JP2004178962A - 燃焼器を有する水素製造装置を用いた燃料電池発電システム - Google Patents

燃焼器を有する水素製造装置を用いた燃料電池発電システム Download PDF

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昌宏 小町谷
Masaya Ichinose
雅哉 一瀬
Motoo Futami
基生 二見
Noriyuki Imada
典幸 今田
Terufumi Miyata
輝史 宮田
Tetsuro Okano
哲朗 岡野
Hiroshi Yatabe
広志 谷田部
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Abstract

【課題】家庭用の分散電源などのように負荷変動の多い状況であっても、水素製造装置の燃焼器を安定に制御する。
【解決手段】電力変換手段によって燃料電池から取り出す電流量を操作変数として、アノード排ガス中の残留水素量を制御する。その際、操作する電流量を、システム運転状態に合せて予め決めた所定の範囲内においてのみ変えるようにすることで、燃料電池への負担を回避した。また、操作範囲を限定することで、燃料電池から取り出される電流量と消費される水素量とに比例的な関係を保つことが容易になり、追随性のよい制御ができる。これにより、システム内の触媒反応のバランスを崩すことなく、速やかな燃焼器制御ができる。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池を使った電源システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池による電源システム、特に家庭用燃料電池発電システムでは、原料となる水素の供給や貯蔵が難しいことから、オンサイトで水素を製造して発電する方法が検討されている。水素の製造には主として触媒による吸熱反応が使われるため、効率的な水素製造には反応部位に熱を供給する必要がある。一方で、燃料電池は供給された水素を100%使い切るように運転することが難しいことから、発電に使われずに残った水素のエネルギーを回収することが望ましい。これらを背景に、水素製造装置に燃焼器を設け、該燃焼器において燃料電池アノード排ガス中の残留水素を燃料として、空気と共に燃焼させる方法が一般に知られている。
【0003】
燃焼器の燃焼状態を制御するには、該燃焼器へ供給される燃料量と空気量とを適正な空燃比に制御すればよい。課題は、現実のシステムにおいてこれを如何に実施するかという点にある。一例として、車載用エンジンの燃焼制御では、吸入空気量を計測する空気流量センサの信号と、燃焼後の排ガス中に含まれる酸素濃度を計測する酸素センサの信号とを組み合わせてインジェクタによる供給燃料量を決めている。空気流量センサのフィードフォワード制御と、酸素センサのフィードバック制御とを組み合せることで、エンジン回転数に見合ったミリ秒オーダーの燃焼制御を実現できるようにしている。
【0004】
燃料電池発電システムでは、エンジンのように高速の燃焼制御が要求されることはない。ここでの課題は、システムにおける化学反応のバランスをいかに維持するかという点にある。水素製造装置は、原燃料から触媒反応によって水素リッチガス(改質ガス)を生成し、燃料電池は、該改質ガスを原料として電極触媒による触媒反応で発電をする。これらの反応系を制御するには、反応部へ供給される原燃料量を操作変数とするのが一般的である。一例として、特開2000−67892号公報には、水素製造装置(改質器)への供給原燃料量を制御する燃料電池発電システムが開示されている。この技術においては燃料電池の出力変動によってアノード排ガス中の残留水素量が変るので、該アノード排ガスが常時一定流量になるように制御する。該燃料電池発電システムによれば、水素製造装置の燃焼器へ戻されるアノード排ガス量、すなわち燃焼のための燃料である残留水素量を一定にできる。これにより該燃料量(残留水素量)に見合った空気量を供給したり、あるいは逆に不足分の燃料を別途供給したりすることが容易になる。これにより最適な空燃比制御ができる。
【0005】
これに対し、特開平2−82462号公報あるいは特開平8−255621号公報には、水素製造装置の反応管温度を検出して、電力変換手段であるインバータの出力を補整するようにした反応温度制御法が開示されている。該制御法では、負荷減少時に通常生じる水素製造装置反応管温度の上昇を、インバータの出力制御によって緩和するようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−67892号公報(要約)
【特許文献2】特開平2−82462号公報(特許性給の範囲)
【特許文献3】特開平8−255621号公報(要約)
【発明が解決しようとする課題】
特開2000−67892号公報に記載の燃料電池発電システムにおいては、燃料電池の出力変動を補うように水素製造装置反応部への供給原燃料量を変える。そのため、該供給原燃料量を変えてから前記水素製造装置反応部の反応が安定化するまでに所定の時間を要するという課題があった。このため、変化の大きい電力負荷への追従が難しくなる。特に、家庭の電力負荷に追従するには、該電力負荷を平滑化した後であってもシステムに速やかな負荷追従性が要求される。
【0007】
ここで、もし要求される負荷変動に合せて前記供給原燃料量を無理に変えると、水素製造装置反応部の反応はその変化に追従できず、適正な組成の改質ガスを得ることが難しくなる。改質ガス組成の変化は、燃料電池の触媒反応にも影響を与えるので、システムの正常な運転には、反応系全体のバランスの回復を待たねばならない。結果として、反応系への供給原燃料量を操作変数とした制御では、負荷追従運転が難しくなる。
【0008】
燃焼器を有する水素製造装置を用いた燃料電池発電システムにおいて実用的な燃焼制御をするには、主たる反応系内のバランス、特に水素製造装置で用いられる種々の触媒反応のバランスをできるだけ崩さないように燃焼器の空燃比を制御することが必要である。これに対し、特開平2−82462号公報あるいは特開平8−255621号公報の反応温度制御法によれば、インバータの出力制御は電気的な制御であるので、反応部へ供給される原燃料量を操作変数とする場合と比べて、より速やかな制御ができる。
【0009】
しかしながら、該温度制御法では、負荷減少時に通常生じる水素製造装置反応管温度の上昇を、インバータの出力制御によって緩和するようにしている。そのため、複数の負荷運転モードの切り替えを要するような場合には、必ずしも適切な制御結果が得難いという課題があった。一例として、負荷減少時、供給水素量を減少させながら、燃料電池の出力を取り過ぎると、燃料電池本体への負担が大きくなり、特性の著しい劣化につながる。特に、家庭の燃料電池発電システムでは、電力負荷追従のために、複数の負荷運転モードの切り替えが要求される場合が多く、この問題が大きい。
【0010】
特開平2−82462号公報あるいは特開平8−255621号公報の反応温度制御法では、燃焼器の燃焼状態ではなく、反応管の温度を検出して温度制御をする。したがって、燃焼状態の詳細な把握が困難であり、複雑な運転モード毎に最適な制御をするのが難しいという課題があった。
【0011】
本発明は家庭用分散電源のように負荷変動の多い状況に容易に対応して燃焼器を制御できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、燃料電池のアノードから排出される燃料含有排ガスの燃焼器の燃焼状態の検出に基づいてインバータの制御を行うことにより、燃焼器の状態に迅速に対応できる制御を可能としたものである。燃焼器の燃焼状態を検出することとは、燃焼器が失火状態に近づきつつあるかどうか、あるいは燃焼器が過熱状態に近づいているかどうかを知ることであり、その状態は燃焼器のガス温度を温度センサまたはイオン電流により検出する。イオン電流を検出する方法によれば、温度以外のより詳細な燃焼状態が把握できる。従来技術では、改質器の温度を測定するものがあるが、本発明では、燃焼器の燃焼状態を直接検出する点で異なる。本発明の実施態様によれば、上記燃焼器の燃焼状態を検出する燃焼状態検出装置の検出信号を参照して、燃焼状態が失火に至るものであれば、少なくとも上記電力変換手段による制御電流量を所定範囲において減少させるか、前記燃焼状態が過加熱状態に至るものであれば、少なくとも前記空気供給装置による供給空気量を所定範囲において増加させるようにする制御手段を備える。該燃料電池発電システムでは、システムの運転状態毎に最適な範囲を設けて制御電流量を操作し、アノード排ガス中の残留水素量を制御する。これにより負荷変化の多い燃料電システムにおいても燃料電池本体へ悪影響を与えることなく、かつ反応系を乱すことなしに、燃焼器の制御をする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明では、各反応部へ供給される原燃料量を燃焼制御のための操作変数としない。代りに、電力変換手段によって燃料電池から取り出す電流量を操作変数として、アノード排ガス中の残留水素量を制御する。その際、水素製造装置の燃焼器における燃焼状態を直接検出して電流制御をすると共に、制御される電流量は、システム運転状態に合せて予め決めた所定の範囲内において変えるようにした。
【0014】
電流操作に所定の範囲を設け、これをシステム運転状態によって切り替えるようにする理由は次の2つである。まず、電流操作の範囲を限定することで、燃料電池から取り出される電流量と消費される水素量との間によい比例関係が成り立つようにし、追随性のよい制御ができるようにしている。該操作範囲は、燃料電池発電システムの運転状態毎に同じであるとは限らないので、各運転状態毎に最適な範囲とするのがよい。そこで、該電流操作範囲を運転モード毎に切り替えるようにした。これらにより、複数の負荷運転モードの切り替えを要する燃料電池システムでも、燃料電池に負担をかけない最適な制御ができるようになる。
【0015】
上記の方法によれば、燃料電池から取り出す電流量を操作変数として、燃焼のための燃料であるアノード排ガス中の残留水素量を速やかに制御できる。これと同様に、空気量を速やかに制御するには、上記電流制御の下で残留水素量を推定し、上記燃焼器へ供給する空気量を直接制御するようにすればよい。
【0016】
これらの方法を単独で、あるいは組み合わせて、上記課題を解決するようにした。別の見方をするならば、燃料電池出口側の「電力変換手段」と、水素製造装置の「燃焼器に係るセンサや補機」とを直接結び付けた制御によって、上記課題を解決するようにした。
【0017】
本発明は、燃料電池と、該燃料電池から電流を制御して取り出す電力変換手段と、該燃料電池のアノード排ガスを燃焼させる燃焼器を備えた水素製造装置と、該燃焼器に空気を供給する空気供給装置とを備えた燃料電池発電システムを対象とする。そして上記燃焼器の燃焼状態を検出する燃焼状態検出装置を備え、該燃焼状態検出装置の検出信号を参照して、上記電力変換手段による制御電流量を、所定範囲において変える制御手段を備え、該所定範囲は、システムの運転状態によって切り替える。
【0018】
本発明によれば、前記電力変換手段の制御電流量と、前記水素製造装置の目標水素製造量とから、アノード排ガス中の残留水素量を算定する信号処理装置を備えた燃料電池システムが提供される。該信号処理装置による処理信号を参照して、上記空気供給装置の供給空気量を制御する制御手段を備える。
【0019】
また、次のシステムが提供される。上記アノード排ガスが、上記燃料電池を出て上記燃焼器へ到達するまでの遅れ時間を、システムの運転状態に関連付けて、上記制御手段を含む制御ユニット内に設けた記憶装置に予め記憶しておく。該記憶装置から、上記運転状態毎に遅れ時間を呼び出し、該遅れ時間を参照して、上記空気供給装置が供給空気量を変更開始するまでの間に待機時間を設けるようにする。
【0020】
該システムでは、アノード排ガス中の残留水素情報を予測して燃焼器への供給空気量をタイミングよく制御する。これにより燃焼器の空燃比を詳細に制御し、負荷変化の多い燃料電池システムを安定に運転できる。
【0021】
上記燃焼状態検出装置は、熱電対などの温度検出装置または燃焼に伴うイオン電流を検出するイオン電流検出装置を用いることができる。該燃料電池発電システムでは、温度の変化や、イオン電流量の変化によって、上記燃焼器の燃焼状態を容易に捉えることができる。
【0022】
また、上記制御電流量に応じた出力電力量と、負荷側が要求する要求電力量との過不足を補整する電力貯蔵装置を設けることもできる。該燃料電池発電システムでは、電力貯蔵装置をバッファとすることで、系統電力との連携に頼ることなく、上記電流制御の適用可能範囲を広げることができる。上記制御手段は、ワンチップマイコンを具備する少なくとも一つの電子制御ユニットで構成できる。マイコンを使うことで、コンパクトなハード構成でありながら、本発明に係る多様な制御を容易に実現できるようにしている。
【0023】
更に、システムの起動、停止、負荷切り替えの各開始指令を基準に予め定めたタイマカウント時間の間に限り、上記電力変換手段による制御電流量、あるいは上記空気供給装置による供給空気量の少なくとも一方を制御する。この場合、他のフィードバック制御に優先して、所定のシーケンスで変えるように制御を切り替えることができる。該燃料電池発電システムでは、燃焼状態に乱れの生じやすい過渡状態に限り、予め最適な運転シーケンスを決めておくことで、乱れが生じてから制御するフィードバック制御ではなく、予め乱れを回避するフィードフォワード的な制御をできるようにしている。定常であるべき燃焼状態では、予期せぬ燃焼変動に応じるため、フィードバック制御を実施するようにし、シーケンス制御とフィードバック制御とを切り替えるようにした。
【0024】
過渡状態において、予め最適なスケジュール運転を決めておく上記燃料電池発電システムにおいては、上記制御電流量に応じた出力電力量と、負荷側が要求する要求電力量との過不足を補整する電力貯蔵装置を備えてもよい。該システムの起動時には、前記電力貯蔵装置で補機電源の少なくとも一部を供給し、それに続く電力貯蔵装置の再充電運転を経て負荷運転に入る。また、システムの停止過程において、所定の条件が満たされる場合には、前記電力貯蔵装置の充電運転を経てシステムを停止するようにしてもよい。該燃料電池発電システムでは、起動のウオームアップ運転、停止時のクールダウン運転に合せて二次電池の蓄電量を調節する。二次電池の蓄電量調節を、燃料電池の運転に適した所定のシーケンスに組み込んで実施することで、運転に必要な蓄電量や空き容量を予め確保することができる。これによって、二次電池との連携運転を容易にし、電流制御の適用可能範囲を広く確保するようにしている。
【0025】
上記本発明に係る燃料電池発電システムを用いた家庭用燃料電池発電システムでは、負荷変動に対する追随性を得ることが容易になるので、システムの稼動率を上げ、運転効率を向上できる。
【0026】
本発明の実施例を、以下図面を用いて詳細に説明する。図1に、本発明第1の実施例に係る燃料電池発電システムを説明する。まず各部の説明をする。11は、水素製造装置である。家庭用燃料電池発電システムの場合、都市ガス(メタン)と水と空気とを原燃料として、水蒸気改質反応や部分酸化反応によって水素リッチな改質ガスを生成する。該改質ガスには70℃近傍で作動する燃料電池発電に好ましくない一酸化炭素(CO)が微量含まれるので、COを減らしたり除去したりする触媒反応部(シフト反応部やCO酸化除去部)も水素製造装置11に含まれるものとする。
【0027】
21は、燃料電池である。燃料電池には作動温度によって幾つかの種類が知られているが、特に家庭用の場合、比較的小型で且つ100℃以下で動作可能な固体高分子型燃料電池(PEFC)を使うことができる。31は、該燃料電池から所定の電流を引き出す電力変換手段である。該電力変換手段は、チョッパとインバータとを組合せて構成でき、燃料電池の直流出力を交流出力に変換できる。本発明に関して重要な点は、該電力変換手段が、前記燃料電池から所定の電流を制御して引き出すようにしている点にある。
【0028】
電流制御のための装置を直交変換のための装置とは別に設けるようにしてもよいが、システムを簡単にするには両者が一体であるのが好ましい。該電力変換手段が制御して取り出す電流の量を、制御電流量と呼ぶことにする。41は、充放電可能な電力貯蔵装置である。鉛系の二次電池やリチウム系の二次電池などを使うことができるので、充放電可能な電力貯蔵装置41を、以下では二次電池と呼ぶことにする。二次電池41は、燃料電池21と並列に設けた。51は、水素製造装置11の燃焼器である。図では、簡単のため燃焼器と水素製造装置とを互いに接する形で示したが、燃焼器51は水素製造装置11の内部にあってもよい。
【0029】
61は、燃焼器51の燃焼状態をモニタするための燃焼状態検出装置である。燃焼状態検出装置61には、熱電対などによる温度検出装置や、イオン電流を検出するイオン電流検出装置などを用いることができる。71は、燃焼器51へ燃焼のための空気を供給する空気供給装置である。空気供給装置71には、回転数制御のできる空気ブロアを使うことができる。空気コンプレッサによって外部の空気を昇圧し、バルブの開度調整を組み合わせて供給空気量を制御するようにしてもよい。81は、電力変換系(31、41)と燃焼器系(51、61、71)とを結び付ける制御手段である。82は、制御手段81に含まれる信号処理装置である。83は、制御手段81に含まれる記憶装置である。
【0030】
101は、燃焼状態検出装置61から制御手段81へ送られる燃焼状態検出信号である。102は、制御手段81から電力変換系(31、41)へ送られる制御電流指令である。該指令によって、制御電流量を決めることができる。103は、制御手段81から空気供給装置81に送られる空気供給指令である。該指令によって、空気供給量を決める。104は、電力変換系(31、41)から制御手段81へ送られる信号であって、ある時点での、あるいはその時点に至る過去の履歴を含む制御電流量に係る情報である。105は、制御手段81に対して、外部から、あるいは別の制御系から与えられる運転指令や、外部に設けたセンサ出力など、制御手段81への入力信号である。ここで、別の制御系とは、制御手段81とは独立の制御ユニット内に設けられたものであってもよいし、制御手段81の内部に設けられた別の制御系であってもよい。
【0031】
次に、本発明第1の実施例に係る燃料電池発電システムの働きについて説明する。水素製造装置11は、原燃料の供給を受けて改質ガスを生成する。燃料電池21は、該改質ガスを使って発電をする。改質ガスは燃料電池のアノード極側へ供給される。これに対し、燃料電池のカソード極側に空気が供給されるが、図1では省略した。燃料電池21に電気的負荷を与えない場合、燃料電池21には所定の電圧(開路電圧)が生じるものの、電流は流れない。
【0032】
これに対して、外部の電気的負荷や二次電池への充電など負荷に対しては、電力変換手段31によって燃料電池21から電流を制御して引き出すことができる。この際、燃料電池21の電圧は下がるが、電力変換手段31の設定した所定の電流量が引き出される。通常の運転では、該電流量に見合う分だけ、アノード極側の水素が発電に消費される。燃料電池21は、アノード極側に供給された改質ガス中の水素すべてを消費できないのが普通であるので、燃料電池を消費されずに通過したオフガスには残留水素が含まれる。水素製造装置の燃焼器51は、これを燃焼させる。燃焼のための空気は空気供給装置71によって供給する。
【0033】
ここで、燃焼器51の役割は、燃料電池21を通過した残留水素を燃焼させ、そのエネルギーを熱的に回収することにある。上記水素製造装置11において、水蒸気改質反応のみで改質ガスを生成する場合には、原燃料として空気を供給する必要がないが、水蒸気改質反応は吸熱反応であるので所定の反応温度を維持するために燃焼器が必要になる。ここで熱回収を併用すれば、燃焼のために供給する燃料量を低減できるので好ましい。また、上記水素製造装置11において、水蒸気改質反応と部分酸化反応とを組み合せる併用改質(オートサーマル改質)を採用する場合には、原燃料に空気を加えることで部分酸化反応による発熱と水蒸気改質反応による吸熱とを熱的にバランスさせることができる。この場合、燃焼器による熱回収を併用すれば、反応部に加える空気量を少なくできるので、改質ガスの水素濃度を向上できて好ましい。いずれの改質方式においても、燃焼器51は熱回収装置として機能できる。
【0034】
本発明で特に注目すべきことは、燃焼器51の燃焼制御方法である。そこでは燃料である残留水素と空気の比率(空燃比)を最適化することが望まれるので、燃料となる残留水素の量について知る必要がある。空燃比の最適化には、空気供給装置71の供給空気量を制御する方法があり、これは実際に有効な方法であるが、空気の送量をブロアなどで制御するため、工夫なしに応答性のよい制御をすることは難しい。
【0035】
一方、燃焼状態を安定に保つには、燃料電池発電システムにおいて過渡的な変動が予想される残留水素の変化を補償し、変動を抑えることが望ましい。このために、次のように考えた。上記残留水素の量を直接計測できれば一番よいが、そのためには燃料電池オフガスラインに専用の分析計を設ける必要があり、実用システムへの適用が難しい。
【0036】
また、水素製造装置へ供給される原燃料量を操作すれば残留水素量を制御できるが、複数の化学反応(触媒反応)過程を介して操作することになるため、外乱を拾いやすい。加えて、応答時間を要するので制御性の向上が難しい。電力変換手段31によって強制的に引き出す電流量を操作して、燃料電池21で消費される水素量を直接制御した場合は、次のようになる。すなわち、燃料電池21から制御電流を多く取れば残留水素量は相関して確実に減り、制御電流を少しだけ取るようにすれば、残留水素量は相関して確実に増える。
【0037】
本発明では、電力変換手段31の制御電流量を変えることで、残留水素量を追随性よく制御できるようにした。但し、この相関はどのような電流値に対しても成り立つという訳ではない。追随性のよい制御には、この相関が比例関係に近いことが望ましい。これを実現するため、本発明では、前記制御電流量を所定範囲でのみ制御するようにした。加えて、複数の運転モード切替に適切に対応するために、該所定範囲をシステムの運転状態毎に切り替えるようにした。その詳細については、図3で説明する。
【0038】
第1の実施例に係る燃料電池発電システムによれば、水素製造装置の燃焼器51の燃焼状態を燃焼状態検出装置61によって直接検出し、電力変換手段31が引き出す電流量を操作する。これにより、燃料電池で消費される水素量を、速やかに且つ確実に制御できる。その結果、水素製造装置11に設けた燃焼器51に供給される残留水素量を、燃焼器51の燃焼状態にあわせて、速やかに且つ確実に制御できる。
【0039】
また、上記制御電流量の制御を、予め決めた所定の範囲でのみ実施するようにすることにより、特別な検出制御機構を設けることなく、消費水素量と制御電流量との間によい比例関係を維持でき、応答性のよい燃焼制御ができる。
【0040】
また、燃料電池21に負担の少ない運転の範囲を、運転状態毎に予め保証できる。そのため、複雑な運転モードの切り替えが要求される燃料電池発電システムであっても、例えば制御のために電流を強制的に引き過ぎて燃料電池21を劣化させるといった問題を回避できる。
【0041】
次に、上記図1に示す本発明第1の実施例の主な働きを支える重要箇所の詳細な働きについて説明をする。最初に、充放電可能な電力貯蔵装置(二次電池)41の機能について説明する。燃料電池21から取り出される電力は、一般には負荷側の要求電力に見合う量でなければならない。しかし、この制限のもとでは、上記本発明第1の実施例に係る電流操作の範囲は限定されてしまう。例えば、燃焼器51の燃焼温度を下げるため、制御電流量を増やして、残留水素量を減らしたい場合であっても、負荷側の要求電流量が少なければ、制御電流量を負荷と無関係に増やすことはできない。そこで、燃料電池21と並列に二次電池41を配置した。この場合、二次電池は余剰電力を貯蔵し、燃料電池21の発電が不足する場合には、放電によってこれを補うことができるので、燃料電池21から取り出す電力量と負荷側の要求する電力量とが同じである必要はない。結果として、電力変換手段31は、要求電力量とは独立に燃料電池21から取る制御電流量を決めることができる。つまり、上記残留水素量制御のための電流操作を自由にできるようになる。
【0042】
上記本発明の第1実施例に係る燃料電池システムにおいて二次電池41を併用する場合には、電力変換手段41が燃料電池21から引き出す電流量を、要求負荷に拘わらず自由に設定できる。そのため、上記電流制御の適用可能範囲を広げることができる。なお、別の方法として、二次電池41を用いる代りに、系統電力と連携をさせる方法がある。この場合、燃料電池から取り出される電力量が要求電力量より少ない場合には、系統電力によって不足分を補えばよい。逆に、燃料電池から取り出される電力量が要求電力量より多い場合には、系統に電力を戻すようにする。但し、系統側へ余剰電力を逆送電することは、必ず許可されるとは限らないので、二次電池がなく、逆送電もできない場合には、操作電流を増やす方向、即ち燃焼器へ供給される残留水素量を減らす制御は制約を受けることになる。こうした場合においても、供給空気量制御との組み合せにより、燃焼制御は可能であるが、その詳細を図4により説明する。
【0043】
上記本発明第1実施例に係る燃料電池システムにおいて、二次電池41を用いずに系統連携させるようにしたシステムでは、電力変換手段41が燃料電池21から引き出す電流の設定に制限が出る場合がある。しかし、二次電池41とそれに係る制御をすることなく、本発明に係る電流操作ができるので、システム構成の小型化、簡素化ができる。
【0044】
次に、燃焼状態検出装置61の機能と、それによる燃焼制御について説明する。燃焼状態検出装置61として、熱電対などによる温度検出装置を用いる場合、燃焼状態の良否を温度によってモニタできる。予め正常な動作を保証する温度範囲を定めておけば、温度検出装置による検出温度が該範囲を高温側へ逸脱する場合には燃焼状態が過加熱状態に近づきつつあること、低温側へ逸脱する場合には失火の危険性があることを速やかに捉えることができる。燃焼器51の燃焼状態が過加熱状態に近づきつつある場合は、燃料である残留水素を減らすように電力変換手段31による制御電流量を増やせばよい。
【0045】
燃料電池オフガスには水蒸気が比較的多く含まれているので、もともと燃え難い性質がある。従って、残留水素の比率を少し減らせば、過加熱状態を脱することができる。燃焼器51の燃焼状態が失火しやすい状態にある場合は、燃料である残留水素を増やすように電力変換手段31による制御電流量を減らせばよい。オフガス中の水蒸気に対して水素濃度を増加させれば、燃焼を維持することが容易になる。
【0046】
燃焼器の温度を検出して電力変換手段の制御電流を操作する別の方法として、温度の変化を捉える方法がある。この場合、温度の上昇速度が大きい場合には、それだけ過加熱状態になる危険性が高いので、燃料である残留水素を速やかに減らすように電力変換手段31による制御電流量を増やせばよい。また、温度の下降速度が大きい場合には、それだけ失火に陥る危険性が高いので、燃料である残留水素を速やかに増やすように電力変換手段31による制御電流量を減らせばよい。電流制御の応答性は充分よいので、燃焼器の特性にあわせた制御ゲインを設定すれば、系を乱すことなく良好な燃焼制御ができる。
【0047】
燃焼器の温度を検出して電力変換手段の制御電流を操作する別の方法として、目標温度との差の積分値をゼロに近づけるように積分制御を適用してもよい。燃焼器の燃焼にはバーナばかりでなく、触媒燃焼を使う場合があるが、最適な燃焼条件が時間とともに変わるという場合があり得る。こうした場合に該積分制御を適用すれば、定常状態における偏差をリセットできる。本発明における燃焼制御においては、燃焼器の温度を検出して目標温度との偏差を求め、該偏差がゼロに近づくように電力変換手段の制御電流を操作すればよい。
【0048】
上記の燃焼制御法はそれぞれ単独で適用してもよいし、組み合わせて適用してもよい。特に燃焼安定条件の選択が複雑で簡単な制御ができない場合などには、燃焼器の温度を検出し、該温度を因数として、予め決めた函数やデータマップによって電力変換手段の制御電流量を算出し、読み出し、あるいは外挿・内挿して決定する。これらの方法によって得られた電流値を目標値として電流を操作してもよい。該電流操作の結果、燃料電池21のアノードオフガス中の残留水素量を、燃焼器51の燃焼に最適な条件にできる。
【0049】
以上の電流操作を、空気供給装置71による供給空気量制御と併用すれば、さらに適正な燃焼制御ができる。この場合、供給空気量は比較的緩やかに変化するものであることが好ましい。結果として得られた燃焼状態を温度として直接検出し、その結果必要な水素量については、制御電流量を操作変数として速やかに制御できるので、供給空気量の変動を補整できる。
【0050】
上記燃焼器51の温度を検出する燃焼制御法によれば、温度を検出するという比較的簡単な方法で燃焼状態を捉え、それに基づき電力変換手段31の制御電流を操作して、アノードオフガス中の残留水素量を速やかに制御できる。これにより、比較的簡単な機構でありながら、制御性のよい燃焼フィードバック制御ができる。
【0051】
燃料状態検出装置61として、イオン電流検出装置を用いる場合には、燃焼状態の良否をイオン電流の状態によってモニタできる。イオン電流の検出には、燃焼器51の火炎近傍に電極を設け、該電極間に流れるイオン電流を連続的に、あるいは所定の時間間隔で検出すればよい。
【0052】
イオン電流は火炎の状態を反映するので、例えば、イオン電流の平均値が所定の範囲より増加する場合には、燃焼状態が過加熱状態に近づきつつあると判断して、燃料である残留水素を減らすように電力変換手段31による制御電流量を増やせばよい。また、イオン電流の平均値が所定の範囲より減少する場合には、燃焼器51の燃焼状態が失火しやすい状態にあると判断し、燃料である残留水素を増やすように電力変換手段31による制御電流量を減らせばよい。
【0053】
温度の代わりにイオン電流の平均値を採用すれば、上記温度制御と同様の制御法を適用できる。イオン電流の変化には温度より細かな燃焼の情報が含まれるので、平均値ばかりでなく、イオン電流の振れ幅や特徴的な時間変化を捉えるのがよい。これにより燃焼器51の燃焼状態が過加熱状態に近づきつつあるか、失火しやすい状態にあるかを判断し、上記制御電流の操作をするようにしてもよい。
【0054】
燃焼器61のイオン電流を検出する燃焼制御法によれば、イオン電流に含まれる細かい燃焼情報を反映した燃焼制御をすることができる。それに基づき電力変換手段31の制御電流を操作して、アノードオフガス中の残留水素量を適正に制御できる。これにより、燃焼状態の細かい情報を反映した制御性のよい燃焼フィードバック制御ができる。
【0055】
続いて、制御手段81の働きについて説明する。制御手段81の主たる働きは、燃料電池出口側の『電力変換手段』と、水素製造装置の『燃料器に係るセンサや補機』とを直接結び付けた制御をすることにある。これは、燃焼器51の燃焼状態をみて上記制御電流を操作するために必要である。
【0056】
制御手段81は信号処理装置82と記憶装置83とを含む。信号処理装置82は必要に応じて記憶装置83から情報を読み出して信号処理に適用する。記憶装置83は、電力変換手段31の電流制御を、運転モード毎に予め決めた所定の範囲において実施する上で有効である。記憶装置83に前記電流制御に係る所定の範囲を予め記憶させておけば、種々の運転状態に対して、所定の範囲を簡単に且つ適正に定めることが容易になる。
【0057】
図2に、制御手段81の構成の詳細例を説明する。制御手段81は、燃焼器系の燃焼状態検出装置61からの信号101を受けて、燃焼状態検出のための処理をする。信号101は、具体的には熱電対やサーミスタなど温度センサの検出信号や、イオン電流センサのイオン電流信号などである。燃焼状態検出の具体的な方法については、上記燃焼状態検出装置の機能説明において説明した。燃焼状態の検出によって、燃焼器51の燃焼状態が過加熱状態に近づきつつあるか、適正であるか、あるいは失火状態に陥る危険性があるかなどを定量的に判定できる。
【0058】
該燃焼状態の検出結果をもって、出力電流制御の処理を実施し、制御電流量を決定する。制御手段81は、該制御電流量の設定値を電力変換系に制御指令102として発信する。以上のようにして、燃焼器系から電力変換系へ信号の流れができる。
【0059】
次に電力変換系から燃焼器系への信号の流れについて一例を説明する。電力変換手段31の制御電流量を信号104として制御手段81へ送るようにした。また、該制御電流量は燃料電池スタック21が単位時間あたりに消費する水素量に相関するので、燃料電池スタック21へ入力される単位時間あたりの水素量が分かれば、燃焼器51へ入力される残留水素量を演算することができる。ここで、燃料電池スタック21へ入力される単位時間あたりの水素量は、システムの運転状態が分かれば決定することができる。システムの運転状態は、運転モード指令106によって知ることができる。
【0060】
制御手段81では、残留水素量演算のための処理において残留水素量の演算をするようにした。該残留水素量演算のための処理結果をもって、空気供給装置71の供給空気量制御のための処理を実施し、供給空気量を決定する。制御手段81は、該供給空気量の設定値を燃焼器系の空気供給装置に制御指令103として発信する。以上のようにして、電力変換系から燃焼器系へ信号の流れができる。
【0061】
制御手段81による上記制御法によれば、水素製造装置の燃焼器と電力変換手段であるチョッパやインバータとを連携させた制御が容易であるばかりでなく、余分な制御系を介さないので、負荷追随性のよい速やかな燃焼制御に有利である。なお、燃焼器系の燃焼状態センサの出力信号101を受けて、同じ燃焼器系の空気供給装置を信号103によって制御することも、制御手段81によって実施できる。この場合、信号処理装置81の処理Aのみを実施すればよい。これに対し、燃焼器系と電力変換系とを結びつけた制御には処理AとBの両方が重要である。
【0062】
図2の下半分に、上記制御手段81に関するハードウエアの構成例を説明する。91は、一般の入力信号107をマイコンで処理できるようにするための前処理装置であり、アナログ回路による電圧変換などの処理を含む。デジタル入力信号108については、直接マイコンに取り込むことができる。92は、入力ポートであり、アナログ信号についてはA/D変換するため処理装置を含む。93は、入力信号に基づき、各種操作を決定するための信号処理部である。図1との対応では、信号処理部93は制御手段81の信号処理装置82の主要部に相当する。マイコンを駆動するための電源回路やクロックの発振回路は、アナログ回路で構成できるが、図2では省略した。94は、該処理に必要なプログラムやデータ(マップ)などを格納するためのROM(read only memory)である。
【0063】
図1との対応では、信号処理装置82の一部(プログラム)と記憶装置83(マップ)の主要部に相当する。95は、処理の途中結果を一時保管したり、更新を要するデータ(マップ)を格納するためのRAM(random access memory)である。図1との対応では、信号処理装置82の一部(演算処理に必要な領域)と記憶装置83(マップ)の一部に相当する。ここで、更新を要するデータとは、随時値を修正したり、更新をする学習的機能に対応可能なデータなどを示す。
【0064】
水素製造装置の停止時に装置の状態を記憶し、次回立上げの際に、これを参照して装置を起動するような場合に一時的に保管し、起動停止毎に更新するデータもこれに含まれる。96は、出力ポートであり、アナログ信号に変換を要する信号についてはD/A変換するための出力処理装置を含む。97は、操作指令109を出力するための後処理装置であり、ドライバ回路などによるアナログ処理を含む。デジタル信号による操作指令110は、出力ポート96から直接出力している。
【0065】
市販のワンチップマイコンを使えば、図7の点線で囲んだ部分を中心に一つのチップ90に機能集積できる。これに周辺アナログ回路を含めて、電子制御ユニットを構成できる。補機駆動のために大電圧や大電流が必要とされる場合には、ワンチップマイコンに対して、過電圧や過電流に対する保護回路を別途設けるようにすればよい。それ以外の場合は、ツエナーダイオードや、コンデンサによって簡単な保護機能を追加するようにしてもよい。
【0066】
上記本発明に係る電子制御ユニットによれば、燃焼器系と電力変換系とを結ぶ複数の制御機能をワンチップマイコンに集約できるので、プログラマブルシーケンサなどによる制御と比べて、制御ユニットを小型化でき、生産性を向上できる。
【0067】
図3に、上記本発明第1の実施例に係る制御電流の設定範囲を説明する。電力変換手段31による制御電流量と、燃料電池スタック21での水素消費量とが比例的な関係にあるようにし、燃料電池に負担のない電流制御をするため、上記設定範囲を所定の範囲として、制御電流量を決定するようにしている。
【0068】
図3に示すグラフは、縦軸が燃料電池21の出力を、横軸が燃料電池21の制御電流量を示す。ここでは、供給水素量が一定の場合を考えた。所定の水素供給量に対し、取り出す電流量を増やせば、より多くの水素が消費されるので、燃料利用率が上がる。燃料利用率を上げて運転すると、一般に燃料電池スタック内部での水素が反応電極へ充分拡散できなくなるため、あるところから急速に出力が低下する。
【0069】
一例として燃料利用率85%がその上限となる。該上限を超えて電流を強制的に取り出す場合、水素の供給が不足になるため、電流は供給された水素のイオン化過程以外の過程、例えばカーボン材料から電子が取られるなど好ましくない過程によって賄われるようになる。このため、水素の消費量と制御電流量との間に比例関係が成り立たなくなり、残留水素量との相関も比例的には得られない。こうした領域で長期間運転をすると、燃料電池の劣化も著しい。
【0070】
反対に、取り出す電流量を減らし、燃料利用率を低くして運転する場合には、供給されるガス量が相対的に多くなる。ガス量の増加は圧力損失の増加につながるので、ガスの供給が正しくおこなわれなくなる場合がある。一例として、燃料利用率30%がその下限となる。その下限を下回って電流を取り出す場合、電流は正常に得られるものの、圧力損失の増加と共に流路抵抗が増し、補機動力一定の条件ではガス供給量が相対的に不足する場合がある。結果として、残留水素量と制御電流との比例的な相関を得ることが難しくなる。
【0071】
以上に鑑み、本発明では、所定の供給水素量に対して、制御電流量に図3のような上限値と下限値とを設けるようにした。上記制御電流量の上限値と下限値とは、一般に供給水素量によって変わる。一方、供給水素量は燃料電池発電システムの運転状態によって変わるため、実用的には、前記制御電流の上限値と下限値は、該運転状態に依存して決めるのが望ましい。図3の表に、制御電流量の上限値と下限値とを、システムの運転状態毎に設定する場合の一例を示す。表には、システムの運転状態、該運転状態にあることを判断するための判定条件、各運転状態での制御電流の上限値、下限値をそれぞれ示した。制御電流の上限値と下限値は、それぞれの運転状態について記号で記載した。
【0072】
運転状態が所定の負荷モードである場合のように定常な状態では、供給水素量が一定であるから、供給水素量毎に求められる負荷電流量と燃料電池出力との関係から、上記のように制御電流量の上限値と下限値とを決めることができる。これに対し、運転モードの切り替えなどの過渡状態では必ずしも供給水素量は一定にならないが、供給水素量の変化の範囲は予め定めることができる。例えば、制御電流量の上限値は、供給水素量が一番少ない状態での上限値になるように、下限値は供給水素量が一番多い状態での下限値となるように定めることができる。勿論その他の特性、例えば水素製造に関する応答遅れなどを加味して、燃料電池に負担のないよう、上限値と下限値とを定めるようにしてもよい。
【0073】
ここで、図3に例示した起動時のウオームアップとは、負荷運転前の慣らし運転であり、二次電池の擬似的な部分負荷運転である。供給水素量に多少の変動はあるものの、ほぼ一定とみなせるので、Imin1とImax1は所定の部分負荷運転と同様に決めることができる。
【0074】
また、負荷運転からの停止とは、各負荷運転状態から停止させる場合を想定している。停止をさせるのであるから、簡単にはIminm=Iminn=0であるが、停止指令から所定のタイマカウント時間を区切って該下限値を変えるようにしてもよい。なお、図3には高負荷、低負荷の二つの運転モードのみを記載しているが、複数の負荷運転モードがある場合も同様に電流制御範囲を定義することができる。
【0075】
各運転状態における制御電流量の上限値と下限値とは、マップの形であらかじめ記憶装置83に記憶させておくことができる。制御手段81は、運転モード毎に該情報を呼び出し、電力変換手段31に対して制御電流量の操作範囲を指令できる。
【0076】
上記電力変換手段の制御電流範囲を定める方法によれば、燃料電池スタックやガス供給のための補機類に負担を与えることなく、制御電流量と残留水素量との間に比例的な関係を維持できる。そのため、制御電流量を操作変数とした残留水素量制御を追随性よく実施できる。補足として、通常の運転条件は、システム効率を高めるという理由から、図3に示すように燃料利用率の高い側に設定するのが普通である。
【0077】
このため、残留水素量を減らす方向の電流制御は、残留水素量を増やす方向の電流制御と比べて、制御範囲が制限される傾向にある。しかし、次に説明する図4の例のように、残留水素量を減らす代わりに空気量を増やす方法を組み合わせて燃料器の燃焼制御をすることもできる。
【0078】
図4に、上記本発明第1の実施例に係る電力変換手段と空気供給装置とを組み合わせた運転法の一例を説明する。図4に示す3つのグラフのうち、最上段のグラフは、燃焼器51の代表温度の時間変化を模式的に示した例である。中段のグラフは、電力変換手段31の制御電流量を模式的に示した例である。下段のグラフは、燃焼器への空気供給装置71の供給空気量を模式的に示した例である。時間を追ってこれらの変化を説明すると次のようになる。
【0079】
最初に燃焼器51の温度が何らかの不安定要因によって上昇し始めた。該温度がTmax1に達した時点で、過加熱状態にあると判断し、空気供給量を増加させた。温度の低い空気量が増え、燃料希薄な状態となった結果、燃焼器51の温度は下がりはじめ、該温度がTmax2になった時点で、空気供給量を通常の値に戻した。その後、燃焼器51の温度が別の不安定要因によって、下降を始めた。該温度がTmin1になった時点で、失火の危険性があると判断し、供給燃料である残留水素量を増やすよう、電力変換手段31の制御電流量を絞った。
【0080】
燃料比率が増えて、アノードオフガスに混入して供給される水分濃度が相対的に減った結果、温度は上昇に転じ、温度がTmin2になった時点で、制御電流量を通常の値に戻した。燃焼器が過加熱状態になった場合には、空気供給装置による供給空気量を一時的に増加させる。また燃焼器が失火に至る状態になった場合には、電力変換手段による制御電流量を一時的に減少させるという方法によって、水素製造装置の燃焼器を安定燃焼させる。なお、制御する電流量および空気量は、実用上それぞれ所定の範囲において制御することが望ましいので、図3で説明した範囲で制御すればよりよい。また、供給空気量は、使用する空気供給装置の特性に応じて、所定の範囲を決めればよい。
【0081】
過加熱状態では、上記の運転法に従って供給空気量を増やすと同時に、制御電流量を増やして、残留水素量を減らすという制御を併用しても燃焼を抑えるうえで効果的である。この場合の制御電流量変化を点線で例示した。
【0082】
上記本発明の第1実施例に係る電力変換手段と空気供給装置とを組み合わせた運転法によれば、電力変換手段によって燃焼器の燃料である残留水素量を制御する。その結果、燃料利用率などの点で該制御が適用しにくい領域では空気供給装置によって燃焼器への供給空気量を制御する。これにより、システムに通常備えられる電力変換手段と空気供給装置とを相互に連携させて制御することにより、システムを複雑にすることなく、燃焼器の空燃比制御を広い範囲に渡って容易にできる。
【0083】
図5に、上記第1の実施例に係る電力変換手段の別の運転法を説明する。ここでは、水素製造装置に設けた燃焼器の燃焼状態が乱されやすい負荷切り替え状態での制御を例に説明する。残留水素量の増減を抑制するように、電力変換手段の制御電流量を操作した場合、どのような結果が得られるかを説明する。
【0084】
図5に示す6つのグラフのうち、上3つのグラフは低負荷から高負荷へ変化させる場合を、下3つのグラフは高負荷から低負荷へ変化させる場合をそれぞれ示す。各場合において、最上段のグラフは、燃料電池スタック21への供給水素量を模式的に示した例である。中段のグラフは、電力変換手段31の制御電流量を模式的に示した例である。下段のグラフは、燃焼器へ供給される残留水素量を模式的に示した例である。
【0085】
低負荷モードから高負荷モードへ変化させる場合を例に、時間を追ってこれらの変化を説明すると次のようになる。ここでは、システムの運転状態を低負荷モードと、低負荷モードから高負荷モードへ移行する過渡的な状態と、高負荷モードの3つに状態を区別した。低負荷モードから高負荷モードへ移行する過渡的な状態は、モード切り替え指令からタイマカウント時間T1までの間として定義した。
【0086】
まず、低負荷モードでの制御電流の範囲は、図3の低負荷モードに相当する制御電流量の上限値Imax2と下限値Imin2との間に設定する。Imin2は図において省略した。外乱のない状態では、Imax2より少ない電流量I2が制御電流として引かれる。モード切り替え指令と共に、水素製造装置11は、製造水素量を増やすとした。負荷切り替えより先に水素量を増やすことで、燃料電池が常に水素不足にならないようにしている。次に低負荷モードから高負荷モードへ移行する過渡的な状態では、同様に図3のImax3とImin3をそれぞれ上限値と下限値として制御電流量を決める。この状態では既に供給水素量が増加しているので、燃焼器への戻り水素量が増える。これを抑制すべく、制御電流量はImax3に向けて増大するように制御をする。
【0087】
制御電流量がImax3を超えないようにすることで、供給水素量が不足しないようにしている。続いて、予め決めたタイマカウント時間T1後に、高負荷に相当する電流I4を取りはじめる。タイマカウント時間は、高負荷モードへ移行するのに充分な水素量が供給されるように決めるようにする。水素不足を回避するため、I4>Imax3とするのがよい。
【0088】
この時点で、制御電流量には小さな飛びが生じるが、残留水素量の増加を抑制するように制御したので、制御ありの場合となしの場合とで図のAからBへ急激な残留水素量の変化を抑制できる。結果として、燃焼器の燃焼状態を安定に保つことができる。高負荷モードでは、制御電流量の上限値をImax4、下限値をImin4として電流を操作する。図では、前記小さな飛びによる残留水素量の変化を抑制するように電流が変化する様子を示した。
【0089】
高負荷モードから低負荷モードへ変化させる場合には、次のようになる。高負荷モードから低負荷モードへ移行する過渡的な状態は、モード切り替え指令からタイマカウント時間T2の間として定義した。高負荷モードでの制御電流の範囲は、図3の高負荷モードに相当する制御電流量の上限値Imax4と下限値Imin4との間に設定する。
【0090】
外乱のない状態では、Imax4より少ない電流量I4が制御電流として引かれる。モード切り替え指令と共に、水素製造装置11は、製造水素量を減らすとした。但し、水素不足を回避するため、制御電流量もこれより速く減らすようにするのがよい。高負荷モードから低負荷モードへ移行する過渡的な状態では、同様にImax5とImin5をそれぞれ上限値と下限値として制御電流量を決めるようにした。その結果、高負荷モードから低負荷モードへ移行する過渡的な状態の制御電流量は、I4>Imax5となるよう、I4からImax5に一旦減少した後、Imin5まで減少を続けるようになる。Imin5まで制御電流量が減少するのは、供給水素量の減少に伴う残留水素量の低減を抑制するように電流が操作されるからである。残留水素量の増加を抑制するように制御したので、急激に制御電流量を低下させる場合と比べると、図のCからDのように残留水素量の変化を抑制できる。結果として、燃焼器の燃焼状態を安定に保つことができる。続いて、タイマカウント時間T2後に、低負荷に相当する電流I2を取りはじめる。タイマカウント時間は、供給水素量が低負荷モードでの目標値に近づく時間に基づいて決めるようにする。
【0091】
水素不足を回避するため、I2>Imin5とするのがよい。この時点で、制御電流量に小さな飛びが生じ得るが、Imin5の設定値を低負荷モードでの通常の電流値I2に近く設定しておけば、飛びの発生を抑制できる。低負荷モードでは再び、制御電流量の上限値をImax2、下限値をImin2として電流が操作される。図では、前記小さな飛びによる残留水素量の変化を抑制するように電流が変化する様子を同様に示した。
【0092】
上記本発明第1の実施例に係る電力変換手段の別の運転法によれば、運転状態毎に予め定めた制御電流量の上限値と下限値の範囲において、残留水素量の増減を抑制するように電力変換手段の制御電流量を操作するようにした。その結果、水素製造装置に設けた燃焼器の燃焼状態が乱されやすい負荷切り替え状態で安定な燃焼制御ができ、電流操作において燃料電池に負担を与えることがない。
【0093】
図6に、上記本発明第1の実施例に係る電力変換手段の更に別の運転法を説明する。図5と同様に、水素製造装置に設けた燃焼器の燃焼状態が乱されやすい負荷切り替え状態での制御を例に説明する。
【0094】
図5の運転法との違いは次の点にある。低負荷モードと高負荷モードは定常的な運転状態にあるが、これらの定常状態では図5の実施例と同じフィードバック制御を実施する。
【0095】
一方、過渡的状態であるモードの移行状態では、該フィードバック制御の代わりに予め定めた所定のスケジュール(シーケンス)運転を実施する。即ち、モード切り替え指令と共に、フィードバック制御を停止し、スケジュールに従って制御電流量を決定するようにする。モード切り替え終了と共に、該スケジュール運転は停止し、フィードバック制御を再び開始する。
【0096】
上記スケジュール制御では、図5のように連続的な電流操作をしてもよいが、より簡単なステップ的な操作をするようにしてもよい。図6には、ステップ的な操作をする場合を示した。操作がステップ的になるため、残留水素量の変化もステップ的になるが、変化幅を抑える効果は図5の場合と同様に得ることができる。
【0097】
もちろん、定常状態において予期せぬ外乱が加わる場合は、図5の実施例と同じフィードバック制御によって外乱による変動を抑制できる。上記小さな飛びによる残留水素量の変化を抑制するように電流が変化する様子は図5の場合と同じである。
【0098】
上記第1の実施例に係る電力変換手段の更に別の運転法によれば、燃焼状態が乱されやすい負荷切り替え状態でフィードバック制御を実施すると、燃焼器の特性によっては制御のためにかえって燃焼状態が乱される場合がある。しかし、所定のスケジュール(シーケンス)に従って制御電流量を操作し、残留水素量の増減を抑制する方法を組み合わせるようにしたので、過渡的状態において生じやすい燃焼状態の乱れを予め回避できる。
【0099】
図7に、本発明の第2実施例に係る燃料電池発電システムを説明する。上記本発明第1の実施例にかかわる燃料電池発電システムとの違いは、次の点にある。燃焼器51には燃焼状態検出装置61を設けず、予め決めたスケジュール(シーケンス)に従って電力変換手段31の制御電流量を操作するようにした。
【0100】
各運転モード切り替え指令と制御手段81のタイマ84とリンクさせることで、運転状態毎に所定のスケジュール運転ができる。運転モードの切り替え指令の代りに、空気供給装置71の供給空気量の切り替え指令とリンクさせてスケジュール運転をするようにしてもよい。該スケジュール運転では、燃焼器51の燃料が安定になるよう、残留水素量の変動を抑制するように電力変換手段31の制御電流量を決めておく。供給空気量とリンクさせる場合には、該空気量に見合う制御電流量を予め決めておけばよい。電力制御手段単体のスケジュール運転は公知の技術であるが、本実施例の操作法によれば、供給空気量と結び付けた燃焼器の安定制御が容易である。
【0101】
上記本発明の第2の実施例に係わる燃料電池発電システムによれば、水素製造装置の燃焼器51に燃焼状態検出装置を設けることなく、安定な燃焼制御をすることができるので、システムの構成が簡単になる。また、制御電流操作による残留水素量制御は応答性がよいので、供給空気量に見合った追随性のよい燃焼制御をすることができる。
【0102】
図8に、上記本発明第2の実施例に係る燃料電池発電システムの起動時、停止時のスケジュール運転例を説明する。ここでは、図1と同様に、システムに二次電池を採用する場合を想定した。図8に示す6つのグラフのうち、上3つのグラフは起動時を、下3つのグラフは停止時をそれぞれ示す。各場合において、最上段のグラフは、水素製造装置11の水素製造量を模式的に示した例である。中段のグラフは、燃料電池へ供給される水素量を模式的に示した例である。下段のグラフは、二次電池の充電、放電の様子を模式的に示した例である。
【0103】
起動時を例に、時間を追って運転法を説明すると次のようになる。起動指令と共に、水素製造装置11は水素製造を開始するので、水素製造量は増加する。この間、水素製造に要するポンプやブロアの運転は二次電池の放電によって賄うようにした。この期間一定の放電をすることで、二次電池容量に空きを確保でき、これに続くウオームアップ発電時に二次電池を負荷とした燃料電池運転をすることができる。
【0104】
タイマカウント時間T3の後、充分な量の改質ガスが所望のガス組成にて供給可能となったと判断し、燃料電池への水素供給を開始する。これと共に二次電池への充電を開始し、ウオームアップを始める。ウオームアップ時には、所定量の水素が燃料電池に供給され、二次電池を模擬的な負荷として発電がなされ、実際の負荷運転時と同様に残留水素を水素製造装置の燃焼器で燃焼させる。この状態で慣らし運転をしておけば、水素製造装置の立ちあがりの安定化に好ましいばかりでなく、負荷接続時に残留水素量が急激に変化することを回避できるので、燃焼器の燃焼状態安定化に好ましい。ウオームアップ運転は、所定のタイマカウント時間T4あるいは、二次電池が許容量上限値まで充電されたことをもって終了し、負荷接続運転に入るようにした。
【0105】
停止時には、燃料電池への水素供給を停止する前に、二次電池の調整運転期間を設けた。停止指令と共に、負荷切断した後、二次電池の調整運転に入る。調整運転では、二次電池を充電し、次回起動の際に補機動力を該二次電池により賄えるようにした。二次電池の調整運転は、所定のタイマカウント時間T5あるいは、二次電池が許容量上限値まで充電されたことをもって終了し、停止するようにした。
【0106】
停止時の二次電池充電運転は、停止毎に実施する代りに、所定の残容量以下となった場合のみ実施するようにしてもよい。あるいは、所定の条件が満たされた場合には通常とは異なる充放電を実施するようにしてもよい。一例として、二次電池の使用期間が所定時間に達した場合のみ、所定の充放電パターンを経て満充電させるようにできる。二次電池にリフレッシュ運転が必要な場合などにこれを適用するようにしてもよい。
【0107】
二次電池を連携した上記燃料電池発電システムの起動時、停止時のスケジュール運転によれば、起動時には所定の放電期間とそれに続くウオームアップ運転での充電期間を設ける。また、停止時には調整運転での所定の充電期間を設けることにより、燃料電池の発電と二次電池の充放電とを無駄なく連携させることができる。
【0108】
ウオームアップ運転時には実負荷に代る模擬負荷が必要になるが、二次電池が満充電状態では模擬負荷として使用することができない。上記実施例に係る燃料電池発電システムの起動時と停止時のスケジュール運転を組み合わせることによって、該模擬負荷としてウオームアップ運転時には常に二次電池への充電ができる。
【0109】
図9に、本発明第3の実施例に係る燃料電池発電システムの運転法を説明する。これまでに説明した運転法は、燃焼器系の情報に基づき電力変換系の制御電流を操作するものであった。本実施例では、上記本発明第1、第2の実施例に係る燃料電池発電システムにおいて、電力変換系の情報に基づき、燃焼器系の空気供給装置を操作する場合を説明する。
【0110】
制御のアルゴリズムを順番に説明する。ステップ1では、燃料電池発電システムの運転モードを確認する。該運転モードの確認により、燃料電池21へ供給される単位時間あたりの水素量を特定できる。運転モードの確認の代わりに、単位時間あたりの供給水素量の設定値を直接確認するようにしてもよい。ステップ2では、電力変換系の制御電流量を確認する。
【0111】
制御電流量が分かると、燃料電池21が消費する単位時間あたりの水素量がわかる。ここで、制御電流量は、図3で説明した所定の範囲において操作させるものとした。ステップ3では、上記ステップ1、ステップ2の結果から単位時間あたりの残留水素量を算定する。ステップ4では、燃焼器51における燃焼のために、該残留水素量に見合う供給酸素量を求め、供給すべき空気量を算定する。
【0112】
ここで、図9の点線枠Aで示した補正ステップを説明する。ステップ5では、上記ステップ1とステップ2で確認した運転モードと単位時間あたりの消費水素量とから、残留水素を含むアノードオフガスが燃料電池を出てから燃焼器に到達するまでの遅れ時間を求めるようにした。該遅れ時間は、運転モードと消費水素量(制御電流量)との情報に基づき、記憶装置82から読み出すようにできる。運転モードと消費水素量(制御電流量)との函数として記憶しておいてもよい。あるいは、所定の演算をその都度実施するようにしてもよい。ステップ6では、上記遅れ時間に従って待機時間を設ける。
【0113】
続いて、ステップ7では、空気供給装置71の供給空気量を上記ステップ4で設定した値に変更するようにした。以上の制御は、電力変換系と燃焼器系とを結びつける制御手段81において実施するようにした。上記運転法は、所定の時間間隔で繰り返してもよいし、あるいはスケジュール運転で指定した所定のタイミングにおいて実施するようにしてもよい。また、その他の運転法と組み合わせてもよい。
【0114】
上記本発明第3の実施例に係る燃料電池発電システムの運転法によれば、電力変換手段の制御電流量と運転状態の情報とに基づき残留水素量を算定して、燃焼器への供給空気量を設定できるので、水素製造装置の燃焼器における空燃比制御が確実且つ容易である。
【0115】
また、上記補正ステップAによれば、残留水素が燃焼器に到達するまでの遅れ時間を考慮して、空気供給装置の供給空気量を変えることできるので、配管長やガス流速の違いによるオフガス供給の遅れを補正して、空燃比制御ができる。
【0116】
図10に、本発明第4の実施例として、本発明に係る水素製造装置を用いた燃料電池発電システムを各家庭に配置する定置型分散電源に適用した場合の例を示す。200は、定置型分散電源であり、本発明に係る水素製造装置の燃焼器と電力変換手段と両者を結びつける制御手段とを構成要素の少なくとも一部として含む燃料電池給湯発電システムである。
【0117】
水素製造装置は、外部から供給されるガスと空気、それに燃料電池発電の結果生じる純水や水道水から作られるイオン交換水を原料として水素を製造する。原料であるガスには、メタンを主成分とする天然ガスや都市ガスを使用できる。プロパンガスやその他のガスをボンベ等により供給するようにしてもよい。
【0118】
都市ガスを使用する場合には、付臭剤に含まれる硫黄成分が触媒を被毒することが知られているので、脱硫器を通して触媒反応部へ供給する。ここで、該発電システムに燃料電池を使用する場合の特長は、発電だけでなく、燃料電池排熱によって得られる温水を提供できる点にある。
【0119】
固体高分子形燃焼電池の場合、発電時の温度は70−80℃程度であり、冷却水などを利用して電池内部の温度を調節する。そこで、電池の内部抵抗などで生じる余分な熱を冷却により回収することで温水が得られる。但し、外部から供給する水を燃料電池の冷却に直接使用すると、該水に含まれる不純物によって燃料電池に悪影響を及ぼす場合があるので、そうした場合には熱交換機能を有する装置を用いて、外部から供給する水を間接的に昇温すればよい。
【0120】
昇温された温水は、例えば50−60℃くらいになるので、該温水を貯湯槽に蓄えて使用すれば、台所や風呂あるいは手洗いで使用する温水を給湯器に代って提供できる。加えて、発電により得られた電力は、外部からの供給電力と併せて家庭内の様々な電化製品の駆動に使用できるので、外部からの供給電力量を削減できる。もちろん、充分な発電容量があれば、外部からの供給電力なしに電力を賄うことができる。
【0121】
外部から供給する水の温度が低くて昇温が不充分な場合、あるいは上記貯湯槽内の水温が低下する場合には、別途加熱装置を設けてもよい。該加熱装置は、外部から供給される原料ガスの一部を燃焼させて水を昇温するようにできる。加熱量や温水の流速を調節するフィードバック制御により、供給水温を所定温度に昇温維持できる。市販のガス追い焚き器と組み合せてシステムを構成してもよい。
【0122】
第4の実施例に係る燃料電池発電システムは、水素製造装置の燃焼器と電力変換手段と両者を結びつける制御手段とを組み合わせ、電力変換手段による制御電流量を操作変数として燃焼器の燃焼制御をするようにした。そのため、速やかな燃焼制御ができる。家庭用の燃料電池システムでは頻繁な負荷変動が伴うので燃焼器の燃焼状態が乱されやすいが、本発明に係わる燃料電池発電システムによれば、速やかな燃焼制御によって安定なシステム動作ができる。その結果、信頼性が高くしかも使いやすい燃料電池発電システムを提供できる。
【0123】
本発明に係わる別の実施例として、電力変換手段による制御電流量と運転状態の情報とに基づき、燃焼器への供給空気量を制御するやり方で燃焼制御をする場合も同じ効果がある。これらの運転法を組み合わせれば、効果は更に大きい。
【0124】
【発明の効果】
本発明に係る燃料電池発電システムによれば、燃料電池システムの主たる反応系内のバランス、特に水素製造装置で用いられる種々の触媒反応のバランスを崩さないで速やかな燃焼器制御ができる。また、運転状態毎に電流操作範囲を切り替えることにより燃料電池への負担を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明第1の実施例に係わる燃料電池発電システムの説明図。
【図2】本発明に係わる制御手段の説明図。
【図3】本発明に係わる制御電流の設定に関する説明図。
【図4】本発明に係わる電力変換手段と空気供給装置とを組み合わせた運転法の一例。
【図5】本発明に係わる運転法に関する別の例。
【図6】本発明に係わる運転法に関する更に別の例。
【図7】本発明第2の実施例に係わる燃料電池発電システムの説明図。
【図8】本発明に係わる燃料電池発電システムの起動時、停止時のスケジュール運転の一例。
【図9】本発明第3の実施例に係わる燃料電池発電システムの運転法に関する説明図。
【図10】本発明第4の実施例に係わる家庭用定置型分散電源の説明図。
【符号の説明】
11…水素製造装置、21…燃料電池、31…電力変換手段、41…充放電可能な電力貯蔵装置(二次電池)、51…水素製造装置の燃焼器、61…燃焼器の燃焼状態検出装置、71…燃焼器への空気供給装置、81…電力変換系と燃焼器系とを結ぶ制御手段、82…制御手段の信号処理部、83…制御手段の記憶装置、84…制御手段のタイムカウント装置、91…制御ユニットの前処理装置、92…制御ユニットの入力ポート、93…制御ユニットの信号処理部、94…ROM、95…RAM、96…制御ユニットの出力ポート、97…制御ユニットの後処理装置、101…燃焼状態検出信号、102…制御電流量を決める指令、103…空気供給量を決める指令、104…電力変換系の制御電流量に係る情報、105…制御手段への指令あるいは情報、106…運転モード指令、107…制御ユニットへのアナログ系入力信号、108…制御ユニットへのデジタル系入力信号、109…制御ユニットからのアナログ系出力信号、110…制御ユニットからのデジタル系出力信号、200…家庭用燃料電池給湯発電システム制御。

Claims (14)

  1. 燃料電池と、該燃料電池から電流を制御して取り出す電力変換手段と、該燃料電池のアノード排ガスを燃焼させる燃焼器を備えた水素製造装置と、該燃焼器に空気を供給する空気供給装置とを備えた燃料電池発電システムであって、上記燃焼器の燃焼状態を検出する燃焼状態検出装置を備え、該燃焼状態検出装置の検出信号を参照して、上記電力変換手段による制御電流量を、所定範囲において変える制御手段を備え、該所定範囲を、システムの運転状態によって切り替えるようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  2. 請求項1において、上記所定範囲に係る上限値と下限値とを、システムの起動、停止、少なくとも一つの負荷運転および該負荷運転の開始指令から所定のタイマカウント時間の範囲で定義される過渡状態のそれぞれと関連付けて、上記制御手段を含む制御ユニット内に設けた記憶装置に予め記憶しておき、該記憶装置から、上記過渡状態毎に、上記所定範囲に係る上限値と下限値とを呼び出し、これによって上記所定範囲を切り替えるようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  3. 燃料電池と、該燃料電池から電流を制御して取り出す電力変換手段と、該燃料電池のアノード排ガスを燃焼させる燃焼器を備えた水素製造装置と、該燃焼器に空気を供給する空気供給装置とを備えた燃料電池発電システムであって、上記燃焼器の燃焼状態を検出する燃焼状態検出装置を備え、該燃焼状態検出装置の検出信号を参照して、燃焼状態が失火に至るものであれば、少なくとも上記電力変換手段による制御電流量を所定範囲において減少させ、また前記燃焼状態が過加熱状態に至るものであれば、少なくとも前記空気供給装置による供給空気量を所定範囲において増加させるようにする制御手段を備えたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  4. 燃料電池と、該燃料電池から電流を制御して取り出す電力変換手段と、該燃料電池のアノード排ガスを燃焼させる燃焼器を備えた水素製造装置と、該燃焼器に空気を供給する空気供給装置とを備えた燃料電池発電システムであって、上記電力変換手段の制御電流量と、上記水素製造装置の目標水素製造量とから、アノード排ガス中の残留水素量を算定する信号処理装置を備え、該信号処理装置による処理信号を参照して、上記空気供給装置の供給空気量を制御する制御手段を備えたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  5. 請求項4において、上記アノード排ガスが、上記燃料電池を出て上記燃焼器へ到達するまでの遅れ時間を、システムの運転状態に関連付けて、上記制御手段を含む制御ユニット内に設けた記憶装置に予め記憶しておき、該記憶装置から、上記運転状態毎に遅れ時間を呼び出し、該遅れ時間を参照して、上記空気供給装置が供給空気量を変更開始するまでの間に待機時間を設けるようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  6. 請求項1から3のいずれかにおいて、上記燃焼状態検出装置は、熱電対などの温度検出装置であるか、または燃焼に伴うイオン電流を検出するイオン電流検出装置であることを特徴とする燃料電池発電システム。
  7. 請求項1から3のいずれかにおいて、上記制御電流量に応じた出力電力量と、負荷側が要求する要求電力量との過不足を補整する電力貯蔵装置を備えたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  8. 請求項1から5のいずれかにおいて、上記制御手段は、1チップマイコンを具備する少なくとも一つの電子制御ユニットで構成されることを特徴とする燃料電池発電システム。
  9. 燃料電池と、該燃料電池から電流を制御して取り出す電力変換手段と、該燃料電池のアノード排ガスを燃焼させる燃焼器を備えた水素製造装置と、該燃焼器に空気を供給する空気供給装置とを備えた燃料電池発電システムであって、該システムの起動、停止、負荷切り替えの各開始指令を基準に予め定めたタイマカウント時間の間に限り、上記電力変換手段による制御電流量、あるいは上記空気供給装置による供給空気量の少なくとも一方を、他のフィードバック制御に優先して、所定のシーケンスで変えるように制御を切り替えるようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  10. 請求項9に記載の燃料電池発電システムであって、上記制御電流量に応じた出力電力量と、負荷側が要求する要求電力量との過不足を補整する電力貯蔵装置を備え、該システムの起動時に、前記電力貯蔵装置で補機電源の少なくとも一部を供給し、それに続く電力貯蔵装置の再充電運転を経て負荷運転に入るようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  11. 請求項9に記載の燃料電池発電システムであって、上記制御電流量に応じた出力電力量と、負荷側が要求する要求電力量との過不足を補整する電力貯蔵装置を備え、該システムの停止過程において、所定の条件が満たされる場合には、前記電力貯蔵装置の充電運転を経てシステムを停止するようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  12. 燃料電池と、該燃料電池から電流を制御して取り出す電力変換手段と、該燃料電池のアノード排ガスを燃焼させる燃焼器を備えた水素製造装置と、該燃焼器に空気を供給する空気供給装置とを備えた燃料電池発電システムであって、製造水素量の少ない低負荷運転モードから製造水素量が多い高負荷運転モードへシステムの運転モードを切り替える際に、該運転モードの切り替え指令によって、まず、上記水素製造装置の水素製造量を高負荷運転モードの目標水素製造量に向けて増加を開始させ、続いて、上記電力変換手段の制御電流量を、低負荷モードの目標制御電流量I2から、所定値Imax3を上限値として増加させ、上記水素製造量と制御電流量の増加操作を所定時間T1の間実施すると共に、該所定時間T1の後に、上記制御電流量をImax3より大きいI4に増加させ、上記運転モードの切り替えを完了するようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  13. 燃料電池と、該燃料電池から電流を制御して取り出す電力変換手段と、該燃料電池のアノード排ガスを燃焼させる燃焼器を備えた水素製造装置と、該燃焼器に空気を供給する空気供給装置とを備えた燃料電池発電システムであって、製造水素量の多い高負荷運転モードから製造水素量が少ない低負荷運転モードへシステムの運転モードを切り替える際に、該運転モードの切り替え指令によって、まず、上記電力変換手段の制御電流量を、高負荷モードの目標制御電流量I4から、Imax5に減少させ、続いて、上記水素製造装置の水素製造量を低負荷運転モードの目標水素製造量に向けて減少を開始させ、続いて、上記電力変換手段の制御電流量を、所定値Imin5を下限値として減少させ、上記水素製造量と制御電流量の減少操作を所定時間T2の間実施すると共に、該所定時間T2の後に、上記制御電流量をImin5より大きいI2に増加させ、上記運転モードの切り替えを完了するようにしたことを特徴とする燃料電池発電システム。
  14. 請求項1から13のいずれかに記載の燃料電池発電システムを用いた家庭用燃料電池発電システム。
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