JP2011147437A - フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼの比活性を向上する方法 - Google Patents
フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼの比活性を向上する方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】フラビンアデニン依存性グルコースデヒドロゲナーゼを遺伝子レベルで改変することで、改変前のフラビンアデニン依存性グルコースデヒドロゲナーゼ活性よりも基質との反応性が向上したフラビンアデニン依存性グルコースデヒドロゲナーゼ。
【選択図】なし
Description
また、特許文献1にはAspergillus terreus(アスペルギルス・テレウス)由来FADGDHの遺伝子配列、アミノ酸配列が記載されている。
また、特許文献2にはAspergillus oryzae(アスペルギルス・オリゼ)由来FADGDHが、特許文献3には、Aspergillus oryzae由来FADGDHを改変し熱安定性が向上した改変型FADGDHが記載されている。
その結果、本発明者らはFADGDHの特定の位置のアミノ酸を他のアミノ酸に置換して得られた改変型FADGDHの比活性が向上することを見出し、本発明を完成させた。
項1.
以下の(a)〜(c)のいずれかで表されるタンパク質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、412位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、412位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(c)配列番号23に記載のアミノ酸配列において、408位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(d)配列番号1または配列番号2または配列番号23の少なくとも1以上と63.7%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、配列番号1の412位、配列番号2の412位、および、配列番号23の408位からなる群のうちいずれかと同等の部位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
項2.
項1に記載のタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質
項3.
項1または2に記載のタンパク質において、配列番号1の412位、配列番号2の412位、および、配列番号23の408位からなる群のうちいずれかと同一または同等の部位
のアミノ酸が、システイン、グルタミン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、スレオニン、バリンおよびチロシンからなる群より選ばれるいずれかに置換されているタンパク質。
項4.
項1〜3のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
項5.
項4に記載の遺伝子を含むベクター。
項6.
項5に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
項7.
項6に記載の形質転換体を培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法。
項8.
項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースアッセイキット。
項9.
項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースセンサー。
項10.
項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコース測定法。
本願明細書において、アミノ酸配列はアルファベット1文字または3文字で表記する。また、アミノ酸の変異の位置については次のように表記する。例えば、「S412L」は412位のS(Ser)がL(Leu)に置換することを意味する。なお、配列番号1、配列番号2、配列番号23において、アミノ酸の表記は、メチオニンを1として番号付けされている。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、412位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、412位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(c)配列番号23に記載のアミノ酸配列において、408位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
配列番号1と配列番号2のFADGDHは、熱安定性以外の酵素特性は変化していないことを確かめている。例えば、比活性については、いずれのFADGDHも、約600U/A280であり、ほぼ一致していた。
(d)配列番号1または配列番号2または配列番号23の少なくとも1以上と63.7%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、配列番号1の412位、配列番号2の412位、および、配列番号23の408位からなる群のうちいずれかと同等の部位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
また、本願明細書において、あるアミノ酸配列における配列番号1の412位と同等の位置は、GENETYXソフトで配列を比較したとき、配列番号1の412位と対応する位置をもって同等と判断する。
なお、GENETYXソフトは、GENETYX CORPORATIONから販売され
ているVersion 6.1のものを使用した。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列、
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列、
(3)配列番号23に記載のアミノ酸配列、または、
(4)配列番号1または配列番号2または配列番号23の少なくとも1以上と63.7%以上の相同性、好ましくは70%以上の相同性、より好ましくは90%以上の相同性、さ
らにより好ましくは95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質、
のいずれかを改変したFADGDH改変体であって、その比活性が改変前のFADGDHと比較して向上したものである。
以下に、配列番号1で示される野生型のアスペルギルス・オリゼ由来のFADGDHを改変したFADGDH改変体の製造法を例示する。製造法は、特に限定されないが、以下に示すような手順で製造することが可能である。
フラビンアデニン依存性グルコースデヒドロゲナーゼを構成するアミノ酸配列を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変タンパク質の遺伝情報を有するDNAが作成される。DNA中の塩基配列を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(Transformer Mutagenesis Kit;Clonetech社, EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製, Quick Change Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
Aspergillus oryzae由来のFADGDHとしては、配列番号1または
配列番号2で表されるタンパク質が例示できる。
Aspergillus terreus由来のFADGDHとしては、配列番号23で表されるタンパク質が例示できる。
(1)配列番号1の412位、
(2)配列番号2の412位、
(3)配列番号23の408位、もしくは、
(4)配列番号1の412位、配列番号2の412位、および、配列番号23の408位からなる群のうちいずれかと同等の部位のアミノ酸
をコードする部分が、他のアミノ酸をコードするように置換されている。
(a)タンパク質実験プロトコール第1巻 機能解析編,第2巻 構造解析編 (秀潤社) 西村善文,大野茂男 監修
(b)改訂 タンパク質実験ノート 上 抽出と分離精製 (洋土社) 岡田雅人,宮崎香
編集
(c)タンパク質実験の進めかた (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
あるいは以下に例示する方法によって進めることもできる。
また、適当な宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自立増殖可能で外来遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。エシェリヒア・コリではエシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリDH5αなどを用いることができる。
Kit;Clonetech製,EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。
社製)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)、オクチルセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
[試験例]
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1% TritonX−100を含む)
24mM PMS溶液
2.0mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液21.9ml、DCPIP溶液1.0ml、PMS溶液2.0ml、D―グルコース溶液4.5mlを混合して反応試薬とする。
反応試薬3mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。
活性(U/ml)=
{−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率}/{16.3×0.1×1.0}
なお、式中の3.0は反応試薬+酵素溶液の液量(ml)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(ml)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
本発明はまた、本発明に従う改変型FADGDHを含むグルコースアッセイキットを特徴とする。本発明のグルコースアッセイキットは、本発明に従う改変型FADGDHを少なくとも1回のアッセイに十分な量で含む。典型的には、キットは、本発明の改変型FADGDHに加えて、アッセイに必要な緩衝液、メディエーター、キャリブレーションカーブ作製のためのグルコース標準溶液、ならびに使用の指針を含む。本発明に従う改変型FADGDHは種々の形態で、例えば、凍結乾燥された試薬として、または適切な保存溶液中の溶液として提供することができる。
本発明はまた、本発明に従う改変型FADGDHを用いるグルコースセンサーを特徴とする。電極としては、カーボン電極、金電極、白金電極などを用い、この電極上に本発明の酵素を固定化する。固定化方法としては、架橋試薬を用いる方法、高分子マトリックス中に封入する方法、透析膜で被覆する方法、光架橋性ポリマー、導電性ポリマー、酸化還元ポリマーなどがあり、あるいはフェロセンあるいはその誘導体に代表される電子メディエーターとともにポリマー中に固定あるいは電極上に吸着固定してもよく、またこれらを組み合わせて用いてもよい。典型的には、グルタルアルデヒドを用いて本発明の改変型FADGDHをカーボン電極上に固定化した後、アミン基を有する試薬で処理してグルタルアルデヒドをブロッキングする。
FADGDHをコードする遺伝子(配列番号25:配列番号2で表されるタンパク質をコードする。)を含む組み換えプラスミドpAOGDH−M76で市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5α;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだ寒天培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、1.5%寒天;pH7.3)に塗布した後、30℃で一晩培養した。得られた形質転換体をアンピシリン(50mg/ml;ナカライテスク社製)を含んだ液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl;pH7.3)を摂取し、30℃で一晩振とう培養した。得られた菌体から常法によりプラスミドを調整した。
該プラスミドを鋳型として、16番目(実施例1〜5においては、配列番号2におけるN末端からの位置を示す。「部位」「位」も同義。)のスレオニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号3の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、17番目のセリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号4の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、48番目のバリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号5の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、49番目のスレオニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号6の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、58番目のフェニルアラニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号7の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、90番目のスレオニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号8の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、96番目のメチオニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号9の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、97番目のアラニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号10の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、412番目のセリンを複数種のアミノ酸に置換するように設計した配列番号22の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、420番目のプロリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号11の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、421番目のフェニルアラニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号12の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、423番目のアルギニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号13の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、499番目のアラニンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号14の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、500番目のアスパラギンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号15の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、503番目のセリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号16の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、506番目のアスパラギンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号17の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、507番目のプロリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号18の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、508番目のバリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号19の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、537番目のバリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号20の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、546番目のバリンを複数種のアミノ酸に置換するよう設計した配列番号21の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、QuickChangeTMSite−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、そのプロトコールに従って変異操作を行い、改変型FADGDHを作成した。
得られた改変型FADGDHで市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5α;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだLB寒天培地で37℃、16時間培養した。その後、改変型FADGDHのシングルコロニーをアンピシリンを含んだLB液体培地に摂取し、30℃で一晩振とう培養した。その培養液の一部から遠心分離によって得られた菌体を回収し、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中でガラスビーズを用いて該菌体を破砕することにより粗酵素液を調製した。
実施例2で作製した412部位を改変した複数のシングルコロニーをLB液体培地に摂取し、常法によりプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドの412部位をDNAシークエンサー(ABI PRISMTM 3700DNA Analyzer;Perkin−Elmer製)を用いて特定し、19種のアミノ酸に置換した改変型FADGDHを取得した。412部位をAに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412A、412部位をCに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412C、412部位をEに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412E、412部位をFに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412F、412部位をHに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412H、412部位をIに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412I、412部位をKに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412K、412部位をLに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412L、412部位をMに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412M、412部位をNに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412N、412部位をQに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412Q、412部位をRに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412R、412部位をTに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412T、412部位をVに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412V、412部位をYに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412Y、412部位をDに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412D、412部位をPに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412P、412部位をWに置換した改変型FADGDHを有するプラスミドをpAOGDH−S412Wと命名した。
実施例3で取得した412部位置換した19種のFADGDH改変体を、50ml LB培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、0.02%アデカノールLG−126、アンピシリン100μg/ml;pH7.3)を用いて、30℃で46時間振とう培養した。その後、実施例2と同様の方法で粗酵素液を調製し、培養力価を測定した。表2にFADGDH改変体の培養力価の結果を示す。412部位をAに置換した改変型FADGDH、412部位をDに置換した改変型FADGDH、412部位をPに置換した改変型FADGDH、412部位をWに置換した改変型FADGDHを除く全ての改変体で改変前のFADGDHより培養力価が5割以上向上した。
表2で示されるように、50ml LB培地/500ml坂口フラスコ,30℃,46時間培養した時のFADGDH改変体の培養力価の比較した結果、S412A,S412D,S412P,S412Wを除く全ての改変体の培養力価は、配列番号2の2重変異体(表2では「FADGDH改変体1」と記載)と比較して向上していた。
表3で示されるように、6L LB培地/10m3−ジャーファーメンター,30℃,84時間培養した時のFADGDH改変体(S412L,S412I,S412L,S412V,S412K)の培養力価の比較した結果、全ての改変体の培養力価は配列番号2の2重変異体(表2では「FADGDH改変体1」と記載)と比較して2割以上向上していた。
改変型FADGDHを10L容ジャーファーメンターを用いて、LB培地に培養温度30℃で84時間培養した。培養菌体を遠心分離で集めた後、50mMのリン酸バッファー(pH6.5)に懸濁し、除核酸処理後、遠心分離して上清を得た。これに硫酸アンモニウムを飽和量溶解させて目的タンパク質を沈殿させ、遠心分離で集めた沈殿を50mMのリン酸バッファー(pH6.5)に再溶解させた。そしてG−25セファロースカラムによるゲルろ過、Phenyl−セファロースカラムによる疎水クロマト(溶出条件は共に25%飽和〜0%の硫酸アンモニウム濃度勾配をかけてピークフラクションを抽出)を実施し、さらにG−25セファロースカラムによるゲルろ過で硫酸アンモニウムを除去し改変型FADGDHの標品とした。
表4で示されるように、FADGDH改変体(S412I,S412V)から酵素を精製し比活性を比較した結果、FADGDH改変体の比活性は配列番号2の2重変異体(表2では「FADGDH改変体1」と記載)と比較して3割程度向上していた。
アスペルギルス・テレウス由来のFADGDHをコードする遺伝子(配列番号26)を含む組み換えプラスミドpATGDHで市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5α;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだ寒天培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl、1.5%寒天;pH7.3)に塗布した後、30℃で一晩培養した。得られた形質転換体をアンピシリン(50mg/ml;ナカライテスク社製)を含んだ液体培地(1%ポリペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%NaCl;pH7.3)に摂取し、30℃で一晩振とう培養した。得られた菌体から常法によりプラスミドを調製した。
なお、GENETYXソフトにて、アスペルギルス・オリゼ由来の野生型FADGDHのアミノ酸配列と、アスペルギルス・テレウス由来の野生型FADGDHのアミノ酸配列を比較分析したところ、63.7%の相同性があり、配列番号1または2の412部位のアミノ酸は、配列番号23の408部位のアミノ酸に相当することが明らかとなった。(図1参照)
そこで、アスペルギルス・テレウス由来のFADGDHの408位はフェニルアラニンであり、アスペルギルス・オリゼ由来のFADGDHの412位のセリンとは異なるが、この408位のフェニルアラニンを部位特異的アミノ酸置換して比活性を比較検討することにした。
該プラスミドを鋳型として、408位(実施例6〜8においては、配列番号23におけるN末端からの位置を示す。「部位」「位」も同義。)のフェニルアラニンをセリンに置換するよう設計した配列番号27の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、または、イソロイシンに置換するよう設計した配列番号28の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチド、または、バリンに置換するよう設計した配列番号29の合成オリゴヌクレオチドとそれに相補的な合成オリゴヌクレオチドを基に、Quick Change Site−Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、そのプロトコールに従って変異操作を行い、野生型のフェニルアラニンが、セリンあるいはイソロイシンあるいはバリンに置換した3種類の改変型FADGDH発現プラスミドを作製した。
得られた3種類の改変型FADGDH発現プラスミドで市販の大腸菌コンピテントセル(E.coli DH5α;TOYOBO社製)を形質転換し、アンピシリンを含んだLB寒天培地に塗布した後、30℃で一晩培養した。その後、改変型FADGDHのシングルコロニーをアンピシリンを含んだTB液体培地(1.2%ポリペプトン、2.4%酵母エキス、0.4%グリセロール、1.25%リン酸2カリウム、0.23%リン酸1カリウム)に摂取し、25℃で2日間振とう培養した。その培養液の一部から遠心分離によって得られた菌体を回収し、50mMのリン酸緩衝液(pH7.0)中でガラスビーズを用いて該菌体を破砕することにより粗酵素液を調製した。
改変型FADGDHを2L容坂口フラスコを用いて、TB培地に培養温度25℃で52時間培養した。培養菌体を遠心分離で集めた後、50mMのリン酸バッファー(pH6.0)に懸濁し、除核酸処理後、遠心分離して上清を得た。これに硫酸アンモニウムを飽和量溶解させて目的タンパク質を沈殿させ、遠心分離で集めた沈殿を50mMのリン酸バッファー(pH6.0)に再溶解させた。そしてG−25セファロースカラムによるゲルろ過、DEAE−セファロースカラムによるイオン交換クロマト(溶出条件は全て0〜0.4M NaCl濃度勾配をかけてピークフラクションを抽出)を実施した。そしてG−25セファロースカラムによるゲルろ過、Phenyl−セファロースカラムによる疎水クロマト(溶出条件は全て25%飽和〜0%の硫酸アンモニウム濃度勾配をかけてピークフラクションを抽出)を実施し、さらにG−25セファロースカラムによるゲルろ過で硫酸アンモニウムを除去し改変型FADGDHの標品とした。
このように、アスペルギルス・オリゼ由来の野生型FADGDHのアミノ酸配列と少なくとも63.7%(GENETYXソフトにて計算)以上の相同性を有するFADGDHにおいては、配列番号1または2の412部位に相当するアミノ酸を置換することにより比活性が向上する可能性が高いことが明らかになった。この現象は、相同性を有するFADGDH全てに有効な技術であるが、糸状菌由来のFADGDHにおいては、特に、比活性を向上する有効な部位であり、少なくとも、アスペルギルス属由来のFADGDHにおいては、比活性を向上する改変型FADGDHがほぼ間違いなく作製できるものと考える。
Claims (10)
- 以下の(a)〜(d)のいずれかで表されるタンパク質。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列において、412位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において、412位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(c)配列番号23に記載のアミノ酸配列において、408位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。
(d)配列番号1または配列番号2または配列番号23の少なくとも1以上と63.7%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするアミノ酸配列において、配列番号1の412位、配列番号2の412位、および、配列番号23の408位からなる群のうちいずれかと同等の部位のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されているタンパク質。 - 請求項1に記載のタンパク質において、アミノ酸が置換された位置以外の位置において、さらに、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質
- 請求項1または2に記載のタンパク質において、配列番号1の412位、配列番号2の412位、および、配列番号23の408位からなる群のうちいずれかと同一または同等の部位のアミノ酸が、システイン、グルタミン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、グルタミン、アルギニン、スレオニン、バリンおよびチロシンからなる群より選ばれるいずれかに置換されているタンパク質。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
- 請求項4に記載の遺伝子を含むベクター。
- 請求項5に記載のベクターで形質転換された形質転換体。
- 請求項6に記載の形質転換体を培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースアッセイキット。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコースセンサー。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のタンパク質を含むグルコース測定法。
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