JP2011134483A - 導電性塗料の製造方法および透明導電性フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の導電性塗料の製造方法は、ポリエチレンジオキシチオフェン水溶液およびエンハンサーを混合する混合工程、混合された混合物を60℃以上、100℃以下の温度で熱処理する熱処理工程、ならびに熱処理された処理物に樹脂と溶剤とを添加する添加工程を含む。また、本発明の透明導電性フィルムは、光透過度が90%以上であり、かつ、表面抵抗値が400Ω/□以下である。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明の導電性塗料の製造方法は、ポリエチレンジオキシチオフェン水溶液およびエンハンサーを混合する混合工程、前記混合工程によって混合された混合物を60℃以上、100℃以下の温度で熱処理する熱処理工程、ならびに前記熱処理工程によって熱処理された処理物に樹脂と溶剤とを添加する添加工程を含む。また、本発明の上記製造方法によれば、光透過度が90%以上であり、かつ、表面抵抗値が400Ω/□以下である透明導電性フィルムを提供することができる。
ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)水溶液は、PEDOTがコロイド分散している水溶液である。PEDOT水溶液には、PEDOTをコロイド分散させるために分散剤(たとえば、ポリスチレンスルホン酸(PSS))が添加されている。PEDOT水溶液中のPEDOTの固形分濃度は、通常、0.05〜10重量%であるが、この固形分濃度に限定されない。PEDOTに対するPSSの含有量は、通常、PEDOTのモノマー単位1モルに対して0.1〜10モルであり、PSSの重合度は、通常、モノマー単位で10〜100000個の範囲内であるが、これらに限定されない。PEDOT水溶液には、たとえば、H.C.Starck社製のバイトロンP HC V4やバイトロン PH500などがある。
エンハンサーとは、透明導電性フィルムの抵抗率を下げるための添加物である。エンハンサーは、プロトン型溶剤、スルホキシド系溶剤、アミン系溶剤および糖類のうちの少なくとも1つである。エンハンサーは、通常、PEDOT水溶液100gに対して、5〜50%添加されるが、これらに限定されない。
プロトン型溶剤とは、水を除いたプロトン性溶媒である。プロトン型溶剤には、炭素数が1乃至5の1価アルコール、多価アルコール、ポリオールもしくはこれらの中の混合物などがある。
上記エンハンサーのスルホキシド系溶媒には、メチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、ジフェニルスルホンもしくはこれらの中の混合物などがあり、好ましくはメチルスルホキシドである。
上記エンハンサーのアミン系溶剤には、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、ピロリドン、N−メチル2ピロリドン、カプロラクタム、テトラメチルウレアもしくはこれらの中の混合物などがあり、好ましくはN−メチル2ピロリドンである。
上記エンハンサーの糖類には、グルコース、フルクトースなどの単糖類、マルトース、ラクトースなどの二糖類、セルロース、トレハロースなどの多糖類もしくはこれらの中の混合物などがあり、好ましくはトレハロースである。
塗料の分散に通常使用される公知の分散機を使用して、PEDOT水溶液とエンハンサーとの混合を行う。PEDOT水溶液とエンハンサーとを均一に混合することができれば、分散機は特に限定されない。上記分散機としては、たとえば、ビーズミル、ロールミル、ニーダー、ハイブリッドミキサーなどを使用できる。真空脱泡などの脱泡をしながら、もしくは脱泡した後、PEDOT水溶液とエンハンサーとを混合するようにしてもよい。PEDOT水溶液およびエンハンサーの混合のときの粘度を低下させるなどのために、PEDOT水溶液に水を添加してもよい。
PEDOT水溶液およびエンハンサーを混合した混合物の熱処理は、好ましくは60℃以上、100℃以下の温度で行い、より好ましくは、70℃以上、100℃以下の温度で行い、さらに好ましくは、70℃以上、90℃以下の温度で行う。60℃未満の温度で熱処理を行うと透明導電性フィルムの抵抗値に対する当該熱処理の効果があまり得られず、100℃を超える温度で熱処理を行うと、混合物の凝集力が強くなり過ぎてしまい、それにより導電性塗料中のPEDOTの分散性が悪くなり、透明導電性フィルムの抵抗値が高くなる。特に、熱処理温度が70℃以上、100℃以下の温度で熱処理を行うと、さらに熱処理温度が70℃以上、90℃以下の温度で熱処理を行うと、より抵抗値の低い透明導電性フィルムを得ることができる。熱処理の雰囲気は特に限定されず、空気中でも窒素雰囲気中でもよい。混合物の熱処理に使用する機器は、混合物に対して、上記温度範囲で熱処理を行えれば特に限定されず、たとえば、乾燥機やホットプレートなどでもよい。熱処理時間は、好ましくは30分以上、3時間以下、より好ましくは1時間以上、2時間以下である。熱処理時間が30分未満であると透明導電性フィルムの抵抗値に対する当該熱処理の効果があまり得られない場合があり、熱処理時間が3時間を超えると、混合物の凝集力が強くなり過ぎてしまい、それにより導電性塗料中のPEDOTの分散性が悪くなり、透明導電性フィルムの抵抗値が高くなる場合がある。
上記熱処理した処理物に添加する樹脂は、透明であれば特に限定されないが、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロプロポキシビニルエーテル共重合体、ナイロン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、AS樹脂、ABS樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリエステル樹脂などを使用でき、好ましくはポリアセタールである。
本発明の導電性塗料は、基材に塗布した後に乾燥させて透明導電性フィルムとすることができる。使用可能な基材としては、たとえば、プラスチック、ガラス、金属、セラミックスなどがある。導電性塗料の塗膜形成方法としては、公知の各種方法を用いることができ、たとえば、スピンコート法、グラビアロールコーター法、ブレードコーター法、スプレーコーター法、ディップコート法、バーコーター法、ダイコーター法、ワイヤーバー法などを採用することができる。導電性塗料を基材に塗布した後に光硬化、熱硬化などさせて透明導電性フィルムを形成するようにしてもよい。塗膜形成された導電性塗料は、ドライヤーなどで乾燥される。
PEDOT/PSS(H.C.Starck社製、バイトロン PH500)10重量部に対して、イオン交換水5重量部およびエチレングリコール5重量部を添加し、ハイブリッドミキサー(キーエンス(株)製、HM−500)を使用して、1分間の脱泡後、2分間混合した。70℃に設定した乾燥機(TABAI MFG CO.LTD製、PERFECT OVEN)に結果として生じた混合物を入れて1時間熱処理を行った。その処理物に、イオン交換水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール混合溶媒(重量比が2:1:1)を20重量添加し、上記ハイブリッドミキサーを使用して、1分間の脱泡後、2分間混合した。その混合物に10%ポリビニルアセタール水溶液(積水化学工業(株)製、エスレックKX5)0.1重量部とメチルシリケート加水分解物(コルコート(株)製、メチルシリケート51、固形分20%)0.1重量部とを添加し、上記ハイブリッドミキサーを使用して、1分間の脱泡後、2分間混合して、導電性塗料Aを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにジメチルスルホキシド5重量部をPEDOT/PSSに添加した点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Bを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにNメチル2ピロリドン5重量部をPEDOT/PSSに添加した点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Cを作製した。
1時間熱処理を行う代わりに2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Dを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにジメチルスルホキシド5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および1時間熱処理を行う代わりに2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Eを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにNメチル2ピロリドン5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および1時間熱処理を行う代わりに2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Fを作製した。
70℃の代わりに100℃に設定した乾燥機で熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Gを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにジメチルスルホキシド5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および70℃の代わりに100℃に設定した乾燥機で熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Hを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにNメチル2ピロリドン5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および70℃の代わりに100℃に設定した乾燥機で熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Hを作製した。
70℃に設定した乾燥機で1時間熱処理を行う代わりに、100℃に設定した乾燥機で2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Jを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにジメチルスルホキシド5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および70℃に設定した乾燥機で1時間熱処理を行う代わりに100℃に設定した乾燥機で2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Kを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにNメチル2ピロリドン5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および70℃に設定した乾燥機で1時間熱処理を行う代わりに100℃に設定した乾燥機で2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Lを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにトレハロース5重量部をPEDOT/PSSに添加した点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Mを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにペンタエリスリトール5重量部をPEDOT/PSSに添加した点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Nを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにトレハロース5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および1時間熱処理を行う代わりに2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Oを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにペンタエリスリトール5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および1時間熱処理を行う代わりに2時間熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Pを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにトレハロース5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および70℃の代わりに100℃に設定した乾燥機で熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Qを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにペンタエリスリトール5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および70℃の代わりに100℃に設定した乾燥機で熱処理を行った点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で導電性塗料Rを作製した。
イオン交換水5重量部およびエチレングリコール5重量部の代わりにイオン交換水10重量部を10重量部のPEDOT/PSSに対して添加した点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で比較例の導電性塗料Sを作製した。
PEDOT/PSS(H.C.Starck社製、バイトロン PH500)10重量部に対して、イオン交換水10重量部を添加し、ハイブリッドミキサー(キーエンス(株)製、HM−500)を使用して、1分間の脱泡後、2分間混合した。その混合物に、イオン交換水/メチルアルコール/イソプロピルアルコール混合溶媒(重量比が2:1:1)を20重量部添加し、上記ハイブリッドミキサーを使用して、1分間の脱泡後、2分間混合した。さらに、10%ポリビニルアセタール水溶液(積水化学工業(株)製、エスレックKX5)0.1重量部とメチルシリケート加水分解物(コルコート(株)製、メチルシリケート51、固形分20%)0.1重量部とを添加し、上記ハイブリッドミキサーを使用して、1分間の脱泡後、2分間混合した。70℃に設定した乾燥機(TABAI MFG CO.LTD製、PERFECT OVEN)に結果として生じた混合物を入れて1時間熱処理を行った。そして、その処理物を、上記ハイブリッドミキサーを使用して、1分間の脱泡後、2分間混合して比較例の導電性塗料Tを作製した。
イオン交換水5重量部およびエチレングリコール5重量部の代わりにイオン交換水10重量部を10重量部のPEDOT/PSSに対して添加した点、および熱処理を行わない点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で比較例の導電性塗料Uを作製した。
熱処理を行わない点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で比較例の導電性塗料Vを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにジメチルスルホキシド5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および熱処理を行わない点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で比較例の導電性塗料Wを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにNメチル2ピロリドン5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および熱処理を行わない点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で比較例の導電性塗料Xを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにトレハロース5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および熱処理を行わない点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で比較例の導電性塗料Yを作製した。
エチレングリコール5重量部の代わりにペンタエリスリトール5重量部をPEDOT/PSSに添加した点、および熱処理を行わない点を除いて、上記導電性塗料Aと同じ方法で比較例の導電性塗料Zを作製した。
OSG社製、ワイヤーバーを使用してハンドにて、導電性塗料A〜Xを、ハードコートPET基板に0.2μmの膜厚で塗布した。そして、導電性塗料A〜Xを塗布した基板をTBAI製パーフェクトオーブンにて130℃で3分間乾燥して、評価用透明導電性フィルムを基板上に作製した。
ロレスターHP装置(三菱化学(株)製、)、MCP−T350(ダイヤインスツルメンツ社製)、ロレスターMP(ダイヤインスツルメンツ社製)を使用して四端針法で、基板上に形成した透明導電性フィルムの表面抵抗値(Ω/□)を測定した。
分光光度計((株)島津製作所製、UV−2450)を使用し、無色のプラスチックの可視領域における全光線透過率の試験方法について規定した日本工業規格JIS K7361−1:1997に準処して透明導電性フィルムの光透過度を測定した。CIEの標準の光D65の代わりに550nmの可視光を使用した。
上記基板上に形成された透明導電性フィルムを目視して、透明導電性フィルムが均一に形成されているか否かを評価した。透明導電性フィルムが均一である場合、透明導電性フィルムを「良好」と評価し、導電性塗料がゲル化などして凝集物を生成して透明導電性フィルムが不均一になった場合、「不良」と評価した。
Claims (6)
- ポリエチレンジオキシチオフェン水溶液およびエンハンサーを混合する混合工程、
前記混合工程によって混合された混合物を60℃以上、100℃以下の温度で熱処理する熱処理工程、ならびに
前記熱処理工程によって熱処理された処理物に樹脂と溶剤とを添加する添加工程を含む導電性塗料の製造方法。 - 前記熱処理工程が、前記混合工程によって混合された混合物を70℃以上、90℃以下の温度で熱処理する請求項1の導電性塗料の製造方法。
- 前記熱処理工程が、前記混合工程によって混合された混合物を30分以上、3時間以下の時間、熱処理する請求項1または2の導電性塗料の製造方法。
- 前記エンハンサーが、プロトン型溶剤、スルホキシド系溶剤、アミン系溶剤および糖類のうちの少なくとも1つである請求項1乃至3のいずれか1項の導電性塗料の製造方法。
- 前記エンハンサーが、エチレングリコール、Nメチル2ピロリドンおよびトレハロースのうちの少なくとも1つである請求項1乃至3のいずれか1項の導電性塗料の製造方法。
- 請求項1乃至5のいずれか1項の製造方法によって製造された導電性塗料から作製され、
光透過度が90%以上であり、かつ、表面抵抗値が400Ω/□以下である透明導電性フィルム。
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