JP2011152080A - 生チョコレート様組成物及びその製造方法 - Google Patents

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雄毅 松居
Yasumasa Yamada
泰正 山田
Ichiro Yamada
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Abstract

【課題】水分含有量が8〜15重量%の範囲における水分活性が0.600未満であり、生チョコレートの様な風味と食感を有し、且つ1年規模での長期流通を行った場合でも風味及び食感を良好に維持することができる生チョコレート様組成物、及び該生チョコレート様組成物を効率よく製造する方法、前記の特性に加えて、保型性にも優れた生チョコレート様組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】二糖類以下の糖質を55〜65重量%、無脂乳固形分を2.5重量%以上、ハードバターを10〜25重量%含有し、前記二糖類以下の糖質のうちソルビトールを10〜25重量%含有し、また水分値を8〜15重量%にすることによって、風味・食感に優れた生チョコレート様組成物を得ることができる。また、BOBを0.1〜2.0重量%含有することによって、保型性に優れた前記生チョコレート様組成物を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、長期流通が可能な生チョコレート様の食感を有する組成物及びその製造方法に関する。
チョコレートと水系原料を含むチョコレート含有菓子として、ガナッシュが知られている。ガナッシュは、チョコレート、並びにクリーム、洋酒等の風味成分、及び/又は水等を加え、融解、混合して作られる洋菓子である。このガナッシュは、例えば球形に成型し、表面をココアパウダー等で被覆したトリュフ等の菓子のセンターに利用されている。ガナッシュを利用したこれらの菓子は、食べたときにチョコレートとクリーム又は洋酒等の上品で芳醇な風味が口中に広がる、口溶けのよい高級菓子として愛用されている。
しかし、ガナッシュは水分を多く含む生菓子であり、水分活性が0.800程度あるため、あまり日持ちがしないという欠点がある。水分活性を0.700未満に抑えれば、一般細菌、食中毒菌、酵母菌、カビ、好塩性細菌などの増殖を防止することは可能であるが、耐乾性カビや耐浸透圧性酵母、Aspergills ecbinulatus、Monascus bisporusといった種類のカビの増殖を防止するためには、水分活性を0.600未満に抑える必要がある(非特許文献1)。このため、ガナッシュのように水分を多く含む生菓子の長期流通に向けて保存性を高めるために水分活性を下げる提案がこれまでに数多くなされてきた。
例えばチョコレートに、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトールという特定の糖アルコールを含有させたものが提案されている(特許文献1)。これは、最終水分含量が2〜15重量%になるように前記糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上の混合物である糖アルコールを、チョコレート組成物中に1質量%以上10質量%未満含有させるものであるが、特定の糖アルコールの中にソルビトールは含まれていない。
また、チョコレート生地を50重量%以上使用し、水性成分とHLB値7.0以上の乳化剤を使用し、水分10〜20重量%、全油脂分を15〜25重量%になるように調製した含水チョコレート類の製造方法が提案されている(特許文献2)。ここでは、チョコレート生地を50重量%以上使用し、水性成分とHLB値7.0以上の乳化剤を使用し、全油脂分を15〜25重量%になるように調製することで、長期常温流通を可能にしている。しかし、水分活性値は0.75〜0.70付近であり、1年以上の流通性が十分にあるとは言い難い。また、転化糖、水飴、果糖、ブドウ糖、ショ糖、液糖及び蜂蜜からなる群から選ばれた1種又は2種以上を含有し、糖度が60以上である水相と、チョコレート生地とからなる水中油型乳化チョコレート類がある(特許文献3)。ここでは水相において特定の糖類を用い、さらに糖度を60以上に高めることで長期保存性を高めている。そして、15℃で4ヶ月保存しても口どけ、風味が良好であるとしているが、1年規模での長期流通性については不明である。
その他にもガナッシュではないが水中油型乳化物の一種として、油脂、蛋白質、乳化剤、糖及び/又は糖アルコール、及び水を含む起泡性水中油型乳化物があるが(特許文献4)、これは粘度上昇を抑え、保型性・離水耐性・組織の安定性に優れたホイップドクリームであり、主とする糖質はガナッシュと類似するものの、ソルビトールの含有量が糖及び/又は糖アルコールの全量に対して10重量%未満である。また、アミノ酸と糖質によって保存性を高めた水中油型乳化物があるが(特許文献5)、保存性としては5〜10℃の条件下で3ヶ月間程度であり1年規模での長期流通には不十分である。
また、ラウリン系油脂をベースとしたカカオバターを含む水中油型乳化物が提案されている(特許文献6)。しかし、ソルビトール等の二糖類以下の糖質及びその含有量についての記載はない。また、1年規模での長期流通性については具体的に記載がない。
更には、含水チョコレート中の全水分量に対する全油分量(水:油)が重量比で1:0.8〜3に調製した水中油型含水チョコレートがあるが(特許文献7)、全糖類固形分の50重量%以上がショ糖であり、ソルビトールや無脂乳固形分の含有量、製造方法に関しては何ら明記されていない。
また、チョコレート生地に水分活性が0.40〜0.64の範囲の高水分含有素材を添加することによって、チョコレートの水分活性を0.40〜0.64に減少させる方法も提案されているが(特許文献8)、これはチョコレート自体に水分を含有させるものではないためガナッシュのような生チョコレートとは相違する。また、使用されるチョコレート生地中では、糖類の量が0〜50質量%である。
また、製造方法としては、含水チョコレートを低水分の可食性粉体型に流し込み、可食性粉体中で冷却及びエージングを行うことによって可食性粉体に水分を移行させることにより、含水チョコレートの水分含有量を減少させ水分活性を下げる製造方法が提案されている(特許文献9)。この方法では水分活性を0.700以下に下げることも可能であるが、含水チョコレート自体の水分量が減少するため食感が固くなり好ましくなく、水分を移行させるのにも長時間を要するという欠点がある。
他にも、チョコレート生地を0.22M TCA可溶率20%以上の蛋白加水分解物を用いて水分含量25重量%以上の安定したO/W型乳化物をまず調製した後、生地の水分を8〜16重量%まで水分蒸発させることによって水分活性を0.700以下に下げる製造方法も提案されているが(特許文献10)、水分蒸発に時間を要する他、加熱処理を行うためチョコレートの風味が損なわれる可能性があり好ましくない。
このように、嗜好性の高い生チョコレートを日持ちさせる提案は数多くなされてきたが、1年規模での長期の流通を成功させるものについては未だ至っていない。また、製造方法によっては水分活性を0.700未満に抑えることも可能であるが、食感が悪くなったり、製造に長時間を要したりする等の問題がある。
特許第4331013号公報 特開2001−275570号公報 特開2001−149014号公報 特許第3429635号公報 特開昭58−031951号公報 特開平05−030911号公報 特開2002−119213号公報 特開2008−263853号公報 特許第3273882号公報 特許第3692938号公報
食品包装便覧 日本包装技術協会
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、水分含有量が8〜15重量%の範囲における水分活性が0.600未満であり、生チョコレートの様な風味と食感を有し、且つ1年規模での長期流通を行った場合でも風味及び食感を良好に維持することができる生チョコレート様組成物、及び該生チョコレート様組成物を効率よく製造する方法を提供することにある。また、本発明は、前記の特性に加えて、保型性にも優れた生チョコレート様組成物及びその製造方法を提供することにある。
なお、1年規模での長期流通とは、常温、常湿の条件下において、生チョコレート様組成物を1年間保存することをいう。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、二糖類以下の糖質、無脂乳固形分及びハードバターの量に着目し、さらに前記二糖類以下の糖質のうちソルビトールの量を調整することによって、得られる組成物が、水分値が8〜15重量%の範囲において水分活性が0.600未満に抑えられ、且つ生チョコレートの様な風味と食感を有することを発見し、本発明を完成するに至った。更に、前記組成物にBOBを0.1〜2.0重量%含有することによって、保型性が向上することを発見した。また、前記の組成物を製造するにあたり、固形分含有量を77.5重量%以上に濃縮した水相成分を、油相成分と混合乳化することによって前記特性を有する生チョコレート様組成物が効率よく得られることを見いだした。
すなわち、本発明は、二糖類以下の糖質を55〜65重量%、無脂乳固形分を2.5重量%以上、及びハードバターを10〜25重量%含有し、前記二糖類以下の糖質としてソルビトールを10〜25重量%含有することを特徴とする水分値が8〜15重量%生チョコレート様組成物に関する。
また、本発明は、BOBを0.1〜2.0重量%含有することを特徴とする前記生チョコレート様組成物に関する。
更に、本発明は二糖類以下の糖質と無脂乳固形分を含有する水相成分を、固形分含有量が77.5重量%以上になるまで加熱して煮詰める工程、
前記水相成分とハードバターを含む油相成分とを水分値が8〜15重量%になるように水中油型に混合乳化する工程を有することを特徴とする、前記生チョコレート様組成物の製造方法に関する。
本発明により、1年規模での長期流通が可能であり、且つ口溶けのよい高級菓子として愛用されている生チョコレートのような風味と食感を持つ生チョコレート様組成物を提供することができる。また、本発明の生チョコレート様組成物は、所望により保型性を高めることができるため、1年規模での長期流通をより可能にすることができる。
本発明によって得られる生チョコレート様組成物は、二糖類以下の糖質を55〜65重量%、無脂乳固形分を2.5重量%以上、及びハードバターを10〜25重量%含有し、前記二糖類以下の糖質としてソルビトールを10〜25重量%含有し、水分値が8〜15重量%であることが特徴である。
本発明に使用できる糖質としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、異性化糖、オリゴ糖、これらの二糖類以下の糖類を主成分として含有する砂糖、水飴類等、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール等の糖アルコール等の二糖類以下の糖質が挙げられる。本発明の生チョコレート様組成物では、前記糖質のうち二糖類以下の糖質の含有量は55〜65重量%であり、前記二糖類以下の糖質としてソルビトールの含有量が10〜25重量%であることが大きな特徴の一つである。二糖類以下の糖質の含有量が55重量%未満では、得られる生チョコレート様組成物の水分活性が高くなり1年規模での長期流通が困難になる。一方、二糖類以下の糖質の含有量が65重量%を越えると、得られる生チョコレート様組成物の水分活性は十分に低いものの非常に甘くなり風味として好ましくない。ソルビトールの含有量も同様な理由が当てはまる。また、二糖類以下の糖質の含有量は58〜63重量%の範囲が、ソルビトールの含有量は13〜20重量%の範囲が好ましい。また、ソルビトール以外の糖質については、2種以上組み合わせてもよく、特に限定はないが、例えば、より風味を向上させるために、砂糖を20重量%以上、トレハロースを少なくともソルビトールの5重量%含有させると良い。但し、6ヶ月規模の流通を目指し、目的とする水分活性を0.700以下とするならば、二糖類以下の糖質の含有量は40〜65重量%、ソルビトールの含有量は5〜20重量%の範囲でよい。
なお、本発明の生チョコレート様組成物には、前記二糖類以下の糖質に加えて、食品に添加できる三糖類、四糖類、オリゴ糖、多糖類等の糖類も含有することができる。これらの食品に添加できる糖類の含有量としては、生チョコレート様組成物の物性、風味、及び食感に悪影響を与えなければよく、特に限定はない。
また、本発明における無脂乳固形分とは、乳製品の固形分のうち乳脂肪を除いた成分を示し、その含有量は生チョコレート様組成物中において2.5重量%以上である。無脂乳固形分の含有量が2.5重量%未満の場合、得られる生チョコレート様組成物において十分な水分活性減少効果が発揮されない。但し、6ヶ月規模の流通を目指し、目的とする水分活性を0.700以下とするならば、無脂乳固形分の含有量は0.5重量%以上であればよい。無脂乳固形分を含むものとして、生クリーム、牛乳、濃縮乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、調整粉乳、練乳、チーズクリーム、ホイップ用クリーム、コーヒー用クリーム等が挙げられるが、風味の点から生クリームを用いるのが望ましい。また、生クリームを用いる場合は乳脂肪分の含有量が12重量%以下になるように調製するのが風味、食感の点から好ましい。脱脂粉乳、全脂粉乳、あるいは調整粉乳を用いる場合はこれらの粉乳をメイラード処理したものであっても良い。
また、本発明におけるハードバターとは、ココアバターとココアバター代用脂の総称を示し、その含有量は生チョコレート様組成物中において10〜25重量%である。ハードバターの含有量が10重量%未満では、液状の物性に近くなり生チョコレートの様な食感が得られない。一方、ハードバターの含有量が25重量%を超えると、食感が固くなり同じく生チョコレートのような食感が得られない。前記ハードバターの含有量は、12〜22重量%が好ましい。また、前記ココアバター代用脂とは、チョコレートの物性改良や製造コストの節約を目的として、ココアバターの一部又は全部に代えて用いられるもので、主にCBEと称される1、3位飽和、2位不飽和のトリグリセリド型油脂に富むものと、CBRと称されるラウリン系もしくは高エライジン酸タイプのものがある。ココアバター代用脂の油脂原料としては、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サンフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂を例示することができ、上記油脂類若しくは2種以上の混合した油、又はそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を用いることができる。
また、本発明の生チョコレート様組成物の水分値は8〜15重量%である。水分値が8重量%未満の場合、水中油型に乳化するのが困難であり、且つ食感が非常に固くなる。一方、水分値が15重量%を超えると、得られる生チョコレート様組成物の水分活性が高くなるため日持ちがせず、また流動性が高くなり生チョコレートの様な食感が得られなくなる。前記水分値は、好ましくは10〜13重量%である。
また、本発明の生チョコレート様組成物は、BOBを0.1〜2.0重量%含有することが好ましい。
BOBとは、1,3−ジベヘノイル−2−オレオイル−sn−グリセロールのことを言い、1,3−ジ飽和アシル−2−不飽和アシル−グリセリンの一種である。BOBの含有量は生チョコレート様組成物中において0.1〜2.0重量%が好ましく、より好ましい範囲は0.5〜1.0重量%である。BOBの含有量が0.1重量%未満の場合、得られる生チョコレート様組成物の特に水分値が高い場合において保型性が悪くなり、一方、BOBの含有量が2.0重量%を超えると、得られる生チョコレート様組成物の食感が固くなり好ましくない。
本発明の生チョコレート様組成物には、必要により、乳化剤、卵、安定剤、呈味成分、洋酒、保存料、塩、酸味料、抗菌剤、着色料、フレーバー、酸化防止剤等を加えることができる。
乳化剤としては、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等を必要により用いることができる。乳化剤は生チョコレート様組成物中に0.01重量%以上で風味に影響を与えない範囲内で使用するのが好ましい。また、卵としては、全卵、卵黄、卵白、酵素処理卵等を用いることができる。なお、但し、これらを加えることによって、得られる生チョコレート様組成物の水分活性が減少することはない。
呈味成分としては、果汁、果肉、ジャム、果汁パウダー、カカオパウダー、コーヒーパウダー、アーモンドペースト、ピーナッツペースト等を必要により用いる。呈味成分を使用する場合は生チョコレート様組成物中に、呈味成分を好ましくは0.1〜25重量%、さらに好ましくは1〜20重量%添加する。但し、前記呈味成分に二糖類以下の糖質が含有される場合には、前記二糖類以下の糖質の含有量としてカウントするため、最終的な含有量が規定範囲内になるように、二糖類以下の糖質及び呈味成分の量を調整する必要がある。
洋酒としては、ラム酒及びブランデー等が挙げられる。洋酒を使用する場合は、後述の水相成分中に0.1〜5重量%添加するのが好ましい。
塩、酸味料としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。風味の調整のために塩、酸味料を添加する場合、本発明の生チョコレート様組成物中1重量%以下が好ましい。また、塩は水分活性を下げる効果があるのは既知であるが、前記添加量の範囲では大きな効果は期待できず、酸味料はpHを低くすることによって抗菌性を向上することができる。ただし、pHを低くしすぎることは風味の点であまり好ましくない。本発明の生チョコレート様組成物のpHは6〜7の範囲が好ましい。
抗菌剤としては、甘草抽出物、緑茶抽出物、ササエキス、タンニン、リゾチーム等が挙げられ、0.01〜0.5重量%程度で風味に影響が生じない範囲で使用するのが好ましい。
次に本発明の生チョコレート様組成物に関わる製造方法であるが、まず、主成分として二糖類以下の糖質と無脂乳固形分を含有する水相成分を、固形分含有量が77.5重量%以上になるまで加熱して煮詰める。前記水相成分は、二糖類以下の糖質、無脂乳質固形分等を水に溶解したものである。水相成分の固形分含有量が77.5重量%未満の場合、水分活性が0.600を超える可能性が高くなる。また、固形分含有量のより好ましい範囲は80重量%以上である。但し、6ヶ月規模の流通を目指し、目的とする水分活性を0.700以下とするならば、水相成分の固形分含有量は70重量%以上であればよい。
前記水相成分を加熱して煮詰める濃縮方法は、常圧下での加熱でも減圧下での加熱でも特に限定されない。また、所望の風味となるように加熱条件を調整してもよい。例えば、キャラメル風味にしたい場合は、糖質として砂糖を使用し、その砂糖をカラメル化させた後に水分を加え固形分含有量を調節すればよい。なお、二糖類以下の糖質と無脂乳固形分はその全量を水相成分として使用してもよいが、その一部を後述のチョコレート生地に含有させて油相成分として使用してもよい。
そして、前記水相成分と、ハードバターを含む油相成分とを水分値が8〜15重量%になるように水中油型に混合乳化する。また、前記油相成分としては、ハードバター、チョコレート生地及びカカオマスから選ばれる1種又は2種以上との混合物である。必要であればパーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ヒマワリ油、サンフラワー油等の各種植物性油脂、牛脂、豚脂、魚脂、乳脂等の各種動物性油脂を添加することができる。但し、混合後ハードバターの含有量が10〜25重量%の範囲になるように前記油相成分の量を調整する必要があり、油脂全体の合計含有量は35重量%以下であることが望ましい。
また、前記水相成分と油相成分を混合するときの温度は25〜55℃の範囲とすることが好ましい。従来では水分活性を下げるための手法として、高温で加熱することによって水分を蒸発させる方法が行われている。しかし、このように高温で加熱すると、チョコレートが焦げたり、加熱によりチョコレートの風味が消失したりする危険性があり、効率の点で課題がある。
これに対して本発明では、前記のように特定の糖質と無脂乳固形分に着目し、その含有量を調整すること、および水相成分の固形分含有量を調整することで、25〜55℃という前記課題を避けられる温度範囲で、水分活性を0.600未満に抑えられることが可能となる。また、混合時のより好ましい温度は、35〜45℃の範囲である。以上のように、25〜55℃と比較的低い温度範囲で調製することが可能であるため、より高温に加熱する従来法に比べて、効率のよい製造が可能であるといえる。
前記チョコレート生地は、スイートチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート等、カカオマス及び/又はココアと砂糖等の糖質、粉乳、油脂等を使用し、これらを常法通りロール掛けし、所望によりコンチングしたチョコレート生地であればよく、例えばカカオマス若しくはカカオパウダーを使用した通常のダークチョコレート類、あるいは乳固形分(粉乳)や糖質(粉糖)を主成分として使用したホワイトチョコレート等が例示できる。また、前記油相成分にチョコレート生地を含む場合、混合後に二糖類以下の糖質が規定の範囲の含有量になるように調製すればよい。
更に必要により、卵、乳化剤、安定剤、呈味成分、洋酒、保存料、塩、酸味料、着色料、フレーバー、酸化防止剤等の任意成分を加える場合は、前記水相成分に含有させるか、あるいは水相成分と油相成分とを混合乳化後に添加する。但し、任意成分が油性の場合は、前記油相成分に添加してもかまわない。
前記水相成分と油相成分を水中油型に混合乳化した後、必要であればBOBを添加して攪拌混合し、混合物を所望の型で成型し、固化することで生チョコレート様組成物を得ることができる。BOBを添加するときの温度は30〜37℃の範囲が好ましく、32〜35℃の範囲がより好ましい。BOBをこのタイミングで混合することで、BOBが結晶核として残存するため、保型性を向上させる効果が発揮される。
また、混合乳化物は、ホイッパー等でエアレーションし、含気させることも可能である。
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の数字は重量部、「%」は重量%を意味する。また、水分活性の測定にはnovasina社の水分活性恒温測定装置「LabMASTER−aw BASIC」(商品名)を用いた。
(チョコレート生地1〜4の作製)
表1に示す配合に従い、ロール掛け及びコンチングを行いチョコレート生地1〜4を得た。
Figure 2011152080
(実施例1〜9及び比較例1〜12))
表2に示す配合に従い水相成分Aを調製した後、予め40℃の湯煎で溶かしておいた表2に示す配合の油相成分Bと前記水相成分Aとを表3に示す割合で40℃付近で混合乳化した。その後温度を30〜37℃まで下げた後に表3に記載した量のBOBを加え、実施例及び比較例の生チョコレート様組成物を得た。また、実施例及び比較例の各成分含有量は表4に示した。
Figure 2011152080
Figure 2011152080
Figure 2011152080
次に、実施例1〜9及び比較例1〜12で得られた生チョコレート様組成物について風味、食感、保型性に対する評価、及び水分活性測定の結果を表5に示した。
Figure 2011152080
表5に示す結果より、実施例1〜9で得られた生チョコレート様組成物は、いずれも風味、食感、及び保型性ともに良く、また水分活性も0.600未満であった。これらの生チョコレート様組成物を、虐待試験(温度37℃、湿度85%)に供したところ、常温、常湿下で1年間保存した場合に相当する期間が経過した後であっても、前記風味及び食感が良好に保たれていた。したがって、実施例1〜9で得られた生チョコレート様組成物は、いずれも1年規模での長期流通が可能なものであることがわかった。
一方、比較例1〜5、及び比較例10のように、ソルビトール、二糖類以下の糖質、無脂乳固形分の含有量、及び水相成分の固形分含有量が規定範囲外のものは風味が悪いか、あるいは水分活性が高くなる結果となった。また、比較例6、7のように、ハードバターの含有量が規定外のものは生チョコレートの様な食感が得られなかった。更に比較例8のように水分値が低い場合は、水中油型の乳化物が得られず、比較例9のように水分値が高い場合は、水分活性が非常に高く、また食感、保型性も悪いものであった。そして、比較例11のようにBOBを添加しないものは水分値が高い状態では保型性が悪く、比較例12のようにBOBの添加量が多い場合、食感が硬くなる結果となった。
また、比較例1、3、5、10で得られた生チョコレート様組成物は風味、食感及び保型性が比較的良好であったので、実施例1と同様の虐待試験に供したところ、常温、常湿下で1年間保存したことに相当する期間が経過後にはいずれの生チョコレート様組成物の表面にもカビが発生していたりしたことから、1年規模での長期流通は困難なものであることがわかった。
(比較例13〜26)
前記比較例以外にも様々な物質を添加し、水分活性が減少するかどうかの確認を行った。ベースとする配合としては比較例1の配合を用い、各物質を表6に示す割合で添加した。また、水分活性の結果も同時に表6に示した。
Figure 2011152080
表6に示す結果より、風味に影響を与えない範囲で各成分を添加した場合、水分活性の減少効果は得られない結果となった。また、比較例18のように含有量を多くすると水分活性が減少する物質はあるものの、風味が非常に悪くなった。

Claims (3)

  1. 二糖類以下の糖質を55〜65重量%、無脂乳固形分を2.5重量%以上、及びハードバターを10〜25重量%含有し、前記二糖類以下の糖質としてソルビトールを10〜25重量%含有することを特徴とする水分値が8〜15重量%である生チョコレート様組成物。
  2. BOBを0.1〜2.0重量%含有する請求項1に記載の生チョコレート様組成物。
  3. 水相成分を、固形分含有量が77.5重量%以上になるまで加熱して煮詰める工程、
    前記水相成分と油相成分とを、水分値が8〜15重量%になるように水中油型に混合乳化する工程を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の生チョコレート様組成物の製造方法。
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