JP4929027B2 - 高水分含有具材入りチョコレート - Google Patents
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このため、水分活性の高い具材を用いた、具入りチョコレートにおいて、食感が経時劣化しにくく、長期保存に適した常温流通菓子は、これまで知られていなかった。
本発明において、チョコレート生地としては、例えば、純チョコレート生地、準チョコレート生地、ミルクチョコレート生地、準ミルクチョコレート生地、純ミルクチョコレート生地、ホワイトチョコレート生地、その他の一般的に用いられているチョコレート生地を採用することができるが、該チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64となるように水分含有量が調整されたものが用いられる。チョコレート生地の水分活性は、0.40〜0.55が好ましい。チョコレート生地の水分活性が0.64を超えると、長期保存によって食感がボソボソになりやすく、更には菌の増殖速度が早まり、常温での十分な日持ち性を持たせることが困難である。また、チョコレート生地の水分活性が0.40を下回ると、具材側からチョコレート生地側に水分が移行しやすくなり、長期保存によってチョコレート生地の食感や外観が経時劣化しやすくなる。
チョコレート生地には、チョコレート生地の食感を損なうことなく、チョコレート生地の水分活性、言い換えると、含水量を高めるようにするため、乳化剤を含有せしめる。
なお、水分活性とは、食品中の水の存在状態を示す単位であって、例えば、卓上型温湿度測定器ハイグロラボ(ロトロニック社製、20℃)により測定することができる。
本発明においては、高水分含有具材として、マシュマロを採用し、その水分活性が0.40〜0.64となるように調整されたものが用いられる。高水分含有具材の水分活性は、0.50〜0.60が好ましい。高水分含有具材の水分活性が0.64を超えると、みずみずしさは増すものの、菌の増殖速度が早まり、常温での十分な日持ち性を持たせることが困難になる傾向にあるばかりか、チョコレート生地側へ水分が移行して、チョコレート生地の食感や外観を損なうおそれがある。また、高水分含有具材の水分活性が0.40を下回ると、みずみずしさが損なわれてしまう。
すなわち、具体的に説明すると、一般的なマシュマロは、砂糖30〜50質量%、水飴0〜50質量%含む糖溶液を煮詰めてブリックスを85未満とし、次いで、煮詰め後の糖溶液にゼラチンを3質量%以上添加し、40〜80℃で、10秒〜5分間ホイップ処理を行って比重を0.45g/cm3以下に調整し、その後、所定の形状に成形し、乾燥することで得られる。こうして得られるマシュマロの水分含有量は、15〜20質量%で、水分活性は0.70〜0.85である。マシュマロの水分活性を低下、すなわち水分含有量を低減させるにあたり、煮詰め後の糖溶液のブリックスを高めることが考えられるが、煮詰め後の糖溶液のブリックスを上げると、同時にゼラチン添加後の粘度も上昇してしまうので、その後のホイップ処理によって、気泡を十分含有させることができなくなり、食感が固くなってしまう。
そして、単糖の含有量は、糖類全体の10〜50質量%である。25〜35質量%がより好ましい。単糖の含有量が10質量%未満であると、水分活性の低減効果を十分得ることができず、50質量%を超えると、風味が損なわれるおそれがある。
そして、糖アルコールの含有量は、糖類全体の10〜30質量%である。20〜25質量%がより好ましい。糖アルコールの含有量が10質量%未満であると、粘度低減効果が十分発揮されず、30質量%を超えると、風味が損なわれるおそれがある。
本発明の高水分含有具材入りチョコレートは、上記チョコレート生地に、上記高水分含有具材を添加し、所定の形状に成形して得られるものであって、全体の水分活性が、0.40〜0.64であり、具材の食感を損なわない範囲で安定するよう調整されている。全体の水分活性が0.40以下に達すると、具材側からチョコレート生地側に水分が移行して、チョコレートの食感や外観が経時劣化しやすく、さらには、具材側の食感もみずみずさが損なわれたものになりやすく、常温での長期保存に適した高水分含有具入りチョコレートとすることができない。
(製造例1−1)
表1に示す割合で各原料を配合し、常法に従って混合し、リファイニングを行った後、常法でコンチングを行ってチョコレート生地原液を調製し、その後、常法により、ホイップ処理を行って、水分活性0.15、比重0.8g/cm3のチョコレート生地を製造した。なお、表中の数値は質量部単位である。
製造例1−1において、コンチング工程後のチョコレート生地原液に、水を2.1質量%添加した以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.40、比重0.8g/cm3のチョコレート生地を製造した。
製造例1−1において、コンチング工程後のチョコレート生地原液に、水を2.4質量%添加した以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.55、比重0.8g/cm3のチョコレート生地を製造した。
製造例1−1において、コンチング工程後のチョコレート生地原液に、水を3.6質量%以上添加した以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.70、比重0.8g/cm3のチョコレート生地を製造した。
表2に示す割合で各原料を配合し、常法に従って混合し、リファイニングを行った後、常法でコンチングを行ってチョコレート生地原液に、水を2.4質量%添加し、グリセリン脂肪酸エステルを投入しない以外は、製造例1−1と同様にして、水分活性0.55、比重0.8g/cm3のチョコレート生地を製造した。なお、表中の数値は質量部単位である。
(製造例2−1)
砂糖20g、水飴18g、糖アルコール(商品名「アマミール」 東和化成製)17.5g、無水結晶ブドウ糖25.6g、水10.65gを混合し、加熱溶解して、ブリックス85の糖溶液を得た。
次に、ゼラチン3.4gに、水4.08gを加えてゼラチンを膨潤させたのち、上記糖溶液に添加し、更に香料0.01g添加した後、常法によりホイップ処理を行った。なお、ゼラチンを添加直後の糖溶液のBL粘度計による測定粘度は、糖溶液の温度が70℃の時25Pa・Sであった。
ホイップ処理後、スターチモールドで乾燥・成形して、水分活性0.57、比重0.3g/cm3のマシュマロを得た。
砂糖35.5g、水飴35.5g、麦芽糖10.1g、水10.65gを混合し、加熱溶解して、ブリックス83の糖溶液を得た。
次に、ゼラチン3.4gに、水4.76gを加えてゼラチンを膨潤させたのち、上記糖溶液に添加し、更に香料0.01g添加した後、常法によりホイップ処理を行った。なお、ゼラチンを添加直後の糖溶液のBL粘度計による測定粘度は、糖溶液の温度が70℃の時26Pa・Sであった。
ホイップ処理後、スターチモールドで乾燥、成形して、水分活性0.70、比重0.3g/cm3のマシュマロを得た。
砂糖20g、水飴18g、糖アルコール(商品名「アマミール」 東和化成製)17.5g、無水結晶ブドウ糖25.6g、水10.65gを混合し、加熱溶解して、ブリックス84の糖溶液を得た。
次に、ゼラチン3.4gに、水4.08gを加えてゼラチンを膨潤させたのち、上記糖溶液に添加し、更に香料0.01g添加した後、常法によりホイップ処理を行った。なお、ゼラチンを添加直後の糖溶液のBL粘度計による測定粘度は、糖溶液の温度が70℃の時20Pa・Sであった。
ホイップ処理後、スターチモールドで乾燥・成形して、水分活性0.64、比重0.3g/cm3のマシュマロを得た。
(実施例1)
チョコレート生地として製造例1−3で得られたチョコレート生地(水分活性0.55)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを20℃で、330日間保存した後喫食したところ、チョコレート生地側に具材から水分が若干移行していたが、チョコレート生地の滑らかな食感と、マシュマロの軽い食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。
チョコレート生地として製造例1−3で得られたチョコレート生地(水分活性0.55)100質量部と、具材として製造例2−3で得られたマシュマロ(水分活性0.64)18質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを20℃で、300日間保存した後喫食したところ、チョコレート生地側に具材から水分が若干移行していたが、チョコレート生地の滑らかな食感と、マシュマロの軽い食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。また、この具材入りチョコレートを20℃で、330日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、7人のパネラーが、やや具材の独特の食感が失われていると評価した。
チョコレート生地として製造例1−2で得られたチョコレート生地(水分活性0.40)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で、270日間保存した後喫食したところ、チョコレート生地側に具材から水分が若干移行していたが、チョコレート生地の滑らかな食感と、マシュマロの軽い食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。また、この具材入りチョコレートを20℃で、300日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、8人のパネラーが、やや具材の独特の食感が失われていると評価した。
チョコレート生地として製造例1−3で得られたチョコレート生地(水分活性0.55)100質量部と、具材として常法により製造されたドライフルーツ(水分活性0.50)10質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た、この具材入りチョコレートを、20℃で300日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、チョコレート生地の滑らかな食感と、ドライフルーツの柔らかな食感を同時に堪能でき、また、カビなども認められなかった。
チョコレート生地として製造例1−1で得られたチョコレート生地(水分活性0.15)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを20℃で、30日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、6人のパネラーが、チョコレート生地側に具材側から水分が移行しており、具材独特の食感が失われていると、評価した。
チョコレート生地として製造例1−4で得られたチョコレート生地(水分活性0.70)100質量部と、具材として製造例2−1で得られたマシュマロ(水分活性0.57)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で、30日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、8人のパネラーがチョコレート側の食感が悪くなっていると評価した。
チョコレート生地として製造例1−1で得られたチョコレート生地(水分活性0.15)100質量部と、具材として製造例2−2で得られたマシュマロ(水分活性0.70)20質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で、15日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、15日目に9人のパネラーがマシュマロ独特の食感が失われていると評価した。
チョコレート生地として製造例1−1で得られたチョコレート生地(水分活性0.15)100質量部と、具材として常法により製造されたドライフルーツ(水分活性0.50)10質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で20日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、7人のパネラーが具材の独特の柔らかな食感が失われていると評価した。
チョコレート生地として製造例1−4で得られたチョコレート生地(水分活性0.70)100質量部と、具材として常法により製造されたドライフルーツ(水分活性0.50)10質量部とをそれぞれ混合し、具材をセンター成型して、具材入りチョコレートを得た。この具材入りチョコレートを、20℃で30日間保存し、チョコレート専門パネラー10人を集めて官能評価を行ったところ、7人のパネラーがチョコレート側の食感が悪くなっていると評価した。
Claims (4)
- 高水分含有具材をチョコレート生地に添加し、成形して得られる高水分含有具材入りチョコレートであって、
前記高水分含有具材の水分活性が0.40〜0.64であり、前記チョコレート生地の水分活性が0.40〜0.64であり、
前記チョコレート生地が、乳化剤を含有し、
前記高水分含有具材が、マシュマロであって、該マシュマロ中の糖類全体の10〜50質量%が単糖で、10〜30質量%が糖アルコールである、
ことを特徴とする高水分含有具材入りチョコレート。 - 前記乳化剤が、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステルである請求項1に記載の高水分含有具材入りチョコレート。
- 前記マシュマロの水分活性が0.55〜0.60である請求項1又は2記載の高水分含有具材入りチョコレート。
- 前記チョコレート生地が、ホイップ処理の施された含気チョコレート生地である請求項1〜3のいずれか一つに記載の高水分含有具材入りチョコレート。
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