JP4292486B2 - アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ - Google Patents
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Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):265−76 Biochim Biophys Acta.1967 Jul 11;139(2):277−93 Biochim Biophys Acta.146(2):317−27 Biochim Biophys Acta.146(2):328−35
本発明によれば、アスペルギルス・オリゼより単離したグルコースデヒドロゲナーゼ遺伝子を利用することにより、グルコースデヒドロゲナーゼを効率的に生産しかつ、より実用的なグルコースデヒドロゲナーゼを取得することが可能になる。
[項1]
配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
[項2]
以下の(a)または(b)のいずれかの遺伝子。
(a)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子
(b)配列番号5に記載の塩基配列からなるDNA
[項3]
項2に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
[項4]
項3に記載の組換えベクターにより形質転換された形質転換体。
[項5]
宿主が大腸菌である項4に記載の形質転換体。
[項6]
項4または5に記載の形質転換体を栄養培地にて培養し、グルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を採取することを特徴とするグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質を生産する方法。
そしてさらに、当該遺伝子を含有する組換えベクターを作製し、形質転換した形質転換体を作り、形質転換体が発現する当該遺伝子がコードするタンパク質を精製することも容易になしうると考えていた。
このため、遺伝子取得には多くの試行錯誤をともない、非常な困難を極めたが、鋭意検討の結果、アスペルギルス・オリゼ由来のフラビン結合型グルコースデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子を単離し、本願発明を完成するに至った。
その詳細は実施例1〜3に後述する。
(c)配列番号5に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)も、本発明に適用できる。
(d)配列番号8に記載の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性をコードする領域を含むDNAも、本発明に適用できる。
(f)配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA(遺伝子)も、本発明に適用できる。
(a)タンパク質実験プロトコール第1巻 機能解析編,第2巻 構造解析編 (秀潤社) 西村善文,大野茂男 監修
(b)改訂 タンパク質実験ノート 上 抽出と分離精製 (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
(c)タンパク質実験の進めかた (洋土社) 岡田雅人,宮崎香 編集
あるいは以下に例示する方法によって進めることもできる。
また、適当な宿主微生物としては、組換えベクターが安定であり、かつ自立増殖可能で外来遺伝子の形質発現できるものであれば特に制限されない。エシェリヒア・コリではエシェリヒア・コリW3110、エシェリヒア・コリC600、エシェリヒア・コリHB101、エシェリヒア・コリJM109、エシェリヒア・コリDH5αなどを用いることができる。
<試薬>
50mM PIPES緩衝液pH6.5(0.1%TritonX−100を含む)
14mM 2,6−ジクロロフェノールインドフェノール(DCPIP)溶液
1M D−グルコース溶液
上記PIPES緩衝液15.8ml、DCPIP溶液0.2ml、D―グルコース溶液4mlを混合して反応試薬とする。
反応試薬2.9mlを37℃で5分間予備加温する。GDH溶液0.1mlを添加しゆるやかに混和後、水を対照に37℃に制御された分光光度計で、600nmの吸光度変化を5分記録し、直線部分から1分間あたりの吸光度変化(ΔODTEST)を測定する。盲検はGDH溶液の代わりにGDHを溶解する溶媒を試薬混液に加えて同様に1分間あたりの吸光度変化(ΔODBLANK)を測定する。これらの値から下記の式に従ってGDH活性を求める。ここでGDH活性における1単位(U)とは、濃度200mMのD−グルコース存在下で1分間に1マイクロモルのDCPIPを還元する酵素量として定義している。
/(16.3×0.1×1.0)
よって、遺伝子取得の常法の1つである部分アミノ酸配列を利用したクローニングは断念せざるを得なくなった。
次いで、該酵素を用いて部分アミノ酸配列を決定することに成功し、決定したアミノ酸配列を元に、PCR法により、P.lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH遺伝子を一部取得し、塩基配列を決定した(1356bp)。(実施例1[3][4])
最終的に、この塩基配列を元に、公開されているアスペルギルス・オリゼのゲノムデータベースより、アスペルギルス・オリゼGDH遺伝子を推定(実施例1[5])、取得した。
アスペルギルス・オリゼ由来グルコースデヒドロゲナーゼ(以下AOGDHとも記載)遺伝子の推定
[1]アスペルギルス・オリゼ由来GDHの取得
アスペルギルス・オリゼは、土壌より入手し定法に従ってL乾燥菌株とし保管していたものを使用した。以下これをアスペルギルス・オリゼTI株と呼ぶ。
アスペルギルス・オリゼTI株のL乾燥菌株をポテトデキストロース寒天培地(Difco製)に植菌し25℃でインキュベートすることにより復元した。復元させたプレート上の菌糸を寒天ごと回収してフィルター滅菌水に懸濁した。2基の10L容ジャーファーメンター中に生産培地(1%麦芽エキス、1.5%大豆ペプチド、0.1%MgSO4・7水和物、2%グルコース、pH6.5)6Lを調製し、120℃15分オートクレーブ滅菌して放冷した後、上記の菌糸懸濁液を接種し、30℃、通気攪拌培養を行った。培養開始から64時間後に培養を停止し、菌糸体を濾過により除去してGDH活性を含む濾過液を回収した。回収した上清を限外ろ過膜(分子量10,000カット)により低分子物質を除去した。次いで、硫酸アンモニウムを60%飽和度となるように添加、溶解し、硫安分画を行い、遠心機によりGDHを含む上清画分を回収後、Octyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。得られたGDH溶液を、G−25−Sepharoseカラムを用いて脱塩を行った後、60%飽和度の硫酸アンモニウムを添加、溶解し、これをPhenyl−Sepharoseカラムに吸着させ、硫酸アンモニウム飽和度60%〜0%でグラジエント溶出してGDH活性のある画分を回収した。更にこれを50℃で45分加温した後、遠心分離を行って上清を得た。以上の工程を経て得られた溶液を精製GDH標品(AOGDH)とした。尚、上記精製過程においては、緩衝液として20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)を使用した。さらに、AOGDHの部分アミノ酸配列を決定するため、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの各種手段により精製を試みたものの、部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。
また、我々はアスペルギルス・テレウスに属する微生物を独自に探索入手し、上記と同様にその培養上清より、塩析、Octyl−sepharose等による精製を試みたが、アスペルギルス・オリゼ同様部分アミノ酸配列決定に供することのできる精製標品を得ることはできなかった。通常、一般的に行われる精製法を用いて、高純度で、SDS−PAGE上ではっきりと確認できるGDH標品を得ることができなかったのは、酵素タンパク質に結合しているであろう糖鎖が原因の一つとなってるのではないかと推察した。したがって、遺伝子取得の常法の1つである該タンパク質の部分アミノ酸配列を利用したクローニングを断念せざるを得なくなった。
[2]ペニシリウム属糸状菌由来GDHの取得
ペニシリウム属糸状菌由来のGDH生産菌としてPenicillium lilacinoechinulatum NBRC6231を用い、上記アスペルギルス・オリゼTI株と同様の手順に従って、培養および精製を行い、SDS電気泳動でほぼ均一な精製標品を取得した。
Penicillium lilacinoechinulatum NBRC6231について上記方法に従い(ただしジャーファーメンターでの培養時間は24時間)培養を実施し、濾紙濾過により菌糸体を回収した。得られた菌糸は直ちに液体窒素中に入れて凍結させ、クールミル(東洋紡社製)を用いて菌糸を粉砕した。粉砕菌体より直ちにセパゾールRNA I(ナカライテスク社製)を用いて本キットのプロトコールに従ってトータルRNAを抽出した。得られたトータルRNAからはOrigotex−dt30(第一化学薬品社製)をもちいてmRNAを精製し、これをテンプレートにReverTra−Plus−TM(東洋紡社製)を用いてRT−PCRを行った。得られた産物はアガロース電気泳動を行い、鎖長0.5〜4.0kbに相当する部分を切り出した。切り出したゲル断片からMagExtractor−PCR&Gel Clean Up−(東洋紡社製)を用いてcDNAを抽出・精製してcDNAサンプルとした。
上記で精製したNBRC6231由来GDHを0.1%SDS、10%グリセロールを含有するTris−HClバッファー(pH6.8)に溶解し、ここにGlu特異的V8エンドプロテアーゼを終濃度10μg/mlとなるよう添加し37℃16時間インキュベートすることで部分分解を行った。このサンプルをアクリルアミド濃度16%のゲルを用いて電気泳動してペプチドを分離した。このゲル中に存在するペプチド分子を、ブロット用バッファー(1.4%グリシン、0.3%トリス、20%エタノール)を用いてセミドライ法によりPVDF膜に転写した。PVDF膜上に転写したペプチドはCBB染色キット(PIERCE社製GelCode Blue Stain Reagent)を用いて染色し、可視化されたペプチド断片のバンド部分2箇所を切り取ってペプチドシーケンサーにより内部アミノ酸配列の解析を行った。得られたアミノ酸配列はIGGVVDTSLKVYGT(配列番号9)およびWGGGTKQTVRAGKALGGTST(配列番号10)であった。この配列を元にミックス塩基を含有するディジェネレートプライマーを作製し、NBRC6231由来cDNAをテンプレートにPCRを実施したところ増幅産物が得られ、アガロースゲル電気泳動により確認したところ1.4kb程度のシングルバンドであった。このバンドを切り出して東洋紡製MagExtractor−PCR&Gel Clean Up−を用いて抽出・精製した。精製DNA断片はTArget Clone −Plus−(東洋紡社製)によりTAクローニングし、得られたベクターで大腸菌JM109コンピテントセル(東洋紡社製)をヒートショックにより形質転換した。形質転換クローンのうち青白判定でインサート挿入が確認されたコロニーについてMagExtractor−Plasmid−(東洋紡社製)を用いてプラスミドをミニプレップ抽出・精製し、プラスミド配列特異的プライマーを用いてインサートの塩基配列を決定した(1356bp)。
決定した塩基配列を元に「NCBI BLAST」のホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)からホモロジー検索を実施し、複数の候補配列より、公知のグルコース酸化酵素とのホモロジーも考慮して、AOGDH遺伝子を推定した。検索により推定したAOGDHとP.lilacinoechinulatum NBRC6231由来GDH部分配列とのアミノ酸レベルでの相同性は49%であった。
AOGDH遺伝子の取得、大腸菌への導入
AOGDH遺伝子を取得するために、アスペルギルス・オリゼTI株の菌体よりmRNAを調製し、cDNAを合成した。配列番号6、7に示す2種類のオリゴDNAを合成し、調製したcDNAをテンぺレートとしてKOD Plus DNAポリメラーゼ(東洋紡社製)を用いてAOGDH遺伝子増幅した。DNA断片を制限酵素NdeI、BamHIで処理し、pBluescript(LacZの翻訳開始コドンatgに合わせNdeI認識配列のatgを合わせる形でNdeIサイトを導入したもの)NdeI−BamHIサイトに挿入し、組換えプラスミドを構築した。この組換えプラスミドを用いて、エシェリヒア・コリーDH5α(東洋紡社製)を形質転換した。形質転換体より、常法に従いプラスミドを抽出し、AOGDH遺伝子の塩基配列の決定を行った(配列番号5)。この結果、cDNA配列から推定されるアミノ酸残基は593アミノ酸(配列番号4)からなることが明らかとなった。データベースに登録されているRIB40株から予想されるGDHは588アミノ酸(配列番号3)でありTI株 GDHとアミノ酸残基数が異なることが示唆された。なお、該遺伝子については、TI株ゲノムDNAを用いて配列を確認し、遺伝子隣接領域についてもRACE法を用いて確認を行った。データベース株であるRIB40株とTI株で、GDH遺伝子の配列が異なることが示唆されたため、TI株GDH遺伝子を含む組換えプラスミドを鋳型として、データベースRIB40株の配列から予想されるGDH遺伝子配列を含む組換えプラスミドをQuickChange Site Directed Mutagenesis Kit(Stratagene製)を用いて作製し、形質転換体の取得を行った。これら形質転換体を100μg/mlのアンピシリンを含む液体培地(Terrific broth)200ml中で、30℃、16時間振とう培養を行った。菌体破砕液についてGDH活性を確認したところ、RIB40株由来GDHの配列を有する形質転換体ではGDH活性が確認できなかったが、TI株由来GDHの配列を有する形質転換体については菌体内に培養液1ml当たり8.0Uの高いGDH活性が得られた。尚、実施例1で実施したアスペルギルス・オリゼTI株の培養上清のGDH活性は、0.2U/mlであった。この結果は、RIB40株データベース配列から予想したGDH遺伝子はGDHとして機能していないことが示唆するものであり、TI株とRIB40株の遺伝子配列を比較するかぎり、RIB40株ではGDH遺伝子の配列が一部欠失していることがその原因であると考えられた。
実施例2で培養したTI株由来GDHの配列を有するエシェリヒア・コリーDH5α形質転換体を遠心分離により菌体を回収し、20mM リン酸カリウム緩衝液(pH6.5)に懸濁後、フレンチプレス破粉機を用いてGDHを抽出液した。これを実施例1で精製したAOGDHと同様の手順により、精製酵素標品(rAOGDH)を得て、AOGDH精製酵素標品との特性比較を実施した。
[1]基質特異性
血糖センサを用いて血糖値を測定する場合、誤診を招かないために、グルコース特異的な酵素の使用が求められる。そこでrAOGDHについて各種糖類に対する反応性を調べた。結果を図1に示す。rAOGDHはAOGDHと同等の基質特異性を示し、輸液使用患者がセンサを使用する際に特に問題になるマルトースには作用しないことが確認された。
[2]マルトース分解性
血糖センサに使用するGDHそのものはマルトースに作用せずとも、酵素標品等にマルトースをグルコースに分解する成分が含まれる場合にも誤診につながる可能性がある。つまり、GDH酵素標品にマルトースを分解する成分が含まれていないことが、きわめて重要になる。そこで、GDH精製表品中のマルトース分解成分のコンタミネーションについて調べた。マルトース分解酵素のコンタミネーション試験は、以下の要領で行った。10U/mlに調製した各種精製酵素液50μlに、8mMマルトース50μlを添加して37℃にて反応した。反応終了後、リキテックグルコース・HK・テスト(ロッシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて反応液に含まれるグルコース濃度を調べた。なお、グルコース濃度を算出するための検量線は、該測定キットにて検量係数設定用グルコース(和光純薬工業社製)を測定して作成した。結果を図2に示す。AOGDH精製標品では、37℃,30秒処理で、既に90%のマルトースがグルコースに分解されており、10分反応処理後では、100%に近いマルトースが分解されていた。そこで、実施例1で部分アミノ酸配列解析を目的にAOGDHを高度に精製した標品を用いて同様に測定を行ったが、やはりマルトースから分解活性が確認された。一方、rAOGDHでは、37℃,10分処理した後も、グルコースの蓄積は全く見られなかった。アスペルギルス・オリゼは古くから、醗酵産業に利用されており、アミラーゼやグルコアミラーゼなどの糖質関連酵素を著量生産することが知られており、そのような環境下で、GDHのみを高純度に精製するのは極めて困難と考えられる。
Claims (2)
- 配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質
- 配列番号4に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加(挿入)されたアミノ酸配列からなり、かつグルコースデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質
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