JP5799544B2 - チョコレート - Google Patents

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Description

本発明は、未発酵のカカオ原料由来の無脂カカオ成分を含有するチョコレートに関する。
カカオ豆は、その独特な風味を活かしてチョコレートやココア等の原料として使用されている。カカオ豆の風味は、産地での発酵や乾燥及びその後の原料加工工程における焙煎等によって形成される。これらの工程で形成される風味や味質等の品質は、カカオ豆の品種、産地、生産者等によって異なることが知られている。一般的に低品位豆に分類されるカカオ豆を使用して製造されたチョコレートやココアは、食した場合に本来の好ましい味質とは異なる不快な収斂味や渋味(以下、単に収斂味等という)が感じられることが多く、製品としての品質が低いものにとどまってしまう。そのため、収斂味等を改良したチョコレートやその製造方法がこれまでにいくつか報告されている。
単純にチョコレートの風味を向上させたチョコレートとしては、例えば、磨砕工程後であって、砂糖等を混ぜ合わせる混合工程前のカカオマスにバニリンを添加し均一に混合したカカオマスに砂糖、ココアバター、レシチン等を混合したチョコレートが提案されているが(特許文献1)、この程度の処理では低品位豆の収斂味の除去は不可能である。
カカオ原料に対して何らかの処理工程を加え収斂味等を低減したチョコレートやその製造方法としては、カカオ豆又はカカオニブに約40重量%以上の濃度のエタノール液を添加し、これを密封容器中に封入し、加熱後開放し、ついで焙焼あるいは乾燥させてなるカカオ豆又はカカオニブを磨砕してカカオマスとし、これをコンチェにて処理し含有されているエタノール分をほぼ完全に揮散させて製造したチョコレート(特許文献2)、焙炒カカオマスに酸素ガスを吹き込んで酸素ガス泡を均一に分散させ、しかる後一定時間保持することにより得たカカオマスを使用して製造したチョコレート(特許文献3)、また、カカオ豆焙炒時にカカオ豆のpHを調整し、或いは、カカオ豆に還元糖等を添加してメイラード反応を促進させ、フレーバーに改良を施す方法(特許文献4)、アンモニアガスをカカオ豆に吸着させて焙炒する方法等(特許文献5)が挙げられる。しかしながら、これらのチョコレートや製造方法では低品位豆由来の不快な味である収斂味等を除去できるほどの効果はなく、十分好ましい味質が奏されるとはいえず、また製造工程の煩雑さ、及び製造コストが高くなる等の課題がある。
前記課題の解決を試みた提案として、カカオマス及びその加工品の味質を改良するにあたり、水分量が0.1〜3.0%の条件下でカカオマス又はカカオマス含有物にポリフェノールオキシダーゼを作用させることによって、不快な収斂味等を低減させたチョコレートがある(特許文献6)。しかしながら、前記特許文献6の実施例ではチョコレートを作製する際にいずれも粉乳を添加しているため、その影響により収斂味がかなり軽減されている。そのため、比較例1〜4の収斂味等の評価についても不快感がない結果となっており(表1参照)、根本的な解決には至っていない。また、特定の酵素による処理法は使用できるカカオ豆が限定されるため汎用性に乏しい。
他にもカカオマスに含まれるポリフェノール由来の収斂味等を軽減させる提案としては、ポリフェノールをポリフェノールのナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はカリウム塩にする方法(特許文献7)、大豆ホエー中の分子量800〜2000の非蛋白質成分を含有させる方法や(特許文献8)、その他にスクラロース、ステビア、アスパルテーム等の高甘味度甘味剤を添加したり、マルトヘキサオース及び/又はマルトヘプタオースを添加したりする方法がある(特許文献9、10)。これらの方法は、飲料等の水分を多く含有する食品での効果は確認されているが、チョコレートのような水分をほとんど含有しない食品についての効果は確認できていない。
このように、現状のところ、カカオ原料に対して何らかの処理を施したり、チョコレートに物質を添加したりする方法では低品位のカカオ原料由来の収斂味等をマスキングすることは不十分であり、特に専用の製造設備が必要なく、簡便に収斂味等をマスキングする方法は提案されていない。
特許第2670325号公報 特開平02−215347号公報 特開平03−015344号公報 特公昭53−031943号公報 特公昭62−025013号公報 特許第4505150号公報 特開2003−128664号公報 特開2004−073196号公報 特開平10−248501号公報 特開2008−061593号公報
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、低品位の未発酵カカオ豆由来の無脂カカオ成分を用いながら、通常のチョコレートの保存性を維持しつつ、未発酵カカオ豆由来の無脂カカオ成分に由来する不快な収斂味等を顕著に低減したチョコレートを提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果これまでに水分含有量が8〜15重量%という高水分条件にも関わらず、水分活性を0.600未満に抑え、1年規模での長期保存できる含水物質を開発している(特願2010−043350)。そして、前記目的を達成するために、驚くべきことに未発酵カカオ豆由来の無脂カカオ成分を含有するチョコレート生地をシェルチョコレートとして、センターに水分を8〜18重量%含有し、水分活性が0.600未満である含水物質を含有させることによって、前記課題を解決できることを発見し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、センターとして、水分を8〜18重量%含有し、水分活性が0.600未満である含水物質を含有し、シェルチョコレートが未発酵カカオ原料由来の無脂カカオ成分を含有するチョコレート生地であり、前記含水物質が、二糖類以下の糖質を40〜70重量%含有し、油脂を5〜25重量%含有する水中油型乳化物であるチョコレートに関する。
また、本発明は、前記含水物質が、二糖類以下の糖質として直鎖状多価アルコールを5〜25重量%含有し、油脂としてハードバターを5〜25重量%含有するチョコレートに関する。
また、本発明は、前記シェルチョコレートが未発酵カカオ原料由来の無脂カカオ成分を10〜22.5重量%含有するチョコレート生地であるチョコレートに関する。
また、本発明は、前記含水物質をセンターとして、20〜50重量%含有することチョコレートに関する。
本発明により、1年規模での長期流通が可能な含水物質をセンターとすることによって、通常のチョコレートの保存性を維持しつつ、低品位の未発酵カカオ豆由来の無脂カカオ成分を含有するチョコレートの不快な収斂味を簡便に除去した安価なチョコレートを提供することができる。
本発明のチョコレートは、センターとして、水分を8〜18重量%含有し、水分活性が0.600未満である含水物質を含有し、シェルチョコレートが未発酵カカオ原料由来の無脂カカオ成分を含有するチョコレート生地であることが特徴である。
本発明のチョコレートは、前記のように含水物質の表面をシェルチョコレートで被覆された構造を有するチョコレートである。
チョコレートの原料であるカカオ豆は、通常、産地で収穫後に発酵させ、乾燥させたあと、加工地に送られて焙焼等の加工が施される。これに対して、本発明でいう「未発酵カカオ原料」とは、前記のような発酵を施していないカカオ豆に、焙焼等の加工を施して得られるカカオ豆をいう。
本発明で「無脂カカオ成分」とは、前記未発酵カカオ原料に含まれる成分であって、脂質以外の成分を指し、チョコレートの風味の要因となる重要な成分である。
前記無脂カカオ成分の例としては、前記未発酵カカオ原料から得られるカカオマス、カカオパウダー等が挙げられる。脂質のみから成るココアバターは無脂カカオ成分には含まれない。
本発明で用いられるシェルチョコレートのチョコレート生地には、前記未発酵カカオ原料から得られる無脂カカオ成分が含有されている。このようなチョコレート生地は、チョコレート規格及び準チョコレート規格に該当する組成を有するものであり、前記未発酵カカオ原料から得られる無脂カカオ成分をカカオ原料として用いた以外は、一般的なチョコレート生地または準チョコレート生地と同様に、ココアバター、乳成分、乳化剤等の成分を混合して得られる生地であればよい。例えば、ビターチョコレート生地、スイートチョコレート生地、ミルクチョコレート生地等が挙げられ、前記未発酵カカオ原料から得られる無脂カカオ成分と砂糖等の糖質(粉糖)、乳固形分(粉乳)、油脂等を使用し、これらを常法通りロール掛けし、所望によりコンチングしたチョコレート生地であればよい。なお、前記チョコレート生地には、無脂カカオ成分を含有しないホワイトチョコレートは含まれない。
本発明では、前記シェルチョコレートが未発酵カカオ原料由来の無脂カカオ成分を10〜22.5重量%含有するチョコレート生地であることが特徴の一つである。通常、カカオマス、カカオパウダー等の無脂カカオ成分を含有するカカオ原料は、チョコレート生地を構成する原料の中で最も高価な原料であるが、低品位の未発酵カカオ原料の場合、カカオ原料の価格が粉乳等の乳原料に比べて安価であるため、製造コストを抑えることができるという利点がある。シェルチョコレート中の無脂カカオ成分の含有量が10重量%未満の場合、コストメリットがほとんど得られず、一方、無脂カカオ成分の含有量が22.5重量%を超えると、収斂味等が非常に強く、完全に除去するのは非常に困難である。
本発明のチョコレートでは、前記シェルチョコレートによりセンターである含水物質が被覆されている。
前記含水物質は、水分含有量が8〜18重量%であり、水分活性が0.600未満であることが特徴である。水分活性は保存性と密接に関連がある指標であり、0.600未満ではカビ、細菌等は増殖できない。一方、水分活性が0.600以上の場合、カビ、細菌の種類によっては増殖できるものが存在するため含水物質の保存性が悪くなる。また、水分含有量が8重量%未満では、口溶けが悪くなり、チョコレートの食感を損ない、一方、水分含有量が18重量%を超えるとセンターの水分活性を0.600未満に抑えることができない。より好ましい水分含有量の範囲は11〜15重量%である。
このような含水物質をセンターとして用いることで、得られたチョコレートを口中で噛んだ際に、センターの風味のリリースを早くすることができるために、前記シェルチョコレートの収斂味等を顕著に低減することが可能になる。
前記含水物質としては、二糖類以下の糖質を40〜70重量%含有し、油脂を5〜25重量%含有する水中油型乳化物であることが好ましい態様である。本発明に使用できる糖質としては、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の単糖類、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、異性化糖、オリゴ糖、これらの二糖類以下の糖類を主成分として含有する砂糖、水飴類等、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン等の糖アルコール等の二糖類以下の糖質、及び食品に添加できる三糖類、四糖類、オリゴ糖、多糖類等の糖類が挙げられる。前記糖質のうち二糖類以下の糖質の含有量が前記含水物質中40〜70重量%であることが好ましい。二糖類以下の糖質の含有量が40重量%未満では、得られる含水物質の水分活性が高くなり1年規模での長期流通が困難になる。一方、二糖類以下の糖質の含有量が70重量%を越えると、得られる含水物質の水分活性は十分に低いものの非常に甘くなり風味として好ましくない。
また、二糖類以下の糖質の含有量は58〜65重量%であり、かつ、二糖類以下の糖質として糖アルコールを10〜40重量%含有するのが好ましい。
また、二糖類以下の糖質をカラメル化する工程を有してもよい。当該糖質をカラメル化することによって水分活性が減少し、二糖類以下の糖質の含有量を低く抑えることができる。
更に、前記含水物質は、二糖類以下の糖質として直鎖状多価アルコールを含有することで二糖類以下の糖質の含有量を比較的小さくすることができ、甘味を抑制できるという利点がある。
前記直鎖状多価アルコールとは、環状構造をとらず、且つ水酸基を2つ以上持つ糖アルコールのことを示し、例としてソルビトール、キシリトール、マンニトール、グリセリン、エリスリトール等が挙げられる。直鎖状多価アルコールは水分活性を下げる効果が非常に高いため、糖質の含有量を比較的小さく抑えることが可能であり、甘味及び風味の面で好ましい。直鎖状多価アルコールの含有量は前記含水物質中10〜15重量%であることが好ましく、該直鎖状多価アルコールとしてソルビトール及びキシリトールを併用することが特に好ましい。
また、前記含水物質に使用される油脂としては、例えば、発酵したカカオ豆から得られるカカオ脂、ハードバターが挙げられる。。また、前記の油脂を含有したチョコレート生地も油脂の代替品として使用することができる。
中でも、前記含水物質は、油脂としてハードバターを含有することで生チョコレート様の食感をより強く出すことができ、得られるチョコレートの風味をより向上することができる
前記ハードバターとは、ココアバターとココアバター代用脂の総称を示し、油脂としてハードバターを使用することにより、生チョコレートのような口溶けを持つ食感を得ることができる。その含有量は含水物質中において5〜25重量%が好ましい。ハードバターの含有量が5重量%未満では、液状の物性に近くなり生チョコレートの様な食感が得られない。一方、ハードバターの含有量が25重量%を超えると、食感が固くなり同じく生チョコレートのような食感が得られない。また、前記ハードバターの含有量は8〜22重量%の範囲が好ましい。ココアバター代用脂とは、チョコレートの物性改良や製造コストの節約を目的として、ココアバターの一部又は全部に代えて用いられるもので、主にCBEと称される1、3位飽和、2位不飽和のトリグリセリド型油脂に富むものと、CBRと称されるラウリン系もしくは高エライジン酸タイプのものがある。ココアバター代用脂の油脂原料としては、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サンフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂及び乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂を例示することができ、上記油脂類若しくは2種以上の混合した油、又はそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂を用いることができる。
更に、前記含水物質は必要により、乳化剤、卵、安定剤、呈味成分、洋酒、保存料、塩、酸味料、抗菌剤、着色料、フレーバー、酸化防止剤等を加えることができる。
乳化剤としては、モノグリセリド、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル及びレシチン等を用いることができる。乳化剤は含水物質中に0.01重量%以上で風味に影響を与えない範囲内で使用するのが好ましい。また、卵としては、全卵、卵黄、卵白、酵素処理卵等を用いることができる。
呈味成分としては、果汁、果肉、ジャム、果汁パウダー、カカオパウダー、コーヒーパウダー、アーモンドペースト及びピーナッツペースト等を必要により用いる。呈味成分を使用する場合は前記含水物質中に、好ましくは0.1〜25重量%、さらに好ましくは1〜20重量%添加する。但し、該呈味成分に二糖類以下の糖質が含有される場合には、前記二糖類以下の糖質の含有量としてカウントする。
洋酒としては、ラム酒及びブランデー等が挙げられる。洋酒を使用する場合は、前記含水物質に0.1〜5重量%添加するのが好ましい。
塩、酸味料としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。風味の調整のために塩、酸味料を添加する場合、前記含水物質中1重量%以下が好ましい。また、塩は水分活性を下げる効果があるのは既知であるが、前記添加量の範囲では大きな効果は期待できず、酸味料はpHを低くすることによって抗菌性も向上することができる。
抗菌剤としては、甘草抽出物、緑茶抽出物、ササエキス、タンニン、リゾチーム、等が挙げられ、前記含水物質中に0.01〜0.5重量%程度で風味に影響が生じない範囲で使用するのが好ましい。
安定剤、保存料、着色料、フレーバー、酸化防止剤としては、チョコレート等の菓子類に使用できるものであればよく、特に限定はない。
前記の組成を有する含水物質は、水中油型の乳化構造にすることによって水分活性を低く抑えることができる。乳化の方法は、水相成分と油相成分を混合し同時に炊き上げる方法、及び水相成分を炊き上げた後に油相成分を加えて水中油型に乳化する方法や、油相成分に対して徐々に水相成分を加え、油中水型エマルジョンを作製後、乳化を分離させてから、水中油型に乳化する方法等特に限定されない。乳化を行うための装置としては、ホモジナイザー等の装置の他に簡易なホイッパー等を用いればよい。
また、本発明のチョコレートは、センターの含水物質を20〜50重量%含有することがより好ましい態様である。含水物質が20重量%未満では、シェルチョコレートに含有される未発酵カカオ原料に由来する収斂味等のマスキング効果が弱く、一方、50重量%を超えるとチョコレート感が感じられなくなる。
本発明のチョコレートは、予め所定の型を用いてシェルチョコレート用のチョコレート生地でシェルチョコレートを作製後、センターを充填し、最後に再度シェルチョコレート用のチョコレート生地で蓋をして作製する方法、或いはシェルチョコレート用のチョコレート生地とセンターを同時に充填する方法等によって作製することができる。
シェルチョコレートの含有量は、本発明のチョコレート中、50〜80重量%であればよい。
また、シェルチョコレートの厚みを1.5mm以下に調整することが好ましい態様である。シェルチョコレートの厚みを1.5mm以下にすることにより、チョコレートの食感が非常に好ましく、より美味しさを向上させる。よって、センターの含水物質は分散されていても構わない。
次に実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。なお、実施例中の数字は重量部、「%」は重量%を意味する。また、水分活性の測定にはnovasina社の水分活性恒温測定装置「LabMASTER−aw BASIC」(商品名)を用いた。
(チョコレート生地1〜4の作製)
表1に示す配合に従い、ロール掛け及びコンチングを行いチョコレート生地1〜4を得た。尚、コンチングは45℃条件下で4時間行い、作製したチョコレート生地1及びチョコレート生地2の粒度はマイクロメーターで測定したところ、いずれも20〜25μmの範囲であった。
Figure 0005799544
(含水物質1〜8の作製)
次に表2の配合に従い、センター部分である含水物質1〜8を作製した。作製方法は全原料を混合し、目的の水分になるまで加熱し、ホモミキサーを用いて乳化させて水中油型乳化物を得た。
Figure 0005799544
(含水物質9〜11の作製)
更に表3の配合に従い、センター部分である含水物質9〜11を作製した。作製方法は、先ず水相部分を記載のBxになるまで加熱濃縮し、その後水相成分と油相成分を表4の配合で混合し、ホイッパーで乳化することによって水中油型乳化物を得た。また、いずれも砂糖は180℃まで加熱し、カラメル化して使用した。
Figure 0005799544
Figure 0005799544
(実施例1〜13、比較例1〜4及び参考例1)
次に、センターとして作製した前記含水物質1〜11を、予めチョコレート生地1又は2でモールドを用いて作製したシェルチョコレートに充填し、前記チョコレート生地で蓋をすることで実施例1〜13、比較例1〜4のチョコレートを作製した。シェルチョコレートの厚みは、約1.0〜1.5mmであった。また、チョコレートの単重は全て5.0gとした。なお、参考例1は、市販のアルファベットチョコレートを溶解し、実施例1〜13、比較例1〜4と同様の形、単重に充填、固化することによって得た。
次に、得られたチョコレートの風味の評価を行った。
評価方法は30名のパネラーにそれぞれのチョコレートを試食してもらい、風味を−5〜5点の間の整数値で評価してもらった。
表5にそれぞれのシェルチョコレート生地とセンターの含水物質の組合せ、風味の平均値、保存性、及び市販のチョコレートである参考例1との風味の有意性検定結果を記載した。有意性検定は、参考例1とのt−検定を行い、t値が0.05未満のものは全て「t<0.05」と記載した。
t検定とは、標本集団間の平均値の差が偶然か否かを示す統計的な検定であり、一般的にt<0.05の場合に差があると言われている。よって、参考例1とのt検定の結果がt<0.05ならば平均値の差は必然的とみなすことができ、風味の有意差があると言える。一方、t値が0.05以上の場合、平均値の差は偶然性が強いとみなされ、風味の有意差はないと言える。
Figure 0005799544
実施例1〜6のチョコレートは、同じシェルを有しセンターを含有しない比較例1及び4のチョコレートと比較すると、いずれも風味が向上しており、また参考例1と比較しても有意性がないことからマスキング効果があることが確認された。
また、センターの含有量を変えた実施例12及び13のチョコレートも同様の結果となった。
センターとして生チョコレート様組成物となっている含水物質を使用した実施例7〜9、及び実施例11のチョコレートは、参考例1よりも風味の平均値が高く、よりマスキング効果が高いことが確認でき、参考例1に対しての有意性も得られた。
実施例10のチョコレートは、シェルにミルクチョコレートを使用しているため比較的収斂味が少ないが、比較例4のチョコレートの風味と比べるとマスキング効果が十分発揮されていることがわかる。
比較例2のチョコレートは、センターの含水物質の水分含有量が少ないため、マスキング効果が十分ではなく、センターの含水物質の水分含有量が高い比較例3のチョコレートは、マスキング効果はあるものの、センターの水分活性が高いため保存性が悪い結果となった。

Claims (4)

  1. センターとして、水分を8〜18重量%含有し、水分活性が0.600未満である含水物質を含有し、シェルチョコレートが未発酵カカオ原料由来の無脂カカオ成分を含有するチョコレート生地であり、
    前記含水物質が、二糖類以下の糖質を40〜70重量%及び油脂を5〜25重量%含有する水中油型乳化物であることを特徴としたチョコレート。
  2. 前記含水物質が、二糖類以下の糖質として直鎖状多価アルコールを5〜25重量%含有し、油脂としてハードバターを5〜25重量%含有する請求項記載のチョコレート。
  3. 前記シェルチョコレートが未発酵カカオ原料由来の無脂カカオ成分を10〜22.5重量%含有するチョコレート生地であることを特徴とする請求項1または2記載のチョコレート。
  4. 前記含水物質をセンターとして20〜50重量%含有する請求項1〜いずれか記載のチョコレート。
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