置を継続して運転制御すると仮定した場合に、熱余剰状態となると予測され、又は、熱回収手段の状態が満蓄熱状態となると予測される場合には、一旦仮設定された仮設直前期間の長さが長過ぎると判定することができる。よって、そのような場合には仮設直前期間の長さを短くする構成を採用することで、特別運転計画に従って熱電併給装置を最大出力で運転制御する期間を短縮して、必要最小限の最大出力での運転制御で熱不足状態の発生を抑制することができる。
ここで、前記エネルギ需要予測手段は、将来の前記運転周期内に前記電力負荷において需要があると予測される時系列的な予測電力需要を更に導出し、前記運転制御手段は、前記計画運転制御として、発生される電力が前記予測電力需要に追従するように前記熱電併給装置を運転制御する電主運転制御を実行する構成とすると好適である。
この構成によれば、運転制御手段が計画運転制御として電主運転制御を実行することにより、熱電併給装置が発生する電力により予測電力需要を略過不足なく賄うことができる。よって、運転制御手段、エネルギ需要予測手段、及び熱不足予測手段の協働により、熱不足状態及び電力不足状態の双方の発生を適切に抑制しつつ、エネルギ消費量を有効に低減することができる。
或いは、前記エネルギ需要予測手段は、将来の前記運転周期内に前記電力負荷において需要があると予測される時系列的な予測電力需要を更に導出し、前記運転制御手段は、前記計画運転制御として、前記仮設直前期間以外では発生される電力が前記予測電力需要に追従するように前記熱電併給装置を運転制御させると共に、前記仮設直前期間だけ前記熱電併給装置を最大出力で運転制御させる特別運転制御を実行する構成とすると好適である。
この構成によれば、運転制御手段が計画運転制御として特別運転制御を実行することにより、仮設直前期間以外では熱電併給装置が発生する電力により予測電力需要を略過不足なく賄うことができ、仮設直前期間では将来発生すると予測される熱不足状態に備えるための余剰熱を発生させてこれを蓄熱することができる。よって、計画運転決定手段、運転制御手段、エネルギ需要予測手段、及び熱不足予測手段の協働により、熱不足状態及び電力不足状態の双方の発生を適切に抑制しつつ、エネルギ消費量を有効に低減することができる。
また、前記運転制御手段は、前記直前期間内に前記蓄電手段が所定の満充電状態となった場合には、前記直前期間のうち前記満充電状態にある期間では前記最大出力運転制御を実行することなく前記計画運転制御を実行する構成とすると好適である。
直前期間内に蓄電手段が満充電状態となった場合には、その後も熱電併給装置が最大出力運転制御されて実際の電力需要を上回る余剰電力を発生させたとしても、当該余剰電力を蓄電手段に蓄電することができない。
この構成によれば、熱不足状態となると予測される時点より前の直前期間内に蓄電手段が満充電状態となった場合には、直前期間のうち当該満充電状態にある期間では計画運転制御を実行するので、蓄電手段が満充電状態となった後は予測電力需要のみを略過不足なく賄って、無駄な余剰電力の発生を抑制することができる。
また、前記運転制御手段は、前記直前期間内に前記予測回収熱量が前記予測熱需要よりも大きい状態である熱余剰状態となった場合、又は、前記熱回収手段が所定の満蓄熱状態となった場合には、前記直前期間のうち前記熱余剰状態又は前記満蓄熱状態にある期間では前記最大出力運転制御を実行することなく前記計画運転制御を実行する構成とすると好適である。
運転制御手段が最大出力運転制御を実行した結果、直前期間内に熱余剰状態となった場合には、既に将来の熱不足状態の発生を回避することが可能であると予測されるので、熱電併給装置が最大出力運転制御され、それ以上の余剰熱を発生させて当該余剰熱を熱回収手段により回収したとしても、その余剰熱は熱不足状態の解消のために使用されない可能性が高い。また、直前期間内に満蓄熱状態となった場合には、その後も熱電併給装置が最大出力運転制御されて余剰熱を発生させたとしても、熱回収手段が当該余剰熱を回収して蓄熱することができない。
この構成によれば、熱不足状態となると予測される時点より前の直前期間内に熱余剰状態又は満蓄熱状態となった場合には、直前期間のうち熱余剰状態又は満蓄熱状態にある期間では計画運転制御を実行するので、無駄な余剰熱の発生を抑制することができる。
これまで説明してきたような構成を備えるコージェネレーションシステムは、例えば計画運転制御として、発生される電力が予測電力需要に追従するように熱電併給装置を運転制御する電主運転制御を実行する場合に、ある程度の頻度で熱不足状態が発生し得るような状況で使用される場合に特に有効である。従って、本発明に係るコージェネレーションシステムの設置対象としては、前記電力負荷における電力需要レベルに対して前記熱負荷における熱需要レベルが大きいエネルギ需要家が特に適している。
本発明に係る、電力と熱とを併せて発生させる熱電併給装置と、前記熱電併給装置で発生された熱を回収して蓄熱しかつ当該蓄えられた熱を熱負荷へ供給する熱回収手段と、前記熱電併給装置を運転制御する運転制御手段と、を備えたコージェネレーションシステムの特徴構成は、前記熱電併給装置で発生された電力を蓄電しかつ当該蓄えられた電力を電力負荷へ供給する蓄電手段と、将来の所定の運転周期内に前記熱負荷において需要があると予測される時系列的な予測熱需要を導出するエネルギ需要予測手段と、前記熱電併給装置を計画運転制御するための所定の運転計画を決定する運転計画決定手段と、前記計画運転制御を継続して実行すると仮定した場合に、前記熱回収手段により回収されると予測される予測回収熱量が前記予測熱需要よりも小さい状態である熱不足状態となるか否かを予測する熱不足予測手段と、を備え、前記運転計画決定手段は、前記熱不足状態となることが予測された場合には、少なくとも前記熱不足状態となる時点以前の直前期間に前記熱電併給装置を最大出力で運転制御させる特別運転計画を決定し、運転制御手段は、前記特別運転計画に従って前記熱電併給装置を運転制御する特別運転制御を実行し、前記直前期間に発生する余剰電力を前記蓄電手段に蓄電する点にある。
上記の特徴構成によれば、コージェネレーションシステムは、計画運転決定手段により決定される運転計画に従って熱電併給装置が運転制御される。計画運転決定手段が運転計画を決定するに際しては、エネルギ需要予測手段により時系列的な予測熱需要が導出されると共に、熱不足予測手段により、計画運転制御を継続して実行すると仮定した場合に将来熱不足状態となるか否かが予測される。そして、熱不足状態となることが予測された場合には、少なくとも熱不足状態となると予測される時点以前の直前期間に熱電併給装置を最大出力で運転制御させる特別運転計画が決定され、熱電併給装置は決定された特別運転計画に従って運転制御される。このような特別運転計画に従い、熱電併給装置が最大出力で運転制御される直前期間では、熱電併給装置は予測熱需要を上回る余剰熱を発生させるので、熱回収手段によりその余剰熱を回収して蓄熱することで、将来発生すると予測される熱不足状態の発生を抑制することができる。
その際、直前期間では、熱電併給装置は一般にエネルギ効率が最大に近い状態となる最大出力で発電を行うので、コージェネレーションシステム全体のエネルギ効率を向上させることができる。また、熱電併給装置を最大出力で運転制御する期間を、熱不足状態となると予測される時点以前の直前期間のみとすることで、熱電併給装置が発生した余剰熱が回収されてから実際に熱負荷に供給されるまでの間(蓄熱されている間)の放熱量を極力小さく抑えることができる。よって、蓄熱中における放熱によるエネルギ損失を低減することができるので、熱電併給装置を最大出力で運転制御する期間を短縮し或いは補助熱源を使用する場合にはその使用量を低減して、エネルギ消費量を有効に低減することができる。また、熱電併給装置を最大出力で運転制御することにより熱電併給装置が発電した電力のうちの余剰電力を蓄電手段に蓄電することで、将来電力負荷において熱電併給装置の最大出力を超える電力需要があった際に、当該蓄電した電力を電力負荷に供給することができる。なお、蓄電手段に蓄電し或いは蓄電手段から電力を持ち出す際の電力ロスによるエネルギ損失は、無視できる程度に小さい。
従って、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することが可能なコージェネレーションシステムを提供することができる。
また、上記の特徴構成では、直前期間では熱電併給装置の発電出力が一律に最大出力となるように制御されるので、仮に実際の熱需要が予測熱需要から外れてしまった場合であっても、当該予測外れによる実際の熱需要と予測熱需要との間の差分の蓄積が熱不足状態の解消や省エネルギ性に与える影響は比較的小さい。
以上より、上記の特徴構成によれば、許容され得る高い精度で、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することが可能なコージェネレーションシステムを提供することができる。
1.第一の実施形態
本発明に係るコージェネレーションシステムの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1の全体構成を示すブロック図である。また、図2は、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1の制御系の構成を示すブロック図である。これらの図に示すように、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1は、電力と熱とを併せて発生させる燃料電池3と、燃料電池3で発生された熱を回収して蓄熱しかつ当該蓄えられた熱を熱負荷9へ供給する貯湯ユニット4と、燃料電池3の運転制御を行う制御ユニット30と、を備えている。また、コージェネレーションシステム1は、燃料電池3で発生された電力を蓄電しかつ当該蓄えられた電力を電力負荷8へ供給するバッテリ5を備えている。このような構成において、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1は、基本的には発生される電力が将来の予測電力需要に追従するように燃料電池3を運転制御しつつ、そのままでは熱不足状態となることが予測された場合には、特別に、熱不足状態となる時点以前の所定の直前期間Ta(図6及び図7を参照)だけ燃料電池3を最大出力で運転制御するように構成されている点に特徴を有する。これにより、比較的小さな演算処理負荷でかつ許容され得る高い精度で、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することが可能となっている。以下、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1について、詳細に説明する。
1−1.コージェネレーションシステムの全体構成
まず、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1の全体構成について説明する。コージェネレーションシステム1は、図1に示すように、燃料電池3と、貯湯ユニット4と、バッテリ5と、を主要な構成要素として備えている。また、コージェネレーションシステム1は、図2に示すように、当該コージェネレーションシステム1に備えられる各構成要素の動作制御を行うための制御ユニット30を備えている。制御ユニット30による動作制御に従い、コージェネレーションシステム1は、電力負荷8に対して電力を供給すると共に熱負荷9に対して熱を供給することができるように構成されている。
燃料電池3は、原燃料ガスから生成される水素ガスを燃料として発電を行う装置である。ここで、原燃料ガスは、メタンやプロパン等の炭化水素を主成分とするガスであり、本実施形態では都市ガスやLPG等の形態で供給される。原燃料ガスは、付臭剤として添加されたDMS等の硫黄化合物が除去された後、改質反応により水素を主成分とするガスに改質される。その後、改質ガスは、一酸化炭素等の副生ガスが除去されて水素リッチとなった状態でセルスタックに供給される。また、セルスタックには酸素含有ガスとしての空気も供給され、水素と酸素との化学反応により発電が行われて直流電力が取り出される。なお、ガス流量調節弁等により原燃料ガスの供給量を調節することで、燃料電池3による発電出力を調節することができるようになっている。このような燃料電池3としては、固体高分子形燃料電池(PEFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)等、各種方式のものを採用することができる。
燃料電池3のセルスタックにおける水素と酸素との化学反応は発熱反応であり、反応の進行とともに熱が発生する。更に、セルスタック内部における各種の抵抗成分による発熱によっても熱が発生する。従って、燃料電池3は、電力を発生させると共に熱も併せて発生させる。本実施形態においては、燃料電池3が本発明における「熱電併給装置」に相当する。
燃料電池3は、第一コンバータ12に電気的に接続されている。第一コンバータ12は、燃料電池3により発電されて出力された直流電力を所定の電圧に電圧変換する。第一コンバータ12は、インバータ11に電気的に接続されている。インバータ11は、第一コンバータ12により所定電圧に電圧変換された直流電力を、所定周波数の交流電力に変換する。インバータ11により出力される交流電力は、商用電力系統7と連系して電気機器等の電力負荷8に供給されるように構成されている。そのため、第一コンバータ12とインバータ11とが協働して、燃料電池3から出力される直流電力を、商用電力系統7から供給される交流電力の電圧及び周波数に等しい電圧及び周波数の交流電力に変換するように構成されている。
第一コンバータ12とインバータ11との間に、バッテリ5が電気的に接続されている。バッテリ5は、燃料電池3により発電されて第一コンバータ12により所定電圧に電圧変換された直流電力を蓄電(充電)することができるように構成されている。また、バッテリ5は、当該バッテリ5に蓄電された電力を電力負荷8へ供給することができるように構成されている。すなわち、バッテリ5は、燃料電池3により発電される電力のうち電力負荷8へ供給される電力を上回る分となる余剰電力を一旦蓄電し、当該蓄電した電力を、その余剰電力が発生した時間帯とは異なる時間帯に電力負荷8へ供給することができるように構成されている。なお、バッテリ5に蓄電された直流電力は、インバータ11により所定周波数の交流電力に変換された後、電力負荷8へ供給される。本実施形態においては、バッテリ5が本発明における「蓄電手段」に相当する。バッテリ5としては、例えばニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池等の各種二次電池を用いることができる。なお、バッテリ5は蓄電手段の一例であり、これ以外にもキャパシタ等の他の蓄電手段を用い、或いはこれらを組み合わせて用いることもできる。
バッテリ5に隣接して、当該バッテリ5の状態を検出するバッテリ状態検出センサS1が設けられている。バッテリ状態検出センサS1は、バッテリ5の状態として、本実施形態では特にバッテリ5の蓄電量(充電量)を検出するように構成されている。具体的には、バッテリ5の正極と負極との間の電圧値を検出するための電圧センサやバッテリ5から持ち出される電流値を検出するための電流センサ等により構成され、これらの検出値に基づいてバッテリ5の充電量が検出される。バッテリ状態検出センサS1により検出されるバッテリ5の充電量の情報は、制御ユニット30に出力される。
燃料電池3と第一コンバータ12との間に、第二コンバータ13が電気的に接続されている。第二コンバータ13は、燃料電池3により発電されて出力された直流電力を所定の電圧に電圧変換する。第二コンバータ13は、電気ヒータ14に電気的に接続されている。電気ヒータ14は、燃料電池3からの発電出力を熱に変換して回収するための装置であり、例えば余剰電力が発生しているにもかかわらず、バッテリ5にそれ以上電力を蓄電することができない満充電状態のような状況で作動する。電気ヒータ14は、例えば複数の電熱線等により構成されており、これら複数の電熱線を各別にオン・オフするための複数の作動スイッチ15が設けられている。オン状態とする作動スイッチ15の数を調節することにより、電気ヒータ14による消費電力(電力から熱への変換量)が調節される。
上記のとおり燃料電池3は熱を発生させることから、当該燃料電池3を冷却するための冷却水を循環させる冷却水循環路21が設けられている。冷却水循環路21には、冷却水循環ポンプ18と燃料電池3と電気ヒータ14と貯湯槽24とラジエータ19とが介挿されている。冷却水循環ポンプ18が作動することにより、冷却水循環路21中を通って、冷却水は燃料電池3、電気ヒータ14、貯湯槽24、及びラジエータ19の順に循環する。すなわち、冷却水循環ポンプ18により吐出された冷却水は、燃料電池3を冷却すると共に、燃料電池3からの排熱を回収して自身は加熱される。加熱された冷却水は、必要に応じて電気ヒータ14により更に加熱されて湯水となり、貯湯槽24に流入して貯湯槽24に貯えられる。すなわち、貯湯槽24に貯えられる熱媒としての湯水が有する熱量の形態で、回収された熱が蓄熱される。
貯湯槽24は、湯水の温度に応じて複数の温度層を形成して湯水を貯留する、所謂温度成層型に構成されている。すなわち、貯湯槽24は、その上部ほど高温の湯水が滞留する高温層を形成すると共に、下部ほど低温の湯水が滞留する低温層を形成する形態で湯水を貯留するように構成されている。本実施形態では、燃料電池3(及び、必要に応じて電気ヒータ14)で加熱された高温の湯水は、貯湯槽24の上端部の高温層に供給される。冷却水循環ポンプ18が作動することにより、貯湯槽24の下端部の低温層に滞留する比較的低温の湯水はラジエータ19に供給される。この比較的低温の湯水はラジエータ19にて外気に対して放熱されて冷却され、冷却水循環ポンプ18により吐出されて再度上記のサイクルを繰り返す。
貯湯槽24に貯留する湯水の形態で蓄熱された熱は、更に熱負荷9へも供給されるように構成されている。すなわち、貯湯槽24の上端部の高温層に滞留する比較的高温の湯水は、更に熱負荷9へも供給されるように構成されている。本実施形態では、貯湯槽24と熱負荷9との間に、貯湯槽24から供給される湯水を加熱するための補助加熱器26が配設されている。このような補助加熱器26は、例えば加熱対象の湯水を通流させる熱交換器と、火炎によりその熱交換器内を流通する湯水を加熱するバーナと、を備えて構成することができる。このように、本実施形態では、冷却水循環路21中に備えられる各構成が協働することにより、燃料電池3で発生された熱を湯水の形態で回収して熱負荷9へ供給される量を上回る分の余剰熱を貯湯槽24に蓄熱し、かつ当該貯湯槽24に貯留された高温の湯水を、その余剰熱が発生した時間帯とは異なる時間帯に熱負荷9へ供給することができるように構成されている。本実施形態においては、冷却水循環路21中に備えられる各構成が協働して貯湯ユニット4を構成しており、この貯湯ユニット4が本発明における「熱回収手段」に相当する。なお、貯湯ユニット4の具体的構成は上記の構成に限定されない。例えば、貯湯ユニット4を、燃料電池3を冷却するための冷却水を循環させる冷却水循環路と、貯湯槽24に貯留された湯水を循環させる湯水循環路と、冷却水循環路内を流通する冷却水と湯水循環路内を流通する湯水との間で熱交換を行わせる熱交換器と、を備えた構成等としても良い。
また、貯湯槽24に隣接して、当該貯湯槽24に貯留された湯水の温度を検出する湯温センサS2が設けられている。本実施形態では、複数(図示の例では、4個)の湯温センサS2が、貯湯槽24の上下方向に所定間隔を隔てて設置されている。それぞれの湯温センサS2により検出される湯水の温度に関する情報は、それぞれ制御ユニット30に出力される。
1−2.制御ユニットの構成
次に、制御ユニット30の構成について説明する。コージェネレーションシステム1が備える制御ユニット30は、図2に示すように、コージェネレーションシステム1の各部の動作制御を行う中核部材としての機能を果たしている。本実施形態においては、制御ユニット30は、学習記憶部31と、エネルギ需要予測部32と、運転計画決定部33と、熱不足予測部34と、運転制御部35と、を備えている。これらの各機能部は、ソフトウェア(プログラム)又はハードウェア、或いはそれらの両方により構成されており、互いに情報の受け渡しを行うことができるように構成されている。また、制御ユニット30との間で互いに情報の受け渡しを行うことが可能な状態で、メモリ40が設けられている。このメモリ40は、例えばフラッシュメモリ等のように、情報を記憶及び書き換え可能な記録媒体をハードウェア構成として備えている。本実施形態では、メモリ40には過去電力消費量データ41と過去熱消費量データ42とが格納されている。なお、制御ユニット30の各機能部がソフトウェアにより構成される場合には、当該各機能部を構成するソフトウェアを記憶する記憶装置とメモリ40とを一体化させても良い。
また、制御ユニット30には、上述したバッテリ状態検出センサS1により検出されるバッテリ5の充電量の情報や、湯温センサS2により検出される湯水の温度に関する情報が入力される。また、本実施形態においては、コージェネレーションシステム1による電力の供給先である電力負荷8に隣接して電力消費量計測装置28が設けられており、熱の供給先である熱負荷9への出力部に熱消費量計測装置29が設けられている(図1を参照)。ここで、電力消費量計測装置28は、電力負荷8における実際の電力消費量を計測する装置であり、具体的には電流センサや電圧センサ等により構成される。熱消費量計測装置29は、熱負荷9における実際の熱消費量を計測する装置であり、具体的には貯湯槽24から熱負荷9に供給される湯水の流量を検出する流量センサやその温度を検出する温度センサ等により構成される。そして、制御ユニット30には、電力消費量計測装置28により計測される電力負荷8における電力消費量の情報、及び熱消費量計測装置29により計測される熱負荷9における熱消費量の情報も入力される。以下では、制御ユニット30の各機能部の詳細について説明する。
学習記憶部31は、電力負荷8及び熱負荷9における過去の単位時間(本例では、1時間)毎のエネルギ消費量(電力消費量及び熱消費量)に関するエネルギ消費量を学習して記憶する機能部である。学習記憶部31は学習記憶手段として機能する。本実施形態では、学習記憶部31は、電力負荷8及び熱負荷9におけるエネルギ消費量を、1週間の設定周期内において曜日毎・時間毎に分類して学習及び記憶する構成とされている。図3は、過去エネルギ消費量データ(過去電力消費量データ41及び過去熱消費量データ42)のデータ構造の一例を示す模式図である。この図に示すように、電力消費量E及び熱消費量Hが、月曜日、火曜日、・・・、日曜日の7つの曜日毎に、かつ、0時〜1時、1時〜2時、・・・、23時〜24時の24の時間毎に分類されてそれぞれ記憶されている。なお、本例では電力消費量E及び熱消費量Hを1時間毎に分類しているが、例えば30分毎、15分毎等、更に短い時間毎に分類する構成としても良い。また、本例では過去電力消費量データ41と過去熱消費量データ42とを1つのテーブルによりまとめて管理しているが、これらを個別に管理する構成としても良い。
ここで、図3のテーブルに表示された「E(d、h)」は、d曜日のh時の時間帯における電力消費量を表す。また、「H(d、h)」は、d曜日のh時の時間帯における熱消費量を表す。但し、d=0〜6がそれぞれ月曜日、火曜日、・・・、日曜日の各曜日を表すものとし、h=0〜23がそれぞれ0時〜1時、1時〜2時、・・・、23時〜24時の各時間帯を表すものとする。従って、例えば図3の「E(1、0)」は火曜日の0時〜1時の時間帯における電力消費量を表し、「H(5、22)」は土曜日の22時〜23時の時間帯における熱消費量を表すものとなる。
このようにして記憶管理された過去電力消費量データ41及び過去熱消費量データ42に対して、学習記憶部31は、これらの情報を逐次更新して記憶するように構成されている。学習記憶部31は、電力消費量計測装置28により計測される電力負荷8における電力消費量の情報、及び熱消費量計測装置29により計測される熱負荷9における熱消費量の情報に基づいて、過去電力消費量データ41及び過去熱消費量データ42を更新する。本実施形態では、学習記憶部31は、計測された曜日及び時間帯毎の電力消費量及び熱消費量をそのまま記憶することにより過去電力消費量データ41及び過去熱消費量データ42を更新する。なお、既存の過去電力消費量データ41に記憶された、ある曜日及び時間帯に関しての過去の電力消費量と、新たに計測された電力消費量と、を所定の割合(例えば、過去:新規=3:1)で重み付けして加算することにより過去電力消費量データ41を更新し、既存の過去熱消費量データ42に記憶された、ある曜日及び時間帯に関しての過去の熱消費量と、新たに計測された熱消費量と、を所定の割合(例えば、過去:新規=3:1)で重み付けして加算することにより過去熱消費量データ42を更新する構成等としても良い。
エネルギ需要予測部32は、将来の所定の運転周期Tc(図5〜図7を参照)内に熱負荷9において需要があると予測される時系列的な予測熱需要を導出する機能部である。エネルギ需要予測部32はエネルギ需要予測手段として機能する。本実施形態においては、エネルギ需要予測部32は、将来の運転周期Tc内に電力負荷8において需要があると予測される時系列的な予測電力需要を更に導出するように構成されている。ここで、将来の所定の運転周期Tcとしては、例えば24時間、36時間、48時間等が適宜設定される。本例では、所定の運転周期Tcとして24時間が設定されており、エネルギ需要予測部32は、24時間先までの時系列的な予測電力需要及び予測熱需要を導出する。このような予測電力需要及び予測熱需要の導出処理は運転周期Tc毎に所定のタイミングで実行される。例えば、曜日が切り替わる際(0時の時点)に実行される構成とすることができる。
本実施形態においては、エネルギ需要予測部32は、メモリ40に記憶された過去電力消費量データ41及び過去熱消費量データ42に基づいて、予測電力需要及び予測熱需要を導出する。すなわち、エネルギ需要予測部32は、過去電力消費量データ41に記憶された、予測対象となる曜日の各時間帯に関しての過去の電力消費量と、予測対象となる日の前日の各時間帯に関しての実際の電力消費量と、を所定の割合(例えば、過去:前日=1:3)で重み付けして加算することにより24時間先までの時系列的な予測電力需要を導出する。同様に、エネルギ需要予測部32は、過去熱消費量データ42に記憶された、予測対象となる曜日の各時間帯に関しての過去の熱消費量と、予測対象となる日の前日の各時間帯に関しての実際の熱消費量と、を所定の割合(例えば、過去:前日=1:3)で重み付けして加算することにより24時間先までの時系列的な予測熱需要を導出する。なお、予測対象となる日とその前日との間で平日と休日とが切り替わる場合には、予測対象となる日と同じ属性(平日又は休日)の中で直近の日のデータを、予測対象となる日の前日のデータに代えて用いる構成としても好適である。
運転計画決定部33は、燃料電池3を運転制御するための所定の運転計画を決定する機能部である。運転計画決定部33は運転計画決定手段として機能する。本実施形態では、運転計画決定部33は、燃料電池3が所謂電主運転となるような運転計画を決定する。ここで、電主運転とは、燃料電池3により発生される電力を、エネルギ需要予測部32により導出される予測電力需要に過不足なく追従させる当該燃料電池3の運転を言う。従って、本実施形態では、運転計画決定部33は、エネルギ需要予測部32により導出される時間帯毎の時系列的な予測電力需要に基づき、基本的にはこれと同一となる、時間帯毎の時系列的な運転計画を決定する。本実施形態では後述するように、この運転計画に基づき、運転制御部35は、基本的には燃料電池3を上記の運転計画に従って運転制御する計画運転制御(本例では、燃料電池3が所謂電主運転となるように運転制御する電主運転制御)を実行することになる。
熱不足予測部34は、計画運転制御(本例では、電主運転制御)を継続して実行すると仮定した場合に、熱不足状態となるか否かを予測する機能部である。熱不足予測部34は熱不足予測手段として機能する。ここで、熱不足状態は、貯湯ユニット4により回収されると予測される予測回収熱量が、エネルギ需要予測部32により導出される予測熱需要よりも小さい状態である。熱不足予測部34により熱不足状態となることが予測された場合には、燃料電池3に対してそのまま電主運転制御を継続して実行すると、その後24時間以内のいずれかの時点で、貯湯ユニット4の貯湯槽24に貯留された湯水によっては予測熱需要を賄いきれないことになる。そこで、熱不足予測部34は、例えば現時点から所定時間先までを見越して、電主運転制御を継続して実行すると仮定した場合に当該電主運転制御の実行により発生することが予測される余剰熱量と、現時点における蓄熱量と、に基づいて、熱不足状態となるか否かを予測する。そして、熱不足状態となることが予測された場合には、本願特有の特別運転制御により燃料電池3を運転制御させるべく、熱不足予測部34はその旨の情報を運転制御部35へ出力する。
本実施形態においては、熱不足予測部34は、更に、エネルギ需要予測部32により導出される予測熱需要に対して貯湯ユニット4により回収されると予測される予測回収熱量が不足する量である予測不足熱量を導出するように構成されている。すなわち、熱不足予測部34は、予測熱需要をHd、予測回収熱量をHc、予測不足熱量をΔHとして、
ΔH=Hd−Hc
に基づいて予測不足熱量を導出する。ここで、予測回収熱量Hcは、電主運転制御の実行により発生することが予測される予測余剰熱量Hsと、現時点における蓄熱量Hrと、の和である。よって、熱不足予測部34は、
ΔH=Hd−Hs−Hr
に基づいて予測不足熱量を導出することになる。熱不足予測部34は、熱不足状態となることが予測された場合には、導出された予測不足熱量ΔHの情報も運転制御部35に出力する。
運転制御部35は、燃料電池3の運転制御を行う機能部である。運転制御部35は運転制御手段として機能する。運転制御部35は、運転計画決定部33により決定された運転計画に従って燃料電池3を運転制御する計画運転制御を少なくとも実行する。本実施形態では、上記のとおり運転計画決定部33は燃料電池3が電主運転となるような運転計画を決定するように構成されているので、運転制御部35は、燃料電池3を電主運転させる電主運転制御を少なくとも実行する。燃料電池3を電主運転制御することにより、当該燃料電池3で発生される電力はエネルギ需要予測部32により導出される時系列的な予測電力需要に追従するものとなる。すなわち、電力負荷8で実際に消費される電力が、エネルギ需要予測部32により導出される予測電力需要に略等しい場合には、燃料電池3により発電された電力は略過不足なく電力負荷8で消費される。このような電主運転制御は、熱不足予測部34により熱不足状態となることが予測されない場合、すなわち、貯湯ユニット4により回収されると予測される予測回収熱量が、エネルギ需要予測部32により導出される予測熱需要よりも常に大きい場合には常時継続して実行される。
一方、熱不足予測部34により熱不足状態となることが予測された場合には、運転制御部35は、熱不足状態となる時点以前の所定の直前期間Ta(図6及び図7を参照)だけ、電主運転制御に代えて最大出力運転制御を実行する。最大出力運転制御は、燃料電池3を最大出力で発電させる運転制御である。ここで、最大出力とは燃料電池3が発電を行うことができる発電出力の上限値である。本実施形態のように熱電併給装置が燃料電池3により構成される場合には、最大出力はエネルギ効率が最大となる状態で発電を行う場合における発電出力(定格出力)に等しくなることが一般的である。
ところで、燃料電池3が最大出力に近い状態で運転制御されるほど、発電出力が大きくなると共にそれに合わせて熱出力も大きくなる。一方、燃料電池3が最小出力に近い状態で運転制御されるほど、発電出力が小さくなると共にそれに合わせて熱出力も小さくなる。そのため、エネルギ需要予測部32により導出される予測電力需要が比較的低いレベルで推移する場合には、電主運転制御が実行され続ける限り、燃料電池3は比較的小さな発電出力で運転制御される状態が長く継続して熱出力も小さくなりがちとなる。よって、熱不足状態に陥り易い。そこで、そのような場合には、燃料電池3を、熱不足状態となる時点以前の所定の直前期間Taだけ電主運転制御に代えて最大出力運転制御を実行する構成とすることで、燃料電池3の熱出力を増大させることができる。燃料電池3の熱出力を増大させることにより発生する余剰熱は、熱回収手段としての貯湯ユニット4により回収され、その後発生すると予測される熱不足状態に備えられる。これにより、将来の熱不足状態の発生を抑制することができる。
本実施形態では、運転制御部35が最大出力運転制御を実行する直前期間Taは、熱不足状態となる時点を含みかつそれ以前の期間となるように設定される。また、運転制御部35は、熱不足予測部34により導出される予測不足熱量ΔHに基づいて、当該予測不足熱量ΔHが大きいほど直前期間Taが長くなるように、直前期間Taの長さを設定する。例えば、予測不足熱量ΔHの大きさを複数領域に区分すると共に、より大きな不足熱量ΔHに対応する領域ほど段階的に長くなるように予め割り当てられた期間に基づいて、直前期間Taの長さを設定する構成とすることができる。この場合、複数の異なる長さの中から択一的に直前期間Taの長さを決定することになる。最大出力運転制御では燃料電池3は一律に最大出力で運転制御されてその熱出力は略一定となるので、このような構成を採用することにより、熱不足状態となる時点の直近の期間において熱不足状態となる時点までに、予測不足熱量ΔHが大きいほどより多くの熱を貯湯ユニット4により回収して蓄熱しておくことが可能となる。よって、最大出力運転制御により将来の予測熱需要Hdを略過不足なく賄うことが容易となり、必要最小限の最大出力運転制御で熱不足状態の発生を容易に抑制することができる。
その際、直前期間Taでは、燃料電池3はエネルギ効率が最大に近い状態となる最大出力で発電を行うので、コージェネレーションシステム1全体のエネルギ効率を向上させることができる。また、最大出力運転制御を実行する期間を、熱不足状態となる時点以前の直近の直前期間Taのみとすることで、燃料電池3が発生した熱が貯湯ユニット4により回収されてから実際に熱負荷9に供給されるまでの間(湯水が貯湯槽24に貯留されている間)の放熱量を極力小さく抑えることができる。また、湯水が貯湯槽24に貯留されている間の放熱量が小さくなるので、熱負荷9へ供給される湯水を補助加熱器26により加熱する必要がある場合にも、その加熱量を低減することができる。従って、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1によれば、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することができる。
ところで、燃料電池3を、熱不足状態となる時点以前の直前期間Taだけ電主運転制御に代えて最大出力運転制御を実行する構成とすると、熱出力に加えて、燃料電池3の電力出力も増大することになる。本実施形態では、電主運転制御により燃料電池3は基本的には略過不足なく電力負荷8で消費されるだけの電力を発電する。そのため、直前期間Taにおいて最大出力運転制御が実行されると、その結果として余剰電力が発生する。この直前期間Taに発生する余剰電力は、バッテリ5に蓄電される。これにより、将来電力負荷8において燃料電池3の最大出力を超える電力需要があった際に、バッテリ5に蓄電した電力を電力負荷8に供給することができる。なお、燃料電池3により発電された余剰電力をバッテリ5に蓄電し、或いはバッテリ5から電力を持ち出す際の電力ロスによるエネルギ損失は、湯水が貯湯槽24に貯留されている間の放熱によるエネルギ損失と比較して、無視できる程度に小さい。
また、本実施形態では、将来熱不足状態となることが予測された場合における燃料電池3の運転制御は、当該熱不足状態となる以前の直近の直前期間Taだけ計画運転制御に代えて最大出力運転制御を実行するという、非常に簡素な運転制御である。よって、そのような運転制御を実行する際の制御ユニット30による演算処理負荷を大幅に低減することができる。更に、最大出力運転制御では、燃料電池3の発電出力が一律に最大出力となるように制御されるので、仮に電力負荷8による実際の電力需要がエネルギ需要予測部32により導出される予測電力需要から外れてしまった場合であっても、当該予測外れによる実際の熱需要と予測熱需要との間の差分の蓄積が熱不足状態の解消や省エネルギ性に与える影響は比較的小さい。つまり、本実施形態に係る運転制御方法では、予測電力需要及び予測熱需要の精度はそれ程重要ではなく、予測電力需要は運転計画を決定するための基準となり得る程度に、また、予測熱需要は将来の熱不足状態を予測するための基準となり得る程度に正確であれば良い。そのような比較的緩い精度の情報に基づいても、比較的高い精度で熱不足状態の発生を抑制することができる。従って、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1によれば、比較的小さな演算処理負荷でかつ許容され得る高い精度で、熱不足状態の発生を抑制することができる。
本実施形態においては、運転制御部35は、直前期間Ta内にバッテリ5の状態が所定の満充電状態となった場合には、直前期間Taのうちバッテリ5が満充電状態にある期間では最大出力運転制御を実行することなく計画運転制御(本例では、電主運転制御)を実行する。すなわち、運転制御部35は、直前期間Taのうちバッテリ5が満充電状態となる前の期間は最大出力運転制御を実行し、バッテリ5が満充電状態となった後の期間は電主運転制御を実行する。なお、バッテリ5が満充電状態となった後は、運転制御部35は、既に将来の熱不足状態が解消された状態となっているか否かに関わらず電主運転制御を実行する。ここで、バッテリ5の充電状態は、バッテリ5の充電容量に対する充電残量の比率に基づいて定められるものとする。なお、バッテリ5の充電残量は、現在値はバッテリ状態検出センサS1により検出されるバッテリ電圧や充放電電流等に基づいて求められ、予測値は充電量と放電量とに基づいて求められる。そして、バッテリ5の仕様で定められた充電残量(蓄電量)の上限に達した状態、すなわち、バッテリ5の充電残量が当該バッテリ5の充電容量の上限値付近の、上限値よりも小さな値に設定された満充電判定閾値以上となっている状態を、満充電状態とする。例えば、バッテリ5の充電容量の上限値を「100」とした場合における、「95〜100」の状態を満充電状態とすることができる。
直前期間Ta内にバッテリ5の状態が満充電状態となった場合には、その後も燃料電池3を最大出力運転制御して電力負荷8における実際の電力需要を上回る余剰電力を発生させたとしても、当該余剰電力をバッテリ5に充電することができない。そこで、上記のように、直前期間Taのうちバッテリ5が満充電状態にある期間では電主運転制御を実行する構成とすることで、バッテリ5が満充電状態となった後は予測電力需要のみを略過不足なく賄って、無駄な余剰電力の発生を抑制することができる。
なお、運転制御部35は、直前期間Taの開始時点におけるバッテリ5の状態が既に満充電状態である場合には、当該直前期間Taでは最大出力運転制御を実行することなく計画運転制御(本例では、電主運転制御)を実行する。直前期間Taの開始時点において既にバッテリ5が満充電状態となっている場合にも、燃料電池3を最大出力運転制御して余剰電力を発生させたとしても、当該余剰電力をバッテリ5に充電することができない。よって、上記の構成を採用することで、直前期間Taの全体で予測電力需要のみを略過不足なく賄って、無駄な余剰電力の発生を抑制することができる。
また、本実施形態においては、運転制御部35は、直前期間Ta内に、貯湯ユニット4により回収されると予測される予測回収熱量が予測熱需要Hdよりも大きい状態である熱余剰状態となった場合には、直前期間Taのうち熱余剰状態にある期間では最大出力運転制御を実行することなく計画運転制御(本例では、電主運転制御)を実行する。すなわち、運転制御部35は、直前期間Taのうち熱余剰状態となる前の期間は最大出力運転制御を実行し、熱余剰状態となった後の期間は電主運転制御を実行する。このような運転制御条件の設定は、実際の熱需要が予測熱需要を下回って推移して、最大出力運転制御の実行により予測された以上の余剰熱が発生する場合に実益がある。すなわち、最大出力運転制御が実行された結果、直前期間Ta内に熱余剰状態となった場合には、既に将来の熱不足状態の発生を回避することが可能であると予測されるので、燃料電池3が最大出力運転制御され、それ以上の余剰熱を発生させて当該余剰熱を貯湯ユニット4により回収したとしても、その余剰熱は熱不足状態の解消のために使用されない可能性が高い。そこで、上記のように、直前期間Taのうち熱余剰状態にある期間では電主運転制御を実行する構成とすることで、無駄な余剰熱の発生を抑制することができる。
なお、運転制御部35は、直前期間Ta内に、貯湯ユニット4による蓄熱量が所定の満蓄熱状態となった場合には、直前期間Taのうち満蓄熱状態にある期間では最大出力運転制御を実行することなく計画運転制御(本例では、電主運転制御)を実行する。すなわち、運転制御部35は、直前期間Taのうち満蓄熱状態となる前の期間は最大出力運転制御を実行し、満蓄熱状態となった後の期間は電主運転制御を実行する。ここで、本実施形態では、貯湯ユニット4の蓄熱量は、貯湯槽24に貯留された湯水の温度及び量に基づいて判定される。すなわち、貯湯槽24に隣接して配設された複数の湯温センサS2により上下方向の複数位置における湯水の温度が検出され、予め設定された所定の高温判定温度(例えば、60°C)以上の温度状態にある湯水量が多いほど蓄熱量が大きいと判定される。そして、本例では、貯湯槽24に貯留された湯水全体の温度が上記高温判定温度以上である状態を満蓄熱状態としている。具体的には、複数の湯温センサS2のうち上下方向で最下部に設置された湯温センサS2b(図1を参照)により検出される湯水の温度が上記高温判定温度以上である場合に、満蓄熱状態と判定される。
直前期間Ta内に満蓄熱状態となった場合には、その後も燃料電池3を最大出力運転制御して余剰熱を発生させたとしても、それ以上は当該余剰熱を湯水の形態で回収して貯湯槽24に貯留することができない。そこで、上記のように、直前期間Taのうち満蓄熱状態にある期間では電主運転制御を実行する構成とすることで、無駄な余剰熱の発生を抑制することができる。
1−3.運転制御処理の手順
次に、本実施形態に係る制御ユニット30によるコージェネレーションシステム1の運転制御処理の内容について説明する。図4は、本実施形態に係る運転制御処理の処理手順を示すフローチャートである。以下に説明する運転制御処理の手順は、制御ユニット30に備えられる各機能部により実行される。
図4に示すように、運転制御処理では、まずエネルギ需要予測部32は、メモリ40から、予測対象となる曜日についての過去電力消費量データ41及び過去熱消費量データ42を読み出して取得する。また、エネルギ需要予測部32は、予測対象となる日の前日の実際の電力消費量データ及び実際の熱消費量データを取得する(ステップ#01)。エネルギ需要予測部32は、これらのデータに基づいて、将来の所定の運転周期Tc(本例では、24時間)先までの時系列的な予測電力需要及び予測熱需要を導出する(ステップ#02)。運転計画決定部33は、導出された時系列的な予測電力需要に基づいて、運転計画を決定する(ステップ#03)。本例では、運転計画決定部33は、燃料電池3が所謂電主運転となるような運転計画を決定する。運転制御部35は、決定された運転計画に基づいて、計画運転制御(本例では、電主運転制御)を実行する(ステップ#04)。これにより、燃料電池3は、当該燃料電池3により発生される電力がエネルギ需要予測部32により導出される予測電力需要に追従するように運転制御される。
次に、熱不足予測部34は、電主運転制御を継続して実行すると仮定した場合に、熱不足状態となるか否かを予測する(ステップ#05)。熱不足状態となることが予測されない場合には(ステップ#05:No)、そのまま電主運転制御を継続して実行し、運転制御処理を終了する。一方、熱不足状態となることが予測される場合には(ステップ#05:Yes)、運転制御部35は、バッテリ5が満充電状態であるか否かを判定する(ステップ#06)。バッテリ5が満充電状態であると判定された場合には(ステップ#06:Yes)、そのまま電主運転制御を継続して実行し、運転制御処理を終了する。一方、バッテリ5が満充電状態ではないと判定された場合には(ステップ#06:No)、熱不足予測部34は予測不足熱量ΔHを導出する(ステップ#07)。また、運転制御部35は、予測不足熱量ΔHに基づいて直前期間Taの長さを設定する(ステップ#08)。なお、この間、運転制御部35は電主運転制御を実行しており、この電主運転制御は直前期間Taの開始時まで(ステップ#09:No)継続して実行される。
この状態で、やがて直前期間Taが開始されると(ステップ#09:Yes)、運転制御部35は、電主運転制御に代えて最大出力運転制御を実行する(ステップ#10)。これにより、燃料電池3は、エネルギ効率が最大となる状態で発電を行うように運転制御される。また、最大出力運転制御では、燃料電池3の熱出力が増大して余剰熱が発生するので、当該余剰熱は貯湯ユニット4により回収されて、その後発生すると予測される熱不足状態に備えられる。また、最大出力運転制御では、燃料電池3の発電出力も増大して余剰電力が発生する場合が多いので、当該余剰電力はバッテリ5に蓄電されて、その後電力負荷8において燃料電池3の最大出力を超える電力需要があった場合に備えられる。このような運転制御処理により、比較的小さな演算処理負荷でかつ許容され得る高い精度で、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することができる。
直前期間Ta中は、運転制御部35は、バッテリ5の状態が満充電状態となったか否かを監視している(ステップ#11)。また、運転制御部35は、熱余剰状態又は満蓄熱状態となったか否かを監視している(ステップ#12)。バッテリ5の状態が満充電状態とはならず(ステップ#11:No)、かつ、熱余剰状態とも満蓄熱状態ともならない場合には(ステップ#12:No)、直前期間Ta中は最大出力運転制御を継続して実行し、運転制御処理を終了する。一方、直前期間Ta中にバッテリ5の状態が満充電状態となったと判定された場合(ステップ#11:Yes)、又は、熱余剰状態若しくは満蓄熱状態となったと判定された場合には(ステップ#12:Yes)、直前期間Taのうちそのように判定された後の期間では、最大出力運転制御に代えて、再度電主運転制御を実行する(ステップ#13)。以上で、一連の運転制御処理を終了する。
1−4.運転制御処理の具体例
次に、本実施形態に係る運転制御処理によりコージェネレーションシステム1の運転制御を行った場合の具体例について図5〜図7を参照して説明する。これらの図においては、上から順に(a)予測エネルギ需要(予測電力需要及び予測熱需要)、(b)電主運転制御の実行による蓄熱量、(c)燃料電池3の発電出力及びバッテリ5の充電量、(d)最大出力運転制御の実行による蓄熱量、が示されている。なお、図5〜図7の各図において、(a)の予測エネルギ需要においては、破線で示されるチャートが予測電力需要を示し、太実線で示されるチャートが予測熱需要を示している。(b)の電主運転制御の実行による蓄熱量、及び(d)の最大出力運転制御の実行による蓄熱量においては、破線で示される蓄熱量のチャートと共に、予測不足熱量が太実線のチャートで示されている。(c)の燃料電池3の発電出力及びバッテリ5の充電量においては、破線で示されるチャートが発電出力を示し、太実線で示されるチャートが充電量を示している。
また、図5は、コージェネレーションシステム1を、電力負荷8における電力需要レベルに対して熱負荷9における熱需要レベルが小さいエネルギ需要家(以下では、電主需要家と称する。)に導入した場合の一例を示している。図6は、コージェネレーションシステム1を、電力負荷8における電力需要レベルに対して熱負荷9における熱需要レベルが大きいエネルギ需要家(以下では、熱主需要家と称する。)に導入した場合の一例を示している。図7は、コージェネレーションシステム1を、電力負荷8における電力需要レベルと熱負荷9における熱需要レベルとが略均衡しているエネルギ需要家(以下では、熱電均衡需要家と称する。)に導入した場合の一例を示している。
図5に示すように、電主需要家では、(b)において太実線で示される予測不足熱量が常にゼロに維持されている。つまり、電主需要家では、電主運転制御を継続して実行したとしても、燃料電池3が発生する熱だけで熱負荷9における熱需要を十分に賄うことができ、一の運転周期Tc内で熱不足状態は発生していないことが分かる。よって、この例におけるコージェネレーションシステム1では、常時電主運転制御が実行され、最大出力運転制御は実行されていない。なお、図5において燃料電池3が最大出力で運転制御される期間が見られるが、これはあくまで電主運転制御による結果であり、本願で言う最大出力運転制御が実行されたことによる結果ではない。
一方、図6に示すように、熱主需要家では、電主運転制御の実行によってでは燃料電池3が発生する熱だけで熱負荷9における熱需要を十分に賄うことができず、一の運転周期Tc内の所定時点で、熱不足状態が発生していることが分かる((b)の白抜き矢印を参照)。よって、この例におけるコージェネレーションシステム1では、熱不足状態が発生する時点を含みかつそれ以前の直前期間Taだけ、電主運転制御に代えて最大出力運転制御が実行されている。これにより、最大出力運転制御の実行による蓄熱量は、電主運転制御の実行による蓄熱量と比較して大きく増大され((d)の太矢印を参照)、熱不足状態の発生が有効に回避されていることが分かる((d)の破線矢印を参照)。なお、(c)の太実線のチャートを参照して、最大出力運転制御の実行によりバッテリ5の充電量も増加し、充電された電力は、その後電力負荷8に供給されて消費されていることが分かる。
図7に示すように、熱電均衡需要家でも、電主運転制御の実行によってでは燃料電池3が発生する熱だけで熱負荷9における熱需要を十分に賄うことができず、一の運転周期Tc内の所定時点で、熱不足状態が発生していることが分かる((b)の白抜き矢印を参照)。よって、この例におけるコージェネレーションシステム1では、熱不足状態が発生する時点を含みかつそれ以前の直前期間Taだけ、電主運転制御に代えて最大出力運転制御が実行されている。これにより、最大出力運転制御の実行による蓄熱量は、電主運転制御の実行による蓄熱量と比較して少なくとも増大され((d)の太矢印を参照)、熱不足状態の発生が回避され((d)の破線矢印を参照)或いは熱不足状態の発生が完全には回避できないにしてもその程度が抑制されていることが分かる((d)の斜線付矢印を参照)。なお、(c)の太実線のチャートを参照して、最大出力運転制御の実行によりバッテリ5の充電量も僅かに増加し、充電された電力は、その後電力負荷8に供給されて消費されていることが分かる。
これらの図5〜図7を参照して良く理解できるように、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1の設置対象としては、電力負荷8における電力需要レベルに対して熱負荷9における熱需要レベルが大きいエネルギ需要家(熱主需要家)が特に適している。このような熱主需要家では、電主運転制御を実行して、燃料電池3により発生される電力を予測電力需要に追従させた場合に、比較的高い頻度で熱不足状態が発生し得る。本実施形態に係るコージェネレーションシステム1及びその運転制御方法によれば、そのような熱不足状態の発生を有効に抑制することができる。なお、熱電均衡需要家でも、電主運転制御を実行した場合に、ある程度の頻度で熱不足状態が発生し得る。また、電主需要家でも、電力負荷8や熱負荷9の使用状況次第では熱不足状態が発生する可能性がある。従って、熱電均衡需要家や電主需要家を本実施形態に係るコージェネレーションシステム1の設置対象とすることも、当然に可能である。
2.第二の実施形態
本発明に係るコージェネレーションシステムの第二の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係るコージェネレーションシステム1は、発生される電力が将来の予測電力需要に追従するように燃料電池3を継続して運転制御すると仮定した場合においてそのままでは熱不足状態となると予測された場合には、少なくとも熱不足状態となる時点以前の仮設直前期間Tbは燃料電池3を最大出力で運転制御させる特別運転計画を、所定の運転計画として決定するように構成されている。この点において、燃料電池3が全ての期間で所謂電主運転となるような運転計画を決定するように構成された上記第一の実施形態と相違している。そして、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1は、基本的にはそのように決定された特別運転計画に従って実際に燃料電池3を運転制御する特別運転制御を実行し、そのままでは熱不足状態となることが予測された場合には、特別に、熱不足状態となる時点以前の所定の直前期間Taだけ燃料電池3を最大出力で運転制御するように構成されている。以下では、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1について、上記第一の実施形態との相違点を中心に詳細に説明する。なお、特に明記しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
2−1.制御ユニットの構成
本実施形態においては、運転計画決定部33は、燃料電池3が全ての期間で所謂電主運転となるような運転計画を仮決定する。そして、仮決定された運転計画に従って燃料電池3が電主運転されたと仮定した場合において、熱不足予測部34により熱不足状態となることが予測された場合には、運転計画決定部33は、全ての期間で電主運転となるような運転計画に代えて、少なくとも仮設直前期間Tbは燃料電池3を最大出力で運転制御させる特別運転計画を仮決定する。すなわち、特別運転計画は、基本的には電主運転制御を実行させつつ、熱不足状態となることが予測される時点以前の仮設直前期間Tbだけ最大出力運転制御を実行させるような運転計画である。なお、この「仮設直前期間Tb」は、上記第一の実施形態で説明した「直前期間Ta」と同種ではあるが異なる概念である。すなわち、「直前期間Ta」は、実際の計画運転制御中に熱不足状態となると予測された場合に設定される期間を表す概念であり、これに対して「仮設直前期間Tb」は、運転計画の実行時(計画時)にシミュレーション上仮想的に設定される期間を表す概念である。本実施形態では、運転計画決定部33は、熱不足予測部34により導出される予測不足熱量ΔHに基づいて、当該予測不足熱量ΔHが大きいほど仮設直前期間Tbが長くなるように、仮設直前期間Tbの長さを仮設定する。また、本実施形態では、仮設直前期間Tbは、熱不足状態となる時点を含みかつそれ以前の期間となるように設定される。
本実施形態では、運転計画決定部33は、バッテリ5の状態の将来予測及び貯湯ユニット4による蓄熱量の将来予測の一方又は双方に基づいて、仮設定された仮設直前期間Tbの長さを調節するように構成されている。より具体的には、運転計画決定部33は、仮設直前期間Tbの間、電主運転制御に代えて最大出力運転制御を継続して実行すると仮定した場合に、当該仮設直前期間Tb内にバッテリ5の状態が満充電状態となると予測される場合には、仮設直前期間Tbの長さを所定時間(例えば、1分、10分等;適宜変更可能)だけ短くするように仮設直前期間Tbの長さを調節する。また、運転計画決定部33は、仮設直前期間Tbの間、電主運転制御に代えて最大出力運転制御を継続して実行すると仮定した場合に、当該仮設直前期間Tb内に貯湯ユニット4により回収されると予測される予測回収熱量が予測熱需要Hdよりも大きい状態である熱余剰状態となると予測され、又は、貯湯ユニット4による蓄熱量が満蓄熱状態となると予測される場合には、同様に仮設直前期間Tbの長さを所定時間だけ短くするように仮設直前期間Tbの長さを調節する。
そして、運転計画決定部33は、バッテリ5の状態の将来予測及び貯湯ユニット4による蓄熱量の将来予測の一方又は双方に基づいて、調節されて再設定された仮設直前期間Tbの長さを、再度調節するように構成されている。すなわち、運転計画決定部33は、上記のようにして再設定された仮設直前期間Tbの間、電主運転制御に代えて最大出力運転制御を継続して実行すると仮定した場合に、満充電状態、熱余剰状態、及び満蓄熱状態のいずれかとなると予測される場合には、再設定された仮設直前期間Tbの長さを、更に所定時間だけ短くするように仮設直前期間Tbの長さを再度調節する。本実施形態では、運転計画決定部33は、このような仮設直前期間Tbの長さの調節処理を、満充電状態、熱余剰状態、及び満蓄熱状態のいずれにもならないと予測されるまで繰り返し行う。これにより、仮設直前期間Tbの長さを適正化する。このようにして、基本的には電主運転制御を実行させつつ、熱不足状態となることが予測される時点以前の適正な長さの仮設直前期間Tbだけ最大出力運転制御を実行させる特別運転計画が正式に決定される。
本実施形態では、運転制御部35は、運転計画決定部33により決定された特別運転計画に従って燃料電池3を運転制御する特別運転制御を少なくとも実行する。燃料電池3を特別運転制御することにより、当該燃料電池3で発生される電力は、エネルギ需要予測部32により導出される時系列的な予測電力需要に追従しつつ、運転計画の決定時に設定された仮設直前期間Tbでは最大出力となる。そして、実際に特別運転制御が実行された状態で、熱不足予測部34は、例えば現時点から所定時間先までを見越して、当該特別運転制御をそのまま継続して実行すると仮定した場合に、熱不足状態となるか否かを予測する。そして、熱不足状態となると予測された場合には、運転制御部35は、上記第一の実施形態と同様に、直前期間Taだけ特別運転制御に代えて最大出力運転制御を実行する。
運転制御部35が、直前期間Taだけ特別運転制御に代えて最大出力運転制御を実行した結果、実際に満充電状態、熱余剰状態、及び満蓄熱状態のいずれかとなった場合には、運転制御部35は、直前期間Taのうち上記いずれかの状態となった後の期間では最大出力運転制御を実行することなく計画運転制御を実行する。この点に関しては、上記第一の実施形態における場合と同様である。なお、この場合における計画運転制御は、特別運転制御ではなく一律に電主運転制御とすると好適である。満充電状態、熱余剰状態、及び満蓄熱状態のいずれかの状態では、予測電力需要のみを略過不足なく賄うことができれば十分だからである。
2−2.運転制御処理の手順
本実施形態に係る制御ユニット30によるコージェネレーションシステム1の運転制御処理の内容について説明する。図8は、本実施形態に係る運転制御処理の処理手順を示すフローチャートである。本実施形態に係る運転制御処理のステップ#21〜ステップ#23の処理は、上記第一実施形態におけるステップ#01〜ステップ#03の処理(図4を参照)に相当する。但し、本実施形態のステップ#23の処理においては、運転計画決定部33は、燃料電池3が所謂電主運転となるような仮の運転計画(ここでは、電主運転となるような運転計画)を決定するにとどまる。次に、運転計画決定部33は、仮決定された運転計画に基づいて計画運転制御(ここでは、電主運転制御)を継続して実行すると仮定した場合に(ステップ#24)、熱不足予測部34により熱不足状態となることが予測されるか否かを判定すると共に(ステップ#25)、バッテリ5が満充電状態となると予測されるか否かを判定する(ステップ#26)。熱不足状態となるとは予測されなかった場合(ステップ#25:No)、又は、バッテリ5が満充電状態となると予測された場合には(ステップ#26:Yes)、運転計画決定部33は電主運転となるような運転計画を決定し、運転制御部35はこれに基づいて計画運転制御を実行する(ステップ#33)。
一方、熱不足状態となると予測され(ステップ#25:Yes)、かつ、バッテリ5が満充電状態とはならないと予測された場合には(ステップ#26:No)、熱不足予測部34は予測不足熱量ΔHを導出し(ステップ#27)、運転計画決定部33は、予測不足熱量ΔHに基づいて、仮設直前期間Tbの長さを仮設定する(ステップ#28)。次に、運転計画決定部33は、仮設直前期間Tbの間、最大出力運転制御を継続して実行すると仮定した場合に(ステップ#29)、バッテリ5の状態が満充電状態となると予測されるか否かを判定すると共に(ステップ#30)、熱余剰状態又は満蓄熱状態となると予測されるか否かを判定する(ステップ#31)。バッテリ5が満充電状態となると予測された場合(ステップ#30:Yes)、又は、熱余剰状態若しくは満蓄熱状態となると予測された場合には(ステップ#31:Yes)、運転計画決定部33は、ステップ#28で仮設定された仮設直前期間Tbの長さを所定時間だけ短くするように調節する(ステップ#32)。そして、調節されて再設定された長さの仮設直前期間Tbに対して、ステップ#29〜ステップ#32の処理が再度繰り返して実行される。
やがて仮設直前期間Tbの長さが適正化されて、最大出力運転制御を継続して実行すると仮定した場合に、満充電状態、熱余剰状態、及び満蓄熱状態のいずれにもならないと予測されるに至ると(ステップ#30:No、かつ、ステップ#31:No)、運転計画決定部33は、基本的には電主運転制御を実行させつつ、熱不足状態となることが予測される時点以前の適正な長さの仮設直前期間Tbだけ最大出力運転制御を実行させる特別運転計画を正式に決定することになる。運転制御部35は、決定された特別運転計画に基づいて、特別運転制御を実行する(ステップ#33)。なお、このステップ#33の処理は、上記第一実施形態におけるステップ#04の処理に相当する。その後、上記第一実施形態におけるステップ#05〜ステップ#13の処理と同様の処理が行われて、本実施形態に係る運転制御処理を終了する。なお、図8のフローチャートにおいては、ステップ#33以降の処理を省略して示している。
本実施形態に係るコージェネレーションシステム1によれば、運転計画の決定時に、電主運転制御を継続して実行すると仮定した場合にそのままでは熱不足状態となることが予測される場合には、仮設直前期間Tb以外の期間は電主運転制御を実行させつつ、熱不足状態となることが予測される時点以前の仮設直前期間Tbだけは最大出力運転制御を実行させる特別運転計画が決定される。そして、決定される特別運転計画に基づいて特別運転制御が実行されることにより、実際の電力需要及び熱需要が予測電力需要及び予測熱需要に略等しい状態で推移する場合には、仮設直前期間Tbでは余剰電力及び余剰熱が発生する。発生した余剰熱は貯湯ユニット4により回収されて熱媒としての湯水が蓄える熱量の形態で蓄熱される。これにより、本実施形態では、計画運転制御の一種である特別運転制御を実行することのみによっても、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することが可能となっている。なお、余剰電力はバッテリ5に蓄電される。
更に、本実施形態では、運転計画の決定時において仮設定される仮設直前期間Tbの長さが、バッテリ5の状態の将来予測及び貯湯ユニット4による蓄熱量の将来予測に基づいて、適正な長さとなるように調節される。すなわち、将来の熱不足状態の発生を解消することができると予測され、かつ、満充電状態、熱余剰状態、及び満蓄熱状態のいずれにもならないと予測されるだけの長さとなるように、仮設直前期間Tbの長さが調節される。これにより、仮設直前期間Tbにおける燃料電池3の最大出力運転制御により将来の予測熱需要を略過不足なく賄うことが可能となり、必要最小限の最大出力運転制御で熱不足状態の発生を抑制することが可能となっている。
更に、本実施形態では、実際に特別運転制御を実行しながら、その特別運転制御を継続して実行すると仮定した場合に熱不足状態となると予測された場合には、仮設直前期間Tbの開始時点よりも早い時点を始点とする直前期間Taの間、特別運転制御に代えて最大出力運転制御が実行される。これにより、例えば実際の熱需要が予測熱需要を上回って推移して、特別運転計画で予定された仮設直前期間Tbの終了時点よりも前に実際に熱不足状態に陥ると予測された場合にも、熱不足状態の発生を抑制しつつエネルギ消費量を有効に低減することが可能となっている。
〔その他の実施形態〕
(1)上記第一の実施形態においては、運転制御部35が予測不足熱量ΔHに基づいて直前期間Taの長さを設定する場合を例として説明した。また、上記第二の実施形態においては、運転計画決定部33が予測不足熱量ΔHに基づいて仮設直前期間Tbの長さを仮設定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば運転制御部35が、予測不足熱量ΔHとは無関係に直前期間Taの長さを一律に設定したり、運転計画決定部33が、予測不足熱量ΔHとは無関係に仮設直前期間Tbの長さを一律に仮設定したりする構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成は、その後仮設直前期間Tbの長さを適正化させる処理(図8におけるステップ#29〜ステップ#32の処理)を行うことになる、上記第二の実施形態に採用する構成として適している。
(2)上記第一の実施形態においては、運転制御部35が、予測不足熱量ΔHに基づいて、当該予測不足熱量ΔHが大きいほど直前期間Taが長くなるように、複数の異なる長さの中から択一的に直前期間Taの長さを設定する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば運転制御部35が、最大出力運転制御時の各時点における燃料電池3が発生する発生熱量と予測熱需要Hdとの差分の時間積分が予測不足熱量ΔHに等しくなるように、直前期間Taの長さを設定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。直前期間Taにおいて貯湯ユニット4により回収されて蓄熱される熱量のうち、将来の予測熱需要Hdを超える分である予測不足熱量ΔHは、当該直前期間Taの各時点における、燃料電池3が発生する発生熱量と予測熱需要Hdとの差分の時間積分に略等しくなる。よって、この構成によれば、より確実に、最大出力運転制御により将来の予測熱需要Hdを略過不足なく賄うことが可能となり、必要最小限の最大出力運転制御で熱不足状態の発生を抑制することが可能となる。このような構成では、当初から適正な長さの直前期間が設定されることになるので、その後直前期間の長さを適正化させる処理(図8におけるステップ#29〜ステップ#32)を行うことのない、上記第一の実施形態に採用する構成として適している。
(3)上記第一の実施形態においては、計画運転制御として、燃料電池3を電主運転させる電主運転制御が実行される場合を例として説明した。また、上記第二の実施形態においては、計画運転制御として、仮設直前期間Tb以外の期間は燃料電池3を電主運転させると共に、仮設直前期間Tbでは燃料電池3を最大出力で運転させる特別運転制御が実行される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、運転制御部35は、計画運転制御として、少なくとも運転計画決定部33により決定された所定の運転計画に従った計画運転制御を実行するように構成されていれば良い。この場合において、運転計画決定部33は、例えばエネルギ需要家のエネルギ消費性向やコージェネレーションシステム1の各部の特性等に応じて最適となる各種の運転計画を決定する構成とすることができる。
(4)上記第二の実施形態においては、仮設直前期間Tb以外の期間は燃料電池3を電主運転させると共に仮設直前期間Tbでは燃料電池3を最大出力で運転させる特別運転制御が実行されるように構成されており、実際に特別運転制御が実行された結果、そのままでは熱不足状態となることが予測された場合に、直前期間Taだけ最大出力運転制御が実行される場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、実際に特別運転制御が実行された場合に、そのままでは熱不足状態となることが予測されるか否かに関わらず、特別運転計画に従った特別運転制御が常時継続して実行される構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合であっても、仮設直前期間Tbで発生する余剰熱を蓄熱しておくことで熱不足状態の発生を抑制することができる。
(5)上記の各実施形態においては、運転制御部35が、直前期間Ta内にバッテリ5が満充電状態となった場合には、直前期間Taのうちバッテリ5が満充電状態にある期間では最大出力運転制御を実行することなく計画運転制御を実行する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば直前期間Ta内にバッテリ5が満充電状態となった場合であっても、その時点では未だ熱余剰状態でも満蓄熱状態でもない場合には、最大出力運転制御を継続して実行する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、バッテリ5が満充電状態となった後は、最大出力運転制御実行することにより燃料電池3が発生する余剰電力の全てを、電気ヒータ14で熱に変換すると共に貯湯ユニット4で当該変換された熱を回収して蓄熱する構成とすることができる。なお、その後、熱余剰状態又は満蓄熱状態となった場合には、最大出力運転制御に代えて計画運転制御を実行する構成とすると好適である。
(6)上記の各実施形態においては、運転制御部35が、直前期間Ta内に熱余剰状態又は満蓄熱状態となった場合には、直前期間Taのうちそれら以降の期間では最大出力運転制御を実行することなく計画運転制御を実行する場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば直前期間Ta内に熱余剰状態となった場合であっても、その時点では未だ満蓄熱状態ではない場合には、最大出力運転制御を継続して実行する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、その後、満蓄熱状態となった場合には、最大出力運転制御に代えて計画運転制御を実行する構成とすると好適である。
(7)上記の各実施形態においては、直前期間Ta及び仮設直前期間Tbが、熱不足状態となる時点を含みかつそれ以前の期間となるように設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、直前期間Ta又は仮設直前期間Tbの終期と熱不足状態となる時点との間に多少の空白期間が生じるように、熱不足状態となる時点を含まないそれ以前の期間として直前期間Ta又は仮設直前期間Tbを設定する構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。但し、そのような空白期間の長さは、燃料電池3が発生した熱が貯湯ユニット4により回収されてから実際に熱負荷9に供給されるまでの間(湯水が貯湯槽24に貯留されている間)の放熱量がほとんど無視できる程度の長さにとどめておくことが好ましい。
(8)上記の各実施形態においては、コージェネレーションシステム1が熱電併給装置としての燃料電池3を備えて構成された場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、コージェネレーションシステム1を、例えばガスエンジンと当該ガスエンジンの軸出力により発電を行う発電機とを有する熱電併給装置を備えて構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、熱電併給装置の最大出力運転制御時におけるエネルギ効率は、最適燃費特性に沿った状態(効率が高く排ガスの少ない状態)におけるエネルギ効率よりも低くなる可能性がある。しかし、この場合であっても、少なくとも比較的小さな演算処理負荷でかつ許容され得る高い精度で、熱不足状態の発生を抑制することができる。