JP2011148609A - エレベーターのロープ巻き掛け方法、及び部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】樹脂被覆ロープを用いたエレベーターにおいて、ロープ掛けを容易にする方法、及び部材を提供する。
【解決手段】樹脂被覆ロープ14が接触するシーブ10、プーリー5,11,12等のロープ溝に、そのロープ溝より低摩擦の材質からなる滑車被覆部材13を装着した後に、ロープ掛け作業を行い、ロープ掛けが終了した後に、この滑車被覆部材13の取り外し作業を行う。これにより、樹脂被覆ロープ14を低摩擦でロープ掛けできるようにし、併せてそのために好適な樹脂被覆ロープ14の構成を提案する。
【選択図】図1

Description

本発明は、エレベーターのロープの巻き掛けに関し、特に樹脂被覆ロープを用いたエレベーターのロープの巻き掛け方法、及びそのための部材に関するものである。
エレベーターの主要な形態であるワイヤロープを用いたロープ式エレベーターは,巻上機に取り付けたシーブにロープをかけ,シーブを中心に片側に乗りかごをつるし,その反対側に乗りかごとバランスするためのカウンターウェイトをつるした構造となっている。
所謂2:1ローピングのエレベーターについては、乗りかご上、もしくは乗りかご下にプーリーを設置し、そこにロープを巻き掛けてロープにより乗りかごをつるす、もしくは持ち上げる構造となっている。この場合、ロープは昇降路壁面に固定されることから、巻上機に取り付けたシーブの他に、カウンターウェイトにはカウンターウェイト用のプーリー、カウンターウェイトおよび乗りかごへのロープの折り返しのためのプーリーなど、複数個のプーリーが設けられる。
このようなエレベーターの据え付けは、低層の建屋では次のように行われるのが一般的である。まず、最初に単管パイプなどを組み立てて昇降路内に固定足場を形成し、この固定足場を用いてエレベーター機器の各部品、すなわちエレベーター乗降口装置、緩衝装置、ガイドレール、ブラケット、制御盤などの昇降路内機器の取り付けおよび配管、配線を行う。次に最上階にて乗りかご枠、乗りかご室を組み立てる。このとき、乗りかご下には乗りかごを持ち上げるためのプーリーを設置する。さらに、最下階においては、カウンターウェイト枠を組み立ててカウンターウェイトを載せる。最後にワイヤロープ掛けを行い、固定足場を撤去する。
中高層の建屋については、昇降路内の天井に固定したフックを用いてゴンドラをつり下げ、電動ウインチによりゴンドラを昇降させながらエレベーター機器の各部品を設置する。乗りかごおよびカウンターウェイトは、低層の建屋と同様に組み立て、ワイヤロープを掛けた後にゴンドラを撤去する。
ロープ掛け作業では、ロープの片側端部を例えば、乗りかご下プーリー、乗りかご用折り返しプーリー、シーブ、カウンターウェイト用折り返しプーリー、カウンターウェイトプーリーの順に巻き掛け、昇降路壁面に達し固定される。通常、エレベーターではロープは3本以上使用されており、ロープ掛け作業ではロープ1本づつを上記の手順で順次巻き掛ける。
従来の鋼線ロープは、ロープグリスを含浸させた麻心のまわりに鋼線を撚り合わせており、各プーリーおよびシーブとの接触は金属同士の接触となるため、摩擦は少ない。したがって、従来の鋼線ロープについては、ロープと各プーリーおよびシーブがすべることにより、ロープを順次巻き掛けていくことができる。
一方、近年、表面を樹脂で被覆したロープが開発され、例えば特許文献1に記載のもの等が知られている。この場合、ロープとプーリーおよびシーブとの接触は樹脂と金属の接触となるために摩擦が大きくなり、プーリーおよびシーブが自由に回転できない場合は、ロープを引っ張るために多大な労力を要し、ロープの巻き掛け作業に多大な時間がかかってしまう。
このような課題に対して、プーリーの表面に樹脂との摩擦係数を低下させるためのライニングを設けたエレベーターが、例えば特許文献2に記載されている。このライニングには、フッ素系樹脂、超高分子ポリエチレンなどの樹脂、固体潤滑剤を拡散させたメッキが挙げられている。
特開2006−28671号公報 WO2007/007400号公報
前記特許文献2に示された従来技術では、エレベーターを長期使用した際に、プーリーにライニングされた低摩擦の樹脂がロープの被覆樹脂に移着し、そのロープがシーブに達したときにトラクション特性が低下することになる。トラクションの低下が起こると、例えば、エレベーターの運転中にロープとシーブがすべり着床位置がずれるといった不都合が生じる。したがって、エレベーターを信頼性高く安全に運転することが困難となる
本発明の目的は、エレベーターの信頼性に影響を与えることなく、樹脂で被覆されたロープを容易に巻き掛けることのできる方法、及び部材を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の特徴は、ロープ巻き掛け作業時において、樹脂被覆ロープが接触するシーブ、プーリーのロープ溝に、そのロープ溝より低摩擦の材質からなる滑車被覆部材を予め装着してロープ掛けを行うようにしたところにあり、更にはそのために好適な滑車被覆部材の構成を提案することにある。
本発明によれば、樹脂で被覆されたロープをシーブおよびプーリー上に容易にすべらせることができ、多大な労力を要することなくロープを巻き掛けることができる。
更には、その為の滑車被覆部材を着脱可能にして、携帯性及び作業性にも優れたものとしている。
本発明によるロープ巻き掛け作業の一実施の形態を示す昇降路断面図。 本発明によるロープ巻き掛け作業終了時の形態を示す昇降路断面図。 本発明のロープ巻き掛け作業に用いる滑車被覆部材の一実施の形態を示す滑車および滑車被覆部材の斜視図。 本発明のロープ巻き掛け作業に用いる滑車被覆部材の他の実施の形態を示す滑車および滑車被覆部材の斜視図。 本発明のロープ巻き掛け作業に用いる滑車被覆部材の他の実施の形態を示す滑車および滑車被覆部材の斜視図。 本発明のロープ巻き掛け作業に用いる滑車被覆部材の他の実施の形態を示す滑車および滑車被覆部材の断面図。 本発明のロープ巻き掛け作業に用いる滑車被覆部材の他の実施の形態を示す滑車および滑車被覆部材の断面図。 本発明のロープ巻き掛け作業に用いる滑車被覆部材の他の実施の形態を示す滑車被覆部材の断面図。
以下、本発明の実施形態を図示する実施例を参照して説明する。これらの実施例では、前記した発明の目的及び特徴の他、実用性に優れた構成等を提案しているが、それらについては実施例の中で詳述する。また、エレベーターにおけるロープの巻き掛け方式としては多様なもの知られており、以下の実施例に限定されるものではない。
先ず、図1〜図3を用いて、本発明の第一の実施例について説明する。
図1は本発明の一実施例であるロープ巻き掛け方法を用いたロープ巻き掛け作業時の昇降路縦断面図を示す。図1において、乗りかご枠1は昇降路内に配置した固定足場2を用いて昇降路頂部付近に組み立てられ、チェーンブロック3によりガイドレール4から吊り下げされる。乗りかご枠1の下部には乗りかご下プーリー5が取り付けられる。また、カウンターウェイト枠6は昇降路下部にて組み立て、保持部材7により保持される。カウンターウェイト枠の上部には、カウンターウェイトプーリー8が設置される。巻上機9にはシーブ10を取り付ける。次に、乗りかご枠1を用いてカウンターウェイト用折り返しプーリー11、および乗りかご用折り返しプーリー12が設置される。
昇降路内の機器が設置されロープを巻き掛ける前に、各プーリーおよびシーブのロープが巻き掛けられる面に滑車被覆部材13を取り付ける。カウンターウェイト用折り返しプーリー11、乗りかご用折り返しプーリー12については乗りかご枠1を利用し、乗りかご下プーリー5については固定足場2を用いて滑車被覆部材13を取り付ける。カウンターウェイトプーリー8およびシーブ10については昇降路下部より滑車被覆部材13を取り付ける。
滑車被覆部材13はゴムバンド、もしくは番線を用いて、各プーリーおよびシーブに固定される。滑車被覆部材の材質は、フッソ樹脂加工、超高分子ポリエチレン、ナイロンなどの低摩擦樹脂であり、樹脂で被覆されたロープであっても容易にすべることができる。
ロープ14は片側端部が乗りかご下プーリー5を通過し、次に乗りかご用折り返しプーリー12、シーブ10、カウンターウェイト用折り返しプーリー11、カウンターウェイトプーリー8を通し、最後に昇降路壁面に固定される。全てのロープの巻き掛けが完了すると、滑車被覆部材13の取り外し作業を行う。カウンターウェイト枠6に対して乗りかご枠1を重くしておくと、チェーンブロック3で乗りかご枠1を降下させるとロープ14が移動し、それに伴い各プーリーおよびシーブは回転する。
なお、このとき巻上機9のブレーキは解放しておく。回転が進むにしたがい、ロープ14は滑車被覆部材13の設置されていない面と接触することになり、滑車被覆部材13を取り外すことが可能となる。
図2に据え付けおよびロープ掛け終了後の昇降路縦断面図を示す。滑車被覆部材13取り外し後に乗りかご室15を組み立て、さらにカウンターウェイト枠6にはカウンターウェイト16を積載する。次に固定足場2、チェーンブロック3、保持部材7を取り外し、エレベーターの据え付けおよびロープ巻き掛け作業が終了となる。
図3に本発明における滑車被覆部材の一実施例を示す。シーブまたはプーリーである滑車17のロープ溝のうち巻き掛け角180度分を覆う滑車被覆部材13である。滑車被覆部材は、滑車被覆部材に加工された貫通穴を通したゴムバンドなどの固定部材18により滑車17に固定される。なお、ゴムバンドの代わりに番線を用いてもよい。
図3はロープ3本を巻き掛ける滑車を示しているが、以下の理由によりロープ1本分だけは被覆しない。ロープを巻き掛ける際に、巻上機のブレーキを解放すると、1本目のロープについてはシーブ、プーリーが自由に回転できるために、ほとんど抵抗が生じることなく巻き掛けることができる。巻き掛けた1本目のロープについては、ロープ表面の樹脂が滑車の金属と接触するために、ロープと滑車の摩擦は高い。したがって、2本目のロープを巻き掛ける際に、1本目のロープがシーブ、プーリーの回転を固定する回り止めの役割を果たすことになる。シーブ、プーリーの回転が固定されることから、滑車被覆部材はシーブ、プーリーの全周を覆う必要はなく、ロープを巻き掛ける範囲のみ覆えばよい。
したがって、図3の滑車被覆部材はロープを1本巻き掛けた後に設置することが有効である。2本目のロープからはシーブ、プーリーが自由に回転できないが、滑車被覆部材を用いることで摩擦を低減し巻き掛けることができる。ここではロープを3本使用する滑車について示したが使用本数は3本に限らない。
また、ロープの交換作業において1本のみ掛け替える場合は、既に巻き掛けてあるロープが回り止めの役割を果たすために、ロープ溝1本のみを覆う滑車被覆部材が有効である。
また、滑車被覆部材13は、滑車17のロープ溝のうち巻き掛け角180度分を覆う形状、即ちロープ溝の半周分の長さなので、装着が容易であり、またロープ掛け作業が終了した後の取外しも容易である。
図4に本発明における滑車被覆部材の他の実施例を示す。滑車17のロープ溝のうち巻き掛け角180度分を覆い、巻き掛けるロープ全数分のロープ溝を覆う滑車被覆部材13である。昇降路下部に巻上機を設置した場合は、巻上機のブレーキ解放は安全のためブレーキに取り付けたレバーなどで機械的に実施するのではなく、制御盤を通して電気的に実施する。しかし、制御盤の設置以前、または通電する前にロープを巻き掛ける場合には、巻上機のブレーキ解放を実施することができない。
このように巻上機9のブレーキを解放しない場合は、シーブが自由に回転することができないために、1本目のロープからシーブとの摩擦を減らす必要があり、この滑車被覆部材はシーブ10に用いるのが有効である。また、ロープ巻き掛け時に万が一ロープから手を離した際にロープの重みで滑車が回転し、高速でロープが落下することを防止するためにプーリーに回り止めを取り付けた場合、1本目のロープからプーリーとの摩擦を減らす必要があるため、図4に示した滑車被覆部材をプーリーに使用することが有効となる。
図5に本発明における滑車被覆部材の他の実施例を示す。図1にて示したように乗りかご下プーリーにおけるロープの巻き掛け角は90度であるために、滑車被覆部材についても90度あれば十分である。また、各折り返しプーリーやカウンターウェイトプーリーまわりには、それぞれのプーリーの軸を固定するためのブラケットなどがあることから、取り付け及び取外しを容易にするために、巻き角180度用の滑車被覆部材に代わり巻き角90度用の滑車被覆部材、即ちロープ溝外周の1/4の長さのものを2つ用いてもよい。
図6に本発明における滑車被覆部材の更に他の実施例を示す。滑車被覆部材13は滑車17に直接重ね合わせ、ゴムバンドなどの部材が固定部材用貫通穴19を通って滑車17に巻きつけ固定される。滑車被覆部材のロープを巻きつける溝は次の理由から丸溝となっている。シーブに加工されているロープ溝は、エレベーターに求められるトラクション性能に応じて、丸溝、V溝などがある。プーリーについては、ロープ14に対する損傷をできる限り抑えるために、一般的には丸溝とされている。滑車被覆部材13については、トラクション性能は必要ないために丸溝とするのが好適である。
図7に本発明における滑車被覆部材の他の実施例を示す。滑車被覆部材とロープの摩擦を減らす方法の一つとして接触面積の低減がある。図7に示すように、滑車17に取り付けた滑車被覆部材13のロープ溝底を直線とすることで、ロープとの接触面積を抑制し摩擦を減らすことが可能となる。
図8に本発明における滑車被覆部材の更に他の実施例を示す。本実施例では、滑車被覆部材13を低摩擦層20と高摩擦層21との二層構造とした点に特徴がある。ロープを巻き掛ける低摩擦層20は、フッソ樹脂加工、超高分子ポリエチレン、ナイロンなどの低摩擦の樹脂で形成される。滑車と接触する面である高摩擦層21については、ゴムなどの高摩擦の樹脂にすることで、滑車に取り付けた位置からずれにくくなり、ロープの巻き掛け作業をより効率よく進めることができる。
以上、滑車被覆部材として多様な例を示したが、本発明はこれらのものに限られるのもではなく、より簡便に低摩擦部材を板状にしたもの、更にはテープ状の巻物から必要な長さに切断して使用するもの等、滑車と樹脂被覆ロープとの間に装着されて樹脂被覆ロープとの摩擦を低減できるものであれば適宜応用変形して実施することができる。
1…乗りかご枠、2…固定足場、3…チェーンブロック、4…ガイドレール、5…乗りかご下プーリー、6…カウンターウェイト枠、7…保持部材、8…カウンターウェイトプーリー、9…巻上機、10…シーブ、11…カウンターウェイト用折り返しプーリー、12…乗りかご用折り返しプーリー、13…滑車被覆部材、14…樹脂被覆ロープ、15…乗りかご、16…カウンターウェイト、17…滑車、18…固定部材、19…固定部材用貫通穴、20…低摩擦層、21…高摩擦層

Claims (10)

  1. 巻上機に連結されるシーブ及びプーリーを介して乗りかご及びカウンターウェイトを昇降するロープ式エレベーターであって、エレベーター昇降路内で、樹脂被覆のロープを前記シーブ及びプーリーに巻き掛けるエレベーターのロープ巻き掛け方法において、前記シーブ及びプーリーのロープ溝より低摩擦の滑車被覆部材を準備し、前記樹脂被覆ロープを前記シーブ又はプーリーに巻き掛けるとき、少なくとも当該シーブ又はプーリーのロープ溝に前記滑車被覆部材を予め装着することを特徴とするエレベーターのロープ巻き掛け方法。
  2. 前記滑車被覆部材は、前記樹脂被覆ロープを前記シーブ及びプーリーに巻き掛けた後、当該シーブ及びプーリーから取り外すことを特徴とする請求項1記載のエレベーターのロープ巻き掛け方法。
  3. 前記滑車被覆部材は、前記プーリー又はシーブに加工されたロープ溝の全数より1本少ない本数のロープ溝を覆うことを特徴とする請求項1記載のエレベーターのロープ巻き掛け方法。
  4. 前記滑車被覆部材の長さは、装着する前記シーブ又はプーリーにおけるロープ溝の外周の半分以下とすることを特徴とする請求項1記載のエレベーターのロープ巻き掛け方法。
  5. 前記滑車被覆部材は、当該滑車被覆部材をロープ溝に装着したとき、当該記ロープ溝の溝底を平坦化する形状とすることを特徴とする請求項1記載のエレベーターのロープ巻き掛け方法。
  6. 前記滑車被覆部材は、前記ロープ溝部に接する材質をフッソ樹脂加工、超高分子ポリエチレン、又はナイロン部材とすることを特徴とする請求項1記載のエレベーターのロープ巻き掛け方法。
  7. 巻上機に連結されるシーブ及びプーリーを介して乗りかご及びカウンターウェイトを昇降するロープ式エレベーターであって、樹脂被覆のロープを前記シーブ及びプーリーに巻き掛ける際に使用されるエレベーターのロープ巻き掛け部材として、前記シーブ及びプーリーのロープ溝より低摩擦の材質で形成され、かつ前記シーブ又はプーリーのロープ溝に着脱可能な滑車被覆部材から成ることを特徴とするエレベーターのロープ巻き掛け部材。
  8. 前記滑車被覆部材は、前記プーリー又はシーブに加工されたロープ溝の全数より1本少ない本数のロープ溝を覆う形状とすることを特徴とする請求項7記載のエレベーターのロープ巻き掛け部材。
  9. 前記滑車被覆部材は、装着する前記シーブ又はプーリーにおけるロープ溝の外周の半分以下の長さに形成することを特徴とする請求項7記載のエレベーターのロープ巻き掛け部材。
  10. 前記滑車被覆部材は、前記ロープ溝部に接する材質をフッソ樹脂加工、超高分子ポリエチレン、又はナイロン部材で形成することを特徴とする請求項7記載のエレベーターのロープ巻き掛け部材。
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