JP2011129342A - 電子源 - Google Patents

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Abstract

【課題】負の電子親和力を持つn型ダイヤモンド半導体への電流注入のみを用いて、室温動作する電子源を提供する。
【解決手段】水素終端によって負の電子親和力表面を有した5×1019cm-3未満の濃度のリンドープダイヤモンドで構成されバンド伝導を有しているn型ダイヤモンド半導体層1と該n型ダイヤモンド半導体層に少なくとも正極がショットキー電極で構成された電極2、3とを含み、電極2、3間にバイアスを印加して電流を流すことにより、外部に電子放出することを特徴とする電子源。
【選択図】図8

Description

本発明は、負の電子親和力(Negative Electron Affinity: NEA)表面を持つn型ダイヤモンド半導体に接した二つの電極から構成される電子源に関するものである。
各用途において最適な材料・構造を用いて様々な陰極が開発されている。その場合、真空障壁(仕事関数あるいは電子親和力)、陰極温度Tc、及び陰極前面での電界強度Ecが制限要素であるが、これら制限を破るものとして期待されるのが、真空障壁を負にする考え方である。すでにGaAsなどでは、薄膜成長時の不純物高濃度ドーピングによる表面近傍の下向きのエネルギーバンド湾曲を利用した擬似的な負の電子親和力状態を得たパルス動作の光励起電子銃が試作されているが、劣化の問題が残されている。
これに対し、半導体であるダイヤモンドの表面を水素終端することによって、負の電子親和力が実現できることが明らかになっている。他の物性、つまり高硬度、熱伝導性、化学的安定性においても、共有結合であり単元素材料であるダイヤモンドは、最も有望であるとされている。また、イオン性の高いワイドバンドギャップ半導体である窒化ホウ素(BN)や窒化アルミニウム(AlN)において、水素終端ダイヤモンドと同じ表面双極子の極性を生じる面においても負の電子親和力が得られると期待されている。(特許文献1、非特許文献1、非特許文献2参照)これらを負の電子親和力表面を持つ材料のn形半導体に自由電子を注入できれば、伝導帯の自由電子にとって真空障壁が負の状態が得られ、容易に電子放出が得られると考えられていた。
特許文献1、非特許文献1あるいは非特許文献2で述べているように、ダイヤモンドやイオン性の高いワイドバンドギャップ半導体の表面を水素化することによって、電子親和力が低下し、負の電子親和力が得られる場合もあることはよく知られている。特にダイヤモンドの場合、水素と炭素の結合エネルギーは大きく大気中でも200℃程度までは安定であり、超高真空では800〜900℃の高温での熱処理でようやく結合を切り離すことができる。(非特許文献3、4参照)
しかし、n型ダイヤモンドの水素終端表面は、水素終端表面が持つ固有の非占有電子状態に熱平衡化で電子が捕獲されて、表面近傍に空乏層が形成され、上向きの表面バンド湾曲が生じることにより、内部の自由電子が外部に自由に表面を透過できるNEAの特長が失われると報告されている。(非特許文献1、2参照)
また、n型ダイヤモンド半導体表面に関する電界電子放出特性において、NEAとなる水素終端表面よりも、通常の正の電子親和力となる酸素化表面の方が、電子放出が開始する引き出し電圧が高いことが報告され、n型半導体表面は負の電子親和力を利用する表面としては適していないと考えられてきた。(非特許文献5、6参照)
これに対して、高い電子放出効率が期待される負の電子親和力を利用した電子源として、pn接合を利用した手法が報告されている(特許文献2参照)が、n型半導体のみからなる負の電子親和力を利用した電子源に関する技術情報は公開されていない。
特開2002−352694号公報 特開2009−16252号公報
D. Takeuchi, et al., Appl. Phys. Lett. 86 (2005) 152103 S. Sque, et al., Phys. Rev. B 73 (2006) 085313 D. Takeuchi et al.: Diamond Relat. Mater. 15 (2006) 698 B. F. Mantel et al.: Diamond Relat. Mater. 9 (2000) 1032 T. Yamada et al.: Appl. Phys. Lett.. 88 (2006) 212114 H. Kato et al.: Appl. Phys. Lett.. 93 (2008) 202103
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、pn接合素子とは違い、従来負の電子親和力を利用した電子放出面としては不向きと考えられていたn型ダイヤモンド半導体表面のみを用いる単純な構造でありながら、原理上その問題を克服し、電子放出にエネルギー的制限の無い負の電子親和力表面を利用した高効率ユニポーラ動作電子源を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、次のような電子源を提供するものである。
(1)水素終端によって負の電子親和力表面を有した5×1019cm-3未満の濃度のリンドープダイヤモンドで構成されバンド伝導を有しているn型ダイヤモンド半導体層と
該n型ダイヤモンド半導体層に少なくとも正極がショットキー電極で構成された電極対とを含み、電極対にバイアスを印加して電流を流すことにより、外部に電子放出することを特徴とする電子源。
(2)上記n型ダイヤモンド半導体層が、n型ダイヤモンド半導体自立膜であることを特徴とする(1)に記載の電子源。
(3)上記n型ダイヤモンド半導体層が、ホッピング伝導を示す5×1019cm-3以上の濃度のリンドープダイヤモンド低抵抗層の一部に接して、あるいは低抵抗層を介して、負極に接して構成されていることを特徴とする(1)又は(2)に記載の電子源。
(4)上記n型ダイヤモンド半導体層が、マイクロ波プラズマCVD法により形成されたダイヤモンドであることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の電子源。
(5)上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド単結晶{001}表面から形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の電子源。
(6)上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド単結晶{111}表面から形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の電子源。
(7)上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド単結晶{110}表面から形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の電子源。
(8)上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド多結晶表面から形成されていることを特徴とする(1)から(4)のいずれかに記載の電子源。
本発明では、加熱、及び高電界印加を必要としない室温で連続電子放出が可能となる。これは、従来固体内部の電子を外部(真空)へ取り出すのに、熱エネルギーや電界効果を用いた原理とは異なる方法を用いるためである。また、pn接合と負の電子親和力表面を構成して、バイポーラ動作としての電流注入による自由励起子生成に伴う電子放出原理と異なり、電子のみが関与するユニポーラ動作原理による。本発明に適した材料は、表面に負の電子親和力とショットキー電極を形成できるn型半導体材料である。
本発明によれば、従来のどの種類の電子源とも異なる原理・構造を持ち、従来の電子源が持つ本質的な問題、すなわち高出力・高輝度の要求と熱的・高電界環境起因による劣化のトレードオフに縛られない電子源を作製できる。
また、本発明では、材料に水素終端ダイヤモンドを用いた場合、自由励起子が生成されないため、紫外線発光が望ましくない場合に応用できる固体電子源となる。負の電子親和力を応用するため、原理的に1eV未満の低エネルギー電子源としての幅広い応用にすべて適用可能であり、さらに原理的に、真空以外の雰囲気下でも電子放出が可能と考えられ、従来の電子源では不可能であった応用も可能となる。
すなわち照明、殺菌・浄水、分析等の各種情報センシング、医療分野、のみならず、巨大な電力系統スイッチ・バスの超小型化などのパワーエレクトロニクスへの応用、電子放出を真空以外の溶液・ガス雰囲気中にも可能なため微小領域(マイクロチャネル)化学反応制御、等への応用が実現可能となる。そして従来にない連続NEA電子源を実現できる。
負の電子親和力(NEA)を持つn型ダイヤモンド半導体表面の上向きのバンド湾曲を表す図。 NEA表面を持つn型ダイヤモンド半導体結晶内部からの電子放出阻害を示す実験結果を表す図。 n型半導体表面状態による電界電子放出特性の比較を示す図。 金属/n型半導体界面のバンド構造を示す図。 NEA表面を持つn型半導体上に二つの電極を持つ本発明の電子源の熱平衡下でのバンド構造を示す図。 バイアスをかけた状態でのバンド構造を示す図。 図6における電極近傍の状態でのバンド構造を示す図。 実施例1の電子源の構造を表す図。 実施例1の電子源の構造と電子放出測定系を示す図。 実施例1の電子源に流れる電流と放出電流の駆動電圧依存性ならびに温度依存性を示す図。 実施例1の電子源における電子放出サイトのポテンシャル確認実験系と結果を示す図。 比較例の電子源における、高濃度リンドープ膜の抵抗率の温度依存性を示す図。 比較例の電子源における、高濃度リンドープ膜を用いた実験結果を示す図。 実施例2の電子源の構造を表す図。 実施例3の電子源の構造を表す図。
[本発明の原理]
本発明は、負の電子親和力を持つn型ダイヤモンド半導体が本質的に持つ表面での上向きのバンド湾曲により電子放出が阻害されるのを、二対の電極を用いて電圧をかけることによって、正極側でバンド湾曲が解除されて負の電子親和力の効果が活性する原理を実証し、室温において、加熱や高電界が不要な従来にない新しい電子源であり、従来の電子源のみならず、真空以外の雰囲気でも利用可能となる紫外線発光を伴わない電子源である。
以下本発明の原理について、詳細に説明する。
水素終端表面を有するn型ダイヤモンドは、図1矢印左側に示すようなエネルギーバンド構造を持つ。ここで、C-Hは炭素(C)と水素(H)の双極子からなる表面電気二重層を表し、この左側がn型ダイヤモンド、右側が真空(外部)に対応する。図は、ダイヤモンド側では、CBMは伝導帯底、VBMは価電子帯頂上を表し、Fermi-Levelとともに、欠陥が関与しない理想状態としてフラットバンド構造の状態を示す。一方、真空側では、Vacuum Levelとともに、表面固有の状態密度(DOS)を表しており、黒塗りが占有状態、白抜きが非占有状態を表している。NEAの状態は、Vacuum Levelが結晶内部のCBMより下にあることで表わされている。特筆すべきは、表面電気二重層の効果によって、表面非占有状態底が、結晶内部のCBMよりも下に来ていることである。(非特許文献2)
結果として、十分時間がたった熱平衡下では、矢印右側に示すように、表面非占有状態に結晶内部の電子が捕獲されるため、欠陥が介在しなくても、本質的に上向きのバンド湾曲が生じて、NEA表面であるにもかかわらず、結晶内部からの電子放出が阻害されることになる。
上記原理を実証する実験結果を図2に示す。これは、水素終端表面を有するp型、i型(真性型)、n型ダイヤモンドの三種類の試料それぞれに、バンドギャップ光近傍のエネルギーを持つ光を照射し、得られる光電子強度を光強度で規格化して得られる全光電子放出率スペクトル(TPYS)である。バンドギャップ5.5eVより低い領域では、上記三種類の試料の4.4eV付近からのスペクトルの立ち上がりが見事に一致している。ここは、図1の表面固有の占有・非占有準位間の遷移を伴う光電子放出として理解でき、図1に示すNEAを証明する結果となっている。すなわち、伝導タイプによらず、水素終端ダイヤモンド表面はNEAであると言える。
一方、ダイヤモンドのバンドギャップ5.5eV近傍から、p型、i型(真性型)ダイヤモンドではスペクトルに立ちあがりが見られる(挿入図はバンドギャップ近傍の拡大図)が、n型ダイヤモンドでは見られない。これは、p型、i型(真性型)ダイヤモンドでは、NEA表面である場合、結晶内部からの電子放出が阻害されないことを示すとともに、n型ダイヤモンドではNEA表面であるにもかかわらず、図1矢印右側の図のとおり、結晶内部からの電子放出が阻害されることを示している。したがって、n型表面からは電子放出が得にくいと考えられてきた。
さらに、図3に示すように、n型ダイヤモンド半導体表面に関する電界電子放出特性において、NEAとなる水素終端表面よりも、通常の正の電子親和力となる酸素化表面の方が、電子放出が開始する引き出し電圧が高いことが報告され、n型半導体表面は負の電子親和力を利用する表面としては適していないと考えられてきた。
一方、n型ダイヤモンド表面にショットキー電極となる金属を蒸着法などで形成した場合、図4のようなきわめて大きなショットキー障壁が形成されたバンド構造となることが明らかになっている。したがって、n型ダイヤモンド表面に二対のショットキー電極を形成した場合、その間のバンド構造は図5のようになると言える。実際に、電圧をかけて電流を流すと、低電圧領域では結晶内部の抵抗よりもはるかに高い抵抗によって電流が制限されるダブルショットキー型のS字カーブが実験でも得られる。このような高いコンタクト抵抗を低減する技術として、すでに5×1019cm-3を超える高濃度リンドープ膜を応用することが実施されている。(非特許文献6参照)
図6に、上記電圧(バイアス)を印加した場合のバンド構造の概念図を示す。図において左側の負極側では、電子ポテンシャルエネルギーが上がり、極めて高いショットキー障壁を有する状況でも、障壁直下の空乏層領域に効率よく電界が集中し、十分に障壁厚さが薄くなり、トンネル電流が流れる。当然、ショットキー障壁をトンネルして注入された電子は、多数キャリアとして反対側の正極側から電子を追い出す。一方重要な点は、正極側はショットキー電極として効率よく印加電圧によってショットキー障壁が解消したフラットバンド構造となることである。
図7に、正負両電極近傍の負の電子親和力を有するn型ダイヤモンド半導体表面状態でのバンド構造の概念図を示す。図6と違い、n型ダイヤモンド半導体層の両側は、もはや電極金属ではなく、真空(外部)で表わされる。それぞれの表面ポテンシャルは、電極のポテンシャルの動きに追随している。したがって特筆すべきは、電子が注入される負極側近傍では、依然上向きのバンド湾曲によって、結晶内部のCBMは真空準位(VL)より下で、NEAが十分に生かされる状況にはなっていないが、反対の正極側では、バイアスによってフラットバンド構造となり上向きのバンド湾曲が解消され、NEAの特性が生かされる状況が得られている点である。
そうであれば、図7に示すように、負極から電子が注入されることによって、正極近傍表面では電子がn型ダイヤモンド半導体層から外に放出される動きが駆動される。ここで、正極に移るか、NEAを通じて真空に移るかは、収集電極や素子のバイアスと空間的形状で決まる電界分布による。また、この素子は多数キャリヤで駆動されるため、少数キャリヤで駆動するpn接合を利用したNEA電子源と異なり、電子の拡散長は問題ではない。性能を決定するのは、負極での電子の注入効率と、電子放出が起こるn型半導体表面の結晶性や負の電子親和力の安定性である。したがって、多結晶でも不純物や欠陥の少ない高品質な場合であれば、原理的には動作する。
上記の原理を踏まえつつ、以下に本発明の実施例を示し、さらに詳細に説明する。
図8に、電子源の実施例1を示す。水素終端によって負の電子親和力表面を有した5×1019cm-3未満の濃度のリンドープダイヤモンドで構成されバンド伝導を有しているn型ダイヤモンド半導体層1を高温高圧合成Ib型(001)ダイヤモンド基板4上に形成し、そのn型ダイヤモンド半導体層に少なくとも正極がショットキー電極で構成された電極2、3が接して構成され、電極2、3にバイアスを印加して電流を流すことにより、外部に電子放出する電子源である。本実施例1では、正負いずれの電極もショットキー電極である。また、結晶面は(111)又は(110)でもよい。あるいは、正極と負極の間が一つの結晶粒で連続する多結晶でもよい。
図8の電子源の実施例1における、電子源の作製プロセスは以下のとおりである。
高温高圧合成Ib型(001)ダイヤモンド基板4上に、マイクロ波プラズマCVD法により、n型ダイヤモンド半導体ホモエピタキシャル薄膜を形成する。メタン濃度0.4%、フォスフィンのメタンに対する濃度5%、基板温度900℃で、マイクロ波電力は750W、ガス流量は400sccm、ガス圧力は25Torr、合成時間は6時間で合成した。
その後、フォトリソグラフィーにより電極パターンをレジストに転写し、真空蒸着法によって、Ti/Pt/Auの順で電極を蒸着した。蒸着後、リフトオフ過程で電極パターンを形成した。
その後、Ar雰囲気中で420℃、30分で電極2、3のエージングを行い、密着性を向上させた。最後に、全体を水素ラジカル処理によって水素化した。
図9の左図には、実施例1の電子源と測定の様子が示されている。また、図9の右図には、電子源を駆動するための回路と放出電子を収集する回路を示す。
実施例1の電子源の電流(Id)と電子放出電流(Ie)の、駆動電圧(Vd)依存性を図10に示す。また、それらの温度依存性として、室温から773K(500℃)までの範囲の結果を示す。
測定は全て負バイアスから正バイアスの方向で行った。素子に流れる対称性のある電流カーブが得られているが、オーミック特性ではなく、ダブルショットキー特性である。温度を上げることによって、室温では完全に活性化していないリンドナーが活性化していき、キャリヤが生まれ抵抗が下がり、電流レベルが上昇している。
一方、電子放出電流(Ie)は、(Id)と同様の振る舞いを示し、正・負ともに高いバイアスで電流レベルが高くなることによって、効率10-3〜10-4で観測されている。負にバイアスした場合の方が正にバイアスした場合よりもIeが落ち着いているように見えるが、これはバイアスVdをかけてから、電子放出強度が時間とともに一桁程度減少して定常状態に落ち着く振る舞いがあるためであり、測定が負バイアス側から開始しているため、非対称なVd-Ieカーブが観測された。
次に、得られた電子放出機構について考察するための検証実験の結果を示す。実施例1の電子源に一定電圧|Vd|=100Vを印加し、電流(Id)と電子放出電流(Ie)の、収集電圧(Ve)依存性を図11の左図に示す。測定は573Kで行っている。ここで、一つの電極を接地(0V)し、対向する電極に、負バイアスとしてVd=-100Vを印加した場合のポテンシャルの関係図を右上図に、正バイアスとしてVd=+100Vを印加した場合のポテンシャルの関係図を右下図に、収集電極のポテンシャルとの関係を合わせて示している。
負にバイアスした場合、電子の注入が生じる負極側からの電子放出が支配的であるのか、あるいは電子が抜けていく正極側の方が支配的であるのかを考えてみる。右上図では、接地電極側が負極、正にバイアスした電極側が正極である。電子の注入が生じる負極側からの電子放出が支配的である場合、収集電極に到達できるポテンシャルエネルギーを持てるVe>=0Vから観測されると考えられる。
電子が抜けていく正極側の方が支配的である場合、同様に、収集電極に到達できるポテンシャルエネルギーを持てるVe>=+100Vから観測されると考えられる。右下図では、接地電極側が正極、負にバイアスした電極側が負極である。
電子の注入が生じる負極側からの電子放出が支配的である場合、収集電極に到達できるポテンシャルエネルギーを持てるVe>=-100Vから観測されると考えられる。一方、電子が抜けていく正極側の方が支配的である場合、同様に、収集電極に到達できるポテンシャルエネルギーを持てるVe>=0Vから観測されると考えられる。
以上のことを踏まえて実験結果を見ると、実験結果は正に電子が抜けていく正極側の方が支配的であることを示唆している。つまり、図6と図7に示したようなバイアスの効果によって、n型ダイヤモンド半導体表面のNEAが生かされた電子放出が得られたことが発見された。詳細に結果を見ると、右上図に対応する黒四角(■)の電子放出はVe<100Vでも起こっている様子が見られており、実際にはよりポテンシャルエネルギーの高い表面からも電子が放出されている。
[比較例]
次に実施例1に対する比較例を示す。
高温高圧合成Ib型(001)ダイヤモンド基板4上に負の電子親和力表面を有したn型ダイヤモンド半導体層1を形成し、そのn型ダイヤモンド半導体層1に、二対以上の電極2、3が接して構成されているが、n型ダイヤモンド半導体層1にホッピング伝導が支配的な5×1019cm-3以上の高濃度リンドープ層を用いる電子源である。
図12にこのn型ダイヤモンド半導体層の抵抗率の温度依存性を示す。リンドナーの活性化エネルギー570meVによるバンド伝導を示すのが直線であるが、図12の温度範囲においてそこから大きく逸脱し、点線のような低い活性化エネルギーを示していることがわかる。5×1019cm-3未満のリンドープn形ダイヤモンドでは、実験結果は実線に従う。
上記比較例における電子源の作製プロセスは、実施例1と全く同様である。また、図9と同じ電子源を駆動するための回路と放出電子を収集する回路を用いて測定した。
図13に、比較例で得られた電子源の電流(Id)と電子放出電流(Ie)の、室温での駆動電圧(Vd)依存性を示す。測定は全て負バイアスから正バイアスの方向で行った。素子に流れる対称性のある電流カーブは、オーミック特性ではなく、ダブルショットキーに対応している。実施例1と本結果の-100V付近で比較すると、電流レベルは10-7A程度から10-3A程度となっており4桁高い。室温であるが、電流レベルは極めて高いため、実施例1と同じ原理で同程度の効率(10-4)であれば10-8A程度以上の電子放出は容易に観測されるはずであるが、実施例1と比較して電子放出は得られなかった。(10-11Aは測定限界であった。)したがって、ホッピング伝導が生じるほど高濃度にドープされたn型半導体単体は本発明の電子源に適していないと言える。
実施例2の電子源を図14に示す。NEA表面を有するn型ダイヤモンド半導体自立膜11上に、真空蒸着法によって、電極2及び3を蒸着する。ここで、正極はショットキー電極とする。最後に、全体を水素ラジカル処理によって水素化する。本実施例2では、結晶面は(111)又は(110)でもよい。あるいは、上部と下部との間が連続した結晶粒からなる多結晶であってもよい。
実施例3の電子源を図15に示す。高温高圧合成Ib型ダイヤモンド基板4上に、マイクロ波プラズマCVD法により、n型ダイヤモンド半導体層1となるn型ダイヤモンド半導体ホモエピタキシャル薄膜を形成する。NEA表面を有する薄膜上にホッピング伝導を示す5×1019cm-3以上の濃度のリンドープダイヤモンド低抵抗薄膜5を成長し、エッチング処理によって薄膜が一部表面となる構造にする。あるいは、マスクを用いて抵抗層薄膜5を薄膜上に成長し、薄膜が一部表面となる構造にする。真空蒸着法によって、電極2及び3を蒸着する。本実施例3では、結晶面は(111)又は(110)でもよい。あるいは、正極と負極の間が一つの結晶粒で連続する多結晶でもよい。
実施例2の電子源は、図14において電極2及び電極3のうち、負極となるいずれか一方の電極とNEA表面を有するn型ダイヤモンド半導体自立膜11との間に、ホッピング伝導を示す5×1019cm-3以上の濃度のリンドープダイヤモンド低抵抗層を入れた構造を含む。
以上のように、本発明では、n型物性固有の性質から困難であると考えられてきた、n型ダイヤモンド表面からの負の電子親和力を利用した電子放出を特徴とする電子源の作製に対し、負の電子親和力表面を経由した電子放出過程を引き出すための原理を実証しており、室温において、熱励起も電界効果も不要な紫外線発光を伴わない従来にない新しい電子源を実現できることを示す。
この電子源の実現により、あらゆる電子ビーム応用への展開が可能であり、白色照明、殺菌・浄水、電子ビーム応用分析・電力スイッチング素子・高輝度電子銃・高輝度X線装置、マイクロ流路内局所化学反応用カソード等の各種情報センシング、医療、等の幅広い分野への応用が可能となる。
1 NEA表面を有するn型ダイヤモンド半導体層
2 電極1
3 電極2
4 ダイヤモンド基板
5 低抵抗層
11 NEA表面を有するn型ダイヤモンド半導体自立膜

Claims (8)

  1. 水素終端によって負の電子親和力表面を有した5×1019cm-3未満の濃度のリンドープダイヤモンドで構成されバンド伝導を有しているn型ダイヤモンド半導体層と
    該n型ダイヤモンド半導体層に少なくとも正極がショットキー電極で構成された電極対とを含み、電極対にバイアスを印加して電流を流すことにより、外部に電子放出することを特徴とする電子源。
  2. 上記n型ダイヤモンド半導体層が、n型ダイヤモンド半導体自立膜であることを特徴とする請求項1に記載の電子源。
  3. 上記n型ダイヤモンド半導体層が、ホッピング伝導を示す5×1019cm-3以上の濃度のリンドープダイヤモンド低抵抗層の一部に接して、あるいは低抵抗層を介して、負極に接して構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子源。
  4. 上記n型ダイヤモンド半導体層が、マイクロ波プラズマCVD法により形成されたダイヤモンドであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の電子源。
  5. 上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド単結晶{001}表面から形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子源。
  6. 上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド単結晶{111}表面から形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子源。
  7. 上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド単結晶{110}表面から形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子源。
  8. 上記n型ダイヤモンド半導体層が、ダイヤモンド多結晶表面から形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子源。
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