JP2015037990A - エレベータ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】大幅なコスト上昇がなく、かつ素線の破損などが生じ難く、各種機器の小型化を可能としたエレベータ装置を提供する。【解決手段】乗りかご1と釣合錘と2をロープ4により吊持し、ロープ4を巻き掛けた駆動綱車3によって、つるべ式に摩擦駆動するエレベータ装置であって、ロープ4には、鋼鉄製の心綱18、及びその周囲に配置された複数の鋼鉄製ストランド19を有し、表面をポリウレタン樹脂20により被覆した樹脂被覆ロープを用い、駆動綱車3の、樹脂被覆ロープが巻き掛かる溝部22の表面に、樹脂被覆ロープとの摩擦係数が、鋳鉄との摩擦係数より小さな低摩擦材料からなる被覆層23を設けた。【選択図】図1
Description
本発明の実施形態は、吊支持用ロープ及びこれが巻き掛けられる駆動綱車を改良したエレベータ装置に関する。
エレベータ装置の構造としては、屋上機械室が不要で建築設計の自由度が大きい機械室なし構造が一般的になっている。同構造においては、巻上機等の機器を全て昇降路内に設置することになる。このため、エレベータ装置の設置スペースを削減して建物フロア面積を有効利用するためには各機器の小型化が求められる。
一般に、機械室なし構造のつるべ式エレベータは、 建物内に形成した昇降路内に、乗りかご及び釣合錘をそれぞれ対応するガイドレールにより昇降可能に設置し、これら両者をロープによって吊支持し、かつこのロープを巻上機に備わる駆動綱車に巻き掛け、この駆動綱車の回転により乗りかごと釣合錘とを相互に昇降駆動させている。この場合、ロープ の一端は、昇降路の上部に固定され、乗りかごに設けられた吊り車に巻き掛けられた後、巻上機の駆動綱車を経て釣合錘の吊り車に巻き掛けられ、他端は昇降路の上部に固定される。そして、ロープの乗りかご側張力と釣合錘側張力との差と、駆動綱車とロープとの間に生じる摩擦力とが釣り合い、乗りかごと釣合錘とをつるべ式に駆動している。
ところで、つるべ式エレベータでは、ロープの構造により、駆動綱車や吊り車の構造が異なってくる。平成12年建設省告示1414号では、ロープの耐久性を確保するため、一般的な駆動綱車の直径Dはロープ径dの40倍以上(D/d>40)と定められている。従って、エレベータの省スペース化のために、駆動綱車や吊り車を小型化するためには、 ロープ構造を見直し、現行ロープと同等以上の耐久性を確保する必要がある。
従来、エレベータに用いられてきたロープの構造は、JIS B 3525に規定された繊維心構造が最も一般的である。繊維心を有するロープの断面は、図6に示すように、合成繊維、または天然繊維から作られる心綱9の周囲に金属の素線8によるストランド7が、6本から9本程度撚られた構造が多い。
このようなロープが巻きかけられる駆動綱車や吊り車の溝は、図7(a)(b)(c)に示される形状が一般的である。図7(a)はアンダーカット溝10を、同図(b)はV溝11を、同図(c)はU溝12を、それぞれ示している。アンダーカット溝10及びV溝11は、ロープと溝表面との間の接触圧が高く、駆動力となる摩擦力が大きいため駆動綱車に用いられる。 U溝12は、アンダーカット溝10やV溝11に比べて、ロープとの接触圧が低く、ロープへの負荷が小さいため、吊り車やそらせ車に用いられる。
図6に示したロープ、及び図7の溝を備えた駆動綱車や吊り車を、つるベ式エレベータに用いた場合、経年的に次のような損傷を生じることが知られている。即ち、駆動綱車や吊り車を通過する際に負荷されるロープへの曲げ及び摩擦により、素線の摩耗や断線が生じる。一般には駆動綱車の負荷が吊り車よりも高く、摩擦駆動力の作用によりロープ表面(図6のA部)に位置する素線8の摩耗、断線が先行して生じる。また、張力が加わると、ストランド7が心綱9を圧縮する方向の力が作用するので、特に張力の高い使用条件ではストランド7間(図6のB部)の素線8や、ストランド7と心綱9の接触部分(図6のC部)の素線8で断線を生じることがある。
近年、駆動綱車等の小型化を図れるロープ構造の一つとして、図8に示すような樹脂被覆ロープ構造が提案されている。なお、この樹脂被覆ロープとは別に、抗張力材が樹脂被覆されたスチールベルト構造が知られているが、このスチールベルト構造は、駆動綱車や吊り車をねじりの位置に配置することが、ベルトの耐久性の上から困難である。これに対し、樹脂被覆ロープ構造は、スチールベルト構造に比べてロープの敷設レイアウトの自由度が大きく、広く利用されている。
この樹脂被覆ロープ(例えば、特許文献1参照)の断面構造を図8により説明する。図8において、 鋼製の素線13を撚り合わせたストランド14を、複数本(図の例では7本)用いて1本のロープを構成している。各素線13には、素線被覆15が施され、ロープ全体は、ポリウレタンやポリエチレン等からなる中間被覆材16で覆われ、さらに、最外周にはポリウレタン等からなるロープ被覆17が施されている。
図8の構造では、駆動綱車や吊り車に巻き掛かった際の曲げや摩擦に対し、負荷を受ける鋼線部分が樹脂で被覆されていることにより、綱車や吊り車とロープ、及び素線間の接触圧を緩和し、また、素線に生じる曲げ応力を軽減して耐久性の向上を図っている。 ロープをこのような構造とすることで綱車や吊り車等の機器の小型化を図るとともに、従来の金属ロープで要した潤滑グリスの給油を要しないため、保守作業上の手間も少なく、環境負荷も小さいと考えられる。
しかし、図8の樹脂被覆ロープ構造は、図6に示したこれまでのロープに比べて複雑であり、製造工程が大きく増えるため、大幅なコストの増大が見込まれる。
発明が解決しようとする課題は、大幅なコスト上昇がなく、かつ素線の破損などが生じ難く、各種機器の小型化を可能としたエレベータ装置を提供することにある。
本発明の実施の形態に係るエレベータ装置は、乗りかごと釣合錘とをロープにより吊持し、前記ロープを巻き掛けた駆動綱車によって、前記乗りかごと釣合錘とをつるべ式に摩擦駆動するエレベータ装置であって、前記ロープには、鋼鉄製の心綱、及びこの心綱の周囲に配置された複数の鋼鉄製ストランドを有し、表面をポリウレタン樹脂により被覆した樹脂被覆ロープを用い、前記駆動綱車の、前記樹脂被覆ロープが巻き掛かる溝表面に、前記樹脂被覆ロープとの摩擦係数が、鋳鉄との摩擦係数より小さな低摩擦材料からなる被覆層を設けたことを特徴とする。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図5はこの実施の形態に係る機械室なし構造のつるべ式エレベータの概略構成を示す。図5において、建物内に形成した昇降路6内に、乗りかご1及び釣合錘2をそれぞれ対応するガイドレール(図示省略)により昇降可能に設置し、これら両者をロープ4によって吊支持している。そして、このロープ4を巻上機の駆動綱車3に巻き掛け、この駆動綱車3の回転により乗りかご1と釣合錘2とを相互に昇降駆動させている。この場合、ロープ4の一端は、昇降路6の上部に固定され、乗りかご1に設けられた吊り車5aに巻き掛けられた後、巻上機の駆動綱車3を経て釣合錘2の吊り車5bに巻き掛けられ、他端は昇降路6の上部に固定されている。これらの構造により、ロープ4の乗りかご1側の張力と釣合錘2側の張力との差と、駆動綱車3とロープ4との間に生じる摩擦力とを釣り合わさせ、駆動綱車3の回転により乗りかご1と釣合錘2とをつるべ式に駆動している。
ロープ4には、樹脂被覆ロープを用いる。樹脂被覆ロープは、前述したように駆動綱車3や吊り車5a,5b等の機器の小型化が図れ、金属ロープで要した潤滑グリスの給油を要しない等、保守作業上の手間が少なく、環境負荷も小さい。但し、図8で説明した樹脂被覆ロープ構造は、前述のように、これまでのロープに比べて複雑であり、製造工程が大きく増え、大幅なコストの増大が見込まれるので、本発明の実施の形態では、図3で示す簡単な構造の樹脂被覆ロープ4を用いる。この樹脂被覆ロープ4は、鋼鉄製の心綱18、及びこの心綱18の周囲に配置された複数の鋼鉄製ストランド19を有し、これら心綱18及び各ストランド19間に熱可塑性のポリウレタン樹脂20を充填し、同樹脂20によりロープ4の表面を被覆したものである。
すなわち、心綱18は鋼線からなる素線を撚って構成され、各ストランド19も鋼線からなる素線を撚って構成されている。心綱18及びその周囲に配置された複数のストランド19に対しては、熱可塑性のポリウレタン樹脂20が、それらの全周を覆うように、それらの間隙に充填され、その結果、ロープ表面がポリウレタン樹脂20により覆われた樹脂被覆構造となる。
このような樹脂被覆ロープ4では、外周を覆う樹脂として上述のようにポリウレタンが用いられる。その理由は、ポリウレタンが耐摩耗性と、トラクション(摩擦駆動力)を得るのに必要な高摩擦係数とを兼ね備えた材質であるためである。摩擦駆動力と摩擦係数との関係は、簡便には次式(1)で表される。
ΔT=κ・μ・T(θ)・Δθ ・・・(1)
式(1)において、左辺のΔTは駆動綱車への巻き掛かり角度Δθ当りの張力変化であり、これは 駆動綱車より受ける巻き掛かり角度Δθ当りの摩擦力と等しい。κは図7で説明した溝形状に依存する溝係数で、次式(2)(3)(4)で表される。また、μはロープと駆動綱車との聞の摩擦係数、Tは駆動綱車の周上で変わる張力である。
式(1)において、左辺のΔTは駆動綱車への巻き掛かり角度Δθ当りの張力変化であり、これは 駆動綱車より受ける巻き掛かり角度Δθ当りの摩擦力と等しい。κは図7で説明した溝形状に依存する溝係数で、次式(2)(3)(4)で表される。また、μはロープと駆動綱車との聞の摩擦係数、Tは駆動綱車の周上で変わる張力である。
ここで、式(4)で表されるU溝の溝係数κは、式(2)のアンダーカット溝の溝係数κや、式(3)のV溝の溝係数κと比較して小さく、摩擦駆動力が低い。
発明者らの検証によると樹脂被覆ロープ向けポリウレタンの摩擦係数は、鋳鉄材料との間で、乾燥摩擦状態で0.6〜0.9程度であり、硬度が低い材料ほど高い摩擦係数を示すものであった。これはグリス潤滑状態にある従来のワイヤロープの摩擦係数 0.08〜0.1と比べて数倍の摩擦力である。このため、樹脂被覆ロープでは、溝係数の小さいU溝形状であっても従来以上の摩擦駆動力を得ることができる。
式(6)において、Mcは乗りかごの質量、Mcwは釣合錘の質量、Wは積載質量、gは重力加速度、αはエレベータの運転加速度であり、乗りかごの質量Mc が小さいほど張力比Cは大きくなる。摩擦駆動するためには、ν>Cである必要があるが、樹脂被覆ロープでは、 ポリウレタン被覆の高摩擦係数により、従来以上の摩擦駆動力νを得られるため、乗りかごの質量Mcや釣合錘の質量Mcwの軽量化を図ることが可能となる。
図3で示した樹脂被覆ロープ4の摩擦駆動性能と耐久性を検証した結果、鋳鉄製U溝との組み合わせにおいて摩擦係数は0.7程度を有し、また、摩擦駆動力が負荷されない条件で行う曲げ疲労寿命評価では、従来よりも曲げ負荷の大きい小径(D/d=30)の綱車に対して素線の断線数が半分以下となる好結果を得た。
しかし、摩擦駆動力を想定した摩擦力を負荷する摩損評価においては、樹脂被覆の圧着力に対して過大な摩擦力が負荷されるために 被覆の剥離が生じ、実機で想定される摩擦距離に達する以前に被覆の破壊に至った。すなわち、図4で説明するように、樹脂被覆ロープ4では、ワイヤ部分41と樹脂被覆部分42とは圧着構成であるため、綱車3との巻き付け角の範囲に生じる密着部分の摩擦係数が高いと、図4(a)で示すように、ワイヤ部分41と樹脂被覆部分42との圧着部の端部に剥離xが生じ、この剥離xが起点となって同図(b)で示すように被覆部分42に破壊Xが生じる
また、実機において樹脂被覆ロープを用いる場合に考慮すべき問題として、建物火災等でロープ表面の樹脂被覆が脱落した場合における摩擦駆動性能の確保がある。通常運転時においては、ポリウレタン被覆によりU溝であっても従来以上の摩擦力を有するが、高温により被覆 が脱落した場合、抗張力部材である内部のワイヤロープは、U溝に対して必要な摩擦駆動 性能を維持できなくなる可能性がある。
また、実機において樹脂被覆ロープを用いる場合に考慮すべき問題として、建物火災等でロープ表面の樹脂被覆が脱落した場合における摩擦駆動性能の確保がある。通常運転時においては、ポリウレタン被覆によりU溝であっても従来以上の摩擦力を有するが、高温により被覆 が脱落した場合、抗張力部材である内部のワイヤロープは、U溝に対して必要な摩擦駆動 性能を維持できなくなる可能性がある。
この実施の形態は、ポリウレタン等の高摩擦、耐摩耗性に優れる樹脂がロープ外周を覆う樹脂被覆ロープに関する上記の問題を解決して、つるべ式エレベータに適合する低コストな樹脂被覆ロープの適用を実現するとともに、火災時等においても高い安全性を得ている。そのために、この実施の形態では、図1及び図2で示すように、図3で示した樹脂被覆ロープ4が巻き掛かる駆動綱車3の溝部22の表面に、樹脂被覆ロープとの摩擦係数が、鋳鉄との摩擦係数より小さな低摩擦材料からなる被覆層23を設けている。
図1はこの実施の形態での駆動綱車3の回転中心より上半部を示しており、図示左半分は断面構造を、図示右半分は表面形状をそれぞれ示している。図2は同駆動綱車3の構造部材の溝表面形状を、その回転中心より上半部について示している
図1において、駆動綱車3の周面には、図3で示した樹脂被覆されたロープ4を巻き掛けるための溝部22を複数条並列に形成している。この駆動綱車3は、図2で示す鋳鉄製の構造部材21と、図1で示すように、その表面に形成された被覆層23とからなる。構造部材21の、溝部22に相当する部分(鋳鉄部分)には、図7(a)で説明したアンダーカット溝10が形成されている。このアンダーカット溝10の横断方向内周面は、この溝に組み合わせられる図3の断面を有する樹脂被覆されたロープ4の、内部ワイヤロープ部分の径d1と略等しい曲率半径を有する形状とする。
図1において、駆動綱車3の周面には、図3で示した樹脂被覆されたロープ4を巻き掛けるための溝部22を複数条並列に形成している。この駆動綱車3は、図2で示す鋳鉄製の構造部材21と、図1で示すように、その表面に形成された被覆層23とからなる。構造部材21の、溝部22に相当する部分(鋳鉄部分)には、図7(a)で説明したアンダーカット溝10が形成されている。このアンダーカット溝10の横断方向内周面は、この溝に組み合わせられる図3の断面を有する樹脂被覆されたロープ4の、内部ワイヤロープ部分の径d1と略等しい曲率半径を有する形状とする。
被覆層23は、例えば、ナイロン樹脂等の熱可塑性の低摩擦材料を用いる。なお、被覆層23は、樹脂被覆ロープ4との摩擦係数が、鋳鉄との摩擦係数より小さくなる低摩擦材料であればよく、ナイロン樹脂に限るものではない。
上述した構造部材21のアンダーカット溝10の周方向の複数個所には、被覆層23の周方向へのズレを抑制するための係合部として固定穴25が設けられている。この固定穴25は、上述のようにアンダーカット溝10の周方向の複数個所に、アンダーカット幅Eより大きく、かつ組み合わされる樹脂被覆ロープ4の公称径よりも小さい直径で、構造部材21の回転中心に向かって、アンダーカット深さ以上の深さに形成する。
ここで、駆動綱車3の製造に当っては、被覆層23を形成する熱可塑性樹脂による溝被覆部材が流動性を有するときに、鋳鉄製の構造部材21を漬け込む。このため、流動性を有する溝被覆部材が構造部材21のアンダーカット溝10内に流し込まれ、アンダーカット部分24や固定穴25内に充填される。そして、溝被覆部材を冷却、固化後、樹脂被覆ロープ4が巻き掛けられるU溝形状に旋削加工され、低摩擦材料からなる被覆層23が形成される。
このように、鋳鉄製の構造部材21の表面に低摩擦材料による被覆層23を形成して駆動綱車3を構成したので、その溝部22へ、図3で示した樹脂被覆されたロープ4を巻きかけて駆動した場合、樹脂被覆されたロープ4の表面と駆動綱車3の溝部22との間に生じる摩擦力を従来に比べ大幅に低減できる。例えば、ポリウレタン被覆による樹脂被覆ロープと一般的な鋳鉄製U溝の組合わせに比べ、ロープと溝との聞に作用する摩擦力が大幅に低下する。
発明者らの検証によると、ポリウレタン被覆材と鋳鉄材との組み合わせでは摩擦係数が0.7程度であったが、鋳鉄側を低摩擦材料であるナイロン樹脂とすることで、 摩擦係数は0.4程度に軽減した。また、ナイロン樹脂に固体潤滑剤である二硫化モリブデンやグラファイトを添加することにより、ポリウレタンとの組み合わせにおいても摩擦係数がさらに軽減した。すなわち、二硫化モリブデンを1〜3%、また、グラファイトを5〜10%添加したナイロン材の摩擦係数は0.3以下となった。
図3に示した樹脂被覆ロープ4を、鋳鉄製の綱車に巻きかけて駆動した場合に生じたポリウレタン被覆破壊は、図4を用いて前述したように、概略的には、綱車溝表面から繰り返し受ける摩擦駆動力により、被覆がワイヤ部分から剥離変形し、被覆の断裂に至るものであった。そのため溝側の材料を摩擦係数の低い材料とすることでロープ側ポリウレタン被覆との摩擦力が軽減し、ポリウレタン被覆の損傷を抑制することができる。
検証によると、本実施の形態において低摩擦材料の被覆層23として用いるナイロン樹脂については、 二硫化モリブデン1〜3%、またはグラファイト5〜10%を添加したナイロン樹脂を用いることにより、実用的な耐摩耗性能を確保できる結果となった。
また、ナイロン樹脂材を被覆層23として綱車3の溝部22に設ける構造とした場合、火災などによる高温時に、ロープ4のポリウレタン被覆が軟化し脱落した場合、金属ワイヤとの接触により、被覆層23も容易に脱落する。すなわち、火災時に、ロープ4のポリウレタン被覆が脱落した際には、その内部ワイヤロープ部分が、ナイロン樹脂による被覆層23を除去し、内部ワイヤロープ部分の表面がアンダーカット溝10状に形成した駆動綱車3の鋳鉄製構造部材21に巻き掛かることとなる。このため、駆動綱車3は、従来のワイヤロープが巻きかかった場合と同等の摩擦駆動力を確保できる。
また、一般にナイロン樹脂材の線膨張係数は、駆動綱車3の構造部材21を形成する鋳鉄と比べて約7倍と大きい。そのため、ナイロン樹脂材を被覆層23に用いた場合、季節的な温度上昇とロープからの外力による経年的変形とにより、駆動綱車3の構造部材21との密着性が低下する。 しかし、図2に示した固定穴25による係合部を設けることで、摩擦駆動力による周方向のズレを防止することができる。なお、この係合部は、構造部材21と被覆層23とのずれを防止できる構造であればなんでもよく、固定穴25に限らず、他の周知の係止構造を用いてもよい。
上述した実施の形態によれば、低摩擦材料による被覆層を施した駆動綱車の溝構造を用いることにより、簡単な構造の樹脂被覆ロープであっても実用的なロープ寿命を確保でき、また、火災時においても従来と同等の摩擦駆動力を得ることができる。すなわち、安全で、エレベータの省スペース化を図れる樹脂被覆ロープ駆動システムを低コストで実現できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1・・・乗りかご
2・・・釣合錘
3・・・駆動綱車
4・・・ロープ
20…ロープの樹脂被覆
23・・・低摩擦材料による被覆層
21・・・鋳鉄製の構造部材
22・・・溝部
23・・・低摩擦材料による被覆層
24・・・アンダーカット部
25・・・係合部として用いられる固定穴
2・・・釣合錘
3・・・駆動綱車
4・・・ロープ
20…ロープの樹脂被覆
23・・・低摩擦材料による被覆層
21・・・鋳鉄製の構造部材
22・・・溝部
23・・・低摩擦材料による被覆層
24・・・アンダーカット部
25・・・係合部として用いられる固定穴
Claims (6)
- 乗りかごと釣合錘とをロープにより吊持し、前記ロープを巻き掛けた駆動綱車によって、前記乗りかごと釣合錘とをつるべ式に摩擦駆動するエレベータ装置であって、
前記ロープには、鋼鉄製の心綱、及びこの心綱の周囲に配置された複数の鋼鉄製ストランドを有し、表面をポリウレタン樹脂により被覆した樹脂被覆ロープを用い、
前記駆動綱車の、前記樹脂被覆ロープが巻き掛かる溝表面に、前記樹脂被覆ロープとの摩擦係数が、鋳鉄との摩擦係数より小さな低摩擦材料からなる被覆層を設けた
ことを特徴とするエレベータ装置。 - 前記低摩擦材料からなる被覆層として、ナイロン樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
- 前記低摩擦材料からなる被覆層として、二硫化モリブデンを添加したナイロン樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
- 前記低摩擦材料からなる被覆層として、グラファイトを添加したナイロン樹脂を用いることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
- 前記低摩擦材料からなる被覆層が設けられる綱車の構造部材として、鋳鉄材料を用いるとともに、前記被覆層の、周方向への移動を抑制するための係合部を、前記構造部材の前記ロープが巻き掛けられる周方向の複数個所に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエレベータ装置。
- 前記駆動綱車の前記ロープが巻き掛けられる溝部分の、鋳鉄製構造部材の形状がアンダーカット溝であることを特徴とする請求項5に記載のエレベータ装置。
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A02 | Decision of refusal |
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