以下、添付図面を参照して、本発明に従う燃料電池システムの各種の実施形態について説明する。まず、図1〜図9を参照して、第1の実施形態の燃料電池システムについて説明する。
図1において、図示の燃料電池システム2は、燃料ガス(例えば、都市ガス、LPガスなど)を消費して発電を行うものであり、燃料ガスを改質するための改質器4と、改質器4にて改質された燃料ガス(改質燃料ガス)及び酸化材としての空気の酸化及び還元によって発電を行う固体酸化物形の燃料電池セルスタック6と、を備えている。
燃料電池セルスタック6は、例えば、電気化学反応によって発電を行うための複数の固体酸化物形の燃料電池セルを集電部材を介して積層して構成されており、図示していないが、酸素イオンを伝導する固体電解質と、この固体電解質の片側に設けられた燃料極と、固体電解質の他側に設けられた酸素極(空気極)とを備え、固体電解質として例えばイットリアをドープしたジルコニアが用いられる。
燃料電池セルスタック6の燃料極の導入側は、改質燃料ガス送給流路8を介して改質器4に接続され、この改質器4は、ガス・水蒸気送給流路10を介して気化器12に接続されている。気化器12は、燃料ガス供給流路14を介して燃料ガスを供給するための燃料ガス供給源16(例えば、埋設管や貯蔵タンクなど)に接続されている。また、この気化器12は、水供給流路18を介して改質水タンク20に接続されている。
改質器4には改質触媒が収容され、改質触媒として例えばアルミナにルテニウムを担持させたものが用いられ、この改質触媒によって燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスが水蒸気改質される。尚、この実施形態では、改質器4と気化器12とを別体に構成しているが、これらを一体的に構成するようにしてもよい。また、この実施形態では、燃料ガス供給手段からの燃料ガスを気化器12に送給しているが、この気化器12に代えて、改質器4に直接的に送給するようにしてもよい。
燃料ガス供給流路14には、脱硫器22、バッファタンク24、燃料ガスポンプ26、燃料ガス流量センサ28(燃料ガス流量検知手段を構成する)及び遮断弁30が配設されている。脱硫器22は、燃料ガスに含まれる硫黄成分(付臭剤中の硫黄成分)を除去し、バッファタンク24では、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの圧力の変動が緩和され、またその流量の制御が安定化される。燃料ガスポンプ26は、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの供給流量を制御し、燃料ガス供給源16からの燃料ガスを気化器12に送給する。また、燃料ガス流量センサ28は、燃料ガス供給流路14を通して送給される燃料ガスの流量を測定し、遮断弁30は、閉状態になると燃料ガス供給流路14を遮断して燃料ガスの供給を停止する。この実施形態では、燃料ガス供給源16、燃料ガス供給流路14及び燃料ガスポンプ26が燃料ガス供給手段を構成し、燃料ガスポンプ26の回転数が大きくなる(又は小さくなる)と、燃料ガス供給手段からの燃料ガスの供給流量が増大(又は減少)する。
更に、水供給流路18には水ポンプ32が配設され、この水ポンプ32の作用によって、改質水タンク20内の水(回収水)が水供給流路18を通して気化器12に供給される。この実施形態では、改質水タンク20、水供給流路18及び水ポンプ32が水供給手段を構成し、水ポンプ32の回転数が大きくなる(又は小さくなる)と、水供給手段からの改質用水の供給流量が増大(又は減少)する。
この燃料電池セルスタック6の酸素極(空気極)の導入側は、空気供給流路34を介して送風手段としての送風ブロア36に接続され、この空気供給流路34に空気流量センサ38が配設されている。送風ブロア36は、酸化材としての空気を空気供給流路34を通して燃料電池セルスタック6の空気極側に供給し、空気流量センサ38は、空気供給流路34を流れる空気の流量を計測する。尚、この実施形態では、送風ブロア36及び空気供給流路34が発電用の空気を供給するための空気供給手段(酸化材供給手段)を構成し、送風ブロア36の回転数が大きくなる(又は小さくなる)と、空気供給手段からの改質用水の供給流量が増大(又は減少)する。
燃料電池セルスタック6の燃料極及び空気極の排出側には燃焼域40が設けられ、燃料電池セルスタック6の燃料極側から排出される反応燃料ガス(余剰の燃料ガスを含んでいる)と空気極側から排出される空気(酸素を含んでいる)とがこの燃焼域40にて燃焼され、この燃料ガスの燃焼熱を利用して気化器12及び改質器4が加熱される。排気ガス(燃焼排気ガス)は排気ガス排出流路42を通して大気に排出され、この排気ガスを利用して空気供給流路34を通して燃料電池セルスタック6の空気極側に供給される空気を加温するようにしてもよい。
この実施形態では、排気ガスの熱が温水として貯えられるように貯湯装置44が設けられているとともに、排気ガスに含まれる水分を回収して改質水と利用するように凝縮水回収手段46が設けられている。更に説明すると、排気ガス排出流路40には熱回収用熱交換器48が配設され、この熱回収用熱交換器48に関連して貯湯装置44及び凝縮水回収手段46が設けられている。
図示の貯湯装置44は、温水を貯める貯湯タンク50と、貯湯タンク50の貯湯水(温度が低いと水であるが、温度が高くなると温水となる)を熱回収用熱交換器48を通して循環させるための貯湯水循環流路52とを備え、この貯湯水循環流路52には、貯湯タンク50内の貯湯水を貯湯水循環流路52を通して循環させる貯湯水循環ポンプ54が配設されている。
また、図示の凝縮水回収手段46は、熱回収用熱交換器48から改質水タンク20に延びる凝縮水回収流路56を備え、この凝縮水回収流路56に水精製器58が配設されている。このように構成されているので、熱回収用熱交換器48による熱交換により排気ガスが冷やされ、これによって、排気ガスに含まれた水分が凝縮されて回収され、回収された凝縮水は水精製器58により純水に精製された後に改質水タンク20に貯えられる。
次に、貯湯装置44及びそれに関連する構成について更に説明すると、貯湯装置44の貯湯水循環ポンプ54は貯湯水循環流路52の上流側部60に配設され、この上流側部60の一端側が貯湯タンク50の底部に接続され、その他端側が熱回収用熱交換器48の流入側に接続されている。また、貯湯水循環流路50の下流側部62の一端側は熱回収用熱交換器48の流出側に接続され、その他端側が貯湯タンク50の上部に接続されている。
この貯湯水循環流路52の下流側部62には、更に、貯湯タンク50に送給する貯湯水(熱回収用熱交換器48にて加温された温水)を加熱するためのヒータ手段64が配設されている。ヒータ手段64は、例えば電気加熱ヒータ64から構成され、後述するように、燃料電池セルスタック6の発電電力のうちの余剰発電電力(発電電力から電力負荷などで消費される消費電力を除いた後の余剰の電力)を用いて作動される。このヒータ手段64は、貯湯水循環流路52の下流側部62の適宜の部位に配設されるが、これに代えて、貯湯タンク50内の上部に配設するようにしてもよい。
この貯湯装置44では、更に、貯湯タンク50の底部に水流入流路70が接続され、この水流入流路70は、水道管などの水供給源72に接続され、水供給源72からの水が水流入流路70を通して貯湯タンク50に補給される。また、貯湯タンク50の上部には出湯流路74が接続され、貯湯タンク50内に貯えられた温水(貯湯水)が出湯流路74を通して出湯される。また、燃料電池セルスタック6の発電出力端には、発電電力を検知するための発電端出力検知センサ76(発電端出力検知手段を構成する)(図2参照)が配設され、この発電端出力検知センサ76は、燃料電池セルスタック6の直流の発電出力をインバータ手段(図示せず)により交流に変換した後の発電出力(AC発電出力)、即ち発電端出力を検知する。
次に、この燃料電池システム2の発電運転について概説する。燃料ガス供給源16からの燃料ガスは、燃料ガスポンプ26の作用によって燃料ガス供給流路14を通して流れ、脱硫器22にて脱硫された後に気化器12に送給される。また、気化器12には、水ポンプ32の作用によって改質水タンク20からの水(純水)が水供給流路18を通して供給され、気化器12にて気化されて水蒸気となり、発生した水蒸気及び燃料ガスがガス・水蒸気送給流路10を通して改質器4に送給される。
改質器4においては、ガス・水蒸気送給流路10を通して送給された水蒸気により燃料ガスが水蒸気改質され、水蒸気改質された改質燃料ガスが改質燃料ガス送給流路8を通して燃料電池セルスタック6の燃料極側に送給される。また、燃料電池セルスタック6の空気極側には、送風ブロア36からの空気が空気供給流路32を通して送給される。
燃料電池セルスタック6においては、燃料極側を流れる改質燃料ガス及び空気極側を流れる空気(空気中の酸素)の酸化及び還元によって発電が行われ、発電により得られた直流電力は、インバータ(図示せず)により交流電力に変換された後に、電力負荷(図示せず)に送給される。
燃料電池セルスタック6の燃料極側から燃焼域40に反応燃料ガス(余剰の燃料ガスを含んでいる)が排出されるともに、その空気極側から燃焼域40に空気(酸素を含んでいる)が排出され、この燃焼域40にて反応燃料ガスが燃焼され、燃焼域40からの燃焼排気ガスが排気ガス排出流路42を通して大気に排出される。
排気ガス(燃焼排気ガス)が熱回収用熱交換器48を流れる際に、貯湯装置44の貯湯水循環流路52を流れる貯湯水との間で熱交換が行われる。この熱交換により加温された貯湯水は、貯湯水循環流路50の下流側部62を通して貯湯タンク50に貯湯され、ヒータ手段64が作動するときはこのヒータ手段64により更に加温された後に貯湯される。また、熱回収用熱交換器46における熱交換により排気ガスに含まれる水分が凝縮され、この凝縮水が凝縮水回収流路56を通り、水精製器58により精製された後に改質水タンク20に貯まる。
この燃料電池システム2は、図2に示す制御系により運転制御され、燃料電池セルスタック6の発電効率を優先して発電運転する発電効率優先モードと燃料電池システム2の総合効率を優先して発電運転する総合効率優先モードとを切り換えて運転できるように構成されている。主として図2を参照して、この燃料電池システム2は、更に、システムを運転制御するためのコントローラ80(制御手段を構成する)を備え、このコントローラ80はマイクロプロセッサなどから構成される。
図示の形態では、コントローラ80は、発電出力演算手段81、燃料ガス流量偏差演算手段82(乖離演算手段を構成する)、運転モード切換手段84、作動制御手段86、運転タイマ88、積算タイマ90及びメモリ手段92を備えている。発電出力演算手段81は、発電端出力検知センサ76の検知電力に基づいて燃料電池セルスタック6の発電出力を後述する如く演算する。この実施形態では、燃料ガスの供給目標値に対する乖離の程度をその偏差値を用いて行っている。即ち、乖離演算手段としての燃料ガス流量偏差演算手段は82は、燃料電池セルスタック6の発電出力に対応する供給目標値(SV)と燃料ガス流量センサ28(燃料ガス流量検知手段)の供給検知値(PV)との偏差〔(SV−PV)/SV〕を演算する。
また、運転モード切換手段84は、後述するように発電効率優先モードの運転においてこの乖離の程度が大きくなると発電効率優先モードから総合効率優先モードの運転に切り換える。作動制御手段86は、発電効率優先モード及び総合効率優先モードの運転において燃料ガスポンプ26、水ポンプ32、送風ブロア36、貯湯水循環ポンプ54及びヒータ手段64を所要の通りに作動制御する。更に、運転タイマ88は、設定される所定時間を計時し、積算タイマ90は、発電優先モード及びの運転において燃料ガスの供給流量の偏差が大きくなったときにその時間を積算する。
また、メモリ手段92には、システムの運転制御に用いる各種データ、即ち燃料ガスの供給流量に乖離が生じているかの基準となる所定流量偏差値(例えば、3〜5%程度に設定される)、燃料ガスの供給流量の乖離の程度が大きくなったかの基準となる所定積算値(例えば、1〜10分程度に設定される)及び燃料ガスの供給流量に乖離が生じているかを判定するための基準となる所定運転時間(例えば、1〜3時間程度に設定される)が登録されている。更に、このメモリ手段92には、システムを発電効率優先モードでもって運転するための発電効率優先モード運転マップ及び総合効率優先モードでもって運転するための総合効率優先モード運転マップが登録されている。
ここで、図3〜図6を参照して、発電効率優先モードの運転について説明する。発電効率優先モードの運転においては、燃料ガスの供給流量(供給流量を定格時の供給流量との比、即ち定格比で示している)は、燃料電池セルスタック6の発電出力(出力を定格比で示している)に対応して図3に実線で示すように制御され、第1設定出力を基準に、この第1設定出力から定格までの発電効率優先第1発電範囲においては、燃料電池セルスタック6の発電出力の増加に伴い燃料ガスの供給流量も増加し、またこの第1設定出力以下である発電効率優先第2発電範囲においては、燃料ガスの供給流量が一定に保持され、このときの燃料利用率は、図3に破線で示すように、発電出力と燃料利用率とはほぼ比例関係となるように制御される。
この第1設定出力は、定格出力の20〜40%の適宜の出力値、例えば25%程度に設定することができ、この場合、定格出力が例えば700W(燃料電池セルスタック6の発電出力:約780W)の燃料電池システムであると、この第1設定出力は例えば約195Wとなり、燃料電池セルスタックの発電出力が195〜780Wの範囲が発電効率優先第1発電範囲となり、この発電出力が195W以下である範囲が発電効率優先第2発電範囲となる。
この図3及び図4に示すデータは、発電効率優先モードの運転マップの一部となり、コントローラ80のメモリ手段92に登録される。尚、燃料ガスの供給流量をこのように変動させたときには、酸化材としての空気の供給流量及び改質用水の供給流量も所要の通りに制御される。
このような発電効率優先モードの運転においては、燃料電池システム2の発電出力(定格比)と燃料電池セルスタック6の発電出力とは、図4に実線で示す関係となり、燃料電池システムの発電出力(即ち、インバータ手段により直流電力から交流電力に変換する過程での損失や、各種ポンプ、ヒータなどの補機の消費電力を合算した全補機損失を差し引いた、AC発電出力)は、
AC発電出力=(燃料電池セルスタックの発電出力)−(全変換損失)
となり、この明細書全体を通して、燃料電池セルスタック6からの直流電力の発電電力を「燃料電池セルスタックの発電出力」と表現し、燃料電池セルスタック6からの直流電力をインバータ手段により交流電力に変換し、補機損失を減じた後の送電端に供給される出力電力を「燃料電池システムの発電電力」と表現している。
そして、この発電効率優先モードにおける総合効率(燃料電池システム2全体の効率)、送電端効率(燃料電池システム2の発電電力の効率)及び排熱回収効率(貯湯装置で排熱を温水として回収した効率)は、図5に示す通りとなり、この総合効率は、(送電端効率)+(排熱回収効率)として定義される。
この発電効率優先モードの運転においては、発電効率優先第1発電範囲(例えば、定格比で25〜100%の範囲)では燃料電池セルスタック6の発電出力は電力負荷に追従するように制御され、燃料ガスの供給流量もこの発電出力に対応して変動するように制御される一方、発電効率優先第2発電範囲(例えば、定格比で25%以下の範囲)では燃料電池の発電出力は電力負荷に追従して変動するが、燃料ガスの供給流量は一定となるように制御される。尚、このときの余剰の燃料ガスは燃焼域40で燃焼され、その燃焼熱でもって、燃料電池セルスタック6を作動温度に、気化器12を気化温度に、また改質器4を改質温度に維持するために用いられる。
次に、図6〜図8を参照して、総合効率優先モードの運転について説明する。総合効率優先モードの運転においては、燃料ガスの供給流量(供給流量を定格時の供給流量との比、即ち定格比で示している)は、燃料電池セルスタック6の発電出力(出力を定格比で示している)に対応して図6に実線で示すように制御され、第2設定出力を基準に、この第2設定出力から定格までの総合効率優先第1発電範囲においては、燃料電池セルスタック6の発電出力の増加に伴い燃料ガスの供給流量も増加し、またこの第2設定出力以下である発電効率優先第2発電範囲においては、燃料ガスの供給流量が一定に保持され、このとき、燃料利用率は、図6に破線で示すように制御され、総合効率優先モードにおいても燃料電池セルスタック6の発電出力と燃料利用率とはほぼ比例関係になるように制御される。
この第2設定出力は、定格出力の40〜70%の適宜の出力値、例えば50%程度に設定することができ、この場合、定格出力が例えば700W(燃料電池セルスタック6の発電出力:約780W)の燃料電池システムであると、この第2設定出力は例えば約390Wとなり、燃料電池セルスタック6の発電出力が390〜780Wの範囲が発電効率優先第1発電範囲となり、この発電出力が390W以下である範囲が発電効率優先第2発電範囲となる。
この図6に示すデータは、総合効率優先モードの運転マップの一部となり、コントローラ80のメモリ手段92に登録される。尚、燃料ガスの供給流量をこのように変動させたときには、酸化材としての空気の供給流量及び改質用水の供給流量も所要の通りに制御される。
このような総合効率優先モードの運転においては、燃料電池システム2の発電出力(定格比)と燃料電池セルスタック6の発電出力とは、図7に実線で示す関係となり、図7では、図4と同様に定格出力が700Wである場合を示している。総合効率優先モードの運転においては、図7から理解される如く、総合効率優先第2発電範囲においては、燃料ガスの供給流量が一定に保持される故に、燃料電池セルスタック6は電力負荷よりも多く発電するようになり、この発電電力の一部、即ち余剰発電電力がヒータ手段64で消費される。そして、このヒータ手段64で消費した電力が熱として貯えられ、温水として貯湯タンク50に蓄熱される。尚、図7において、総合効率優先第2発電範囲において全補機損失が大きな値となっているが、これはヒータ手段64で消費される余剰発電電力が全補機損失に含まれているためである。
この総合効率優先モードにおける総合効率、送電端効率及び排熱回収効率は、図8に示す通りとなる。この総合効率優先モードの運転においては、総合効率優先第1発電範囲(例えば、定格比で50〜100%の範囲)では燃料電池セルスタック6の発電出力は電力負荷に追従するように制御され、燃料ガスの供給流量もこの発電出力に対応して変動するように制御される一方、発電効率優先第2発電範囲(例えば、定格比で50%以下の範囲)では燃料電池の発電出力は電力負荷に追従して変動するが、燃料ガスの供給流量は一定となるように制御される。尚、このときの余剰の燃料ガスの一部は、燃焼域40で燃焼され、その燃焼熱でもって、燃料電池セルスタック6を作動温度に、気化器12を気化温度に、また改質器4を改質温度に維持するために用いられるとともに、この燃料ガスの残部は燃料電池セルスタック6での発電に用いられ、発電により生じた余剰発電電力がヒータ手段64で消費される。
発電効率優先モードと総合効率優先モードとに切り換えて運転するときには、次のように構成することが重要である。第1に、総合効率優先モードにおける第2設定出力(例えば、定格の50%出力)が発電効率優先モードにおける第1設定出力(例えば、定格の25%出力)よりも大きくなるように設定することである。燃料ガスの供給流量が少なくなると、燃料ガスの供給目標値(SV)(燃料電池セルスタック6の発電出力に対応する供給流量)と燃料ガス流量センサ28の供給検知値(PV)との乖離が生じて燃料ガスの供給が安定しなくなるおそれがあるが、この供給流量を増やすことによりこの乖離を少なくなくして燃料ガスの供給を安定させることができる。従って、上述のような燃料ガスの供給不安定が生じると、発電効率優先モードから総合効率優先モードに切り換えることにより、燃料ガスの供給不安定を解消することができる。
第2に、この第1設定出力(例えば、定格の25%出力)におけるシステムの総合効率に関し、総合効率優先モードにおける第1設定出力の総合効率が発電効率優先モードにおける第1設定出力の総合効率の方が大きくなっていることである。この第1設定出力の総合効率に関し、図5と図8とを対比することによって理解される如く、総合効率優先モードにおける総合効率が発電効率優先モードにおける総合効率よりも大きいということは、それらのモードにおいては上述したように制御されることから、第1設定出力以下の発電出力範囲において総合効率優先モードの方が発電効率優先モードの方よりも総合効率が高くなるということであり、またこのように総合効率を高く維持できるということは、燃料電池セルスタック6の発電電力を電力負荷よりも大きくし、これにより生じた余剰発電電力をヒータ手段64で消費して温水として蓄熱するためである。このようなことから、貯湯装置44(貯湯タンク50)で蓄熱不足が発生した場合、発電効率優先モードから総合効率優先モードに切り換えることにより蓄熱不足を解消することができ、またこの貯湯装置44で蓄熱余剰が発生した場合、総合効率優先モードから発電効率優先モードに切り換えることにより蓄熱余剰を解消することができる。
次に、図1及び図2とともに図9を参照して、上述した燃料電池システム2の運転制御について説明する。この運転制御においては、主として燃料ガスの供給不安定を解消するための制御となっている。燃料電池システム2を稼働すると、発電効率優先モードが設定され(ステップS1)、運転タイマ88が計時を開始し(ステップS2)、燃料電池システム2の発電効率優先モードの運転が行われ(ステップS3)、この運転は発電効率優先モードの運転マップ(図3に示すマップデータ)を用いて行われる。
この発電効率優先モードの運転中は、発電端出力(即ち、AC発電出力)に相当する電力を供給するために、図4に示すような相関となるように、システムの電力に応じた燃料電池セルスタック6の発電出力が出力される。
そして、この発電出力が第2設定出力(例えば、約390W)を超えているときには、燃料ガスが安定して供給されているとしてステップS4からステップS5に進み、運転タイマ88が設定運転時間(例えば、2秒程度に設定される)を計時した後にステップS4に戻り、再び上述した発電出力の検知判定が行われる。
ステップS4における発電出力の判定において、燃料電池セルスタック6の発電出力が第2設定出力以下であると、ステップS4からステップS6に移り、燃料ガスの供給流量が少ない状態であるので、その供給流量に乖離が生じていないかの制御が行われる。即ち、燃料ガス流量偏差演算手段82は、発電効率優先モードの運転マップ(図4のマップデータ)及び図3の燃料ガス流量値に基づいて設定値(SV)を決定し、燃料ガス流量センサ28の流量値(PV)の乖離幅(PV−SV)を演算し、演算した乖離幅と設定値(SV)の比(所謂、流量偏差値)が、例えば3%より小さいと、燃料ガスの供給状態が安定しているとしてステップS7からステップS5を経てステップS4に戻る。
一方、演算した乖離幅が所定流量偏差値以上であると、燃料ガスの供給流量が供給目標値から乖離しているとしてステップS7からステップS8に進み、積算タイマ90は、供給目標値に対して乖離状態にある乖離時間を積算する。そして、この積算タイマ90の積算値が所定積算値(例えば、5分)以上になると、燃料ガスの供給流量の乖離が大きいとしてステップS9からステップS10に進み、積算タイマ90がリセットされ、運転モードの切換えが行われる(ステップS11)。即ち、運転モード切換手段84は、発電効率優先モードから総合効率優先モードへの運転の切換えを行い、このように運転モードを総合効率優先モードへ切り換えることにより、燃料ガスの供給状態を安定化させることができる。尚、この積算タイマ90の積算時間が所定積算値に達しないときには、ステップS9からステップS5戻る。
このようにして総合効率優先モードの運転が開始される(ステップS12)と、この所定運転時間の残りの運転時間は、総合効率優先モードの運転が継続して行われ、その運転は総合効率優先モードの運転マップ(図6に示すマップデータ)を用いて行われる。
このようにして運転タイマ88が所定運転時間を計時すると、ステップS13からステップS14に進み、運転タイマ88がリセットされ、所定運転時間についての運転が行われたとして運転モードの切換えが再び行われ(ステップS15)、その後ステップS1に戻る。即ち、運転モード切換手段84は、総合効率優先モードから発電効率優先モードに戻し、次の所定運転期間に対する発電効率優先モードの運転が再開される。
この実施形態では、燃料ガス供給流路14に燃料ガス流量センサ28(燃料ガス流量検知手段)を配設し、この燃料ガス流量センサ28により燃料ガス供給流路14を通して供給される燃料ガスの供給流量を計測しているが、この燃料ガス流量センサ28に代えて、燃料ガス供給流路14を流れる燃料ガスの供給圧力を検知する燃料ガス圧力センサ(燃料ガス圧力検知手段を構成する)を設け、この燃料ガス圧力センサの検知圧力に基づき燃料ガス供給流路を通して供給される燃料ガスの供給流量を制御するようにしてよい。この場合、コントローラ80は、乖離演算手段としての燃料ガス圧力偏差演算手段を含み、発電効率優先モードの運転における第2設定出力以下の発電範囲において、燃料ガス圧力偏差演算手段は燃料電池セルスタックの発電出力に対応する供給目標値と燃料ガス圧力検知センサの供給検知値との乖離値を演算し、この乖離値に基づいてその乖離の程度が大きくなると、発電効率優先モードから総合効率優先モードの運転に切り換えることができる。
上述の第1の実施形態では、発電効率優先モードと総合効率優先モードとの切換えを燃料ガスの供給安定化のために適用しているが、このような供給安定化に変えて、貯湯装置の蓄熱状態における蓄熱不足及び蓄熱余剰の解消に適用することができ、このときには、例えば図10〜図12に示すように構成することができる。
燃料電池システムの第2の実施形態を示す図10〜図11において、この第2の実施形態では、貯湯装置44(貯湯タンク50)における蓄熱状態を検知するために蓄熱指数検知手段102が設けられている。図示の例では、蓄熱指数検知手段102は、5つの温水温度センサ、即ち第1〜第5温水温度センサ104,106,108,110,112と、一つの水温度センサ114とから構成されている。第1〜第5温水温度センサ104,106,108,110,112は貯湯タンク50の外周側面に実質上等間隔にされ、例えば、第1温水温度センサ104は貯湯タンク50の上端部に、第5温水温度センサ112は貯湯タンク50の底部に、第3温水温度センサ108は、第1及び第5温水温度センサ104,112の中間に、また第2温水温度センサ106は、第1及び第3温水温度センサ104,108の中間に、更に第4温水温度センサ110は、第3及び第5温水温度センサ108,112の中間に配置され、これら第1〜第5温水温度センサ104〜112は、貯湯タンク50内の貯湯水の温度を検知する。また、水温度センサ114は水流入流路70に配設され、水流入流路70を通して貯湯タンク50に流入する水の温度を検知する。
このことに関連して、コントローラは、蓄熱指数演算手段116及び蓄熱状態判定手段118を含んでいる。蓄指数演算手段116は、第1〜第5温水温度センサ104〜112及び水温度センサ114の検知温度に基づいて次のようにして貯湯タンク50の蓄熱指数(満蓄熱に対する現蓄熱の比率)を演算し、蓄熱状態判定手段118は、演算した蓄熱指数を用いて後述する如くして蓄熱状態を判定する。
例えば、第1〜第5温水温度センサ104〜112の検知温度をT1〜T5とし、水温度センサ114の検知温度をT0とすると、第1温水温度センサ104の検知温度T1と水温度センサ114の検知温度T0との温度差TXが満蓄熱までの温度となる(TX=T1−T0)。また、第1〜第5温水温度センサ104〜112の検知温度T1〜T5の平均温度TA〔TA=(T1+T2+T3+T4+T5)/5〕と水温度センサ114の検知温度T0との温度差TZが現時点の蓄熱の温度となり、従って、満蓄熱までの温度TXに対する現時点の蓄熱の温度TZの比率TH(TH=TZ/TX)を演算すると、この演算値が貯湯タンク50の現時点の蓄熱指数となり、蓄熱指数演算手段116は、このようにして蓄熱指数を演算する。
尚、水温度センサ114は、貯湯装置44における貯湯水循環流路52の上流側部60に配設してもよく、或いは第5温水温度センサ112を水温度センサとしても機能させるようにしてもよい。また、例えば24時間単位で貯湯水の温度を管理する場合、蓄熱指数を演算する際の分母となる検知温度として、第1温水温度センサ104については24時間内の最大検知温度を採用し、水温度センサ114については24時間内の最低検知温度を採用し、これらの最大検知温度及び最低検知温度を次の24時間における第1温水温度センサ104及び水検知温度114の検知温度として用いるようにしてもよい。
また、例えば、発電効率優先モードの運転中においては、蓄熱不足となるおそれがあるために蓄熱不足かどうかの判定が行われ、蓄熱不足と判定されたときに、運転モード切換手段84は、後述するように発電効率優先モードから総合効率優先モードの運転に切り換える。例えば、総合効率優先モードの運転中においては、蓄熱余剰となるおそれがあるために蓄熱余剰かどうかの判定が行われ、蓄熱余剰と判定されたときに、運転モード切換手段84は、後述するように総合効率優先モードから発電効率優先モードの運転に切り換える。
上述したことに関連して、コントローラ80Aのメモリ手段92Aには、発電効率優先モードの運転マップ及び総合効率優先モードの運転マップに加えて、蓄熱状態の判断基準となる所定蓄熱指数値、熱不足が生じていると判定する熱不足判定時間(例えば、3〜8時間程度、例えば5時間に設定される)及び熱余剰が生じていると判定する熱余剰判定時間(例えば、1〜3時間程度、例えば2時間に設定される)などが登録される。この第2の実施形態における燃料電池システム2Aのその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一でよい。
次に、図12をも参照して、この燃料電池システム2Aの運転制御について説明する。この運転制御においては、主として貯湯装置44における蓄熱不足及び蓄熱余剰を解消するための制御となっている。燃料電池システム2を稼働すると、発電効率優先モードの運転が行われる(ステップS21)。このように運転が開始されると、運転タイマ88が計時を開始し(S22)、燃料電池システム2Aの発電効率優先モードの運転が行われ、この運転は、上述したものと同様に発電効率優先モードの運転マップ(図3に示すマップデータ)を用いて行われる。
この発電効率優先モードの運転中は、蓄熱指数検知手段102により貯湯装置44の蓄熱状態の検知が行われる(ステップS23)。即ち、第1〜第5温水温度検知センサ104〜112は、貯湯タンク50内の貯湯水の温度を検知し、水温度センサ114は、水流入流路70内の水の温度を検知し、これら検知信号がコントローラ80Aに送給される。このように蓄熱状態を検知すると、蓄熱指数演算手段116は、第1〜第5温水温度センサ104〜112及び水温度センサ114の検知温度に基づき上述したようにして蓄熱指数を演算する(ステップS24)。
この演算した蓄熱指数が所定蓄熱指数値(例えば、50〜60%程度に設定される)よりも小さいと、ステップS25からステップS26に進み、運転タイマ88が所定運転時間(例えば、24時間)を計時するまでステップS23に戻り、貯湯装置44における蓄熱状態の検知が継続して行われる。また、この蓄熱指数が所定蓄熱指数値以上であると、ステップS25からステップS27に移り、蓄熱状態が標準蓄熱状態を超えているとして余剰蓄熱時間の計時が行われ、積算タイマ90がこの余剰蓄熱時間を積算する。そして、運転タイマ88のスタートから所定運転時間を計時するまでステップS28からステップS23に戻り、貯湯装置44における蓄熱状態の検知が継続して行われる。
このようにして所定運転時間(例えば、24時間)にわたって貯湯装置44の蓄熱状態が検知されると、ステップS26又はステップS28からステップS29に移り、運転タイマ88の計時時間がリセットされ、その後貯湯装置44における蓄熱状態の判定が行われる(ステップS30)。
発電効率優先モードの運転においては、蓄熱不足が生じていないかの判定が行われ、蓄熱状態判定手段118は、積算タイマ90の積算時間と熱不足判定時間(例えば、5時間)とを比較する(ステップS31)。そして、積算タイマ90による積算時間がこの熱不足判定時間以下である場合、ステップS32に進み、貯湯装置44における蓄熱状態が標準蓄熱状態を超えていることが少ないとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱不足と判定し、この蓄熱不足の判定に基づき運転モード切換手段84は運転モードの切換えを行い(ステップS33)、次の所定運転時間の運転として総合効率優先モードが設定される。また、この積算時間が熱不足判定時間を超えていると、貯湯装置44の蓄熱状態が標準蓄熱状態をある程度超えて熱不足が生じていないとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱適正と判定し(ステップS34)、この発電効率優先モードが継続され(ステップS35)、ステップS21に戻って、発電効率優先モードの運転が継続して行われる。
運転モードの切換えが行われて総合効率優先モードの運転が行われる(ステップS36)と、所定運転時間(例えば、24時間)の間にわたって余剰蓄熱時間の積算が行われ、ステップS37〜ステップS43における制御の流れは、発電効率優先モードの運転におけるステップS22〜ステップS28における制御の流れと同じである。
このようにして所定運転時間(例えば、24時間)にわたって貯湯装置44の蓄熱状態が検知されると、ステップS41又はステップS43からステップS44に移り、運転タイマ88の計時時間がリセットされ、貯湯装置44における蓄熱状態の判定が行われる(ステップS45)。
総合効率優先モードの運転においては、蓄熱余剰が生じていないかの判定が行われ、蓄熱状態判定手段118は、積算タイマ90の積算時間と熱余剰判定時間(例えば、2時間)とを比較する(ステップS46)。そして、積算タイマ90による積算時間がこの熱余剰判定時間以上である場合、ステップS47に進み、貯湯装置44における蓄熱状態が標準蓄熱状態を超えていることが多いとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱余剰と判定し、この蓄熱余剰の判定に基づき運転モード切換手段84は運転モードの切換えを行い(ステップS48)、次の所定運転時間の運転として発電効率優先モードが設定され、ステップS21に戻る。また、この積算時間が熱余剰判定時間より少ないと、貯湯装置44の蓄熱状態が標準蓄熱状態を超えることが多くないとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱適正と判定し(ステップS49)と、この総合効率優先モードが継続され(ステップS50)、ステップS36に戻って、総合効率優先モードの運転が継続して行われる。
上述の第2の実施形態では、貯湯装置における蓄熱状態を判定するために、所定蓄熱指数値以上の蓄熱状態となる時間を積算し、この積算時間に基づいて蓄熱不足及び蓄熱余剰を判定しているが、このような構成に代えて、図13及び図14に示すように構成することもできる。この第3の実施形態においては、所定運転時間(例えば、24時間)の蓄熱指数値のうち最大蓄熱指数値を用いて次の所定運転時間の運転における熱不足指数値及び熱余剰指数値を演算し、この熱不足指数値を蓄熱不足の判定に用い、またこの熱余剰指数値を蓄熱余剰の判定に用いている。
図13において、この第3の実施形態におけるコントローラ80Bは、蓄熱指数演算手段116などに加えて、最大蓄熱指数抽出手段132、熱不足指数演算手段134及び熱余剰指数演算手段136を備えている。蓄熱指数演算手段116は、蓄熱指数検知手段102からの検知信号に基づいて上述したようにして蓄熱指数を演算し、最大蓄熱指数抽出手段132は、所定運転時間(例えば、24時間)にわたって演算された蓄熱指数のうち最も大きいもの、即ち最大蓄熱指数値を抽出する。また、熱不足指数演算手段134は、抽出した最大蓄熱指数値に基づき熱不足指数値を演算し、この最大蓄熱指数値の例えば30〜50%程度の値となるように演算し、熱余剰指数演算手段136は、抽出された最大蓄熱指数値に基づき熱余剰蓄熱指数を演算し、この最大蓄熱指数値の例えば60〜80%程度の値となるように演算する。
このような構成に関連して、メモリ手段92Bには、発電効率優先モードの運転マップ及び総合効率優先モードの運転マップなどに加えて、蓄熱指数演算手段116により演算された演算蓄熱指数値、最大蓄熱指数抽出手段132により抽出された最大蓄熱指数値、熱不足指数演算手段134により演算された熱不足指数値及び熱余剰指数演算手段136により演算された熱余剰指数値が記憶される。この第3の実施形態における燃料電池システム2Bのその他の構成は、上述した第2の実施形態と実質上同一でよい。
次に、図14をも参照して、この燃料電池システム2Bの運転制御について説明する。この運転制御においても、主として貯湯装置における蓄熱不足及び蓄熱余剰を解消するための制御となっている。燃料電池システムを稼働すると、発電効率優先モードの運転が行われる(ステップS61)。このように運転が開始されると、運転タイマ88が計時を開始し(ステップS62)、燃料電池システムの発電効率優先モードの運転が行われ、この運転は、上述したと同様に発電効率優先モードの運転マップ(図3に示すマップデータ)を用いて行われる。
この発電効率優先モードの運転中は、蓄熱指数検知手段102により貯湯装置の蓄熱状態の検知が行われ(ステップS23)、蓄熱指数演算手段116は、第1〜第5温水温度センサ104〜112及び水温度センサ114の検知温度に基づき上述したようにして蓄熱指数を演算し(ステップS64)、演算された蓄熱指数値がメモリ手段92Bに記憶される。
この演算した蓄熱指数がメモリ手段92Bに記憶された熱不足指数値(例えば、最大蓄熱指数値の約40%程度の値)よりも大きいと、ステップS65からステップS66に進み、運転タイマ88が所定運転時間(例えば、24時間)を計時するまでステップS63に戻り、貯湯装置44における蓄熱状態の検知が継続して行われる。また、この蓄熱指数が熱不足指数値以下であると、ステップS65からステップS67に移り、貯湯装置における蓄熱状態が不足しているとして熱不足時間の計時が行われ、積算タイマ90がこの熱不足時間を積算する。そして、運転タイマ88が所定運転時間を計時するまでステップS68からステップS63に戻り、貯湯装置44における蓄熱状態の検知が継続して行われる。
このようにして所定運転時間(例えば、24時間)にわたって貯湯装置の蓄熱状態が検知されると、ステップS66又はステップS68からステップS69に移り、運転タイマ88の計時時間がリセットされ、次の所定運転時間における条件設定が行われる(ステップS70)。即ち、最大蓄熱指数抽出手段132は、この所定運転時間において演算された蓄熱指数値のうち最大蓄熱指数値を抽出し、熱不足指数演算手段134は、抽出した最大蓄熱指数値に基づき上述したようにして熱不足指数値を演算し、また熱余剰指数演算手段136は、抽出した最大蓄熱指数値に基づき上述したようにして熱余剰指数値を演算し、演算された熱不足指数値及び熱余剰指数値がメモリ手段92Bに記憶され、次の所定運転時間においてこの熱不足指数値及び熱余剰指数値が用いられる。
このように次の運転の条件設定が行われた後に、貯湯装置における蓄熱状態の判定が行われる(ステップS71)。発電効率優先モードの運転においては、上述したと同様に、蓄熱不足が生じていないかの判定が行われ、蓄熱状態判定手段118は、積算タイマ90の積算時間と熱不足判定時間(例えば、3〜8時間程度、例えば5時間に設定される)とを比較する(ステップS72)。そして、積算タイマ90による積算時間がこの熱不足判定時間以上であると、ステップS73に進み、貯湯装置44における蓄熱不足の状態が長いとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱不足と判定し、この蓄熱不足の判定に基づき運転モード切換手段84は運転モードの切換えを行い(ステップS74)、次の所定運転時間の運転として総合効率優先モードが設定される。また、この積算時間が熱不足判定時間より小さいと、貯湯装置44の蓄熱不足の状態が長くないとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱適正と判定し(ステップS75)、この発電効率優先モードの運転が継続され(ステップS76)、ステップS61に戻って、発電効率優先モードの運転が継続して行われる。
運転モードの切換えが行われて総合効率優先モードの運転が行われる(ステップS77)と、運転タイマ88が計時を開始し(S78)、燃料電池システムの総合効率優先モードの運転が行われ、この運転は、上述したと同様に総合効率優先モードの運転マップ(図7に示すマップデータ)を用いて行われる。
この総合効率優先モードの運転中は、上述したと同様に、蓄熱指数検知手段102により貯湯装置の蓄熱状態の検知が行われ(ステップS79)、蓄熱指数演算手段116は上述したようにして蓄熱指数を演算する(ステップS80)。そして、この演算した蓄熱指数がメモリ手段92Bに記憶された熱余剰指数値(例えば、最大蓄熱指数値の約70%程度の値)よりも大きいと、ステップS81からステップS82に進み、運転タイマ88が所定運転時間(例えば、24時間)を計時するまでステップS79に戻る。また、この蓄熱指数が熱余剰指数値以上であると、ステップS81からステップS83に移り、貯湯装置における蓄熱状態が余剰である熱余剰時間の計時が行われ、積算タイマ90がこの熱余剰時間を積算する。そして、運転タイマ88が所定運転時間を計時するまでステップS84からステップS79に戻る。
このようにして所定運転時間(例えば、24時間)にわたって貯湯装置の蓄熱状態が検知されると、ステップS82又はステップS84からステップS85に移り、運転タイマ88の計時時間がリセットされ、次の所定運転時間における条件設定が行われる(ステップS86)。この条件設定は、上述したと同様に行われ、次の所定運転時間における熱不足指数値及び熱余剰指数値が設定される。
その後に、貯湯装置における蓄熱状態の判定が行われる(ステップS87)。総合効率優先モードの運転においては、上述したと同様に、蓄熱余剰が生じていないかの判定が行われ、蓄熱状態判定手段118は、積算タイマ90の積算時間と熱余剰判定時間(例えば、1〜3時間程度、例えば2時間に設定される)とを比較する(ステップS88)。そして、積算タイマ90による積算時間がこの熱余剰判定時間以上であると、ステップS89に進み、貯湯装置における蓄熱余剰の状態が長いとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱余剰と判定し、この蓄熱余剰の判定に基づき運転モード切換手段84は運転モードの切換えを行い(ステップS90)、次の所定運転時間の運転として発電効率優先モードが設定され、ステップS61に戻る。また、この積算時間が熱余剰判定時間より小さいと、貯湯装置の蓄熱余剰の状態が長くないとして蓄熱状態判定手段118は蓄熱適正と判定し(ステップS92)、この総合効率優先モードの運転が継続され(ステップS93)、ステップS77に戻って、総合効率優先モードの運転が継続して行われる。
第1の実施形態では、燃料ガスの供給安定化のために運転モードを上述したように切り換え、また第2及び第3の実施形態においては、貯湯装置における蓄熱不足及び蓄熱余剰を解消するために運転モードを上述したように切り換えているが、燃料ガスの供給安定化並びに貯湯装置における蓄熱不足及び蓄熱余剰の解消の双方を行うために運転モードを切り換えるようにしてもよく、この場合の制御系の構成は、例えば第1の実施形態(図2に示す構成)と第3の実施形態(図13に示す構成)を組み合わせたものとなり、そのときの制御は、例えば,図15及び図16に示す通りとなる。
次に、図15及び図16を参照して、かかる場合における燃料電池システムについての制御を概説する。図15において、燃料電池システムの発電効率優先モードの運転においては、上述したと同様に、燃料電池セルスタックの発電端出力(即ち、AC発電出力)の検知が行われ(ステップS101)、この発電端出力に基づき燃料電池セルスタックの発電出力が演算され、この発電出力が第2設定出力(例えば、約390W)を超えているか判断される(ステップS102)。
この発電出力が第2設定出力を超えているとステップS103を経てステップS101に戻る。また、この発電出力が第2設定出力以下であると、ステップS102からステップS104に移り、上述したようにして燃料ガスの流量偏差の演算が行われ、この流量偏差を用いて燃料ガスの流量偏差の監視が行われる(ステップS105)。この流量偏差の管理は、第1の実施形態と同様に行われ、この演算偏差値が所定流量偏差値(例えば、3%)以上であるかを判断し、所定流量偏差値以上であると燃料ガスの供給流量が供給目標値から乖離しているとしてこの乖離時間を積算タイマで積算する。
この燃料ガスの供給流量の乖離程度の監視が、所定運転時間(例えば、1〜3時間程度)の間行われ、この所定運転時間が経過すると、ステップS103又はステップ106からステップS107に移り、この燃料ガスの供給流量の乖離傾向の判定が行われる。即ち、積算タイマの積算時間(乖離積算時間)に基づいて供給流量の乖離傾向が判定され、乖離積算時間が短い(例えば、1分以下である)と、ステップS108からステップS109に進み、燃料ガスの供給流量の乖離傾向が小さいとして運転モードが継続され、発電効率優先モードの運転が引き続き行われる。また、この乖離積算時間が長い(例えば、5分以上である)と、ステップS108からステップS110を経てステップS111に移り、燃料ガスの供給流量の乖離傾向が大きいとして、運転モード切換手段は運転モードを切換え、次の所定運転時間において総合効率優先モードの運転が行われる。この乖離積算期間が中程度である(即ち、長くも短くもなく、例えば1〜5分間程度である)場合、ステップS108からステップS110を経てステップS112に移り、燃料電池システムの熱利用の判定が行われる。
この熱利用判定においては、発電効率優先モードの運転中に貯湯装置における蓄熱不足が発生しているかの判定が行われる。上述したと同様に、蓄熱指数検知手段により蓄熱状態の検知が行われ(ステップS113)、この蓄熱指数検知手段の検知温度に基づいて蓄熱指数演算手段が蓄熱指数を演算し(ステップS114)、この蓄熱指数を用いて貯湯装置における蓄熱不足の監視が行われる(ステップS115)。この蓄熱不足の管理は、例えば第3の実施形態と同様に行われ、この蓄熱指数値が熱不足指数値以下であるかを判断し、熱不足指数値以下であると貯湯装置(貯湯タンク)において蓄熱不足が発生しているとして熱不足時間を積算タイマで積算する。
この貯湯装置における蓄熱不足の監視が、所定運転時間(例えば、3〜8時間程度)の間行われ、この所定運転時間が経過すると、ステップ116からステップS117に移り、貯湯装置における熱不足状態の判定が行われる。即ち、積算タイマの積算時間(熱不足積算時間)に基づいて蓄熱不足が発生しているかが判定される。
熱不足積算時間が熱不足判定時間以上であると、ステップS118からステップS119に進み、貯湯装置における蓄熱状態が不足しているとして、蓄熱状態判定手段は蓄熱不足の判定を行い、この蓄熱不足の判定に基づいて、運転モード切換手段が運転モードの切換えを行い(ステップS120)、次の所定運転時間において、蓄熱のための熱の発生が多い総合効率優先モードの運転が行われる。また、熱不足積算時間が熱不足判定時間より小さいと、ステップS118からステップS121に移り、貯湯装置における蓄熱状態が不足していないとして、蓄熱状態判定手段は蓄熱適正と判定し、この運転モードが継続され(ステップS122)、発電効率優先モードの運転が引き続き行われる。
このように、この発電効率優先モードの運転においては、燃料ガスの供給流量の乖離傾向が優先的に判断され、この乖離傾向が小さいと発電効率優先モードの運転が継続して行われるが、この乖離傾向が大きくなると運転モードが切り換えられ、発電効率優先モードから総合効率優先モードに切り換えて運転される。また、この乖離傾向が中程度である場合には、熱利用を考慮して判断(この場合、蓄熱不足の判断)され、貯湯装置において蓄熱不足が生じていないと発電効率優先モードの運転が継続して行われるが、蓄熱不足が生じていると運転モードが切り換えられ、発電効率優先モードから総合効率優先モードに切り換えて運転される。
次に、図16を参照して、燃料電池システムの総合効率優先モードの運転について説明する。この総合効率優先モードの運転においても、上述したと同様に、燃料電池セルスタックの発電端出力(即ち、AC発電出力)の検知が行われ(ステップS123)、この発電端出力に基づき燃料電池セルスタックの発電出力が演算され、この発電出力が第2設定出力(例えば、約390W)を超えているか判断される(ステップS124)。
この発電出力が第2設定出力を超えているとステップS125を経てステップS123に戻る。また、この発電出力が第2設定出力以下であると、ステップS124からステップS126に移り、上述したようにして燃料ガスの流量偏差の演算が行われ、この流量偏差を用いて燃料ガスの流量偏差の監視が行われる(ステップS127)。この流量偏差の管理は、発電効率優先モードの運転のときと同様に行われ、燃料ガスの供給流量が供給目標値から乖離していると、その乖離時間を積算タイマで積算する。
この燃料ガスの供給流量の乖離程度の監視が、所定運転時間の間行われると、ステップS125又はステップ128からステップS129に移り、この燃料ガスの供給流量の乖離傾向の判定が行われる。即ち、積算タイマの積算時間(乖離積算時間)に基づいて供給流量の乖離傾向が判定され、乖離積算時間が長い(例えば、5分以上である)と、ステップS130からステップS131に進み、燃料ガスの供給流量の乖離傾向が大きいとして運転モードが継続され、総合効率優先モードの運転が引き続き行われる。また、この乖離積算時間が短い(例えば、1分以下である)と、ステップS130からステップS132を経てステップS133に移り、燃料ガスの供給流量の乖離傾向が小さいとして、運転モード切換手段は運転モードを切換え、次の所定運転時間において発電効率優先モードの運転が行われる。この乖離積算期間が中程度である(例えば、1〜5分間である)場合、ステップS130からステップS132を経てステップS134に移り、燃料電池システムの熱利用の判定が行われる。
この熱利用判定においては、総合効率優先モードの運転中に貯湯装置における蓄熱余剰が発生しているかの判定が行われる。上述したと同様に、蓄熱指数検知手段により蓄熱状態の検知が行われ(ステップS135)、この蓄熱指数検知手段の検知温度に基づいて蓄熱指数演算手段が蓄熱指数を演算し(ステップS136)、この蓄熱指数を用いて貯湯装置における蓄熱余剰の監視が行われる(ステップS137)。この蓄熱余剰の管理は、例えば第3の実施形態と同様に行われ、この蓄熱指数値が熱余剰指数値以上であるかを判断し、熱余剰指数値以上であると貯湯装置(貯湯タンク)において蓄熱余剰が発生しているとして熱余剰時間を積算タイマで積算する。
この貯湯装置における蓄熱余剰の監視が、所定運転時間(例えば、1〜3時間程度)の間行われ、この所定運転時間が経過すると、ステップ138からステップS139に移り、貯湯装置における熱余剰状態の判定が行われる。即ち、積算タイマの積算時間(熱余剰積算時間)に基づいて蓄熱余剰が発生しているかが判定される。
熱余剰積算時間が熱余剰判定時間以上であると、ステップS140からステップS141に進み、貯湯装置における蓄熱状態が余剰であるとして、蓄熱状態判定手段は蓄熱余剰の判定を行い、この蓄熱余剰の判定に基づいて、運転モード切換手段が運転モードの切換えを行い(ステップS142)、次の所定運転時間において、蓄熱のための熱の発生が少ない発電効率優先モードの運転が行われる。また、熱余剰積算時間が熱余剰判定時間より小さいと、ステップS140からステップS143に移り、貯湯装置における蓄熱状態が余剰でないとして、蓄熱状態判定手段は蓄熱適正と判定し、この運転モードが継続され(ステップS144)、総合効率優先モードの運転が引き続き行われる。
このように、この総合効率優先モードの運転においても、燃料ガスの供給流量の乖離傾向が優先的に判断され、この乖離傾向が大きいと総合効率優先モードの運転が継続して行われるが、この乖離傾向が小さくなると運転モードが切り換えられ、総合効率優先モードから発電効率優先モードに切り換えて運転される。また、この乖離傾向が中程度である場合には、熱利用を考慮して判断(この場合、蓄熱余剰の判断)され、貯湯装置において蓄熱余剰が生じていないと総合効率優先モードの運転が継続して行われるが、蓄熱余剰が生じていると運転モードが切り換えられ、総合効率優先モードから発電効率優先モードに切り換えて運転される。
以上、本発明に従う燃料電池システムの各種実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
例えば、上述した実施形態では、蓄熱指数検知手段102として貯湯タンク50に配設された5つの温水温度センサ104〜112から構成しているが、2〜4つ又は6つ以上の温水温度センサから構成するようにしてもよい。
また、例えば、上述した実施形態では、貯湯装置44の蓄熱状態を判定するために蓄熱指数という概念を用いているが、このような概念を用いることなく、この熱利用の判定を温度センサ(温度検知手段を構成する)を用いて簡易的に行うようにしてもよい。例えば、蓄熱不足については、温度センサは貯湯装置44の貯湯タンク50内の中央部付近よりも下の位置(例えば、図10における第4温水温度センサ110の位置付近)に設けられ、この温度センサの検知温度に基づいて次のように熱利用の判定を行うことができる。この温度センサの検知温度が熱不足温度値(例えば、50℃程度に設定される)を超えないか、或いはこの熱不足温度値を超える時間(即ち、熱不足積算時間)が熱不足判定時間以下であるときに蓄熱不足と判定することができる。また、蓄熱余剰については、温度センサは、貯湯装置44の貯湯タンク50内の底部又は貯湯水循環流路52の上流側部60内に設けられ、この温度センサの検知温度が熱余剰温度値(例えば、50℃程度に設定される)を超えるか、或いはこの熱余剰温度を超える時間(即ち、熱余剰積算時間)が熱余剰判定時間以上であるときに蓄熱余剰と判定することができる。