JP2011129407A - 硫化物固体電解質材料、リチウム電池および硫化物固体電解質材料の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、(100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMSのモル組成を有し、上記MSはGeS2およびSb2S3の少なくとも一方であり、上記xは0<x<100であり、上記yは74≦y≦80であることを特徴とする硫化物固体電解質材料を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図1
Description
まず、本発明の硫化物固体電解質材料について説明する。最初に、本発明の硫化物固体電解質材料と、上述した非特許文献1に記載されたリチウムイオン伝導体(硫化物固体電解質材料)との違いについて説明する。ここで、本発明の硫化物固体電解質材料の典型的な例として、(100−x)(75Li2S・25P2S5)・xMSのモル組成を有する硫化物固体電解質材料を挙げる。このモル組成に含まれる75Li2S・25P2S5の組成は、Li2SとP2S5との関係で、オルト組成(Li3PS4)に該当するものであり、理論的には未反応のLi2Sを有しないものである。一方、非特許文献1に記載された硫化物固体電解質材料は、(100−x)(75Li2S・25P2S5)・x(67Li2S・33GeS2)のモル組成を有するものである。このモル組成に含まれる75Li2S・25P2S5の組成は、上記と同様に、オルト組成(Li3PS4)に該当するものであり、理論的には未反応のLi2Sを有しないものである。また、上記モル組成に含まれる67Li2S・33GeS2の組成も、Li2SとGeS2との関係で、オルト組成(Li4GeS4)に該当するものであり、理論的には未反応のLi2Sを有しないものである。
まず、本発明の硫化物固体電解質材料の第一実施態様について説明する。第一実施態様の硫化物固体電解質材料は、(100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMSのモル組成を有し、上記MSはGeS2およびSb2S3の少なくとも一方であり、上記xは0<x<100であり、上記yは74≦y≦80であることを特徴とするものである。
次に、本発明の硫化物固体電解質材料の第二実施態様について説明する。第二実施態様の硫化物固体電解質材料は、(100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMSのモル組成を有し、上記MSはGeS2およびSb2S3の少なくとも一方であり、上記xは0<x<100であり、上記yの範囲は、上記yLi2S・(100−y)P2S5の組成において、未反応のLi2Sが残留する範囲であることを特徴とするものである。
次に、本発明のリチウム電池について説明する。本発明のリチウム電池は、正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、上記正極活物質層および上記負極活物質層の間に形成された電解質層と、を有するリチウム電池であって、上記正極活物質層、上記負極活物質層および上記電解質層の少なくとも一つが、上述した硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とするものである。
以下、本発明のリチウム電池について、構成ごとに説明する。
まず、本発明における電解質層について説明する。本発明における電解質層は、正極活物質層および負極活物質層の間に形成される層である。電解質層は、Liイオンの伝導を行うことができる層であれば特に限定されるものではないが、固体電解質材料から構成される固体電解質層であることが好ましい。安全性の高いリチウム電池(全固体電池)を得ることができるからである。さらに、本発明においては、固体電解質層が、上述した硫化物固体電解質材料を含有することが好ましい。固体電解質層に含まれる上記硫化物固体電解質材料の割合は、例えば10体積%〜100体積%の範囲内、中でも50体積%〜100体積%の範囲内であることが好ましい。特に、本発明においては、固体電解質層が上記硫化物固体電解質材料のみから構成されていることが好ましい。硫化水素発生量の少ないリチウム電池を得ることができるからである。固体電解質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内、中でも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。また、固体電解質層の形成方法としては、例えば、固体電解質材料を圧縮成形する方法等を挙げることができる。
次に、本発明における正極活物質層について説明する。本発明における正極活物質層は、少なくとも正極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、正極活物質層に含まれる固体電解質材料が、上述した硫化物固体電解質材料であることが好ましい。正極活物質層に含まれる硫化物固体電解質材料の割合は、リチウム電池の種類によって異なるものであるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内、中でも1体積%〜60体積%の範囲内、特に10体積%〜50体積%の範囲内であることが好ましい。また、正極活物質としては、例えばLiCoO2、LiMnO2、Li2NiMn3O8、LiVO2、LiCrO2、LiFePO4、LiCoPO4、LiNiO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2等を挙げることができる。
次に、本発明における負極活物質層について説明する。本発明における負極活物層は、少なくとも負極活物質を含有する層であり、必要に応じて、固体電解質材料、導電化材および結着材の少なくとも一つを含有していても良い。特に、本発明においては、負極活物質層に含まれる固体電解質材料が、上述した硫化物固体電解質材料であることが好ましい。負極活物質層に含まれる硫化物固体電解質材料の割合は、リチウム電池の種類によって異なるものであるが、例えば0.1体積%〜80体積%の範囲内、中でも1体積%〜60体積%の範囲内、特に10体積%〜50体積%の範囲内であることが好ましい。また、負極活物質としては、例えば金属活物質およびカーボン活物質を挙げることができる。金属活物質としては、例えばIn、Al、SiおよびSn等を挙げることができる。一方、カーボン活物質としては、例えばメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボン、ソフトカーボン等を挙げることができる。なお、負極活物質層に用いられる導電化材および結着材については、上述した正極活物質層における場合と同様である。また、負極活物質層の厚さは、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内である。
本発明のリチウム電池は、上述した正極活物質層、電解質層および負極活物質層を少なくとも有するものである。さらに通常は、正極活物質層の集電を行う正極集電体、および負極活物質の集電を行う負極集電体を有する。正極集電体の材料としては、例えばSUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタンおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。一方、負極集電体の材料としては、例えばSUS、銅、ニッケルおよびカーボン等を挙げることができ、中でもSUSが好ましい。また、正極集電体および負極集電体の厚さや形状等については、リチウム電池の用途等に応じて適宜選択することが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースには、一般的なリチウム電池の電池ケースを用いることができる。電池ケースとしては、例えばSUS製電池ケース等を挙げることができる。また、本発明のリチウム電池が全固体電池である場合、発電要素を絶縁リングの内部に形成しても良い。
本発明のリチウム電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であることが好ましい。繰り返し充放電でき、例えば車載用電池として有用だからである。本発明のリチウム電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
次に、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法について説明する。本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法は、2つの実施態様に大別することができる。以下、実施態様ごとに説明する。
まず、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法の第一実施態様について説明する。第一実施態様の製造方法は、Li2S、P2S5およびMS(MSは、GeS2およびSb2S3の少なくとも一方である)を、(100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMS(xは0<x<100であり、yは74≦y≦80である)のモル比で含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を非晶質化処理により非晶質化する非晶質化工程と、を有することを特徴とするものである。
第一実施態様における調製工程は、Li2S、P2S5およびMS(MSは、GeS2およびSb2S3の少なくとも一方である)を、上述したモル比で含有する原料組成物を調製する工程である。なお、上記モル比におけるxおよびyについては、上記「A.硫化物固体電解質材料 1.第一実施態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
第一実施態様における非晶質化工程は、上記原料組成物を非晶質化処理により非晶質化する工程である。非晶質化処理としては、例えばメカニカルミリング法および溶融急冷法を挙げることができ、中でもメカニカルミリング法が好ましい。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
第一実施態様においては、非晶質化工程の後に、熱処理工程を行っても良い。これにより、結晶質の硫化物固体電解質材料を得ることができる。熱処理の温度は、例えば270℃以上が好ましく、280℃以上であることがより好ましく、285℃以上であることがさらに好ましい。一方、熱処理の温度は、例えば310℃以下が好ましく、300℃以下であることがより好ましく、295℃以下であることがさらに好ましい。また、熱処理の時間は、例えば、1分間〜4時間の範囲内であり、30分間〜3時間の範囲内であることがより好ましい。また、第一実施態様においては、上述した硫化物固体電解質材料の製造方法により得られたことを特徴とする硫化物固体電解質材料を提供することができる。
次に、本発明の硫化物固体電解質材料の製造方法の第二実施態様について説明する。第二実施態様の製造方法は、Li2S、P2S5およびMS(MSは、GeS2およびSb2S3の少なくとも一方である)を、(100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMS(xは0<x<100であり、yの範囲は、上記yLi2S・(100−y)P2S5の組成において、未反応のLi2Sが残留する範囲である)のモル比で含有する原料組成物を調製する調製工程と、上記原料組成物を非晶質化処理により非晶質化する非晶質化工程と、を有することを特徴とするものである。
第二実施態様における調製工程は、Li2S、P2S5およびMS(MSは、GeS2およびSb2S3の少なくとも一方である)を、上述したモル比で含有する原料組成物を調製する工程である。なお、上記モル比におけるxおよびyについては、上記「A.硫化物固体電解質材料 2.第二実施態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
第一実施態様における非晶質化工程は、上記原料組成物を非晶質化処理により非晶質化する工程である。第二実施態様における非晶質化工程およびその他の工程については、上記「C.硫化物固体電解質材料の製造方法 1.第一実施態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)、五硫化リン(P2S5)および硫化ゲルマニウム(GeS2)を用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、(100−x)(75Li2S・25P2S5)・xGeS2の組成において、x=0.4のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物1gを得た。次に、得られた原料組成物1gを45mlのジルコニアポットに投入し、さらにジルコニアボール(Φ4mm、500個)を投入し、ポットを完全に密閉した。このポットを遊星型ボールミル機に取り付け、台盤回転数370rpmで40時間メカニカルミリングを行い、非晶質の硫化物固体電解質材料を得た。
(100−x)(75Li2S・25P2S5)・xGeS2の組成において、それぞれ、x=1、5、10のモル比となるように変更したこと以外は、実施例1−1と同様にして非晶質の硫化物固体電解質材料を得た。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)および五硫化リン(P2S5)を用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、Li2S:P2S5=75:25のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物1gを得た。得られた原料組成物を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして非晶質の硫化物固体電解質材料(75Li2S・25P2S5)を得た。
(X線回折測定)
実施例1−1および比較例1で得られた硫化物固体電解質材料を用いて、X線回折測定を行った。その結果を図3に示す。図3に示されるように、比較例1における組成は、オルト組成(Li3PS4、Li2S:P2S5=75:25)であるため、理論的には未反応のLi2Sが存在しないが、実際には僅かではあるがLi2Sのピークが確認された。これに対して、実施例1−1では、Li2Sのピークが完全に消失していた。すなわち、GeS2を添加することにより、硫化物固体電解質材料に残留するLi2Sを消失できることが確認できた。
実施例1−1〜1−4および比較例1で得られた硫化物固体電解質材料を用いて、硫化水素発生量の測定を行った。硫化水素の発生量は以下のように測定した。すなわち、硫化物固体電解質材料の粉末を100mg秤量し、その粉末を、ペレット成型機を用いてペレット(1cm2)を成型した。その後、得られたペレットを、密閉された1770ccのデシケータ(大気雰囲気、温度25℃、湿度50%)の中に入れ、硫化水素検知センサー(品番GX−2009、理研計器社製)によって硫化水素の発生量を測定した。その結果を図4および表1に示す。
出発原料として、硫化リチウム(Li2S)、五硫化リン(P2S5)および硫化ゲルマニウム(GeS2)を用いた。これらの粉末をアルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、x(75Li2S・25P2S5)・(100−x)(67Li2S・33GeS2)の組成において、x=0のモル比となるように秤量し、メノウ乳鉢で混合し、原料組成物1gを得た。得られた原料組成物を用いたこと以外は、実施例1−1と同様にして非晶質の硫化物固体電解質材料を得た。なお、上記の組成は、上述した非特許文献1に記載されたタイライン上の組成である。
x(75Li2S・25P2S5)・(100−x)(67Li2S・33GeS2)の組成において、それぞれ、x=18.2、25、40、50、66.7、75、92、100のモル比となるように変更したこと以外は、比較例2−1と同様にして非晶質の硫化物固体電解質材料を得た。
(X線回折測定)
比較例2−6(x=66.7)で得られた硫化物固体電解質材料を用いて、X線回折測定を行った。その結果を図5に示す。比較例2−6における組成は、オルト組成であるLi3PS4(Li2S:P2S5=75:25)と、同じくオルト組成であるLi4GeS4(Li2S:GeS2=67:33)とのタイライン上の組成であるため、理論的には未反応のLi2Sが存在しないものと思われるが、図5に示されるように、実際にはLi2Sのピークが確認された。
比較例2−1〜2−9で得られた硫化物固体電解質材料を用いて、硫化水素発生量の測定を行った。硫化水素発生量の測定方法は、上述した評価1と同様である。その結果を図6に示す。図6に示されるように、特に、比較例2−1〜比較例2−8は、GeS2を用いない比較例2−9よりも硫化水素発生量が高いことが確認された。
2 … 負極活物質層
3 … 電解質層
10 … 発電要素
Claims (11)
- (100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMSのモル組成を有し、
前記MSはGeS2およびSb2S3の少なくとも一方であり、前記xは0<x<100であり、前記yは74≦y≦80であることを特徴とする硫化物固体電解質材料。 - (100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMSのモル組成を有し、
前記MSはGeS2およびSb2S3の少なくとも一方であり、前記xは0<x<100であり、
前記yの範囲は、前記yLi2S・(100−y)P2S5の組成において、未反応のLi2Sが残留する範囲であることを特徴とする硫化物固体電解質材料。 - 前記xの範囲は、前記モル組成に含まれるyLi2S・(100−y)P2S5の組成を有する硫化物固体電解質材料における硫化水素発生量以下の硫化水素発生量を得ることができる範囲であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記xは、x≦6であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記xは、x≦1であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料。
- 前記MSが、GeS2であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料。
- 非晶質であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料。
- 正極活物質を含有する正極活物質層と、負極活物質を含有する負極活物質層と、前記正極活物質層および前記負極活物質層の間に形成された電解質層と、を有するリチウム電池であって、
前記正極活物質層、前記負極活物質層および前記電解質層の少なくとも一つが、請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の硫化物固体電解質材料を含有することを特徴とするリチウム電池。 - Li2S、P2S5およびMS(MSは、GeS2およびSb2S3の少なくとも一方である)を、(100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMS(xは0<x<100であり、yは74≦y≦80である)のモル比で含有する原料組成物を調製する調製工程と、
前記原料組成物を非晶質化処理により非晶質化する非晶質化工程と、
を有することを特徴とする硫化物固体電解質材料の製造方法。 - Li2S、P2S5およびMS(MSは、GeS2およびSb2S3の少なくとも一方である)を、(100−x)(yLi2S・(100−y)P2S5)・xMS(xは0<x<100であり、yの範囲は、前記yLi2S・(100−y)P2S5の組成において、未反応のLi2Sが残留する範囲である)のモル比で含有する原料組成物を調製する調製工程と、
前記原料組成物を非晶質化処理により非晶質化する非晶質化工程と、
を有することを特徴とする硫化物固体電解質材料の製造方法。 - 前記非晶質化処理が、メカニカルミリングであることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の硫化物固体電解質材料の製造方法。
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