ところが、いくらDJとは言え、イコライザー装置やクロスフェーダー装置などの複数の操作子を同時に且つ適切に操作することは非常に困難である。そこで、簡易な操作で、さらに多彩な音楽表現を実現できることが望まれている。
本発明は、上記の問題点に鑑み、簡易な操作で多彩な音楽表現を実現可能な調整装置、ミキサー装置、プログラムおよび調整方法を提供することを目的とする。
本発明の調整装置は、複数のオーディオ信号の混合比率を調整する調整装置であって、オーディオ信号の帯域を複数個に分割した周波数帯域別に混合比率を調整するための操作子により、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整する帯域別調整手段と、帯域別調整手段に複数のオーディオ信号を割り当てる割当手段と、を備えたことを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、割当手段は、帯域別調整手段に複数のオーディオ信号を割り当てない選択が可能であることを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、帯域別調整手段は、各オーディオ信号が割り当てられる複数の位置を備え、複数の位置に対する操作子の位置によってオーディオ信号の混合比率を調整するものであり、割当手段は、帯域別調整手段の複数の位置に、複数のオーディオ信号をそれぞれ割り当てることを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、割当手段は、複数の位置のうちの1の位置に、複数のオーディオ信号を割り当て可能であることを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、帯域別調整手段は、各オーディオ信号が割り当てられる複数の端部を備え、複数の端部を有する移動範囲内における操作子の位置によってオーディオ信号の混合比率を調整するものであり、割当手段は、帯域別調整手段の複数の位置に、複数のオーディオ信号をそれぞれ割り当てることを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、帯域別調整手段により調整された、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を表示する帯域別表示手段をさらに備えたことを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、帯域別調整手段および帯域別表示手段は、表示機能付きタッチパネルにより構成されることを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、帯域別調整手段とは独立して、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を統括的に調整するメイン調整手段をさらに備えたことを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、帯域別調整手段は、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、瞬時に、メイン調整手段により調整された混合比率に調整するためのリセット手段を有していることを特徴とする。
上記に記載の調整装置において、帯域別調整手段は、周波数帯域別の複数の操作子を用いて、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整することを特徴とする。
本発明のミキサー装置は、上記に記載の調整装置における各手段と、複数のオーディオ信号を入力するオーディオ信号入力手段と、入力された複数のオーディオ信号に対し、帯域別調整手段による調整結果に基づいて、周波数帯域別に、混合処理を行う混合処理手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明のプログラムは、コンピューターを、上記に記載の調整装置における各手段として機能させることを特徴とする。
本発明の調整方法は、オーディオ信号の帯域を複数個に分割した周波数帯域別に混合比率を調整するための操作子により、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整する帯域別調整手段を備えた調整装置の調整方法であって、帯域別調整手段に複数のオーディオ信号を割り当てる工程と、帯域別調整手段を用いて、複数のオーディオ信号の混合比率を調整する工程と、を備えたことを特徴とする。
なお、以下の構成としても良い。
本発明のクロスフェーダー装置は、A端およびB端を両端とし、当該両端を結ぶ線分上で操作子を移動させることにより、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を調整するクロスフェーダー装置であって、オーディオ信号の帯域を複数個に分割した周波数帯域別の操作子である、複数の帯域別操作子により、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整する帯域別調整手段を備えたことを特徴とする。
この構成によれば、各周波数帯域に対応した複数の帯域別操作子により、周波数帯域別に、A端およびB端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を同時に調整することができる。つまり、複数の帯域別操作子の操作により、イコライザー装置とクロスフェーダー装置とを同時に操作した場合の操作結果を得ることができる。これにより、簡易な操作で、繊細且つ複雑なオーディオコントロールが可能となり、多彩な音楽表現を実現することができる。
なお、「複数の帯域別操作子」は、ハードウェア的なものであってもソフトウェア的なものであっても良い。すなわち、物理的に搭載された操作子であっても良いし、表示機能付きタッチパネル等にGUI表示された操作子を、指やポインティングデバイスを用いて操作するものであっても良い。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段により調整された、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を表示する帯域別表示手段をさらに備えたことを特徴とする。
この構成によれば、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を視覚的に確認することができる。
なお、「帯域別表示手段」は、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、クロスフェーダー装置を模した(GUI表示した)イメージ図によって表現しても良いし、図形、グラフ、文字および数字等によって表現しても良い。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段および帯域別表示手段は、表示機能付きタッチパネルにより構成されることを特徴とする。
この構成によれば、表示機能付きタッチパネルにより、帯域別調整手段および帯域別表示手段の両手段を実現できる(GUI表示されたクロスフェーダー装置上で操作できる)ため、装置構成の小型化および低廉化を図ることができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、複数の周波数帯域に対応する複数の線分が、同一長さであって、且つ各線分のA端およびB端がそれぞれ一直線上に並ぶように、所定の間隙を存して並列配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、複数の帯域別操作子が、それぞれ異なる線分上を移動可能であるため、各帯域別操作子の操作性を向上させることができる。また、A端およびB端がそれぞれ一直線上に並ぶように並列配置されているため、設置領域を小さくすることができると共に、さらなる操作性の向上が期待できる。
なお、「複数の線分」は、対応する周波数帯域の順序に従って(周波数の低いものから順に、または周波数の高いものから順に)並列配置されることが好ましい。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、各周波数帯域に対応する各線分上の任意の点がタッチされることにより、対応する周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整できることを特徴とする。
この構成によれば、表示機能付きタッチパネル上において、各周波数帯域に対応する各線分上の任意の点をタッチするだけで(各線分上で各操作子をドラッグ移動させることなく)、対応する周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整することができる。これにより、例えば並列配置された線分上の中点を、当該線分に対して垂直方向になぞることで、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を均等に割り当てる(リセットする)ことができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、線分上の任意の点のタッチが解除された場合、当該任意の点における混合比率から、タッチ前に指定されていた指定点または予め定められている所定点における混合比率へ、瞬時にまたは徐々に変化するように調整することを特徴とする。
この構成によれば、タッチされた任意の点からタッチ前に指定されていた指定点、またはタッチされた任意の点から予め定められている所定点へ、瞬時にまたは徐々に変化するように、オーディオ信号の混合比率を調整することができる。
なお、指定点と所定点のいずれに向かって変化させるか、瞬時に移動させるか、徐々に移動させるか、などについてユーザーが設定可能としても良い。また、徐々に移動させる場合は、その移動速度や移動時間について、ユーザーが設定可能としても良い。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、線分上の任意の点のタッチが解除された場合、解除後も当該任意の点における混合比率を保持することを特徴とする。
この構成によれば、タッチされた任意の点における混合比率を、タッチが解除された後もそのまま保持しておくことができる。
なお、タッチが解除された後、指定点または所定点に向かって変化させるか、保持させるか、などについてユーザーが設定可能としても良い。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、各線分のA端側およびB端側に設けられた一対の最大切替操作子の操作によって、各線分に対応する周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、A端側またはB端側から見て最大値となるように調整することを特徴とする。
この構成によれば、一対の最大切替操作子の操作(例えば、最大切替操作子がボタンの場合は、当該ボタンの押下)により、容易に、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を最大値または最小値に調整することができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、周波数帯域別にスペクトラムアナライザ表示を行うスペクトラムアナライザ表示手段をさらに備え、スペクトラムアナライザ表示手段は、A端およびB端に割り当てられたオーディオ信号の入力レベルおよび出力レベルを、線分の中点または両端を最小値とし、且つ各端に向かって大きな値となるように表示することを特徴とする。
この構成によれば、スペクトラムアナライザ表示を確認しながら、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を調整することができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、スペクトラムアナライザ表示手段により、各周波数帯域におけるA端およびB端に割り当てられたオーディオ信号の入力レベルの上限値が表示された状態で、対応する周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整できることを特徴とする。
この構成によれば、スペクトラムアナライザ表示手段により、各周波数帯域における各端に割り当てられたオーディオ信号の入力レベルの上限値を確認しながら、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を調整することができる。また、混合比率の調整によって、出力レベルが変化するため、入力レベルに対する出力レベルの割合を、確認することができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、複数の周波数帯域に対応する複数の線分は仮想的な線分であり、スペクトラムアナライザ表示手段は、仮想的な複数の線分に重畳して、各線分に対応する各周波数帯域のスペクトラムアナライザ表示を行うことを特徴とする。
この構成によれば、各周波数帯域別のスペクトラムアナライザ表示手段上で、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整することができるため、周波数帯域の対応を容易に把握することができる。また、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率の表示と、スペクトラムアナライザ表示とを重畳表示するため、表示領域の省スペース化を図ることができる。さらに、複数の周波数帯域に対応する複数の線分は仮想的な線分であるため、スペクトラムアナライザ表示の視認性を損ねることがない。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段とは独立して、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を統括的に調整するメイン調整手段をさらに備えたことを特徴とする。
この構成によれば、メイン調整手段として、既存のクロスフェーダー装置を備えているため、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率をまとめて調整したい場合に便利である。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、複数の周波数帯域のうち、指定された1以上の周波数帯域以外の他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、メイン調整手段により調整された混合比率となるように調整することを特徴とする。
この構成によれば、指定された1以上の周波数帯域以外の他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、メイン調整手段により調整することができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、瞬時に、メイン調整手段により調整された混合比率に調整するためのリセット手段を有していることを特徴とする。
この構成によれば、リセット手段の操作により、容易且つ迅速に、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、同じ値にリセットする(メイン調整手段により調整された混合比率となるよう調整にする)ことができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、複数の周波数帯域のうち、いずれか1の周波数帯域において目標値が設定された状態で、メイン調整手段が調整された場合、1の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、目標値に応じた混合比率となるように調整すると共に、1の周波数帯域以外の他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、1の周波数帯域との帯域差に応じた変化をつけて調整することを特徴とする。
この構成によれば、メイン調整手段が、設定された目標値に近づくように、または遠ざかるように調整された場合、目標値が設定された1の周波数帯域との帯域差に応じた変化をつけて、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整することができる。つまり、簡易な操作で、変化のある個性的なオーディオコントロールが可能となる。
なお、「他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、〜変化をつけて調整する」の具体例としては、メイン調整手段が目標値に近づくように調整された場合、1の周波数帯域との帯域差に応じて各周波数帯域の調整開始タイミングを遅らせつつ(帯域差が大きいほど調整開始タイミングを遅くしつつ)目標値に近づくように調整することが考えられる。また、メイン調整手段が目標値から遠ざかるように調整された場合、1の周波数帯域との帯域差に応じて各周波数帯域の調整開始タイミングを早めつつ(帯域差が大きいほど調整開始タイミングを早めつつ)目標値から遠ざかるように調整することが考えられる。この調整方法によれば、隣接する周波数帯域間で大きな混合比率の違いが生じないため、自然な(違和感のない)オーディオコントロールが可能となる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、メイン調整手段による調整が目標値と一致したとき、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、目標値と一致させることを特徴とする。
この構成によれば、メイン調整手段を目標値と一致するように調整することにより、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、目標値にリセットすることができる。
なお、上記の具体例のように、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整した場合、本構成を実現するため、他の周波数帯域における調整開始タイミングからのメイン調整手段の単位移動量に対する混合比率の変化量を、帯域差に応じて大きく設定する(帯域差が大きいほど変化量を大きく設定する)ことが好ましい。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、複数の周波数帯域をグループ分けするグルーピング手段と、同一グループに属する1以上の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、同時且つ同様に調整するグループ別調整手段と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、グループ単位で、オーディオ信号の混合比率を調整することができる。これにより、指1本で(複数の指や両手を用いることなく)、複数の周波数帯域を操作することができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、グループ別調整手段は、グループ分けされた複数のグループのうち、いずれか1のグループに対する調整が行われた場合、他のグループのうち少なくとも1のグループに対して、相反する調整を行うことを特徴とする。
この構成によれば、1のグループに対する調整に連動して、他のグループの調整も可能となるため、より複雑なオーディオコントロールを、指1本で実現することができる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、複数の周波数帯域のうち、いずれか1の周波数帯域に対する調整が行われた場合、他の周波数帯域に対して、当該1の周波数帯域との帯域差に応じた調整を行うことを特徴とする。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、帯域別調整手段は、複数の周波数帯域のうち、いずれか1の周波数帯域に対する調整が行われた場合、当該1の周波数帯域におけるオーディオ信号の調整後の混合比率が、A端側またはB端側から見て上限値または下限値となり、且つ他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率が、帯域差に応じて徐々に減少または増加するように、他の周波数帯域に対する調整を行うことを特徴とする。
これらの構成によれば、1の周波数帯域に対する調整に連動し、他の周波数帯域を帯域差に応じて調整することができる。つまり、簡易な操作で、変化のある個性的なオーディオコントロールが可能となる。また、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率が、帯域差に応じて徐々に減少または増加するように調整を行うことで、隣接する周波数帯域間で大きな混合比率の違いが生じないため、自然なオーディオコントロールが可能となる。
上記に記載のクロスフェーダー装置において、複数の周波数帯域は、楽器の音域を基準として分割されていることを特徴とする。
この構成によれば、所望の楽器の音を抜くようなオーディオコントロールが可能となる。
本発明のミキサー装置は、上記のいずれか1項に記載のクロスフェーダー装置における各手段と、オーディオ信号を入力するオーディオ信号入力手段と、入力されたオーディオ信号を、A端またはB端に割り当てる信号割り当て手段と、A端またはB端に割り当てられたオーディオ信号に対し、帯域別調整手段による調整結果に基づいて、周波数帯域別に、混合処理を行う混合処理手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明のプログラムは、コンピューターを、上記に記載のクロスフェーダー装置における各手段として機能させるためのものであることを特徴とする。
これらの構成によれば、簡易な操作で多彩な音楽表現を実現可能なミキサー装置およびプログラムを提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る調整装置、ミキサー装置、プログラムおよび調整方法について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、本発明の調整装置をミキサー装置に適用した場合について例示する。
図1は、本発明のミキサー装置20を適用した再生システムSYのシステム構成図である。同図に示すように、再生システムSYは、複数台(図示では、2台)のプレーヤー10と、当該プレーヤー10から入力されたオーディオ信号を各チャンネルに割り当てて混合処理を行うミキサー装置20と、当該ミキサー装置20から出力されたオーディオ信号を外部出力する出力装置30と、を備えている。
プレーヤー10は、CD、USBメモリ、SDメモリカードなどの外部記憶媒体、またはハードディスクなどの内部記憶媒体から楽曲を読み出して再生する。また、出力装置30は、アンプおよびスピーカーを有し(いずれも図示省略)、ミキサー装置20から出力されたオーディオ信号を音声として出力する。さらに、プレーヤー10とミキサー装置20、並びにミキサー装置20と出力装置30は、それぞれRSAケーブルなどのオーディオケーブルを介して接続されている。なお、有線接続ではなく、無線接続であっても良い。
ミキサー装置20は、信号入力部21、周波数分割装置22、表示機能付きタッチパネル23(以下、単に「タッチパネル23」と称する)、クロスフェーダーアサインスイッチ24、混合装置25および信号出力部26を有している。
信号入力部21は、複数台のプレーヤー10からオーディオ信号を入力するため、複数の入力端子を備えている(オーディオ信号入力手段)。各入力端子から入力されたオーディオ信号は、各チャンネルに割り当てられ、後述するクロスフェーダー装置CF(調整装置)や不図示のチャンネルフェーダーなどによって、音量調整が行われる。周波数分割装置22は、各チャンネルに割り当てられたオーディオ信号を、複数の周波数帯域に分割する。本実施形態では、8つの周波数帯域に分割する(図2参照)。なお、周波数分割装置22は、各チャンネルのオーディオ信号に対し、全て同数且つ同範囲で周波数分割を行う。
タッチパネル23は、本発明のクロスフェーダー装置CFを実現する。クロスフェーダー装置CFは、A端およびB端を両端とし、当該両端を結ぶ線分52上で操作子51(帯域別操作子)を移動させることにより、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を調整するものであるが、本実施形態では、特に、周波数帯域別に調整可能であることを特徴としている(図3等参照)。したがって、線分52および操作子51は、周波数帯域毎に設けられている(帯域別調整手段50)。
クロスフェーダーアサインスイッチ24は、各チャンネルの出力を、クロスフェーダー装置CFの両端(A側またはB側)若しくは「スルー」のいずれに割り当てるかを選択するための操作子である(割当手段)。なお、複数のチャンネルが同じ側を選択した場合、それらを加算したものが割り当てられる。また、「スルー」が選択されている場合は、クロスフェーダー装置CFを通らずに、そのまま出力されることとなる。なお、クロスフェーダーアサインスイッチ24を、タッチパネル23で実現することも可能である。
混合装置25は、タッチパネル23に表示されたクロスフェーダー装置CFの任意の点をユーザーが押下することによって発生するタッチ位置信号に基づいて、クロスフェーダー装置CFの各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を算出する。本実施形態では、上記の通り、周波数帯域別に混合比率を調整可能となっているため、周波数帯域別に混合比率を算出する。また、算出した周波数帯域別の混合比率に基づいて、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合処理を行う(混合処理手段)。信号出力部26は、混合装置25による混合処理済みのオーディオ信号を、出力装置30に向けて出力するための出力端子を備えている。
次に、図2を参照し、周波数分割装置22により分割される複数の周波数帯域について説明する。同図は、周波数帯域の分割例と、各周波数帯域に対応する楽器の一例を示す図である。上記の通り、本実施形態では、オーディオ信号の帯域を、8つの周波数帯域に分割する。以下の説明では、便宜上、周波数の低いものから順に、各周波数帯域を、帯域番号<1>〜<8>で示す。同図に示すように、帯域番号<1>は、80[Hz]未満の周波数帯域であり、対応する楽器としては「ベース」を想定している。また、帯域番号<2>は、80[Hz]以上150[Hz]未満の周波数帯域であり、対応する楽器としては「バスドラ」を想定している。その他、帯域番号<3>〜<8>については、図示の通りである。
このように、複数の周波数帯域は、オーディオ信号の帯域を単に均等分割するのではなく、楽器の音域を基準として分割しているため、周波数帯域別に設けられた複数の操作子51の操作により、所望の楽器の音を抜くようなオーディオコントロールが可能となる。
次に、図3ないし図12を参照し、クロスフェーダー装置CFの具体的な動作例について説明する。上記の通り、クロスフェーダー装置CFはタッチパネル23により構成されるため、図3ないし図12には、当該タッチパネル23にGUI表示されるクロスフェーダー装置CFを図示する(帯域別表示手段)。
図3は、クロスフェーダー装置CFの基本動作を示す図である。まず、図3(a)を参照し、帯域別調整手段50の構成について説明する。帯域別調整手段50は、周波数帯域別に設けられた8つの操作子51と、周波数帯域別に設けられた8本の線分52と、各線分52の両端に設けられた一対の最大切替ボタン53,54(最大切替操作子)と、を備えている。
各操作子51は、短冊状の形状を成しており、通常時は黒色であるが、状況に応じてその表示色が変化する。また、各線分52は、ユーザーから向かって左右方向に伸びる直線であり、各操作子51の移動経路となる。つまり、各操作子51は、各線分52に沿ってドラッグ移動が可能であると共に、各線分52の任意の点がタッチされると、そのタッチ位置に瞬時に移動可能となっている(図3(b)の帯域番号<2>参照)。
また、各線分52は、全て同一長さであって、且つ各線分52のA端およびB端がそれぞれ上下方向に一直線上に並ぶように、所定の間隙を存して並列配置されている。さらに、各線分52は、対応する周波数帯域の帯域番号が小さい順に(周波数が低い順に)、下から上方向に向かって(ユーザーの手前側から奥側に向かって)、順に配置されている。なお、各線分52の帯域番号は、図面上<>で示しているが、実際にタッチパネル23上に表示されるものではない。
このように、本実施形態の帯域別調整手段50は、各周波数帯域に対応する各線分52上の任意の点をタッチするだけで、対応する周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整でき、且つ各線分52が並列配置されているため、各線分52上の任意の位置を上下方向に(線分52に対して垂直方向に)なぞることで、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を同じ値に調整することができる。
一方、一対の最大切替ボタン53,54は、各線分52のA端に設けられるA端側最大切替ボタン53と、各線分52のB端に設けられるB端側最大切替ボタン54と、から成る。A端側最大切替ボタン53が押下(タッチ)されると、A端側に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を、Max(最大値)に調整する。同様に、B端側最大切替ボタン54が押下されると、B端側に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を、Maxに調整する(図3(c)の帯域番号<8>参照)。このように、一対の最大切替ボタン53,54を設けたことにより、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を、容易に、最大値または最小値に調整することができる。
なお、各操作子51の表示色および形状、各線分52の間隔、最大切替ボタン53,54の表示/非表示、などについてユーザーが設定可能としても良い。
続いて、図4を参照し、タッチ場所の非保持動作について説明する。本実施形態の帯域別調整手段50は、図4(a)に示すように、例えば、帯域番号<6>の操作子51が、線分52上の位置P1にある状態から、同じ線分52上の位置P2までドラッグ移動され、タッチが解除されると、図4(b)に示すように、位置P2から位置P1まで徐々に操作子51を移動させることができる。つまり、任意の点(位置P2)のタッチが解除された場合、タッチが解除された任意の点からタッチ前に指定されていた指定点(位置P1)まで、操作子51が徐々に変化するように、オーディオ信号の混合比率を調整することができる。
このように、タッチ場所の非保持動作によれば、タッチを解除した後に、徐々に混合比率を変化させるなど、物理的な操作子では実現し得ないようなオーディオコントロールが可能となる。
なお、任意の点(位置P2)から指定点(位置P1)まで徐々に移動させるのではなく、瞬時に移動させるようにしても良い。また、任意の点から、タッチ前に指定されていた指定点まで移動させるのではなく、任意の点から、予め定められている所定点(例えば、A端側から見てMinまたはMax、若しくはA端とB端の中点など)まで移動させても良い。さらに、位置P1から位置P2まで、ドラッグ移動するのではなく、位置P1をタッチした後、位置P2を直接タッチすることにより、任意の点を指定可能としても良い。
また、非保持動作の設定/非設定、瞬時に移動させるか徐々に移動させるか、徐々に移動させる場合の移動速度、徐々に移動させる場合の移動時間(任意の点から指定点または所定点までの移動に要する時間)、指定点と所定点のいずれに向かって移動させるか、所定点をどこにするか、などについてユーザーが設定可能としても良い。
続いて、図5を参照し、スペクトラムアナライザ表示との連携動作について説明する。同図に示すように、本実施形態の帯域別調整手段50は、スペクトラムアナライザ表示手段60上で動作することができるようになっている。この場合、各操作子51は、菱形形状を成し、各線分52は非表示(仮想線)となる。
スペクトラムアナライザ表示手段60は、各端に割り当てられた周波数帯域別のオーディオ信号の入力レベルおよび出力レベルを、各線分52の中点63(同図では、中心線63にて図示)をMinとし、且つ各端に向かって大きな値となるように(各端がMaxとなるように)表示する。つまり、中点63から左側が、A端側オーディオ信号表示領域61であり、中点63から右側が、B端側オーディオ信号表示領域62となっている。なお、スペクトラムアナライザ表示手段60において分割される周波数帯域の数および各周波数帯域の範囲は、帯域別調整手段50と同様である(図2参照)。
また、スペクトラムアナライザ表示手段60は、入力レベルと出力レベルとを異なる表示色で表示する。例えば、入力レベルを灰色、出力レベルを青色で表示する場合であって、図5(a)に示すように、全操作子51がA端に位置している場合、全周波数帯域におけるA端側オーディオ信号の出力レベルはMaxであるため、A端側オーディオ信号表示領域61は全て青色表示(図5では、無地領域に相当)となり、B端側オーディオ信号表示領域62は全て灰色表示(図5では、斜線領域に相当)となる。
例えば、図5(a)に示す状態から、帯域番号<5>の操作子51が、中点63に向かって図5(b)に示す位置までドラッグされると、両端側におけるオーディオ信号の入力レベルの上限値が灰色表示された状態のまま、A端側オーディオ信号の出力レベルの青色表示領域が小さくなる。また、これに伴って、B端側オーディオ信号の出力レベルの青色表示領域が大きくなる。
また、例えば、図5(c)に示すように、各線分52の中点63に沿って上下方向になぞると、各端に割り当てられたオーディオ信号を均等に混合させることができる。この場合、A端側オーディオ信号表示領域61およびB端側オーディオ信号表示領域62共に、全周波数帯域において、入力レベルの灰色表示領域の略半分の領域が、出力レベルの青色表示領域となる。
このように、本例によれば、本実施形態の帯域別調整手段50の各線分52に重畳して、各線分52に対応する各周波数帯域のスペクトラムアナライザ表示を行うため、周波数帯域の対応を容易に把握することができる。また、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率の表示と、スペクトラムアナライザ表示とを重畳表示するため、表示領域の省スペース化を図ることができる。さらに、スペクトラムアナライザ表示と連携する場合、各線分52を非表示とするため、スペクトラムアナライザ表示の視認性を損ねることがない。
また、スペクトラムアナライザ表示との連携動作により、ユーザーは、スペクトラムアナライザ表示を確認しながら、各端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を調整することができる。また、各周波数帯域で各端に割り当てられたオーディオ信号の入力レベルの上限値が表示された状態のまま調整することができ、当該調整によって出力レベルのみが変化するため、ユーザーは、オーディオ信号の出力状態を容易に把握することができる。
なお、スペクトラムアナライザ表示との連携動作の有無(スペクトラムアナライザ表示の表示/非表示)、操作子51の表示色および形状、線分52の表示/非表示、入力レベルと出力レベルの表示色、などについてユーザーが設定可能としても良い。
また、上記の例において、スペクトラムアナライザ表示手段60は、各端に割り当てられた周波数帯域別のオーディオ信号の入力レベルおよび出力レベルを、各線分52の中点63をMinとして表示したが、各線分52の両端をMinとし、他端に向かって大きな値となるように表示しても良い。また、各線分52の両端をMinとし、中点63をMaxとして表示しても良い。
続いて、図6ないし図9を参照し、メイン調整手段70との連携動作について説明する。図6は、メイン調整手段70との連携動作(1)を示す図である。同図に示すように、本例におけるクロスフェーダー装置CFは、帯域別調整手段50と、メイン調整手段70と、から成る。なお、図6以下の図面においては、最大切替ボタン53,54(図3等参照)の図示を省略する。
メイン調整手段70は、帯域別調整手段50とは独立して、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を統括的に調整する、いわゆる従来型のクロスフェーダー装置であり、操作子71と、当該操作子71の移動経路である線分72と、を備えている。メイン調整手段70は、帯域別調整手段50の下側(ユーザーから見て手前側)に配置され、操作子71および線分72は、帯域別調整手段50の操作子51および線分52と、略同サイズ且つ同形状を成している。
本例における帯域別調整手段50は、例えば、図6(a)に示す状態から、図6(b)に示すように、メイン調整手段70の操作子71が、位置P1から位置P2に移動(ドラッグ移動またはタッチ移動)されると、帯域別調整手段50の全操作子51が、メイン調整手段70の操作子71に連動して移動する(位置P2に集結する)。
なお、図6(c)に示すように、リセットボタン56(リセット手段)を設けることにより、図6(b)と略同様の動作を実現することが可能である。この場合、図6(a)に示す状態でリセットボタン56が押下されると、図6(c)に示すように、帯域別調整手段50の全操作子51が、メイン調整手段70の操作子71の位置(位置P1)に集結する。なお、同図の例では、メイン調整手段70の近傍にリセットボタン56が設けられているが、他の場所(例えば、帯域別調整手段50の近傍)に設けても良い。
このように、メイン調整手段70との連携動作(1)によれば、従来型のクロスフェーダー装置に相当するメイン調整手段70を備えているため、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率をまとめて調整したい場合に便利である。また、リセットボタン56を設けることにより、容易且つ迅速に、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、同じ値にリセットする(メイン調整手段70により調整された混合比率となるよう調整にする)ことができる。
なお、メイン調整手段70を設けるか否か、メイン調整手段70の配置、リセットボタン56を設けるか否か、リセットボタン56の配置、などについてユーザーが設定可能としても良い。
また、上記の例において、メイン調整手段70は、ソフトウェア的に搭載される(タッチパネル23にGUI表示される)ものとしたが、ハードウェア的に(物理的に)搭載されても良い。
続いて、図7を参照し、メイン調整手段70との連携動作(2)について説明する。図7(a)に示すように、例えば帯域番号<6>の操作子51がタッチされたままの状態(位置P1に固定されたままの状態)で、図7(b)に示すように、メイン調整手段70の操作子71が位置P2から位置P3に移動されると、帯域番号<6>以外の周波数帯域における操作子51が、メイン調整手段70の操作子71に連動して移動する(位置P2から位置P3に移動する)。つまり、指定された周波数帯域以外の他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、メイン調整手段70により調整された混合比率となるように調整することができる。なお、帯域番号<6>の操作子51のタッチが解除され、メイン調整手段70の操作子71が移動されると、当該帯域番号<6>の操作子51も、メイン調整手段70の操作子71と連動して移動する。
このように、メイン調整手段70との連携動作(1)によれば、所望の音域の混合比率を固定したまま、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を一括調整することができる。
なお、上記の例では、1の周波数帯域のみを指定したが、複数の周波数帯域を指定して、それ以外の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、メイン調整手段70により調整するようにしても良い。また、上記の例では、メイン調整手段70の操作子71と、帯域番号<6>以外の他の操作子51と、が同じ位置にある状態から操作を始めた場合を例示しているが、必ずしもそうである必要は無く、例えば図6(a)に示した状態から、任意の操作子51をタッチしたままの状態で、メイン調整手段70の操作子71を移動することで、図7(b)と同様の結果を得ることができる。
続いて、図8および図9を参照し、メイン調整手段70との連携動作(3)について説明する。本例では、図8(a)に示すように、まず目標値58を設定する。この目標値58は、複数の周波数帯域のうち、いずれか1の周波数帯域において設定可能となっている。また、目標値58の表示色は操作子51とは異なる色(例えば、赤色)であり、形状は、操作子51と略同一である。設定方法としては、不図示の目標値設定ボタンを押下した後、各線分52上の任意の位置を指定する方法が考えられる。
例えば、図8(a)に示すように、帯域番号<5>の位置P3に目標値58が設定され、メイン調整手段70の操作子71が位置P1から位置P3に近づくように移動されると、図8(b)に示すように、帯域番号<5>以外の周波数帯域における操作子51が、帯域番号<5>との帯域差(帯域番号差)に応じて徐々に遅れながら、位置P3に向かって移動する。つまり、メイン調整手段70が目標値58に近づくように調整された場合、目標値58が設定された1の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、目標値58に応じた混合比率となるように調整すると共に、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、上記の1の周波数帯域との帯域差に応じて各周波数帯域の調整開始タイミングを遅らせつつ(帯域差が大きいほど調整開始タイミングを遅くしつつ)目標値58に近づくように調整する。
したがって、メイン調整手段70の操作子71が位置P1と位置P3との間にある位置P2に位置している状態では、帯域番号<4>と<6>が位置P4、帯域番号<3>と<7>が位置P5、帯域番号<1>,<2>および<8>が位置P1(移動開始していない状態)に位置する。ここで、B端側から見た混合比率は、位置P3>位置P4>位置P5>P1である。
図9は、図8に続く、メイン調整手段70との連携動作(3)を示す図である。図8(b)に示した状態から、さらに、メイン調整手段70の操作子71が位置P3まで移動されると、図9(a)に示すように、帯域別調整手段50の全ての周波数帯域における操作子51が、位置P3に集結する。つまり、メイン調整手段70による調整が目標値58と一致したとき、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、目標値58と一致させる。このため、他の周波数帯域における調整開始タイミングからのメイン調整手段70の単位移動量に対する混合比率の変化量は、帯域差に応じて大きく設定されている(帯域差が大きいほど変化量が大きく設定されている)。
また、図9(a)に示した状態から、メイン調整手段70の操作子71が位置P3から遠ざかるように移動されると、図9(b)に示すように、帯域番号<5>以外の周波数帯域における操作子51が、帯域番号<5>との帯域差(帯域番号差)に応じて徐々に先行しながら、位置P3から離間するように移動する。つまり、メイン調整手段70が目標値58から遠ざかるように調整された場合、目標値58が設定された1の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、目標値58に応じた混合比率のまま保持すると共に、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、上記の1の周波数帯域との帯域差に応じて各周波数帯域の調整開始タイミングを早めつつ(帯域差が大きいほど調整開始タイミングを早くしつつ)目標値58から遠ざかるように調整する。
したがって、メイン調整手段70の操作子71が位置P3とB端との間にある位置P4に位置している状態では、帯域番号<4>と<6>が位置P5、帯域番号<3>と<7>が位置P6、帯域番号<2>と<8>が位置P7、帯域番号<1>が位置P8に位置する。ここで、B端側から見た混合比率は、位置P8>位置P7>位置P6>位置P5>位置P3である。
このように、メイン調整手段70との連携動作(3)によれば、メイン調整手段70が、設定された目標値58に近づくように、または遠ざかるように調整された場合、目標値58が設定された1の周波数帯域との帯域差に応じた変化をつけて、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を調整することができる。つまり、簡易な操作で、変化のある個性的なオーディオコントロールが可能となる。また、メイン調整手段70が目標値58に近づくように調整された場合は、1の周波数帯域との帯域差が大きいほど他の周波数帯域の調整開始タイミングを遅らせて調整し、メイン調整手段70が目標値58から遠ざかるように調整された場合は、1の周波数帯域との帯域差が大きいほど他の周波数帯域の調整開始タイミングを早めて調整するため、自然な(違和感のない)オーディオコントロールが可能となる。さらに、メイン調整手段70による調整を目標値58と一致させることにより、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、容易に目標値58にリセットすることができる。
なお、メイン調整手段70による調整が目標値58と一致したときではなく、メイン調整手段70による調整が中央値となったとき(操作子71がA端とB端の中点に位置したとき)、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を中央値にリセットするようにしても良い。
また、帯域差(帯域番号差)に応じた調整開始タイミング、帯域差(帯域番号差)に応じたメイン調整手段70の単位移動量に対する混合比率の変化量、目標値58の表示色や形状、全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を同じ値にリセットする位置(目標値58または中央値)、などについてユーザーが設定可能としても良い。
続いて、図10を参照し、グループ動作(1)について説明する。本例では、帯域別調整手段50の8つの操作子51を、グループ単位で動作させる方法について説明する。最初に、図10(a)を参照し、グループ分けの方法を説明する。まず、ユーザーにより不図示のグルーピングボタンが押下されると、クロスフェーダー装置CFの操作領域を、領域81,82,83に3分割して色分け表示する。この状態で、各操作子51がいずれかの領域に配置されると、同一領域内の操作子51(つまり、同一領域内の操作子51に対応する周波数帯域)を、同一グループとしてグループ分けする(グループ分け手段)。例えば、図10(a)に示すように各操作子51が配置された場合、領域81に配置された2つの操作子51aを第1グループG1、領域82に配置された3つの操作子51bを第2グループG2、領域83に配置された3つの操作子51cを第3グループG3、にそれぞれ分類する。分類後、再度グルーピングボタンが押下されると、グループ分けが確定する。なお、同一グループに属する操作子51は、同じ表示色となる。
上記のように分類された後、例えば、図10(b)に示すように、第2グループG2に属するいずれかの操作子51bが、位置P1から位置P2に移動されると、第2グループG2に属する他の操作子51bも連動して移動する。その後、第2グループG2のタッチが解除されると、第2グループG2に属する操作子51bの位置を保持する。さらに、図10(c)に示すように、第1グループG1に属するいずれかの操作子51bが、位置P1から位置P3に移動されると、第1グループG1に属する他の操作子51aも連動して移動する。つまり、グループ分けされた場合は、同一グループに属する1以上の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、同時且つ同様に調整する(グループ別調整手段)。
このように、グループ動作(1)によれば、グループ単位で、オーディオ信号の混合比率を調整することができる。これにより、指1本で(複数の指や両手を用いることなく)、複数の周波数帯域を操作することができる。
なお、上記の例では、連続する帯域番号を同一グループとしてグループ分けしたが、非連続の帯域番号を同一グループとしても良い。つまり、帯域番号<1>,<3>,<5>の周波数帯域を同一グループとしてグループ分けすることも可能である。また、上記の例では、3つのグループG1,G2,G3にグループ分けしたが、2つまたは1つにグループ分けしても良い。この場合は、3つの領域81,82,83のうち、2つまたは1つの領域を利用してグループ分けすれば良い。
続いて、図11を参照し、グループ動作(2)について説明する。例えば、図11(a)に示すように、各操作子51を2つのグループG1,G2にグループ分けし、不図示の相反動作ボタンを押下すると、図11(b)に示すように、グループ単位で相反する動作を実現できる。同図の例は、第1グループG1に属する4つの操作子51aのうちいずれかが位置P1から位置P2まで移動されると、同じ第1グループG1に属する他の操作子51aも連動して移動し、さらに第2グループG2に属する4つの操作子51bが、第1グループG1と相反して移動する。つまり、本例の帯域別調整手段50は、グループ分けされた複数のグループのうち、いずれか1のグループに対する調整が行われた場合、他のグループのうち少なくとも1のグループに対して、相反する調整を行う(グループ別調整手段)。
このように、グループ動作(2)によれば、1のグループに対する調整に連動して、他のグループの調整も可能となるため、より複雑且つ大胆なオーディオコントロールを、指1本で実現することができる。
なお、上記の例では、2つのグループにグループ分けした場合を例示したが、3つ以上のグループにグループ分けした場合も、グループ動作(2)を適用可能である。この場合、操作対象となるグループ以外の他のグループのうち、1以上のグループに対し、操作対象となるグループと相反する調整が行われる。なお、相反動作対象となるグループは、グループ動作を行う度に指定可能としても良いし、予め設定しておいても良い(操作対象となるグループ以外の全てのグループを相反動作対象とする、操作対象となるグループ以外の他のグループのうちいずれか1つのみを相反動作対象とする、など)。
その他、グループ動作について、グループ分けする最大数(図10(a)に示した領域81,82,83の数)、グループ分けした後の操作子51の表示色、相反動作を行うか否か、などについてユーザーが設定可能としても良い。
続いて、図12を参照し、1の操作子51の操作に基づく連動動作について説明する。本例は、図8および図9に示したような、メイン調整手段70との連携動作(3)による帯域差に応じた調整を、帯域別調整手段50のみで実現するものである。
例えば、図12(a)に示すように、全操作子51がA端(位置P1)にある状態から、図12(b)に示すように、帯域番号<5>の操作子51が右側(B端側)に移動されると、帯域番号<5>以外の周波数帯域における操作子51が、帯域番号<5>との帯域差(帯域番号差)に応じて徐々に遅れながら、帯域番号<5>の操作子51の移動方向と同方向に移動する。つまり、複数の周波数帯域のうち、いずれか1の周波数帯域がB端に近づくように調整された場合、当該1の周波数帯域におけるオーディオ信号の調整後の混合比率が、B端側から見て上限値となり、且つ他の周波数帯域におけるB端側から見たオーディオ信号の混合比率が、帯域差に応じて徐々に減少するように(帯域差が大きいほど混合比率が小さくなるように)、他の周波数帯域に対する調整を行う。
したがって、帯域番号<5>の操作子51が位置P2に位置している状態では、帯域番号<4>と<6>が位置P3、帯域番号<3>と<7>が位置P4、帯域番号<1>,<2>および<8>が位置P1(移動開始していない状態)に位置する。ここで、B端側から見た混合比率は、位置P2>位置P3>位置P4>P1である。
なお、特に図示しないが、例えば、全操作子51がB端にある状態から、帯域番号<5>の操作子51が左側(A端側)に移動された場合も、上記の例と同様に、帯域番号<5>以外の周波数帯域における操作子51が、帯域番号<5>との帯域差(帯域番号差)に応じて徐々に遅れながら、帯域番号<5>の操作子51の移動に伴って、同方向に移動することとなる。
このように、1の操作子51の操作に基づく連動動作によれば、1の周波数帯域に対する調整に連動し、他の周波数帯域を帯域差に応じて調整することができる。つまり、簡易な操作で、変化のある個性的なオーディオコントロールが可能となる。また、他の周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率が、帯域差に応じて徐々に減少するように調整を行うことで、隣接する周波数帯域間で大きな混合比率の違いが生じないため、自然なオーディオコントロールが可能となる。
なお、上記の例では、操作対象となる1の周波数帯域がB端に近づくように調整された場合、当該1の周波数帯域におけるオーディオ信号の調整後の混合比率が、B端側から見て上限値となるように、他の周波数帯域に対する調整を行うものとしたが、下限値となるように調整しても良い。つまり、例えば帯域番号<5>の操作子51が右側に移動された場合、それに先行して他の操作子51がB端に向かって移動するようにしても良い。この場合、帯域番号<5>の操作子51が位置P2に到達した時点では、「く」字状に各操作子51が位置することとなる。なお、A端に向かって移動された場合にも、操作対象となる1の周波数帯域におけるオーディオ信号の調整後の混合比率が、A端側から見て下限値となるように調整しても良い。
また、操作対象の操作子71がA端またはB端に位置したとき、帯域別調整手段50の全ての周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を、A端またはB端から見てMaxとなるように調整しても良い。但し、この場合は、他の周波数帯域における調整開始タイミングからの、操作対象となる周波数帯域の単位移動量に対する、他の周波数帯域の混合比率の変化量は、帯域差に応じて大きく設定されている(帯域差が大きいほど変化量が大きく設定されている)必要がある。
また、操作対象となる1の周波数帯域におけるオーディオ信号の調整後の混合比率を、移動先側の端から見て上限値とするか下限値とするか、帯域差(帯域番号差)に応じた調整開始タイミング、操作対象となる周波数帯域の単位移動量に対する他の周波数帯域の混合比率の変化量、などについてユーザーが設定可能としても良い。
以上説明したとおり、本実施形態によれば、帯域別調整手段50により、周波数帯域別に、A端およびB端に割り当てられたオーディオ信号の混合比率を同時に調整することができる。また、上記のような各動作を行い得るため、個性的且つ複雑なオーディオコントロールが可能となり、多彩な音楽表現を実現することができる。
また、本実施形態では、タッチパネル23で帯域別調整手段50を実現したことにより、クロスフェーダー装置CFがGUI表示されるため、各周波数帯域におけるオーディオ信号の混合比率を視覚的に確認するための表示手段を別途備える必要がない。これにより、ミキサー装置20の装置構成の小型化および低廉化を図ることができる。
なお、上記の実施形態では、帯域別調整手段50の調整結果を、タッチパネル23上で確認できるものとしたが、調整結果を確認するための表示手段を、別途設けても良い。その場合、図形、グラフ、文字および数字等によって調整結果を表現しても良い。また、帯域別調整手段50を、物理的に搭載された操作子によって実現可能としても良い。
また、上記の実施形態では、帯域別調整手段50の各線分52を、周波数の低い周波数帯域に対応するものから、周波数の高い周波数帯域に対応するものへ、下側から順に上側に向かって配置したが、逆にしても良い。つまり、帯域番号<1>〜<8>を、帯域番号<8>〜<1>に入れ替えても良い。また、必ずしも周波数順に並列配置される必要はなく、例えば、帯域番号<1>,<3>,<5>,<7>,<2>,<4>,<6>,<8>の順に配置するなど、その順序は任意である。さらに、各線分52は、必ずしも並列配置される必要はなく、多角形を構成する辺のように配置されても良いし、交差するように配置されても良い。
また、上記の実施形態では、線分52を周波数帯域毎に設けるものとしたが、共通化しても良い。つまり、1の線分52上を、複数の周波数帯域に対応した複数の操作子51が移動可能としても良い。また、線分52は、必ずしも直線でなくても良く、曲線や破線であっても良い。
また、上記の実施形態では、帯域別調整手段50を、8つの周波数帯域に分割して調整する場合を例示したが(図2参照)、分割数や各周波数帯域の帯域幅を、ユーザーが任意に設定可能としても良い。
また、上記に示したミキサー装置20の各構成要素をプログラムとして提供することも可能である。また、そのプログラムを各種記録媒体(CD−ROM、フラッシュメモリ等)に格納して提供することも可能である。すなわち、コンピューターをミキサー装置20の各構成要素として機能させるためのプログラム、およびそれを記録した記録媒体も、本発明の権利範囲に含まれるものである。
また、上記の実施形態に示したミキサー装置20を、DJ機器以外の電子楽器やコンピューターに適用しても良い。また、上記図3ないし図12に示した各動作のうち、選択可能な動作について、ユーザーが設定可能としても良い。さらに、上記の各動作を組み合わせて実行可能としても良い。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。