JP2011127422A - コンクリート構造物の補修方法および樹脂製パネル - Google Patents

コンクリート構造物の補修方法および樹脂製パネル Download PDF

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健人 中井
Masato Ikeuchi
正人 池内
Kensuke Okamoto
謙介 岡本
Takuzo Hagiwara
卓三 萩原
Yasue Yagisawa
康衛 八木沢
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Abstract

【課題】 作業性に優れ、雨水等による表面劣化を抑制し、かつ、見た目に優れたコンクリート構造体を得ることが可能な、コンクリート構造体の補修方法およびこれに用いられる樹脂製パネルを提供する。
【解決手段】 既設コンクリート構造体3の表面劣化が進行し、強度低下等の恐れがある。したがって、既設コンクリート構造体3には、表面を覆うように構造体3から所定の隙間をあけて樹脂パネル7が縦横に設置され、この隙間にコンクリートが打設されて形成される。樹脂パネル7は、略長方形の板状部材である。本体9の表面13には、意匠性のある凹凸や模様などが施され、設置した際に外観に優れる。
【選択図】図1

Description

本発明は砂防ダム等のコンクリート構造物の補修方法およびこれに用いられる樹脂製パネルに関するものである。
従来、土砂等の流出等を防ぐために、多くの砂防ダムが建設されている。砂防ダムは通常コンクリートで形成される。このようなコンクリート構造物は、時間の経過に伴い表面が劣化する。
図15(a)は、コンクリート構造物である従来の砂防ダム60を示す模式図である。砂防ダム60は既設コンクリート構造体61で構成されている。既設コンクリート構造体61の表面である構造体表面63は風雨にさらされる。また、設置場所の気温変化等により、コンクリート構造体はわずかに膨張および収縮を繰り返す。特に寒冷地においては、季節によっては0℃を下回る温度環境となる。
図15(b)は、この結果生じるクラック65の模式図である。構造体表面63には、無数の微細なクラック65が形成される。クラック65が形成されると、雨水等がクラック65内部に毛細管現象等により侵入する。外気が0℃を下回ると、クラック内部の水が凍結して膨張する。この結果、さらにクラック65を伸長させる。このようなクラックの発生と成長が繰り返される結果、構造体表面63が劣化し、図15(c)に示すように、徐々に既設コンクリート構造体61の厚みが減少する。このため、定期的にコンクリート表面の補修が必要となる。
このような、コンクリート構造体を補修するためには、通常、コンクリート構造体表面に、新たにコンクリートを打設する方法がある。たとえば、コンクリート表面に、内部よりも高強度なコンクリートを打設し、または高強度なコンクリートブロックを設置することで、コンクリート構造体を補強する方法がある(特許文献1)。
コンクリートブロックを設置する工程としては、まず、図16(a)に示すように、対象となるコンクリート構造体表面63を削孔しアンカー69を設置し、アンカー69にボルト71を接合する。次いで、あらかじめ接続プレート75が取り付けられたコンクリートブロック73を所定位置に配置し、接続プレート75とボルト71とを溶接する。以上によりコンクリートブロック73が構造体に固定される。その後、構造体表面63とコンクリートブロック73との間にコンクリートを打設してコンクリート構造体の補修が完了する。
特開2001−192254号公報
しかし、特許文献1の方法では、再度コンクリート表面の劣化が生じる恐れがあるという問題がある。また、コンクリートブロックを用いたのでは、重量物であるため、作業性が悪いという問題がある。さらに、補修後のコンクリート構造体の表面は、当該補修したコンクリートが露出するため、景観を損ねるという問題がある。また、図16に示したように、コンクリートブロック73とアンカー69に取り付けられたボルト71とは接続プレート75を介して溶接で接合されるため、作業性が悪く危険である。特に、ボルト71をアンカー69に取り付けた後に接続プレート75と溶接されるため、アンカー69の設置角度等がずれてしまうと、接続プレート75との位置がずれてしまい、溶接ができなくなる。このため、アンカー69の下穴の施工やアンカー69の設置等において、その作業には精度が必要となるため、工数を要し、作業性が悪いという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、作業性に優れ、周囲環境等による表面劣化を抑制し、かつ、見た目に優れたコンクリート構造体を得ることが可能な、コンクリート構造体の補修方法およびこれに用いられる樹脂製パネルを提供することを目的とする。
前述した目的を達するために第1の発明は、コンクリート構造物の補修方法であって、裏面に雌ねじ部を有する樹脂製パネルと、前記雌ねじ部に取り付けられるボルトとを用い、前記コンクリート構造物の表面に孔を設ける工程(a)と、前記孔内に接着系アンカーを充填する工程(b)と、前記孔内に、前記樹脂製パネルに取り付けられたボルトを挿入する工程(c)と、前記樹脂製パネルと前記コンクリート構造物との間にコンクリートを打設する工程(d)と、を具備し、複数の前記樹脂製パネルで前記コンクリート構造物を覆い、前記樹脂製パネルを前記コンクリート構造物に固定することを特徴とするコンクリート構造物の補修方法である。
前記工程(c)は、前記樹脂製パネルに、前記樹脂製パネルの裏面と前記コンクリート構造物の表面とのクリアランスを調整可能な調整治具を取り付け、前記ボルトを前記孔に挿入し、前記樹脂製パネルを前記コンクリート構造物に取り付けた際に、前記樹脂製パネル裏面と前記コンクリート構造物の表面とのクリアランスを一定にすることが望ましい。
前記樹脂製パネルは矩形であり、前記樹脂製パネルの互いに垂直な一方の2辺には、前記樹脂製パネルの表面側に段差が形成され、前記樹脂製パネルの他方の2辺には前記樹脂製パネルの裏面側に段差が形成され、前記工程(c)は、隣接する前記樹脂製パネルに対して、互いの表面側の段差と裏面側の段差とを嵌合させることが望ましい。
前記工程(d)の後、少なくとも最上段に位置する前記樹脂製パネルと前記コンクリートとの境界部上方にシール部材を設けてもよい。この場合、前記工程(d)において、前記シール部材の設置予定部に棒状部材を配置し、前記コンクリートが固結後、前記棒状部材を撤去することで、前記樹脂製パネルとの境界部に沿って前記コンクリートに溝部を形成し、前記シール部材は、前記溝部に設けられてもよい。
また、少なくとも一方の辺に屈曲部を有し、略L字型の断面形状を有する屈曲樹脂パネルを更に用い、最上段に位置する前記樹脂パネルの上方に前記屈曲樹脂パネルを設け、前記屈曲樹脂パネルおよび前記樹脂パネルにより、前記コンクリート構造物の側面および上面を覆ってもよい。
第1の発明によれば、作業性に優れ、耐久性の高いコンクリート構造物の補修方法を得ることができる。コンクリート構造物の補修には、樹脂製パネルが用いられ、樹脂製パネルが打設コンクリートの型枠としての役割と、コンクリート表面の保護および美観の向上という役割を有し、軽量である樹脂製パネルの使用や型枠撤去の作業が不要となることから、極めて作業性に優れる。
また、樹脂製パネルは、雨水や気温変化、紫外線等による劣化が少なく、長年の使用によっても、樹脂製パネルが薄くなるなどの恐れがない。このため、コンクリートと比較して、極めて長期間にわたり、補修等が不要となる。
また、樹脂製パネルは軽量であるため、樹脂製パネルに接合されたボルトを既設コンクリートに接着系アンカーで固定することができる。このため、既設コンクリートへの樹脂製パネルの固定に溶接作業が不要となる。
また、樹脂製パネルに調整治具を取り付けることで、既設コンクリート表面と樹脂製パネル裏面までのクリアランスを一定に保つことができる。このため、樹脂パネルの設置部位を容易に一定にすることができる。
また、樹脂製パネルの周囲には、隣接する樹脂製パネル同士が嵌合可能な段差が形成されれば、樹脂製パネルを複数設置した際に、樹脂製パネル同士の間に隙間が形成されることを防止することができる。また、段差であるため、多少の樹脂製パネル同士の位置の変位にも追従することができる。
また、樹脂製パネルと打設コンクリートとの境界上方にシール部材を設ければ、当該境界部に生じる隙間からの雨水等の侵入を防止することができる。この場合、当該境界部上方に、あらかじめ棒状部材を設置してコンクリートを打設すれば、当該境界部上方に溝部が形成され、シール部材を溝部に沿って設けることができる。このため、シール部材が上方にはみ出すことがない。
また、屈曲樹脂パネルを用いれば、シール部材を用いなくても、コンクリート構造物を樹脂パネルのみで覆うことができ、樹脂パネルと打設コンクリートとの間に水が浸入することがない。
第2の発明は、コンクリート構造物の表面を覆うように設けられる樹脂製パネルであって、矩形の本体と前記本体の裏面に形成される雌ねじ部と、を具備し、前記本体の互いに垂直な一方の2辺には、前記本体の表面側に段差を有し、前記本体の他方の2辺には前記本体の裏面側に段差を有することを特徴とする樹脂製パネルである。前記本体の裏面側には、互いに直交するリブ状の突起が形成されてもよい。
第2の発明によれば、コンクリート構造物の補修や建設等に使用可能な樹脂製パネルを得ることができる。また、樹脂製パネルは、軽量であり、構造が簡易であるため、作業性に優れ、耐久性にも優れる。また、互いに直交するリブ状の突起を形成することで、裏面側にコンクリートを打設した際に、当該突起がコンクリートに埋まり、コンクリートによって突起が拘束されるため、樹脂パネルとコンクリートとの熱膨張差によって生じる樹脂パネルとコンクリートとの相対的なずれや浮き上がりなどを防止することができる。
本発明によれば、作業性に優れ、雨水等による表面劣化を抑制し、かつ、見た目に優れたコンクリート構造物を得ることが可能な、コンクリート構造物の補修方法およびこれに用いられる樹脂製パネルを提供することができる。
砂防ダム1を示す斜視図。 樹脂パネル7を示す図であり、(a)は表面斜視図、(b)は裏面斜視図。 樹脂パネル7を示す図であり、(a)は平面(表面)図、(b)は底面(裏面)図、(c)は(a)のA−A線断面図。 既設コンクリート3の補強工程を示す図で(a)は斜視図、(b)は側方断面図。 既設コンクリート3の補強工程を示す側方断面図。 調整治具27を示す図。 調整治具を用いて、樹脂パネル7を構造体表面19に設置した状態を示す図。 打設コンクリート5を打設した状態を示す図。 シール部材39を設けた状態を示す図。 溝41を形成する工程を示す図。 樹脂パネル8を示す図で、(a)は斜視図、(b)は樹脂パネル8を取り付けた状態を示す図。 樹脂パネル7を用いて、コンクリート構造体を構築する工程を示す図。 樹脂パネル50を示す図で、(a)は裏面図、(b)は(a)のC−C線断面図。 樹脂パネル50aを示す図で、(a)は裏面図、(b)は(a)のD−D線断面図。 従来の砂防ダムを示す図で、(a)は斜視図、(b)、(c)は構造体表面53の側方断面図。 従来の砂防ダムを補修する工程を示す図。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、砂防ダム1を示す斜視図である。砂防ダム1は、コンクリート構造物である既設コンクリート構造体3の表面に樹脂パネル7を配置して補修を行ったものである。このような補修後の砂防ダム1は、既設コンクリート構造体3と、既設コンクリート構造体3を覆うように配置された複数の樹脂パネル7と、既設コンクリート構造体3と樹脂パネル7との間に打設された打設コンクリート5等から構成される。なお、樹脂パネル7は、図1に示すように、既設コンクリート構造体3全面に設けてもよく、または、側面のみに設けてもよい。
既設コンクリート構造体3は、長年の径時変化により表面が劣化した(たとえば図13(b)のような状態)構造体である。前述の通り、このままでは、既設コンクリート構造体3の表面劣化が更に進行し、強度低下等の恐れがある。したがって、既設コンクリート構造体3は、表面を覆うように既設コンクリート構造体3の表面と隙間をあけて樹脂パネル7が縦横に設置され、この隙間にコンクリートが打設されて補修される。
図2および図3は、樹脂パネル7を示す図であり、図2(a)は表面斜視図、図2(b)は裏面斜視図である。また、図3(a)は正面図、図3(b)は背面図、図3(c)は図3(a)のA−A線断面図である。
樹脂パネル7は、略長方形の板状部材である本体9により構成される。たとえば、本体9は、幅約1mx高さ約500mm、厚さ30mm程度のものである。本体9の表面13には、意匠性のある凹凸や模様などが施され、設置した際に外観に優れる。なお、樹脂パネル7の表面13のデザインは、図2(a)に示す例に限られず、いかなるものであってもよい。また、他の図面においては、樹脂パネル7の表面の模様等は図示を省略する。
本体9の隣接する2辺(互いに垂直な二辺)は、段差11a、11bが形成される。図2、図3の例では、本体9の上辺と右辺にそれぞれ段差11a、11bが形成される。段差11a、11bは、表面13側に形成された段差であり、正面から見た際(図3(a))に、表面側から見える段差である。
段差11a、11bとは異なる辺には、段差11c、11dが形成される。図2、図3の例では、本体9の下辺と左辺にそれぞれ段差11c、11dが形成される。段差11c、11dは、裏面15側に形成された段差であり、背面から見た際(図3(b))に、裏面側から見える段差である。すなわち、本体9の外周は、全ての辺が段差となっており、互いに垂直な一方の二辺が表面側に段差となり、他方の互いに垂直な二辺が裏面側に段差となる。段差の高さは、厚さの半分程度であり、例えば15mm程度である。また、段差は、それぞれ25mm程度の幅で全周に形成される。なお、段差は2段のみならず3段もしくはそれ以上のものでもよい。
本体9の裏面15には、複数の孔17が形成される。孔17内には、あらかじめヘリサート(雌ねじ部)が埋設されていてもよく、または、孔17内面にタップスクリューで雌ねじを形成し、ヘリサートを取り付けてもよい。孔17は、後述するボルト23との接合部であり、図3(c)に示すように、裏面15から所定の深さ形成される。
樹脂パネル7は、ある程度の強度と耐久性があれば特定しないが、ポリオレフィン系樹脂やポリ塩化ビニル樹脂、廃プラスチック及び難燃材からなる再生プラスチック等の樹脂が使用できる。
次に、樹脂パネル7を用いた既設コンクリート構造体3の補修方法について説明する。図4(a)は、既設コンクリート構造体3を示す斜視図であり、図4(b)は構造体表面19の断面図である。既設コンクリート構造体3の構造体表面19は劣化している。まず、構造体表面19に孔21を形成する。孔21の大きさは、後述するボルト23が挿入できればよく、多少の遊びがあるように、ボルト23よりも大きめの孔21を設ける。
次に、図5に示すように、孔21内に接着系アンカーを充填する。接着系アンカーとしては例えば旭化成ケミカルズ製の「ARケミカルセッター」(登録商標)等が使用できる。樹脂パネル7の裏面15側には、ボルト23が取り付けられる。ボルト23はステンレス製、樹脂製等いずれのものでも良い。ボルト23は、前述したとおり、樹脂パネル7の裏面15に形成された孔17に取り付けられる。ボルト23は、孔17内にヘリサートを取り付け、ヘリサートに接合されることが望ましい。
次に、図6に示すように、接着系アンカー25が固化する前に、ボルト23の先端を孔21に挿入する。この際、孔21はボルト23に対して十分に大きいため、孔21の向きや位置が多少ずれていても、設置が容易である。なお、図6の例では、下方に樹脂パネル7aが設置されている例を示すが、樹脂パネル7の設置の際には、下方または側方に隣接された既設の樹脂パネル同士の段差が嵌合するように設置する。図6の例では、既設の樹脂パネル7a上方の段差11aと、設置する樹脂パネル7下方の段差11cとが嵌合する。
樹脂パネル7の設置の際には、樹脂パネル7の上方側に調整治具27が取り付けられる。調整治具27は、樹脂パネル7と構造体表面19との距離を一定に保つものであり、構造体表面19と接触するゲージ35が設けられる。前述の通り、樹脂パネル7の下方は、既設の樹脂パネルと嵌合するため位置は固定されるが、上方は樹脂パネル7が他の部材により拘束されないため、構造体表面19との距離を一定に保つため(樹脂パネルが構造体側に倒れこまないように)、上方に調整治具27が取り付けられる。
なお、樹脂パネル7は、上方が構造体側にやや傾いて設置され、また、ボルト23と接着系アンカー25の付着により、前方側に倒れこむことはない。また、孔21はボルト23の設置に対して大きさ深さともに十分であるため、ボルト23は孔21によっては拘束されない。
図7は調整治具27の構造を示す図である。調整治具27は、主に、フレーム33、把持部29、固定部31、ゲージ35等から構成される。コの字状のフレーム33には、把持部29が取り付けられる。把持部29は、フレーム33に例えば螺合しており、把持部29とフレーム33の一方の内面との隙間を調整可能である。したがって、把持部29により、樹脂パネル7の上方を挟み込み把持することができる。
フレーム33の外方には、固定部31が設けられ、固定部31を貫通するようにゲージ35が取り付けられる。固定部31はゲージ35を固定可能であり、ゲージ35の軸方向の位置を調整して固定部31で固定することができる。たとえば、図7では、樹脂パネル7の裏面15から距離Bの位置にゲージ35の先端が位置するように、ゲージ35の位置を調整し、固定することができる。このようにすることで、図6においては、構造体表面19と樹脂パネル7の裏面15の距離がBに固定される。以上の状態で、接着系アンカー25が固化するまで、調整治具27により樹脂パネル7の位置が一定に保たれる。
既設コンクリート構造体3に対し、同一高さに設置されるべき樹脂パネルがすべて設置され、接着系アンカー25が固化した後、図8に示すように、調整治具27を撤去し、樹脂パネル7と構造体表面19との間に打設コンクリート5を打設する。打設コンクリート5が固化後、以上を繰り返して樹脂パネル7を上方に設置していく。
以上最上段まで樹脂パネル7が設置されると、図9(a)に示すように、最上段における打設コンクリート5と樹脂パネル7との境界部37にシール部材39を施す。シール部材39は、打設コンクリート5と樹脂パネル7との線膨張係数の違いに起因して、周囲の温度変化によって生じる隙間を埋め、内部に水分が浸入することを防ぐものである。
シール部材39としては、例えば、シリコーン系のシーリング材が使用できる。この場合には、あらかじめ樹脂パネルの対象部位にプライマーを塗布し、シール部材39との接着面を粗らしておくことが望ましい。プライマーにより樹脂パネルの表面が粗らされることでシール部材39とのアンカー効果によりより確実にシール部材39が樹脂パネル7に接着するためである。シリコーン系のシーリング材を使用することで、コンクリートおよび樹脂との接着性を確保でき、屋外での使用における紫外線や水等に対する高い耐久性を得ることができ、水の侵入を確実に防止することができる。
なお、図9(b)に示すように、シール部材39の設置部位にあらかじめ溝41を形成してもよい。溝41を形成することで、より確実にシール部材39を形成することができ、また、シール部材39が上方に突出しないため、シール部材39の剥がれ等の恐れがない。
このような溝41の形成方法としては、図10(a)に示すように、コンクリート打設前に棒状部材43を溝41の形成部位に設置しておき、図10(b)に示すように、打設コンクリート5の打設し、コンクリートの固化後、棒状部材43を撤去すれば良い(図10(c))。以上により、打設コンクリート5と樹脂パネル7の上方の境界部に沿って溝41を形成することができる。なお、棒状部材43は、コンクリート打設後、固化前に打設コンクリート5に埋め込んでもよい。また、シール部材39は境界部の上方のみならず側方や、その他コンクリートと樹脂パネルとの隙間が生じる恐れのある部位であればいずれの部位に設けてもよい。
また、コンクリート構造物の上端部の処理方法として、前述のシール部材39の使用に代えて、樹脂パネルのみを用いる方法もある。図11は、屈曲樹脂パネルである樹脂パネル8を示す図で、図11(a)は樹脂パネル8を示す斜視図、図11(b)は樹脂パネル8を取り付けた状態の側方断面図である。
樹脂パネル8は、樹脂パネル7と略同様の構成であるが、一方の辺が屈曲した形状のパネルである。なお、樹脂パネル7と共通する構成には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。図11(b)に示すように、樹脂パネル8は、一方の辺が略L字状(砂防ダムの標準的な勾配の設計値としては、0.2:1であるため、その斜面角度は、78.7°(=Arctan5)で、その場合の樹脂パネルの屈曲角は約101°である。従って、上記標準値を挟むように、本体と屈曲部との角度は95°〜110°に設定されるが、望ましくは98°〜105°の範囲に設置する場所の構造物の表面角度に応じて適宜設定される。)樹脂パネル8の全周は、屈曲部も含めて樹脂パネル7と同様に段差が形成される。なお、図11(a)において、屈曲部側と対向する辺に段差11aが形成され、これと垂直な辺(図中手前側の辺)に段差11bが形成される。屈曲部下端には、段差11cが形成され、図中奥側の辺には図示を省略した段差11dが形成される。
樹脂パネル8は、樹脂パネル7と同様に設置される。すなわち、設置部位に孔21を設けて接着系アンカー25を充填し、あらかじめボルト23が取り付けられた樹脂パネル8を設置する。この際、必要に応じて調整治具27が用いられる。また、既設樹脂パネル7の上端の段差11aと屈曲部の段差11cとが組み合わさるように樹脂パネル8が設置される。接着系アンカー25が固結後、調整治具等を取り除き、樹脂パネル8と構造体表面19との間に打設コンクリート5を打設する。なお、打設コンクリート5の打設の際には、あらかじめ妻型枠等を設置してもよい。以上により、樹脂パネル8が設置される。なお、樹脂パネル8は一方の辺のみに屈曲部を設けたが、隣り合う2辺に屈曲部を設けてもよい。
以上説明したように、本実施形態のコンクリート構造体の補修方法によれば、既設の劣化したコンクリート構造体の表面を樹脂パネルで覆い、隙間にコンクリートを打設することで、容易に、既設コンクリート構造体を補修することができる。特に、樹脂パネル7は樹脂製であり軽量であるため、施工性に優れる。たとえば、施工時に落下させても破損することがなく、安全である。
樹脂パネル7が軽量であるため、接着系アンカーで容易に固定することができる。このため溶接作業が不要である。このため、従来は、溶接個所をコンクリートブロックの外周部近傍に設ける必要があったが、ボルト23(孔17)の位置は、樹脂パネルのどこにあってもよい。したがって、樹脂パネルの中央部にボルト23を形成することもできる。このため、構造体と樹脂パネルをより確実に一体化することができる。
また、樹脂パネル7が軽量であるため、樹脂パネル設置時の固定も容易である。このため、樹脂パネル7に取り付けられたボルト23が孔21に対して遊びを有していても、調整治具27を用いて容易に樹脂パネル7を所定位置に固定することができる。このため、構造体表面19に形成する孔21には精度が不要であり、孔21の施工が極めて容易である。また、これにより、樹脂パネル7を設置する際に位置ずれ等が生じることもない。
また、調整治具27を用いることで、構造体表面19に凹凸があるような場合でも、樹脂パネルの設置場所ごとに、樹脂パネル設置位置を微調整でき、容易かつ確実に樹脂パネル7を所定位置に設置することができる。
樹脂製パネル7と構造体表面19との間にはコンクリートが打設されるため、構造体が確実に補修される。この際、樹脂パネル7は型枠としての機能と完成後の化粧板および表面保護板としての機能を有するため、型枠の撤去等の作業は不要である。
また、樹脂パネル7の外周には段差が形成されるため、樹脂パネル同士が段差で嵌合されて設置される。このため、樹脂パネルの設置時に、樹脂パネル7が崩れたり位置がずれたりすることがない。また、樹脂パネル同士は段差によって互いに接触するため、樹脂パネルの熱膨張や変形によって、段差で樹脂パネル同士の位置変化を吸収することができる。なお、樹脂パネル7の全周の段差部にパッキンや不織布を設置してもよい。このようにすれば、より一層、樹脂パネル同士の隙間からの水の侵入が防止できる。
樹脂パネル7は、耐久性に優れ、コンクリートのように劣化することがないため、長期にわたって再度の補修は不要である。また、樹脂パネルは表面に模様等が形成されるため、設置場所の景観を壊すこともなく、外観に優れる。なお、必要に応じて、樹脂パネル表面を塗装してもよい。
また、打設コンクリート5と樹脂パネル7との材質の違いに伴いこれらの線膨張係数が異なる。このため、周囲の温度変化によって、境界部には隙間が生じる恐れがある。したがって、この隙間から水が浸入し、前述のようにコンクリートを破壊する恐れがある。しかし、本発明では、打設コンクリート5と樹脂パネル7との境界部には、境界に沿ってシール部材39が設けられる。したがって、隙間が生じても、打設コンクリート5と樹脂パネル7との相対的な変位に追従し、生じる隙間を止水することができる。このため、極めて高い耐久性を得ることができる。
また、樹脂パネル8を用いれば、既設構造体が完全に樹脂パネル7、8で覆われるため、樹脂パネルと打設コンクリートの境界部が露出しない。このため、樹脂パネルと打設コンクリートの間に隙間が生じても、樹脂パネルにより水の侵入が防がれる。したがって、シール部材等を設ける必要がない。
また、樹脂パネル7には、内部に雌ねじ部を有する孔17が形成されるのみであり、現場で容易にボルト23を取り付けできる。このため、板状の樹脂パネル7の運搬効率が高く、現場において広い置き場所の確保も不要である。
次に、樹脂パネル7を用いた第2の実施形態について説明する。図12は、樹脂パネル7を用いて、コンクリート構造体を施工する工程を示す図である。すなわち、既設構造体の補修ではなく、構造体を新規に施工する際の工程を示す。
まず、構造体の設置場所の地面にあらかじめコンクリート47を打設する。次に、図12(a)に示すように、樹脂パネル7に支持部材43を接合して、所定の場所に設置する。支持部材43は樹脂パネル裏面の孔17に取り付けられる。コンクリート47にはアンカー45が設置されており、支持部材43の端部はアンカー45に接続される。すなわち、支持部材43によって、樹脂パネル7がコンクリート47に固定される。なお、支持部材43の長さを調整可能にすれば、樹脂パネル7の位置合わせ等が容易である。以上により、樹脂パネル7を構造体の全周にわたって設置する。なお、樹脂パネル7はやや上方を構造体設置側に傾けて設置される。
次に、図12(b)に示すように、樹脂パネル7で囲まれた空間に打設コンクリート49を打設する。すなわち、樹脂パネル7が打設コンクリートの型枠として機能する。
打設コンクリート49の固化後、打設コンクリート49にアンカー45を設置し、同様の手順で樹脂パネル7を上方に積み上げて、支持部材43により打設コンクリート49に固定する。この際、前述のように樹脂パネル7同士は段差で嵌合される。以上を繰り返し、コンクリート構造体を構築する。施工されたコンクリート構造体は、周囲を樹脂パネルで覆われているため、表面の劣化がない。また、コンクリートと樹脂との線膨張係数の違いに伴う隙間に対しては、シール部材を設ければよい。なお、アンカー45は機械式アンカーであっても化学式アンカーであってもよい。
第2の実施の形態によれば、樹脂パネル7を用いて新たにコンクリート構造体を容易に施工することができる。また、コンクリート構造体表面が樹脂で覆われるため、表面が劣化して補修を行う必要がない。また、樹脂とコンクリートとの隙間はシール部材で防水されるため、水が浸入することがない。したがって、作業性に優れ、極めて容易に耐久性に優れ、外観に優れるコンクリート構造体を得ることができる。
次に、樹脂パネルの他の実施の形態について説明する。図13は、樹脂パネル50を示す図であり、図13(a)は裏面図、図13(b)は図13(a)のC−C線断面図である。なお、以下の説明において、樹脂パネル7と同一の機能を奏する構成については、図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
樹脂パネル50は、樹脂パネル7と略同様の構成であるが、裏面15にリブ状の突起51が形成される点で異なる。突起51は、樹脂パネル50の各辺に略平行に、縦横それぞれ互いに直交するように形成される。突起51は、図1のようにコンクリート構造体に対して樹脂パネルを設置した際に、樹脂パネルと打設したコンクリートとの線膨張係数の違いに起因する、コンクリートと樹脂パネルとの剥離や浮き上がり等を防止するものである。
すなわち、樹脂パネル50を設置する際、突起51で区画される空間には、打設コンクリートが回り込んで固化する。この状態から、温度が上昇(または低下)した場合には、コンクリートに対して樹脂パネルが膨張(または収縮)する。しかし、樹脂パネル50は、突起51とコンクリートによって拘束される。このため、特に樹脂パネル50の端部において、コンクリートに対する大きな変位を生じることがない。したがって、樹脂パネル50とコンクリートとの間に隙間が生じたり、樹脂パネル50の剥離等の問題がない。
なお、突起51の高さや配置等については、図示した例に限られない。また、段差11c、11dの配置や、孔17の配置および設置数については、適宜設定することができる。
また、図14に示すような樹脂パネル50aを用いることもできる。図14は、樹脂パネル50aを示す図であり、図14(a)は裏面図、図14(b)は図14(a)のD−D線断面図である。樹脂パネル50aは樹脂パネル50と略同様であるが、リブ状の突起51の一部に切欠き53が形成される点で異なる。なお、図14(a)において、樹脂パネル50aは、その長手方向(図の左右方向)を横向きにして配置される。
前述したように、樹脂パネルはコンクリート構造体の斜面に設置される場合がある。この際、樹脂パネル50のように、格子状の突起51を形成した樹脂パネルを設置して、コンクリートを打設すると、前述の通り、突起51で囲まれる空間にコンクリートが回り込む。
図14(c)は、図3〜図4のように、樹脂パネルの裏面側に打設コンクリート5を打設した状態における、突起51近傍の拡大断面図である。図14(c)に示すように、樹脂パネルが斜面に沿って配置されると、水平方向の突起51の下面側(突起51の基部側)には、空気だまり55が形成される。このような空気だまり55が形成されることで、コンクリートの強度の低下や、前述した突起51による拘束力が弱くなる恐れがある。
一方、樹脂パネル50aでは、樹脂パネル50aを設置する際に、水平方向に形成される突起51の一部に切欠き53が設けられる。したがって、コンクリートを打設する際に、空気が切欠き53より上方に抜けて、空気だまり55が形成されることを防止することができる。
なお、切欠き53の配置等は、図示したように、例に限られず、例えば、切欠き53を縦方向に一直線上に設けなくてもよい。また、切欠き53は、空気だまり55の形成を防止できればよく、水平方向に配置される突起51の少なくとも一部に形成されていればよい。また、切欠き53に代えて、空気を抜くことが可能なように、突起51の一部に孔を形成してもよく、または、スリットを形成してもよい。
また、樹脂パネル50、50aは、樹脂パネル7の裏面にリブ状の突起51を形成した例を示したが、樹脂パネル8の裏面に形成してもよい。この場合、屈曲したそれぞれの面の裏側に突起51を設ければよい。
以上説明したように、樹脂パネル50、50aによれば、裏面にリブ状の突起51が形成されるため、樹脂とコンクリートとの線膨張係数の違いに起因する樹脂パネルの剥離や浮き上がりなどを防止することができる。また、リブ状の突起51が形成されるため、高い強度を得ることができる。さらに、樹脂パネル50aのように突起51に切欠き53を設けることで、突起51の形成に伴う空気だまりの発生を防止することができる。
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
1、60………砂防ダム
3、61………既設コンクリート構造体
5………打設コンクリート
7、8、50、50a………樹脂パネル
9………本体
11a、11b、11c、11d………段差
13………表面
15………裏面
17………孔
19、63………構造体表面
21………孔
23………ボルト
25………接着系アンカー
27………調整治具
29………把持部
31………固定部
33………フレーム
35………ゲージ
37………境界部
39………シール部材
41………溝
43………棒状部材
45………アンカー
47………コンクリート
49………打設コンクリート
51………突起
53………切欠き
55………空気だまり
65………クラック
69………アンカー
71………ボルト
73………コンクリートブロック
75………接続プレート

Claims (8)

  1. コンクリート構造物の補修方法であって、
    裏面に雌ねじ部を有する樹脂製パネルと、前記雌ねじ部に取り付けられるボルトとを用い、
    前記コンクリート構造物の表面に孔を設ける工程(a)と、
    前記孔内に接着系アンカーを充填する工程(b)と、
    前記孔内に、前記樹脂製パネルに取り付けられたボルトを挿入する工程(c)と、
    前記樹脂製パネルと前記コンクリート構造物との間にコンクリートを打設する工程(d)と、
    を具備し、複数の前記樹脂製パネルで前記コンクリート構造物を覆い、前記樹脂製パネルを前記コンクリート構造物に固定することを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
  2. 前記工程(c)は、前記樹脂製パネルに、前記樹脂製パネルの裏面と前記コンクリート構造物の表面とのクリアランスを調整可能な調整治具を取り付け、前記ボルトを前記孔に挿入し、前記樹脂製パネルを前記コンクリート構造物に取り付けた際に、前記樹脂製パネル裏面と前記コンクリート構造物の表面とのクリアランスを一定にすることを特徴とする請求項1記載のコンクリート構造物の補修方法。
  3. 前記樹脂製パネルは矩形であり、前記樹脂製パネルの互いに垂直な一方の2辺には、前記樹脂製パネルの表面側に段差が形成され、前記樹脂製パネルの他方の2辺には前記樹脂製パネルの裏面側に段差が形成され、
    前記工程(c)は、隣接する前記樹脂製パネルに対して、互いの表面側の段差と裏面側の段差とを嵌合させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート構造物の補修方法。
  4. 前記工程(d)の後、少なくとも最上段に位置する前記樹脂製パネルと打設されたコンクリートとの境界部上方にシール部材を設けることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリート構造物の補修方法。
  5. 前記工程(d)において、前記シール部材の設置予定部に棒状部材を配置し、前記コンクリートが固結後、前記棒状部材を撤去することで、前記樹脂製パネルとの境界部に沿って前記コンクリートに溝部を形成し、前記シール部材は、前記溝部に設けられることを特徴とする請求項4記載のコンクリート構造物の補修方法。
  6. 少なくとも一方の辺に屈曲部を有し、略L字型の断面形状を有する屈曲樹脂パネルを更に用い、最上段に位置する前記樹脂パネルの上方に前記屈曲樹脂パネルを設け、前記屈曲樹脂パネルおよび前記樹脂パネルにより、前記コンクリート構造物の側面および上面を覆うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のコンクリート構造物の補修方法。
  7. コンクリート構造物の表面を覆うように設けられる樹脂製パネルであって、
    矩形の本体と
    前記本体の裏面に形成される雌ねじ部と、
    を具備し、
    前記本体の互いに垂直な一方の2辺には、前記本体の表面側に段差を有し、前記本体の他方の2辺には前記本体の裏面側に段差を有することを特徴とする樹脂製パネル。
  8. 前記本体の裏面側には、互いに直交するリブ状の突起が形成されることを特徴とする請求項7記載の樹脂製パネル。
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