JP2009016252A - 電子源 - Google Patents

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Abstract

【課題】 励起子を応用しながら室温動作する、高電圧不要かつ低真空動作可能な、高効率・連続高出力の電子源を提供する。
【解決手段】
本発明は、励起子の束縛エネルギーが高い半導体材料で構成される間接遷移型半導体であって、間接遷移型半導体による活性層を形成し、活性層電流注入する電極を有する自由励起子生成効率が10%以上であり、その活性層あるいは活性領域に形成した負の電子親和力表面で自由励起子を自由電子に変換し連続放出させることを特徴とする電子源である。
【選択図】 図6

Description

本発明は、高効率に高密度な励起子を活性層において生成できる間接遷移型半導体が、負の電子親和力表面において高効率に励起子を電子に変換し、連続放出することを利用した電子源に関するものである。
電子源(陰極)は、熱電子放出型(thermionic emission; TE)と電界放出型(field emission; FE)、その両者の中間となる熱電子電界放出型(thermionic field emission; TFE)に分類される。TEには金属やLaB6、BaOなどが、FEには金属やCs、CsOを被覆し形状として針状に尖らせたものが使用される。LaB6などは、動作原理からTFEに分類されたりもする。
TEではビーム電流を大きくとりたいとき、あるいは輝度を高めたいときは、陰極放出電流密度(emission current density)Jcを高くする必要がある。TEでJcを決める要因は、
(A) 陰極材料とその処理(仕事関数が決まる)
(B) 陰極温度Tc
(C) 陰極前面での電界強度Ec
(D) 真空の質(表面状態すなわち仕事関数を左右する)
である。
JcはTcを高めると急激に増加するが、一方で陰極物質の蒸発速度が増加して寿命が短くなる。寿命を犠牲にして飽和電流密度Js(Jc<Js)を高くとるとき(高輝度電子ビーム装置)もあれば逆に寿命を長くとる(>10年)ためにJsを抑える場合(人工衛星用電子管)もある。また動作真空度と残留ガスの種類や加速電圧も寿命に影響を及ぼす。
Jcを高めるにはJsを高くとらなればならないが、忘れてはならないのはEcを十分高くとることである。せっかくJsを高くしても陰極前面での電界強度Ecが低ければJcは高くとれない。LaB6陰極を用いるときなどは、とくにこの注意が必要である。実際には外部印加電圧Vaをあまり高くとれないので陰極を針状に尖らせてEcを大きくする。LaB6陰極がTFE動作と呼ばれる所以でもある。
FEでは陰極表面に107V/cm程度の電界を印加すると電界放出が起こる。材料はタングステンが最も多く、それを0.1μm~1μmの局率半径を持つように整形する。結晶方位によってχは4.3~5.7eVと変化するが平均4.5eVである。電界放出を安定に行うためには10-8Pa程度の超高真空が必要である。陰極の温度を高め残留ガス分子の吸着やイオン衝撃による変形を防ぐと10-6Pa程度でも安定な放出が可能となる。このときにはある特定の結晶軸方向の成長(build-up)が起こりやすくなる。このbuild-upは温度と印加電界だけでなく残留ガス成分にも敏感である。
FEにおいて高いJcを安定に取り出すためには上記のことがらに注意が必要である。Jcの上限値は抵抗加熱による急激な温度上昇と空間電荷で決まる。超高真空技術の進歩によって、FE陰極が実用化されているが、注意すべきことは陰極から引き出す電流を増加させるときには、真空度をそれに応じて高めておく必要がある。真空度と放出電流の積が、ある限度を超えると電流の不安定性が増加する。
FE電子銃は輝度が高いが、ビーム電流を大きくとるのは得意ではない。輝度が高いのはJcが高いことと仮想クロスオーバー面での局率半径rcが小さいことによる。rcとIが小さいので照射系の設計がTE電子銃と異なった取り扱いが必要である。具体的には、Iを変えるには発散角αcかJcか、どちらかを変えねばならない。絞りを用いてαcを変える時には、これによってrcが変わり、Jcが一定であっても輝度が一定でなくなるなど複雑である。
FEでは陰極近傍の電流密度が非常に高いため、ベルシェ効果によって異常速度分散が起こり、同じ全放出電流でもTEよりビーム径が発散する。
TEでは放出される電子の速度分布関数がマクスウェル分布に沿って初速度分布を持っていることに注意する必要がある。実際には表面の状態その他で崩れることもあるが、タングステンに対しては実証されている。FEのときにはマクスウェル分布ではないが、実行温度Teffでその分布幅を表す。kTeff~9.3×10-9Ec(V/cm)/[χ(eV)]1/2(eV)である。たとえば、χ=4.5eV、Ec=4×107V/cmとすると、kTeff~0.2eVである。
上記のような長所・短所を考慮して、各用途において最適な材料・構造を用いて様々な電子源が開発されている。特に、仕事関数(あるいは電子親和力)χ、およびそれに伴うTc、Ecが制限要素であるが、これら制限を破るものとして期待されるのが、真空障壁を負にする考え方である。すでにGaAsなどでは擬似的にこの状態を得たパルス動作の光励起電子銃源が試作されているが、劣化の問題が残されている。
半導体であるダイヤモンドの表面を水素終端することによって、負の電子親和力が実現できることが明らかになっている。そして、n形ダイヤモンド半導体と組み合わせれば、伝導帯の自由電子にとって真空障壁が負の状態が得られると考えられた。
しかし、実際にはこの構造だけでは電子は容易に放出されないことが報告されている。(非特許文献1、2)問題点としてはすでに物理的考察から指摘されており、負の電子親和力を持つn形ダイヤモンド半導体表面では自由電子の放出を阻止する内部電界が作用していると指摘されている。
ダイヤモンドは炭素材料としてもともと(正の)電子親和力が小さいため、様々なダイヤモンドを用いた電子源が提案されている。負の電子親和力を有する構造も提案されている。その場合、伝導帯を電子が輸送されるもの、あるいはエネルギーロスのない弾道電子を用いるものに大別される。しかし、[0013]で述べたように、n形ではなくp形あるいはi形であるため、電流注入、およびキャリア輸送の点で原理的・技術的に困難な問題があった。光励起以外、ダイヤモンドの負の電子親和力を利用する固体素子の現実的な技術提案は無い。
したがって、これらの特徴を生かした電子源はフォトカソード以外は技術的アイデアが手詰まりとなっている。実際に、これ以上の知的財産情報は公開されていないし、学術的にも報告は無い。
一方、ダイヤモンドは室温で5.47eVという大きなバンドギャップを持ち、室温以上の高温下でも高効率に自由励起子が生成される特徴を有する。また、前記した負の電子親和力を持つ表面から、この自由励起子に由来する光電子放出が容易に高効率で得られる。(非特許文献1、3)。
また、最近のダイヤモンド半導体合成技術、プロセス技術の向上によって、AlGaNにおいて困難とされるp型ドーピングはもちろんのこと、ダイヤモンドで困難とされてきたn型ドーピングについても、最近キャリア移動度の高いものが実現されている。pn接合についても、整流比が6桁以上の良好な電気特性を兼ね備えたものが既に作製されている(非特許文献4、5)。そしてpin接合についても、すでに成功した報告が出ている。(非特許文献6)
また、ダイヤモンドは単元素から構成されていることにより、前記したAlGaN系化合物半導体に特有な構造欠陥等の問題もない。さらに、ダイヤモンドは、その機械的、化学的、および熱的特性(半導体材料中で最高の熱伝導率を持つ)に加え、優れた半導体特性や光学特性を兼ね備えている。このように、ダイヤモンドの励起子を用いる素子は、AlGaN系と比較して有利な点が多い。
ところで、現在までに実用化されている励起子を応用する素子のほとんどは発光素子であり、直接遷移型半導体で構成されている。直接遷移型半導体では、結晶の同じ対称点(Γ点)での自由電子正孔対の直接再結合を発光原理としているため、その再結合時間はnsオーダー以下と短い。このため、自由電子正孔対は結晶中の欠陥等による発光あるいは非発光センターに捕獲される前に、直接再結合する確率が高く、結晶中の欠陥等による発光あるいは非発光センター濃度をある程度抑制できれば内部量子効率を100%近くまで大きくすることが可能である。
一方、間接遷移型半導体では、自由電子および自由正孔は結晶中の異なった対称点に存在し、再結合するにはフォノンの介在を必要とするため、再結合時間は直接遷移型半導体と比較して3〜6桁程度長くなる。(非特許文献7)このため、間接遷移型半導体では、自由電子正孔対は直接再結合する前に結晶中の欠陥等による発光あるいは非発光センターに捕獲される確率が極めて高く、内部量子効率は1よりもかなり小さい値しかとれなくなる。(非特許文献8)この理由により、従来の間接遷移型半導体を用いた発光素子は不純物原子を用いた外因的発光センターを利用するものが一部あるものの、高効率発光素子には直接遷移型半導体が主役を果たしてきた。ダイヤモンドも間接遷移型半導体であるために、紫外線領域の波長の発光材料としては上記した1)および2)の優位性を持ちつつも、内部量子効率を実用レベルまで向上させるのは困難とされている。
先に述べた非特許文献6では、この課題を解決できることを示している。つまり、ダイヤモンドのpn接合界面を活性領域とする、あるいはpin接合のi層を活性層として、そこに高密度な自由励起子を電流注入によって形成できることが示されている。(非特許文献9)
しかし、この励起子を用いた電子源は、動作原理に対する理解の欠如、用いるべき材料と構造の不確定によって、これまで提案されていなかった。
D. Takeuchi, et al., APL, 86, 152103 (2005) T. Yamada, et al., APL, 87, 234107 (2005) D. Takeuchi, et al.: phys. stat. sol. (a) 203, 3100 (2006) S. Koizumi, et. al.: Science 292, 1899 (2001) T. Makino, et. al., Jpn. J. Appl. Phys. 44, L1190 (2005) T. Makino, et al., 45, L1042 (2006) A. Fujii, et. al., J. Lumin., 94-95, 355 (2001) K. Horiuchi, et. al., Jpn. J. Appl. Phys., 36, L1505 (1997) M. Nagai, et. al., Phys. Rev. Lett., 68, 081202R (2003)
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、励起子駆動でありながら、高い励起子生成効率と高濃度生成可能な材料・構造、および原理上、電子放出にエネルギー的制限の無い負の電子親和力表面を持つ、高効率電子源を提供することを目的とする。
本発明は、励起子の束縛エネルギーが高い半導体材料で構成される間接遷移型半導体であって、間接遷移型半導体による活性層あるいはpn接合による活性領域を形成し、活性層あるいは活性領域に電流注入する電極を有する自由励起子生成効率が10%以上であり、その活性層あるいは活性領域に形成した負の電子親和力表面で自由励起子を自由電子に変換し連続放出させることを特徴とする電子源である。
また、本発明は、励起子の束縛エネルギーが高い半導体材料がダイヤモンドであり、基板上にp型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成されたn型半導体層とを備え、前記p型半導体層とn型半導体層との界面を活性領域とし、その活性領域が負の電子親和力表面を有し、前記p型半導体層とn型半導体層のうちのいずれか一つ、あるいは両方が間接遷移型半導体で構成されており、前記p型半導体層とn型半導体層のそれぞれに接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源である。
さらに、本発明の電子源は、p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接して形成されたn型半導体層とを備え、その活性層が負の電子親和力表面を有し、前記p型半導体層とn型半導体層のそれぞれに接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成することができる。
さらに、本発明においては、基板、p型半導体層、n型半導体層をダイヤモンドとすることができる。
また、本発明は、基板上に低抵抗層を形成し、さらに、低抵抗層の一部に、p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接してn型半導体層が形成された構造を備え、その活性層が負の電子親和力表面を有し、n型半導体層と低抵抗層の一部に接して形成した電極からなる電子源である。
さらに、本発明においては、基板、低抵抗層、p型半導体層、活性層、n型半導体層をダイヤモンドとすることができる。
また、本発明は、p型半導体層とn型半導体層と活性層がマイクロ波プラズマCVD法により形成されたダイヤモンドとすることができる。
さらに、本発明においては、活性領域あるいは活性層がアンドープダイヤモンドで構成することができる。
また、本発明は、電子源のp型半導体層がホウ素ドープダイヤモンドで構成されており、n型半導体層がリンドープダイヤモンドで構成することができる。
さらに、本発明においては、電子源の活性領域あるいは活性層を構成するアンドープダイヤモンド中のホウ素濃度およびリン濃度が1 x 1015 cm-3以下とすることができる。
また、本発明は、電子源のアンドープダイヤモンドで構成された活性領域あるいは活性層の膜厚が100nm以下とすることができる。
また、本発明は、電子源の活性領域あるいは活性層が水素終端ダイヤモンド表面、または水酸基終端ダイヤモンド表面で構成することができる。
さらに、本発明においては、電子源の活性領域あるいは活性層が、メタンと水素と酸素原子を含んだガスとを原料ガスとするマイクロ波プラズマCVD法により形成することができる。
また、本発明は、電子源の活性領域あるいは活性層が、メタンと水素と酸素とを原料ガスとするマイクロ波プラズマCVD法により形成することができる。
さらに、本発明においては、電子源のp型半導体層を基板であるダイヤモンド単結晶{001}表面、単結晶{111}表面、単結晶{011}に形成されていることを特徴としている。
さらに本発明ではp型、n型が逆の構造とすることができる。
本発明では、加熱、および高電界印加を必要としない室温で初速度分布が0.025eV程度の安定した連続電子放出が可能となる。これは、従来固体内の電子を外部(真空)へ取り出すのに用いられた原理とは異なる方法を用いるためである。すなわち、励起子の束縛エネルギーが室温で安定なほど大きな固体内で電流注入により自由励起子を高効率に生成し、それを負の電子親和力表面を構成して取り出す方法である。本発明に適した材料は、励起子の束縛エネルギーが大きく励起子密度が大きく取れる間接遷移型半導体であり、かつ負の電子親和力を形成できる材料である。
本発明は、従来のどの種類の電子源とも異なる原理・構造を持ち、従来の電子源が持つ本質的な問題、すなわち高出力・高輝度の要求と熱的・高電界環境起因による劣化のトレードオフに縛られない高効率な電子源を作製できる画期的な発明である。また、本発明では、活性層材料に水素終端ダイヤモンドを用いた場合、自由励起子がそこに拡散する場合のみならず、活性層内で自由励起子が再結合発光、あるいは欠陥や不純物準位に束縛され再結合発光しても、波長が282nm以下の深紫外線であれば、活性層に構成した負の電子親和力表面にて高効率に表面電子励起を誘導して電子放出させる事が可能となる。従って、自由励起子の高い生成効率(10-100%)と負の電子親和力表面の高い電子放出能(>10%)から、従来にない1-10%以上の高い量子効率を持つ固体電子源となる。もともとエネルギー制御性の高い電子源の幅広い応用にすべて適用可能であり、照明、殺菌・浄水、分析等の各種情報センシング、医療分野、のみならず、巨大な電力系統スイッチ・バスの超小型化などのパワーエレクトロニクスへの応用、電子放出を真空以外の溶液・ガス雰囲気中にも可能なため微小領域(マイクロチャネル)化学反応制御、等への応用が実現可能となる。そして従来にない連続NEA電子源を実現できる。さらにNEA面からの面電子源としても実現できる。
以下に、この発明の実施の形態について、詳細に説明する。まず励起子生成構造である。一般に半導体材料中に生成される電子・正孔対は、高温であれば自由電子および自由正孔として存在するが、低温では、空間的に接近した電子正孔対、すなわち励起子の状態の方が安定となる。この励起子は、直接遷移型あるいは間接遷移型の半導体を問わず存在可能で、不純物原子等の外因的要素にも依らない、半導体材料固有の性質である。実際に励起子が安定に存在できるか否かは、励起子の束縛エネルギーと、それを解離する熱エネルギーの関係で決定する。従来の半導体での励起子は、束縛エネルギーが小さいために、低温かつ低密度でしか存在できない。一方、ダイヤモンドは室温で5.47eVの広いバンドギャップを持つ間接遷移型半導体であり、下記の表1に示す様に、他の半導体材料と比較して自由励起子の束縛エネルギーが80meVと大きく、したがって室温下でも安定して自由励起子が存在することが可能である。実際、気相成長法(CVD法)により合成された高品質ダイヤモンド薄膜では、欠陥準位等によるキャリアの再結合が抑制され、カソードルミネッセンスやフォトルミネッセンス測定において、室温で波長235nmに自由励起子発光スペクトルが観測されている。また、表1に示す様に、他の半導体材料と比較してダイヤモンドの自由励起子のボーア半径は、1.5nmと小さく、したがって高密度に励起子を生成することが可能(臨界励起子密度(モット密度)が約6x1019cm-3)という特徴を有している。
励起子生成効率の議論は、半導体発光素子に関する議論を応用できる。一般に、発光素子の発光効率ηは下記の数式1で表される。ここで、ηintは内部量子効率を、ηextは取り出し効率を、ηvは電圧効率を表す。このうち、ηextとηvの因子は発光素子の作製プロセスに依存する因子であり、半導体材料やその発光機構の原理的可能性を判断するのはηintの因子である。
また、内部量子効率ηintは下記の数式2で表される。ここで、τrは注目する発光過程の発光寿命を、τnrはそれ以外の遷移過程(非発光過程、欠陥関連の発光過程、等を含む)の寿命を表す。ηintを大きくするためには、τrがτnrに比べてできるだけ小さい材料を選ぶか、もしくはτnrが長くなるように材料合成・素子作製技術を向上させる必要がある。
直接遷移型半導体では、結晶の同じ対称点(Γ点)で自由電子正孔対が再結合できるので、τrが短く、ηintは大きい値をとることが可能となる。一方、間接遷移型半導体では、自由電子および自由正孔は結晶中の異なった対称点に存在し、再結合するにはフォノンの介在を必要とするため、τrは直接遷移型半導体と比較して3〜6桁程度長くなる。このため、間接遷移型半導体では自由電子正孔対の再結合寿命は欠陥準位等による非発光過程で支配され、ηintは1よりもかなり小さい値しかとれなくなる。この理由により、Si等の間接遷移型半導体では、発光素子への応用が困難とされている。
しかし、励起子を構成している電子正孔対は空間的に近接しているので、間接遷移型半導体であっても、直接再結合して発光する確率が大きくなる。すなわち、τrが短くなる。実際、自由電子正孔対の再結合を発光機構とする典型的な間接遷移型半導体のτrは100 〜 1000μs程度であるが、励起子状態からの再結合を発光機構とするダイヤモンドでは、は2μs程度と、2桁短いことが報告されている(非特許文献7)。これが、ダイヤモンドが他の間接遷移型半導体と比較して大きい内部量子効率ηintを持っている理由の一つである。
さらに、ダイヤモンドの様に高密度に励起子を生成可能な場合は、τnrを実効的に長くして、ηintをさらに向上させることが可能である。以下に添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、ダイヤモンド発光素子に電流を注入し、定常状態になった場合の遷移過程を模式的に示した図である。図1(a)は注入電流密度が小さい場合、図1(b)は注入電流密度が大きい場合を示している。図1中の矢印の太さは遷移確率の大きさを模式的に表している。(矢印が太いほど遷移確率が大きい。)ダイヤモンド発光素子の活性層に注入された小数キャリア(自由電子および自由正孔)のほとんどは、10ps以下の短い時間で、よりエネルギーの安定な励起子を形成する(非特許文献9)。形成された励起子は、2μs程度の発光寿命で直接再結合する(過程1)か、あるいは欠陥等に起因した深い準位に捕獲される(過程2)。深い準位に捕獲された電子あるいは正孔は輻射的もしくは非輻射的に遷移していく(過程3)。
図1(a)の注入電流密度が小さい場合、すなわち、ダイヤモンド発光素子の活性領域に安定に生成された励起子の密度が、欠陥等に起因した深い準位の密度より小さい場合を考える。この場合、過程2は過程1よりも短いnsオーダーの寿命を持っていると考えられ、したがって励起子からの遷移確率は過程1よりも過程2の方が支配的となる。これは、励起子発光の内部量子効率ηintが小さいことを意味している。次に図1(b)の注入電流密度が大きい場合、すなわち、生成された励起子の密度が、深い準位の密度より大きくなった場合を考える。過程3の遷移寿命が励起子の直接再結合寿命と同程度かもしくは長いとする(実際、フォトルミネセンス測定において、深い準位からの発光寿命は1.7sという非常に長い報告例もある。(非特許文献8)と、深い準位は、励起子を構成していた電子あるいは正孔で埋め尽くされる状態が実現する。この状態は、実効的に過程2の遷移が飽和したこと、すなわち過程2の遷移寿命が非常に長くなったことを意味している。実効的に過程2の遷移が飽和すると、励起子は全て過程1の発光過程を経由することになるので、励起子発光の内部量子効率ηintは、間接遷移型半導体といえども直接遷移型半導体の内部量子効率(数十%)に匹敵する値になるはずである。この様にダイヤモンドに特有な高密度励起子状態を利用することにより、τnrを実効的に長くし、励起子からの発光に関する内部量子効率ηintを、数十%まで向上させることが原理的に可能である。
したがって、電子放出に寄与する自由励起子生成の量子効率は10%以上と考えられる。
一方、負の電子親和力の構造について説明する。水素終端ダイヤモンド表面に紫外線を照射した場合の、光電子放出に関する量子効率(相対値)をとったものが図2である。室温でのダイヤモンドのバンドギャップ5.47eVに対し、1eV以上低い4.4eV付近から急激に光電子放出率が立ち上がるのがわかる。さらに、5.27eVから2桁以上立ち上がる。図3に、このバンドギャップ励起付近の詳細図を示す。四つの立ち上がりが確認できる。すなわち、低い励起光エネルギーから、5.26eV、5.315eV、5.485eV、5.54eVである。最大値と最小値、中央の二値、それぞれの平均は5.40eVであり、丁度ダイヤモンド中の自由励起子の基底状態と一致する。また、両組み合わせに対するエネルギー差はそれぞれ0.14eVと0.085eVで、これらは丁度、それぞれダイヤモンド中のTOフォノン、およびTAフォノンの、ダイヤモンド伝導帯底の運動量空間位置(X点方向0.76)における値と一致する。すなわち、ここで得られている放出された光電子は、光吸収の際に自由励起子生成を伴っていることを意味する。
上記の内容を矛盾なく説明できる、水素終端表面付近のエネルギーバンド構造が図4である。特徴は、真空準位が結晶内部の伝導帯底の下にある負の電子親和力表面となっていることと、ダイヤモンド表面に固有の表面非占有準位が水素終端構造によってダイヤモンドのエネルギーギャップ中に下がってきていることである。(非特許文献1)[0041]で述べた4.4eVからの光吸収は、結晶内部の価電子帯頂上と同じエネルギー位置の表面占有準位頂上から、前期の表面非占有準位への励起によって起こる。さらに、信号は真空中に電子が放出されて初めて検出されうるわけであるから、4.4eVは、価電子帯頂上と真空準位とのエネルギー差に相当する。ダイヤモンドのバンドギャップが5.47eVであるから、約1.1eVの負の電子親和力が形成できていることがこれで証明される。そして、この負の電子親和力表面に自由励起子が来ることによって、実際に電子放出が得られている。
[0042]で述べた電子放出原理は、外部からの紫外光ではなく、結晶内部で自由励起子を生成する、あるいは自由励起子の励起エネルギー相当の紫外光が発生し、負の電子親和力表面に到達することによっても起こりうることは自明である。さらに、自由励起子の励起エネルギー未満の紫外光でも、4.4eV以上のエネルギーを有していれば電子放出が起こることも自明である。すなわち、結晶内部の欠陥や不純物に自由励起子が束縛され、発光する場合でも、その光エネルギーが4.4eV以上であれば電子源動作可能となる。
上記の実施の形態を踏まえつつ、以下に本発明の実施例を示し、さらに詳細に説明する。
図5に、請求項1にある電子源1の実施例1を示す。p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接して形成されたn型半導体層とを備え、その活性層が負の電子親和力表面を有しており、前記p型半導体層とn型半導体層のそれぞれに接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源である。
図5の電子源1の実施例1における作製プロセスは以下のとおりである。p型ダイヤモンド半導体結晶2に、マイクロ波プラズマCVD法により、水素希釈した濃度0.025%のメタンガスを用いて励起子活性層となる高品質なアンドープダイヤモンドホモエピタキシャル薄膜3を形成する。基板温度は800℃、マイクロ波電力は750W、ガス流量は400sccm、ガス圧力は25Torr、合成時間は6時間で合成した。さらに、n型ダイヤモンド半導体ホモエピタキシャル薄膜4を形成する。(001)面での合成の場合は、メタン濃度0.4%、フォスフィンのメタンに対する濃度5%、基板温度900℃で、他はアンドープ膜形成条件に準拠した。合成時間は6時間である。その後、フォトリソグラフィーにより金マスクを蒸着し、CF2HガスによりICPプラズマでエッチングする。異なるマスクパターンで二回行い、図5の形状を形成した。さらにフォトリソグラフィーを行い、電極5をEB蒸着した。電極はチタンを用い、白金をキャップ層とした。最後に、全体をマイクロ波プラズマCVD装置で水素化し、フォトリソグラフィーによって活性層3の表面6のみレジストで覆いながら、レジストが残る条件で酸素プラズマに暴露し、活性層の負の電子親和力表面6を形成した。電極7は電子放出電流用のコレクタ電極であり、電子源とは独立な系である。
図6に、請求項2にある電子源1の実施例2を示す。基板上に低抵抗層を形成し、さらに、低抵抗層の一部に、p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接してn型半導体層が形成された構造を備え、その活性層が負の電子親和力表面を有しており、n型半導体層と低抵抗層の一部に接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源である。
図6の電子源1の実施例1における作製プロセスは以下のとおりである。Ib型ダイヤモンド(001)基板2の上に、低抵抗層となる高濃度ボロンドープp+ダイヤモンド半導体薄膜層3を形成した。この低抵抗層3は、マイクロ波プラズマCVD法により、水素希釈した濃度0.6%のメタンガスと、ジボランのメタンに対する濃度を8000ppmとし、マイクロ波電力は1200W、ガス流量は400sccm、ガス圧力は50Torr、合成時間は12時間で合成した。基板温度は推定800-900℃程度である。次に高品質p型ダイヤモンド半導体層4となるボロンドープホモエピタキシャルダイヤモンド薄膜を同装置によって合成した。この場合、すでに同じ合成装置真空槽内で高濃度のボロンを用いているため、ジボラン濃度は0%として残留ボロンをドープする方法でよい。次にマイクロ波プラズマCVD法により、水素希釈した濃度0.025%のメタンガスを用いて励起子活性層となる高品質なアンドープダイヤモンドホモエピタキシャル薄膜5を形成する。基板温度は800℃、マイクロ波電力は750W、ガス流量は400sccm、ガス圧力は25Torr、合成時間は6時間で合成した。さらに、n型ダイヤモンド半導体ホモエピタキシャル薄膜6を形成する。 (001)面での合成の場合は、メタン濃度0.4%、フォスフィンのメタンに対する濃度5%、基板温度900℃で、他はアンドープ膜形成条件に準拠した。合成時間は6時間である。その後、フォトリソグラフィーにより金マスクを蒸着し、CF2HガスによりICPプラズマでエッチングする。異なるマスクパターンで二回行い、図6の形状を形成した。さらにフォトリソグラフィーを行い、電極8をEB蒸着した。電極はチタンを用い、白金をキャップ層とした。最後に、全体をマイクロ波プラズマCVD装置で水素化し、フォトリソグラフィーによって活性層5の表面7のみレジストで覆いながら、レジストが残る条件で酸素プラズマに暴露し、活性層の負の電子親和力表面7を形成した。電極9は電子放出電流用のコレクタ電極であり、電子源とは独立な系である。
図7に、請求項2にある電子源1の実施例3を示す。基板上に低抵抗層を形成し、さらに、低抵抗層の一部に、p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接してn型半導体層が形成された構造を備え、その活性層が負の電子親和力表面を有しており、n型半導体層と低抵抗層の一部に接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源である。
図7の電子源1の実施例1における作製プロセスは以下のとおりである。Ib型ダイヤモンド(001)基板2の上に、低抵抗層となる高濃度ボロンドープp+ダイヤモンド半導体薄膜層3を形成した。この低抵抗層3は、マイクロ波プラズマCVD法により、水素希釈した濃度0.6%のメタンガスと、ジボランのメタンに対する濃度を8000ppmとし、マイクロ波電力は1200W、ガス流量は400sccm、ガス圧力は50Torr、合成時間は12時間で合成した。基板温度は推定800-900℃程度である。次に高品質p型ダイヤモンド半導体層4となるボロンドープホモエピタキシャルダイヤモンド薄膜を同装置によって合成した。この場合、すでに同じ合成装置真空槽内で高濃度のボロンを用いているため、ジボラン濃度は0%として残留ボロンをドープする方法でよい。さらに、n型ダイヤモンド半導体ホモエピタキシャル薄膜6を形成する。自動的に励起子活性層となるpn接合界面5が形成される。n型ダイヤモンド薄膜6は (001)面での合成の場合は、メタン濃度0.4%、フォスフィンのメタンに対する濃度5%、基板温度900℃で、マイクロ波電力は750W、ガス流量は400sccm、ガス圧力は25Torr、合成時間は6時間で合成した。アンドープ膜形成条件に準拠した。合成時間は6時間である。その後、フォトリソグラフィーにより金マスクを蒸着し、CF2HガスによりICPプラズマでエッチングする。異なるマスクパターンで二回行い、図6の形状を形成した。これで、活性層5は表面を持つ。さらにフォトリソグラフィーを行い、電極8をEB蒸着した。電極はチタンを用い、白金をキャップ層とした。最後に、全体をマイクロ波プラズマCVD装置で水素化し、フォトリソグラフィーによってp型層4と活性層5の表面7のみレジストで覆いながら、レジストが残る条件で酸素プラズマに暴露し、活性層の負の電子親和力表面7を形成した。電極9は電子放出電流用のコレクタ電極であり、電子源とは独立な系である。
例えば図6において、高圧合成単結晶基板ダイヤモンド2の(001)表面に、マイクロ波プラズマCVDによりホウ素(B)を高濃度に添加したp+型ダイヤモンド半導体低抵抗層3の膜厚は1μmである。その上のp型ダイヤモンド半導体層4の膜厚は1.3μmである。その上にマイクロ波プラズマCVDにより活性層としてのアンドープダイヤモンド半導体層5を0.1μmの膜厚で合成し、その上にマイクロ波プラズマCVDによりリン(P)を添加したn型ダイヤモンド半導体層6の膜厚は0.7μmである。これでpin接合を形成している。各層のマイクロ波プラズマCVDによる合成条件を表3にまとめて示す。アンドープダイヤモンド半導体層5の合成では、合成ガス中に酸素を混ぜることにより、不純物元素の合成膜中への混入を防いでいる。ここで、酸素ガスの代わりに、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)、オゾン(O3)、水(H2O)、等の酸素原子(O)を含んだガスを用いてもよい。
また、p型半導体層4の合成では、マイクロ波プラズマCVDを行う真空容器内に残留しているジボラン(B2H6)を不純物ガスとして用いている。図8に、p+型、p型、i型、n型の各層の不純物濃度の深さ方向分布を、2次イオン質量分析法により見積もった結果を示す。p+型ダイヤモンド半導体層3のB濃度は3x1020cm-3、p型ダイヤモンド半導体層4のB濃度は2x1017cm-3、n型ダイヤモンド半導体層6のP濃度は1x1018cm-3である。活性層としてのアンドープダイヤモンド半導体層5は、p型半導体層4中の不純物元素であるB、あるいはn型半導体層6中の不純物元素であるPの拡散がなく、図6に示すように不純物濃度は2次イオン質量分析(SIMS)法での検出限界以下となっており、膜厚は正確に100nmで形成されている。
より高分解能のSIMS法によりアンドープダイヤモンド半導体層5中の不純物濃度を測定した結果、B濃度は6 x 1014 cm-3以下に、P濃度は1 x 1015 cm-3以下に抑制されている。この積層膜をドライエッチングにより直径200μmの円柱形状でp+型ダイヤモンド半導体層3までメサ加工する。メサ加工した円柱形状の中央、直径100μmを円柱形状でn型ダイヤモンド半導体層6をアンドープダイヤモンド半導体層5までドライエッチングし、アンドープダイヤモンド半導体層5の表面を形成する。構造全体を、マイクロ波プラズマCVD装置で水素100%のプラズマに曝し、水素終端する。中央アンドープダイヤモンド半導体層5表面に保護膜を施した後、他の表面をドライプロセスにて酸化する。p+型ダイヤモンド半導体層3の表面でメサ構造に接しない領域とn型ダイヤモンド半導体層6の表面にそれぞれ、電子ビーム蒸着により、まずチタン(Ti)を30nm成膜し、続いて白金(Pt)を300nm成膜し、420℃で30分間熱処理することで金属電極8、10を形成した。なお、放出電子を収集するコレクタ電極を9に示す。
図9に、本発明の実施例2である電子源のダイヤモンドpin構造部分に、中央のメサ構造を施す前にて室温において順方向電流を注入した時の発光特性を示す。印加電圧が24V、28Vにおいて注入電流はそれぞれ20mA、65mAである。室温において波長240nm付近に自由励起子の直接再結合による鋭い発光が明確に観測されているのがわかる。一方、波長400nm付近をピークとした欠陥等に起因した深い準位からのブロードな発光については、自由励起子発光のピーク強度の10分の1以下に抑制されている。
図10に、自由励起子の直接再結合による発光の積分強度Iexcitonと欠陥等に起因した深い準位からのブロードな発光の積分強度Ideepの注入電流依存性を示す。注入電流の増加に伴い、Iexcitonは単調に増加していくのに対して、Ideepは飽和する傾向がみられている。Ideepが飽和する傾向が見られ始める電流値は、25mA程度と小さい。これは、図1に示した過程2の遷移の飽和が生じていることを意味している。これは、本発明の実施例2である電子源の欠陥等に起因した深い準位の密度を小さく抑えたアンドープダイヤモンド半導体層5(活性層)が、自由励起子の生成・蓄積・直接再結合に有効に働いていることを意味している。
図11に、本発明の実施例3である電子源のダイヤモンドpn構造において、メサ構造を施した後で、300℃において高真空中で順方向電流を注入し、このメサ構造から約100mm離れた電極に外部印加電圧300Vとした時の電子放出電流特性を示す。印加電圧が自由励起子の再結合による鋭い発光を明確に形成する付近で、電子放出電流が立ち上がる。なお、室温動作でも電子放出電流が得られる。
以上の様に、本発明では、ダイヤモンドの特異な材料物性(負の電子親和力表面と励起子を経由した電子放出過程、高密度励起子状態)と、この材料物性を最大限引き出すためのpin接合構造の形成、さらに間接遷移型半導体による励起子の長寿命化を逆手に取った原理(高密度励起子状態)により、室温においても励起子利用における高い内部量子効率を持った電子源を実現できる。この電子源の実現により、あらゆる電子ビーム応用への展開が可能であり、白色照明、殺菌・浄水、電子ビーム応用分析・電力スイッチング素子・高輝度電子銃・高輝度X線装置、マイクロ流路内局所化学反応用カソード等の各種情報センシング、医療、等の幅広い分野への応用が可能となる。
実施の形態の電子源に用いる自由励起子の寿命に関する遷移過程を模式的に示した図であって、(a)は注入電流密度が小さい場合、(b)は注入電流密度が大きい場合を示した図である。 実施の形態の電子源に用いる負の電子親和力表面を実証する、全光電子放出率の励起光エネルギー依存性を示した図。 実施の形態の電子源に用いる負の電子親和力表面を実証する、全光電子放出率の励起光エネルギー依存性を示した図。 実施の形態の電子源に用いる負の電子親和力表面と自由励起子による電子放出の際のエネルギー関係を模式的に示した図。 実施例1の電子源構成を例示した断面図である。 実施例2の電子源構成を例示した断面図である。 実施例3の電子源構成を例示した断面図である。 実施例2のpin接合の不純物濃度の深さ方向分布を示した図である。 実施例2の励起子生成起因の発光特性を示した図である。 実施例2の発光積分強度の注入電流依存性を示し、図1の遷移過程の妥当性を示した図である。 実施例3の電子放出電流の注入電流依存性を示した図である。
符号の説明
図5の符号の指し示す内容は以下のとおりである。
1 ダイヤモンドNEA電子源
2 p型単結晶ダイヤモンド基板
3 アンドープダイヤモンド半導体層
4 n型ダイヤモンド半導体層
5 電極
6 ダイヤモンドNEA電子放出面
7 コレクタ電極
図6の符号の指し示す内容は以下のとおりである。
1 ダイヤモンドNEA電子源
2 電気伝導性を持たない単結晶基板ダイヤモンド
3 p+型ダイヤモンド半導体層
4 p型ダイヤモンド半導体層
5 アンドープダイヤモンド半導体層
6 n型ダイヤモンド半導体層
7 ダイヤモンドNEA電子放出面
8 電極
9 コレクタ電極
図7の符号の指し示す内容は以下のとおりである。
1 ダイヤモンドNEA電子源
2 電気伝導性を持たない単結晶基板ダイヤモンド
3 p+型ダイヤモンド半導体層
4 p型ダイヤモンド半導体層
5 ダイヤモンド半導体pn接合空乏層(励起子活性層)
6 n型ダイヤモンド半導体層
7 ダイヤモンドNEA電子放出面
8 電極
9 コレクタ電極

Claims (17)

  1. p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接して形成されたn型半導体層とを備え、その活性層が負の電子親和力表面を有しており、前記p型半導体層とn型半導体層のそれぞれに接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源。
  2. 基板上に低抵抗層を形成し、さらに、低抵抗層の一部に、p型半導体層と、前記p型半導体層に接して形成された励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体で構成された活性層と、前記活性層に接してn型半導体層が形成された構造を備え、その活性層が負の電子親和力表面を有しており、n型半導体層と低抵抗層の一部に接して、あるいは低抵抗層を介して形成した電極から構成されていることを特徴とする電子源。
  3. p型層、n型層が逆の構造である請求項1から2に記載した電子源。
  4. 励起子の束縛エネルギーが高い間接遷移型半導体がダイヤモンドである請求項1から3に記載した電子源。
  5. 基板、p型半導体層、n型半導体層がダイヤモンドである請求項1から4に記載した電子源。
  6. 低抵抗層がダイヤモンドである請求項1から5に記載した電子源。
  7. p型半導体層とn型半導体層と活性層がマイクロ波プラズマCVD法により形成されたダイヤモンドであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の電子源。
  8. 活性層がアンドープダイヤモンドで構成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の電子源。
  9. p型半導体層がホウ素ドープダイヤモンドで構成されており、n型半導体層がリンドープダイヤモンドで構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の電子源。
  10. 活性層を構成するアンドープダイヤモンド中のホウ素濃度およびリン濃度が1 x 1015 cm-3以下であることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の電子源。
  11. アンドープダイヤモンドで構成された活性層の膜厚が100nm以下であることを特徴とする、請求項1から請求項10のいずれかに記載の電子源。
  12. 活性層が、メタンと水素と酸素とを原料ガスとするマイクロ波プラズマCVD法により形成されることを特徴とする、請求項1から請求項11のいずれかに記載の電子源。
  13. 活性層が、水素終端ダイヤモンド表面により形成されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電子源。
  14. 活性層が、水酸基終端ダイヤモンド表面により形成されることを特徴とする、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電子源。
  15. 活性層がダイヤモンド単結晶{001}表面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子源。
  16. 活性層がダイヤモンド単結晶{111}表面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子源。
  17. 活性層がダイヤモンド単結晶{011}表面に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項14のいずれかに記載の電子源。
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