JP2008206433A - グルコースデヒドロゲナーゼをコードするdna - Google Patents
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Abstract
【課題】DNA組換え技術により、効率的にフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼを製造する方法の提供。
【解決手段】複数の特定の塩基配列からなるDNA又は該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであって、大腸菌K12株での翻訳に合わせて設計されたDNA。
【選択図】なし
【解決手段】複数の特定の塩基配列からなるDNA又は該DNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであって、大腸菌K12株での翻訳に合わせて設計されたDNA。
【選択図】なし
Description
本発明は、フラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAに関する。
血糖自己測定は、糖尿病患者が通常の自分の血糖値を把握し治療に生かすために重要である。血糖自己測定に用いられるセンサにはグルコースを基質とする酵素が利用されている。そのような酵素の例としては、例えばグルコースオキシダーゼ(EC 1.1.3.4)が挙げられる。グルコースオキシダーゼはグルコースに対する特異性が高く、熱安定性に優れているという利点を有していることから血糖センサ用酵素として古くから利用されており、その最初の発表は実に40年ほど前に遡る。グルコースオキシダーゼを利用した血糖センサにおいては、グルコースを酸化してD−グルコノ−δ−ラクトンに変換する過程で生じる電子がメディエーターを介して電極に渡されることで測定がなされるが、グルコースオキシダーゼは反応で生じたプロトンを酸素に渡しやすいため溶存酸素が測定値に影響してしまうという問題があった。
このような問題を回避するために、例えばNAD(P)依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.47)あるいはピロロピノリンキノン依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.5.2)が血糖センサ用酵素として用いられている。これらは溶存酸素の影響を受けない点で優位であるが、前者のNAD(P)依存性グルコースデヒドロゲナーゼは安定性の乏しさや補酵素の添加が必要という煩雑性がある。一方後者のピロロピノリンキノン依存性グルコースデヒドロゲナーゼは、基質特異性に乏しくマルトースやラクトースといったグルコース以外の糖類にも作用するため、測定値の正確性を損ねる可能性があるという欠点がある。
一方、別のタイプのグルコースデヒドロゲナーゼとして、非特許文献1〜4や特許文献1にはフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)依存性グルコースデヒドロゲナーゼについて報告されている。本酵素は基質特異性に優れかつ溶存酸素の影響を受けない点で優位である。熱安定性については50℃15分処理で89%程度の活性残存率であり安定性についても優れているとされている。特許文献2には、そのDNA配列、アミノ酸配列が報告されている。
しかしながら、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼの製造は、組換えDNA技術を用いても困難を極めている。実際、特許文献2において開示されているFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼの組換え大腸菌K12株において0.09U/mlと、極めて低いレベルであった。大腸菌K12株は、組換え生産において最も汎用され、組換え操作が簡便で、培養のし易さ、安全性の面などから工業的に多用されている宿主である。したがって、大腸菌K12株を宿主とした組換え体により、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼを効率的に生産する方法が望まれていた。
Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):265−76 Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):277−93 Biochim Biophys Acta.146(2):317−27 Biochim Biophys Acta.146(2):328−35 WO 2004/058958
WO 2006/101239
Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):265−76 Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):277−93 Biochim Biophys Acta.146(2):317−27 Biochim Biophys Acta.146(2):328−35
本発明の目的は、DNA組換え技術により、血糖センサー用酵素として実用面において有利なFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼを効率的に製造する方法を提供することである。より具体的には、大腸菌K12株において効率的に発現するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を作成し、利用することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を取得し、該遺伝子を用い、大腸菌K12株のコドン使用頻度およびメッセンジャーRNA(mRNA)の二次構造の両面のバランスを考慮してDNA配列を改変することにより、大腸菌K12株において効率的に発現するFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子が作成できることを見出し、本出願に到った。
本発明によれば、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAを、大腸菌K12株での翻訳に合わせて設計することにより、大腸菌K12株においてFAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼを効率的に製造することが可能になる。
すなわち、本発明は以下のようなものである。
[項1]配列番号1〜10記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[項2]以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、項1記載のDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質
[項3]配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、項1記載のDNA。
[項4]配列番号11〜15記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[項5]以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、項4記載のDNA。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質
[項6]配列番号11に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、項4記載のDNA。
[項7]配列番号16〜20記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[項8]以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、項7記載のDNA。
(a)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号16に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質
[項9]配列番号16に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、項7記載のDNA。
[項10]項1〜9のいずれかのDNAを含む組換えベクター。
[項11]項10に記載の組換えベクターにより形質転換された大腸菌K12株形質転換体。
[項12]項11に記載の大腸菌K12株形質転換体を栄養培地にて培養し、GDH活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするGDH活性を有するタンパク質を製造する方法。
[項13]項12に記載の製造方法により得られた、GDH活性を有するタンパク質。
[項1]配列番号1〜10記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[項2]以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、項1記載のDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質
[項3]配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、項1記載のDNA。
[項4]配列番号11〜15記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[項5]以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、項4記載のDNA。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質
[項6]配列番号11に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、項4記載のDNA。
[項7]配列番号16〜20記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
[項8]以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、項7記載のDNA。
(a)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号16に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質
[項9]配列番号16に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、項7記載のDNA。
[項10]項1〜9のいずれかのDNAを含む組換えベクター。
[項11]項10に記載の組換えベクターにより形質転換された大腸菌K12株形質転換体。
[項12]項11に記載の大腸菌K12株形質転換体を栄養培地にて培養し、GDH活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするGDH活性を有するタンパク質を製造する方法。
[項13]項12に記載の製造方法により得られた、GDH活性を有するタンパク質。
本発明により、効率的にフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼを生産し、取得することが可能になった。
本発明者らは、上記目的を達成するために、まずNCBIのデータベースを利用し、FAD依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHと示す)と推測される遺伝子DNAを見出した。
本発明者らは、非特許文献1〜4、NCBIのデータベースなどから、GDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)の同定は容易になしうると予想していた。そしてさらに、当該遺伝子を含有する組換えベクターを作製し、形質転換した形質転換体を作り、形質転換体が発現する当該遺伝子がコードするタンパク質を精製することも容易になしうると考えていた。具体的には、非特許文献1〜4に記載された方法や公知技術を参考にしてアスペルギルス・オリゼを培養し、その培養上清から各種クロマトグラフィーを用いてGDHを精製して、その末端アミノ酸配列などを分析してプローブを作製し、GDHをコードする遺伝子を単離することを試みた。
本発明者らは種々検討したが、通常行う塩析、クロマトグラフィー等を用いた精製法では、アスペルギルス・オリゼ培養上清から、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得るのは困難であることが分かった。酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が精製、確認を困難にしている原因の1つであると推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得ないと判断した。このため、遺伝子取得には多くの試行錯誤をともない、非常な困難を極めたが、鋭意検討の結果、アスペルギルス・オリゼ由来のGDHをコードする遺伝子を単離した。その詳細は実施例に後述する。
また、本発明者らは他起源のGDH遺伝子の取得についても種々検討し、ペニシリウム属(Penicillium lilacinoechinulatum)由来のGDHをコードする遺伝子、およびアスペルギルス・テレウス由来のGDHをコードする遺伝子を単離した。その詳細も実施例に後述する。
本発明のGDH活性を有するタンパク質をコードするDNAのサイズは、GDH活性を有するタンパク質の予想される好適な分子量範囲を鑑み、1500〜2000bpが好ましく、1700〜1800bpがより好ましい。
また後述のように、本発明のGDH活性を有するタンパク質をコードするDNAは、タンパク質の生産を行う際に重要な遺伝子の翻訳効率の向上を指標として設計されている。このような翻訳効率の向上に関与する因子として、GDH遺伝子のmRNA読み取りに主として関与する二次構造をとり得る配列の存在確率と、タンパク質合成に主として関与するコドン使用頻度とが挙げられる。
なお、本発明では、二次構造をとり得る配列はGDH遺伝子内のヘアピン構造をとり得る領域として定義する。ヘアピン構造領域は、ステム部位の長さが10〜50塩基対、ループ部位の長さが1〜50塩基、ステム部位のマッチングの確率が80%を超えるものと定義する。同一ステム部位を有するヘアピン構造については、ステム部位のマッチングの確率がより高いものをピックアップし、ステム部位のマッチングの確率が同じであればループ部位の長さが短いものを選択する。二次構造をとり得る配列の存在確率は、上記ヘアピン構造領域を構成する塩基の全体に対する割合とする。
また、本発明では、コドン使用頻度を表わす指標として、各コドンの大腸菌K12株最適コドン使用頻度の総計を採用する。最適コドンとは、同じアミノ酸に対応するコドンのうち出現頻度が最も高いコドンと定義する。大腸菌K12株の遺伝子は全て決定されており、各アミノ酸の最適コドンは既に判明している。以下に、大腸菌K12株の最適コドンを記す。
グリシン:ggc
プロリン:ccg
アラニン:gcg
バリン:gtg
ロイシン:ctg
イソロイシン:att
メチオニン:atg
フェニルアラニン:ttt
チロシン:tat
トリプトファン:tgg
セリン:agc
スレオニン:acc
システイン:tgc
ヒスチジン:cat
アルギニン:cgc
リジン:aaa
アスパラギン:aac
グルタミン:cag
アスパラギン酸:gat
グルタミン酸:gaa
プロリン:ccg
アラニン:gcg
バリン:gtg
ロイシン:ctg
イソロイシン:att
メチオニン:atg
フェニルアラニン:ttt
チロシン:tat
トリプトファン:tgg
セリン:agc
スレオニン:acc
システイン:tgc
ヒスチジン:cat
アルギニン:cgc
リジン:aaa
アスパラギン:aac
グルタミン:cag
アスパラギン酸:gat
グルタミン酸:gaa
本発明のGDHをコードするDNA(遺伝子)は、後述するGDHの活性とタンパク質生産とのバランスを良好にする観点から、その二次構造をとり得る配列の存在確率が、下限は1%、上限は20%がそれぞれ好ましく、かつその各コドンの大腸菌K12株最適コドン使用頻度の総計が35%以上であるように実現されてなるのが好ましい。
一般に、二次構造をとり得る配列の存在確率が低ければ低いほどmRNA読み取り速度は大きく、したがって二次構造をとり得る配列の存在確率の低い遺伝子はGDHの翻訳効率は向上されるが、余りに低いとアミノ酸残基の選択性が低くなってしまうので、十分なGDH活性を有するタンパク質が得られる可能性も低くなってしまう。
またGDHをコードするDNAは異種遺伝子であり、元々大腸菌K12株には存在せず、コドン使用頻度がかなり異なっている。したがって、ある程度の翻訳は見込まれるが、コドン使用頻度の総計が大きくなるほどタンパク質合成の速度が大きくなり、GDHの翻訳効率が向上する。このコドン使用頻度の総計の値は、大きい分には特に問題とはならないが、大きい値を得るためには二次構造をとり得る配列の存在確率とのバランスや、さらには採り得る遺伝子操作の手法までも制約を受けることになる。
本発明のDNAにおいて、生成するmRNAが二次構造をとり得る配列の存在確率は、全塩基配列に対して、下限は好ましくは1%、さらに好ましくは7%であり、上限は好ましくは20%、さらに好ましくは15%である。
上記確率が全塩基配列に対して1%未満であると、アミノ酸残基の選択性が低くなってしまうので、十分なGDH活性を有するタンパク質が得られる可能性も低くなる傾向にあるためであり、また上記確率が全塩基配列に対して20%を超えると、遺伝子の発現に悪影響を及ぼし、GDH生産の効率が低下する傾向にあるためである。
上記確率が全塩基配列に対して1%未満であると、アミノ酸残基の選択性が低くなってしまうので、十分なGDH活性を有するタンパク質が得られる可能性も低くなる傾向にあるためであり、また上記確率が全塩基配列に対して20%を超えると、遺伝子の発現に悪影響を及ぼし、GDH生産の効率が低下する傾向にあるためである。
本発明のDNAにおいて、その各コドンの大腸菌K12株最適コドン使用頻度の総計が35%以上であるのが好ましく、40%以上であるのがより好ましい。
上記確率が全塩基配列に対して35%未満であると、タンパク質合成の速度に悪影響を及ぼし、GDH生産の効率が低下する傾向にあるためである
上記確率が全塩基配列に対して35%未満であると、タンパク質合成の速度に悪影響を及ぼし、GDH生産の効率が低下する傾向にあるためである
本発明の一実施形態は、以下に示すGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)である。
配列番号1〜10に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)は、GDHをコードするDNA(遺伝子)を含む、イントロンを除去したDNA配列である。配列番号1〜10に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)において1若しくは数個の塩基が置換されたDNAは、本発明に含まれる。また、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGDH活性をコードする領域を含むDNAも、本発明に含まれる。
配列番号11〜15に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)は、GDHをコードするDNA(遺伝子)を含む、イントロンを除去したDNA配列である。配列番号11〜15に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)において1若しくは数個の塩基が置換されたDNAは、本発明に含まれる。また、配列番号11に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGDH活性をコードする領域を含むDNAも、本発明に含まれる。
配列番号16〜20に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)は、GDHをコードするDNA(遺伝子)を含む、イントロンを除去したDNA配列である。配列番号16〜20に記載の塩基配列からなるDNA(遺伝子)において1若しくは数個の塩基が置換されたDNAは、本発明に含まれる。また、配列番号16に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつGDH活性をコードする領域を含むDNAも、本発明に含まれる。
本発明の別の一実施形態は、以下に示すGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)である。
配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子は、アスペルギルス・オリゼ由来のGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)の全配列を示し、本発明に含まれる。また、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)も、本発明に含まれる。
配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子は、アスペルギルス・テレウス由来のGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)の全配列を示し、本発明に含まれる。また、配列番号11に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)も、本発明に含まれる。
配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子は、アスペルギルス・テレウス由来のGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)の全配列を示し、本発明に含まれる。また、配列番号16に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)も、本発明に含まれる。
本発明の別の一実施形態は、以下に示す組換えベクター、該組換えベクターにより形質転換された大腸菌K12株形質転換体、さらには該大腸菌K12株形質転換体を栄養培地にて培養し、GDH活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするGDH活性を有するタンパク質を生産する方法を含む。
例えば、アスペルギルス・オリゼ、ペニシリウム属(Penicillium lilacinoechinulatum)、またはアスペルギルス・テレウス由来のGDH遺伝子を発現用ベクター(プラスミド等多くのものが当該技術分野において知られている)に挿入し、大腸菌K12株(JM109、DH5α、HB101等多くのものが当該技術分野において知られている)を形質転換する。得られた形質転換体を栄養培地にて培養し、培養液から遠心分離などで菌体を回収した後、菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じてEDTAなどのキレート剤や界面活性剤等を添加して可溶化し、GDHを含む水溶性画分を得ることができる。
上記のようにして得られたGDH含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。また、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたGDHを得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
これらは、例えば、以下の文献に従って進めることができる。
(a)タンパク質実験プロトコール第1巻 機能解析編,第2巻 構造解析編 (秀潤社) 西村善文,大野茂男 監修
(b)改訂 タンパク質実験ノート 上 抽出と分離精製 (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
(c)タンパク質実験の進めかた (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
(a)タンパク質実験プロトコール第1巻 機能解析編,第2巻 構造解析編 (秀潤社) 西村善文,大野茂男 監修
(b)改訂 タンパク質実験ノート 上 抽出と分離精製 (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
(c)タンパク質実験の進めかた (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
あるいは以下に例示する方法によって進めることもできる。
すなわち、作成されたタンパク質の遺伝情報を有するDNAを、ベクターと連結された状態にて宿主大腸菌K12株中に移入し、タンパク質を生産する形質転換体を調製する。
ベクターとしては、宿主大腸菌K12株内で自立的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。ファージとしては、例えばLambda gt10、Lambda gt11などが例示される。また、プラスミドとしては、例えば、pBR322、pUC19、pKK223−3、pBluescriptなどが例示される。なかでも、pBluescriptなど、クローニングサイト上流にエシェリヒア・コリ内で認識されうるプロモーターを保持するものが好ましい。
すなわち、作成されたタンパク質の遺伝情報を有するDNAを、ベクターと連結された状態にて宿主大腸菌K12株中に移入し、タンパク質を生産する形質転換体を調製する。
ベクターとしては、宿主大腸菌K12株内で自立的に増殖し得るファージまたはプラスミドから遺伝子組換え用として構築されたものが適している。ファージとしては、例えばLambda gt10、Lambda gt11などが例示される。また、プラスミドとしては、例えば、pBR322、pUC19、pKK223−3、pBluescriptなどが例示される。なかでも、pBluescriptなど、クローニングサイト上流にエシェリヒア・コリ内で認識されうるプロモーターを保持するものが好ましい。
また、適当な宿主大腸菌K12株しては、組換えベクターが安定であり、かつ自立増殖可能で外来遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。エシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリDH5αなどを用いることができる。
宿主微生物に組換えベクターを移入する方法としては、例えばカルシウムイオンの存在下で組換えDNAの移入を行なう方法などを採用することができ、更にエレクトロポレーション法を用いても良い。更には、市販のコンピテントセル(例えば、コンピテントハイDH5α、コンピテントハイJM109、コンピテントハイHB101;東洋紡績製)を用いても良い。
本発明において、GDHをコードする遺伝子を得る方法としては、次のような方法が挙げられる。アスペルギルス・オリゼのゲノム配列情報を用い、予測GDH遺伝子を見出すことができる。ついで、アスペルギルス・オリゼの菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成する。こうして得られたcDNAをテンプレートとして、PCR法によりGLD遺伝子を増幅させ、本遺伝子をベクターと両DNAの平滑末端または付着末端においてDNAリガーゼなどにより結合閉鎖させて組換えベクターを構築する。該組換えベクターを複製可能な宿主大腸菌に移入した後、ベクターのマーカーを利用してGDHをコードする遺伝子を含有する組換え大腸菌を得る。
上記のように得られた形質転換体である組換え体の選択は、ベクターのマーカーとGDH活性を同時に発現する微生物を検索すればよい。例えば、薬剤耐性マーカーに基づく選択培地で生育し、かつGDHを生成する大腸菌を選択すればよい。
GDH遺伝子の塩基配列は、Science ,第214巻,1205(1981)に記載されたジデオキシ法により解読した。また、GDHのアミノ酸配列は上記のように決定された塩基配列より推定した。
上記のようにして、一度選択されたGDH遺伝子を保有する組換えベクターより、他の組換えベクターへのGDH遺伝子の移入は、GDH遺伝子を保持する組換えベクターから制限酵素やPCR法によりGDH遺伝子であるDNAを回収し、他のベクター断片と結合させることにより容易に実施できる。また、これらのベクターによる大腸菌K12株の形質転換は、カルシウム処理によるコンピテントセル法やエレクトロポーレーション法、プロトプラスト法などを用いることができる。
なお、本発明のGDH遺伝子は、GDH活性を有する限り、該遺伝子の翻訳後のアミノ酸配列の各アミノ酸残基の一部が欠失または置換されるようなDNA配列をもつものでもよく、また他のアミノ酸残基が付加または置換されるようなDNA配列をもつものでもよい。
野生型GDHをコードする遺伝子を改変する方法としては、通常行われる遺伝情報を改変する手法が用いられる。すなわち、タンパク質の遺伝情報を有するDNAの特定の塩基を変換することにより、或いは特定の塩基を挿入または欠失させることにより、改変DNAが作成される。DNA中の塩基を変換する具体的な方法としては、例えば市販のキット(TransformerMutagenesis Kit;Clonetech製,EXOIII/Mung Bean Deletion Kit;Stratagene製,QuickChange Site Directed Mutagenesis Kit;Stratagene製など)の使用、或いはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)の利用が挙げられる。また、DNAを幾つかの断片に分割して化学合成し、DNAリガーゼで結合するという手法を採ることも可能である。
形質転換体の培養形態は、宿主大腸菌の栄養生理的性質を考慮して培養条件を選択すればよい。多くの場合は液体培養で行い、工業的には通気攪拌培養を行うのが有利である。
培地の栄養源としては,微生物の培養に通常用いられるものが広く使用され得る。炭素源としては資化可能な炭素化合物であればよく、例えば、グルコース、シュークロース、ラクトース、マルトース、ラクトース、糖蜜、ピルビン酸などが使用される。また、窒素源としては利用可能な窒素化合物であればよく、例えば、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、カゼイン加水分解物、大豆粕アルカリ抽出物などが使用される。その他、リン酸塩、炭酸塩、硫酸塩、マグネシウム、カルシウム、カリウム、鉄、マンガン、亜鉛などの塩類、特定のアミノ酸、特定のビタミンなどが必要に応じて使用される。
培養温度は菌が成育し、GDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくは20〜40℃程度である。培養時間は条件によって多少異なるが、GDHが最高収量に達する時期を見計らって適当時期に培養を完了すればよく、通常は10〜50時間程度である。培地のpHは菌が発育し、GDHを生産する範囲で適宜変更し得るが、好ましくはpH6.0〜9.0程度の範囲である。
培養物中のGDHを生産する菌体を含む培養液をそのまま採取し、利用することもできるが、一般には、常法に従って、GDHが培養液中に存在する場合はろ過、遠心分離などにより、GDH含有溶液と菌体とを分離した後に利用される。GDHが菌体内に存在する場合には、得られた培養物からろ過または遠心分離などの手段により菌体を採取し、次いで、この菌体を機械的方法またはリゾチームなどの酵素的方法で破壊し、また、必要に応じて、EDTA等のキレート剤及び界面活性剤を添加してGDHを可溶化し、水溶液として分離採取する。
上記のようにして得られたGDH含有溶液を、例えば減圧濃縮、膜濃縮、さらに硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどの塩析処理、あるいは親水性有機溶媒、例えばメタノール、エタノール、アセトンなどによる分別沈殿法により沈殿せしめればよい。また、加熱処理や等電点処理も有効な精製手段である。その後、吸着剤あるいはゲルろ過剤などによるゲルろ過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィーを行うことにより、精製されたGDHを得ることができる。
例えば、セファデックス(Sephadex)ゲル(GEヘルスケア バイオサイエンス社製)などによるゲルろ過、DEAEセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)、オクチルセファロースCL−6B (GEヘルスケア バイオサイエンス社製)等のカラムクロマトグラフィーにより分離、精製し、精製酵素標品を得ることができる。該精製酵素標品は、電気泳動(SDS−PAGE)的に単一のバンドを示す程度に純化されていることが好ましい。
本発明の別の一実施形態は、上記の製造方法により得られた、GDH活性を有するタンパク質である。
本発明の別の一実施形態は、以下に示すGDH活性を有するタンパク質である。
例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質が挙げられる。
また、配列番号11に記載のアミノ酸配列において1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質が挙げられる。
また、配列番号16に記載のアミノ酸配列において1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質が挙げられる。
例えば、配列番号1に記載のアミノ酸配列において1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質が挙げられる。
また、配列番号11に記載のアミノ酸配列において1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質が挙げられる。
また、配列番号16に記載のアミノ酸配列において1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質が挙げられる。
本発明において、GDH活性の測定は以下の条件で行う。
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1%TritonX−100を含む)
14mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液15.8ml、DCPIP溶液0.2ml、D―グルコース溶液4mlを混合して反応試薬とする。
<測定条件>
反応試薬2.9mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加し、ゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。
活性(U/ml)={−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率}/(16.3×0.1×1.0)
なお、式中の3.0は反応試薬+酵素溶液の液量(ml)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(ml)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1%TritonX−100を含む)
14mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液15.8ml、DCPIP溶液0.2ml、D―グルコース溶液4mlを混合して反応試薬とする。
<測定条件>
反応試薬2.9mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加し、ゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から次の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。
活性(U/ml)={−(ΔODTEST−ΔODBLANK)×3.0×希釈倍率}/(16.3×0.1×1.0)
なお、式中の3.0は反応試薬+酵素溶液の液量(ml)、16.3は本活性測定条件におけるミリモル分子吸光係数(cm2/マイクロモル)、0.1は酵素溶液の液量(ml)、1.0はセルの光路長(cm)を示す。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
後述の実施例に記載される、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子の取得手順の概略は以下の通りである。
アスペルギルス・オリゼ由来GDH遺伝子を取得するために、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・テレウス培養上清から、塩析、クロマトグラフィー等を用いてGDHの精製を試みたが、高純度のGDHを得るのは困難であった。(実施例1[1])
よって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングは断念せざるを得なくなった。
よって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングは断念せざるを得なくなった。
そこで、我々はGDHを生産する微生物を上記以外に求め鋭意探索した結果、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231株がGDHを生産することを見出し、本菌株の培養液から高純度の精製酵素を得ることに成功した。(実施例1[2])
次いで、該酵素を用いて部分アミノ酸配列を決定することに成功し、決定したアミノ酸配列を元に、PCR法により、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH遺伝子を一部取得し、塩基配列を決定した(1356bp)。(実施例1[3][4])
最終的に、この塩基配列を元に、公開されているアスペルギルス・オリゼのゲノムデータベースより、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子を推定(実施例1[5])、取得した。
次いで、該酵素を用いて部分アミノ酸配列を決定することに成功し、決定したアミノ酸配列を元に、PCR法により、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH遺伝子を一部取得し、塩基配列を決定した(1356bp)。(実施例1[3][4])
最終的に、この塩基配列を元に、公開されているアスペルギルス・オリゼのゲノムデータベースより、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子を推定(実施例1[5])、取得した。
<実施例1>
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下AOGDHとも記載)遺伝子の推定
[1]アスペルギルス・オリゼ由来GDHの取得
アスペルギルス・オリゼは、土壌より入手し定法に従ってL乾燥菌株とし保管していたものを使用した。以下これをアスペルギルス・オリゼTI株と呼ぶ。アスペルギルス・オリゼTI株のL乾燥菌株をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元した。復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収してフィルター滅菌水に懸濁した。2基の10L容ジャーファーメンター中に生産培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4・7水和物、2%グルコース、pH6.5)6Lを調製し、120℃15分オートクレーブ滅菌して放冷した後、上記の菌糸懸濁液を接種し、30℃、通気攪拌培養を行った。培養開始から64時間後に培養を停止し、菌糸体を濾過により除去してGDH活性を含む濾過液を回収した。回収した上清を限外ろ過膜(分子量10,000カット)により低分子物質を除去した。次いで、硫酸アンモニウムを60%飽和度となるように添加、溶解し、硫安分画を行い、遠心機によりGDHを含む上清画分を回収後、Octyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。得られたGDH溶液を、G−25−Sepharoseカラムを用いて脱塩を行った後、60%飽和度の硫酸アンモニウムを添加、溶解し、これをPhenyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。更にこれを50℃で45分加温した後、遠心分離を行って上清を得た。以上の工程を経て得られた溶液を精製GDH標品(AOGDH)とした。尚、上記精製過程においては、緩衝液として20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を使用した。さらに、AOGDHの部分アミノ酸配列を決定するため、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの各種手段により精製を試みたものの、部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。また、我々はアスペルギルス・テレウスに属する微生物を独自に探索入手し、上記と同様にその培養上清より、塩析、Octyl−sepharose等による精製を試みたが、アスペルギルス・オリゼ同様部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。通常、一般的に行われる精製法を用いて、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得ることができなかったのは、酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が原因の一つとなってるのではないかと推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである該タンパク質の部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得なくなった。
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下AOGDHとも記載)遺伝子の推定
[1]アスペルギルス・オリゼ由来GDHの取得
アスペルギルス・オリゼは、土壌より入手し定法に従ってL乾燥菌株とし保管していたものを使用した。以下これをアスペルギルス・オリゼTI株と呼ぶ。アスペルギルス・オリゼTI株のL乾燥菌株をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元した。復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収してフィルター滅菌水に懸濁した。2基の10L容ジャーファーメンター中に生産培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4・7水和物、2%グルコース、pH6.5)6Lを調製し、120℃15分オートクレーブ滅菌して放冷した後、上記の菌糸懸濁液を接種し、30℃、通気攪拌培養を行った。培養開始から64時間後に培養を停止し、菌糸体を濾過により除去してGDH活性を含む濾過液を回収した。回収した上清を限外ろ過膜(分子量10,000カット)により低分子物質を除去した。次いで、硫酸アンモニウムを60%飽和度となるように添加、溶解し、硫安分画を行い、遠心機によりGDHを含む上清画分を回収後、Octyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。得られたGDH溶液を、G−25−Sepharoseカラムを用いて脱塩を行った後、60%飽和度の硫酸アンモニウムを添加、溶解し、これをPhenyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。更にこれを50℃で45分加温した後、遠心分離を行って上清を得た。以上の工程を経て得られた溶液を精製GDH標品(AOGDH)とした。尚、上記精製過程においては、緩衝液として20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を使用した。さらに、AOGDHの部分アミノ酸配列を決定するため、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの各種手段により精製を試みたものの、部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。また、我々はアスペルギルス・テレウスに属する微生物を独自に探索入手し、上記と同様にその培養上清より、塩析、Octyl−sepharose等による精製を試みたが、アスペルギルス・オリゼ同様部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。通常、一般的に行われる精製法を用いて、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得ることができなかったのは、酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が原因の一つとなってるのではないかと推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである該タンパク質の部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得なくなった。
[2]ペニシリウム属糸状菌由来GDHの取得
ペニシリウム属糸状菌由来のGDH生産菌としてPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)を用い、上記アスペルギルス・オリゼTI株と同用の手順に従って、培養および精製を行い、SDS電気泳動でほぼ均一な精製標品を取得した。
ペニシリウム属糸状菌由来のGDH生産菌としてPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)を用い、上記アスペルギルス・オリゼTI株と同用の手順に従って、培養および精製を行い、SDS電気泳動でほぼ均一な精製標品を取得した。
[3]cDNAの作製
Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231について上記方法に従い(ただしジャーファーメンターでの培養時間は24時間)培養を実施し、濾紙濾過により菌糸体を回収した。得られた菌糸は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、クールミル(東洋紡社製)を用いて菌糸を粉砕した。粉砕菌体より直ちにセパゾールRNA I(ナカライテスク社製)を用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAからはOrigotex−dt30(第一化学薬品社製)をもちいてmRNAを精製し、これをテンプレートにReverTra-Plus-TM(東洋紡社製)を用いてRT−PCRを行った。得られた産物はアガロース電気泳動を行い、鎖長0.5〜4.0kbに相当する部分を切り出した。切り出したゲル断片からMagExtractor−PCR&Gel Clean Up―(東洋紡社製)を用いてcDNAを抽出・精製してcDNAサンプルとした。
Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231について上記方法に従い(ただしジャーファーメンターでの培養時間は24時間)培養を実施し、濾紙濾過により菌糸体を回収した。得られた菌糸は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、クールミル(東洋紡社製)を用いて菌糸を粉砕した。粉砕菌体より直ちにセパゾールRNA I(ナカライテスク社製)を用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAからはOrigotex−dt30(第一化学薬品社製)をもちいてmRNAを精製し、これをテンプレートにReverTra-Plus-TM(東洋紡社製)を用いてRT−PCRを行った。得られた産物はアガロース電気泳動を行い、鎖長0.5〜4.0kbに相当する部分を切り出した。切り出したゲル断片からMagExtractor−PCR&Gel Clean Up―(東洋紡社製)を用いてcDNAを抽出・精製してcDNAサンプルとした。
[4]GDH遺伝子部分配列の決定
上記で精製したPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDHを0.1%SDS、10%グリセロールを含有するTris−HClバッファー(pH6.8)に溶解し、ここにGlu特異的V8エンドプロテアーゼを終濃度10μg/mlとなるよう添加し37℃16時間インキュベートすることで部分分解を行った。このサンプルをアクリルアミド濃度16%のゲルを用いて電気泳動してペプチドを分離した。このゲル中に存在するペプチド分子を、ブロット用バッファー(1.4%グリシン、0.3%トリス、20%エタノール)を用いてセミドライ法によりPVDF膜に転写した。PVDF膜上に転写したペプチドはCBB染色キット(PIERCE社製GelCode Blue Stain Reagent)を用いて染色し、可視化されたペプチド断片のバンド部分2箇所を切り取ってペプチドシーケンサーにより内部アミノ酸配列の解析を行った。得られたアミノ酸配列はIGGVVDTSLKVYGT(配列番号25)およびWGGGTKQTVRAGKALGGTST(配列番号26)であった。この配列を元にミックス塩基を含有するディジェネレートプライマーを作製し、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来cDNAをテンプレートにPCRを実施したところ増幅産物が得られ、アガロースゲル電気泳動により確認したところ1.4kb程度のシングルバンドであった。このバンドを切り出して東洋紡製MagExtractor−PCR&Gel Clean Up−を用いて抽出・精製した。精製DNA断片はTArget Clone −Plus−(東洋紡社製)によりTAクローニングし、得られたベクターで大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)をヒートショックにより形質転換した。形質転換クローンのうち青白判定でインサート挿入が確認されたコロニーについてMagExtractor−Plasmid−(東洋紡社製)を用いてプラスミドをミニプレップ抽出・精製し、プラスミド配列特異的プライマーを用いてインサートの塩基配列を決定した(1356bp)。
上記で精製したPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDHを0.1%SDS、10%グリセロールを含有するTris−HClバッファー(pH6.8)に溶解し、ここにGlu特異的V8エンドプロテアーゼを終濃度10μg/mlとなるよう添加し37℃16時間インキュベートすることで部分分解を行った。このサンプルをアクリルアミド濃度16%のゲルを用いて電気泳動してペプチドを分離した。このゲル中に存在するペプチド分子を、ブロット用バッファー(1.4%グリシン、0.3%トリス、20%エタノール)を用いてセミドライ法によりPVDF膜に転写した。PVDF膜上に転写したペプチドはCBB染色キット(PIERCE社製GelCode Blue Stain Reagent)を用いて染色し、可視化されたペプチド断片のバンド部分2箇所を切り取ってペプチドシーケンサーにより内部アミノ酸配列の解析を行った。得られたアミノ酸配列はIGGVVDTSLKVYGT(配列番号25)およびWGGGTKQTVRAGKALGGTST(配列番号26)であった。この配列を元にミックス塩基を含有するディジェネレートプライマーを作製し、Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231由来cDNAをテンプレートにPCRを実施したところ増幅産物が得られ、アガロースゲル電気泳動により確認したところ1.4kb程度のシングルバンドであった。このバンドを切り出して東洋紡製MagExtractor−PCR&Gel Clean Up−を用いて抽出・精製した。精製DNA断片はTArget Clone −Plus−(東洋紡社製)によりTAクローニングし、得られたベクターで大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)をヒートショックにより形質転換した。形質転換クローンのうち青白判定でインサート挿入が確認されたコロニーについてMagExtractor−Plasmid−(東洋紡社製)を用いてプラスミドをミニプレップ抽出・精製し、プラスミド配列特異的プライマーを用いてインサートの塩基配列を決定した(1356bp)。
[5]AOGDH遺伝子の推定
決定した塩基配列を元に「NCBI BLAST」のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からホモロジー検索を実施し、AOGDH遺伝子を推定した。検索により推定したAOGDHとP.lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH部分配列とのアミノ酸レベルでの相同性は49%であった。
決定した塩基配列を元に「NCBI BLAST」のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からホモロジー検索を実施し、AOGDH遺伝子を推定した。検索により推定したAOGDHとP.lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH部分配列とのアミノ酸レベルでの相同性は49%であった。
<実施例2>
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得、大腸菌への導入
AOGDH遺伝子を取得するために、アスペルギルス・オリゼTI株の菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号21、22に示す2種類のオリゴDNAを合成し、調製したcDNAをテンプレートとしてKOD Plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いてAOGDH遺伝子増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリーDH5α(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換体より、常法に従いプラスミドを抽出し、AOGDH遺伝子の塩基配列の決定を行った(配列番号23)。この結果、cDNA配列から推定されるアミノ酸残基は593アミノ酸(配列番号24)からなることが明らかとなった。形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含む液体培地(Terrific broth)200ml中で、30℃、16時間振とう培養を行った。菌体破砕液についてGDH活性を確認したところ、TI株由来GDHの配列を有する形質転換体は菌体内に培養液1ml当たり8.0Uの高いGDH活性が得られた。尚、実施例1で実施したアスペルギルス・オリゼTI株の培養上清のGDH活性は、0.2U/mlであった。
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得、大腸菌への導入
AOGDH遺伝子を取得するために、アスペルギルス・オリゼTI株の菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号21、22に示す2種類のオリゴDNAを合成し、調製したcDNAをテンプレートとしてKOD Plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いてAOGDH遺伝子増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリーDH5α(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換体より、常法に従いプラスミドを抽出し、AOGDH遺伝子の塩基配列の決定を行った(配列番号23)。この結果、cDNA配列から推定されるアミノ酸残基は593アミノ酸(配列番号24)からなることが明らかとなった。形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含む液体培地(Terrific broth)200ml中で、30℃、16時間振とう培養を行った。菌体破砕液についてGDH活性を確認したところ、TI株由来GDHの配列を有する形質転換体は菌体内に培養液1ml当たり8.0Uの高いGDH活性が得られた。尚、実施例1で実施したアスペルギルス・オリゼTI株の培養上清のGDH活性は、0.2U/mlであった。
<実施例3>
アスペルギルス・テレウス由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得、大腸菌への導入
[1]cDNAの作製
Aspergillus terreus NBRC33026(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)L乾標本をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元させた。500ml 坂口フラスコに1.5%大豆ペプチド、2%グルコース、1%マルトエキスpH6.5を50ml調製し、復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収して植菌し、30℃,24時間振とう培養を行い、菌体を回収した。得られた菌体は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、東洋紡製クールミルを用いて、粉砕した。粉砕菌体より直ちにナカライテスク社製セパゾールRNA Iを用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出し、これをテンプレートに東洋紡製ReverTra-Plus-TMを用いてRT−PCRを行いcDNAを調製した。
アスペルギルス・テレウス由来グルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得、大腸菌への導入
[1]cDNAの作製
Aspergillus terreus NBRC33026(独立行政法人製品評価技術基盤機構より購入)L乾標本をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元させた。500ml 坂口フラスコに1.5%大豆ペプチド、2%グルコース、1%マルトエキスpH6.5を50ml調製し、復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収して植菌し、30℃,24時間振とう培養を行い、菌体を回収した。得られた菌体は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、東洋紡製クールミルを用いて、粉砕した。粉砕菌体より直ちにナカライテスク社製セパゾールRNA Iを用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出し、これをテンプレートに東洋紡製ReverTra-Plus-TMを用いてRT−PCRを行いcDNAを調製した。
[2]GDH遺伝子配列の決定
本発明者らは、既に上述の通りAspergillus oryzae、Penicillium lilacinoechinulatum 、およびPenicillium italicum由来 GDH遺伝子のクローニングに成功し、その塩基配列情報を取得している。A.terreusよりGDH遺伝子をクローニングするために、上記3種のGDHの推定アミノ酸配列をアラインさせ、相同性の高い領域の配列をもとに、ディジェネレートプライマーを作製した。ゲノムDNAをテンプレートにPCRを実施したところ、増幅産物が認められた。増幅産物をサブクローニングし、塩基配列を決定した。決定したGDH部分配列を元に、該配列部分の5‘側および3’側隣接領域をRACE法により決定した。
本発明者らは、既に上述の通りAspergillus oryzae、Penicillium lilacinoechinulatum 、およびPenicillium italicum由来 GDH遺伝子のクローニングに成功し、その塩基配列情報を取得している。A.terreusよりGDH遺伝子をクローニングするために、上記3種のGDHの推定アミノ酸配列をアラインさせ、相同性の高い領域の配列をもとに、ディジェネレートプライマーを作製した。ゲノムDNAをテンプレートにPCRを実施したところ、増幅産物が認められた。増幅産物をサブクローニングし、塩基配列を決定した。決定したGDH部分配列を元に、該配列部分の5‘側および3’側隣接領域をRACE法により決定した。
[3]GDH組換えプラスミドの作成、および大腸菌への導入
アミノ酸配列について、SignalP 3.0 Serverを利用して、シグナルペプチド予測を行った。この結果を元に、シグナルペプチドを除去すべく、N末端配列25コドンが削除され、開始コドン(ATG)を付加した配列増幅が増幅されるようにPCRプライマーを作製した。これらのプライマーを用いて、NBRC33026 cDNAをテンプレートとしてKOD Plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)により遺伝子増幅を実施した。増幅断片は制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンATGに合わせNdeI認識配列のATGを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)のNdeI−BamHIサイト間に挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリーDH5α(東洋紡社製)を形質転換し、A.terreus GDH 組換え体を取得した。
アミノ酸配列について、SignalP 3.0 Serverを利用して、シグナルペプチド予測を行った。この結果を元に、シグナルペプチドを除去すべく、N末端配列25コドンが削除され、開始コドン(ATG)を付加した配列増幅が増幅されるようにPCRプライマーを作製した。これらのプライマーを用いて、NBRC33026 cDNAをテンプレートとしてKOD Plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)により遺伝子増幅を実施した。増幅断片は制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンATGに合わせNdeI認識配列のATGを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)のNdeI−BamHIサイト間に挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリーDH5α(東洋紡社製)を形質転換し、A.terreus GDH 組換え体を取得した。
<実施例4>
大腸菌K12株での翻訳に合わせたグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子(DNA)の設計、大腸菌K12株への導入
実施例2で取得したGDH遺伝子を基に、大腸菌K12株での翻訳に合わせた遺伝子(DNA)の設計を実施した(配列番号1〜10)。GDHの活性とタンパク質生産とのバランスを良好にする観点から、その二次構造をとり得る配列の存在確率が1〜20%であって、かつその各コドンの大腸菌K12株最適コドン使用頻度の総計が35%以上であるように、設計を行った。二次構造をとり得る配列は、GDH遺伝子内のヘアピン構造をとり得る領域としてピックアップした。ヘアピン構造領域は、ステム部位の長さが10〜50塩基対、ループ部位の長さが1〜50塩基、ステム部位のマッチングの確率が80%を超えるものとして、GDH遺伝子内を検索した。同一ステム部位を有するヘアピン構造については、ステム部位のマッチングの確率がより高いものをピックアップし、ステム部位のマッチングの確率が同じであればループ部位の長さが短いものを選択した。二次構造をとり得る配列の存在確率は、上記ヘアピン構造領域を構成する塩基の全体に対する割合とした。
大腸菌K12株での翻訳に合わせたグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子(DNA)の設計、大腸菌K12株への導入
実施例2で取得したGDH遺伝子を基に、大腸菌K12株での翻訳に合わせた遺伝子(DNA)の設計を実施した(配列番号1〜10)。GDHの活性とタンパク質生産とのバランスを良好にする観点から、その二次構造をとり得る配列の存在確率が1〜20%であって、かつその各コドンの大腸菌K12株最適コドン使用頻度の総計が35%以上であるように、設計を行った。二次構造をとり得る配列は、GDH遺伝子内のヘアピン構造をとり得る領域としてピックアップした。ヘアピン構造領域は、ステム部位の長さが10〜50塩基対、ループ部位の長さが1〜50塩基、ステム部位のマッチングの確率が80%を超えるものとして、GDH遺伝子内を検索した。同一ステム部位を有するヘアピン構造については、ステム部位のマッチングの確率がより高いものをピックアップし、ステム部位のマッチングの確率が同じであればループ部位の長さが短いものを選択した。二次構造をとり得る配列の存在確率は、上記ヘアピン構造領域を構成する塩基の全体に対する割合とした。
なお、GDH遺伝子中の非最適コドンのうち、大腸菌K12株での出現頻度が0.7%以下のものが以下の25個存在しており、これらについては優先的に最適コドンへの変更を行った(配列番号10)。
ロイシン:cta;1個
イソロイシン:ata;1個
アルギニン:cga;1個,agg;2個
プロリン:cct;9個,ccc;8個
スレオニン:aca;3個
合計25個
ロイシン:cta;1個
イソロイシン:ata;1個
アルギニン:cga;1個,agg;2個
プロリン:cct;9個,ccc;8個
スレオニン:aca;3個
合計25個
設計したGDH遺伝子の作成は、実施例1の野生型GDH遺伝子を基に、QuickChangeTM Site-Directed Mutagenesis Kit(STRATAGENE製)を用いて、合成オリゴヌクレオチドおよびこれと相補的な合成オリゴヌクレオチドを用い、そのプロトコールに従って変異処理操作を行うことにより実施した。更に塩基配列を決定して、改変を確認した。
実施例2と同様の方法で、各遺伝子の大腸菌K12株への導入、形質転換体の培養、GDH生産性の確認を行った。結果を表1にまとめた。
また、実施例3で取得したGDH遺伝子についても、大腸菌K12株での翻訳に合わせた遺伝子(DNA)の設計を実施した(配列番号11〜15)。また、特許文献2のGDH遺伝子についても、これを基に大腸菌K12株での翻訳に合わせた遺伝子(DNA)の設計を実施した(配列番号16〜20)。
実施例3と同様の方法で、各遺伝子(配列番号11〜15)の大腸菌K12株への導入、形質転換体の培養、GDH生産性の確認を行った。結果を表2にまとめた。
実施例3と同様の方法で、各遺伝子(配列番号11〜15)の大腸菌K12株への導入、形質転換体の培養、GDH生産性の確認を行った。結果を表2にまとめた。
本発明は、組換え大腸菌K12株により、効率的にフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼを製造することを可能にするものである。また、本発明により、マルトースに作用しない、グルコースセンサ等に適したフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼを生産することを可能にする。
Claims (13)
- 配列番号1〜10記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
- 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、請求項1記載のDNA。
(a)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号1に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質 - 配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、請求項1記載のDNA。
- 配列番号11〜15記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
- 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、請求項4記載のDNA。
(a)配列番号11に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号11に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質 - 配列番号11に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、請求項4記載のDNA。
- 配列番号16〜20記載の塩基配列からなるDNA又は該DNAにおいて1若しくは数個の塩基が置換されたDNAで、かつフラビンアデニンジヌクレオチド依存性グルコースデヒドロゲナーゼ(以下GDHとも記載)活性を有するタンパク質をコードするDNA。
- 以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードする、請求項7記載のDNA。
(a)配列番号16に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号16に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつGDH活性を有するタンパク質 - 配列番号16に記載のアミノ酸配列において、1つのアミノ酸置換及び1以上10以下のアミノ酸挿入を有するアミノ酸配列を有し、かつGDH活性を有するタンパク質をコードする、請求項7記載のDNA。
- 請求項1〜9のいずれかのDNAを含む組換えベクター。
- 請求項10に記載の組換えベクターにより形質転換された大腸菌K12株形質転換体。
- 請求項11に記載の大腸菌K12株形質転換体を栄養培地にて培養し、GDH活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするGDH活性を有するタンパク質を製造する方法。
- 請求項12に記載の製造方法により得られた、GDH活性を有するタンパク質。
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-
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